アルティマレディ・ルクリア 17話「エロフェッサー、再び 後編」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 らすP様
前編のあらすじ
光の星からルクリアに、アルティマサインと共に新たな装備が届けられる。
その説明のために、新たなアルティマレディが地球へ向かっているとの情報に歓喜するアンナ。
しかし、その戦姫・アルティマレディ・アカリはアルティマ戦姫の宿敵・エロフェッサーに捕らえられてしまう。
地球へ向かう道すがら、かつてのトラウマ「アークギア」に酷似した鎧を無理やり装着させられてしまうアカリ。
彼女はかつてハンターナイトの名で復讐に身を投じていたころの姿へと変貌し、自我を失ってしまう。
エロフェッサーとアカリを乗せた宇宙船は、地球へとその舵を向けるのであった。
ズガーン!!
激しい爆発音が、地上でこだまする。
ルクリアやゴーデスが拠点とする春野市とは離れた首都で、一人の宇宙人が暴れ始めていた。
なんの前触れもなく現れ、破壊を始める宇宙人…その姿はまるでアルティマレディかと見紛うほどの美しさであった。
しかし、清廉な彼女たちと違い、漆黒の鎧に身を包んで暴れる宇宙人。
人々が逃げ惑う中、青い光球が首都へと飛来する。
「そこまでです!」
光球の正体は高速モードで急行してきたアルティマレディ・ルクリアであった。
「これ以上被害を出されるわけにはいかないわ!アルティマフィールド!」
ルクリアを中心に黄金の波長が広がり、次の瞬間には二人の巨人の姿は街から消えていた…
フィールドの中で対峙するルクリアと鎧の戦姫。
「あなたは一体…街に出現するまで全く感知できなかった…」
いままでも宇宙からの来訪者は多く存在していたが、ゴーデスの手引きなしでここまであっさりと潜り込まれたのは初めての経験であった。
「その答えには私が答えよう…」
鎧の戦姫から男性の声が聞こえ、ルクリアは困惑する。
しかし声の主にすぐに思いあたり、ルクリアは鎧の戦姫を睨みつけた。
「その声…エロフェッサーですね!」
かつて地球へ現れ、ルクリアのフレアモードを打ち破った天才博士。
その後に受けた辱めも思い出して、思わず赤面するルクリア。
「相変わらず自分の手は汚さない卑怯な人…この女性も洗脳して操っているのでしょう!」
ルクリアの詰問に、エロフェッサーは鎧に取り付けたマイクから応答する。
「まぁ、そんなところだよ。この女は君と同じアルティマの戦姫・アルティマレディ・アカリだ。ちょっと過去の傷を抉ってやったら、ほらご覧の通り…自我を失った戦姫の完成というわけさ!」
嬉しそうなエロフェッサーの声とは裏腹に、ルクリアの表情は険しさを増していく。
アルティマレディ・アカリ…
先日届いたあたらしい装備を開発してくれた叡智の戦姫。
出会いを楽しみにしていたアカリとの邂逅がこんな形になってしまうとは…
「まずは彼女を救わなくては…ルクリア、行きましょう!」
アンナに発破をかけられ、ルクリアは手にブレードを出現させる。
フレアモードは以前に研究されてしまった過去があるため、不用意にはモードチェンジできないという判断であった。
「うーん、それは悪手だと思うぞ、ルクリアくん!」
余裕ぶったエロフェッサーの声と共に、アカリの腕にも光の剣が出現する。
「このアカリくんはインテリタイプだが、剣の腕前なら歴戦の戦姫たちにも引けを取らないぞ…そらそらっ!」
バイザーで目線も見えず、狙いどころのわからない攻撃がアカリからルクリアへ襲いかかる。
「くっ、はぁっ!…は、速い!」
トリッキーかつ凄まじい手数で攻め立てるアカリの前に、ルクリアはされるがままになってしまっていた。
ピコンピコン…
あまりのダメージに悲鳴をあげるカラータイマー。
膝をつくルクリアを前に、エロフェッサーの勝ち誇った声が響く。
「ふん、フレアモードでない君など敵ではないよ。まぁ、フレアモードで来ても返り討ちにできる準備はできているがね!」
悔しいが相手の言う通りになってしまっている現状に歯噛みするしかないルクリア。
「一体どうすれば…そうだ!」
ルクリアの精神に、アンナが何かを思いついたかのように叫ぶ。
「ルクリア!この間、アカリさんから届いたあのプログラム…ぶっつけ本番だけど試してみましょう!このままむざむざとやられてしまうわけにはいかないわ!」
事前にアカリからアルティマサインと共に渡されていた新たなる力…
その存在を思い出したアンナからの提案を、ルクリアは快諾した。
「その通りねアンナ…やりましょう!」
プログラムはアンナの腕に装着された腕輪にインストールされているため、発動はアンナの意志に委ねられる。
簡単な説明だけはアルティマサインで語られていたため、アンナはすぐに発動シークエンスに入った。
腕輪を掲げ、プログラムの起動を高らかに宣言する。
「ミックスアップ!アルティマレディ・メリム!」
次の瞬間、ルクリアの身体が眩く輝き、ビキニアーマーが修復されていく。
光の中から現れたルクリアはいつものブルーの装備ではなく、白と赤を基調としたメリムのスーツを着用していた。
「ほほぅ…新しいフォームとは興味深い!アカリくん、戦ってみたまえ!」
新たな研究対象の出現に声のトーンが上がるエロフェッサー。
指示を受けたアカリは特に表情を変えずに、ルクリアに襲いかかる。
「さっきと同じようには行かないわ!メリムブレード!」
ルクリアの腕からブレードが再生し、アカリの攻撃を捌いていく。
「なにっ!先程とは動きが違う!?」
まるで達人のような動きに、困惑するエロフェッサー。
「ミックスアップは登録してある戦姫の力をトレースできるのよ!この戦姫はアルティマレディ・メリムさん…あなたが操っているアカリさんの親友です!」
二人が切磋琢磨した結果、メリムにとってアカリの太刀筋は見慣れたものであった。
その力を得たルクリアにとって、アカリの攻撃は見慣れた太刀筋と同じであった。
「とはいえ、こちらも消耗が激しいわ…決めるなら一撃で!」
アンナの檄に、内心で頷くルクリア。
「狙うならあそこね…」
覚悟を決めたルクリアが剣を構え、アカリへと突進する。
「エロフェッサー、覚悟!」
高速の剣戟を避け、懐へと飛び込んだルクリアは、大きく空いたアカリの胸に剣を突き立てる。
ガシッ…
「くぅ…後少しのところで…」
刺さる直前のルクリアの腕を、アカリがしっかと掴んだ。
「ふふふ…この胸部は趣味で開いてるわけではないのだ!君のような単純な輩の攻撃を誘導するための…」
エロフェッサーが得意げに語ろうとしていたその時、アカリの頭部を覆うバイザーにヒビが入った。
「ふふっ…予定通りに行っていると油断するのは良くない癖ですよ!」
次の瞬間、アカリのバイザーが綺麗に割れる。
ルクリアは掴まれていない方の手に、自らのブレードを発生させ、二刀流にしていたのである。
メインの剣をあえて止めさせ、相手が油断したところで隠していた刃で本命を打つ。
ルクリアの標的は、アカリを操っていると思われるバイザーの破壊することであった。
支えを失ったようにアカリが体勢を崩す。
漆黒に染まっていた黒髪が金髪へと戻っていく。
「わわ…あぶない!」
ルクリアがアカリを支えると、割れたバイザーが地面に落ちる。
「ふふ…今回は君の勝ちだ、ルクリアくん…ガガ…また会おう…ガッ…」
エロフェッサーの再訪宣言に顔を顰めるルクリアであったが、バイザーが全壊したことで通信は一方的に切れていた。
「金輪際関わりたくないですね…それよりも!」
自らの腕に抱かれたアカリを見遣るルクリア。
「ここは…」
アカリはうっすらと瞳を開ける。
「アカリさん、大丈夫ですか!?」
ルクリアの問いかけに自らの足で立ち、笑顔で答えるアカリ。
「お手数をおかけしました…この星の方にもご迷惑を…」
鎮痛な表情に変わったアカリを、ルクリアはなんとか励まそうとする。
「そんなことないです!現にアカリさんのくれたシステムのおかげで窮地を脱することができましたし…」
そういいながら振ったルクリアの手が、アカリの胸を掠める。
ぴっ…
運悪く薄く纏われていた布地が破れ、アカリの胸がまろび出てしまう。
「きゃぁあっ…」
恥ずかしそうに胸を隠すアカリの姿に先程までの戦士の面影はなく、悪いことをしたと思いつつもルクリアは苦笑してしまう。
「まずは一件落着かしら…」
今回はまみえることのなかったエロフェッサーとまた会うことはあるのだろうか…
そんな日が来ないことを祈りつつ、ルクリアの戦いは幕を閉じるのであった…
「まったく…引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、挨拶もなしに帰りおったわい…」
ゴーデスはことの顛末を見ながらため息をつく。
「ルクリアも新しい力を得たみたいだし、これからどうするんだい?」
タケシも拍子抜けといった表情でゴーデスを見遣っていた。
「うーむ、まずは次の来訪者を待つかのう…おや、次はちと荒れるかもしれんな…」
ゴーデスが睨む特異点を監視するモニターには、巨大なハサミを携えた謎の宇宙人の影が映っていた…
続く