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挿絵 らすP様


前話までのあらすじ

ゴーデスの策謀により、月の裏側に多次元宇宙と繋がる『特異点』が発生する。

調査に来ていたアルティマレディ・ティアナの活躍で、第一陣として現れたソーキンモンスター達は撃退されるが…


『宇宙人現る!』

フィクションでもなんでもなく、この見出しが主要な新聞の一面に踊る。

事前に聞かされていたとはいえ、アンナはついにこの時が来たか…と身が引き締まる思いであった。

話は数日前に遡る…


ティアナが報告のため帰還し、地球には一時的にルクリアとアンナのみが残されていた。

そんな中、ルクリアが神妙な様子でアンナに事態を告げる。

「アンナ…お話があります。」

ルクリアからのいつになく真剣な申し出に、アンナも襟を正してスマホへと向き合った。

「どうしたの?改まって…」

身構えるアンナに、ルクリアは光の国からの通信内容を伝える。

それはルクリアたちの今後の戦いにおいても重要なことであった。

「今回の事態を重く見た宇宙警備隊は、特例を持って地球を保護することになりました。具体的には、地球の皆さんに今の状況をお伝えし、協力を仰ぐことになります。」

本来なら地球はまだ、彼らと接触する段階にはない…

そう聞いていたアンナは、事態の変化に驚きを隠せなかった。

「それほどまでに状況が変わった…ということ?」

アンナの問いに、ルクリアは宇宙警備隊の決定を伝える。

「はい…今回の月の裏側にできた特異点の重要性を鑑み、決定されたとのことです。ことの一端の責任は、ゴーデスの野望を止められなかった私たちにもあります…その償いのためにも、地球の皆さんと協力する必要があると判断されました。」

事が大きくなったことで、緊張を高めるアンナ。

「私たちの正体も明かすことになるの?」

学園のことやゴーデスのこと…今回の事態の中で、自分達の立ち位置がどうなるのか…アンナの不安を察してか、ルクリアは優しく言葉を続ける。

「私たちは今まで通り、ゴーデス関連の対応にあたります。この星への対応は宇宙警備隊の受け持ちになる予定です。だから安心してください、アンナ…」

それを聞いたアンナはほっと胸を撫で下ろした。

「そう…でも協力できる事があったら言ってね!私も力になるわ!」

明るい声色になったアンナの様子に、安心するルクリア。

「ええ!アドバイザーとして、協力してくれると助かります。警備隊は秘密裏に、この国の政府と接触するところからスタートすると思いますが…」

ルクリアは既にこの星に関する報告はあげているとのことで、2人はいつも通りの日常を過ごしながら、状況を見守ることとするのであった…


そんな中、宇宙警備隊の隊長が地球へ訪れ、地球人との交渉にあたる事がルクリアから知らされたアンナ。

その矢先に先程の新聞の見出しを確認したのであった。

「すでに話は進んでいるようね…」

政府からもこの件に関する発表のため、全国的に学校などの休校が指示され、アンナの勤める春桜学園もこの日は臨時休校となっていた。

アンナたちが見守る中、政府発表の中継が始まる。

事の説明を始めた首相の横には、1人の美しい女性が控えていた。

首相の口から宇宙警備隊の存在・今回の特異点発生の顛末が説明され、会見に参加したマスコミがどよめく。

そして首相のそばに立っていた女性が一歩前に踏み出した。

「初めまして、地球の皆さん…私はアルティマレディ・シルフィー。宇宙の秩序を守る、宇宙警備隊の隊長です。」

パッと見た感じでは、普通にスーツを着こなした美しいキャリアウーマンにしか見えない女性から、突拍子のない言葉が飛び出た事で、会場はさらにざわついていく。

1人の記者が挙手し、シルフィーへ質問を投げかけた。

「ええと…あなたは私たちと同じ人間に見えるのですが…本当に宇宙からいらしたのですか?」

記者の質問に笑顔を見せるシルフィー。

「はい。今はあなた方の混乱を避けるため、姿を近いものとしています。この服もお借りしたものです。」

気品を感じさせる受け答えに、記者はおずおずと質問を重ねた。

「ええと…何か宇宙人という証拠と言いますか…疑っている訳ではないのですが…」

シルフィーは特に動じる様子もなく、応じていく。

「ではこれでどうでしょう?」

そう言って目を瞑ると、淡い光に包まれるシルフィー。

次の瞬間には、アルティマ戦姫へ変身したシルフィーの姿がそこにあった。


即座に沢山のフラッシュが焚かれ、マイクが向けられる。

シルフィーは落ち着いた様子で、その質問の一つ一つへと回答してゆくのであった。


「ふぅむ…シルフィー自らやってくるとはのう…」

会見の様子をテレビで眺めながらゴーデスが独りごちる。

「隊長って言うからには、随分お強いんだろう?」

一緒にそれを見ていたタケシも神妙な面持ちで、相槌を打った。

「そうじゃのう…まぁしかし、せっかく会見中なことじゃし、スペシャルゲストなんておもしろいと思わんか?」

明らかに悪巧みをしている様子のゴーデスに、タケシはまたか、と肩を竦めるのであった…


「はい。ですから我々は…」

時折笑顔を交えながら、記者からの質問に答えていくシルフィー。

そんな最中、横で脇役に徹していた首相に、側近が駆け寄って耳打ちをし始める。

当然人間レベルでのひそひそ声では、シルフィーの耳にも届いてしまう。

「怪獣が出たのですか?」

いきなり首相の方を振り向いたシルフィーから発せられた言葉に、会場の記者たちにも緊張が走る。

春野市で何度か観測された怪獣騒ぎ…

そしてフィクションの中の話だと思っていたアルティママンとの邂逅…

ここまで、まだ夢か現実かと疑っていたマスコミにも、怪獣登場はまさにダメ押しの一手であった。

「ご安心ください!この件は私が対応いたします。」

そういうと目を閉じて、意識を集中するシルフィー。

変身を遂げた時と同じような淡い光がシルフィーを包み、次の瞬間には光の粒子となって消えていく。

その様は、まさに彼女が地球外の生命体である証左であった…


会見が始まって少し後、ゴーデスは1つのカプセルをタケシの部屋の窓から放り投げた。

ふわふわと浮いたカプセルが、市街地へ向かってゆく。

「あれがサプライズゲスト?」

タケシが離れていくカプセルを目で追いながら、ゴーデスに尋ねる。

「うむ…この間怪獣墓地でタイラントを生成した時に、いくつか怪獣の怨念を失敬してきたのじゃ…あれはその怨念をこの星の爬虫類に憑依させたものでのう…お主のコレクションと違って生物を素体にしている分“強力”じゃぞ。」

十分タケシの家から離れたのを確認し、カプセルを解放するゴーデス。

するとカプセルの中からは青色発泡怪獣・アボラスがあらわれ、街へと向かい始めるのであった…


ズゥン…ズゥン…

地響きを上げて街へ迫るアボラス。

街の人々は今までと違い、本物の脅威として迫るアボラスに、恐怖し逃げ惑う。

もはやこれまで…そう思われた瞬間、アボラスの後ろの空間に眩い光が満ちる。

「セアッ!」

光の中から現れたのは、先ほどまで会見会場にいたアルティマレディ・シルフィーの姿であった。

目の前で今までテレビの子供向け番組でしか見たことのない光景が繰り広げられることに、人々は戸惑いを隠せず、避難の足が鈍ってしまう。

シルフィーは人々の避難が進んでいないことを確認し、アボラスの注意を引きつける作戦に出た。

「こっちよ!」

スピードで翻弄しながら、打撃を加えていくシルフィー。

しかし、頑強なアボラスの肌には傷ひとつつかず、意にも介していない様子であった。

おもむろに息を吸い込むアボラス。

光線や熱線を警戒したシルフィーは、スッと距離を取る。

プシャアアアッ!

アボラスの口から吐き出されたのは、大量の強酸性の泡であった。

地面にこぼれた泡は、煙を上げて道路や街路樹をとかしていく。

「…凄まじい威力ね…っ!?いけない!」

アボラスは顔を振って広範囲へと泡をばら撒いていく。

その先にまだ人が避難していないビルを見つけたシルフィーは、咄嗟に背中で泡を受け止めて人々を庇った。

「うぁあああっ…あぐっ…」

泡が直撃した場所からは煙が上がり、シルフィーは苦悶の表情を浮かべる。

ピコンピコンピコン…

シルフィーのカラータイマーも赤く点滅し、危機を告げていた。

泡がかかったビキニスーツが溶け出し、胸が露出してしまうが、そんなことに構っている余裕はシルフィーにはなかった。

膝をつき、肩で息をするシルフィーに、アボラスの追撃が迫る。


ギリギリッ…

尻尾をシルフィーの首に巻き付け、締め上げるアボラス。

「カハッ…あ、あが…」

強力な締め上げに脳への血流が途絶え、意識を朦朧とさせるシルフィー。

そんな時、意外な救世主がシルフィーの前に現れた。

「シルフィーー!がんばってー!」

手にアルティママンの人形を握りしめ、避難していく子供から声援の声が飛ぶ。

子供にとっては自分を守ってくれるシルフィーも、大好きなアルティママンと同じかっこいい正義の味方であった。

それをきっかけに周りの大人たちも、めいめいにシルフィーを応援する声を上げる。

その声は、意識が遠のきかけたシルフィーを力強く鼓舞した。

「はぁあああ!」

腕をクロスし、体内のエネルギーをスパークさせるシルフィー。

首を絞める尻尾からアボラスの体内をエネルギーが駆け巡り、一気に爆発する。

ズドオオォン…

アボラスは爆発四散し、街に平和が訪れた。

人々から歓声が上がり、シルフィーもなんとか立ち上がる。

「シルフィー!ありがとー!」

人々の感謝の声に、手を振って答えるシルフィー。


その勇姿を収めようと、何人かの避難民がスマホを構えてシルフィーを撮影する様子が、テレビで中継されていた…


「あれは…まずいわね…」

赤面したアンナがテレビから目を逸らす。

その画面内には、胸がはだけた状態で笑顔をカメラに向けるシルフィーが写っていた。

怪獣出現の報を受けて、ルクリアと出動しようとしたアンナであったが、シルフィーからのテレパシーで待機を命じられていた。

ゴーデスの二面作戦を警戒してのことだったが、地球の常識を知らないシルフィーを1人で行かせてしまったことで、思わぬハプニングが発生してしまったのである。

「えーと、後で私からやんわり説明しておきます…」

アンナとの生活で地球の文化を理解してきたルクリアも、気まずそうに言葉を濁した。

そんな2人の気も知らず、画面内のシルフィーは笑顔で手を振り続けるのであった…


続く



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Comments

syonnai_hito

シルフィーは苦戦しつつもアボラスを倒して貫録を示しましたが、今回はマイクを向けられるところとか、首絞めそれに勝った後のシーンとか、色々と連想させられる部分が多いですね。まだ底知れぬゴーデスの謀略も楽しみ。

ガチピン@ご支援感謝

syonnai_hito様 いつもご支援・コメントありがとうございます! シルフィーの出血サービス(?)で、地球人たちの印象も良くなったかも…です(笑)