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挿絵 らすP様


地球からはるか離れた光の星。

そこからそう遠くない宙域に、それはあった。

銀河中から光の戦士に倒された宇宙人や怪獣の怨念が、マイナスエネルギーとして集まる場所。

それが『怪獣墓地」である。

怪獣墓地一帯は浄化の力でできたフィールドで囲まれており、外部にマイナスエネルギーの影響が出ないように措置されていた。

ある日、その浄化フィールドに一瞬穴が開くという現象が起きる。

しかし、一瞬の出来事であったこと、そしてサイズも数メートル程度の穴であったことから、計器の誤差と認定されていた…


一方その頃、地球からゴーデスの気配が消えていた。

正確にはゴーデス細胞の反応は各地にあるものの、本体の存在を捉えられなくなっていたのである。

ルクリアはすぐに光の星へ連絡をとったが、宇宙警備隊の指示は予想外のものであった。


「地球を離れる?」

アンナはルクリアへと聞き返す。

「はい…実はゴーデスの件とは別件で…光の星で管理している怪獣墓地のフィールドが不安定になっているそうなんです。浄化の力を主としている装置なので、私に見て欲しいという話のようで…」

話を要約すると、ルクリアは浄化フィールド作成時にもアドバイザーを務めていたため、復旧役に白羽の矢が立ったということであった。

「その間に地球で怪獣が出たらどうするの?」

当然の疑問を返すアンナ。

ゴーデス本体が離れたとはいえ、地球上にはまだゴーデス細胞が存在している。

ルクリアがいないとなると、何かあった場合に対応できなくなってしまうのではないか…とアンナは考えていた。

「まず、地球の守りには、別の宇宙警備隊員が来るそうです。アンナには到着時に、その隊員への協力要請が出ています。」

不安そうなアンナに、ルクリアも本国からの指示を簡単に説明する。

浄化できなくても倒す手段があれば、しばらくは問題ないという判断だそうだ。

状況に一抹の不安を覚えるアンナであったが、ルクリアの説明を聞き、覚悟を決めるのであった…


数日後、地球に1人の宇宙警備隊員が到着する。

彼女の名は、アルティマレディ・メリム。

若手ながら宇宙警備隊でもエースを張っているとのことで、今回の任務には適任と光の星のお墨付きであった。

「アンナさん!初めまして、メリムと申します!お噂は予々…」

新人らしく、元気なメリムの様子に自然と笑みが溢れるアンナ。

見た目は自分より若いだろうか…

スクールカウンセラーとして駆け出しの頃の自分を見るようで、アンナは懐かしさを憶える。

その横にはルクリアが立ち、メリムへ引き継ぎを行なっていく。

その様子にアンナはふと疑問を感じていた。

「そういえば…ルクリア、その格好で帰るの?最初にあった時の姿になるのかと…」

初めてスマホ越しにあった時のことをアンナは思い出す。


目の前のルクリアは、2人で変身した時の姿であった。

まるで、もう1人の自分を見るようで、こそばゆさを否めないアンナ。

「あ、アンナ…その話は…」

焦ったように取り繕おうとするルクリア。

何かを察したメリムが、その間に入った。

「あ、その辺の事情は私が…アンナさん、実は銀河連邦に加盟する前の星を訪れる場合、私たちが本来の姿を見せることはないんです。宇宙人と接触したことのない文明と接触する際にはその星の生命体に擬態する、という不文律がありまして…」

第一印象での混乱や警戒されるのを防ぐため…という説明に納得するアンナ。

「確かに、ジェニスさんやマリア様、シャインさんもそうでしたね。」

アンナはなるほど、と納得の表情をみせる。

「面目ありません…この星に来たばかりの私は焦ってしまっていて…」

しょんぼりするルクリアを新鮮に感じ、笑みが溢れるアンナ。

「まぁまぁ…私は事態の理解が早まったし、あの時は結果オーライって事で…」

暫し別れの前に雑談を楽しむ3人。

すぐ戻ります…そう言い残してルクリアは宇宙へと旅立って行くのであった…


ルクリアが地球を発ったころ、怪獣墓地の近くの小惑星では1人のアルティマレディが鍛錬に励んでいた。

彼女の名はアルティマレディ・レイ。

アルティマ姉妹の1人として名高いセレスの娘で、アルティマの戦士で数少ない、単独でのマルチヴァース間の移動を可能とする期待の星である。

最近になって光の星でも、マルチヴァースの存在が認知され、別の宇宙で活躍するアルティマレディ達との交流が進んでいた。

レイはその架け橋として、貢献していたのである。

今、レイの手には別宇宙のアルティマレディ達の力を借りるべく設計された『レイライザー』と、その力をそれぞれにメダルとして集約した、『アルティマメダル』が握られていた。

レイライザーのスロットにメダルをセットすると、そのメダルの力の主の能力を行使できる。

また、複数の戦士の力を掛け合わせてる事で、さらなる能力の発揮を可能とする…それこそがレイライザーの真価であった。

ひとしきりの訓練を終えたレイは、改めてレイライザーを手に取った。

「さてと…これのテストもしなくちゃね…」

そう言いながらレイライザーを扇状に広げるレイ。

その両端にメダルをはめ込むスロットを確認する。

「今回預かったメダルは…『ティオ』『アイナ』『ステラ』『ルクリア』の4人分ね。どれから試そうかしら…はっ!?」

逡巡していたレイの頭上から、謎の光弾が降り注ぐ。

かなりの量であったが、レイはこともなげに全て避け切って見せた。

「どこの誰だか知らないけど、私に不意打ちなんて2万年早いのよ!姿を見せなさい!」

そう言って光弾の飛んできた先を睨みつけるレイ。

そこには一見すると怪獣の骨にしか見えない何かが浮かんでいた。

その骨にどす黒いオーラがまとわりついたかと思うと、禍々しい怪獣へと変貌する。

その姿は、かつてアルティマ姉妹を打ち倒したタイラントに酷似していた。

「ふーん、骨のタイラントね…墓地のそばだからっていい趣味してるじゃない!」

そう言いながらワイドショットで牽制するレイ。

しかし、命中したかと思われた光線は、そのままタイラントに吸い込まれた。

「ギャアアアオゥ!」

タイラントが咆哮すると、体に纏ったドス黒いオーラが増大する。

「!!…エネルギー系の攻撃は相手を勢いづけるだけか…相手はマイナスエネルギーの塊…それなら!!」

何かに気づいたレイは、その手に再びレイライザーを構える。

「ぶっつけ本番だけど、やるしかないわ!…アイナ!ルクリア!力を借りるわよ!」

そういうとレイライザーのスロットに、アルティマレディ・アイナとルクリアの顔が描かれたメダルを差し込み、頭上に構えるレイ。

「チェンジ!ルナミラクルモード!」

鮮やかな閃光が瞬いたのち、タイラントに前には先ほどまでとは容姿の違うレイの姿があった。


赤と青の入り混じった通常のフォームと違い、青一色に統一されたビキニアーマー。

高速戦闘を得意とする、アルティマレディ・アイナのミラクルモード。

そして浄化に特化したルクリアのルナモードを合体させた、レイの新フォームであった。

「一気に行くわよ!ミラクルレイスラッガー!」

元々レイの代名詞とも言える、頭のレイスラッガー。

それが発射された瞬間、無数の数へと分身し、刃の嵐となってタイラントに襲いかかる。

その一本一本がルクリアの浄化の力を纏っているため、マイナスエネルギーで構成されたタイラントにもダメージが入っていった。

「そのまま細切れになりなさい!」

レイの言葉通り、体を削られていくタイラント。

しかし、勝負あったかと思われたその瞬間、背後から謎の光線がレイに命中した。

「きゃぁああ!」

ミラクルレイスラッガーの操作に集中していたレイは、その光線をまともに食らってしまう。

レイスラッガーは元の形状に戻り、レイの頭へと戻っていく。

「…痛ぅうう…だれ!?」

光線の放たれた方向を振り返るレイ。

しかし、ミラクルレイスラッガーを逃れたタイラントに後ろを見せたのは悪手であった。

「グァアアアアア!」

タイラントが鉄球のついた腕をレイに向けると、その表面についたトゲの一本が鞭状に伸び、レイを捕らえる。

「きゃぁ!…しまった…」

巻き付いた鞭からレイのエネルギーを吸い取っていくタイラント。

ピコンピコン…

カラータイマーも点滅し、窮地に追い込まれてしまうレイ。

「このままじゃまずいわね…」

そんなレイの焦りを見透かしたように、背後に黒幕が姿を見せる。

「なかなかいい姿じゃのう…アルティマレディ・レイ。」

顔をなんとか動かしたレイの視線の先には、ゴーデスの姿があった。

「あんたはゴーデス!なんでこんなところに…」

報告では地球でルクリアの監視下にいるはず…

「ファファファ…ちょっと野暮用での…それよりどうじゃ?わしの自信作・タイラントデスボーンは…」

もはや勝ちを確信する状況で、悠長に構えるゴーデス。

「ふん!こんなやつ…ぁんっ…」

レイは悔しさを滲ませながら強がるものの、エネルギーの残量は風前の灯であった。

「ファファ、威勢のいいお嬢ちゃんじゃ…まぁ、わしの目的はお前じゃなくてこっちなんでな…」

そう言いながらレイに触手を伸ばし、ビキニアーマーの中を弄るゴーデス。

「あぁん!なにすんのよ、この変態!」

身を捩って抵抗するレイであったが、ゴーデスはこともなげに目的の物を探り当てた。

「これがレイライザーとアルティマメダルか…確かにすごいエネルギーを感じるわい。」

触手でつまみ上げるようにレイライザーとメダルを抜き取ったゴーデスは、そのままタイラントへ放り投げた。

すると、それを飲み込むタイラント。

レイライザーはセットされたアルティマメダルごと、タイラントへと吸収されてしまった。

「なんてことを…どういうつもり!?」

レイの疑問に、ゴーデスはその真意を告げる。

「なぁに、其奴にはプルトンの一部を組み込んである…そう言えば、察しのいいお主にはわかるじゃろう…」

一瞬思考したのち、答えに辿り着くレイ。

「…!まさかあんた!」

レイの青ざめた表情に愉悦を感じるゴーデス。

「お察しの通りじゃ…わしらはメダルのエネルギーを目印にマルチヴァースのアルティマレディどもを倒す!そこで得たマイナスエネルギーを手土産に、最後はルクリアを葬ってやろうという寸法じゃよ。」

ゴーデスのネタばらしに表情を曇らせるレイ。

「そんなことさせないわ!今私が…あぁぅ…」

なんとかタイラントの拘束を外そうとするものの、エネルギーを奪われた状態ではそれも難しかった。

「ファファファ…貴様はそこで指を咥えてみているんじゃの…タイラントデスボーン!やってしまえ!」

ゴーデスの号令で、トドメとばかりにレイのエネルギーを吸い上げるタイラント。

「ああああ…あぁ…」

ピコ…ピコ…ピ…

レイのエネルギーがついに尽き、カラータイマーが消灯する。


タイラントの拘束が解かれても、レイは既に指一本動かせなかった。

ゆっくりとコスチュームも元のレイへと戻っていく。

「しばらくそこを漂っているがよい…さぁ、デスボーン、次の標的へむかうとするかの…まずは…アルティマレディ・ティオからじゃ!」

ゴーデスの号令に合わせ、鎌のついた手を振り下ろすタイラント。

すると時空に裂け目が生まれ、マルチヴァースを移動する用のゲートが開く。

「く…そ…ま…てぇ…」

タイラントとゴーデスがゲートに消えるのを、レイは光の消えた目で見送ることしかできなかった…


プロローグ・レイ編 終


ティオ編へと続く…


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Comments

syonnai_hito

これから各世界のアルティマレディたちが、ゴーデスとタイラントにムフフなヤラレが見られるかと思うと楽しみです。何気にネタ晴らしをペラペラしゃべる時点で負けフラグが立った気がしますが・・・。

ガチピン@ご支援感謝

syonnai_hito様 ゴーデス君は結構おしゃべりなので、作者の意図をばらす役割を担ってくれています(笑) ここから平成の戦姫たちを頑張って襲ってもらいますので、お楽しみに!

NASU1917

更新お疲れさまです! すでに何人か平成戦姫の名前があげられていますが、果たしてゴーデスとタイラントが何人抜きしてくれるか、それぞれのシチュエーションも含めて楽しみにしています!

ガチピン@ご支援感謝

NASU1917様 いつもご支援・コメントありがとうございます😊 名前を出したヒロインは全員登場予定です。 あまり長くならないようにしながらがんばります!