アルティマミレーヌ 「これが光の星だ! 前編」挿絵増量版 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 CO様
ある日、防衛隊で活躍するアルティマミレーヌの人間体・卯月メイ隊員は会議室への呼び出しを受ける。
そこに待っていたのは、防衛隊長官補佐として地球人・白鐘リオナに扮した義姉・アルティマリオナであった。
「失礼します…!!…おね…こほん…白鐘補佐官、お久しぶりです!」
室内に入った途端、目に飛び込んできた愛する義姉の姿に、つい口が滑りそうになってしまうミレーヌ。
そんなミレーヌを微笑ましく感じながら、リオナは念話で語りかける。
「ここでは2人きりです…念話で話せば聞かれる心配もないわ。好きに呼んでいいのよ、ミレーヌ。」
それを聞いたミレーヌは、念話に切り替えてリオナに話しかける。
「ありがとう、お姉さま…今日はどんな御用で地球まで?」
いつもなら事前連絡の一つも入れてくるリオナが抜き打ちで来た…この事実が状況の深刻さをミレーヌに感じさせていた。
「単刀直入に言いますね…ミレーヌ、あなたに光の星への一時帰還指示が出ています。理由はわかりますね。」
リオナの口から出たセリフは、ミレーヌには想定内の内容であった。
「はい…私の最近の戦績ですよね…」
口にしてしまうと実感を伴い、視線が落ちてしまうミレーヌ。
強力な怪獣や宇宙人に狙われることの多い地球…
激戦の最中、ミレーヌは何度も活動限界を迎え、リオナやアイリ達の助けを受けていた。
その時の記憶がフラッシュバックし、表情が曇るミレーヌ。
あの英雄・ケインの娘といえど一人前の戦士としてはまだまだ…そんな評価が下ってもおかしくないとミレーヌも感じていたのである。
「もしかして、地球の担当を外されるのですか?」
恐る恐るリオナの様子を伺うミレーヌ。
妹の少し怯えた表情に、リオナは苦笑しながら答える。
「ふふっ…私は聖十字隊の隊員よ。ここに来たのは貴女の義姉として心配だったから、無理を言って伝達役を代わってもらったの…重要なことなら、アイリ達が来るわ。」
その言葉に少し安心した表情を見せるミレーヌ。
「幸い、この近辺にはアイリやエリナがいるわ…しばらく留守にしても何かあれば地球を守ってくれる。安心して光の星へ帰っていらっしゃい。」
義妹を思うリオナの言葉に、心が揺らぐミレーヌ。
「お姉さま、ありがとう…でももう少し頑張りたいの…落ち着いたら一度光の星に帰らせてもらうわ!」
ミレーヌの目に光を見たリオナは笑顔で頷く。
「わかったわ…でもいつでも帰ってくるのよ。ソフィ様も喜ぶわ。」
そういうと、リオナはミレーヌの肩を叩いて会議室を出ていく。
ミレーヌは今一度地球を守る決意を改め、リオナを見送るのだった。
一方その頃、地球に謎の小惑星が迫っていた。
防衛隊は新兵器のトロン爆弾で小惑星の軌道をそらす作戦を遂行する。
無事爆弾が命中し、作戦は成功したように思えたが…
リオナはミレーヌと別れた後、聖十字隊の基地へ向けて地球を飛び立っていた。
小惑星は地球の軌道上から逸れていたが、念のためリオナは様子を見にいく。
小惑星は少し速度を落としていたが、順調に太陽系から遠ざかりつつあった。
「これなら地球へ向かうことはなさそうね…ん?」
リオナはトロン爆弾が命中したであろう場所を発見するも、違和感を覚えていた。
「あの威力でこの程度の破壊で済むかしら…逆にこれでは軌道が逸れないはず…はっ!」
次の瞬間、小惑星が二つに割れ、中から巨大な影が飛び出す。
「ギャアアアアアア!」
巨大な咆哮と共に宇宙大怪獣グルノアが飛び出し、地球へと向かっていく。
「くっ!なんて早さ…私のスピードでは追いつけないわ!ミレーヌ…気をつけて!」
そう言いながらアルティマサインを送るリオナ。
グルノアの目的地が地球の場合、後はミレーヌに任せるしか選択肢はなかった。
トロン爆弾のエネルギーを吸収したと思われるグルノアの実力は計り知れない。
果たして今の傷ついたミレーヌに倒せる相手なのか…
リオナの脳裏には一抹の不安がよぎっていた…
「ギャオオオォウ!」
あっという間に地球に到達し、暴れ回るグルノア。
少し前に届いたリオナからのアルティマサインで状況を理解していたミレーヌは、すぐに変身しグルノアの前に立ち塞がる。
「タァッ!」
自らの体躯の2倍近い高さを誇るグルノアに、気圧されながらも立ち向かうミレーヌ。
「テヤァッ!!」
まずは一撃、正面からボディにパンチをお見舞いする。
しかしグルノアの強靭な皮膚はびくともしない。
「それなら…トォッ!」
垂直にジャンプしたかと思うと、きりもみ回転を加え、勢いをつけるミレーヌ。
そのまま体重を乗せたジャンプキックをグルノアに見舞っていく。
かつて父・ケインが得意とした「スワローキック」。
ミレーヌも自らのものとし、技のコンビネーションに組み込んでいた。
流石の衝撃に後ずさるグルノア。
「ここだわ!」
すかさず腕を十字に組むミレーヌ。
「ミレニウム光線!!」
強力な光のエネルギーがグルノアを襲い、大爆発が起きる。
「やったわ!」
格闘と光線の必殺コンボが炸裂する。
しかし、爆炎の中からグルノアが平然と現れる。
数々の敵を葬ってきた連続技を無傷で切り抜けられたことで、ミレーヌに動揺が広がる。
それを知ってかグルノアは体重を乗せた突進をミレーヌへ向ける。
「そんな…きゃああ!」
まともに体当たりを食らってしまい、地面に叩きつけられてしまうミレーヌ。
「うう…」
胸に輝くエナジータイマーも点滅を始め、ミレーヌの危機を告げる。
「私…また負けちゃうの?…だめ…立って戦うのよ!」
自らを鼓舞するものの、敗北の記憶がミレーヌの身体を竦ませる。
「グルルル…」
動かなくなった獲物に、グルノアは警戒しながら近づいていく。
本来宇宙で活動するグルノアにとって、光は苦手な物にあたる。
結果、グルノアはミレーヌの胸で眩く点滅するエナジータイマーを脅威と認識していた。
バババッ!
グルノアの体から無数に生えた突起から、黒いガスが噴出する。
その突起のひとつをミレーヌに向け、ガスを直接吹きかけるグルノア。
「けはっ…かは…いけない、この霧…光を吸っている…」
霧が吹きかかったところから力が抜けるのを感じるミレーヌ。
この瞬間にも霧が周囲の空間を多い、光を閉ざしていく。
「こうなったらいちかばちか…アルティマスパーク!」
ミレーヌは起死回生を図るため、体内に残った光のエネルギーを爆発させる。
一瞬周りが昼間のような明るさを取り戻し、霧が晴れていった。
「今だわ!ミレニウム…」
再度腕を十字に組み、必殺の光線を放とうとするミレーヌ。
「ギャアアッ!」
しかし、急な光で目が眩んだグルノアは、怒りに任せて口から周囲に強酸性の液体を射出する。
ジュアアアア…
降り注ぐ強酸液が光線の発射態勢に入っていたミレーヌに命中する。
「え…あ…ああああああぁぁぁあ!」
酸が触れた瞬間、焼くような痛みが身体を襲い、絶叫するミレーヌ。
今まで経験のない、身体を溶かされる激痛に、ついにミレーヌの心が折れてしまう。
「いやぁああ!腕がぁ…痛いぃ…お姉さま、助けてぇ…」
ミレーヌはいるはずもない姉に助けを求め、のたうち回る。
とどめを刺すため近づくグルノアの前に、横たわり震えることしかできないミレーヌ。
果たして彼女の運命は…
後編へ続く