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挿絵 Jam様


※この作品は前々回投稿の過去編の続きになります。

そちらと併せて見ていただければ幸いです。


ソフィがブルーリフレクターを回収しに惑星・バランディを訪れてから一万年…

アントリーオが現れなくなったことで、バランディは順調な発展を遂げていく。

その支えとなったのは、アントリーオを退けた謎の女神の置き土産であった。

そしてバランディが銀河連邦に加盟することが決定し…


「私がですか?」

聖十字隊の広報室に呼び出されたアルティマリオナ。

そこで内示された任務に、リオナはつい聞き返してしまう。

「その通り。今回新しく銀河連邦の仲間になる星・バランディ。そこに光の星の大使として、君への参加要請が出ている。」

広報の責任者は再度リオナへと説明を重ねた。

「いや…なぜ一介の聖十字隊員である私にそんなお話が?」

呆気に取られてばかりではいられない、と質問を返すリオナ。

「身も蓋もない言い方をしてしまうが、君は若くして聖十字隊のトップクラスの実力・知名度を誇る。しかも義母は、この宇宙で知らない者はいないといっていいアルティマソフィだ。皇族に名を連ねていることも併せて、広報の仕事はこれから増えていくぞ。」

何を今更…という責任者の態度に、もう拒否を示しても無駄なことを悟るリオナ。

「はぁ…承知いたしました。」

素直なリアクションに、責任者の顔も綻ぶ。

「よろしい…では追ってスケジュール等は遅らせてもらう。下がりたまえ。」

現場で一人でも多くの人を救いたい…そのためにも余計な任務は早く済ませよう…

広報室をでて踵を返したリオナは、残務処理へと戻っていった。


数日後、惑星バランディの宇宙港にリオナは降り立っていた。

衣服を身につける習慣のあるバランディの風習に合わせて、ローブ姿で宇宙船から降り立つリオナ。

出迎えには、バランディの女王が直々に出向いていた。

「よくぞいらっしゃいました…リオナ様。」

深々と首を垂れる女王に、リオナは焦ってしまう。

「女王様、お顔をお上げください。私たちは対等な関係なのですから…」

そう声をかけた直後、周りの配下の面々も一様に恭しい態度であることに違和感を覚えるリオナ。

「(…?…なにかおかしい…)まずは式典の打ち合わせからお願いできますでしょうか?私はこういった行事には不慣れでして…」

リオナの要望に応え、移動を始める一行。

終始こんな調子ではない事を祈りながら、リオナもそれに付き従った。


「こちらへ…」

加盟式典の準備のため、女王の間に通されるリオナ。

その視線の先が捉えたものが、彼女を驚愕させる。

「これは!…」

そこには巨大な石像が鎮座していた。

傍目に見れば綺麗な女性像。

しかし、リオナから見たそれは、自らと同じ種族の女性をモデルに作られたという事をすぐに理解させる代物であった。

胸には明らかにエナジータイマーを模した意匠が施されており、リオナは驚きを隠せなかった。

「お気づきになられましたね…その像は遥か昔にこの星を救ったとされる女神…我々はノアの女神と呼んでいます。」

女王がリオナに像の説明を始める。

しかし、リオナの興味はそこに無かった。

「(これは…ミレーヌに似ている…アルティマティアラまで…)私たちの種族に似たところがありますね。」

その問いに女王は笑顔で答える。

「私たちもリオナ様の姿を見たときに同じ感想を抱きました。つい頭を下げてしまったのはそういう訳だったのです。」

女王の説明に得心がいったリオナ。

「我々の祖先が怪物・アントリーオの被害に苦しんでいた時代、不意に現れてアントリーオを倒してくださった方がいたのです。それがノアの女神。彼女はアントリーオを倒すと力尽き、この蒼い石を残して宇宙へと帰っていったそうです。私たちはこの石の持つエネルギーを増幅させる性質を生かして、文明をここまで発展させることができました…」

石像の手に置かれていた蒼い石を手に取り語る女王。

リオナはその目で石を解析する。

「これは…ブルーリフレクター…」

現代の宇宙において、ブルーリフレクターのような鉱石はさほど貴重ではなくなっていたが、まだまだ発展途上のバランディにとっては、進歩の礎となっていたのだった。

何はともあれ、妙に歓待される理由には納得したリオナ。

詳細は帰って調べるとして、まずは大使としての役割を全うするのだった。


バランディの銀河連邦加盟の式典は滞りなく行われた。

基本座っているか、調印書を持っての記念撮影等の出番しかなかったものの、リオナは大使の使命を全うする。

そして式典の最後、夜に余興として花火が打ち上げられる中、女王がリオナへと話しかけた。

「リオナ様、最後に一つお願いがあるのです。花火の締めくくりとして、この石にエネルギーを通していただけませんか?過去に我々を救った光を、人々に見せたいのです。」

ブルーリフレクターにどれほどの効力が残っているのか不明であったが、式典に華を添える申し出をリオナは承諾した。

「承知いたしました。念のため、エネルギーが全て空中に飛散するよう調整いたしますね。」

快く受けてくれたリオナに感謝しつつ、女王はブルーリフレクターを手渡す。

リオナは、念動力で自らの頭上にブルーリフレクターを固定し、指先からそっとエネルギーを照射した。

パパッ…

エネルギーが石を透過した瞬間、眩い光がシャワーのように拡散する。

まるで昼間になったかのような光が降り注ぎ、式典を訪れていた市民たちから歓声が上がった。

式典は大いに盛り上がり、全ては順調に思われていた…


リオナがブルーリフレクターにエネルギーを通した瞬間、眩い光と共に、リオナのエネルギーが増幅され拡散していた。

そして、一万年ぶりにバランディに発生したそのエネルギーは、地中深くで眠っていたアントリーオにも届く。

自らを葬ろうとした強力なエネルギーと同じ性質のそれを感知したアントリーオは、深い眠りから目覚めてしまう。

「キシャヤアアアア!」

咆哮を上げながら、全速力で地上へと向かうアントリーオ。

復讐に燃えるアントリーオは、そのままバランディの首都近郊へと出現した。


大使としての全行程を終え、帰路に着こうとしていたリオナ。

その耳に、大きなサイレン音が鳴り響く。

部屋を飛び出すと、町中にサイレンが響き渡り、遠くからは爆発音のようなものまで聞こえてきた。

「これは一体…」

そこへ女王が血相を変えて現れた。

「リオナ様!お騒がせして申し訳ありません。実は首都近郊の砂漠にアントリーオが…なぜ今になって…」

狼狽する女王の肩に手を置き、落ち着かせようとするリオナ。

「女王様、落ち着いて…状況は理解しました。この星の危機ならば、銀河連邦の使者として私が対処いたします。詳しい位置をお教えください。」

すぐにお付きの兵士が、リオナに詳細な場所を地図で指し示す。

リオナは頷きながら、女王へと向き直った。

「私はこれから現場へ向かいます。女王様は民衆を落ち着かせて、避難を先導してあげてください。」

深呼吸し、大きく頷く女王。

「わかりました。くれぐれもお気をつけて…」

そう答える女王に微笑みかけると、リオナは大空へと飛び立っていった。

女王もすぐに顔を上げ、情報を集約するため女王の間へと向かう。

扉を開けた女王の目に飛び込んできたのは、淡く光る蒼い石であった…


王宮を飛び立ったリオナは、アントリーオが現れた現場へと急行していた。

その途中で、バランディの人々に合わせていた身体を元のサイズへと巨大化させる。

同時に首のベル・チョーカーを起動し、戦闘態勢を整えていくリオナ。

その体は薄く発生したヴェールで守られ、リオナの実力が100%発揮できる状況にあった。

「…!!あそこね!」

街と砂漠の境目で大きな爆発が何度も上がる。

爆炎の中を進むアントリーオの姿に、ダメージがあるようには見えなかった。

「あれだけの砲撃で傷一つないなんて…すごい強度だわ。」

空中から接近するリオナを確認したのか、バランディ側の砲撃が止まった。

それを確認したリオナは、アントリーオの前に着地する。

「そこまでです!ここから先へは通しません!」

言葉が通じる相手とは思えなかったが、一応の警告は入れるリオナ。

「キシャアアアアア!」

アントリーオはリオナの登場に、さらに興奮した様子を見せる。

頭を下げて突進するアントリーオ。

「ハァッ!」

リオナはヴェールを翻し、闘牛士のようにアントリーオを翻弄する。

突進を躱されたアントリーオは頭から砂漠へと突っ込んでいくが、それも計算のうちとばかりに姿を砂中へと消していった。

「…?…どこへ?」

周りを見渡すリオナ。

不意打ちを考慮して全方位に気を配る。

しかし、アントリーオはさらにその裏を突くように、正面の砂中から飛び出した。

「!!くぅ…!」

なんとか反応したリオナは、顎のハサミを正面から受け止める。


「キシャアアアアア!」

そのまま胴体を挟み込もうとするアントリーオに、なんとか抵抗するリオナ。

「このままやらせるわけには…つぅ…いきません!」

リオナはハサミを抑えながら、一旦自分の方へ引き込むことでアントリーオの体勢を崩す。

前につんのめったアントリーオの頭を跳び箱の要領で飛び越えるリオナ。

アントリーオは再び砂へと頭から突っ込んでいった。

砂に着地した瞬間に振り返り、アントリーオと再度向き合おうとするリオナ。

しかしその視界から、アントリーオの姿は忽然と消えていた。

「…っ?どこへ…」

リオナが周りを見渡したその時、後方の砂がゆっくりと盛り上がる。

獲物に狙いを定めたアントリーオは、アゴを拡げてリオナに襲いかかった。

「きゃあっ!」

なんとかヴェールを持ち上げ、ハサミの直撃を回避するリオナ。

しかし、アントリーオはハサミを狭めてリオナを締め上げる。

バチッ…バチバチッ…

ヴェールが火花を発し、少しずつ消失していく。

それはリオナのエネルギーが消耗している事を表していた。

ピコンピコン…

リオナの窮地を表すかのように、エナジータイマーも点滅を始めてしまう。

「くぅう…あぁっ…このままじゃ…」

苦しむリオナの様子に、アントリーオは遥か昔に自らを地底へ追いやった敵の事を思い出していた。

この敵に有効な攻撃は…

アントリーオは本能のまま、触手状の舌をリオナへと巻きつけていく。

「なんのつもり…いやぁっ…やめなさい!」

体のあちこちを這いずり回る触手に、嫌悪感を示して身体を捩るリオナ。

滑りと光沢のある分泌液が砂に塗れたリオナの身体を汚していく。

「はぁ…はぁ…え?」

反応のいい箇所を発見したのか、胸や太股の間を責め始めるアントリーオ。

「あぁん…だめっ…そんなところ舐めないで…」

リオナが手を動かせない事をいいことに、アントリーオはさらに触手を這わせる。

「いやぁあ…」

胸にはアントリーオの触手が巻き付いて搾り上げ、その感触にリオナの乳首が露出してしまう。


伏し目がちに顔を上気させながら、なんとかハサミの締め付けに耐えるリオナ。

「はぁん…あっ…ん…ぁん…」

だんだん抵抗力が弱まる獲物に、アントリーオは触手の動きを激しくしていく。

ズドンッ!!

そんなアントリーオの背中で爆発が起きた。

「全軍攻撃!リオナ様を救うのです!」

飛空艇に乗った女王の檄が飛び、バランディ軍の攻撃が再開される。

弱ったリオナを砂の上に放り出すと、バランディ軍に向かっていくアントリーオ。

「ハァ…ハァ…いけない…あの攻撃ではアントリーオは倒せないわ…」

リオナはなんとか立ち上がろうとするものの、消耗が激しく上半身しか起こすことができずにいた。

そんなリオナに近づく女王の飛空挺。

リオナは息を切らしながらも女王に声をかける。

「くぅ…女王様!ここは危険です!わたしに構わず避難を!」

その瞬間、飛空艇の扉が開き女王が身を乗り出した。

「リオナ様!ノアの神のお告げです!これをお使いください!」

その手にはブルーリフレクターのかけらが握られ、先程リオナのエネルギーを透過した余韻からか、かけらは淡く光っていた。

「あの少量のエネルギーであれだけの光を発したブルーリフレクターなら…女王様!その石をアントリーオと私の間に!」

リオナの呼びかけに、女王は頷いて石をリオナとアントリーオの間へと投げ入れた。

「おねがい…効いて!フェザーアロー!」

頭のカチューシャを弓矢に変え、エネルギーで形成した矢を放つリオナ。

空中に放り出されたブルーリフレクターに命中した矢は、その威力を増してアントリーオを背中から貫いた。

「ギャアアアアアア!」

断末魔をあげて崩れ落ちるアントリーオ。

その身体の殆どを矢のエネルギーが抉っており、今度こそアントリーオの最後であった。

「やった…これでこの星も安心ね…」

リオナにも笑顔が戻り、ほっと一息をついていた。


アクシデントこそあったものの、改めて帰路につくリオナ。

落ち着いたリオナは、ノアの女神のことを思い出していた。

「そういえばあの石像のティアラ…ソフィ様やミレーヌが使っているものに似ていたわね…もしかして二人のご先祖様だったりするのかしら?」

ソフィ達への土産話ができたことを喜ぶリオナ。

この話を聞いたソフィの笑顔が引き攣ることを、この時のリオナはまだ知る由はなかった…



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