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第九話「マリアが死んだ!ルクリアも死んだ! 後編」

挿絵 らすP様


前編のあらすじ

身体の不調をおして戦いに挑んだ末、敗北したルクリア。

光の国で治療を受けたアンナは、ジェニスから受け取った光の衣で体内に残留するゴーデス細胞の抑制に成功する。

しかし、それでもバードン・ケムジラの2大怪獣には敵わないと見た2人は、ルクリアの真の力にかける事に。

自らのピンチにも頑なにその力を使わなかったルクリア。

果たしてアンナは、ルクリアの真意を引き出すことはできるのか?

そして地球でゴーデスの責めに耐え続けるマリアの運命やいかに…


ジェニスからおおよその事情を聞いたアンナ。

ジェニスの手に乗り、ルクリアが治療を受けているポッドへと向かう間、彼女とどう向き合うかを思案していた。

「アンナさん、私も同席しますか?」

そんなアンナを気遣ってかジェニスが申し出るも、アンナは首を横に振った。

「いいえ、大丈夫です。まずは2人で話してみます。ジェニスさん、ありがとう。」

「それでは後ろで待たせてもらいますね。」

ジェニスにアンナは微笑み、ルクリアのポッドへと飛行して近づいていく。

ジェニスから譲り受けた光の衣の力で、アンナもある程度の飛行能力や超人的な力を得ていた。

ポッドの中ではルクリアが、本来の姿で治療を受けている。



「やっぱりアルティママンに近いんだ…」

アンナは自らと融合したルクリアの姿を見慣れていたため、彼女本来の姿を少し新鮮に感じていた。

ルクリアの顔の横に降り立つアンナ。

その気配を察したのか、ルクリアの顔が少し動いた。

「…アンナですか?」

ルクリアからテレパシーがアンナに届く。

離れ離れになって少ししか経っていなかったが、アンナにはルクリアの声がとても懐かしく感じていた。

「ルクリア!体は大丈夫?」

アンナの問いかけにルクリアは少し沈んだ声で答える。

「全快まではもう少しかかりそうです…アンナこそ大丈夫ですか?」

相変わらず自分よりも他人を気遣うパートナーに苦笑してしまうアンナ。

「私はこの通り!ジェニスさんからお召し物までいただいちゃって…これのおかげで、力がみなぎる感じ!」

不必要に明るくしすぎたかな…というアンナのから元気を察したのか、ルクリアも努めて明るく振るまおうとする。

しかし、口をついて出たのはやはり謝罪の言葉になってしまった。

「もう何回謝ったかわかりませんね…それでもやっぱりごめんなさい。あなたを…」

「ストップ!もうそれは無しにしましょう。私たちはお互いやれる事を全力でやったはずよ。少なくとも私には悔いは無いわ。」

謝罪を重ねようとするルクリアをアンナは静止する。

「それよりもこれからどうするかを考えなきゃ。今のままじゃきっと勝てないわ!」

アンナがまだ自分と一緒に戦ってくれようとしている事に、ルクリアは驚く。

そんなパートナーを察してか、アンナは優しく語りかけた。

「ルクリアが私に辛い思いをさせたって気に病んでいる事はわかるわ…でも、これは私の星を守るために、私が選んだ道でもあるの。お願い…最後まで一緒に戦わせて!」

アンナの真っ直ぐな言葉に、ルクリアはゆっくりと顔を向けて頷いて見せた。

「ありがとう…でも、今の私達ではどうすれば彼らに勝てるのか…」

そこに、後ろでやりとりを見守っていたジェニスが声をかける。

「ルクリア…申し訳ありませんが、『あの事』を私からアンナさんにお話ししました。過去と向き合い、あなた本来の力を取り戻すべきです。」

その言葉を聞いたルクリアは、アンナに視線を向ける。

本来の姿では表情を推し量ることは難しかったが、それでもアンナはルクリアの覚悟を感じていた。

「その通りです…このまま逃げ続けるわけには行きません…私に協力してくれるパートナーのためにも…アンナ、私の話を聞いてください!」

アンナは大きく頷き、ルクリアの話に聞き入った。


それは数千年前…

ルクリアは銀十字軍から宇宙警備隊へ出向し、様々な星を巡っていた。

持ち前の浄化能力と、その余りある力を最大限に発揮するモードチェンジ。

それこそが彼女の最大の武器であった。

浄化の時に見せる清洌な月明かりを思わせるルナモードと暴れる敵を強力な力でねじ伏せる太陽のような力・コロナモード。

この二つを使い分け、マイナスエネルギーに囚われた怪獣たちを浄化する任務をこなしていたルクリア。

その日もいつも通りに変質した怪獣の情報を得て、とある惑星に向かっていた。

その星ではゴーデス細胞に侵食された毒ガス怪獣・エリガルが暴れており、生態系に被害が広がっていく。

駆けつけたルクリアはいつも通りコロナモードにチェンジし、エリガルと対峙した。

「このままではこの星が危ないわ…」

焦りながらもエリガルを攻めていくルクリア。

しかし、エリガルが元々自衛のため備えていた毒ガスが、ルクリアを追い詰めていく。

「これ以上やらせるわけには!」

ルクリアは得意技のネイバスター光線でエリガルの体力を奪い、コロナモードでの浄化技・コロナエキストラクトで一気に浄化を図る。

しかしエリガルはネイバスター光線のダメージで弱ってしまい、コロナエキストラクトの浄化に体が耐えられなかった。

本来なら救われた怪獣の姿がそこにあるはずだったが、ルクリアの前には衰弱死したエリガルが横たわっていた。

「そ、そんな…」

それまで大きな失敗もなく任務をこなしていたルクリアには、その事実は大きなショックとしてトラウマとなってしまう。

その結果、ルクリアは力の制御ができなくなり、コロナモードへのチェンジができなくなってしまったのだった。

そして浄化のルナモードだけでは暴れる怪獣を抑えきれず、単独の任務は難しくなった。

その後、アルティママザー・マリアの元でルナモードを極める修行を積み、ジェニスたちアルティマ姉妹たちの補佐として復帰する事になったのである。

そして浄化が天敵であるゴーデスの担当として独り立ちしたところで地球を訪れ、アンナと出逢うこととなった。


「今の状態ではコロナモードへのチェンジができるかどうか…一体どうすればいいのか…」

話し終えたルクリアは少し胸の支えがとれたようで、アンナは安心した。

「でも、ゴーデスに対抗するにはそれしかないんでしょう?」

アンナは自らの体を指差し、ルクリアを鼓舞する。

「今は私もこの衣であなた達に近いエネルギーを有してるわ。それに力の制御も2人でなら負担も少ないはずよ。もう一回やってみましょう!」

ルクリアにもアンナと一緒なら…という思いが芽生え始めていた。

「わかりました。アンナ…もう一度私に力を貸して!」

そういうと体を光の粒子に変えて、アンナのスマホに戻るルクリア。

アンナは意を決してスマホを掲げ、パートナーの名を叫んだ。

「ルクリア!」

アンナの体が光に包まれ、ルクリアへと変身する。

まずはルナモードへの変身を遂げると、ルクリアはいつもとの違いに驚く。

「これは…いつもより力がみなぎる感じ…」

それを見ていたジェニスが近寄ってきた。

「アンナさんが私たちに近いエネルギーを得た結果、変身時のパワーが上がったみたいですね。やっぱりあの衣を持ってきて正解だったわ!」

ジェニスは自分の狙った効果が発揮された事を喜んでいた。

ゴーデス細胞の侵食の影響も無くなっており、ルクリアは十全な状態に戻った事を実感する。

アンナの意識も前よりはっきりしており、ルクリアとの交信も容易になっていた。

「すごい!前よりシンクロが強くなったみたいにかんじるわ。」

あんなの嬉しそうな声に、ルクリアも笑顔になる。

「この力でも十分やれるかもしれません…それでも私の挑戦に付き合ってくれますか?」

それを聞いてアンナは少し憤慨した様子で答える。

「私たち!の挑戦よ、ルクリア!一緒に乗り越えるって言ったでしょう!」

そう言って戯けるアンナに感謝しながら、ルクリアは決意を固める。

「いきます!」

精神を集中し、体にエネルギーを循環させるルクリア。

周囲は眩い光に包まれ、ジェニスも目を瞑ってしまう。

「すごいエネルギー…ルクリア?」

ジェニスの目が慣れた時、目の前には新たな戦士の姿があった。

「ジェニスさん、これから地球へ向かいます。マリア様の治療の準備をお願いします!」

ルクリアはそういうと、地球へとテレポートを開始する。

ジェニスはその後ろ姿に発破をかけて送り出す。

「今のあなた達なら、どんな敵にも負けないわ!お願いね!」

ジェニスの声援を受け、ルクリアは地球へと旅立っていった。


一方地球ではゴーデスのマリアへの甚振りが続いている。

バードン・ケムジラの猛攻により、マリアはすでに戦闘不能の状態に陥っていた。

ヘッドギアは破壊され、美しく整えられていたツインテールは解けて乱れされてしまう。

「ファファファ…ルクリアのやつは帰ってこんのう。お主もいつまで粘るつもりじゃ?」

自らの裏ネットワークでこの状況配信し、多数の売り上げとマリアに向けられたマイナスエネルギーを収集したゴーデスは上機嫌であった。

「…はぁ…はぁ…あなたこそ、私に集中してないなんてつれないじゃないですか…」

ボロボロになりながらも不敵な笑みを浮かべるマリアに、ゴーデスはイラつきを隠せずにバードンの足で蹴り上げる。

「がはっ…つぅ…」

バードンはマリアの頭を掴むと晒すように持ち上げた。



「ふん、銀十字軍の長官ともあろうものが、醜態を晒している事を恥もせんとは…」

そのゴーデスの挑発も、マリアには全く響いていなかった。

「ふふふ…あの子たちの覚醒につながるのなら、私の恥など安いものですよ。あなたこそ、あの子を追い詰めるだけ追い詰めてどうするつもりなのです?」

マリアの問いかけにゴーデスの反応が強張る。

「なんだと…」

「あの子の本来の姿をあなたが知らないはずはないわ…もし追い詰めて覚醒したら、あなたはのんびりこの星でマイナスエネルギーを集めることなんてできないはず。一体どういうつもりなのかしら。」

本意を探られ気分を害したのか、ゴーデスは無言でケムジラをけしかける。

「減らず口はそこまでにしてもらおうかの…」

周りのビルにケムジラの糸を撒き散らし、マリアを空中に磔にしていく。

続いてバードンの嘴でマリアの胸をつき、エネルギーを失ったコスチュームを剥ぎ取るゴーデス。



「あぁん…」

さすがのマリアも頬を赤らめ、俯いてしまう。

長い経験で地球人タイプに変身したことのあるマリアであったが、コスチュームの下を晒される機会は初めてであった。

「いい歳しとるくせに愛い反応ではないか…」

ゴーデスの嘲笑にさらされながらも、マリアの目は死んでいなかった。

「笑っているのも今のうちですよ、ゴーデス。ルクリアとアンナさんなら必ずあなたに打ち勝ちます!」

「だといいんじゃがの…このままじゃと熟女のストリップショーになってしまうわい。」

天下の銀十字軍長官を好きにいたぶれる状況に気を良くしたのか、口の減らないゴーデス。

そのせいか、彼の宿るバードンの後方で、フィールドに亀裂が入っている事にすぐには気づかなかった。

「……きましたね。」

マリアの瞳に希望の火が灯る。

はたしてルクリア達のパワーアップは成功したのか…

新たな力はゴーデスに通じるのか…

決戦の瞬間が刻一刻と近づいていた…


続く


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