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いつもご支援ありがとうございます。

今回描いた漫画について、解説などをやっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


さて、今回のテーマは「表情」です。

目は口ほどに物を言う、という言葉があるように表情だけで何かを伝える事が出来るはずだと思い、台詞を一切入れない漫画にしました。

未だに来る複数の出版社からの漫画執筆依頼メールに、キャラクターの表情が活き活きしている、という文章が必ず添えられていて、漫画を投稿しているTwitterやPixivの感想でも似たような事をよく言われるので、そこまで言われるなら何かあるはずだろうから一度やってみるか、というのが動機でもあります。

僕自身、キャラクターの表情に関してはこだわりを持って描いていますので、今回実験も兼ねて台詞抜きで描いてみたわけです。


また、キャラクターの表情をどう描いたらいいのか分からない、という人にとって、この記事が一助になれれば是幸いでございます。


では早速やっていきましょう。


1.オチをまず描く。

一番最初に決めたのはオチである最後のコマです。

ラフの状態でも最後のコマだけは莉嘉ちゃんの顔が丁寧に描かれているかと思います。

この莉嘉ちゃんの顔を見た人全員惚れさせる必要があった為、ラフの時点でしっかりと印象を決めたわけですね。


身体や首の角度、口の開き具合、目の横幅・立幅の長さ、腕の角度など、この段階で徹底的に詰めていきました。


まずポーズについてですが、なまめかしさが欲しかったので体をくねらせました。

加えて、人は咄嗟に手をあげる際は利き腕をあげる習性があるので、上げた左腕を起点にくねらせる方向を決めています。


次に表情ですが、特に気を付けた点は口のサイズです。

大きすぎるとギャグっぽくなりますし、小さすぎるとおしとやかな印象になります。

また、口を閉じた場合は、余裕を感じる表情(余裕とは、自身の感情をコントロール出来ている、という意味です)になってしまいます。

莉嘉ちゃんは元気いっぱいの天真爛漫な性格なので、感情が顔に出るタイプでしょう。ですから、それなりに口を大きく開く必要がありました。

人は、何か強い感情が出た時はつい口が空いてしまいますよね。

人間が感情に支配された時、つい出てしまう自然の動作を描く事で説得力が上がるわけです。

ただ、近くにいる二人のお姉さんにバレないようにこっそりと手を振っている(ラブコールをしている)、というシーンなので、感情丸出しではバレてしまいます。

なので、抑え気味にしているものの、それでも好きという感情が漏れ出てしまった、という顔が、見た人の心をキュンとさせるわけですね。


また、上の歯を見せるかどうかでも印象が変わってきますので、読者に伝えたいキャラクターの心情に合わせて変えていくといいかと思います。


次は、目です。

目は口程に物を言う、といいますから、こちらも重要な要素です。

笑顔でも目が笑っていない、という人がいますよね。それは絵にも言えます。

たとえ笑顔の絵であっても目が笑っていないければ、人は無意識のうちに違和感を覚えます。

眉と口を隠した状態で目を見てみましょう。笑っていると判断できれば成功です。


人は笑顔を見せる時、目が細くなりますよね。

特に愛しい人など、愛情を感じる相手には細くゆったりとした優しい目になります。

今回は、そんな目を目指して描きました。


上瞼は虹のようにゆったりとした弧を描きます。

下瞼は、笑顔を作った際に頬の筋肉が盛り上がりその影響を受けるので、上瞼ほどではありませんがうっすらと弧を描きます。


また、この最後のコマのみ、莉嘉ちゃんの頬が赤くなっているのもお気付きでしょうか。

大好きなPくんに対してのみ愛情のこもった表情を見せる、という物語性を付けるために、あえてこの最後のコマ以外は頬や唇の艶やかには描いていません。

また、莉嘉ちゃんの顔に視線が寄って欲しいので、隣にいるお姉ちゃんの頭部から首元辺りまでをエアブラシツールで白を塗り、お姉ちゃんの目の印象を弱くしています。(人間は、目に視線が行きやすいので、こういう処置を行っています)

これにより、莉嘉ちゃんとお姉ちゃんの身長差による距離感も出せて一石二鳥というわけです。


また、莉嘉ちゃんの髪にかかったハイライトも、唯一真っ白(♯FFFFFF)を使って描いていますので、それも視線を寄せる一助となっています。


2.全コマの表情を変える。

台詞を抜く、という以外にも、もう一つ条件を設けました。

それが、莉嘉ちゃんの表情を全コマ異なるようにする、という物です。

この表情というのは、体の仕草も含めています。

莉嘉ちゃん自身が元気いっぱいで天真爛漫な性格をしているというのもありますが、色んな表情や仕草を見せることでキャラクター自身に「動」が出来ます。人って、動いてる物についつい目を向けてしまいがちですよね。その習性を利用して読者の興味を引くわけですね。(単純に、色んな表情・仕草を見せる莉嘉ちゃんを見て好きになって欲しいという願望もあります)

逆に、隣にいるお姉ちゃんはあまり体を動かさないようにする事で、動と静の対比を作り、より莉嘉ちゃんに注目がいくようにしています。


3.あえて見せる。

画像は三枚あります。赤丸部分に注目してみてください。



赤丸で囲った部分は、ポーズやカメラの位置的には本来見えなくなる足の部分です。

しかし、このキャラクターは足を組んでいる、という情報を読者に強く印象付けるため、カメラの位置的には見えなくなるはずの脛や太もも部分をあえて描いています。

また、莉嘉ちゃんはこの漫画で唯一足を組んでいません。

足を組む2人のセクシーなお姉さんとの対比を作る事で、莉嘉ちゃんを唯一無二の状態にし、この子がこの漫画の主役なんですよ、という情報をさりげなく読者に伝えるわけですね。


4.見せたい表情を魅せる。

最後のコマの一つ前ですね。

先ほど、最後のコマ以外は頬や唇を艶やかに描いていない、と書きましたが、厳密にいうと嘘です。

このコマは、遠くから莉嘉ちゃんを眺めていたプロデューサー(読者)の視線に気付いた、というシーンですね。

莉嘉ちゃんはPくんラブ勢ですので、好きな人と目があったらやはり可愛くなりますよねって事で、わざと唇を少し艶やかにして頬もうっすらと染めています。

あくまで、オチである最後のコマよりは控えめにしつつ、他のコマとは少し違うんだよ、という情報を伝える為に艶やかさを少し足しました。

このコマとオチである最後のコマを含む一番下の段は、大好きなプロデューサーと視線が合った、という場面変換なので、そこだけ一段魅力を引き上げています。


また、全コマで気を付けていたのは、オチである最後のコマほどに強い感情を顔に出さない。という事と、オチまでに一度は笑顔を見せる、という事です。

友達に見せる笑顔とプロデューサーに見せる笑顔は違う、という対比を見せたかったからですね。

友達に見せる笑顔のレベルを決めるためには、オチである最大レベルの笑顔を決める必要があったので、オチの顔だけはラフの段階で丁寧に描いていたわけです。

この笑顔の差がはっきりしていると、より一層最後の笑顔でキュンとくるので、かなり気を配って描いています。


ストーリーに関しても、最後は莉嘉ちゃんだけがプロデューサーの視線に気付き手を振る、という場面を作りたかったので、隣にいるお姉ちゃんの視線を外させる必要がありました。

そこで、二人の共有の友達である北条加恋を登場させ、最後はお姉ちゃんと二人で会話をさせる事で視線を外へ逃がす、という形にしました。

これにより、隣に座った北条加恋が立ち上がり莉嘉ちゃん達の前を通って最後は去っていったという時間経過も表現出来たのではないかと思います。


今回の漫画は、最初にオチ(魅せたい場面)から考え、そのオチへ辿り着くにはどうしたらいいのか、という逆算方式で行ったものです。

1枚漫画など、ページ数の少ない漫画だとかなり効果的な手法だなと感じました。


それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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Comments

n-yoshi

「あっ」てなりますね。完全に仕留められました。