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「魔力を超えた闘志」



・・・。

ある日を境に、村松町は大混乱に陥った。



真面目だったOLがサボり魔になったり、

不良の女子校生が更正したり、

生真面目な母親がずぼらになったりと、地道に、しかし着実に次第に被害者が増え始めていた。


そして、その被害者の中には。



真梨香「理沙さん、しっかりしてください理沙さん!」

理沙「はぁ、だーるい。」

瀬里亜「あー、もう、どうするっすか?!ミイラ取りがミイラになっちゃシャレになんないっすよ!」



異変をいち早く聞きつけた理沙もいた。

だが、その後。



理沙「はーぁ、なーんもやりたくなーい……。」



真梨香や瀬里亜、唯の言葉をも効く耳持たずな、

「無気力な怠け者」へと変貌してしまったのだ。

その無気力かつ自堕落でへらへらしている理沙を見て、唯は軽く舌打ちをして彼女の体から手を離した。



唯「もう、だめ!何を言っても動こうとすらしないわ。」

瀬里亜「まさか、理沙さんまで事件の被害者になっちゃうなんて……!」

真梨香「一体、どういうことなの……?」



真梨香と瀬里亜、唯は未だ正気を保っている。

だが、お互いの学校関係者のほとんどは光線を受けており、学校も機能するはずもなく、自主休学という形になっていた。

学校だけではない。

街の至る所で、同じように休業状態が続発しているのだ。

しかも、破壊衝動に支配された人もいるため、町が破壊される事件も多発していた。



唯「このままじゃ……。町中がめちゃめちゃだわ!」

真梨香「何とかして、事件の原因を突き止めないと……!」



・・・事件の発端。

そこは、街でよく当たると評判の星占い機。

だが、それは宇宙人の罠だった。

その星占い期には、仕掛けが施されていた。

占い機で何かを占うと、謎の光線・あべこべ光線が発射されるのだ。

その時から、その光線を浴びた人は。

本人の性格や性質が真逆になってしまうのだ。



『実験大成功。人間なんて、ちょっといじくればそうやって自らの手で世界を破滅に導く。勤勉も、真面目も、前向きも!すべてが真逆になれば、世界は終わるのだぁぁぁ!!』



その機械を設置したのが、頭脳星人チブル星人。

宇宙一の頭脳を持つこの一族の一人が、地球に挑戦してきたのだ。



『フフフ……。おごれる人間どもよ、今日が世界最後の日だ……!』



そして。

すでに数十人の被害者が出た現状。

チブル星人は、機械の出力を最大にあげた。

すると。



瀬里亜「うわ、なんか来るっす!?」

唯「え?!」

真梨香「い、急いでおじいちゃんのところへ!」



唯の手をつかんだ真梨香は、瀬里亜よりも一足早くテレポート。

だが、瀬里亜は。



瀬里亜「え、あ、ちょ、待って?!」



逃げ遅れた瀬里亜も、あべこべ光線を受けて。



瀬里亜「・・・終わりだぁ!この世の終わりっスぅぅぅぅ!」



前向きガールが、後ろ向きガールへと変貌してしまった。



源五郎の研究室。



源五郎「間に合ったのは、お前たちだけか……。」

真梨香「ここなら、大丈夫だと思ったけど。大丈夫?」

源五郎「ギリギリな。電磁バリアで、敵の光線を遮断している。」


それを聞いて、一安心する二人。

だが、そうも言っていられない。



唯「街の状況は?」

源五郎「・・・町中の人々に、謎の光線が放射させられた。人々は好き勝手に活動し始め、町の機能は停止したも同然だな。」

真梨香「そんな……。」

源五郎「だが、敵がどこからその光線を発射してるかはわかった。そこへ向かってくれ。」

唯「え、でも、外へ出たら。」

源五郎「大丈夫。何とかしてみせる。」



源五郎のメガネが、怪しく光った。



・・・。



唯「とはいうものの……。」

真梨香「これはどうなの?」



唯と真梨香が来ている光線防護服。

それは、確かにあらゆる光線熱戦を防護する服だが。

なんというか、でっかいドラム缶の中に入ったような感じである。

有体に言えば、めっさ動きづらい。



唯「・・・あれだね。」

真梨香「・・・。」



などと言いつつも、二人は事の現況の元へたどり着いた。



真梨香「これ……。」

唯「巷で話題の星占い機……。」



とりあえず、調べてみようと唯が手を出そうとする。

だが、真梨香がそれを止めた。



唯「え?」

真梨香「何かあったら大変だよ。あたしがやるね。」

唯「真梨香ちゃん……。」

真梨香「エクセルチェンジ!」



唯一生き残った友を守るため。

真梨香は防護服の中で変身。

等身大のまま、エクセルガールへと姿を変える。



真梨香「ふんっ!!」



そして、防護服を纏ったまま、とりあえずといった具合にその機械を設置台から無理やり引きはがす。

それと同時に、光線の放射は止まった。



唯「やった!」


真梨香「よし、これを持って帰って、みんなを元に戻す方法を考えよう!」



と言いつつ、真梨香はそのまま機械を持ち上げる。

だが。



『コイツがこの世界の光の戦士か……。生き残っているのは厄介だな。』



そうぼやいたチブル星人が、二人の前に姿をあらわした!



真梨香「お前は?!」

唯「宇宙人?!」

真梨香「唯、下がってて!」

唯「え、ええ……。」



唯のことなど眼中にないかのごとく、チブル星人は真梨香にだけ話しかける。



チブル星人「お初にお目にかかりますな、光の戦士よ。まさか君が正気でいるとは思わなかったよ。」

真梨香「アンタね、町のみんなを滅茶苦茶にしたのは!みんなを元に戻して!」

チブル星人「その必要はない。君もこの星の人間の運命も、今日でおしまいなのだから。」




直後、真梨香の周囲をチブル星人が触手に持っていた銃から放たれる光線が包む!



真梨香「え、何!?」

唯「真梨香ちゃん?!!」



その光線が、ドロドロと真梨香を覆う防護服を溶かしていく!

さらに、真梨香が手に持っていた機械から、再びあべこべ光線が!




真梨香「う、ウソ!やめて!光線、ダメ!!」

チブル星人「たとえ強じんな精神力を持つお前でも、この至近距離であべこべ光線を受ければ、どうなるかな?」



真梨香の頭に、波紋のようなあべこべ光線が染み渡って行く!



唯「真梨香ちゃん!!」

真梨香「うわああああああああああ!!?」



機械をがくんと床に落とし、真梨香はがくんとうなだれた。

それから数秒。



真梨香「・・・。」



目を開いた真梨香の目の前で、チブル星人があざ笑うかのように言った。



チブル星人「今日は世界滅亡の日だ。さぁ、どうする?」



と言いつつ、真梨香に近寄る。

すると。



真梨香「ひっ!?ヤダ、こないで!??」



真梨香が、勢いよく後ろに下がった。



唯「……え?!」

真梨香「やだよ、殺されるよ、こないでぇ!!」



あべこべ光線を受けたせいで。

彼女の漲る闘志が真逆に変換されてしまい、真梨香は泣き虫の臆病者へと変貌してしまったのだ!



真梨香「怪獣恐い!宇宙人恐い!あっち行って!ヤダぁ!!」



弱音を吐きつつ、チブル星人のか細い腕にも真梨香は怯え、無抵抗でいたぶられ始める。

真梨香はそれでも反撃する気もなく、なすがままでチブル星人のいいおもちゃに成り下がってしまった。



チブル星人「ふはははは!さっきまでの威勢はどこへやら!貴様が強ければ強いほど、こうして弱虫に変化できるのだよ!」

真梨香「こ、殺される!助けてぇ!?」



転ばされ、その場にへたり込んだ真梨香は、そのまま泣き出してしまう。

このままでは、真梨香がやられる。



唯「お願い真梨香ちゃん!しっかりして!戦って!!」



唯はたまらず真梨香の元へ駆け寄る。

だが、親友の声すらも今の真梨香には聞こえず。

唯をも突き飛ばして、いやいやと首を振る始末。



チブル星人「いいざまだな、光の戦士よ!ああ情けない。だが、その情けなさが私の手助けになるのだよ。」



チブル星人は、とっととこのうるさい小娘を始末しようと先ほどの銃を向ける。

真梨香はまだ泣き続けており、チブル星人の挙動など気にも留めていない。



唯「―――ダメ!!!」



だが。

その十の引き金が惹かれる刹那。

唯が、真梨香の前に立ちはだかった。



チブル星人「虫けらの分際で、なんのつもりですかな?」

唯「アンタ……絶対許せない!真梨香ちゃんを元に戻して!!」

チブル星人「……うるさい小娘ですね。貴方のようなちっぽけな人間一人殺すことなど、造作もないのですよ。」


銃口を突き付けられながらも、唯は一歩も引かなかった。




唯「真梨香ちゃん、目を覚まして!貴方はこんなことでくじける子じゃないでしょ!!そんな宇宙人の攻撃に負けないで!」

チブル星人「うるさい。消えろ!!」



チブル星人は、弾丸を発射。

唯に、玉が迫る!!



唯「っ!?」



防護スーツが一撃のもと破壊され、唯の胸に飾られたペンダント。

それもチブル星人の弾丸によって吹き飛ばされ、真梨香の元へ。



真梨香「・・・。」



それを見た真梨香の瞳が、ドクンと揺れた。




チブル星人「ちっ、二発もこんな奴に使うだと……。ええい、今度こそ消え失せろ!」



持ったいなさそうな言葉と共に、星人はもう一発、弾丸を発射!

今度は防ぐものも何もない。



唯「私、信じてるから!」



そして、唯を包む大爆発!!



チブル星人「・・・ふぅ。さぁ、地球中のすべての人間をおかしくさせて、地球を我が手、に……!!?」



チブル星人が移動を開始しようとした刹那。

彼の目には。



唯の前に立ちはだかっている、先ほどまで泣きわめいていた戦士の姿が見えた。



チブル星人「・・・?!!」

真梨香「う、ぐっ……!!」



見えただけじゃない。

目の前の小娘が、自分の攻撃を、防いでいた!



チブル星人「ば、バカな!?お前の精神はあべこべになったはず……それなのに!」

真梨香「それが……どうした!」

チブル星人「ひっ?!」



真梨香の言葉の「圧」に、チブル星人の体がたじろぐ。

もう一度泣き虫に変えてやろうと、再びあべこべ光線を慌てて発射する。



真梨香「そんな攻撃で……あたしの『魂』まで、支配されてたまるかぁぁぁ!!!」



真梨香は、唯のペンダントを手に持ち、その光線を。

光線を。

跳ね返した!!



チブル星人「!?」

真梨香「あたしは唯を……みんなを、守るんだあああああああああ!!!」



そう言いつつ。

たじろいだチブル星人目がけ、必殺のネイバスターをぶっ放した!!



チブル星人「ぐぎゃああああ!!????」



猛烈な赤い弾丸を受けた星人は燃え尽き、光線も完全にストップした。



・・・それから。

チブル星人が倒され、人々も元に戻り始め。

街はいつもの活気を取り戻しつつあった。



理沙「ごめんなさい、こんな大変な時に怠け者になっていたなんて……。」

瀬里亜「あたしも、もう少し早く動けてればなー。」

唯「でも、じいさんがあの機械の回路を逆に接続してくれたおかげで、町のみんなは元に戻ったし。」



そんな3人の傍らで。

真梨香は、ぐっすりと眠っていた。



唯「無理やり敵の光線を跳ね返したので、精神が相当摩耗してるみたいです。」

理沙「さすがに今日は、ね。」

瀬里亜「寝かしといてあげるっす。」




・・・地球を狙う侵略者は、後を絶たない。

だが、エクセルガール3人と、そのうちの一人と強い絆で結ばれた友が、必ず悪いヤツを倒してくれるだろう。

これからも頑張ってくれ、正義のヒロイン!



唯「・・・ありがとう。真梨香ちゃん。」



本編へつづく。


Comments

青木林

唯のペンダントが復活を促すだけでなく、逆転勝利のカギになっていたとは。「魂まで支配されてたまるか」、いいですね。名言です