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 囮の由来は招鳥(おきとり)であり、鳥で鳥をおびき寄せる狩りの手法である。鳥は同胞を見て気を許し、狩人の仕掛けた罠へと自ら飛び込んでくる。

 しかし年月が経ち囮は同胞ではなく獲物が求める餌の意味へと変わる。疑似餌。手負いの兎。ケダモノどもが牙を突き立てたくなる美味そうな餌の意へと。

 囮捜査もそうだ。犯罪者どもを逆に騙すための餌として被害者を装う。たやすく食い物にできそうな子羊は、実は狡猾な狩人だったというわけだ。

 

 おれも自らを狩人だと信じ込んでいた。

 馬鹿なケダモノどもを騙して狩る上位者だと自分を過信していた。そこらの男の腰より厚みのある太ももに、鉄パイプでも間違えて入れたのかって思えちまうぐらい逞しい腕。ヘリオドールを加工したような鱗。乳だって尻だってそこらの女より突き出ている。雄を嗜好しているヤツに対して、おれは理想的な囮だった。

 

 おれがあの日覚えこまされたのは、衝動だった。

 どんな男を相手にしたって実感しなかった衝動が身体の奥深くから噴き出してきやがったんだ。それは相手を屈服させたいって雄の欲情じゃなく、隷属をねだる雌の身悶えだ。

 越えてはいけないラインを前にして、おれは目を瞑る。黙る。何もかも拒んで石のように固まろうとした。

 

 その一方で、おれの本性は薄目を開けていた。おれを見下ろすにやけ面を媚びた面で見上げていた。

 ああ、やっぱりだめだ。この手に身体を預けてしまいたい――


***


 プラットホームに特徴的な電子音が流れる。クラシックをアレンジしたであろう特徴的な音律は乗客たちにとってはお馴染みで、そして不愉快なものだった。なにせ、このフレーズは地獄の満員電車へ乗り込む合図なのだから。

 梅雨の開けたばかりのホームは空調が無意味なほどの熱風が頬を撫でており、列車に入れば入ったで待っているのは蒸し風呂のような湿潤した空気。

 帰宅途中のサラリーマンや学生でごった返し、ロングシートに乗っている客は男も女も関係なく脚を閉ざし両肩をぶつけあって舌打ちを鳴らす。身体のどこかに見知らぬ誰かの体温と湿り気を感じながら、仏頂面を浮かべてアコーディオンとなっている。

 この地域では獣人が多いからか、サラリーマンたち夏用の薄いスラックスとシャツからきつい獣臭を醸し出し、部活帰りの学生たちは筋肉でこれでもかと膨らんだ肉体から思春期にしか出せないドロリとした汗の匂いをくゆらせていた。

 

 男女比のバランスは大きく偏っている。ライオンの群れに囲まれたガゼルよろしく女生徒やOLたちは固まって周囲を警戒していた。このような満員電車の中では女の敵、いわゆる痴漢が付き物だ。周囲を警戒するのも当然といえば当然で緊張感を放っていた。。

 しかし、この車両で緊張感を放っているのは女性だけではない。むさ苦しい男たちの中でも特に際立った体躯を持つものたち。筋トレで鍛えた大胸筋を揺する鮫や、ジャージが弾け飛びそうな特大の大臀筋を持つ虎も周囲をきょろきょろと見回している。それは捕食者ではなく食われるべき草食獣に似た顔つきだった。

 

「わーっ!待て待てぇ!」


 そして、電子音のクラシックが鳴りやんでドアがシリンダー音とともに閉じようとした時、むりやり割り込んできた者がいた。

 外の熱気と隔離され、サウナ内でのおしくらまんじゅうを覚悟していた乗客たちから舌打ちとため息がこぼれる。この馬鹿のせいで不快なすし詰め地獄が数秒長引いたじゃないか、と恨みがましい視線を向けた。

 

「ふはー、良かったぁ。遅刻しちゃうところだった!」


 しかし、人混みをかきわけて車内を進む姿を見て男どもは恨みの視線をあっさりと変える。

 乗り込んできた男は若々しいシャチだった。深海の闇をそのまま切り取って来たような黒と、ほんのりと桃色を帯びた白で作られた表皮のコントラスト。獣人が持つ鱗は宝石に例えられがちであるが、このシャチは黒曜石と白磁という二つの石材によって形作られていた。芸術とも言える輝きを放つ肌につぶらな瞳と大きく開いた口が付いているのが可愛らしさを加味していた。

 

 恰好もすさまじかった。豹柄のへそ出しタンクトップに、太ももどころか大臀筋まではみ出してしまいそうなホットパンツ。その上に汗染みが浮かぶシャツを羽織り、ゴテゴテしたロングブーツを合わせている。さらにはシルバーのアクセサリを首や手足にぶら下げていて、つるつるした頭にサングラスを乗っけている。脇腹も、鎖骨も、太ももまでも剥き出しの姿はこのままビーチに繰り出せそうだった。

 

「おい、すっげぇなアレ……」


 ロングシートに腰掛けていたサラリーマンが同僚に囁きかけた。鼻の下を伸ばした男が見つめるのはこれでもかと突き出した筋肉たちだ。腕は隆起した筋肉でぼこぼこと膨らんで、こぶりのスイカを接合して作ったかのようだった。胸元に張り付いたタンクトップは引き伸ばされ谷間を際立たせている。呼吸をするとふいごのように爆乳が膨張した。腹筋が整然と並んだ腹もふとましいのだが、乳と臀部がでかすぎるせいでくびれてさえ思える。腕に劣らず太い両脚はしまりのある充実感を漏れだたせていた。

 

 少しでも雄を嗜好していれば股座をいきり勃たせぜずにはいられないグラマラスなシャチが、恥知らずに身体を見せつけて歩いているのだ。車内の注目を浴びるのも当然というもの。他の男たちが露出の少ない装いをしているのもあって、過剰に男たちの興奮を誘った。

 シャチはそんな視線も慣れたものなのか、でかい尻を揺らしつつ人混みをかきわけてはドアの前へと陣取った。終点までは開かないドアの側で、人と触れ合う面積も少ないため人気のスポットだが奇妙にもスペースが開けていた。

 

「これならデートに間に合うなぁ。ユッコ、今日はたっぷり啼かせてやるぞー」


 べろり、と口周りを舐め回して彼女の肢体を思い浮かべる。久しぶりのデートで、明日は休日だ。ホテルでたっぷりと『お楽しみ』をする腹積もりだった。自慢の巨根がスリット内部で硬くなって、なだめすかすのも一苦労。代わりに尾びれを床へと打ちつけてリズムを刻んでいた。このシャチに近づけば雄の匂いがぷんときつくなったのに気付くだろう。

 

「……あの兄ちゃん、不用心すぎないか?」


 シャチがスマホを眺めていると、人垣の向こうからそんな囁きが聞こえてくる。

 

「知らねえのかな?この時間は『沼男』が出るやばい時間帯だって」

「知らないはずないだろ。ニュースにだってなったんだから」


 沼男?とシャチは意識を囁き声へと向けてみる。恐ろしいものを見るようにこちらを見ているのは運動部らしき高校生たちだった。

 

「この前もさ、ボディビルダーが痴漢されちまったんだってさ」

「知ってる。おれの友達も同じ車両にいたって。あれ、レイプされたみたいに酷い姿でさ」

「ケーサツも捜査してるのにさ、顔もまだ分からないんだってよ。本当にヨーカイかなんかじゃないかってみんな言ってる」


 なんだ、くだらない噂話かとシャチは再びスマホへと視線を戻した。痴漢をする妖怪なんて馬鹿馬鹿しいが、学生の間で流行っているのだろうか。

 

「……ま、おれを痴漢できるモンならしてみろってんだ」


 誰に聞かせるでもなしに呟いて、片腕で力こぶを作ってみせる。血管が幾筋にも絡みついた腕は、蔦が這う柱のように太く逞しい。力を込めれば丘がいくつもできていた腕に巨大な山脈が現れる。赤子の頭ほどはあろうかという筋肉の山はシャチの屈強さを象徴していた。

 

「大体、男のくせに痴漢なんかされてんじゃねえっつーの」


 ふん、と鼻を鳴らしトークアプリで彼女へのメッセージを打ち込んでいく。

 シャチからすれば、痴漢をする変態よりも情けなくも辱められる男の方が軽蔑の対象だった。変態なんて声の一つでも上げれば逃げていく。そもそも、自分ならば痴漢してきた手を握り潰して止めてやる。か弱い女子どもじゃあるまいし、レイプ紛いの痴漢なんてされる方が理解できなかった。

 その間も、学生たちの囁き声が嫌でも耳に入って来る。

 

「でさ『沼男』に置換されたら服を全部取られて丸裸にされるんだってさ。ローターとかバイブとか使われてめちゃくちゃにされるんだって」

「しかも、周囲の人に気付かれないんだよな。痴漢が終わって『沼男』が消えてからようやくみんな気付くんだよ」


 学生たちはそのあとも非現実的な痴漢についての噂話を続けた。やれ、電車の壁から手が襲い掛かってくる。やれ、いつの間にか周囲を囲まれて嬲りものにされている。やれ、顔を見たはずなのに思い出せない。などなど。

 人の手では不可能な痴漢方法と、鉄道や警察が対策をしても一向に犯行は止まらないことから噂はエスカレートして都市伝説『沼男』と名を奉られるまでになったらしい。

 

「馬鹿じゃねえの。ンなこと話してる暇あったら彼女でも作れよ、バカガキども」


 間抜けなガキどもめと見下してスマホを弄んでいると、不意に背中に電車の壁面とは違う感触がした。ぴたりとドアに背を付けていなかったか?と疑問に思う暇も無く生暖かい息が首筋にかかった。

 

(なんだ?コイツ……まさか本当に痴漢野郎か?)


 不自然なまでに密着しているが確信できなかった。自分をターゲットにする変態なんているとは思えなかったし、視線を後ろに向けて見た男はとても痴漢行為という下衆を働くようには見えなかったからだ。

 デパートで吊るし売りをされていそうな安っぽいスーツの上下にストライプのネクタイ。つり革を掴む手には無個性な腕時計。やたらとてかっている革靴をはいて片手には新聞を持って顔を隠している。顔は見えないが、手の鱗や新聞紙からはみ出した角から竜人種だと推測できた。

 

 加えて、その体躯も特徴的だった。肉体自慢のシャチに見劣りしない巨漢であり、その筋肉でスーツが引きちぎれてしまいそうだ。生地の上からでも筋肉のラインが丸分かりの膨らんだ身体つき。

 外見で人を判断するのは愚かだが、シャチの短絡的な判断基準では鍛えている男は原則として正しく、堂々としているものだった。

 痴漢とも断じることができず、シャチはとりあえずスーツの男を『ビルダー』と呼称することにした。体型でしかものを見られない筋肉馬鹿らしい呼称だ。

 

(まだ、なんにもしてこねえけど……)


 背中で大胸筋の感触と熱を感じる程度で、男は何もしてこない。黙って新聞を見るだけで、シャチに視線を向けすらしない。やはりこんな偉丈夫が痴漢などと下劣な行為に手を染めるわけがない。馬鹿な噂話で過剰に気にしただけに違いない――そう、結論づけようとしたその時だった。

 

 カーブに差し掛かり、車内が軽く傾いたその瞬間。つり革のバンドがあちこちで軋む最中に、男が動いた。

 

「――――ッ!」


 悲鳴を上げるのを寸前で堪えた。

 ビルダーのごつく太い右手が、腰骨のあたりを這ったかと思うと撫でまわしつつ降りていき、ホットパンツの後ろポケットを包み込んでくる。あまりにも尻肉がでかすぎてポケットが小さく思えてしまう臀部が、ぐっと掴み上げられた。

 尻を撫で回されるなどという未経験の不快感にシャチが硬直すると、手は気を良くしたのか硬くなった尻肉をほぐすように揉んでくる。

 

(や、野郎!調子コキやがって!その指ヘシ折ってや――ぇ❤)


 思考がかき回された。敵意と怒りで満ちていたはずの脳みそに全くちがう感情が流れ込んで来る。ホットパンツ越しに揉まれてくる感覚が脳みそまでダイレクトに伝わって、全神経を綻ばせる。

 それは質こそ違えどシャチが良く知る感情。彼女を抱いた時、自慰の時に感じるあの感情。快楽と呼ばれるものが、尻肉から脳に向かって叩き付けられていた。

 

(あっ❤んぁ❤❤な、なんだこれぇ❤変だ、こいつっ❤」


 尻肉に指が食い込むと膝が笑ってしまう。尻がちんぽ以上の性感帯になってしまったかのようで、腰が自然とくねる。尻から内部にまで心地よさが拡がっていく。肛門がきゅっ、きゅっと指の動きに合わせて収縮していた。

 おかしい、そう思う暇も与えられず更にもう二本の腕が追加されていた。タンクトップが張り付く胸を鷲掴み、もう片方を股間に滑り込ませてくる。

 

 ビキニが三角州を形作る股間と不埒な大胸筋を撫でられ、揉まれ、そのどちらからも淫靡な刺激が生まれ腰が暴れ出す。

 だが、こうも横暴に自分の身体を弄ばれて黙っていられるはずがない。シャチは牙を剥き出しにすると、背後のビルダー野郎の顔を睨みつける。

 

「こっ!この、野郎ぅ❤❤いい加減にしやが――え?」


 首だけを振り向かせて、シャチは絶句した。ビルダーは相変わらず新聞紙を読みふけり、もう片方の手ではつり革を掴んでいる。その間もシャチの局部を愛撫しながら。

 

「な、なんでえぇっ❤❤おっ❤んぉおぉ❤❤この腕っ❤誰のぉ❤❤」


 自分のスリットをビキニの上から押し込んで来る指先は誰のものだ。やたらと柔らかいくせに、荒々しく大胸筋を揉んでくる手は誰のものだ。でかすぎる尻を包み込む、このイヤミったらしい手は何者だ。そもそも、この三本目の手は何処から生えてきたのだ。

 

 混乱した脳みその代わりに脊髄が動く。自分を凌辱するこのビルダーを打ちのめそうとエルボーを食らわせようとした――その時だった。

 

「なっ!?」


 鉄筋コンクリートでも仕込まれていそうな両腕が、またしても背後から掴まれた。胸や乳を揉む手と同じく広く逞しい手が剛腕を固定している。両肘両手首を固定した追加四本の手は両腕を掌握し、首の後ろまで引き上げてしまう。

 両手首を交差させ、肘を折りたたまれ、くぼみができた腋を露わにさらす形で拘束されてしまった。さらに二本の腕が現れて、腕の付け根までも固定してしまう。

  

「こ、こんなっ!こんなことあるわけねぇ!誰か!痴漢だ!誰か助けてくれっ!」


 異常事態を脳が拒否して、シャチは周囲へと助けを叫んだ。男としての意地も、蜘蛛の脚を超える手が現れた理由も頭には無かった。すぐにでも、後ろのビルダーから逃れられればそれで良かった。

 

「聞いてんのか!痴漢だ!おれのケツを揉んで、こいつっ!早く助けてくれよ!」


 レール音の境目を狙って叫ぶが、周囲は何の関心も示さない。発達した肺活量を活用して声を張り上げても、周囲のサラリーマンは無反応。スマホをいじる若々しい茶髪も、白髪混じりで文庫本を読みふける男も、視線を向けすらしない。

 明らかにおかしい。都会の無関心、なんて言葉はあるが痴漢ビルダーはあからさまに乳や尻に手を伸ばしている。反応すらしないなど、あるわけがない。

 

「無駄ですよ、あなたの声は遮断させてもらいました」


 それまで沈黙を守っていたビルダーの声――ではなく、思考とも呼べるものが指先を通じて乳や尻から伝播してくる。それは、声色以上に不快さと粘っこいいやらしさを脳みそへと絡みつかせてくる。

 

「私とあなただけはこうして思考でやりとりができるのでご心配なく……。ただ、あなたが精液でも漏らせば匂いは伝わりますし、発情すれば熱は伝わります。ご安心ください」


 非現実的な説明にシャチが絶句していると、手たちは粘着質な愛撫を続行した。滑らかな皮膚を這いまわる数多の手のうち、一本がタンクツトップの中へと潜り、大胸筋をつかんでかきだし、タンクトップから飛び出させてきた。

 布地に押し込まれていた乳肉はぶるんっ!と大きく跳ねては汗を飛ばし、塗れてかる雪よりも白い体表はクーラーの冷気を直で浴びせかけられる。

 

「ぅうぅあぁぁ❤❤❤な、んでぇ❤❤」


 何故自分がこんな目に合うのか。何故後ろの男はこんな怪現象を引き起こせるのか。何故クーラーの冷風を浴びただけで乳肉が痺れるほど気持ちいいのか。

 女を抱くことと筋トレにしか使われない思考回路では正解に辿り着けず、嘲笑うようにもう一本の手が這う。今度はタンクトップの右裾を持ち上げて、片乳を弾け出させてきた。

 

 楕円形の乳肉に布地が食い込んで、でかすぎて乳首が下を向いている爆乳が形をほんの少し歪める。胸の谷間を斜めに横切る形で脱がされて、どちらの乳も車内の灯りで照らされる。

 

「や、やめろおおぉっ!離せっ!離せぇえぇ❤んっはあぁああ❤❤❤」


 暴れ出そうとした瞬間、またもや腕が伸びてきて剥き出しにされた雄乳をすくいあげ、乳搾りをする農家よろしい指づかいで揉み上げてきた。

 

「ぐっひぃいいぃ❤だめだっ❤❤おれの胸は、んあぁあ❤」


 五指がゆっくりと弧を描き、雄胸の中身を二つに分けてくる。身体から中身が搾り出されていく実感とともに、胸から喜悦がほとばしってきた。蜂蜜のように甘く粘着質なそれは、胸の付け根から腋窩へ抜けていくうちに、皮膚を下をかきむしっていった。

 腋を舐められているようなこそばゆさが腋から背筋や首筋に伝播して筋肉を痙攣させる。指が再び真っすぐに伸びたかと思うと、今度は小指から順に曲がりを強める。先ほどと同じ、いや、より強力になった染色が乳首にもせりあがってきて、ぷっくり膨れた乳輪を内側から盛り上げた。

 

「嘘だあぁあぁ❤❤こんな❤揉まれてるだけでぇ❤」


 現実を受け入れられなかった。乳を緩慢に捏ねられているだけなのに、乳肉が震え出すほどのもどかしさに襲われている。肛門がひくひくと痙攣を繰り返し、足腰がどうしようもなく震えていた。あっという間にスリット内部のちんぽが硬度を増して、腋のくぼみに汗が溜まった。

 

「ふふ、随分と感じやすいのですね。男相手でも構わないクチですか?」

「んなワケぇぇ❤ねえ゛だろぉお゛ッ❤❤❤んひぃいぃ❤」


 ビルダーの五指が揉みこみを活発にし、乳肉の深くにまで指を食い込ませてきた。シャチの隆起した背中がのけぞって、ビルダーの胸板へ預けられる。雄々しい首筋に血管が浮かび上がり、牙の隙間から唾液が垂れる。

 シャチの虚勢をくつくつと喉で嘲りながら、乳をすくいあげていた人差し指が這い、乳首をピンッと弾く。

 尚も虚勢をあげようとしたシャチだが顎をがくんと跳ね上げて、巨乳を突き出してしまう。ビルダーの太い指は器用に這って、でかい乳首をリズミカルに弾き続ける。

 

「おっ❤んお゛ぉ❤❤あ゛っ❤おぉんっ❤❤」


 乳首を弾かれるたびに舌が震えてもつれる。シャチの巨体からすれば取るに足らない肉の芽が全身を支配していた。鼻の穴が拡がって、視界がぼやけてくる。膝が笑って立っていられなかった。

 

「乳首が弱いんですね。開発する趣味がおありで?」


 新聞紙を降ろして顔を覗き込んでくる竜は、なんとも無個性な顔だった。どこにでもいそうで、どこかで見たことがあるようで。それでいて次の瞬間には忘れてしまいそうだった。

 しかしその愛撫は激しく、脳みそに快楽を刻みつける。親指と人差し指の共同作業で乳首を摘まんで、シャチが恋人相手にするよりも巧みな力加減で乳首をつねりあげてくる。こめかみから脳みそがじんじんと痺れだす。

 

 愛くるしいピンク色の乳首がマシュマロみたいにひねられた。乳首の根本ごと、倒すようにねじられて息が詰まりそうだ。快楽を休みなく注がれて理性が窒息しそうだった。

 

「ひぃいいぃ❤❤も、もう乳首やめ゛ろぉ❤❤❤お゛ぉお゛っ!?んっはあぁあぁ❤❤」

「乳首以外もご所望ですか。意外に淫乱なのですね」


 手が乳首以外も責め立ててくる。汗を滴らせている腋窩で指先が踊り出す。不快なだけの愛撫が大胸筋の搾りと乳首の捻りによって生まれた快楽と合わさって、さらに脳みそを狂わせる。でかい尻肉は暴れ回って交尾をせがんでいるかのようだった。

 すると、両手が馬鹿な犬を躾けるように顎を掴んで、尻肉を打ち据える。その痛みや苦しさすらも快楽へと変わる。

 

「お゛ぉおおぉーーっ❤❤おおぉおあおん❤❤❤」

「おや、股間が少しばかり膨らんでいますが……まさか、こうして乳首をつねられて勃起をされてしまうのですか?度し難いですね」


 雄胸を捏ねていた手は乳首専属になり、新しい捏ね潰し役が追加された。乳肉を鷲掴みにして持ち上げて、荒々しく揉み潰してきた。乳首と乳肉それぞれを、好き勝手に弄ばれる。

 

「胸ぇ❤❤おりぇの胸がっ❤こんな女みたいに゛いぃ❤❤」


 愛らしい肉食の顔が、舌をはみ出させた淫獣のそれへと変わる。助けを乞うように叫ぶ顔には常日頃の勇ましさやプライドの高さなど微塵もなく、黒光りする体表を汗と涎と鼻水で艶めかせる。

 誰かこの異常事態に気付いてくれと尾びれを悶えさせるが、大きく暴れることができないように掴まれる。そればかりか尾びれの根本を押し込まれ、先端までつぅと撫でられる愛撫を追加される。ホットパンツの股間部分はすっかりテントをはって、いやらしいシミを作っていた。

 

「さて、そろそろ次の駅ですね……軽くイっておきますか」

「んぉお゛ッ❤❤❤お゛っひいぃいぃ~~❤❤」


 車内のアナウンスが駅の到着を告げるのに合わせて、指の力が更に強くなった。万力で締め上げるように乳首を強く抓まれて、弾性のテストでもしているかのように変形させられる。激痛を伴う愛撫だが、シャチは痛み全てを快楽に変換したかのように脳を焦がされる。

 加えて、全身の腕が絶妙なタッチでまさぐり始めた。腋窩やへその穴を指先で擦られて、耳の穴に指を突っ込まれる。でかい尻を小気味よい音で叩き、胸肉を捏ねる手は一片の優しさも感じられなくなる。

 

「おごおぉお゛ぉおおぉ❤❤❤ごれ、やっべえ゛えぇえぇ❤❤」


 唯一固定されていない腰がオナホを使うように前後した。自慢のちんぽは完全に勃起した状態で突き出され、ビキニとホットパンツを突き抜けて濃い先走りを飛ばす。

 シャチにとっては恐ろしく長い時間に感じられた愛撫あ、駅停車を告げるアナウンスと同時に終わりを告げた。竜の口が耳元で「ほら、イきなさい」と息をふきかけて、それが合図になった。

 

「~~~~~~っ❤❤❤❤」

 

 耳孔を撫でる吐息に脳が跳ね踊り、金玉が限界を迎える。腰が突き上げられたまま全身が硬直し、テントのシミが拡がった。

 汗の匂いに加味された性の匂いは電車内に充満するが、幸か不幸か周囲の人間は何も反応しない。ただ、車内で絶頂したという事実を匂いによってシャチ当人に知らしめる。

 

「はーっ❤はあぁぁ……❤❤」


 絶頂の余韻が強すぎるのか、シャチはちんぽを突き出したまま動けずにいた。性豪であり、恋人を相手にすれば二発や三発種付けした程度では満足できない男だが、乳首による絶頂はこれまでとは質が違っていた。脳みその使ったことのない部分をいきなり使われたようで、処理落ちを起こしてしまっている。

 

 シャチの頭を再開させのは不愉快な電子音によるクラシック。発射の合図で再び現実を見据えるが、電子音は腕による凌辱を再開する合図でもあった。

 

「止めでっ❤降りるぅ❤❤おれ、降りるがらぁぁあぁ❤やめ゛でぐでえぇ❤」


 でかい乳と可愛い乳首を弄るのはそのままに、悪辣な腕たちは下半身の衣服を剥ぎ取り始める。ホットパンツのホックが外されてファスナーが下ろされた。ムチムチな下半身を隠していた布が落ちて、煽情的な豹柄ビキニが露わになる。

 高貴な黒をしていた体表に下品とも言える豹柄ビキニは良く映えて、腕たちは歓喜したように股間へ手を伸ばす。既にスリットをはみだしたちんぽを撫で回し、蜜を漏らすスリットをビキニごと擦る。

 

「ひ、ぃいいぃ❤❤❤」


 思わず内股になり腰を引いたところを狙ってホットパンツを引き降ろされる。身体を隠す役割を放棄したホットパンツは未練がましく足首に引っかかりいやらしさを誇張した。

 そして、すぐさま伸びてくる腕たちが下半身も雄胸同様に辱め始める。数えきれないほどの腕が腰、尻、太もも、尻尾に絡みつく。ビキニが谷間に食い込む尻を鷲掴みにし、片方はパン生地のように捏ね潰し、もう片方は真っ赤になるまでスパンキングを繰り返す。丸々として、巨大な黒真珠のようだった尻は哀れな性具と成り果てて震えるのみ。

 

「良い尻をしていますね。男を誘えば相手に不自由しないでしょう。何人ぐうらいお相手されました?」

「だ、誰が男なんぞとおぉお゛おぉおっ❤❤❤あっ❤しょこやめろおぉ❤❤」

「では私が初の相手となるわけですか。恐悦至極です」


 ビルダーは耳元で悪意のこもった囁きを吐いて、腕の動きを淫ら極まりないものへと変えてくる。内腿に潜り込んだ腕は特に凶悪で、純黒の下半身に浮かんだ豹柄を手のひらで包み込む。加えてビキニが食い込んでいるスリットを弄る腕は凶悪で、既に汁塗れのスリットを絶妙な力加減でくすぐり、太ももにまで汁を垂れさせていた。

 

「はひぃいぃ❤んあぁあぁ❤❤」


 指というよりも触手に近いうねり具合を見せる指がくちゅくちゅといやらしい音を奏で始めていた。電車内の喧噪ですら誤魔化せない下品な水音でシャチの羞恥心は加速する。

 ちんぽが飛び出たスリットの肉溝が爪先で擦られる。内股になろうとする脚を抑えられて逃げられない。下半身に熱が伝播して蝋細工のように溶けそうだ。

 腰の付け根のあたりで粘っこく熱いものが流れている。尻に流れ込んだそれは捏ね潰す愛撫とスパンキングで加工され、どうしようもない疼きへと生まれ変わっていく。

 

「いけませんね。まだ前戯だというのにそのざまでは。もう少し頑張りなさい」


 叱りつけてから、ビキニの両サイドを思い切り引っ張り上げられた。

 

「ひぎぃい゛ぃいいぃいぃ❤❤❤」


 伸縮性の高いビキニが伸ばされて、綺麗なVの字が描かれた。愛液で濡れていた部分がスリットの部分に食い込んで、充血した雌肉を刺激する。と、同時に肛門にも布地が擦りつけられて指とは違い快感を生みだした。

 壊れかけの理性に決定的なヒビを走らせると、指先たちが綱引きでもするようにビキニを前後にずりずりと引っ張り始めた。

 

「お゛う゛ぅうぅ❤❤こずれるぅう❤ケッ❤ケツに食い込んじまうぅうぅ❤❤❤」


 二つの孔から染み出した体液でビキニがしとどに濡れるまで擦られ、腰の裏が金属的に軋みだし始める。ちんぽからも汁が噴き出てビキニが使い物にならなくなってから、ビキニをひきずり降ろされた。

 

「あ゛ぁ~~っ❤❤❤」


 ベチンと音を立て、ビキニにひっかかっていたちんぽが腹筋にぶち当たる。使い込まれて淫水焼けしたちんぽは汁まみれ。肥えた尻肉は揉まれて叩かれて手の痕が残り、スリットから染み出した汁で太ももには川ができて。まともな男ならば決して見せてはいけない痴態を、帰宅ラッシュの車内で陳列している。

 

「あ、うぅうああぁあ❤❤❤」


 歯がガチガチと噛み合わされた。

 夏の車内独特の汗臭い空気は紛れもなく本物で、車窓からはオフィスビルの灯りが見える。車掌の間延びしたアナウンス。車両上部にある怪しげな広告。

 どれも紛れもない現実で、自分だけが非現実的な存在に思えた。全ては嘘で、夢で、妄想で、今頃自分は恋人とベッドの中にいるんじゃないか。

 

 そんな妄想に縋ることすらも許されなかった。ビルダーの左手が丸尻の谷間に潜り込んだかと思うと、肛門にまで侵入してきたのだ。

 

「ぎひぃい゛いぃいぃ❤❤❤」


 未経験の感覚に妄想からたたき起こされる。いじったことすらない尻の穴から立ち昇ってくる肉の味は、乳首への愛撫と同じく快楽だけをもたらした。同時に尻肉の捏ね回しも再開されて、シャチの尻を性器へと生まれ変わらせる再開発がスタートする。

 

「お゛おぉ❤❤ん゛ひぃ❤」


 ビルダーの指は、下手をすればそこらのちんぽよりも太いものだった。そんなものを慣らしませずに突っ込まれ、シャチマンコの神経は無理やりに覚醒させられる。

 ファーストコンタクトで指と肛門の上下関係を決定づけた後は、いたわるような粘膜ほじりで指の腹を滑らせる。処女穴を甘やかしつつ、シャチが特に反応してしまう弱所は入念に押し込んで、ぷっくりと膨れた前立腺を爪弾き、優しく、残酷に、強く鋭く、弱く緩やかに。雄を狂わせる悪魔的なコントラストを尻の穴に刻みつけてくる。

 触れただけで快楽を生む超常的な力を別にしても耐えられない、卓越した指運び。


「おっほぉおぉおぉ❤❤グチョグチョじてるぅううぅ❤おりぇのケツ穴ぁ❤❤❤指マンされでぇえ❤❤う゛ぅうおおぉおぉ❤❤❤」


 ものの数秒で尻穴からは愛液が染み出して、シャチは喘ぎ散らすだけの淫獣へと成り下がる。尻穴を指でめりめりと押し広げられるたびに、脳みそにまで指を突っ込まれいる錯覚に陥る。

 尻穴がマンコへと作り変えられていく最中で脳が壊れたのか、太ももの付け根に生々しい痺れが走った。中指が膨れた前立腺を押し込んだ時には、思わず踵を浮かせていた。

 

「おや、もうイってしまいますか。本当に情けないマンコをお持ちだ」

「ごぉお゛ぉおおおぉおぉ❤❤❤ぞご、だめだっ❤❤があ゛あああぁ❤❤❤」

 

 ビルダーが喉を鳴らし、前立腺を押し込んだまま、指の第一関節だけをお辞儀させてくる。既に快楽器官として目覚めた雄マンコ、その弱所をピンポイントで抉られて、シャチちんぽが何度も腹筋にぶち当たる。

 喉が裂けそうな雄たけびをあげて、汗粒が浮かぶ尻たぶを震撼させる。男らしさの象徴だった尻肉はその全てをマンコを締め付けるためだくに稼働して、蕩けた雌肉が愛液が搾り出され、内ももを伝い落ちていった。

 

「ぅう゛ぉおおぉ❤❤やべえ゛ぇえ❤尻❤❤おれの尻マンコにざれぢまうよ゛おぉ❤」

「もうなっていそうですがね。もう少し根性があると思ったのですが……頑張ってくださいよ。そんな醜態を彼女に知られても良いのですか?」

「は、ぐぁあ❤❤かのじょ、そうだ……❤おれには、ユッコがぁ」


 尻穴をほじられる悦楽に沈んでいた理性がわずかに浮上する。それは恋人への愛情か、女を抱く時だけに得られる雄の悦びを思い出したが故か。どちらにせよ、雌豚へと堕していた顔に誇りと知性が再び戻り、手を引き剥がそうと筋肉が再び盛り上がる。

 

「ぐぞおおっ!離せ!離しやがれ!離さねえと殺してやるぞ!」

「良いですねぇ。頑張って貰えると私もやりがいがあります。少しだけ激しくしますので、狂わないでくださいね?」


 愉悦に満ちた賞賛を投げかけて、腕がシャチの股間へと群がって来る。尻穴ほじりと尻肉の揉み込みが少しだけ緩やかになったせいで、否応なしに股間の手を意識させられる。

 侵略者たちはちんぽが飛び差すスリット周囲、股間のデルタ地帯を撫で回し、スリット内部にも指を幾本か浅く差し込んで、つばぜり合いを繰り広げる。


「ぐひぃい゛ぃいぃ❤離ぜホモ野郎❤❤ぎ、ぎもぢわりぃんだよぉ❤」

「その調子です。私のような変態にこれ以上イかされませんよね?ほら、耳を舐めても平気ですよね」

「んぉぉおぉ❤❤❤おぉっほぉおぉん❤」


 スリットマンコに意識を集中していたせいで、顔への不意打ちを察知できなかった。竜の長い顔が頬ずりをして、耳の穴に舌を差し込んできたのだ。ぐちゅりと鳴る唾液の音と、吹きかけられる吐息とが、気合を入れなおしたはずの背筋をよじらせ、肌を粟立たせる。

 その隙間を縫ってマンコへと指が滑り込んできて、ちんぽを収納するための穴に指を這いまわらせてくる。中指と人差し指で、肛門とは別ベクトルで敏感な秘所を抉られる。


「ス、スリットぉおぉ❤ちがうぅ❤❤そこ、指なんで突っ込む゛な゛ああぁあぁ❤❤❤おっ❤おおぅ❤❤あひぃいぃぃぃ❤」


 決意の鎧は指を差し込まれるだけで砕けてしまった。スリットをかきまわす指先は肛門の侵略者よりも荒々しく、鉤爪が柔肉をがりがりと引っかきまわされる。指が抜け出るたびにスリットの入り口がめくり上げられて、切なさと快楽をないまぜにした疼きがほとばしる。肛門も、乳や尻を弄る腕もロクに動いていないのにスリットだけで追い込まれていた。

 

「いかがですか?スリットを使ったことのない雌は多いんですよねぇ。ケツマンコの劣らない性器なんですが……ほら、ここが弱いでしょう」

「お゛ぉおおぉおぉおぉんっ❤❤❤」


 入り口の浅い部分、血管の浮き出た肉の薄い箇所、ちんぽの根本の神経が集中した弱点。スリットマンコの特に感じてしまうイイトコロを、長年連れ添った恋人の性器を相手しているように暴き出してくる。シャチにとってはちんぽをしまうだけの場所で、性器として見たこともない肉の割れ目が指先一つでマンコに変わる。

 

「あ゛あぁあぁ❤❤❤しゅげぇ❤おで、おでのスリットがあぁあぁ❤❤」

 

 弱点を抉るばかりか、もっとも感じやすいリズムはどれかと責め方を変えてくる。シャチマンコからは女性器顔負けに汁が漏れ出していた。指を締め付け、ぬるついて指に抱きついてすがる。

 侵入されて一分と経たずにスリットからの快楽に酔い、つばを垂らしてよがり狂う巨漢の雄。恋人にも聞かせたことのない間抜けた声を出し、スリットマンコに全ての神経が集中する。

 

「もちろん、ここも弱いですよね。あなたの子宮口です」

 

 そして、その不意をついてまたもや肛門の指が伸びた。人ではありえないほどに伸びた人差し指が直腸の奥へと潜り込み、結腸の入り口まで到達した。結腸の境目にある弁を、小鳥でも愛でるようになぞり回してくる。

 

「な、なにごれええ゛えぇえぇ❤❤❤指❤ゆびがぁ❤❤だめなどご、届いでるぅう゛ぅうぅ❤❤❤やめでぐれぇえぇ❤❤」


 自分の内臓奥深くまで嬲られている恐怖、直腸を抉られるのとも違う倒錯的な快楽が結腸内部にまで反響して、雌の本能を呼び起こす。スリットマンコの腕が入り口の肉をつまみあげると、快感が連鎖して汁が噴き上がる。シャチの下半身は汁に濡れていない箇所を探すのが困難になっていた。

 

「む゛りぃい❤❤ごんなのおぉおおぉ❤❤❤ケツっ❤マンコぉおぉ❤❤マンコ❤マンコ❤マンコにざれるうぅうぅ❤❤❤」


 硬くしまった結腸の入り口を指先で突き回される。指が追加され、浅く出し入れしては肛門口を刺激したりと、二つの入り口を弄ばれる。無論乳や尻の責め立ても再開されて、全身を雌の肉へと改造される。

 男としての意地は崩壊し、シャチは顎を振り上げ天井に向かって音にならない嬌声を叩き付ける。口からこぼれた唾液を腕がすくいあげ、化粧のように顔面へと塗りたくり黒い相貌が光沢を増した。

 

「お゛ぉおぉおぉーー❤❤❤んぉおおぉおぉお❤❤あひぃいぃいいぃぃぃん❤❤❤」

「おや……恋人のために頑張るのではなかったのですか?腕だけでこのざまとは。私がお相手した中でも下の下の脆弱なマンコですね」


 侮蔑の言葉に反論する知性すら残っていなかった。車内の雑踏。レールの音。次の駅への到来を告げるアナウンスが頭に響いて、何も分からなかった。ただ、マンコに感じる指の硬さだけが現実だった。

 

「期待外れですし、そろそろ終わりにしましょうか。駅に着いたらイきなさい。いいですね?イく、イくと大声でわめいて射精するんですよ」

「は、はひぃいい゛ぃいぃぃいぃぃ❤❤❤」


 当然の権利であると命令して、腕の数が増えた。汗でぬるつく丸尻を持ち上げて、肉の詰まり具合を堪能するように揺すり立てる。腑抜けて柔らかくなった大胸筋を捏ねて、乳首を指先で押しつぶす。開いた口に舌先を滑り込ませ、尖った牙を舐め回す。

 

 身体の快楽点すべてを把握されていた。全身が蕩けて何も分からなかった。腕っぷしが自慢の大男は子どもみたいに泣きわめいて、ただ射精を堪えるばかりだった。快楽が自分のすべてを支配するならば、快楽をもたらすビルダーの命令に抗えないのが道理だ。

 

「無理っ❤もう無理いぃいぃいぃ❤❤❤いく❤いきたい❤❤いがぜでえぇえぇ❤❤❤」


 電車の速度が緩やかになるにつれて、腰の速度が増していく。精液をぶちまけたいとちんぽがしゃくりをあげて、精巣が発射準備を整えている。

 あと少し、あと少しで到着する。射精できる。窓に目を向ければホームで待つ客の顔が視認できるほどになる。

 

 もう頭の中は快楽と射精でいっぱいで、自分が置かれている状況も誰の命令で何のためにこの電車に乗ったのかもどうでも良かった。ただ、腰をへこへこ振るばかり。

 

「いくいくいくっ❤❤しゃせいいぃぃい❤もうイきそうぅうぅーー❤❤❤」


 ブレーキの金属音。腰振り運動がピークを迎え、濃い先走りを好き勝手に撒き散らす。いつの間にやらつま先立ちになっていた状態でのピストンは滑稽で無様だが、不幸にもそれを咎めてくれる者はいない。

 

 シャチは会陰部に力をこめて、射精をぎりぎりで押しとどめる。息が詰まった。電車がついに止まって、大きく揺れた。ガス漏れするみたいな気圧の音がドアから鳴る。

 

「いぐっ❤いぐ❤いぐいぐいぐいぐぅうぅ❤❤い、ぃい゛ぃ❤」


 愛撫によって熟成された身体は射精の瞬間に歓喜して、ちんぽだけに意識が集中する。雄ならば逃れられない、射精の時だけに生まれる弛緩。

 

 その刹那を突いて、ビルダーの指先が乳首を思い切りひねり潰した。

 

「い゛、い゛ぃいぃいぃ――――」


 立ったままブリッジをするみたいに反り返り、おぞましい痴漢野郎に全体重を預ける。ちんぽだけを勇ましく突き出した、屈服のポージング。敗北の姿のまま、精巣から煮えたぎったザーメンが尿道を駆け上がる。

 

「い゛っぐぅう゛ぅう゛ゥう゛ぅううぅうぅうぅぅうぅぅ❤❤❤❤」


 べちゃり、と半固形物を落としたような音を立てて、リノリウムの床に雄の欲望をぶちまけた。一回では収まらず、何発も。何度も。粥のような精液がちんぽから撃ちだされる。

 床にへばりついたザーメンは乗り込んで来る乗客たちに踏みつぶされ、あるいはスラックスや革靴に付着する。きつい性臭に乗客たちの何人かが鼻をひくつかせた。

 

「あ゛ぉおおぉお❤❤❤ザ、ザーメンとまんねえぇぇえぇ❤❤❤❤」


 舌が天井に向かって突き出されていた。全身から湯気が立ち昇る。太ももが陸に上がった魚みたいに震え、膨れ上がった尻肉が弾力性をひけらかしながら踊る。

 鍛え上げた肉体を、雄臭い相貌を、最高の男と言える外見を乱れさせる内側では快楽が暴れ回っていた。頭蓋を内側から突き上げられて、自己が消えてしまいそうだった。

 

「はい、良くできました。それはでは第2ラウンドといきましょうか」

「んお゛ぉおおぉおぉっほぉおぉ❤❤❤」


 停止した電車が動き出すのと同時に、淫技も再開された。

 両の乳首がつままれて、天に向かって引っ張り上げられる。発達した大胸筋のせいで下向きになった乳首が、無理やりに上を向かされるのだ。筋肉と快楽神経のかたまりである双乳は伸びると同時に喜悦という悲鳴をあげる。

 シャチがわめきちらすのを嘲笑い、指先が雌突起を捏ね潰して、射精途中のちんぽをさらに追い込んだ。

 

「い゛ぎぃいぃ❤❤いぐっ❤ぃいぐううぅうぅぅうぅ❤❤❤」


 射精の最中の絶頂して、止まっていた腰が往復運動を再開する。

 

「まひゃいぐぅうぅ❤❤乳首❤ちくびでずっどいぐのぉおぉおぉ❤❤」


 叫ばなければ狂ってしまうからか。狂っているから叫んでしまうのか。

 どちらにせよ、もう声を止めることはできなかった。乳首だけでもちんぽの栓が壊れてしまうのに、二つの雄膣をほじる指はいっそうの多彩さを見せている。前立腺を挟んだかと思うとスリットをかきむしって、シャチを絶頂から降ろしてくれない。

 指の力はほんのわずかで、赤子にすら腕相撲で負けてしまいそうな微かな力。それだけなのにシャチの巨体は屈服させられてしまう。

 

「乳首伸びるぅう゛ぅうぅう❤❤おっ❤ぎもぢいいぃいぃ❤❤❤ちんぽ❤乳首ちんぽになる❤❤乳首ずんげえええぇえぇ❤❤❤」


 しかし、シャチをもっとも狂わせるのはやはり乳首だった。無数の腕しかできない愛撫が二つしかない乳首を襲い、ちんぽを使ったオナニーやセックスが無価値に思えてしまうオーガズムを覚え込ませる。

 一つの腕が乳輪ごとつまみあげて乳首を強調し、そこを指で挟み込んでちんぽにするるようにしごきたててきた。追加の腕が乳首の頂点を抑え、乳を噴き上げるための穴を爪でひっかいてきた。もう片方の乳首は千切れてしまいそうなほどに引っ張って、潰れてしまいそうな圧力で捏ねられている。

 

「いぐ❤イく❤❤いっぐぅううぅ❤❤❤」


 もう『イく』以外の思考ができなかった。

 現実ではありえない凌辱を受け入れられず、電車内で辱められている自分を受け入れられず、ただ快楽だけに溺れていたかった。

 

「さて、私もそろそろ腕が疲れてきました。他の私に交代するとしましょうか」


 だから、ビルダーの言葉も理解できなかった。

 ただ腕を掴まれている感覚だけが喪失して、頭の後ろで組まれている剛腕が解放される。同時に性器に絡みついていた魔指だちも離れてしまう。

 

「あ、へあえあぁあぁ……❤❤❤」


 ようやく腕から解放されたのに逃げようという気力すら残っていなかった。ちんぽとオマンコから体液を垂らして、目の前へと手を伸ばす。何かを掴めば、何かにすがれれば、消えてしまいそうな自分を繋ぎとめられる気がして。

 

「おっと、大丈夫かな?酷い有様じゃないか」

「ぅあぁ❤へ……?」


 頭の上から降って来た声がぼんやりと頭に染み込む。すがりついた手が握りしめたものは小奇麗なスーツで、顔を埋めているのはぶ厚い胸板だった。

 

「……ぁ、あっ!助け、助けでえぇ!」


 それを認知した瞬間、シャチは叫んでいた。自分がどんな惨めな姿をしているか、変態として逮捕されてもおかしくない痴態をしているかも忘れていた。

 自分のことに気付いてくれる人がいる。声を聴いてくれる。その事実に縋りついて助けを乞うて、救世主の顔を見上げる。

 

「おれ、こいつに痴漢さ、れ――――」

「痴漢か。それは可愛そうにねぇ」


 叫んだ後に、シャチは握りしめているスーツの柄に気が付いた。自分を辱めたビルダーの纏っているスーツと同じ、地味な柄。

 自分が顔を預けていた胸板に気が付いた。さきほどまで背中に押し付けていた鍛え上げられた大胸筋。

 自分を受け止めた男が誰なのか認識して、顔から表情を落として目の端からしずくを零す。

 

「次は『私達』がお相手をしてあげよう。指だけじゃ物足りなかっただろう?」

「あ、ああぁぁあぁ……」


 そこにいたのは、自分を辱めていた竜の男と同じ顔。

 顔も、声も、そのおぞましい笑顔も何もかもが同じだった。今もシャチを後ろから見下ろしているビルダーと全く同じ男がいる。

 

「やっぱり種付けされねえと気分が出ないよなぁ?窓ガラスにデカ乳押し付けながらヤってやるよ」

「私は乳首を労わってやろうか。真っ赤に腫れて痛々しいから、舐めて癒してあげなきゃな」

「無駄なちんぽも可愛がってやらないとな。寸止めを続けると、射精がまともにできなくなるぞ」


 二人だけではなかった。竜の男たちがはいつの間にか周囲を取り囲み、人垣によるバリケードを形成していた。

 数多の腕がシャチの身体をまさぐり、舌先が乳首へと伸びて、スーツを押し上げる股間が尻を擦る。

 

「お待たせしましたね『私達』よ」


 シャチを嬲った、ビルダーが芝居がかった口調で告げた。

 

「その雌を使って、欲望を解き放ってください」


***


「――以上が、被害者から得られた証言だ」


 厳格で、それでいて熱の感じられない声で年配の音が告げた。

 瞳に映るプロジェクターには筋骨隆々としたシャチの男が呆けた顔で笑っていた。

 恐らくは電車の中だろう。つり革に手首を固定され、力なく吊り下げられた白黒の巨体は見るに堪えない凄惨な有様だった。

 

『あ゛へ、へへへ……❤❤❤』


 虚ろな目で笑い続けるシャチは、スニーカーと靴下以外の衣服を纏っていなかった。飾られていたシルバーのアクセサリーは辱められるためか、勃起ちんぽにぶら下げられていたが。

 磔にされるような体勢にされ、蛍光灯の光を爛々と浴びるシャチは全身に白濁と自分の体液を塗りたくられ、淫らに濡れ光っていた。

 

 肥大化してしまった乳首にはチェーンで錘が吊り下げられて、スリットと肛門にはイボ付きバイブが捻じ込まれてまだ振動を続けている。抜け出ないようにするためか、ガムテープで止めている念の入り用だ。

 

「彼は終電の車内で突然発見されたらしい。同じ車両に乗りあわせていた客には気付かれずにな」


 普通に考えるならば、ありえない事象だ。意味無く勃起したちんぽからは潮のようなものが垂れ流され、あれだけでもきつい匂いがするはずだ。仮に複数犯が人垣を作って隠していたとしても、誤魔化せるはずがない。

 

「証言によると夕方電車に乗ってから数時間嬲られていたらしい。腹いっぱいに詰め込まれた精液を排出するプレイもさせられたと――これはどうでもいいな。詳しくは資料を確認してくれ」


 咳払いをしてから差し出して来た資料には、被害者の証言と検査から推察された暴行の内容が書き出されていた。その内容はおぞましく下品で、そこらのポルノ小説が可愛らしく思えるものだった。

 しかし、資料を読む男の目に止まったのはある二点。無数の腕が身体を犯したという段落と、全く同じ顔をした竜の男が現れてからの頁だった。

 

「これは、ただの痴漢犯罪ではない」


 プロジェクターを眺めていた男が、視線を変える。

 その瞳が映し出したのはシャチにも劣らぬ、いやそれ以上の筋肉と上背を持つトカゲの男だった。きちんとしたスーツを纏っているが、筋肉の鎧と漲る逞しさを少しも抑えられていない男だった。

 

「きみの力がいるのだ。ヒトに非ざる悪鬼を滅する戦士の力が」


 そして、男は命ずる。翡翠の鱗を持つ戦士へと。

 

「悪鬼討滅部隊淫魔対策班囮捜査官――『悪滅の蜥蜴』きみの力を振るう時だ」



***

 

 たまんねぇケツしてやがる。

 しがない中年サラリーマン『君丘 優斗』は鼻息を荒くして目の前の雄を凝視した。

 毎日揺られる通勤電車に乗りあわせたのは、筋肉をこれでもかと詰め込んだ長身の雄だった。おそらくは、ボディビルダーでも兼業しているのだろうか。仕立ての良いスーツが弾け飛びそうな筋肉を実らせたトカゲの雄が目の前でつり革を掴んでいた。

 薄手のスラックスが張り付いて、形が丸分かりな肥えた尻肉。そこらの女の胸よりも膨れた大胸筋。腕と足の太さときたら背骨を簡単にヘシ折れそうだった。まさしく筋肉で構成されたエロスの塊である。

 

 君丘はは毎日のように雄を視姦している眼球をフルに稼働させていた。

 スーツは男を会社の奴隷として躾けるものであるが、目の前の男ときたら乳と尻の膨らみをもってして引きちぎってしまいそうだった。

 脂肪を削ぎ落した腰のすぐ下で突き出た尻は、乳に負けじと存在感を放ち、妖しい肉感を振りまいている。さらには、股下が長いせいで太もものむっちりとした具合も目が止まる。くたびれたサラリーマンどもが詰め込まれた檻には似つかわしくない。

 

(おおぉっ!おれの顔よりデケェんじゃねえかコイツ!それにスッゲェ美しい……!)


 凛とした立ち姿を背後から眺めていると、尻の高さに心を打たれる。君丘が裾上げする前のスラックスを余裕で穿けるどころか、伸ばさないとふくらはぎまで丸見えになってしまいそうだった。

 筋肉が詰っていると分かる尻は肉付き抜群なくせに引き締まっていて、彫刻のように優美な曲線を描いていた。

 

(あーっ畜生!やらしい匂いプンプンさせやがって!もうちんぽにキちまったじゃねえか!)


 君丘は車内の人混みをかきわけつつ、トカゲの背後へと陣取って深呼吸する。

 すると脳細胞を直撃してくるのは汗と香水がミックスされた極上の雄だけが放てる芳香である。

 ワイシャツの襟が咲いている首筋から立ち昇ってくる爽やかな甘さ。ほんのわずかな汗の酸味。香水はオードトワレだろうか。ちんぽが抗えないフェロモンに突き動かされて、君丘は手の甲をムチムチな太ももに当てた。

 

(ヨーシ、抵抗しやがらねえな。そのまま大人しくしてろよスケベ野郎)


 スラックスを通して感じる肌のぬくもりがちんぽへと伝わる。スラックスも高級品なのか肌触りがよく、質の良い野郎なんだと触覚から理解できる。

 手の甲で感じただけでも欲望は抑えられなくなり、痴漢行為を行う言い訳ばかりが頭に浮かんでくる。

 

(なんだ、エロい恰好しやがって。痴漢されたくって乗ってんだろ?)


 この電車は『沼男』とかいう痴漢魔が出没する危険地帯。雄獣人は警戒してほとんど乗り込んでこない。

 にもかかわらずこの蜥蜴は堂々と、自分を狙ってみろとばかりに突っ立っている。こんなに乳もケツもでかい雄野郎が、だ。しかも衣服は透けそうなワイシャツと薄手のスラックスだ。

 

 痴漢されたいに、決まっている。

 こんな顔も体も最高級な野郎だからかえって周囲から敬遠され、男からも女からも相手にされないに違いない。加えてこんな野郎はプライドも高いせいで相手に媚びることができず、一人寂しくオナニーでもしているに違いない。

 おれがてめえみてえなクズを相手にするわけねえだろ――そんな罵倒をした後に自室のベッドでデカケツを揺すってディルドを咥えこんでいるに違いないのだ。あんな生意気を言って申し訳ありません、なんて想像上のブサイク相手に謝罪をしながらアクメをキメやがってるんだ。

 

(へへへ、おれがその生意気なケツを修正してやるよ!)


 明らかに正気ではない妄想と思考であるが、君丘は自分が正しいと信じて疑わなかった。普段は真面目な会社員であり、同僚にも部下にも礼儀ただしく接する中間管理職の男が、である。ついでに言うならばこれまでむさくるしい男相手に欲情したこともない。

 それがいきなり男の尻を揉もうとしている――その異常性を咎める者は誰もいない。ただ一人を除いては、だ。

 

(おおおっ!肉がすげぇ柔らけぇ!これが男のフトモモかよ!)


 指先で感じる太ももは手の甲でのそれよりも官能的だった。緊張しているのだろうか、わずかにこわばった筋肉を堪能して丸々とした尻のまろみをなぞる。

 隆起した背筋が真っすぐに伸びた。膨れすぎて背中からもはみ出してしまった乳肉がのっしりとして揺れを見せた。

 肉の大地が揺れ動くさまで君丘は感動すら覚えた。こんな大男のくせに抵抗してこない。何やら妙な緊張感を感じたが、その太い手足を動かすことはしない。

 ならば、と君丘は調子に乗って指先を尻に食い込ませた。

 

(おおぉおぉ……!)


 筋肉と脂肪の割合が、おそらくピコグラム単位で最適値を示しているに違いなかった。あと少し脂が大きかったらだらしなく垂れた尻になり、あと少し筋肉が多かったら硬く揉み心地を損なう硬尻になってしまう。手のひらに拡がるむちむちな奇跡に、君丘は脳の血管が焼き切れそうだった。

 

「ん、ぅ……」


 トカゲはでかい尻をもじもじ動かして、君丘を――正確には君丘の背後を睨みつけてくる。拒否したいがそうする勇気も無いのだろうと君丘は決めつけて、スラックスの内部へと手をすべりこませた。

 

「このっ……!下級淫魔が!んっ!」


 トカゲは低く唸り声を上げたが、もはや止まらなかった。

 脳みそが暴走列車に乗り込んだ君丘の燃料となっていたのは、理性ではなくスラックス内部で蒸し上げられた丸尻の感触だった。

 下着は、きわどすぎるTバックだと指先で分かった。尻尾の真下に極小さいのデルタを作っただけのような、豊満な大臀筋を少しも隠そうとしていない布面積だ。

 指に引っかかる下着のゴム紐と尻肉を押し込んで得られる弾性の違いが楽しかった。プライドに満ちた高慢なサラリーマン然としたスーツとビッチであると主張してくるTバックのコントラスト。トカゲそのものを表しているようなファッションセンスが素晴らしかった。

 

「ああっ!も、もう我慢できねえ!ハメてやる!ハメ殺してやるよ兄ちゃん!」


 君丘の理性がついに切れてしまった。まるで誘蛾灯に燃やされる羽虫のようの抱きついて雄っぱいをつかみあげた。自分の指が溶けてしまいそうになる感覚を味わいながら、その充実した柔らかさを揉みあげる。股間で張ったテントを尻に谷間へ挟み込まずにはいられなかった。

 

 トカゲが鼻先を向けてくるが、人を殺しそうな視線だって今の君丘には興奮を燃え上がらせるガソリンにしかならなかった。

 この獰猛な眼差しをした雄を辱めてやりたい。着飾った淑女を泥まみれにしてやりたいと願うのは男の常だ。社会性の中で輝くダイヤモンドを粉々にしてやったとき、どれほどの悦びが得られるのだろうか。

 

「へっへへへ!おれのガキ孕ませてやるっ!メスにしてやるよ!おれのちんぽ誘いやがった罰だ!」

「……ずいぶん深く憑かれてるな。これも沼男やらの影響のせいか?」


 トカゲの意味不明な言葉なんて無視して君丘はアクセルを踏みしめた。艶やかに輝く鱗は緑信号。そのまま突っ走ってしまえと命じている。このままぶっちぎって生意気な雌トカゲに自分の立場を教えてやれ。

 欲望の道を突っ走ろうとしたとき、君丘はトカゲの手が自分の腕を掴んでいることに気が付いた。なんだ、スケベ野郎かと思ってたが自分から求めてきやがった。いいだろう、痴漢だけじゃ終わらせねえ。その気ならおれのオナホにしてやってもいいぞとのぼせあがった瞬間、手首に凄まじい激痛が走った。

 

「ひ、ぎいっ!?」

「おっと、動くなよ。お前はともかく、宿主を傷つけるのは趣味じゃねえからな」


 手首に穴が空いたかと思った。実際には親指の先を押し付けられていたなのだが、君丘は悲鳴すらまともにあげられなかった。

 すぐに手首を捻られ、あっと思った時にはその場で回転を強いられていた。あまりに自然な動きに周囲の乗客たちも気づいていないほどだ。

 逃げろ、今すぐ逃げろとやかましい頭の中の声に従ってもがこうとするが、手首を握りしめられて激痛に悶絶する。

 

「なっ!ななななな……」

「騒ぐな。今助けてやるから、ちょっとだけ痛いのを我慢してくれ」

「な、あ゛っ――――」


 背中に硬いものが押し付けられた、と思った途端に臍のあたりを貫く痛みが走り、君丘の脳みそが処理落ちを起こす。視界がぐるりと裏返ったように感じながら、意識がゆっくりと暗転する。

 

「好き放題やってくれたな。そのままにしとけよ?これ以上暴れるなら下っぱ淫魔だからって見逃しゃしねえぞ?」


 トカゲは意識を失った君丘に向かって話しかけ、電車を降りるように指示をする。不思議な事に君丘の脚は命じられるままに動き出し、背後で手をひねり上げているトカゲを伺うように顔が動く。

 

「さて、質問に答えてもらうぜ。つっても三下淫魔じゃロクな情報を持ってねえだろうがな……『沼男』って怪異を知ってるか?」


 プラットホームの端を歩きながら囁きかけると、意識を失った男の顔が歪に歪んだ。閉じたはずの瞼が開き、白眼を向いたままの顔でトカゲを睨みつける。そして、喉も舌も動かさないままに言葉を紡ぐ。それは、人のものとは思えないケダモノのような唸り声だった。

 

「が、ぎぃぎいぃぃい゛、おまえ、かりうど、か。何でこんなとごろにい゛る」

「質問に答えろって言ったよな?お前を消して他のヤツから聞き出してもいいんだぞ」


 トカゲが更に眼光を鋭くすると、唸り声をあげていた君丘――正確には、その身体に巣食う何者かが怯えたように身体を竦めた。

 捻り上げられた腕を離されると、媚びへつらって身体を縮こまらせた。

 

「わ、分かったって。逆らわねえからあんま虐めねえでくれよ旦那……」


 君丘の中にいる者は小鳥に様変わりする。歌うのはなんて楽しいのだろうと、トカゲの詰問にべらべらと答え始めた。

 

「『沼男』だろ!知ってるぜ、最近現れた新顔なんだがなかなか大したもんでよぉ、でけぇ男を何匹も堕としてるからおれもついでにご相伴にあずかってなぁ」

「命令その二だ。おれが質問したこと以外は喋るな。ソイツに仲間はいるのか?」

「ひ、ひいっ!あいつに仲間はいねえよ、頼んでみたんだが小物はいらねえって言われてよぉ」


 トカゲが侮蔑するように鼻息を慣らすと、懐から取り出したスマホを弄り始める。続いて「そいつの行動パターンは?目立った特徴は?」と尋問を続けた。

 

「特に無ぇよ。満員電車にだけ現れて、でっけぇ野郎だけ狙う美食家ってことだけだ……なあ、そろそろ許してくれよ。ちゃんと話しただろ?」

「ロクな情報を持ってねえな。下級淫魔じゃこんなもんか」


 分かりやすく失望したため息を漏らして、トカゲはスマホに向かって指示を出す。

 

「下っ端を締めあげて尋問したが新しい情報は無い。予定通り『囮捜査』を実行する。あとは下級淫魔の憑依被害者の治療と記憶処理を頼む」


 トカゲは目の前の三下などもはや眼前に無いと言った体で、その表情は重大なオペに臨む前の医師のそれに似ていた。

 電話が終了し、君丘に憑りついている何者かがまだ見上げていることに気がつくと、どうでもよさそうに口を開く。

 

「まだいたのかよ。さっさと失せろ。人の身体ってのぁ淫魔どものアパルトメントじゃねえんだぞ」


 凄みの効いた声を浴びて、君丘に入っていた何者かが身体から抜け出していく。

 日光の下で淡く煌めくガスのようなそれは空気中を漂って、ホームから街中へと逃げ出していく。

 それと同時に顔を歪めていた中間管理職は安らかな顔になって崩れ落ちた。トカゲが抱きかかえてやらなければホームのコンクリートとキスをしていたことだろう。

 

「ったく、淫魔どもってのは。もう大丈夫だからな、おっちゃん」


 トカゲは淫魔と呼ぶモノを相手にした時は裏腹な柔らかく温かな声をかけ、君丘の身体を抱え上げた。朝のホームで男を抱き上げている姿に視線が集まるが、トカゲは意に介さずにベンチへと寝かせ、乱れた毛皮を労わるように撫でつける。

 

「そこでゆっくり寝ててくれよ。その間に、この電車の淫魔どもはおれが全部やっつけてくるからよ」


 最後に白い歯を見せて笑み、トカゲは再び電車へと乗り込んだ。

 ヒトを食らう淫のモノたち、悪鬼を滅する戦士を乗せて電車という戦場は再び走り出す。

 

 悪鬼討滅部隊淫魔対策班囮捜査官。

 『悪滅の蜥蜴』の長い一日は、こうして始まる。

 

 ―8時30分―

 

 この世界には闇に潜む者がいる。

 いつの世も闇は消えない。野山を星が照らすのみの世界では木陰に潜み、街をネオンが照らす中では路地裏に潜み。そして人の心に悪鬼は巣食う。

 だが、変わらず存在こそすれど、その在り方は大きく違う。かつては人の肉を食らっていた妖どもは獲物を変えた。人が栄えた世では牙や爪を振るう愚かな獣はすぐに狩られてしまう。故に彼らは食らうものを血肉から人の心へと変えたのだ。

 

 ある妖は恐怖を好み人を脅かすおぞましい姿を取り、ある者は人の絶望を好み人を騙す詐術を学んだ。人の愛情を好み愛らしい姿を手に入れた妖もいる。

 

 そして、人の性欲を好む妖もいる。それこそが淫魔。

 聖職者のもとに現れ堕落させる悪魔インクブス、サクブス。類するものとして東欧の妖精スクセンダル。男を精霊界へ連れ去ると言われるヴィデルフラウ。性行為を求める代わりに対価を支払う吸血鬼ズメウ。日本では河童が女性を淫らにする力を持つと語られていた。

 どれも人を淫らに堕とし、精を食らう淫魔である。やつらにとって人の性欲とは食事であり、同族を増やすための種でもある。人の命こそ奪うことは少ないが、性欲を狂わされた者は社会から追放され、より深いところへと堕して行く。行き着く先は淫魔の玩具兼食料となって死ぬまで飼われるか、欲望のままに人を襲う新たな淫魔と成り果てるかである。その性質故に、社会の中に潜んで密かに人を苦しませてきた。淫魔とは、人の世に潜む寄生虫なのだ。

 

 そして、人を狂わす寄生虫たちを狩る者もいる。

 人を襲う悪鬼を滅し。

 特に、淫魔に類するモノを獲物とし。

 自らを囮として淫魔を見つけ出す捜査官。

 それこそが悪鬼討滅部隊淫魔対策班囮捜査官である。

 

 「はーぁ、日本の電車ってのは何でこんなに混むかね」


 逞しいトカゲがげんなりとした息を吐いた。

 レールの音に混じって聞こえてくるのはワイヤレスイヤホンからの音漏れだ。ツンと鼻を刺すのは安っぽい香水の匂い。だがそれはまだマシなほうで、何日身体を洗っていないんだと文句を言いたくなる体臭の輩もいる。

 

 ドア付近、人の少ないわずかなスペースに陣取って蜥蜴はため息を何度もこぼす。彼の『仕事』は街中や会員制のスポーツクラブなど人の密集している場所が多いが、日本の満員電車は世界有数の難所であると改めて実感した。

 

「にしても、沼男ねぇ。新たな都市伝説タイプの怪異か、旧式のが名前を変えて潜んでやがるのか……」


 トカゲは誰ともなしに、或いは目に映らぬ誰かに聞かせるように言葉をつむぐ。切れ長の瞳は周囲の乗客たちを油断無く眺め、筋肉はすぐにでも動けるように厳戒態勢を取っていた。トカゲは件の淫魔を狩るために、さっそく囮捜査を始めていた。

 淫魔相手といっても、通常の痴漢犯罪者相手にするものとそう変わらない。男を惹きつけるような恰好をして電車に乗り続け、実際に痴漢されるか、もしくは痴漢されている獣人を発見するまで待つだけである。それだけでゲームセット。トカゲの任務――淫魔退治はほぼ成功と言えるのだ。

 

 淫魔などと大層な名前で呼ばれているが、連中は妖魔の中では大した力を持っていないとトカゲは知っていた。特に、人間社会の中に潜んで性犯罪を繰り返すような輩は大半が小物だった。今回の『沼男』もその例に漏れない雑魚だろう、とトカゲは予測していた。

 本当に力がある者ならば臭く狭い電車に潜んだりなどせず、好みの獲物を自らの領域にかっさらえばすむ話。それができないのは人を隠れ蓑にしなければ生きていない三下だからだ、というのが判断理由だ。無論、予測はあくまで予測でしかない。トカゲは油断せずに熟練の狩人のように獲物を探す。

 

「下級のヤツしかいねえな。数はちょいと多いみたいだが……」


 トカゲの瞳は乗客に纏わりつく薄いガス状の何かを捉えていた。当然他の乗客にも見えてはいないようで、ガスが纏わりついている当人も平然とスマホを眺めていた。

 先ほど君丘の身体から剥がれたそれは最下級の淫魔。名前を与えられるほどの力を持たず、人の欲望を吸って成長を目論んでいる連中である。淫魔といっても欲望を増幅させる程度の力だけであり、知能すらないものも多い。君丘に憑りついていた奴は下級の中ではマシな方。下の上といったところだった。

 

「さすがにチマチマ潰してらんねえな。悪いが『沼男』を潰すまで待っててくれよ、おっちゃん達」


 一つの車両に10匹以上の淫魔がおり、いちいち潰していては何か月かかるか分からない。対処するならば『沼男』を潰すのが一番効率的だ――というのがトカゲの判断だ。

 下級淫魔というのはどれも臆病で、風向きが変わればそれこそガスのように流されてしまう。トカゲという抑止力が盛大に暴れれば、あっさり消え失せてしまうのである。トカゲはこれまで数件の痴漢系淫魔に関わったが、大物が消えればおこぼれにあずかろうとする下級もすぐに逃げ出したものだった。

 

 逆に言えば下級淫魔を駆除する難しさも表していた。奴らはすぐに逃げ出してしまうだけに、全てを滅することが困難なのだ。そしてトカゲが消えれば虫のように蠢動し始める。やっている事も目立たないだけに、トカゲが所属する部署も積極的な駆除に動かない。

 

「ま、いつもの事だ。いっちょ派手にやって連中をびびらせてやるしかねえな」


 故にトカゲは華々しく『沼男』を退治してやる腹積もりだった。一人でも多くの被害者を救わなければならない。囮捜査官としての職務ではなく、一人の男として人々を救いたいと心を燃やしていた。

 

 そのためにトカゲは実に男を煽り立てるファッションを選んでいた。正確に言うならば偏った性的嗜好を持つ淫魔どもを挑発するファッションを、だ。

 『沼男』がターゲットにしているのは筋肉を豊富に実らせた雄の獣人。種族は問わず、年齢も恰好もばらばらだ。トカゲには自慢の筋肉があるが服装から『沼男』を惹きつけるのは難しい。となれば王道、もしくは痴漢受けのしそうな衣服がベストであろうとトカゲの経験が今のファッションを導き出した。

 

「やっぱ堅苦しい服ってのぁ苦手だな。もっと際どいのが良かったか?」


 と呻きながらトカゲは自慢のでかい尻を振ってみせた。白いワイシャツにスラックス、革靴のコーディネートは生真面目なサラリーマンを擬態したものだ。それなりに値が張るブランドを選んだから、品の良い印象も相手に与えるだろう。痴漢犯罪者にありがちな『普段は手の届かない花を摘んでみたい』という欲望を満たすには最適な姿に見える。

 

「んー、でも『沼男』がどんなタイプかわからねえしな……」


 『沼男』が人に憑りついて欲望を増幅させる、下級淫魔と似たタイプであるならばシンプルに痴漢受けするファッションを選べばいいが、独立した肉体を持っている場合は厄介だった。西洋のインキュバスのように自分の身体で精を食らうような相手ならば淫魔の嗜好を見抜かねばならず、困難になる。

 被害者の証言を聞く限りでは印象に残らない顔とスーツ、そして数多の腕に同じ姿をした集団と独立した身体を持っているタイプに思えた。


「もうちょいアピールしておくか。小物が寄ってきてもめんどくせえけど」


 トカゲはシャツの襟もとを緩めると同時に全身の筋肉に軽く力を込める。軽く、といってもその剛体である。全身の筋繊維が膨張し、乳肉や尻肉もボリュームを増した。開け放たれたボタンとの相乗効果で胸元が強調されて見えるはずだ。元々の爆乳具合が更に凶暴になり、淫魔に憑かれていない男までもトカゲの胸に視線を向ける。

 

「はぁ、もっと目立たない色にすりゃよかったなぁ。透けちまった」


 わざとらしく呟いてから汗で湿ったシャツを指先でなぞる。紐パンとコーディネートした真っ赤なタンクトップが、蛍光灯の反射によってその色を露わにしていた。

 スラックスは一見市販品に思えるが、生地を加工して尻肉へ艶めかしく張り付くようにした特注品である。トカゲが本気でバルクアップすれば紐パンのシルエットが露わになるだろう。

 最後に香水を振りまいた。強い香りは魔を退けると信じられたが、トカゲが首筋や腋、股間まわりに纏ったのはその逆に淫魔を惹きつけるもの。くすぶるような、それでいてかすかな気高さを感じさせるベルガモットの香りだった。無論、人が嗅いでも酔ってしまいそうな心地良さを感じる芳香だ。


「そろそろ手を出してきてもいいはずなんだが……」


 満員電車の中は込み合っているくせに静寂で包まれており、吐息すら聞こえなかった。こうまで混んでしまうとみんな黙り込んでしまうからなのか、とトカゲは化粧品やら洗髪料やらの刺激臭を嗅がされていた。

 

(しっかし、良く我慢できるよなこいつら。これに耐えられる精神性なら淫魔の誘惑も跳ねのけられそうだが)

 

 前後左右から押しつぶしてくる肉体と、不快な蒸し暑さにトカゲがげんなりしたため息を吐いた。

 トカゲは淫魔を追って軍隊のブートキャンプや名門体育大の新入部員としても潜入したことがあるが、この満員電車以上にきついものはなかったと辟易する。さっさと淫魔どもが手を出してこないものかと幾つものの駅を通り過ぎ――

 

(……来たか)


 一瞬のうちに、或いはトカゲにも気取られぬうちにトカゲを包む空気が一変していた。周囲にいるのは男のみ。それも同じスーツと時計をはめた10人以上の男たちだ。

 その視線は触手のようにトカゲの全身、特にシャツを突き上げる大胸筋や尊大にぶ厚さを主張する尻肉へと集中していた。虫が鱗を這いまわっている、そんな不快感で背筋に汗が伝う。

 

(確かに同じ顔だ。こりゃ憑依型じゃないな)


 トカゲを見つめるのは全く同じ顔つきをしたビルダー体形の竜人たちだった。顔どころか鱗のかさつきから、スーツを膨らませている筋肉の張り出し具合までも瓜二つ。普通の人間ならばあり得ない。

 竜人ビルダーどもに取り囲まれているせいか熱気は増して、車内に吹き付けられている吹雪のようなクーラーも意味をなしていなかった。

 

(どうするか。こいつらの中に本体がいりゃいいんだが、いないなら本命前に体力を使っちまう)


 トカゲは心の中で天秤を傾けた。目の前の男どもが『沼男』とやらが作り出したダミーでしかないのならいくら潰しても意味がない。逆に『沼男』の力を株分けされた手足のような存在なら少しでも潰す価値がある。どちらにせよ、相手をすればトカゲの気力が削がれるのは間違いなかった。

 淫魔は蹴り飛ばしたり殴ることで退治できるわけではない。消滅させようとするならば、トカゲも多大なリスクを背負う必要があるのだ。

 

 トカゲが思案していると、ビルダーの一人が手を脇腹へと伸ばしてきた。大胆すぎるその手つきは、こそこそとした痴漢本来の動きとはかけ離れている。

 

(まあ、おれにその気がなくてもあっちから手を出してくるんだよな。いろいろと試してみるか)


「おい、何だてめえら!おれに何するつもりだ!」


 被害者から聴取したデータが本当か試そうと、トカゲは指先が触れる寸前に大声を張り上げた。軍隊の訓練で培った同間声は、本来ならば車両全てに響き渡る声量だ。

 

「へへへ、無駄だぜ兄ちゃん。アンタの声はおれたち以外には届かねえよ」


 ビルダーに一人が親切にも解説してくれた。その言葉の通り、トカゲの声に何の反応も返らない。それどころか車両の中で反響すらしなかった。もっとも、乗客にばれれば困るのはトカゲも同じであり好都合だったが。

 

「くっ!誰も聞こえねえのか!誰かなんとか言えよ!」

「いいねえ。身体は立派なくせにピーピー泣きやがって。ソソるぜ」

「しかし、外見と違って言葉遣いが粗暴だねぇ。もっとインテリぶった奴かと思ったんだけど……残念だ」

「まあまあ。どうせ最後は豚みたいに鳴くだけになるんです。口調なんてどうでもいいじゃないですか」


 どうやら瓜二つなのは外面だけであるようだ、とトカゲは印象を修正する。

 下卑た笑顔には変わらないがビルダーどもはそれぞれ嗜好に差異があるようで、トカゲの身体の何処を睨めつけるかも違っていた。

 ここまで差異があるのであれば、単純なダミーではない。思考能力や会話ができている点からリソースが注がれていると判断できる。一体ずつでも仕留めれば相手にとって痛手になるに違いない。

 

 淫魔はさまざまな力を持つが、無限に能力を振るえるわけではない。ゲームでいうマジック・ポイントと同じくひつようなリソースがあり、一度使えば回復に時間を要する。これだけの分身を作り出し、人格まで与えるならばそれなりのリソースが不可欠なはずだった。

 

「おらっ!腕を上げろ!てめぇの腋マンコが見えやすいようにな!」

「くっ!や、やめろ変態ども!」


 トカゲの抵抗――の演技――を無視して腕を引っ張り上げると左右のつり革を引っ張って両手をねじこませ、ガムテープを何重にも巻きつけてくる。

 上半身の筋肉が強調されてしまう体勢で拘束すると、性欲をぶつけるように何人かのビルダーが襲いかかってくる。

 

「ほおぉ。良い脚してますねぇ。締りも良さそうです」

「ケツもなかなかのもんだよ。前のシャチくん以上だ」


 丁寧な口調のビルダーはいきなり内股に手を差し込んできた。薄手のスラックスの上から内腿を含めた微妙なカーブを撫でまわしてくる。どこか子どもっぽい口調のヤツは恥知らずに膨れた丸尻に張り付いて、脂肪の乗り具合が絶妙の肥え尻を荒々しく揉みしだいてきた。

 もう一人は腋の下から両腕を伸ばして、筋肉の塊である巨乳を握りつぶすように捏ね潰してくる。皺の寄ったワイシャツ地から真っ赤なタンクトップが透けて、雄の淫らさが匂うコントラストを作り上げた。

 

「あっ!この、やめぇ。んあぁぁ!」

「ひひっ!腋マンコ見せて喘ぐなよぉ。ちんぽにキちまうじゃねえか」


 トカゲは演技とは到底見抜けない喘ぎ声を漏らして身体をよじらせた。ビルダーどもの指先は拙いものではなかったが、トカゲには大したことのない愛撫だった。感じているフリをして、逆に相手の指遣いを誘導する。

 ビルダーの一人はまんまと騙されて、トカゲの汗と香水がたっぷり染み込んだ腋に鼻を突っ込む。キノコを探し当てる豚みたいに鼻息を荒くして、シャツごしの腋臭さを吸い込んだ。肺活量の限界を試しながら、変態にとっての桃源郷をさまよっている。

 

「おっと、乳首が立ってきてますね。こんな際どいタンクトップを着ているせいで丸わかりです」


 ビルダーの指摘通り、ただでさえ大きな乳首が肥大化し、シャツの上から乳頭を透かせていた。やや黒ずんだ乳首は使い込んでいるサインであり、その大きさも親指の先よりも大きく卑猥に雄を誘っていた。

 ビルダーはワイシャツの上からしつこく胸を捏ねつつも、乳首――特に膨れた乳輪部分をシャツの生地ごと擦り、研磨する。

 

(チッ……!やめろ、下手くそな淫魔野郎相手でも乳首は弱いんだよ!)


 トカゲは気付かれないように尻尾を波打たせた。囮捜査官として淫魔を相手にしている以上、乳首や尻を責められるのは日常茶飯事だ。そのせいで乳首はモロ感に開発されてしまい、服の上から擦られるだけでも痺れるような快楽を得てしまう。

 しかし、それがばれれば淫魔どもは調子づくのが分かり切っていた。トカゲはひそかに奥歯を噛みしめつつも乳首では感じていない演技を続ける。

 

「おっと、感度は微妙なんですかねぇ。じゃあ私達で開発してあげましょうか」

「だな。経済じゃなく乳首イキの仕組みを教えてやるぜっ、と!」

「……!」


 乳の前に陣取ったビルダー二人が視線を交わすと、背後のビルダーが双乳の付け根あたりをつかんでワイシャツをたぐり寄せ、元から張り付いていたそれを更に密着させる。その隙を逃さず二人の竜が乳首の細やかな凹凸まで浮きだ足している頂きにむしゃぶりついてきた。

 

(んぐぅうぅ❤クソッ❤❤馴れ馴れしくしゃぶってくるんじゃねえぇ❤んおぉ❤❤)


 トカゲは唾液を零さぬように歯を食いしばり、つり革を握りつぶした。

 シャツを挟んで、竜種のぶ厚い舌の粘膜と蠢きが塗りつけられてくる。同じ顔をしているくせに舌使いと唾液の熱さはまるで違っていた。

 片方の唾液は火傷しそうなぐらいに熱い汁だが粘り気が少なく、もう片方はぬるいくせにやたらと粘っこい汁だった。敏感乳首のせいで熱と粘性の違いがイヤになるくらいよくわかる。

 舌使いはもっと分かりやすい。勃起乳首をジュウジュウと引っこ抜くようにバキュームしてくる方と、陰湿に舌を絡めて舐め回してくる方。

 背後で乳を鷲掴みにしている方も巧みに揉み立てて、持ち上げたりワイシャツごと引っ張ったりと絶妙なテクニックでデカ乳を揺らしてくる。赤子二人は揺れる乳に興奮を煽られるのか、甘く牙まで立ててくる。

 

(くうぅ❤いい加減離れろクソ淫魔どもぉ❤❤)


 トカゲの願いが通じたのか、はたまたミルクで腹が膨れたのか、唾液の柱をかけながら二つの口が離れて行った。

 

「こりゃあいいなぁ……!予想以上に下品な乳首だ!」

「もしかして自分で開発してんのか?真面目そうな顔してスケベな兄ちゃんだ」


 くつくつと喉を鳴らされたが、トカゲは黙って睨み返してやる。快楽に耐える訓練として乳首の開発は絶やしていないが、淫魔を悦ばせるために育てたわけではなかった。が、どれだけ虚勢を張ったところで滑稽だ。乳首周囲の布地だけが濡らされて、開発乳首にべっとりと張り付き、いかにも感度が良さそうな膨れっぷりや淫らな赤黒さを薄っぺらいカーテンを通して披露している。

 二つの巨乳が背後から鷲掴まれているせいで、尚更に乳首が強調されて、いっそうの艶めかしさを醸し出している。

 

「だいぶ、やらしい具合になったなぁ、オイ」

「だな。だけどこの兄ちゃん乳首はイマイチみたいだぜ。反応が悪ぃ」

「ちんぽも無反応だ……つまんねえ男だ」


 トカゲは顔を歪めながらも内心で嘲笑っていた。


(へっ、馬鹿な淫魔どもだ。このまま乳首を吸われてりゃヤバかったのによ)


 あとは愚かな淫魔どもの注意を別に向けてやればトカゲの勝ちは確実だった。上等な淫魔を相手にした時は演技を見抜かれ乳首だけでメスイキをキメられたものだが、実に与しやすい雑魚淫魔どもだとトカゲは喉を鳴らした。

 さて、どうやって乳首以外を責めさせてやろうと思案しているとビルダーどもがスラックスに手をかけて、引きちぎるようにずりおろしてきた。翠玉の鱗と紐パンが鮮やかな下半身が剥き出しにされ、満員電車の中に花が咲く。


「おおっ!予想通り良いケツをしてますねぇ。みなさん、不感症乳首よりこのデカケツを虐めてやりましょうよ」

(おう、さっさとケツにむしゃぶりついてこいよ。てめえらの情けないちんぽなんぞいくらブチこまれたってどうってこと無いからよ!)


 トカゲは嫌がるように尻肉をくねらせるフリをして、逆に淫魔どもを挑発する。奇跡的な爆乳を抱いている胴は臍のあたりから鋭角的にくびれはじめ、腰を越えた途端に魅惑的にボリュームを取り戻す。巨大な肉風船を二つくっつけた巨大な尻は、剥き出しにされた途端に肉の匂いを振りまき始めた。それは香水や汗の匂いとも交ざり合って雄の本能をどうしようもなく煽り立てる。

 

 唾を飲み込んだビルダーが一人、タマゴをつまむような手つきで、筋肉の鎧の奥に更に筋肉を詰め込んだ内ももを撫であげてきた。指先と爪だけを使ったくすぐるような愛撫は巧みであり、気を抜けば脚腰が崩れそうだった。もう一匹のビルダーは無駄な肉を削り取りならも量感たっぷりの尻に専念するらしく、艶やかな鱗へと鼻息を吹きかけていた。弾力性を秘めた尻たぶに五指を食い込ませて、ハート型の輪郭に弧状の凸凹を生じさせる。

 

「ひひ、エロい下着しやがって。おらっ、ケツに食い込んでるぞデカケツ野郎!」

「んくぁあぁっ!?」


 きわどい紐パンツを引っ張り上げられて、さすがのトカゲも悲鳴をあげた。肛門に紐が食い込んでスリットが内に潰される。

 すぐさまもう一匹の淫魔は象牙と筋肉を練り合わせたような内ももからスリットへと手を滑らせて、紐が擦れるスリットを撫で回してくる。紐を割れ目のなかにこじ入れ、さらにその全貌をひけらかそうとして穿ってくる。

 トカゲは指の動きに合わせてわざとらしく膝を上下させ、顔を振り乱して喘ぎ声をあげた。背筋と腰もくねらせて、どう見ても悦に入ってしまっている表情だ。

 

「あっ!やめ、ろおぉ!そこはっ!」

「おやおや、スリットマンコは反応がいいですね。乳首よりも膣の方が感じてしまうのは、雌だから当然ですかね」


 馬鹿が。

 トカゲが聞こえないように喉を鳴らした。トカゲは当然スリットも開発しているが、乳首の方が圧倒的に感じやすい。愚かな淫魔どもはそれすら見抜けずにスリットへとむしゃぶりついてくるだろう。そのままスリットにちんぽをぶちこんでくれれば速やかに淫魔どもを退治できる。

 トカゲがあくまで食われる獲物を演じ淫魔どもを煽り立てると、無骨な指が魅惑的な肉の坂を滑り降りてくる。尻たぶを捏ね回し、むちむちな膨らみに挟まれた谷間に指を滑り込ませる。

 

「そ、そんなところぉおぉ!うわぁあぁ!やめてくれぇ!」

「心配しなくても大丈夫だぜ。すぐに前にマンコと同じくらい感じるようにいしてやるからよ」


 ごつい指先は肛門をとんとんとノックして具合を確かめた後、つま先をシワの間に潜り込ませ、ぐりぐりと押し込んでくる。トカゲの肛門は数えきれないちんぽを咥えこみ、色も形もはしたない娼婦のように変わってしまっているが、淫魔はそれに気づいていないのかご機嫌にシワを拡げて、染み出す愛液を指に擦り付けている。

 

「ん、ひぃいぃ!やめろ、ケツぅ。おれのケツがぁ」

「ケツの具合も良さそうだぜこいつ」

「じゃあ、ダブルトカゲマンコを開発してやるとしますか。おれたちのちんぽをブチこむにはじっくり拡げてやらねえといけねえからな」


 スリットマンコを弄っていた中指が深く潜ってきて、滑りを良くし始めた入り口をくつろげてくる。スリット内部から染み出す潤滑油をわざとらしくクチュクチュとかき鳴らし、浅く、深くと指を前後させる。

 同時に肛門を拡げようとしていた指先も根本まで差し込んでくる。おぞましい淫魔の指と言えども開発済みのマンコにはたまらなく、内壁を押し込まれると掠れた声が出そうだった。

 

「ぐっ!んんぅ」

「そそる声出すじゃねえか。おれたちのちんぽをブチこめるまでトロトロにしてやるよ」

「前のシャチくんは二本差しされただけでブッ壊れたからなぁ。お前は種付けまで耐えてくれよ」


 トカゲの頬に軽くキスをし、二人はタイミング良く指を抜き差しさせてくる。トカゲマンコを透視しているのではないかと思うほどの連携で、スリットと直腸の天井を交互に抉られる。トカゲの太すぎる腰は演技ではない色気を醸し出し、逃げるように前後し始めていた。

 淫魔のごつい指から逃れようとしているのだが、淫魔二匹は動きを見切っているのか腰を引いたタイミングでスリットの肉をつまんだり、逆に突き出した時には前立腺を押し込んでくる。

 

「ケツを鍛えてるせいかよく締まるなぁオイ!こりゃ良いオナホになりそうだ!」


 下品な嘲笑とは裏腹に指先は繊細で陰湿だった。直腸のヒダを丁寧に伸ばし、腸を押し広げ、弱い部分を抉り回してくる。トカゲが快楽への耐性訓練を行っていなければ口から泡をこぼして喘いでいたところだ。

 

(くうぅ❤❤調子コキやがって❤いつまでも前戯されたらこっちが参っちまう❤いっその事おれから……ヤっちまうかぁ❤❤❤)


 トカゲが羊の皮を脱ぎ捨てようと腕を縛るつり革を握りしめる。その気になればこんなチャチな拘束具など引きちぎれる。淫魔どもなど振り払い、組み伏せてしまうのもたやすい。

 

(どいつもちんぽギンギンにしやがって❤❤マンコを使うまでもなくヤっちまえそうだな❤❤❤)


 トカゲはひそかに筋肉をたわませてその肉棒に食らいつくチャンスをうかがっていたが、その必要は無かった。

 トカゲマンコから指を引き抜いたビルダー二人がチャックを降ろし、スーツに圧迫されていた巨根を曝け出したのだ。

 

「ひ、ひっ!何するつもりだよぉ!まさかっ」

「そのまさかだよ。今から兄ちゃんはコイツでオマンコ掘り込まれて、種付けまでされるんだ」

「そのキレーな腹筋がボテ腹になるまで注いでやるぜ。ひひひ、どんだけザーメンの匂いさせたってバレねえから安心していいぜ」

「やだっ!やだぁ!やめてくれ!誰か助けてくれえええぇぇ!」


 なんと手ごたえの無い連中だろう。

 トカゲは大声で泣きわめきながらも心の底を冷え冷えとさせていた。スリットとマンコは愛撫のおかげで少しは温まってきたというのに、単純すぎる淫魔どものせいで台無しな気分だった。

 

 淫魔どもは何も気付いていない。トカゲという獲物を狩る側だったその面は鼻を膨らませ涎を垂らした犬畜生のそれになっている事に。ちんぽをいきり勃たせトカゲの色香に溺れている事に。トカゲが淫魔を狩る側である事に。そして、淫魔を狩る者たちの武器は拳でも蹴りでもなく、その肉が詰った乳や尻である事に。

 

「オーシ!一番乗りはおれだ!おれたちのデカマラ専用になるまで掘りまくってやるぜぇ!へへ、へへへっ!」

(ほい、まずは一匹だな。コイツのちんぽの具合でどんだけ相手してやるか決めるとするかな)


 肛門に押し当てられる亀頭の感覚に舌なめずりをして、トカゲは肛門でちゅぱちゅぱと亀頭に吸い付いた。それはちんぽを奥まで咥えこみやすくするための仕掛けであり、愚かな獲物を罠へと誘い込むための餌である。

 事実、トカゲにちんぽを押し当てる淫魔は挿入前に臨界点を越えたようで、鼻息を荒く先走りを漏らし続けている。

 

 それはもはや捕食者の顔ではなく、目の前の餌に貪りつく家畜の顔である。知能も誇りもなく、自らの運命も分からぬ愚者の顔。淫魔はトカゲマンコの最奥まで一気に穿ってやろうと腰を叩き付ける――はずだった。

 

「ああ、これはいけません。私の狩場に狼が紛れ込んでしまったようですね」


 バリトンの良く通る声。あるいは時代劇で主役を張っているような低い男前な声。それでいて、街中の雑踏に紛れて消えてしまいそうな特徴の無い声色。

 その声には熱が無かった。人の性質が多少なりとも滲んでいるはずの声には、何も感じられなかった。その声だけで淫魔とトカゲを包む熱気は消え失せて、臓腑までも凍り付くような寒気に襲われた。

 

「危うく私の手駒を食われるところでした……いや、見事な手管でしたよ」

「……ッ!」


 トカゲは直観で理解する。

 目の前の淫魔どもと同じ姿形であるが、その中身はまるで違う。柔らかく微笑んでいるその顔にはおぞましい悪意が滲み出て、見ているだけで胃の中ものがこみ上げてきそうだった。

 

 こいつが親玉だ。トカゲの尻に汗粒が流れ落ちた。

 

「全く、狼を羊と間違えて牙を向けるなど。私の分身と言えど呆れてものも言えませんよ」

「お、狼ぃ?こんな美味そうな兄ちゃんがかよ」

「ええ、たっぷりと脂が乗っていて実に美味しそうですね。ですが、その脂は私達を誘い込むための餌なのですよ」


 親玉が手を振ると、淫魔どもはすぐさまトカゲから離れて周囲を取り囲む。まるで神の使いが湖を割ったように、トカゲと親玉の間に人垣で作った蜜ができあがった。

 トカゲは磔になったままの体勢で淫魔の親玉を睨みつけた。それは食われるべき獲物を装っていた時とは比較にならない獰猛な視線だが、親玉は意に介さずに尻肉を鷲掴みにした。

 

「良い、実に良いですね。形も肉付きも極上ですが、オナホにしてあげればいくらでも種付けできそうです」

「してもいいんだぜ?てめぇの粗チンにゃもったいない穴だが、特別に使わせてやってもいいぜ」

「ふふ、安い芝居は止めませんか?私も若輩者の淫魔ですが……あなた達がどうやって淫魔を狩っているかは知っているのですよ……『悪滅の蜥蜴』殿」


 尻肉を揉みほぐす手と囁かれる声にトカゲは沈黙で返した。言葉を返そうとすれば内心の動揺を隠し通せる気がしなかった。

 筋肉を蕩けさせるような指遣いと、自らの正体。そして何よりも淫魔を狩る為の牙を知られているという事実。

 

「淫魔は人の精と欲望を吸って生きる。ならば、精と欲望を吸い尽くされればどうなるか――ふふ、どうなるか教えていただけませんか?」


 トカゲが淫魔を狩る為の牙。

 それは、トカゲの肉体そのもの。精が淫魔の餌となるならば、逆に淫魔の精を食ってやれば淫魔は飢えて死ぬはずだ。そんな狂った思考の基に生み出された淫魔より精を吸う為の業。

 

 淫魔を己の肉体に溺れさせ、精を放たせ、欲望を受け止めて吸い尽くす。


「この方を抱いていれば、枯れ木になるまで精を吸い尽くされていたところですよ。危ういところでしたね?」


 それこそがトカゲの牙。

 淫魔を滅する為の刃にして、決して暴かれてはならぬ隠し剣である。いかに淫魔が愚かと言えども、抱けば死ぬと分かっていてトカゲに手を出すわけがない。

 こうして淫魔に正体を見抜かれた時点でトカゲの敗北は決定している。

 

「へ、へへ……だが分かっちまえばてめぇなんか怖くねぇ!」

「そうだッ!ちんぽをブチこめねえならおれらのテクでイキ殺してやるよ!」


 こうして淫魔どもがちんぽ以外でトカゲを堕とそうと試みるのは目に見えている。任務は失敗。トカゲのすべきことはすぐにでも逃げ出して、他の仲間に任務を引き渡す事のみだ。

 己の不甲斐なさに歯を噛み締めつつも、磔から逃げようと腕の筋肉を膨れあがらせたその時だった。

 

「まあ……待ちましょう。それでは我々は極上の獲物を取り逃がすことになる」


 淫魔の親玉が三下どもに待ったをかけたのだ。トカゲの尻を揉んでいた手は太ももへと戦場を移し、筋肉の硬度と柔らかさを兼ね備えた巨木を指先で楽しんでいた。

 

「見てください、この脚。筋肉の逞しさからして、締め付けも極上ですよ。今までの餌とは段違いの快楽をくれそうです」

「う……で、でもソイツを抱いたらおれたち死んじまうんでしょう?」

「ええ、その通りです。このトカゲさんがその気になれば、ですが」


 腰に手を回されて、トカゲは理解する。

 自分に自信のある淫魔が良く持ちかけてくる提案だ。囮とは分かっていても美味そうな餌は諦めがたい。それに淫魔を狩る為の狼を自らの手で飼いならし雌犬に堕とすなど最高の愉悦ではないか、と。

 

 淫魔を狩らんとするトカゲ。

 トカゲを食らわんとする淫魔。

 両者にとって益のある『提案』

 

「ゲームをしましょう。あなたと私――どちらが先に堕とされるか、互いの身体を使って勝負といきませんか?」


***


「あのクソ淫魔め……良い趣味してやがるぜ」


 トカゲは悪態を吐きながら、手に取った服を握りしめた。

 手の中で黒い光沢を放っているそれは、いわゆるライダースーツ。バイカーが全身を包んで寒気や風から身体を守る為の革製スーツである。当たり前だが、都市のド真ん中。これから電車に乗り込もうとするトカゲには似つかわしくない装束だ。

 しかし、トカゲは愚痴りながらもスラックスをずり降ろして、唾液で汚れたワイシャツを放り投げる。煽情的な下着だけになったトカゲは黒革へ足を通し始めた。

 

「チッ、ご丁寧に裏地まで剥ぎ取りやがって。ケツも胸もピッタリ張りつくじゃねえか」


 ムチムチなふくらはぎで感じ取るのは艶めかしい皮の感触だ。身体を保護し、同時に雄の視線から身体のラインを隠すための裏地が全て剥がされてしまっていた。

 ただでさえトカゲの豊満すぎる身体のラインだ。そこへ身体にピッチリ張り付く黒革タイツを装備してしまえば乳と尻の並外れたサイズが強調されてしまう。そればかりか、開発済の肥大化乳首が黒革を押し上げていてここに淫乱な凶器が潜んでいるぞとアピールしてしまっていた。

 尻の方も大概で、奥深い尻の谷間にまでレザーが食い込んでいて尻を突き出せば肛門の形までも分かりそうだった。布面積が少ない紐パンの線までも分かってしまわないかと不安になり、何度も尻肉を撫で回してしまう。

 

「下着みてえな服よりはマシかもだが……身体が動かしにくすぎんぞ」


 黒レザースーツの胸は砲弾のように盛り上がっており、黒革の締め付けによって身体のラインを封じられているにもかかわらず、でかすぎる乳肉は抵抗勢力と化してレザーをパツパツに引き延ばしていた。

 乳肉も同様に突き出して、蛍光灯の光を反射して輝いてはレザーを内から引きちぎろうとしている。上と下で膨れた肉のせいで、ライダースーツは限界ギリギリまで伸びていた。全身タイツと変わらない衣装と筋肉の組み合わせは凶悪で、外を出歩けば即ブタ箱行きでもおかしくなかった。

 

「ま、しょうがねえな。アイツを逃がすわけにはいかねえんだ」


 トカゲは気合を入れるように尻尾で床を叩くと、トイレの個室から外へと足を踏み出した。黒革タイツにライダーブーツと手袋のみという煽情的なファッションに周囲の男どもが感嘆の息を吐くが、トカゲは意にも介さず電車へと乗り込んだ。

 

 今乗り込まんとしているのは愚かなケダモノを誘い、喰らうための狩場ではない。

 捕食者二匹が互いの牙を突き立て、命と誇りを賭けて争う決闘場。

 トカゲと淫魔、二人の狩人が『ゲーム』を行う盤の上だ。

 

***


 淫魔が持ちかけたゲームは実にシンプルなものだった。

 トカゲが再び痴漢電車へと乗り込んで、淫魔がその身体を辱める。トカゲは抵抗をする事も黙して痴漢をされるのも自由であり、いつゲームから逃げ出しても構わない。その代わり、仲間を呼ぶことは禁止され、淫魔の指定した衣装でゲームに挑まなくてはならない。

 終了条件はシンプルで、トカゲが快楽に堕ちてしまえば負け。逆に淫魔が欲望に負けてトカゲを犯し、その精を吸い尽くされてしまえばトカゲの勝利。

 言うまでもなくトカゲが不利なルールであり、下手をすればトカゲが淫魔の餌とされる可能性もある危険な勝負だ。しかし、トカゲは逃げるわけにはいかなかった。

 

(逃げ出すわけにはいかねぇ。あの淫魔、相当に厄介そうだ。ここで仕留めておかねえとどれだけ犠牲者が出るか)


 あれだけの分身を生み出す力。トカゲの正体を見抜く知能。そして、あれだけのスペックを備えながらも痴漢という目立たぬ手段で精を集める狡猾さ。この機会を逃してしまえば、また別の場所で獲物を探すに違いなかった。今度はトカゲたちでも見つけられないような深く昏い場所で。

 

(だからおれを舐めている今が最大のチャンスなんだ。大丈夫、今までも調子に乗った淫魔を食い殺してやったじゃねえか)


 トカゲを侮り犯そうとした淫魔は数多くいるが、トカゲはその全てを返り討ちにしてミイラになるまで精を吸い取ってきた。トカゲの身体は人間相手ならばただの肉付き豊かな肢体でしかないが、淫魔を相手にすれば激毒を秘めた花へと変わる。

 

 その汗と体臭は淫魔を煽り立てて、ちんぽをハメてしまえばトカゲの意思一つで精気を吸い取られてしまう。逃げ出そうにも雄膣の締め付けと肉の蕩け具合に溺れ、死ぬまで精液を放ち続けるしかない。まさに淫魔にとっての食虫花である。

トカゲは許しを乞う淫魔に跨って、命とともに精液を搾り取る殺し方を良く好んだ。何百匹という数の怪物を自分の尻で屈服させてきた経験は、トカゲから逃げるという臆病な判断を選ばせなかった。


(さーて、そろそろ来る頃だと思うが)


 車窓から覗く風景は駅を出たばかりの頃にビジネス街から都市公園の自然や住宅街のそれへと変わっている。車内に付けられたモニターでは来年開かれる国際的スポーツイベントについて語っており、アナウンサーが華やかに笑っていた。

 通勤ラッシュを過ぎた時間帯ではサラリーマンやオフィスレディたちの姿こそないが、主婦や余生を過ごす老人たちで車内が埋まっており痴漢をするにはなかなかの環境だ。他者からの視線や意識から隠れることができる淫魔ならばどのような状況だろうと問題は無いのだが。

 

「良く来てくれましたね。そのライダースーツ、大変お似合いですよ」


 突然、トカゲの耳元で囁き声がした。

 驚きもせずに周囲を見渡すと、いつのまにやら目の前にスーツ姿の竜人が腰かけていた。トカゲにも負けない巨躯と安物のスーツがアンバランスなその男は、印象に残らない微笑みでトカゲと視線を斬り結ぶ。

 

「来やがったか。とっとと始めようぜ、お前の不愉快なツラからとっととおさらばしたいしな」

「そうですねぇ。私もあなたの身体が待ち遠しくて、もう抑えられそうにありません……始めるとしましょうか」


 長い舌で口周りを舐め取った後、竜は芝居がかった仕草で指を鳴らした。

 報告書にあった手の群れで責めてくるかと身構えたトカゲの予想を裏切って、電車が緩やかに停止すると同時に扉の開閉音がした。

 不意を突かれたトカゲが振り向こうとする前に、学生服の集団によって奥へ奥へと押し込まれた。むさ苦しい体格の学生たちが波となり、トカゲをドアの付近で押しつぶしてしまう。

 

「な、これはっ……!」

「今日は名門スポーツ校の野球部が大会に出る日でしてね。野球部以外もこうして電車で応援へ向かうというわけです……聡明な囮捜査官殿はご存じありませんでしたか?」

「くっ!」


 これがホームの差か。

 淫魔はこのタイミングを見計らってトカゲの指定する車両・時間に指示を出したのだ。トカゲは見抜けなかった悔しさに歯噛みするが、すぐにそれどころでは無くなった。

 狭い車両の中を埋め尽くす男子学生。それも、スポーツによって鍛え上げた縦にも横にも馬鹿でかい獣人たち。身体から匂いたつ健全な雄臭さと湧き立つ熱気によって車内は汗臭いサウナへと変わる。

 青少年たちは下品な肉体を見せつけるライダースーツのトカゲを盗み見て、特に強調されている乳や尻に視線を注ぎ込む。自分の身体を曝け出すのに慣れたトカゲでもたまらず腰がくねる欲望の視線。

 

「で、ギャラリーを増やしてどうしたいんだ?おれを堕としてやりてぇんだろ?早くかかって来いよ」

「ギャラリーなどどとんでもないことをおっしゃいますね。彼らは参加者……あなたの身体を嬲るお手伝いをしていただくのですよ」


 まさか一般人を操って痴漢行為を働かせるつもりか。ならばこんなゲームに付き合うわけにはいかないと、トカゲが筋繊維を漲らせた――まさにその瞬間だった。

 

(すげぇ、あのトカゲの人すごいでっけぇオッパイしてるなぁ)


 突然頭の中に声が響いたのだ。

 思念を介して話しかけるなど淫魔相手ならば珍しくもないが、それは耳障りな淫魔の思念ではなく、青々とした青年の欲望だった。今まさに、トカゲの大胸筋を盗み見ている学生の誰かの。

 

(おれの頭よりデッケェじゃんか、あの乳。ちんぽ余裕で挟めちまうよ)


 決して口には出せない生々しく、金玉からそのまま滲み出てくるような雄の欲望がトカゲの脳みそに侵入してくる。学生たちはなんてことのない顔で「応援とかダルいよな」「終わったらカラオケ行こうぜ」などと当たり障りの無い会話を繰り広げている。

 

(ブルブル揺れてるぜおい。柔らかそう……)

(揉みしだきてぇ。握りつぶしってやって、おれの手のひらの痕を残して、指を食い込ませてやりてぇ)


 だがトカゲが感じ取ってしまう思念は精液の臭いを帯びた、童貞高校生の妄想だ。それも一人ではなく、トカゲを視界に入れた全員の欲望。数も質もすさまじい。

 

(あのケツやっべぇなオイ。モデルかなんかなのか)

(引っ叩いて泣かせてあげたいなぁ。怖そうな顔してるけど、虐めたら悦んでケツを振っちゃうタイプだよアレ)


 トカゲを見る学生たちの目はただエロい乳や尻を見る、というだけのものではない。今すぐにでもちんぽを扱き上げてトカゲを犯そうとしている性欲猿のもの。トカゲをオナホかラブドール同然に扱っているものだった。

 

「へっ、だからなんだってんだ。おれぁ囮捜査の時は中学生のガキどもに姦されたことだってあんだぜ?この程度ヘでもねぇや」

 

 淫魔本体ではなく一般人の視線が割り込んできてトカゲは一瞬怯んだがすぐに平常心を取り戻した。淫魔相手に一番危険なのは自分のペースを見失う事だ。

 自分を保て。動揺を相手に悟られるな。己が狩人であると思い出せ。トカゲはふてぶてしく笑って淫魔の親玉――『沼男』を挑発してみせると、若干の沈黙の後に含み笑いが返ってきた。

 

(ええ、ええ。そうでしょうとも。ですがご安心ください。彼らはあくまでガルニチュール。メインデシッシュは私ですからねぇ)


 思考に絡みついた醜悪な思念を感じとり、トカゲは身構えた。来る。報告書にあるならばこの淫魔の得手は――

 

「んおぉっ❤」


 下半身を撫で回す感触に甘い声が漏れた。

 金属製の車両、その中空から現れたのは『沼男』が着ているものと同じスーツを着込んだ腕だった。筋肉で鍛え上げられた丸太のような腕とそれに相応しい五指がライダースーツの表面を這いまわる。

 指先が触れた箇所から快感な波のように拡がってトカゲはたまらず腰を振り、乳と尻を恥知らずに暴れさせた。

 

(すっげぇ!デカ乳をいきなり揺らしたぜ!)


 そして同時に送り込まれてくるギャラリーの思念。ゆっさゆっさと揺れる肉に学生たちが涎を垂らす。

 

(あんなにガタイがいいのに筋肉は柔らかいんだなぁ。揉んでみてぇ~)

(中に何も着てねえのかな。マトモな下着つけてたらあんなにケツ揺れねえよなぁ)

「くそっ!うるせえガキどもだな!こっちは今から戦うところだってのに――んあぁ❤❤おんっ❤」


 太ももを這いまわる指先を跳ねのけようとしたが内ももを揉みほぐされて膝が笑う。学生たちがいちいち反応するせいで思い切って身体を動かすことができない。淫魔相手ならばなんの羞恥心も無いが、幼い男子どもに欲情されるのはどうしたって気にしてしまう。

 

(ほら、捕まえましたよ。彼らが満足するように踊ってみせてください)

「あくうぅう❤❤離せぇ❤」


 トカゲが尻を振っている間にも手は増えて、腰を手に当てるモデルの立ち姿で固められる。そのまま背筋が真っすぐになるように正されると、まるで大胸筋を見せつけるような姿にされてしまう。

 事実、学生の何人かが強調された雄っぱいに注目して鼻息を荒くする。本人たちは盗み見ているつもりなのだろうが、その視線はあからさまに震える乳肉に絡みついて離れそうにもなかった。トカゲが拘束と視線から逃れようとすれば尻が揺れ、そちらにも視線が集まってしまう。もはや、ストリップの踊り子同然に全ての所作が男を誘っている。

 

「あ゛うぅ❤❤やめろ❤見るんじゃねえ❤」


 トカゲの声は届かずにただ顔を上気させて喘いでるようにしか見えないだろう。淫魔の手が増えれば増えるほどに快楽はあがり、撫でられている尻はもとより高速されている箇所からも心地良さが染み込んでくる。

 指に内ももや背筋を走られるとくすぐったさと快感で膝が笑うが手で磔にされているせいで膝を折ることすら許されない。

 加えて、青年たちの視線も愛撫のように肌を這いまわして快楽を助長する。トカゲが淫魔退治のプロでなければとっくにザーメンを漏らしてもおかしくなかった。

 

(まだ拘束しただけですよ……こうもたやすく屈服されると私としてもつまらないのですが?)

「うぅうぅ❤うるせぇ❤❤はん❤てめぇを誘うために煽ってやってんだよ❤❤ちんぽブチこみたくなったらいつでも言いやがれ❤」


 半分は虚勢。半分は事実だった。

 確かにたまらない快楽ではあるがトカゲにとっては耐えられないものではない。過去には服が擦れるだけでも射精する身体に改造された事もある。喘ぎ声こそあげてしまっているが、完全に屈服さえしなければいいだけだ。逆にこの状況を利用して淫魔を挑発してやるつもりだった。

 

(そうそう、その意気です。頑張って私と青年たちを虜にしてみせてくださいね?)

「ぐ、うぅうぅぉ❤ゴタクはいいがら、さっさと始めやがれぇ❤❤」


 牙を唾液で光らせながら煽るが、這いまわる手はあくまでもスローテンポだった。ゆっくりと大胸筋をすくいあげて、ナメクジのような速度で指を食い込ませてくる。尻を撫でている手も優美な円形をじわじわと押しつぶしてくる。黒革のきしむ音は電車の駆動音に紛れて消えてしまう。

 

「ん、む゛ぅ……❤」


 トカゲは可能な限り表情を取り繕った。淫魔相手には見抜かれてしまうだろうが、周囲を囲む学生たちには快楽で崩れた顔を見せるわけにいかない。もしも下品にイキ顔を見せてしまえばもっとおぞましい欲望と視線が注ぎこまれるに決まっているのだ。

 逆に快楽に耐えさえすれば。自然と学生たちの興味も消えるかそのうち電車から降りるはず。淫魔相手といえど少しの間なら平静を保つことができる。

 

「お゛あぁあ❤ケッ❤ケツゥ❤❤おれのケツがぁ❤」


 はずだが、トカゲは翠の鱗を火照らせて喘いでいた。

 乳と尻のデカ肉はダイナミックに揉み込まれ、トカゲは唯一自由に動かせる腰を下品に躍らせてしまう。

 学生たちからすれば胸や乳に手形がついて不可思議に肉が動くという非現実的な光景があるが、トカゲのエロさの前にはそんなことはどうでもいいようだった。

 

 乳と尻だけではない。股間をくすぐっていた手がスリットの膨らみを探り当て、指の腹で押し込み始めた。もう一本が肛門の上から擦り始めて、会陰部のあたりまで何度も何度も往復運動をしてくる。

 

「おぉおぉ~~っ❤❤ずりぃ❤そこ、触るな゛あぁ❤❤」

(な、あの人興奮してるんじゃねえか?顔が緩んでるぜ)

(確かに。ローターでも仕込んでたりして)


 自分がどんな顔をしているか思考で実況されるため、屈辱と羞恥心が加速する。あの淫魔どもとは比較にならない。快楽を助長する魔力もそうだが、手管の一つ一つが巧みでトカゲに快楽の火種を注ぎ続ける。手が触れるのはあくまでライダースーツの上からで、それも尻穴やちんぽといった乳首には手を出してしない。あくまでトカゲを悶えさせるようなもどかしくじれったいもの。まるで、自分の身体を美味くいただくための下拵えをしているかのような――そんな予感が腹の底で蠢いていた。

 

「お゛ぉおぉ❤❤ん゛ぁ❤てっ❤てめえぇ❤❤❤なんで、そんな゛に胸ばっがぁ❤」


 トカゲの予感は最悪の形で当たった。

 全身の這いまわりを続けつつ、何本もの腕が大胸筋へ集まってきたのだ。ライダースーツの下に風船でも詰め込んでいるような雄胸に群がった手は、それぞれが好き勝手に胸を責めたて始めた。

 大胸筋の根本を掴んでくびりだそうとする手。そのせいで余計に突き出した雄胸を小刻みに揺すり立ててくる手。先端三分の一ぐらいを真上から鷲掴みにしてくる手。どれも巧みにトカゲのデカ乳を愛撫してくる。

 

「胸ぇ❤❤ぐう゛ぅぅ❤やめろ❤❤胸なんて大してヨくならねえんだよ❤淫魔のくせに人のイイとこも分からねえのかよぉ❤」

(ああ、お芝居はいいですよ。あんな分かりやすく感じていらっしゃるのに分からないとは私の分身は不出来ですねぇ。お詫びに私が奉仕してさしあげますよ)

「お゛ぉおぉおぉ❤❤❤」


 自分の芝居までも見抜かれていた事がトカゲから余裕を奪う。乳首も弱点だが、トカゲの発達した大胸筋は揉まれるだけでもイける完全な性器だ。それゆえに隠す術も学んだのに、腕たちは無駄な抵抗をせせら笑うように揉み荒らしてくる。

 トカゲの鼻息が荒くなり童貞小僧たちでも分かってしまう発情顔になってしまっていた。

 

 責めは徐々に淫らさを増し、付け根をつかむ手は乳肉の根本まで含んだ中身を搾り出そうとして、下から揺すり立てている手は下から揺すり。一番先の手は、搾り、送り込まれてきた肉をグニュッと潰し、ボリュームを付け根に押し戻す。トカゲの乳は人工的な流れを作り出され、快楽を乳の中で流動させられる。そんなもの、耐えられるわけがない。

 

「ん゛ごぉおおぉ❤❤おでの乳がああ゛あぁあ❤❤❤お゛ぉおぉ❤すっげ❤❤雄乳おがじぐなるぅうぅうぅ❤❤❤」

(そうそう、胸の中でも特にココが弱いんですよね。ほら)

「あっひゃああぁ❤❤❤」


 トカゲの顎を跳ね上げさせたのは最も尖端を弄っている指先だ。乳の頂点を摘まみながらも乳輪へは足を踏み入れなかった指が、乳輪にゆっくりと加圧をかけてくる。

 指先はライダースーツに浮かんだ乳頭、その乳首には触れないように乳輪だけをなぞってくる。羽でくすぐられる程度の微弱な刺激でしかないはずだが、すっかり昂ってしまったトカゲには地獄の責め苦であり背筋をたわませてしまう。

 

(やっぱり胸が弱いんですねぇ。乳首だけでイき狂えてしまう淫売に囮捜査なんて務まるのですか?)

「ぢがう゛うぅ❤❤おれは、胸なんが弱点じゃあぁ❤」

(そうですか。ではもっと強く虐めても平気ですね?)

「~~~~っ❤❤❤」


 学生たちにはトカゲの首筋に走る緊張が見て取れたことだろう。顔面の筋肉も快楽で腑抜けているくせにピクピクと痙攣を続けて、悦びと苦しみを混ぜ合わせたような表情を形作っていた。

 そそり勃っていた雌芽を、親指、人差し指、中指が三方から押しつぶしてくる。それは猛禽類が獲物を捕らえた時のような容赦の無い力加減でトカゲをあっという間に追い詰める。

 

「ぐぎぃいぃい゛ぃいぃ❤❤❤ぢぐび潰れるぅうぅ❤❤」


 牙の間に唾液の柱をかける筋肉トカゲ。あからさまな内股になって喘ぎ散らす姿を見て、学生たちは今にも鼻血を噴きそうになっていた。硬度を増した乳首とアヘ顔に股間を窮屈そうにして「アレ絶対イってるって!」「おれのこと誘ってんじゃねえか!ヤらせてくれるかも」「すげぇ!乳首めちゃくちゃでけぇよあの兄ちゃん!」と卑猥な思考を投げつけられる。


「見るな゛あぁ❤❤これ以上見ないでくれぇ❤❤❤お゛ぅうぅん❤」

(立派な乳首です。私も虐めがいがありますよ。くすくす)


 三本指が情け容赦なく乳首を嬲り始める。親指と中指で挟み、指の腹で転がす。空いた人差し指は、頂点を軽くひっかき、あるいはスーツからでも分かるほどに顔を出した乳の切れ目に爪先をねじこんだ。

 乳首だけを粘着質に虐めると、続いて乳暈ごと摘まみ上げて前方に向けて力いっぱい引き伸ばす。ライダースーツによる防護が無ければ拷問にも使える力加減だった。

 和らいでいた双乳への揉み込みも激しさを再開した。黒革の下で乳肉は汗みどろになっているらしく、スーツの内側で濡れた音がする。谷間の間で汗が鳴っている。乳を這って流れ落ちた汗粒が腹筋を舐めて紐パンが張り付く股間へと合流していた。布地が既に濡れているのは汗のせいだ。絶対にスリットから発情汁を漏らしているわけではない。そう言い聞かせないと耐えられなかった。

 

(もっと胸を突き出してください。これじゃいやらしい乳首が良く見えませんよ)

「ひぎぃいい゛ぃぃ❤❤伸びる❤乳首伸びちまうよおぉおぉ❤❤❤おっ❤んぉおぉ❤❤」


 乳首を引っ張られると抗えなかった。背筋をそり返らせて、胸を突き出して挑発するポージングを取ってしまう。乳派閥に属する学生たちの狂喜が脳みそに突き刺さってくる。

 興奮のし過ぎでトカゲも文字に起こせないほどの情報量だったが、腕が首筋へ伸びた途端にある一つの思考に統一される。

 

(チャックだ!チャックが下ろされてる!生乳!生乳だっ!)


 首元に這った腕が、喉まで上げていたファスナーをゆっくりと下ろしてきたのだ。汗と火照った身体でサウナになっていた身体に冷房が流れ込みどれだけ発情していたのか思いしらせてくる。張りと疼きのせいで耐えがたいまでに膨らんでいた窮屈さが薄れ、吐息をこぼしたくなるような解放感を味わわされると共に――

 

(汗でベトベトだ……生のオッパイ……濡れてる、エロすぎる)


 学生たちのぎらついた視線に純白な胸肉が晒される。翡翠の鱗と映える白い肉に玉粒が浮かぶさまは官能的であり、チャックが勝手に動いた理屈さえどうでもよくなっているらしかった。

 視線を肌で感じてトカゲの胸に怖気が走るが、腕は追い打ちをかけるように黒革の内部へと潜り込んでくる。両腕を交差させて腹筋のあたりにX字を描き、左右の爆乳をそれぞれ握りしめてきた。スーツ越しでは味わえない肌と肌との擦れ合いだけがもたらす心地良さがトカゲの口を大きく開け放たせ、目の錯覚でもなんでもなくスーツの表皮に浮かび上がった手の輪郭が学生たちの理性を狂わせる。

 

(揉め!)


 学生たちの願いは統一されていた。

 

(揉め!そのデカ乳揉んでイかせちまえ!)

「う゛ああぁあぁ❤も、もう❤もう見るのやめろおぉぉ❤❤❤」


 ちんぽを硬くした学生たちの思念がトカゲの脳細胞を焼き焦がす。トカゲが圧倒的な情報に酩酊する隙を狙って、淫魔の腕がリクエストにお応えした。トカゲの両乳首を、根本から曲げるように捏ねてきたのだ。

 

「あ゛っひゃああぁぁあぁ❤❤❤❤」


 崩れ落ちようとしても、腕が抱き止めて逃がしてくれなかった。直接指で挟まれての愛撫はたまらなかった。人差し指と中指のあいだで挟み、指を反らせて引き伸ばしつつ、ブルブルと揺すり立てる。スーツが引き伸ばされるせいで乳肉の露出具合が上昇し、少年たちの股間が湯気が立ちそうなほどの熱量を発していた。雄の欲望を剥き出しの視線は、指の愛撫とは別ベクトルで快楽を叩き付けてくる。

 

 トカゲの膝が笑っていて、腕が離れたら尻だけを掲げて倒れそうだった。今までのどんなセックスよりも上を行く喜悦が尻尾の根本から肛門を這いあがり、結腸にまで潜り込んでいる。

 

「う゛ぉおぉ❤❤お゛っ❤んぉおおぉ❤❤❤お゛ッ❤それやべえ゛ェええぇぇ❤❤❤❤」


 引っ張られていた乳首が、一転して乳肉のなかに埋められた。親指で乳頭を陥没させられた状態で、力任せに大胸筋を揉みしだかれる。トカゲの乳首はパン生地に埋没させられたレーズンのように圧迫され、潰される。

 雌突起も支える土台も互いの肉体をぶつけある悦びに気付かされ、自分自身の身体を淫具に変えられてしまう。トカゲは乳首伸ばしの時のはオクターブが違う喘ぎ声を上げ続けた。

 

(はい、次は逆方向に出発しますよ。しっかりついてきてくださいね)

「んほぉおお゛おぉおぉおぉ~~~❤❤❤❤」


 魔指が再び乳首を伸ばし、親指と人差し指の腹でしごきあげてくる。自分のちんぽをしごくよりも激しい摩擦ぶりは、トカゲの理性をゴリゴリ削り取っていく。目の中でチカチカと極採色が明滅していた。

 乳首の中で快楽が弾けると脳みその中で多面性じみた輝きが照らしてくるのだ。トカゲの瞳は今にもまぶたの中に隠れそうだった。

 

(もう雌の顔ですが……まだ負けていないと言い張りますか?ギブアップでしたらいつでも受け付けますよ?)

「ふじゃけんなあ゛あっ❤❤こ、この程度でおりぇが負けてたまるが、あ゛ぉおおぉぉおおぉおぉぉん❤❤❤❤」


 反論しようとすると乳首を摘まみ上げられて、飴細工でも作っているみたいに転がされた。残りの指で大胸筋をゆっくりと搾り上げてくる。まるで女にするような愛撫で乳肉は蕩かされる一方で、乳首は万力に挟まれるような力で潰されている。そのどちらでも快楽しか感じずに、トカゲの股間は紐パンで受け止めきれない愛液で濡れそぼっていた。

 

(彼らの顔を見てくださいよ。今晩は貴方の痴態でオナニーに勤しむのが確実です。青少年の性癖を歪める気ですか?)

「い、言うな゛ああぁあぁ❤❤❤」


 トカゲは必死に目を逸らしていたが、学生たちの思考からは逃れられなかった。乳首でイき狂う姿に食いついて、もはや盗み見ようとする小細工すらしていない。

 

(もう無理だ!ここでオナりたくって我慢できねえよ!)

(ヤらせてくれねえかなあ。絶対おれを誘ってるよ。すっげぇ雄くせぇ……)


 乳首に根本を押されると牙が剥き出しになる。腋と乳肉の境目を抉られると舌が天を突く。下乳に浮き出している血管を揉み込まれると唾液が噴きこぼれる。

 ライダースーツの中は汗みどろだった。肩が落ち着きなく上下し、足の付け根がガクガクと震えている。

 

(許可を出してあげましょうか?あなたを好きにしていいですよ、と。若い子のちんぽが好きなだけ貰えますよ)


 淫魔は侮蔑しながらもぬかりなく乳肉を捏ね上げてきて、奥歯がカチカチと鳴ってしまう。自己弁護の権利すら与えられない。

 揉まれる。延々と揉まれている。乳首が潰される。乳輪が抓まれる。乳はマンコ以上の性器であり、トカゲの全てが乳で支配されていた。視界が歪み、脳が揺れる。乳肉が圧迫されるたび全身の血流が反旗を翻して、体温を乱高下させられる。


「あ゛あおおぉおおぉ❤❤❤むりいぃいぃ❤もう無理だあぁ❤❤胸❤いぐいぐ❤❤おれ、おっぱいでいがざれるうぅうぅ❤❤❤」


 乳首を潰す潰す一撃一撃が胸のふくらみを串刺しにした。内臓を灼いて背筋まで抜けていく快楽の芯に、揉み込みの刺激がぶつかって乱反射を繰り返す。胸全体に満ちていく悦びの波が、身体の隅々まで満ちて溢れ出しそうになる。

 

(おっ、おおぉ!アイツ、イきそうになってやがる!)


 雄としての本能か、童貞でもトカゲの絶頂を感じとれたらしい。無数の視線がぐらついた眼球や広がる鼻の穴や首筋の微痙攣を確認し、最高の瞬間を脳みそに焼き付けようと集中する。

 

「い゛やだあ゛あぁあ❤❤❤見るな❤いぐ❤いくがらぁあ❤❤おれ、胸でっ❤おっぱいなんがでええええぇぇぇ❤❤❤」


 ぶ厚い背中が折れる限界まで仰け反った。天を見上げて、舌を千切れんばかりに伸ばしてトカゲは叫ぶ。

 

「い゛っぐぅううぅうぅうぅ❤❤❤❤❤」


 快楽と敗北感が脳みその中を乱反射する。唾液が泡となって口角に溜まっていた。仰け反った最高に無様な体勢で、日常生活はありえない痙攣を曝け出す。

 

「う゛ごぉおおぉおぉ❤❤❤お゛っ❤んっお゛ぉおぉ~~~~❤❤❤❤」


 学生たちにトカゲの嬌声は聞こえなかったが、その痙攣と口から垂れ続ける涎が証明していた。

 この筋肉の鎧を身に着け、いかにも優れた雄であると主張しているようなトカゲ野郎が胸を弄られて絶頂したのだと。

 

「も、もう゛やめ゛ろおぉおぉ❤❤❤それ以上はあ゛あぁぁ❤❤」


 そして、理解する。

 この淫らな踊りは終わらないのだと。

 絶頂から降りる間もなく腕が這いまわり、トカゲの精神が打ち上げられる。

 

「いぐうぅうぅ❤いぐいぐっ❤❤いぐのぉおぉぉおぉ❤」


 乳首が潰されるごとに脳が白く沸騰し、下半身が愛液でぬるついていく。

 トカゲがどれだけ哀願しても腕が止まることはなく、次の駅に到着するまで絶頂ショーを披露し続けた。

 

 

 ***

 

 電車が次の駅に到着してようやく腕はトカゲへの凌辱を止めた。と言ってもそれは開放ではなく、ショーの合間の小休止でしかない。学生たちはトカゲをグルリと囲むように円陣を組み乳首責めで喘ぐ雄を独占していた。

 淫魔はそれに合わせて手での踊りを変えてきた。つり革の代わりに生えてきた腕はトカゲの広い方を抱きかかえ、顎下を撫でてライダースーツへ侵入し、腹筋をなぞりスーツと紐パンの狭い隙間にその指を潜らせてきた。下から生えてきた腕は折れ曲がった膝を抑え、トカゲが崩れ落ちる権利を奪い取っていた。

 

(オイッ!なんか股間が膨れてんぜ!勃起してやがるのか!)

(いや、玩具じゃないかな?スーツの下を這いまわってるみたいだ)


 股間をまさぐる布は紐パンの上から圧迫してきて、スリットの溝へ布の上から指をねじこんできた。敏感な粘膜で感じる布地はしとどに濡れていて自分がどれだけ感じていたかを教え込まれる。

 

「くあっああぁ❤❤んひぃ❤やめろおぉ❤❤」

(おや、乳首だけではなくこちらも弱いんですね。スーツの中にプールができてますよ)


 淫魔の言う通りトカゲのスリットからは愛液の大洪水が起こっていた。元々トカゲはスリットがそこまで弱いわけではなかった。乳首や尻、ちんぽの方がよほど弱い。

 しかし、手によって身体の緊張をときほぐされて学生たちの視線で羞恥心を燃やされている今、スリットは本物の女性器も顔負けの快楽器官と化していた。内股になって隠そうとしても脚を動かすことすらできないのだ。スーツの上から突き刺される悦びに性器は貪欲になる。

 

「うぅあ゛あぁあぁぁ❤❤❤あおおっ❤」


 太い指が布地をゆっくりとくじりあげてきて、鼠径部あたりの肉が痙攣した。ブーツの中で指が芋虫のようにのたうっている。マンコとして目覚めたスリットが悦びを送り出し、腰の裏をじっとりと重く感じさせてくる。

 

(ほら、同じ踊りばかり踊ってはいけませんよ。ちゃんとサービスしてください)

「あ゛おおおおおっ❤❤❤」


 雄膣を抉る指に命じられて、トカゲはその場で回転した。学生たちがおおげさにわめきたてるのを聞く中で、ライダースーツの雄はストリップ・ショウの踊り子さながらに肢体をくねらせて回る。

 一回転すると腕に引っ張られ、上半身をベッタリと窓に密着させられた。両手を高く吊り上げられ、窓ガラスにくっつけられる。ファスナーを降ろされていたせいで大胸筋全体が露出して、冷たいガラスにぴったりとくっついていた。外から見れば淫らさの塊であるような肉が丸見えになっていることだろう。爆乳がガラスで潰れ、乳首がひしゃげているさまはそれだけで射精できそうだった。

 

(おおおおっ!すげぇ!ケツケツケツッ!おっぱいもだけどケツもすっげぇ!)


 そして車内から見れば洋モノのポルノ女優にお馴染みのポーズを取ったトカゲを拝める。バックからケツを掴んで犯してくださいと、大臀筋を突き出し媚びを売りまくっているその姿は、むさ苦しいその筋肉とのギャップのせいでいっそうの淫靡さを醸し出している。

 尊大なデカ尻に浮いた紐パンの線が、黒革の中身に対する想像を掻き立て、ギャラリーの性欲を煽り立てた。今すぐにでも尻にむしゃぶりついたとしておかしくない。

 

「やめろぉ……❤❤見ないでくれ❤おれは、お前らを助けるためにぃ❤」


 対岸のプラットホームにいる何人かが硬直していた。サラリーマンの何人かが双乳をスマホにおさめている。視線と羞恥というノンタッチの愛撫が酸のようにトカゲの精神を蝕んでくる。

 学生たちの何人かは尻と生乳の両方を拝もうと奇跡的な角度を探していた。中にはズボンに手を突っ込んで扱き立てている者までおり、車両の中に青い精気が充満する。

 

(ふむ、こうも盛り上がってくれるとただ腕で辱めるだけではいけません。私もサービスしましょうか)

「な、なにをする気ぃいい゛ぃいぃいいっ❤❤にゃ、にゃにごれええぇぇぇ❤❤❤」


 トカゲの腕に絡みついていた腕たちが不気味な蠕動を繰り返し始めたかと思うと、スーツやワイシャツの袖が溶け、全体のフォルムが流れていく。その反面色彩を失って黒灰色の闇へと変わる。

 そして、暗闇たちは形を失ったままライダースーツの隙間に侵入し、まるでスライムのような粘着力と淫らさで身体の穴という穴に潜りこんでくる。

 

「あ゛っ❤❤やめ゛ろぉおおぉ❤しょ、しょこ入ってぐるな゛あぁあぁ❤❤❤」


 粘液どもは悪質極まりなかった。あらゆる筋肉の隆起を撫で回し、乳と尻を揉み回し、汗と愛液を舐め回し、柔肉を噛んで、尻を叩いて、乳の付け根を縛り付けた。ライダースーツの下で濡れる鱗を覆い尽くした。筋肉の弾力を味わい尽くした。

 肌に張り付くスーツは最悪の拷問具。不定形になり舌の粘着質と指の力強さを兼ね備えた責め具は隙間で鱗を舐め回してきた。腋のくぼみに溜まった汗をすすり、背筋を舐め回される。力強い動きで丸尻が揉み潰されている。

 

「んんおぉおぉおぉおぉんっ❤❤❤」


 尻の谷間をなぞられてトカゲは限界を迎えた。悪魔のような腕たちはタイミングを合わせて手を離すと尻だけを掲げて崩れ落ちていく。窓ガラスに胸を貼りつけ、乳肉の雑巾で拭き降ろしながらその場に跪いてしまった。筋肉のクッションから染み出た生汗が、ガラスの上に下品すぎるアートを描いている。でかい尻を見下ろされる形んあって羞恥心が更に増す。

 

「あっああ゛あぁあぁ❤❤❤もう見ないでくでぇ❤おりぇが、ケツ振ってるとこぉ❤おおおぉおぉ❤❤❤」


 スーツの下を住処とした粘液たちは、スリットと尻穴のまわりに密集していた。脚の付け根を舐め上げ太ももの凸凹を撫で回す。スリットの入り口を擦り上げていた手が触手のように細く枝分かれし、蕩け切ったスリットマンコに潜り込んだ。

 

「はひい゛ぃいぃいいぃ❤❤❤」


 尻肉が大きく跳ねて学生たちが歓声をあげた。欲望の蛇たちが愛液の沼地で泳いでいた。人差し指と薬指だった触手がスリットの入り口を押し広げ、親指と小指が周囲の汗と愛液をすすっていた。中指は内部に侵入し柔肉を啄んでくる。

 弾力があるくせに硬く、流動しているくせにザラついている触手に内部を擦られるのは拷問そのものだった。触手はトンネル探検を進めてくるだけで腰の奥に雪崩れ込んでくる疼きをこらえきれず尻を左右に振り回してしまう、スリットと肛門から蜜が溢れ出して学生たちの鼻腔をくすぐっていた。

 

(雌くっせぇ!ケツ振って、すっげぇエロい匂いプンプンさせてる……)

「あ゛お゛お゛おおおぉーーっ❤❤❤お゛んっ❤ひぃいぃい゛ぃいぃいぃ❤❤」


 少年たちの思考も歯止めにはなれなかった。尻が暴れ回って止まらない。盛りのついた雌犬となって尻を振る自分を抑えられない。今のトカゲがこい願っているのは救いの手なのか、触手よりもずっと逞しくて太いモノなのか。トカゲ自身でも分からなかった。

 

「あ、あの……大丈夫です、か?」


 トカゲの欲望が伝わったのか、学生の一人が足を踏み出して尻へと手を伸ばした。周囲の目や倫理観よりも欲望を優先させ、弾けそうなデカ尻を掴もうと手を伸ばす。

 

「あ゛っ❤ぎいぃぃっ❤❤おおぉ❤ん゛っほぉおおぉおおぉおおぉぉおぉぉぉ❤❤❤」

「う、うわっ!」


 尻に指が触れそうになった瞬間、トカゲが背筋を仰け反らせて舌を天に突き上げた、伸ばされた手が中空で止まり、トカゲの瞳から流れ落ちる涙を見てビクッと引っ込んでいく。男前と言える顔つきに沿って震えが伝わり、舌肉が死にかけの虫じみた痙攣をさらし――

 

「いぐっ❤いぐうぅ゛ぅううぅうぅうぅぅ❤❤❤」


 完全に白目を向いて牙を剥き出しにしたイキ顔が晒される。叫び声と一緒に富んだ唾液が顔に飛んで、大切なものを失ってしまった人間の雰囲気を漂わせていた。

 肩に、腰に、そしてつま先に痙攣が走る。黒革が擦れてギチギチ鳴き、開け放たれた胸元から濃厚な雄の匂いが立ち昇った。

 トカゲのスリット内部に侵入した触手は神経の密集したあらゆる部分を擦り、突いてトカゲを絶頂へと追い込んでいた。耐水性の高いライダースーツでなければ噴いた潮が床を濡らしていたほどに。

 

「あ゛ぐぅううああぁぁ❤❤いぐ❤いぐのぉおおぉおぉおぉぉぉ❤❤❤❤」


 突き上げられている尻だけがしなりと粘りけたっぷりの上下動を繰り返して学生たちの欲望を掻き立てた。トカゲに手を伸ばそうとした少年も動けないでいた。トカゲを視界に捉える雄すべてが股間を掴み、勃起ちんぽを扱きたてていた。


(どどど、どうするっ!すげぇエロいのにっ!どうすりゃいいんだ!)

(セ、セックスしてみたいけど、でもどうすれば)


 童貞小僧しかいなかったことがトカゲにとって唯一の幸運だったかもしれない。滾る欲情ばかりがあり、トカゲに対してそれをぶつける術を知らない。セックスという概念だけは知っているのに、目の前のでかい尻にどうやって使えばいいかが分からない。

 そんな青年たちを尻目に、ガタイの良い男がトカゲへと歩み寄った。

 

「おやおやおや……これはいけませんね。具合でも悪いのですか?私に捕まってください」

「ん❤くああぁ❤❤てめぇ❤なんの、つもりだぁ❤」

「具合の悪そうな方を放っておけませんよ……さあ、こちらの席にどうぞ」


 具合を悪くさせた張本人はぬけぬけとそう言ってのけるとトカゲを空いた座席へ腰かけさせた。ご丁寧に着ていたジャケットを下半身に被せると隣へと腰掛けた。

 行動だけ見るならば凍てついた現代社会には珍しい聖人ぶりで、ちんぽを勃たせていた青年たちが己を省みるほどだった。この男こそがトカゲを辱めている淫魔であり、今もライダースーツの下に触手を忍ばせているとは夢にも思うまい。

 

「お前、何を企んでやがるぅ❤❤」

(いえいえ、このままではワンサイドゲームですから。あなたに勝ち目があるようにルールを緩めようと思いまして)


 トカゲは黙って睨みつけたが、安堵の心を抑えられなかった。

 今も鱗に絡みついている触手に快楽を送り込まれているのだ。スリットに潜り込んでいる連中が暴れ回ればまた潮を吹きかねなかった。認めたくはないが、この淫魔はトカゲの手に負える相手ではなかった。

 

 このまま逃げるか、トカゲを侮っている隙を突くか。どちらにせよルールを緩めると言われれば乗るしかない。トカゲの沈黙を肯定と受け取ったのか、淫魔は優雅に言葉をつむぐ。

 

(一度この電車を降りていただきまして、夕方もう一度指定した車両に乗っていただきたいのですよ。その車両が路線を一周するまでにあなたが墜ちなければ私の負けです)

「……路線を一周するのに1時間もかからねえぞ。おれを舐めてやがるのか」

(ええ、正直期待外れでしたので。これでもまだ厳しいとすら思っておりますよ。くすくす)


 奥歯が砕けそうだった。屈辱と怒りで殴りかかりたかったが、いつの間にか両手と両脚が拘束されていた。まだ自分は檻に囚われている。目の前のクソ野郎の気まぐれで処刑されてしまう立場でしかない。

 

 トカゲは深く息を吸い込んだ。

 自分は何だ?囮捜査官。恥辱も屈辱も自分を飾るアクセサリ。淫魔が食らいついてくるならばプライドなんて捨てるべきだ。

 誇りのために死を選ぶのは戦士の特権だ。囮にとって最も恥じるべきは獲物を逃すこと。

 

「ああ、分かった。やってやろうじゃねぇか。おれを舐めたこと、後悔させてやる」

(グッド!それでは後で衣装とメモをお渡ししますね。指示には必ず従ってください。次も素敵な衣装を用意しておきますよ)

「テメェのセンスが皆無の衣装をまた着るハメになるのかよ。まだ下着だけの方がマシなんだがな」


 トカゲが虚勢を張ると愉快そうな含み笑いが帰って来た。この獲物はまだ楽しめる。それが嬉しくてたまらない様子で目を細めていた。

 その時、車内のアナウンスが列車の出発を告げた。不快な電子クラシックを合図にレール音が再び鳴り響く。

 

(元気になられたようで何よりです。が、ゲームから逃げられないように保険をかけさせていただきますね)

「てめぇ、おれが逃げると思ってやがんのか?おれぁそんな臆病者じゃ――あ゛っ❤」

(ええ、私もそう思いますよ。保険は口実で、あなたを虐めたいだけです)


 トカゲの舌をひきつらせたのは肛門のひやりとした感触だった。トカゲを辱める最中か、或いは最初から仕込まれていたのか、ライダースーツのちょうど尻の谷間へ食い込む部分にぱっくりと切り込みが入れられていた。

 トカゲの汗と愛液で蒸された肛門周りがやけに涼しくなったかと思うと、同時にシートの上に濃厚な雌のシミを作った。周囲の学生が鼻を鳴らすのは偶然なんかではないだろう。

 

 そして、垂れ流した愛液を埋めるようにして触手がずるずると肛門に潜り込み始めた。ご丁寧にも、ちんぽのような太さと硬度を備えたままで直腸をめりめりと押し広げる。

 

「お゛、ごぉお゛ぉおおぉぉおぉ~~~~~❤❤❤❤」


 思わず浮かせようとした腰は微動だにしなかった。ジャケットの下では腕達が太ももを拘束し、股を開いた体勢で固定していた。両腕も固められていて、トカゲは必然的に背筋と首筋をのけぞらせて絶叫した。


「お゛っほおぉお゛ぉおぉ❤❤お、おがざれええぇえぇ❤❤❤」


 実際は声として表されることはなかったが、そのイキ顔だけで周囲の興奮が湧き上がった。また始まる卑猥なショーに脂っぽい視線を向ける。

 

「ん゛ひぃい゛ぃいぃ❤ふとっ❤これ、太い゛ぃいぃいぃ❤❤❤❤」


 上っ面を整える余裕なんてなかった。胎内をみっちりと埋め尽くされる衝撃は火照ったマンコに耐えられるものではなかった。

 学生たちに視姦される中ケツマンコを犯されている。その長さも太さもそこらのちんぽでは敵わないサイズであり、直腸でその形を分からされてしまう。エラが張り出しているせいで直腸が抉られていた。腸壁が雲形定規みたいにうねらされているのが分かる。肛門をしつこく擦り上げられて背筋が痺れてくる。

 

「こ、こんなとごろで、え゛ええぇ❤❤お゛ひいぃ❤んっごぉおおぉ❤❤❤」


 ガタン!とレールが大きく軋んだ音に紛れて触手の突き上げが開始された。座席と尻が密着しているにもかかわらず、触手は悠々とピストンを行ってくる。

 

「んお゛ぉおおぉっ❤❤❤お゛お゛おおぉ❤❤おぐにぃ❤ぐるの゛ぉおぉおぉおぉ❤❤❤」


 ジャケットに隠れて。でかい尻の下で。辛うじて秘密を守られている聖地に、ちんぽの形を模した触手が苛烈極まるピストン運動をけしかけてきた。それは人間には不可能な激しすぎる律動だった。肛門が伸びてしまう勢いで引き抜き、肉襞たちを削って、直腸の行き止まりを突き上げる。発達したカリ首は内側から直腸を圧迫し、下半身に痺れを走らせた。

 

「あ゛お゛ぉおおああぁ❤❤❤あっがぁあぁ❤ケツッ❤❤ケツがあぁあぁ❤❤❤」


 トカゲの全身が、まるで電気ショックでも受けているみたいに異様な緊縮を繰り返す。座っているにもかかわらず胸が勢いよく反り返って、乳首まで丸見えの双乳をパンチング=ボールよろしく揺らしていた。

 憤怒とも滂沱とも言い難い表情、とにかくナマの精がダダ漏れになっている相を浮かべて、首筋が茹で上がり、ドッと汗をかいて、再びきつい体臭をゆらせだした。

 

「や゛め゛ぇ❤❤きごえるぅう゛❤けツマンコぉ❤❤❤マンコがぐちょっでずるの聞かれるがらあ゛ああぁあぁ❤❤❤❤」


 ジャケットの下からグチョグチョとマンコ肉がたわみ、粘膜が潰れる粘音が漏れてくる。車内の喧噪でも車外のレール音でもかき消せないほどの、あからさまな音色だった。学生たちもその卑猥な音色に気付き、音源に向かって欲望を剥き出しの視線を注いでくる。物理ならざる力が焦点を結び、トカゲの股間を炎のように炙り立ててくる。

 

「見るな゛ああぁ❤❤これ以上は、ほんとに、い゛ぃいいぃいぃいぃっ❤❤❤」

(そんなに露骨に喘いでは痴漢というより公開レイプになってしまいますよ……表情を抑えるために一度イきましょうか)


 淫魔の触手は上下の激しい突き上げだけではなく、前後左右にその砲身を揺さぶってきた。直腸の敏感なポイントを悪辣に削り取って、トカゲの忍耐心にヒビを入れる。亀裂を走らせ、崩れさせ、決壊させる。

 

「いっぐぅううぅうぅぅ❤❤❤❤」


 トカゲの顎がのけぞって、天井に向かって唾液を吐いた。汗の飛沫を散らしながら首を折った際、間近で見下ろす学生の顔を見た。見てしまった。緩み切ったイキ顔と焦点を失った瞳を、見られていると認識してしまった。

 

(これ、マジでイってるよな……)

(一人でイきまくってんのか?やべ、変態じゃん)


 青年たちの見下したような思念はトカゲの自尊心を削り、凶悪な触手はマンコの内壁を削っている。股関節の駆動域という限界がない触手は広範囲な突きこみを激しく連続させてくる。さらにそこに電車の振動を流し込んで、バイブレーションにように痙攣を味わわせてくる。結腸の入り口をしつこく押し上げられ、揺すられ、雄の子宮が蕩けそうだった。上半身だけを陸に上がった魚のようにのたうたせる様は、憐れなまでに官能的だった。

 

「おぉおおぉ❤❤❤ま、まひゃいぐうぅうぅうぅ❤❤」


 電車という公共の場でブタ箱寸前の猥褻行為を働く大男。それも筋肉や突き出た肉をこれでもかと見せつけるライダースーツ。どう見ても変態そのものであるが、トカゲは真剣そのものだった。座席に染み込む恥蜜が、でかい尻の面積を越えてそのまわりを縁取り始めていた。

 

 このままではばれてしまう――分かっていても下半身は制御を離れて淫乱汁が漏れでてくる。股間に削岩機じみたピストンを使い、恥骨どころか脚の付け根までバラバラになりそうだった。獰猛な快楽が内臓を揺さぶり、背筋が湾曲していた。身体の中身を丸ごと作り変えられてしまいそうな破壊的な悦びと、脳みそを甘やかに溶かしてくる毒のような悦び。二つの共鳴によってトカゲという個が崩壊させられようとしていた。

 

「う゛ぐぅごおぉおぉおぉ❤❤❤ギッ❤お゛ォお゛ぉおおぉぉお❤❤」

(いいですか?指定した車両に必ず乗り込んでくださいね?もしも約束を破れば……)


 異形のちんぽは肉の軋みを伴いながら結腸口をこじあけ、踏み入れてはいけない雄の子宮に侵入してきた。下っ腹の奥で内臓がめくり返され、重々しい衝撃がほとばしってくる。筋肉が内からゆがめられ、ライダースーツの下で腹筋が醜く膨らんだ。

 

「わがっひゃああぁあ❤❤守る゛ぅううぅ❤やくぞぐまもるがらあ゛ああぁああぁ❤❤❤」


 触手が雄性を守る最後の防衛線――結腸口をことさらに抉り、上半身をばねじかけのようにお辞儀させてくる。粘膜を剥ぎ取られているようなおぞましさが極限まで行きすぎて正反対の快楽につなげられる。極彩色の酩酊感が湧き上がり、有無を言わさず溺れさせられる。曲がり角を越えたその先まで触手が潜り込んできた時には本気で狂いかけていた。

 

(はい。それではドレスコードを守って来てくださいね?お待ちしていますよ)

「――――ッ❤❤❤❤」


 淫魔が耳元で囁くと、触手は最後の追い込みをかけてきた。結腸まで侵入した状態で回転をし始めて、ケツマンコの全てを擦り上げてきたのだ。直腸よりも脆弱で敏感な結腸をカリ首でこそぐように刺激され、トカゲの視界で星がいくつも弾けた。

 触手は回転とピストンを加えた人外の動きでマンコすべてを凌辱されて、トカゲの背筋に鬼の形相が浮かび上がり、首の血管を浮きだたせた。瞳が完全にまぶたへ隠れ、断末魔じみた喘ぎを噴き上げる。

 

「イッグぅうぅうううぅうぅ❤❤❤❤❤」


 現実逃避の願いに後押しされて、トカゲの意識は急速に薄れて行った。駅への到着を告げる車内のアナウンスが子守歌のように聞こえる中で、最後に見えたのは淫魔のにやけ面ではなく涎を垂らした学生たちの顔。

 

(ヤりてえ……このエロいおっさんにちんぽブチこんでみてぇ!)


 願いにも似た思念を感じて、トカゲの意識は闇に沈んだ。

 

 

***


 都心の駅には大体設置されている、駅員専用のシャワールーム。

 捜査官としての立場を利用したトカゲはそこに逃げ込むとすぐに、ライダースーツのファスナーを降ろし始めた。


「はっ❤ぐ、ぅうぅぅ❤❤あ、あの野郎ぅ❤絶対ブッ殺してやるぅ❤」


 トカゲは忌々しく、それでいて甘さを帯びた声で吠えると纏っていたライダースーツを脱ぎ捨てた。肛門とスリットのベトつきが屈辱感を煽ってくる。べとべとになった紐パンを脱いで、発作的に床へ叩き付けてしまった。たっぷりと湿り気を帯びた布切れが、生物を潰したみたいな音を立てる。

 トカゲは布切れを睨みつけた後、自分の股間を見下ろした。スリットからの汁で川ができた太もも、そして完全にはみ出して勃起した自慢のちんぽ。うれし涙のように先走り汁を漏らし続けていた。

 

「くそっ、落ち着け。興奮してたらあいつの思うつぼ――んおぉ❤んくうぅうぅん❤❤❤」


 血が上った頭を鎮めようとしたが、結腸まで埋め尽くしているバケモノが身動きをすると思考が乱される。絶対に防ぎようがない方法で貧乏ゆすりめいた上下運動を塗りつけられて、トカゲのデカ尻がもの言いたげな縦振りを繰り返す。

 

「こ、これでぇ❤ずっとぉ❤❤❤そんなのぉ❤」


 淫魔は夕方の車両に乗り込むようにと言っていた。時刻はまだ昼すら回っていないというのに、トカゲは足腰を震わせて立つことがやっとというコンディション。こんなざまで淫魔に立ち向かうなど殺してくれと言っているようなものだ。

 しかし逃げようとすれば淫魔は触手を暴れ回らせてトカゲをイき殺すだろう。それに、この場で逃げてしまえばあの淫魔を捕らえるなど二度と不可能。退くも地獄進むも地獄。トカゲには無数の路線があるようでいて、そのどれもが淫魔という終着駅へと向かっている。

 

「やるしか、ねえんだ❤❤こんなモンにっ❤おっほぉおぉ❤❤❤」


 鼻の穴が拡がった。男の子宮で暴れていた触手が、その蠕動を激しくさせていた。粘膜はミクロン単位で削り取られ、正気がグラム単位で失われていく。神経に直接サンドペーパーを当てられているみたいないたたまれなさが、尻の踊りを止めさせてくれない。

 

 尻の揺れに合わせてちんぽが揺れて、何度も腹筋を打ち据えた。ウナギかヘビが腸内で踊っているようだった。敏感なヒダが引き延ばされ、局所的に引き延ばされ奥まった空間に潜り込む。トカゲは膝をついてのたうってしまいたかったが、鋼の意思で持ってきたボストンバッグに手を伸ばす。

 

「ぐ、ぐぅうぅ❤き、着替えねえと❤❤❤じゃねえと、難癖つけられて逃げられるかもしれねえ❤」


 それは、淫魔に指定された衣装が入っているはずのバッグだった。トカゲが駅で意識を取り戻した直後、傍らにメモと一緒に置かれていたものだ。

 淫魔相手に意識を失ってしまった自分を恥じたが、死んでいないことに希望を見出していた。死なない限り負けではない。いくらでも反撃のチャンスはある。腰をくねらせながらもバッグに入っていた衣服を取り出してみたのだが――

 

「なっ!何だこれ……!」


 ボストンバッグに入っていたのはトカゲの巨体でもサイズが余るパーカーだった。トカゲの腰を越えてミニスカート並みにトカゲの太ももを裾が隠せてしまうほどだ。

 筋肉をみせつけるのが趣味なボディビルダーが着るような、身体の正中線上以外の布が省かれた露出が多いデザイン。脇腹も腹斜筋も丸見え。もっと言えば腕を上げれば腋マンコだって見られてしまう。

 だが、トカゲにとってはこんなもの大した辱めではない。スパッツとタンクトップというきわどい格好で男を誘ったことだってある。海で淫魔を狩った時は尻がほぼ丸見えのビキニスタイルで尻を振ったものだ。

 

「ご丁寧にビキニも上下まで揃えてやがる。変態淫魔がよぉ」


 シースルービキニの上下もまあ許容範囲と言えた。乳首ぐらいしか隠せない上の布切れは少々恥ずかしいが、下半身の方はまだマシなデザインをしていた。トカゲがさきほどまではいていた紐パンよりは布面積が多く、勃起ちんぽも辛うじてだがしまいこむことができる。布地は谷間に食いこむせいで尻の大部分ははみ出ているし、ちんぽも半分透けているがこの程度の下品な下着は慣れっこだ。

 

「クソッ、下半身はビキニだけで来いってことかよ……!」


 問題なのは、ビキニ以外に下半身への装備が無いことだ。入れ忘れではないというのが裾が余ったパーカーが教えてくる。不幸にもトカゲの股間部分を隠せてしまうおかげで、ギリギリちんぽを露出することは避けられてしまう。

 つまり、淫魔は下半身を必死に隠しながら電車に乗り込めと命じているのだ。尻に触手を埋め込まれ常時喘がされているこの状況で、だ。

 

 何かの間違いではないかと希望を求めてバッグを漁ったが、残されていたのは乗り込み車両と時間を指定するメモだけだった。

 学生たちの雄臭い思念と視線を思い出す。淫魔相手ならばいくらでも耐えられるつもりでいたが、自分の痴態を全て視姦されるあの辱めは思い出しただけで背筋がひきつった。この下品な服装で電車に乗り込めばどうなるか。

 

「いや、考えたって仕方ねえ。やるしかねえんだ……!」


 トカゲは目をつむるとビキニの上下に腋出しパーカーという衣装に身を包むと、駅のホームへと飛び出した。鏡は見ない。自分の身体を見下ろすこともしない。ただパーカーの裾を精いっぱい伸ばしてヤケクソの気分でホームに立つ。

 

(オイ、筋肉ヤバいなあの兄ちゃん。ビルダーかなんかかな)

(ただの露出狂だったりして。太ももも腋も丸出しじゃん……てか、胸にもビキニ付けてね?)


 トカゲの脳みそが茹で上がりそうだった。全身の鱗が汗で濡れ始める。クスクス笑いや視線を感じるだけでも顔面が朱に染まりそうだった。鼓膜の内側で血流の流れる轟音がする。脳内に張り巡らされた血管がのたうっているようだ。


「落ち着け、じっとしてりゃバレやしねえ……」


 必死に自分に言い聞かせているが、下半身のビキニが見えてしまわないかと気が気でなかった。触手ののたうちに合わせて尻がもじもじと動いてしまい、ガチガチになったちんぽがビキニが飛び出してしまいそうだ。

 周囲の視線から下半身を隠しつつ、トカゲは指定された電車へと乗り込んだ。席は空いていないが座りでもしたら下半身の醜態が丸見えになるのだからトカゲには関係ない。できるだけ人の気配の少ないエリアを選んで立つと、すぐに淫魔の声がした。

 

(ふふ、お待ちしていましたよ)


 すぐさま淫魔の声が飛んできた。トカゲは周囲を見回してみたが、あの不愉快なスーツ姿は見つからなかった。淫魔ならば実態を消したまま傍に寄るも可能だ。トカゲは直腸で蠢くモノを堪えつつ軽口を返した。

 

「おれも待ってたぜ。そろそろお前の声も聞き飽きたしな、これで終わりにしようや」

(ふふふ、お元気そうでなによりです。死にかけの獲物を嬲っても彼らは喜びませんからね)

「彼ら?おい、お前が相手をするんじゃ――」


 違和感のあるワードに反応してすぐに電車が停止して、巨大な運動エネルギーがドアから流れ込んで来る。朝の通勤ラッシュにも劣らない人の土石流に流され、運ばれ、あっという間にドア付近にまで押し込まれてしまう。

 乗客の多くはトカゲの煽情的なファッションに目を丸くして、視線を逸らすかチラチラと横目で観察し始める。剥き出しの太ももや横乳に刺さる視線の針は精神力をじっくりと削り取っていく。

 

「チッ、見せモンじゃねえぞ」


 剣呑に睨みつけてはみたものの、裾を引っ張ってちんぽ隠そうとしていたのでは迫力も半減というものだ。触手がうねって腸液がかき混ぜられる音が聞こえてしまわないか心配で尻肉が震えてしまう。

 だいぶ裾は余っているのに尻肉の一部ははみ出ており、トカゲは今日ほど自分のでかい尻を呪ったことはなかった。


「……路線を一周するまで耐えればいいんだよな」


 耳に馴染んだ電子クラシックを合図に、エンジンが唸りを上げた。次にこの駅へと止まるのはトカゲと淫魔の決着が果たされた時だ。

 警戒を拡げていると、いつの間にか自分を見つめている視線が減っていることに気が付いた。こうも早く乗客の関心から外れるなどありえない。間違いなく淫魔の仕業だった。

 

「おれごと乗客から隠すってこたぁ、派手にやるつもりだな。下級淫魔にでも襲わせる気か?」


 ならば勝ちの目が強くなるとトカゲの口角が持ち上がった。自分がああも追い込まれたのは何も知らない学生たちに視姦され、辱められたからだ。下級淫魔相手に犯されたところで負ける気はしない。

 若干の余裕を取り戻したトカゲに再び不快な視線が纏わりついてきた。トカゲが見えていないかのように振る舞う乗客たちに紛れて、淫魔の手先がいる。

 

「来るなら来いよ、返り討ちにしてやるぜ……!」


 パーカーから裾を離して、不遜にも腕組みをした態度で挑発する。

 トカゲは慢心も油断もしていなかった。下級淫魔相手ならば、周囲の目が無い状況ならば負けないというのはトカゲの経験から判断できた結論だ。予測でも楽観でもなく、純然たる事実。

 

 ――故に、背後からにじりよる存在を警戒しなかった。

 

「お兄さん、さっきのライダーもいいけど今めっちゃエロいっす……!マジで痴漢していいんすよね」

「なッ!?」


 トカゲの背後から抱きついてきたのは下級淫魔に憑りつかれた男ではなかった。その青臭い匂いと子どもっぽさが少しばかり残った声。白と黒の制服。それは、トカゲを視姦し、雄の欲望を向けてきた学生の姿だった。

 

「お前、なんでこんな――あっ❤」


 それが淫魔なら。あるいは見ず知らずのサラリーマンであったならばトカゲは油断しなかっただろう。しかし自分を苦しめた年若い雄であることが一瞬の虚を生んでしまった。

 そして生まれた油断を突いて両サイドからも学生が飛び出してきて、トカゲの乳や尻を掴み上げてきた。そのまま、テクニックがロクにない力まかせで筋肉を捏ね潰されてトカゲの口から喘ぎ声が溢れてしまう。

 

「ん゛うぅ❤おっ❤てめぇら、やめろっ❤❤何のつもりだぁ❤」

「うはああぁ!乳でっけぇ!やわらけぇ!」

「ケツ、むっちむちだぁ!握りつぶしても肉が跳ね返してきやがる!」


 トカゲの言葉も聞かずに左右の学生は突き出た肉を揉み続けた。左の虎は雄っぱいに頬ずりをかましながらパーカーに腕を突っ込んで、不遜にも生乳の感触を堪能していた。

 右の犬は張り出した尻肉に指を食い込ませ、痛くなるぐらいに力を込めてくる。もう片方の手は太ももを撫であげて、筋肉で膨れた下半身を好き勝手にしていた。あまりにも拙い愛撫だが、結腸をしつこく漁られている発情マンコには激しすぎた。手を掴んで制止しようにも指が震える。何よりも、淫魔でもない一般人に怪我をさせてはいけないというブレーキが力ずくで止めることを躊躇わせていた。

 

「二人とも楽しんでるなぁ。じゃあおれはマンコを貰うっすよ!うひょー、マジで下がビキニだけじゃないっすか!」

「ッ❤❤み、見るんじゃねえ!」

「しかもスケスケのエロいやつだぁ!こんなんマジではいてるヤツいるんすね!」


 あまりにも大胆な行為に声すら詰らせてしまった。背後から抱きついていた蛇人種の学生がパーカーの裾をめくりあげると、尻肉を割り開いてきたのだ。必死に隠そうとしていた尻を剥き出しにされたどころか、触手でほじくられている肛門すら下着ごしに見られて羞恥心が急激に燃え上がった。どうにか蛇学生を振りほどこうと尻を暴れさせるが、蛇はますます興奮を煽られた様子で尻にキスをする。

 

「あーやっべ!エロ動画で見た尻よりでっけぇしすげぇ良い匂いするっすよ!デカケツ丸出しで電車乗るって、マジで痴漢されたい変態さんなんっすね」

「ふ、ふざけんな!おれは、変態なんかじゃ、あぁあ゛ああぁ❤❤❤」

「うおっ!ケツにえげつねえの突っ込んでる!肛門拡がりまくってる!」


 ビキニを尻たぶに貼りつけさせると、蛇は鼻息を熱っぽく吹きかける。肛門には真っ黒のゴムでできたような栓が突っ込まれていた。淫魔によって仕込まれた触手は内臓をかき回すだけではなく、簡単に抜け出ることがないようにはみ出た部分をストッパーに変形させていたのだ。

 

 肛門をみっちりと拡げ、詰まっている姿は何も知らない学生からすればバイブやディルドにしか見えなかった。下半身を露出した姿で電車に乗り、淫具を尻に仕込んでいる変態の雄。トカゲをそう決定づけた蛇は肛門の栓をゆっくりと引き抜き始めた。

 

「お゛、おぉおぉ~~~❤❤❤やめ、抜ぐな゛ぁ❤」

「抜かないとちんぽハメられじゃないっすか!おれ、童貞卒業させてもらえるの楽しみにしてたんすよ!」

「ふざけんな゛あぁ❤❤誰が、テメェらの童貞なんがっ❤あ゛ぅうぅうぅ❤❤❤」


 蛇は好奇心に瞳をきらめかせ、ぐっぐっと軽く力をこめて肛門の栓を弄んだ。一気に引き抜くのではなく、数ミリ動く程度にだ。もっともトカゲマンコは淫魔の愛撫と触手による凌辱ですっかりでき上っていて、わずかな刺激であろうとも耐えられない。鷲掴みにされているケツ肉に痙攣を起こし、媚びるように腰をくねらせた。

 

 腰がくねると学生たちの愛撫も熱がこもり、少しでも感じさせようと荒々しく肉が捏ねられる。左右の学生はパーカーの裾をめくりあげるとケツだけではなく股間まで剥き出しにして、シースルービキニの中で硬くなっているちんぽに手を這わせ始めた。

 

「でっけぇ!おれらのちんぽと全然違うじゃん!」

「色も黒ずんでるし、使いまくってんだろうなコレ。童貞食いは趣味って聞いたんですけど、ちんぽも使うんスか?」

「だ、誰がぁあ❤❤そんな趣味ねぇ❤❤❤おんっ❤撫でるなぁ❤んっ❤おおぉぉ❤❤」


 自分よりも若い雄に淫売扱いされ、犯されようとしている。それは淫魔相手では生まれえない恥辱を湧き上がらせた。身体を隠してしまいたいのに、肉を捏ねる手が許さない。

 トカゲからしたたり落ちるのは汗、そしてちんぽと肛門から湧き出る淫液だ。乳と尻、ちんぽと肛門。性器すべてをいじられながらはしたない踊りをして、トカゲの中で発情のボルテージが上がり続ける。

 翡翠の塊のようなデカ尻に浮かぶ汗粒と、官能的に匂い立つ雄膣の香りで蛇は陶然と顔を緩ませた。

 

「おぉおぉエロいっすねぇ!マジでこんなスケベなお兄さんに童貞卒業させて貰えるなんて夢みたいっすよ!」

「だ、だがらおれは童貞なんぞ、お゛っほおぉぉ~~~~❤❤❤」

「おれマジで上手いっすからね!マンコ躾けておれの女にしてやるっすよ!」


 触手プラグが少しずつ、なめくじが這うような速度で引き抜かれていく。膨れ上がった触手で引き伸ばされた肛門が唇を尖らせてぶぴりと愛液を空気が漏れる間抜けな音を吐いた。直腸を限界まで押し広げたモノが引き抜けていく快楽は排泄感に近く、トカゲは間抜けな媚び声をひり出すのを止められない。奥を突き入れられるのとはまた違う、知能指数が下がりそうな快楽だ。

 蛇は引き抜くだけでは飽き足らず、グリグリと触手プラグを回転させて腸壁をいたぶった。ミキサーでクリームをかきまぜるように愛液が泡だった。

 

「んぎいぃいぃ❤❤拡がるぅ❤ケツ穴拡がるうぅ❤❤❤やめ゛ろおぉおぉ❤❤」

「肛門めっちゃ伸びてる!えっろぉ!」


 トカゲの懇願も肛門を見ればおねだりにしか聞こえまい。開発された肛門はプラグにすがりつくようにしゃぶりついており、涎を垂らすかのように伸びた肛門とプラグの結合部から愛液を垂らしている。

 

 肛門だけではなく、乳と尻への愛撫もトカゲから理性を削り取っていた。ガタイの良い学生たちは鱗に手形が残ってしまうような力で筋肉を捏ね潰し、痛みと快楽を全身へと伝播させる。淫魔の手ではない若い雄の愛撫は自分が雌にされている倒錯的な悦びを目覚めさせていた。

 1割ほど抜け出たプラグをぬぷぬぷ出し入れされてしまうと、トカゲは鼻水や涙を漏らしてよがり狂うしかない。

 

「も、もうとめてぐれよぉおぉ❤❤❤おれは、おではあ゛ぁああぁ❤❤」

「痴漢されたくってこんな格好してるヤリマンなんだろ!オラッ!マトモぶってないで正体表すっすよ!」


 蛇が尻を強く打ち据えると同時に、触手を思い切り引き抜いた。

 トカゲの腸壁をこすり、肛門をめくり、凶悪な排泄感と快楽が腹の中で雪崩のように湧き上がる。

 こんなに長いモノが自分の中に入っていたのだと、肛門で奏でられるぶちゅぶちゅという音で自覚させられる。そして肛門からグボォ!と下品な音を鳴らして触手の全てが引き抜かれた瞬間、トカゲは背筋を弓なりに反らして絶頂した。

 

「お゛っひょぉおお゛ぉぉおぉおぉ❤❤❤」

「うおーマジでイってるじゃん」

「ちんぽからなんか漏らしてる。これ潮じゃねえ?」

「うわ、おれ潮吹きさせちまった。やっぱ才能あるわ」


 学生たちはへらへらと笑っているが、トカゲはと言えば透けたビキニを潮でさらに透けさせながら必死に息を整えていた。口を「お」の字にすぼませてひゅうひゅうと息を整える姿は無様極まりないが、トカゲは真剣だ。脳に酸素を取り込まないと絶頂の衝撃で気絶してしまいそうだった。

 

 無論、蛇が尻の谷間へと顔を突っ込むという暴挙を行っても止める気力など無い。

 

「あっ❤んああああぁっ❤❤❤」

「おほ、マンコくっせぇ!スーッ!ちんぽ硬くなるっすわぁ~」


 いきなりの激しいしかけだった。蛇人固有の長い舌は直腸の奥までたやすく届く淫具だ。触手で柔らかく仕上げられた粘膜を傍若無人にかきわけて、結腸の入り口まで達していた。さらに腫れた肛門と口唇を密着させて、マンコ肉を噛みながら舌先で敏感極まる結腸口を舐め回してくる。

 触手からは別ベクトルの淫行にトカゲの筋肉が弛緩してしまう。その一瞬のうちに左右の学生たちがトカゲの両腕をつかみ、腋マンコ丸出しの万歳ポーズに引き上げてくる。プロのスポーツ選手に匹敵するコンビネーションで、手首をつり革に通させてそのまま輪っか自体を締め上げた。

 

「んぉおぉおぉ❤つり革が、てめぇらなんでこんなぁ❤❤」

「ここらへんで待ってればアンタが来るから、コレを使えって教えてくれたんだよ」

「そうそう。ヤリマンだから、痴漢してやれば喜んでケツ振るってな。アンタを昼の電車で見つけてから、ずっと金玉硬くなってんすよぉ」

「あの竜のオッサンには感謝だな。何から何まで教えてくれてよ」


 これも淫魔の策略であると理解したものの、直腸を舐られている状況では打開策が思い浮かばない。

 尻の谷間の中で蛇が鼻息をそよがせ始める。マンコに湿っぽい空気を吹きかけられて、全身から漏れる雌臭さが濃くなった。

 

「だから、おれはヤリマンなんかじゃぁ❤」

「まだ言ってるよ。いっちょ自慢のクンニってやつをお見舞いしてやれよ」

「任せとけって!どれ、マンコの弱いトコはここらへんかなーっと」

「あおっ❤おぉおぉー❤❤ひぃん❤」


 長い舌の中ほどあたりが前立腺を擦り上げてきて、逞しい太ももが崩れそうになる。童貞であろう蛇小僧のクンニによってトカゲは目を見開き、背筋の隆起を際立たせた。口角から唾液がこぼれ、首筋まで垂れ落ちる。

 

「お、弱点はっけーん。もっとよがらしてやるっすよ!」

「んおぉおおぉおっ❤しょ、しょこはぁあぁぁ❤❤❤」


 蛇小僧は勝利を確信したようにマンコへしゃぶりつく。

 トカゲにとってケツマンコを使ってのセックスなんて当たり前で、前立腺で絶頂するなんて数えきれないぐらいに経験してきた。

 ただ舐められただけでイクなんてありえなかった。しかし、蛇がそこに舌腹を押し付けて舌の表面ぜんぶを使ってゆっくりとこ削ぎあげてくると――

 

「くぅうあぁああぁぁ❤❤❤マンコしびれるうぅぅうぅん❤❤」


 マンコが痺れて、脳みその思考回路まで麻痺してきそうだった。

 味蕾のざらつきだけでも、肉ヒダがまるごと削り出されてしまいそうな気分に襲われる。恥骨が割れんばかりに震えて、石鹸をたっぷり含ませたスポンジをたっぷり含ませたみたいにじんわりと粘り気のある汗が噴き出した。いやらしい舌と膣壁の隙間をすり抜けるようにして蜜が流れ、ぴったりとくっつけられた口の中に直行する。

 

「美味ぇぇ!生マンコ汁美味すぎるっ!おら、もっと出せよ!」

「す、吸うなあぁあぁ❤マンコ吸わないでくれええぇぇ❤❤❤」


 マンコで下品な吸着音をかき鳴らされて羞恥心が爆発した。恥辱と快楽で頭をかき混ぜられてなにも考えられない。

 マンコの中の弱点を舐り回されるたびにケツマンコの中では快楽が凄まじい勢いで爆発する。暴力的な爆発は結腸の内部にまで当たって乱反射を繰り返し、トカゲの体内を内から壊し、屈服させる。

 

 逞しい下半身に力が入らなくなり、ガクンとくずれ落ちる。つり革がピンとなり、左右の学生が乳とケツを握りしめるようにして身体を支えて来た。淫猥な音が鳴り響くが、レールの音と喧噪にかき消されて周囲には分からないだろう。仮に、淫魔の力で嬌声が消されておらずともだ。周囲にはまだちんぽを硬くした学生がいるようで、あちこちから興奮した吐息が響いていた。

 

「どうっすか!おれのクンニ上手いっすよねっ!なあ、答えろよ!」

「ひぃいい゛いぃいぃ❤❤マンコ、溶けるぅぅうぅ❤」


 答えられるわけがなかった。舌がもつれて、唾液が滝のように溢れて止められない。鷲掴みにされていなければ蛇に向かって尻をぐりぐりと押し付けているところだ。

 腸内を犯す舌は一匹の軟体動物だった。舌先で結腸の入り口を磨きながら、舌腹では前立腺を削ぎ、研いで、抉ってくる。舌でマンコもどこを責めるなんて次元は超えていて舌のあらゆる部分をクンニに総動員していた。

 

「あっぉぉおぉおぉおぉ~~~❤❤❤」


 トカゲは腰を必死にくねらせて、激しく首を振った。肛門から腰の奥まで突き抜けてくる悦びは、触手で味わえない甘やかさに満ちていた。一度立て直した決意や自信は砕かれ、舌が動けば許しの言葉を口にしそうだった。

 今は何駅ほど進んだのだろうか。淫魔は一周するまで耐えられるかの勝負と言っていた、終われば解放されるはずだ。必死の形相で奥歯を噛み締める。あまりにも滑稽な百面相だった。できるものならば歯をかみ砕き、その痛みで快楽を感じないようにしたかった。

 

 ひっくり返そうになるのを必死に堪えている瞳に、車窓の変化が飛び込んでくる。飲み屋街のけばけばしい看板。一転して真面目なオフィスビル。一瞬たりとも止まらない変化が脳の情報処理に負担をかけてくる。もっと早く景色が変わって欲しい、早く終わってくれと願うことに脳の容量ほぼすべてが使われていた。

 

「あ、そろそろ次の駅だな。一駅でイかせられなかったら交代だぞ」

「うっせぇな、分かってるよ!こんなヤリマン、一分ありゃイかせてやるよ!」


 まさか。

 まさか、まだ一駅すら経過していないというのか。現実を受け入れたくなくとも車窓から見える景色と車内のアナウンスは無情にも現実を教えてくる。電車が出てからまだ数分しか経過していなかった。

 背筋を流れ落ちる脂汗を、足の付け根に走る妖しい武者震いを止められない。淫魔にイかされ気をやってしまった記憶が、快楽を反芻してしまう肉が、自分の中にある雌が恨めしい。

 

「だめだっ❤❤やめ゛ぉおぉ❤❤❤がまん、じねえとぉおぉ❤」

「お、マンコしまってきた!やる気でてきたっすね!」


 まだ勝負は始まったばかり。気力も体力も充実しているはずのこの時間すら耐えられないなら自分に未来はない。

 どうにか堪えようと尻肉に力を込めるが、蛇にとってはおねだりでしかなかったらしい。舌はますます勢いづいてきて、マンコの弱所に食らいついてくる。わざとゆっくり削ぎあげられてしまうと、息が詰まって脱力感に襲われる。

 

『まもなく停車いたします。車内のお客様はつり革につかまり――』


 停車を告げるアナウンスは福音だった。

 実際には止まったところで何も変わりはしないのだが、トカゲは止まりさえすればこの淫獄から抜け出せると夢を見ていた。

 イかれてしまう前に、童貞野郎のクンニに負けてしまう前に、我慢できなくなる前に、早く早く早く。

 

「ま、お前のヘタクソなクンニじゃ間に合わねえだろうからな。おれも助太刀してやるか」


 乳肉を鷲掴みにしていた虎が、乳を撫で回しながら頂点へと迫っていた。電車の速度が緩まるのに合わせて、山頂でわなないている肉突起に触れてきた。

 そのまま一気に、力をこめて押しつぶしてくる。万力のような力で乱暴に肉芽をひしゃげさせられて、肥大化乳首がトカゲにしか聞こえない悲鳴をほとばしらせる。

 

「お゛、お゛ぉお………❤」


 完全な不意打ちだった。

 

「お゛おぉ❤❤おおぉ❤お゛ッ❤」


 マンコを入念にほじられて、結腸まで貫かれて。マンコだけではなく身体の全てが出来上がっていた。ただ、つままれただけでも耐えられないほどに。

 淫魔はこのシチュエーションを見越していたに違いなかった。学生たちに痴態を見せつけて、襲わせることも。自分の手で下準備をし、モロ感の脆弱な肉体に変えることも。

 

「お゛っひょぉおお゛お゛ぉおぉおおおぉぉおぉおぉぉおぉ❤❤❤❤❤」


 舌と指、膣壁と乳首の複合責めにあって、トカゲは深すぎる絶頂を迎えた。

 自分でも侮蔑してしまうような見苦しいイき声だった。内腿にけたたましい痺れが伝わり、静脈の浮き沈みを繰り返しながらつま先まで伝わる。靴の中で足が丸められて、膝の後ろに嫌な汗が滲みだす。

 

「いぐいぐいぐいぐっ❤❤いぐうぅうぅうぅぅうぅ❤❤❤❤」

「うおおっ!?」


 鷲掴みにされていたデカケツが暴れ回り、ごまかしようのない雌の振幅を披露する。顎が外れかねないほどに口を開けると、口角から泡立った涎がこぼれた。トカゲの男前だった顔は涙や鼻水、涎といった汚い汁で照り光っていた。甘やかな内臓臭が振り回される尻から放たれて、周囲のちんぽを硬くした。

 

「すっげぇイきっぷりっすね。やっぱおれのクンニ上手かったっしょ?」


 蛇が尻の谷間から顔を出し、べとべとになった口周りを舐め取った。その手には透けた素材の布地が握りしめられている。

 

「へへ、コイツは記念に貰ってきますからね。帰ったらコイツをズリネタにさせてもらうっす」

「このおっちゃんノーパンになっちまうじゃん。ひでー」

「いいんじゃね?変態っぽいし、ノーパンで帰らせたら喜ぶだろ」


 自分より一回りは幼いガキどもに嘲笑われて悔しいはずだが、それ以上にマンコが疼いて仕方が無かった。

 肛門をぐぱぐぱと収縮させる発情マンコは舌よりも硬くて太いものが欲しいと涎を垂らしてねだっている。否定しようとも身体は辱められることを望んでいた。

 

 左右の学生たちは開閉する肛門を見てニヤつくと、尻を揉んで第二回戦の開始を告げた。

 

「んじゃ、次はおれらの番だな」

「ケツの他も試させてもらいますよ。全身ちんぽ大好きのエロ兄貴って聞いてるんで」


 そして、左右の虎と犬の二人は示し合わせたようにパーカーの裾をつまんで、一気にたくしあげてきた。

 

「ああああぁっ❤❤❤」


 つるされた格好のため、腋のくぼみまでも露わにされている。筋肉がみっちりとついた脇腹も絞られて、内股になった下半身では尊大なデカマラがそそり勃っている。周囲を人で囲まれている車内で、ほぼ全裸にされてしまった。恥知らずに雄臭い格好は、外からだって丸見えに違いなかった。

 

 トカゲの脳裏に夜景が浮かびあがった。

 夜の帳が下りたなかを、灯をつけた電車が走っている。四角い窓のひとつに、全裸のトカゲが立っていた。どこもかしこも突き出た豊満な肉体をみせびらかして、先走りで濡れたちんぽを晒している。ブタ箱行き確実の変態野郎が、平穏な都市の中を走り抜けていく。

 

「うぅうあぁぁ❤やだ❤❤いやだあああぁあぁ❤❤❤やめてやめでえぇぇ❤❤」


 屈辱まみれの絶頂を押し付けられた理性には耐えがたい辱めだった。トカゲは狂ったように暴れ出したが両腕は拘束され、屈強な運動部たちに抱きしめられて身体をくねらせる程度で終わる。

 

「あ~~っ!たまんねぇな、汗くっせぇ!ちんぽに来るわ」


 犬がうなじに鼻を近づけ、きのこを探す豚よろしく匂いを嗅ぎ、続いて肘のあたりから舌を這いおろしてきた。虎は苦労して腰をかがめ、露わになった腰骨のあたりに舌を押し付けて、ゆっくりと舐めあげてくる。どちらも肉食の舌をぬらぬらと左右にそよがせながら翡翠鱗を摩擦していた。雄臭い汗がぬぐい取られ、おぞましい臭いを放つ唾液に置き換えられていく。

 

「ひぃいぃいん❤❤舐めるなぁ❤くすぐってぇ❤うぅうあぁ❤❤❤」


 軟体生物たちは筋肉のくぼみに溜まった汗まで舐めたあと、泉のように汗をたたえた腋に到着した。鼻息を荒くした学生たちがアイ=コンタクトを交わして、毛の生えていない腋マンコにむしゃぶりついてくる。鼻先ごとつっこんで、筋肉で構成されたくぼみをすべて穿りだすように舐め回してくる。

 

「おぉほお゛ぉおおぉ❤❤腋おがじぐなるっ❤❤❤あ゛ひぃん❤おうぅうぅう❤❤」


 こそばゆさと快楽、近いようで遠い二つの感覚がないまぜになって、コインの裏表になって襲い掛かる。どちらの学生も競い合うように腋をすすってきて、トカゲの脳細胞はパニックを起こしていた。顔を振り回しているうちに、両眼から熱い涙がこぼれた。

 

「ほおおぉ……!うっめぇ!腋マンコうんめぇ!」


 虎のふいごじみた鼻息が腋に当たるだけでも腰が揺れる。

 

「だなぁ。それに、喘ぎっぷりも良くてヤる気でるわ~。ちんぽ悦ばせるプロだなこの人」


 犬の手がぶ厚い腹筋を撫であげ、トカゲの身体でも尻と同レベルに付きで出している部分に迫ってきた。捻り上げられてトカゲを絶頂に導いた乳首は硬くしこっていて、恥知らずな自己主張を続けている。節くれだった指が、関節まで持っていそうなデカ乳首を摘まみ上げ、ボトルキャップを開けるように捻って来た。

 

「ちくびぃいいぃ❤❤❤ごれやっべぇえぇ❤❤」


 トカゲがたまらずに犬の方へ身体を擦りつけると、それを見た虎がもう片方の乳首をつまみあげ、逆向きに捻ってきた。火のついたような嬌声を噴き上げてトカゲは両方の乳を逆方向へ引っ張られる。

 

「おう、どうだよおっちゃん!おれの方が上手いよな!」

「は、はぎぃいぃい❤❤❤上手い❤上手い、がらぁあ゛ッ❤おごぉおぉおおぉ❤❤」

「いや、おれの方でしょ。そうだって言え!」


 どちらが上手いかと答えれば、もう片方が乳首をえげつなくひねってくる。犬はソフトながらも乳首の芯まで痛めつける責めを披露して、虎は荒っぽいが大胸筋全体にまで疼きや痺れが波及することを計算していた。

 乳首を伸ばされ、捏ねられてトカゲちんぽの先端からは感謝の意を示すように先走り汁が噴き上げられていた。元からの弱点を淫魔にいじられた上に触手で発情させられてしまったのだからたまらない。トカゲはぶざまで哀れな痴態で絶頂し続ける。

 

「これじゃ勝負つかないっすよぉ。おれが手伝うから白黒つけてやれ」

「オーケイ。しっかり抑えつけとけよ」


 蛇が乳に手を回し、でかい乳肉を下から持ち上げてきた。性感を高められて膨張していた大胸筋はずっしりとした重みを手のひらに与えつつその艶めかしい勇姿をさらす。つままれ、捻られ、挫かれ続けていた乳首は、大人の親指なみに尖っていた。左右の雄が再び無言のコンタクトを交わし、ビンビンにしこった性感帯をぱくりと含んでくる。

 

「おっひゃあぁん❤❤❤」


 ただそれだけでトカゲは肩が外れたかのような反応を見せた。腰抜けの状態を支えるべく、背後の蛇がしっかりと乳肉を抱きしめた。

 

「んんっ、乳首しゃぶっただけでイきそうだな」

「これじゃどっちが上手いか決められそうにねえなあ。だらしねえ大人だ」


 二匹の雄はトカゲが軽くイったことを嘲笑いつつ、好き勝手に乳首を愛してくる。虎は餅の一気食いでも試みているかのように、できるだけデカ乳の尖端を飲み込んで、乳首を口中深くにまで吸い込み、コリコリと甘噛みしていきた。奥歯を使った暴力一歩手前の激しさが、トカゲの淫売な乳首には底知れぬ官能味に感じられてしまう。

 

「あっひゃあぁあぁ、んぁあぁ❤❤乳首でいぎまぐるぅううぅ❤❤❤勝てねぇよぉお゛ぉお❤乳首よずぎて負けちゃうぅうぅ❤❤」


 犬は舌先を伸ばし、ぷっくりと膨らんだ乳輪から頂きの割れ目までまるでネコが魚の骨を相手にしているみたいに舐め回してきた。ときおりゲームレバー扱いされ、乳首の根本から上下に倒されるたびに、トカゲの背筋は快感で切りつけられる。ゾクゾクと魂まで脅かされるような甘さが、背骨を舐め回して尾てい骨から抜け落ちていく。

 

「いぐうぅうぅうぅ❤❤❤乳首クルッ❤乳首でぞくぞくしゅるうぅぅ❤❤乳首でアクメきちゃうきちゃうぅうぅ❤」


 トカゲの悲痛にして凄艶な述懐も彼ら学生たちにとっては勲章でしかない。次の駅に到着するまでの間、トカゲの乳首はしゃぶり回され続けた。

 

「おぉおおぉうぅう❤❤❤おっほぉおぉ❤トロけるぅうぅうぅ❤❤❤ちくびとけちまうよぉおぉおぉ❤❤んっひゃあぁあぁ❤❤❤」


 そして、乳首で小規模なメスイキを強いられ続けた。自分がこんなにも弱々しい乳首をしているとは思ってもみなかった。環境の異常さと淫魔による仕込みが自分を狂わせてしまったのだと今更ながらに自覚する。

 

「お゛っひいぃいぃ❤❤マンコも゛ぉおぉ❤マンコもずわれでるうぅうぅぅ❤❤❤❤」


 乳首責めの痴態を見て辛抱が効かなくなったのか、蛇がマンコへ再びしゃぶりついてきた。飽きもせずぶ厚い尻の谷間へ顔を突っ込んで、今度は膨れたマンコ肉をヂュルヂュルと吸ってくる。トカゲの嬌声は窓ガラスを震わせて、内腿を伝う愛液は小川になっていた。

 

 蛇は牙を立てないようにしながらマンコ肉を甘噛みし、舌を使って入り口の愛液をしつこく舐め上げる。性感の塊をおしゃぶりのように扱われて、トカゲは小便のように潮を漏らした。

 

「止まらにゃいいぃいぃい❤❤❤いぐいぐいぐぅううぅ❤❤❤❤乳首とオマンコでっへえ゛ぇでえぇええぇ❤❤おぅおぉお❤いぐぅ❤❤おっおっおっ❤おっほぉおぉおぉ❤❤❤」


 虎は胸を揉みながら、やはり飽きることなく乳首を舐めていた。犬はいったん口を離し、万力のような乳首を潰していた。トカゲが耐えかねてはみだした舌を抓んで揉みたて、涎がほとばしるままに強いている。

 

「いぐっ❤いぐの止め゛らんねえ゛ぇえぇえぇぇ❤❤❤❤❤死ぬぅう゛ぅうぅうぅ❤❤❤」


 V字の浮いた首筋が汗と涎でドロドロになって、パーカーまでもしとどに濡らしていた。

 三人の雄による凌辱は次の駅に止まっても終わらずに、トカゲの脳みそが思考を止めるまで続いた。

 

 ***

 

「ああ、これでは負けてしまいそうですねぇ。もうゴールまで半分を切っているというのに、困ったものです」


 トカゲの足元に愛液の泉ができたころ、一番聞きたくない声がした。

 

「て、めぇ……❤よくも、こんなぁ❤❤」

「その反抗的な目、素晴らしいですよ。とっくに堕ちていると予想していたのですが……これでは私が負けてしまいそうでね」


 心にも思っていない言葉が憎らしかった。

 白々しい困り顔に腸が煮えくり返る。

 しかし、トカゲにはもう淫魔を殴り飛ばす力なんて残ってはいなかった。学生たちに身体を舐められ、揉まれ、蛍光灯でてかるだけの卑猥なオブジェだ。

 

「竜のおっさん。心配しなくてもよぉ、このままでも電車が一周するまでにイキ殺せそうだぜ」

「いえいえ、このトカゲさんは油断できない相手ですよ。ここは皆さんも本気を出しましょう」


 紳士然とした淫魔の言葉に学生たちは色めき立った。ついに、ついにと目を輝かせると蛇学生がトカゲの背後から抱きついて、デカすぎる尻へと股間を擦りつける。耳元でやかましい吐息ときたらやかましく、餌を前にした犬のような浅ましさだった。

 

 あまりにも露骨な欲望にトカゲは理解してしまう。こいつらが何をするつもりか。数えきれないぐらいに触れてきた、尻に押し付けられる硬くて熱い感触。

 

「へへへ、童貞卒業いかしてもらうっすよ。初オマンコがこんなエロいケツで、しかも種付けまでやれるとか、ラッキーっすわぁ」

「や、やめ――んあっ❤」


 正気を取り戻せ、とか説教の言葉をかけようとしたが駄目だった。盛り上がった肛門にキスをした亀頭の熱に艶やかな雌声をこぼしてしまう。使い込まれた雄マンコは触手責めと童貞どもの愛撫によって本性を表して、お待ちかねのちんぽへと肛門で何度もバードキスを繰り返していた。

 

「おれのちんぽにおねだりしてるっすよ。ずっとおれにオマンコして欲しかったんすか?」

「だ、誰がてめぇらのちんぽなんかぁ❤❤やめろ、離れろぉおぉ❤」

「と、ほざいていますが構わず使ってあげてください。若いちんぽが欲しくて我慢できないとみなさんを誘ってるんですから」

「了解っす。んじゃ、童貞卒業!いかせていただきます!」


 蛇は勃起を横倒しにすると、先走りと唾液を塗りつけただけのちんぽを肛門に押し付けた。腰を進ませるとマンコはあっけなく拡がり、亀頭が肉の中へと埋もれていく。

 

「お゛っ❤お゛っ❤お゛~~~~~❤❤❤ふと、ふとい❤ごれ、ふとずぎぃい゛ぃいぃいぃ❤❤」


 火傷しそうな熱を感じたかと思うとトカゲマンコが大きく押し広げられ、圧迫感と快楽が腹の中から脳みそを揺らした。反射的に雄膣がちんぽを締め付け、大臀筋がぶるぶると痙攣した。

 

 蛇のちんぽはあくまで平均的だが下反りでトカゲマンコのイイトコロを的確に削っていた。加えて、カリの高い段差や無数に浮き出た血管、若々しさがみなぎる硬度によってただ大きいだけではない逞しさでマンコを抉り取っていた。

 

「はっひぃいぃ❤❤んぉおぉ❤おおぅ❤おっおおぉーー❤❤❤」

「はぁぁ……すっげぇしまるぅ。すぐイっちまいっそうすよこれ」


 蛇のちんぽに絡みつくマンコは粘膜を微動させ、細かい刺激を与えながら包み込んでくる。加えて膣自体も異常なまでに柔らかく仕上げられており、ちんぽが溶けてしまいそうなほどに優しく奉仕している。

 蛇が具合を確かめるように腰を動かすと恐ろしいほどの吸着力を持った粘膜が絡みついて離れない。ほんの少し動くだけでも勃起が粘膜に擦れて快楽が生まれる。蛇にはオナホがごみに思える快楽を与え、トカゲにはこれまでのセックスがごみに思える快楽を与えた。

 

「んっひぃいぃいぃ❤❤やめ゛ぇ❤うごがないれぇえぇ❤❤マンコおぉおぉおぉ❤❤❤❤」

「ほら、喘いでねえで自分でもケツ振るっすよ!おれのちんぽ気持ち良くしろ!」

「んあ゛お゛ぉ❤❤ち、ちんぽおぐにぃ❤」


 けつたぶと腰を密着させ、ちんぽを最奥に差し込んだ状態で蛇は腰を止めた。直腸の行き止まり、これ以上は結腸へと分け入ってしまう場所まで押し入ったちんぽはマンコを隙間なく満たし、熱と硬度、そして胎内に力強く響く脈動でトカゲの脳みそをかき乱す。

 ぶっとくて立派なちんぽがマンコを埋めている。認めたくない充足感がトカゲを満たして、マンコがどうしようもなく悦んでいた。胸が高鳴り、熱を帯びた筋肉が小さく震える。

 

「ほら、動けって!デカケツ振ってちんぽコくんだよ!やらないとぶっ壊れるまでガン掘るっすよ!」

「わ、わがったぁあぁ❤❤わがったがら、ケツ叩くにゃぁ❤❤❤」


 童貞を卒業し尊大になったのか、ケツを叩いて催促する蛇に対してトカゲは従順に腰を動かし始めた。少なくとも、雄を丸出しにしたガキに腰を振られるよりは自分で動いた方がましである、と判断した。それに、自分の中を満たすちんぽの快楽が恐ろしく、早くちんぽを抜いてしまいたかった。

 

 両腕を磔にされたままデカ尻だけを動かすさまは視覚的にエロく下品であるが、トカゲは自分を客観視する余裕はなかった。口角に泡をため、ちんぽを何度も腹筋に打ち据えつつ腰を前にやるさまに、学生たちは涎を垂らす。

 

「ほっ❤ぉおおぉおぉ❤❤❤」


 弧を描く背筋。ずるずると抜け出て行くちんぽが腸壁をこそぎ取り、何度も尻肉を止めてしまう。ちんぽが抜ける喪失感とうずく最奥が、このまま尻を叩き付けたらどれだけ気持ちいいのかと期待させる。

 それでもトカゲが耐えられたのは、淫魔を相手にしていた経験からだ。常人ならばとっくに雌豚に堕ちてしまうような快楽を与えられているが、鋼の意思ですがりつくマンコをちんぽから引き剥がす。

 

「んあぁぁ❤も、もう少しぃ❤❤」


 カリ首だけをマンコに残した状態で、トカゲは息を吐く。

 もう少しでちんぽが抜ける。すぐにちんぽ相手に尻を使うはめになるのだろうが、一時の休息にはなるはずだ。トカゲは安堵してちんぽを引き抜こうとする。

 

 しかし、背後の雄はトカゲの想像以上に愚かなケダモノだった。


「あーだめだわ。やっぱ我慢できねぇ」

「お゛ひぅうぅ❤な、何でぇ❤❤離しやがれ❤」


 がっしりとデカ尻を鷲掴みにされて、トカゲは甘い悲鳴をあげた。抜け出ようとしていたはずのちんぽが再び直腸を押し広げ、ふとましい両脚がぶるりと震えた。

 

「お゛まえが、ケツ動かせっでぇ❤❤」

「そのつもりだったけど我慢できなくなったんだよ!あっああっ!腰動くぅ!」


 最初こそゆるやかに腰を動かしていたが、徐々に加速する。肉と肉が放つぺちぺちとした情けない音の中で、マンコが無理やりにちんぽをしゃぶらされる。柔らかく仕上がった直腸をみっちりと埋められたまま抉られて、トカゲちんぽからは途切れることなく先走りが漏れていく。

 

「おおぅ❤い゛やだぁ❤❤ガン掘りやべでぇえぇ❤マンコおがじぐなるぅ❤おひぃ❤ちんぽびくびくじでるぅ❤❤おほっ❤ぐひゃん❤」


 ギチギチに膨れ上がったちんぽで何度も名かを擦られ、内部がきゅうきゅうと収縮する。ちんぽを勝手に締め付けるせいで快楽は助長され、快楽が脳内で乱反射する。

 肉体は誰が見ても明瞭に反応していたが、上の口は必死に許しを乞うていた。歴戦のマンコを持つ捜査官が、童貞卒業仕立てのちんぽに。

 もはや淫魔を相手にするどころではなかった。このままではまだ子どものちんぽに負けてしまう。男として、捜査官としてそれだけは受け入れがたく、何度も懇願する。


「ああ、くそ!うっせえな!こっちが優しくしてやってんのによぉ!黙らせてやるよ!」

「いぎっ❤ご、ごめんなしゃいぃいぃ❤❤❤何する気だ、やめでぇ❤❤」


 しかし、それが良くなかった。鼻息を噴き上げた蛇が尻肉に指を食い込ませる。雄性を剥き出しにした行為にマンコの奥がうねるが、なけなしの理性は恐怖を覚える。

 

「いいか、ガン掘りってのはなぁ、こうやんだよ!マンコで覚えとけ!」

「あっ❤やだやだやだ❤❤やめて❤お願い――」


 トカゲがあげる情けない懇願も性欲猿と化した雄には届かなかった。欲望を筋肉で守られていない淫乱マンコに思い切り叩き付ける。

 

 亀頭まで抜かれたちんぽが、トカゲマンコの膣道を勢いよく駆け上がる。ちんぽにへばりつこうとする直腸をめりめりと押し広げて最奥を叩き付ける激悦に、トカゲのデカ尻は大きくすぼまることで応えた。

 

「お゛っひょぉおお゛おっおっおっおっほぉおぉぉお❤❤❤ちんぽおぐまでぎでるぅううぅぅうぅうぅうぅ❤❤❤❤❤」


 結腸の入り口にぶつかった亀頭はノックを通り越して結腸の曲がり角にまで侵入する。すぐさま抜け出ていってからまた突き上げてくる。オナホマンコのもたらす快楽に腰が止まらないのだろう。勢い任せにちんぽを叩き付けられる。

 唾液と愛液でべっとりと粘液まみれになっていたトカゲマンコをちんぽでかき混ぜて卑猥なクリームを泡立てる。その気になれば鉄パイブだってヘシ折れる大腿筋も筋肉を詰め込んだ尻もちんぽを煽る餌にしかならず、ちんぽの動きに合わせて痙攣するだけだ。

 

「ちんぽちんぽやびゃいのぉお゛ぉおぉおっ❤❤❤こんなに、マンコがぁあぁ❤だめ゛ぇ❤でがちんぽむりだがらあぁあ❤❤こんな、のぉお゛ぉおぉ❤❤❤」

「良いねえ、イケてるおっさんなのに童貞ちんぽでみっともねぇ発情顔になってんじゃん!」

「いーねぇ、今度ダチに自慢してやろっと」


 周囲の学生が嘲笑を浴びせ、スマホカメラのシャッター音が響くと身体中にぞくぞくしたものが走る。

 

 トカゲは自分を狂わせたものの正体を理解していた。

 あの視線だ。淫魔に辱められるなんて慣れていた。快楽も隣人のようなものだだった。だが、辱めれる姿を雄に見られ、欲情されることが未知の悦びを植え付けてしまった。どうしようもなく背徳的で、自分が狂っていくのが分かるのに止められない。

 

「お゛ぉおぉおぉ❤❤❤み、見ないでぇえぇ❤見られるど、おぉおんっ❤❤❤見られながらいぐううぅうぅぅぅ❤❤」


 ブルンと揺れるちんぽから粥のようなザーメンがぶちまけられた。満員電車の中で噴き上げられたそれは乗客のスーツにへばりつく。トカゲの存在を知覚できない客たちは不愉快な臭いに鼻を鳴らすだけだったが、学生と淫魔は下劣な笑みでトカゲのザーメンを見下した。

 

 車内で、しかも童貞の犯されて射精したことを視姦されたことに喜びを強くして更にマンコがきつくしまる。

 

「くーっ!ケツしまるぅ……!もっとケツに力入れるっすよ!おれがイクまでやめねえぞオラッ!」

「わ、わがっだぁ❤❤❤おっほぉ❤しめるがら、おぐ突くな゛ぁ❤」


 肥えた尻を打ち据えられて、トカゲは命じられるままにマンコを締め付けた。

 がつがつと直腸を蹂躙されるまま、囮捜査官として身に着けた技術を駆使して尻の肉すべてをうねらせる。

 蛇ちんぽから我慢汁を搾り出すような締め付けを行うと蛇は堪えるようにまぶたを強く閉じた。トカゲマンコはきつくしまりつつも柔軟性を豊かにちんぽを愛撫し、童貞ちんぽに奉仕する。

 

「おっ、おおぉ!すっげ!ちんぽ溶けそうだぁ……!」

「おっ❤❤んぉおぉん❤たのむ、ぐりぐりするなぁ❤❤❤」


 奥をしつこくほじくられてトカゲマンコはよりいっそう強く食らいつく。結腸の曲がり角まで潜り込んだちんぽは壁を貫かんばかりに貫いてくる。最奥にめりこませていた亀頭を引き下げるとべっとりとした粘液が二人の間にかかり、蜘蛛の巣に絡んだ羽虫のようにトカゲを飾り立てた。

 

「おれ、毎日この電車乗るっすから!これからも痴漢させてくださいよ!いいっすよね!」

「う゛おぉお゛おおぉ❤お゛っ❤❤おぉ❤」

「返事が無いってことはオッケーでいいんすよね?毎日種付けてやるっすよ!」


 蛇は筋肉質な両手で膨れ上がった肉饅頭を鷲掴みにする。指の間から肉がこぼれるほどに力をこめ、同様に腰をぶつける勢いもいっそう力が入ってきた。

 トカゲの視界が白に染まり、頭の中で火花が大事な価値観を焼き切っていく。何故自分はこんなことをしているのか。何に抗っていたのか。何のためにこの電車に乗ったのか――頭の中で「何故」が残響していた。

 

「オマンコぉおぉ❤❤マンコぉ❤ぎもぎぃいぃ❤おおっ❤」


 尻を鷲掴みされたまま両腕を固定され、トカゲは立派な雄胸とちんぽを晒すようにして喘いでいた。ちんぽがぶつけられると身体が揺れて筋肉とちんぽがゆさゆさと揺れる。

 素早い突きに反応して円形の尻が大きくくぼみ、ちんぽからザーメンを搾り取ろうとしていた。トカゲの理性はともかくとして、身体は完全にちんぽへと従属していた。

 

「ちゃんとおれのちんぽ覚えとけよ!これから毎日奉仕すんだからよ!」

「おひぃいぃい❤❤❤わがっだぁあぁ❤ちゃんとマンコに刻みづけるがらぁぁ❤❤❤❤」


 だから、もう許してくれ。

 そう口にするつもりだったが紡がれるのは喘ぎ声ばかりだ。蛇ちんぽは激しい往来を続けて、トカゲマンコを自分好みに調整していく。

 

「あっあぁぁぁ~~~❤❤マンコひろがるうぅぅ❤どーてーちんぽきてる奥にきてるぅうぅ❤❤」

「うわーこれもう人間じゃねえよな。メスブタじゃんメスブタ」

「だよなー。さっきはエロくてイケてるおっさんだったけど、ここまで墜ちてると、なあ?」


 媚び媚びな声でわめくトカゲを見て周囲の雄たちは侮蔑の笑いを吐きかけた。容赦ない童貞の突き上げと自分を性欲の対象としか見ていない視線がもたらす快楽はこれまでのどんなセックスよりも心地よいものだった。ただ犯されるだけでは味わえない、自分が腐っていくような感覚。

 

 視線を浴びる鱗から痺れるような快感が生まれ続けてマンコから伝わる悦びと混ぜ合わされる。自分の体表までもマンコになってしまったようで、肉体が際限なく淫らに変わっていく。

 

「あ゛っぁあ❤❤いぃ❤いいっ❤❤❤お゛ぉん❤もっと❤❤だめなのに、もっどぉ❤」


 力強く抉られるマンコに、踏みにじられるプライドに、トカゲの精神はもろくも崩れゆく。目の前で口もとを歪めている竜の男が誰だったのかすら思い出せない。残ったのは雌の欲望のみ。

 

「……あと20分ほどでゴールですかね。もっとも、到着しても続きをねだりそうですが」


 激しく腰をぶつけてくる蛇に合わせて、いつしかトカゲは自らも腰を振り乱していた。ちんぽを奥へ導くようにへこへこ恥知らずに踊る尻肉は真っ赤に腫れていて、肉がぶつかる音が鳴り響くと激しい痙攣を起こす。

 泡立った白濁をぼとぼととこぼすマンコはみっちりと拡がり、盛り上がりながらも蛇ちんぽに隙間なく吸いついており、ぶぢゅぶぢゅと濁った淫音が絶え間なく鳴り響く。蛇の腰が往復運動をするたび、愛液はしずくとなって弾け飛ぶ。

 

「お゛ーっ❤❤❤マンコがぁ❤おれのけつぅ❤❤けつ、ごわれ、もうだめ゛ぇぇええぇっ❤❤❤」


 悲鳴を上げていてもトカゲの表情は淫蕩に笑んでいた。硬く張り詰めた筋肉は弱々しく震え、磔にされていなければ尻だけを掲げて崩れ落ちているに違いなく。それでもトカゲの口角は吊り上がり、自分の人生が終わりゆくこの瞬間を迎合していた。

 

 トカゲはちんぽの突き入れに合わせて尻を振ることで、さらに奥までちんぽが刻みつけられる。鍛え上げた筋肉を使ってマンコ壁を締め、蛇ちんぽへとむしゃぶりつく。そんなトカゲのちんぽは鈴口から多量の我慢汁を撒き散らし、腹筋を打って派手に暴れ回っていた。ぶ厚い筋肉が揺れ、汗がほとばしり、トカゲの雄臭さで車両全てが満たされていた。

 

「くっせぇなぁ。これ、バレちまわねえのか」

「いいだろバレても。このエロトカゲは悦ぶだろうし」


 自分の痴態に股間を膨らませる学生たち。姿が見えぬ乗客たちも不快そうに鼻をつまんでいた。自分の淫らさを知られていることがトカゲの脳みそを溶かしていた。トカゲを構成していた知性や誇りがとろけてしまい、体液として垂れ流されていく。

 

「おっおっ!そろそろイきそうだぁ!いくぜっ!種付け、種付けだぁ!」

「あ゛っお゛おおぉっ❤❤❤た、たねつけぇぇ❤くるぅ❤ザーメン❤❤雄マンコ孕まされちまううぅ❤」


 ちんぽの微振動をマンコで感じ取り、経験豊富なマンコは絶頂の気配を察知する。一回りは小さい青年に犯され、辱められた挙句に精液を雄子宮にぶちまけられる。

 

 それを理解してなお腰の動きは止まらない。気持ちが良すぎた。マンコの飢えに突き動かされて貪欲にしゃぶりつく。

 

「んぎい゛ぃ❤い、いぎぞうぅぅ❤❤❤」


 全身に汗粒を浮かべて、トカゲは限界を向かえようとしていた。肉がたっぷりとついた尻肉は愛液と汗で汚れ、ぬらりとした異妖な光を放っていた。

 頭の頂点から尻尾の先までちんぽによって満たされて、快楽がちんぽから噴き出そうとしているような感覚。ザーメンを漏らそうとちんぽの血管が太くなる。


「ああ、ゴールに着く前に終わってしますか……なかなか楽しい見世物でしたよ」


 淫魔は優雅に礼をして、乗客の中へと姿を消した。

 映画のエンドロールで席を立つ客のように、満たされているけれどもう関心を無くしてしまった顔で。

 

 トカゲにとっても淫魔に何の執着を抱かなかった。今心を満たしているのは逞しくて硬い若雄のちんぽだけっだ。

 

「おら、いくぞ!おれがイくからお前もいけよ!いいなっ!」

「はひぃい゛いぃ❤いぐっ❤❤❤種付けされてメスキザーメンぶっぱなしまずぅうぅうぅ❤❤」


 パァン!と何かが弾けるにも似た音を立てて腰と尻がぶつかると、蛇ちんぽが結腸の曲がり角まで貫いた。

 マンコの中で生まれた快楽が全てちんぽへと流れ込む。トカゲという雄が死に絶えるための祝砲を打ち上げんと。

 

「おっ❤おぉおぉ❤❤」


 ぐるり、とトカゲの瞳がまぶたの上と隠れた。

 それは意識の喪失を意味し、トカゲの脳を保護しようと今更ながらの理性が働いた結果だった。

 

 ああ、全く以て遅すぎた。もはやザーメンは尿道を駆け上がっている。

 

「い、いぐ――――」


 鈴口から、濃い雄の汁がほとばしる。

 

「お゛ぉおお゛ぉおォぉおぉお゛ぉおぉおぉっ❤❤❤❤❤」


 トカゲの中に残っていた雄としての残滓。その全てを吐き出そうとでもいうのか、白濁の勢いも量も凄まじく車内に精の臭いが満ちていく。

 

「おっぉっぉおっおっおぉ~~~~~~~❤❤❤❤」


 トカゲは舌を千切れんばかりに伸ばしたまま、全身の筋肉を痙攣させていた。意識を失いただ本能のままケダモノじみた雄たけびを上げ続ける。

 これまでの価値観を洗い流す絶頂で脳は焼き切れて、マンコに注がれるザーメンの熱も脳をだめにする。知性の代わりにザーメンを注ぎ込まれてトカゲの人格は終焉を迎える。

 

「んぎいぃい゛ぃいぃいいぃ❤❤❤❤ザーメンとまらねえ゛ぇえぇぇ❤❤❤❤❤」


 濃いゼリー状のザーメンが床にこんもりと山を作っても射精は止まらない。ぶびゅぶびゅと、汚い音と雄臭さを放っていることが興奮に拍車をかける。

 

「おおぉっ!めっちゃ出るっすねぇ。おれも負けてらんねえっすね」


 蛇は奥にザーメンを注ぎ込むように腰を押し付けつつ、強調するようにちんぽを握りしめた。

 今にも死にそうな顔で震えているトカゲと違って蛇の表情は自信に満ちていた。男として一段階上の存在に成った顔。雌を自分のモノにしたと確信した時の優越感に満ちた顔だった。

 

「あ、おぉおおぉ❤❤ほっ❤んぉー❤」


 トカゲがようやく理性を取り戻した時には性にまみれた惨状が拡がっていた。ザーメンまみれの車内。自分をぎらついた目で見つめる学生たち。そして首を回せば蛇の笑みがあった。

 

「このまま二回戦に行きたいんすけど、まだまだヤりたい奴らはいるっすからね。また明日使ってやるから、マンコの準備しとくっすよ!」

「おんっ❤ザーメン漏れるうぅ❤❤」


 ちんぽを引き抜くと間抜けな音と一緒にザーメンが溢れ出た。一体どれだけ出したのだろうか。酷使されて閉じなくなった肛門から流れ落ちる汁は尻肉から太ももに川を作り、やがてトカゲの足元へと垂れ落ちる。

 肛門を閉じようとしてもやり方がわからなかった。脚の感覚が無くなっている。体中の骨が溶けてしまったように、身体が弛緩して動かない。頬から涙が、口からよだれが糸を引いて垂れ、内ももを伝い落ちる汁と一緒に足元に水たまりを作った。

 

「じゃあ、次はおれいくぜ。そいつの粗チンと違って太いからよ、おれ専用のマンコにしてやるよ」


 虎に尻を撫でられて、トカゲの脳みそが霞みがかった思考を浮かべる。

 ここはどこだ。自分は何をしていた。そうだ、淫魔を探していたはずだ。自分には大事な指名があったはずなのだ。無辜の市民を淫魔の手から守らなければいけない。

 

 そのはずなのに、トカゲは磔から抜け出そうともせずに尻を揺すっていた。肉が詰まった尻は汗や愛液によって濡れてかり、劣情の視線を惹きつける。真っ赤に腫れたマンコに視線が這いまわると、胎内に疼きが走る。

 

「へへ……動画にも撮ってるからな。ネットに流したらオッサンの人生終わっちまうかもなぁ?いや、もう終わってるか?こんなエロマンコだもんな」


 虎の囁きもトカゲに恐怖を与えなかった。

 ただ、視線が見えない鉄条網と化して鱗を引き裂いてくる。肉を削いでくる。骨を削ってくる。見られている。犯される姿をありとあらゆる方向から撮られている。肌が熱くなる。喉が干上がる。乳首が勃っていた。ちんぽもガチガチになっていて、すぐにでも射精ができそうだ。

 

「う、ぁぁ……❤❤」


 壊れてしまった。

 セックスでもレイプでもなく、痴漢という辱めによってトカゲの知らなかった快楽を植え付けられてしまった。あっという間に根を伸ばし、トカゲの理性や人格にまで浸食されて。


「やだ、やだぁ❤❤おれは、おれっ❤」


 涙や涎がダラダラ流れ出す。

 壊れてしまった自分を受け入れられない。子どものちんぽに屈服させられて、無様にもザーメンを漏らした自分を認めたくない。

 しかし、今も視線が絡みついてトカゲの快楽神経を侵食していた。ベッドの上で抱かれるのでは味わえない、背徳感。

 

 痴漢という行為がもたらすモノをようやく理解する。肉体的な快楽だけではないのだ。誰かに見られるかもしれない。気付かれるかもしれないという恐怖。人混みの中で自分の身体を玩具にされるという屈辱。自分の性臭や筋肉を他人に晒してしまう禁断の悦び。

 

 それを、トカゲは知ってしまった。

 

「あうぅうぅ❤❤見られてるぅぅ❤極太ちんぽでオマンコズコズコされるところぉ❤❤❤んひぃいぃ❤」

「おう、そうだぜぇ。あいつらに見せつけてやっからよぉ、しっかり喘ぎやがれ!」


 虎が尻肉に指を食い込ませ、筋骨たくましいガタイにふさわしい巨根を見せつける。周囲の学生が鳴らす口笛やざわめきを聞いてますます反り返らせると、所在なげに震えているマンコへ一気に突き立てた。

 

「お゛っほぉおぉおおぉぉ❤❤❤オマンコきたあぁあぁあぁ❤❤❤❤」


 生々しすぎる絶叫が、車内に反響した。

 全長約19メートル、全幅約2.5メートル、全高約2.3メートルの密室はトカゲの絶叫を乗せてレールを走る。

 

「ふっ、ふっ!どうだぁ!おれのちんぽのがいいだろぉ!」

「ずっげずっげぇえぇ❤❤んぎいぃ❤❤❤マンコぉおぉ❤オマンコごりごりぎでるぅうぅ❤いぐいぐっ❤❤マンコしゅんごいぃいぃいぃ❤❤❤❤」


 虎はテクニックも何も使わず、ただ長さと太さにモノを言わせて力任せに腰を打ち付けてくる。蛇のザーメンをかきだすように往来され、愛液まみれの膣壁が何の遠慮もなく拡張される。結腸の曲がり角が道路工事のような趣で叩かれる。トカゲはひとたまりもなく敗北し、デカ尻を自分から振り立てる。

 

「いぐいぐうぅうぅ❤❤ずっといぐうぅううぅうぅん❤❤❤❤」


 人間離れした獣声を張り上げて、獣ですら控えるだろう狂乱の極致を晒し続ける。男らしく立派なちんぽからはザーメンや潮が滝のように流れ落ち、車内に雄臭を蔓延させていた。

 火花が散る視界では学生たちの視線だけではなく、悪臭に顔をしかめる乗客の姿も見えてトカゲマンコを蕩けさせた。自分を辱めることが最高の興奮剤であり、トカゲは乳や尻を派手に揺らして踊る。

 

「おらっ!もっと股広げろや!おれのちんぽ咥えこむオナホマンコ見せてやるんだよ!」

「おひょぉお゛ぉおぉお❤❤おぐうぅ❤ちんぽおぐまでぎでるぎでるうぅうぅ❤❤❤❤」


 虎はトカゲの尻を叩くと、膝の裏に腕を回して抱えあげた。いわゆる背面駅弁の体位にして悠々と突き上げる。股を開いたおかげでトカゲマンコはちんぽを咥えこまされて泡立つさまを周囲にはっきりと晒される。

 男前な顔が、膨れ上がった大胸筋が、靴を履いたままのつま先が、虎の腰に合わせて揺れている。トカゲがちんぽに使われるだけの生物であると、このうえない説得力をもって提示されている。

 

「いぐっ❤おごぉおお゛ぉおおぉ❤❤マンコ破れるぅう゛うぅ❤いぐううぅ❤❤オマンコでいぐいぐいぐいぐぅううぅ❤❤❤」


 トカゲはもはや人の皮を被ったオナホだった。身体のどこが動くだけでも、見られるだけでも頭の中とマンコで真っ白な光が爆ぜる。光はトカゲの脳を、神経を、あらゆる器官を快楽で灼き尽くす。

 

「もっどもっどおぉおぉおぉおぉぉぉ❤❤❤もっとオマンコの奥ゴリゴリしてくでよおぉおおぉ❤❤❤❤」


 耳障りなくつくつ笑いが聞こえた気がした。

 

 ***

 

「あー、会社行くのダリィなぁ……」


 通勤客でごった返すプラットフォーム。こぼれたあくびは喧噪の中に紛れて消え失せる。満員電車という悪習はいつ無くなるのか、或いはいつになればすし詰め車両から逃れられる身分になるのか。

 今は夏の炎天も和らいで、初秋の涼やかな空気が吹いているから少しはマシだが、電車の中では人の臭いと熱で自分が汚されてしまうような気分に陥る。毎日毎日、変わらず地獄を醸成する鉄の牢獄に、サラリーマンは今日も乗り込んだ。

 

 いつものように心を殺して人混みに潰されていると、ひそひそと囁き合うような声が聞こえた。どうやら、目の前で座る学生たちが出本のようだった。

 

「なあ、知ってるかあの噂。この電車に出る痴漢」

「知ってる知ってる。沼男だろ」

「ちげーよ。沼男はもうずーっと出てないんだって!」


 いつもならばうるさいガキどもだと睨みつけて終わりにするところだが、今日は何故だか聞く気分になった。痴漢というワードに股間が反応したせいかもしれない。いっぱしの男として、痴漢には多少の関心があった。もちろん実行に移すような度胸は無いが。

 

「今はさー、変態のトカゲが出るんだって。すごいエロい恰好しててさ、そいつを見てるとうっかり痴漢しちゃうんだよ」

「……それ、痴漢なのか?痴女じゃないの?」

「男らしいしやっぱ痴漢だろ。いくら痴漢してもオッケーらしいぞ。バレても通報されないんだって」


 何を馬鹿な噂をしてるんだ。

 リーマンは呆れ返って車内の電子ニュースに目をやった。相変わらず生真面目そうなアナウンサーが今日の天気について知らせている。今日は午後から雨か、と気分を盛り下げる要素が一つ増えた。

 はあ、とため息をしていると駅に到着したのか人の波が揺れ動く。押し込まれて運ばれたたのは駅とは反対側のドアに近いスペースだった。どこだろうと人は

多いのだが、ドア付近だけは不自然に人が固まっていた。何してるんだ、この狭い車内でと舌打ちをして視線をやると、リーマンは信じがたいものを目にする。


(おおおおっ!なんだこの野郎……!すげえスケベな恰好してるじゃねえか!)


 そこにいたのはディープカットのタンクトップに尻へ張り付くスパッツという姿をしたトカゲだった。リーマンより頭二つは大きいが、肩幅や腹筋のぶ厚さは倍ではかきかないだろう。剥き出しの太ももや両腕は筋肉でぼこぼこと膨れ上がって逞しさをアピールしていた。

 

 極めつけは、ホットパンツからはみ出した紐パンだろう。千切れてしまいそうな細紐を腰へとひっかけて、極小の布地までもはみだしている。でかい尻に小さすぎる紐パンは視覚的にエロく、リーマンの股間が急速に硬くなる。

 リーマンはエロすぎる尻に生唾を飲み、背後へとぴったりくっついた。といっても痴漢までする気はなく、その匂いやあわよくば筋肉に感触を楽しめれば良いな程度の健康的なスケベ心だった。しかし――

 

「おっ!?おおおぉおぉっ!」


 なんと彼の股間にトカゲのデカ尻がぴたりと密着したのだ。それだけならラッシュで押された可能性もあるが、なんとふとましい腰が上下に動いてちんぽを擦りつけてくる。

 おかげでリーマンのちんぽはスラックスを突き破りそうなほどに勃起してしまった。テントのように張り出した雄幹を、温かく、弾力と柔らかさを兼ね備えた双丘が包み込むように圧迫する。

 

(い、いいのかこいつ……!てか、おれの他にも男を相手してんじゃねーか!)


 トカゲは尻で奉仕しながらも両手で他の男の股間をまさぐっていた。片方は張り出したテントを撫で、もう片方は下ろしたファスナーから指を突っ込んで直接ちんぽをまさぐっている。

 それを認識した瞬間にリーマンの中でプツンと音を立てて何かが切れた。デカ尻を鷲掴みにすると、谷間に怒張を挟んで擦り上げるように突き返す。

 

「おっ!おおっ!いいぜ、兄ちゃんっ!このままハメてやろうか!?なあっ!」

「……!」


 トカゲの耳元で囁きながら腰を動かしていると尻を押し付け返して来た。同時に大臀筋全体をすぼませて、谷間に挟んだちんぽを締め付ける。オナホよりもよほど快楽をもたらす尻コキに、リーマンは脳を沸騰させて腰を振り続けるのだった。


(随分と上手になりましたね。さすがは元・捜査官どのです)


 耳元のくつくつ笑いにトカゲは下腹部が熱くなるのを感じた。あの日、淫魔に敗北したトカゲは学生たちのオモチャにされて、毎日のようにオナホ代わりにされている。従わなければハメ撮りをバラ撒いてやると脅されているが、そんなものがなくとも喜んで尻を振ると自分自身が一番よく理解していた。毎朝、満員電車で種付けをされると一日中身体が火照りっぱなしになってしまうほどだ。もうただのセックスでは満足できない。

 

(そうですね、今日は20人射精させたらご褒美をあげましょうか。電車の中を四つん這いで歩かせてあげます)

「んあぁぁ……❤分かったぁ❤❤くぅ❤がんばってザーメン搾り取りからぁ❤」


 当然、淫魔による調教も毎日されている。舌先から結腸の曲がり角まで淫魔によって仕込まれて、指先一つ動かされるだけでもトカゲは膝をついてザーメンを漏らすだろう。

 乳首は一回り大きくなって、スリットと肛門の肉も盛り上がって性器として完成しつつある。雄を誘う痴漢魔として、新たな都市伝説になるほどの淫らな身体にされてしまった。

 

 学生たちに使用されるのもいいが、やはり淫魔の手がマンコや乳首を滑る快楽には敵わない。声を封じられて思い切り絶頂させられるのも、歯を食いしばりながら周囲の視線に酔うのも、どちらもたまらない。

 

「なあっ!ここでハメさせてくれよ兄ちゃん!いいだろ!?」


 熱っぽい囁きに尻を押し付けて返し、トカゲが異妖に笑んだ。

 スパッツの中ではマンコが愛液とザーメンを漏らしており、尻肉を割り開けば膨れたマンコ肉の形が明瞭に見えてしまうだろう。このままスパッツを下ろされてちんぽを捻じ込まれるのだろうが、その前にスパッツに浮かぶマンコ肉を見て欲しかったなと少しだけ惜しくなった。

 

(これからも雄を誘ってくださいね。あなたのおかげで、私は食事に困りません)


 ちんぽの熱を直腸で感じながら、トカゲは理解する。

 この電車は淫魔として最高の餌場になった。トカゲに情動をぶつける雄が群がる上に、トカゲを雄を誘っているという上っ面があるおかげで淫魔の影すら知られることはない。

 

 安全に、快適に、人の欲望を啜ることができる――トカゲを囮にして。

 

  囮の由来は招鳥(おきとり)であり、鳥で鳥をおびき寄せる狩りの手法である。鳥は同胞を見て気を許し、狩人の仕掛けた罠へと自ら飛び込んでくる。

 しかし年月が経ち囮は同胞ではなく獲物が求める餌の意味へと変わる。疑似餌。手負いの兎。ケダモノどもが牙を突き立てたくなる美味そうな餌の意へと。


 かつて狩人だったトカゲは、狩人に使われ獲物に食われる餌へと堕ちた。

 だが、それもいいのだろう。餌となった彼は、食われる悦びを確かに感じているのだから。

 

「ああぁぁ❤❤いいから、早くハメてくれよぉ❤❤❤マンコ火照って我慢できねぇんだ❤たーっぷりザーメンくれよな❤❤」


 媚びた声をかき消すように、電子音のクラシックが鳴った。

 

 了

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