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世の中をエロで満たしたい。 そんな理念のもと、変わり者のサキュバスが作り上げた、とあるテーマパーク。 エロと性癖と少しの魔力を練り込んで構築されたアトラクションの数々は、極上の体験と快楽をもたらすよう設計されている。 来場者たちは日常から切り離された空間で、好き放題に遊び、性欲を解放し、ヤりまくる。 そして、思う存分に愉しめるだけの肉体へと変質していくのだ。 ここを訪れた人間は、どんなに清らかで理性的な人間であっても、身も心も徐々に淫乱に染まっていくという……。 ❤  ❤  ❤ 「もうすぐ着くよ」 「うん、楽しみだね」 バスの中で言葉を交わす若い男女。 明知カナタと井剣ミカの2人は、同じ学校に通うカップルだ。 付き合って数か月の初々しい空気感……ではあるのだが、少しばかり問題があった。 お互いに奥手というか、「そういう行為」に至っていないのだ。 年相応に、そういった欲求がないわけではない。ただ、2人とも大人しく勉学に励む優等生タイプである。 髪も校則違反のない平均的な長さの黒髪で、私服も含めて印象には残らない。自己管理が行き届いた……悪く言えば目立たない容姿からも理性の強さが伺えるし、その理性が2人の関係においては枷となっていた。 学校ではたびたび不純異性交遊の注意喚起が行われている。 イチャついている生徒たちによるものだろう、屋上や空き教室、校舎裏……そういった場所での行為や形跡があったと遠まわしに教員から生徒たちへと言われるのだ。 カナタもミカも、そんな状況下で人目をかいくぐってまで校内で何かしようとは思えなかった。 しかしデートするにしても、誰か見ているかもしれない街中では手をつなぐのがやっと。家に行こうにも家族がいるし、やはりお互いに緊張してしまう。 マジメすぎるがゆえに一線を超えられないまま、時間だけが過ぎていた。 そんな中で知ったのが、最近できたばかりのテーマパークだ。 少しでも雰囲気やムードを高めようと、思い切って行ってみることにしたのだが……。 ただ、入場する前からその判断を後悔しつつあった。 「派手な格好の人が多いね」 「うん……」 テーマパークまではバスで来たのだが、他の乗客たちの格好はあまり常識的とはいえなかった。 へそ出しのタンクトップだったり、水着のような見せブラだったり、濃いメイクやビビッドカラーな髪色だったり……やけに煽情的というか、街中で歩いていたら痴女だと判断して距離を取っていただろう。 「今日はどこから行く~?」 「やっぱジェットコースターからじゃない」 会話からは通い慣れている雰囲気が感じられる。 テーマパークができてまだ日が浅いが、すでに常連がいるのだろうか。 場違いなところに来てしまったのではないかという懸念が頭の中で大きくなっていく。 とはいえ、ここまできて引き返すわけにもいかない。入場すればバラけるのだからと自分に言い聞かせつつ、目的地に着いたバスを降りた。 チケットはすでに買ってあるので、あとは入場口のゲートで見せるだけだ。 ターミナル駅の改札のようにいくつかに分かれていて、それぞれ通り抜けするところで受付のスタッフが立っている。 応対しているのはみな女性で、さらに遠目にも分かるくらいに美人で少しびっくりするカナタ。 「初めての方はこちらからお入りくださーい」 「あ、はい……」 案内されるまま、端側の通路へと進む。 痴女みたいな格好をした人たちは、中央のレーンを慣れた足取りで通り過ぎていった。 「チケットを確認しまーす……はい、ご来場ありがとうございます。それではパークの説明をしていきますね」 チケットの提示はすぐに終わり、どうやら初めての人のための説明があるらしい。 「パーク内のアトラクションは基本無料です。ドリンクや食事も好きなだけお楽しみ頂けます」 「えっ、飲食まで!?」 流石に驚きを隠しきれず、反射的に声をあげるカナタ。 アトラクションはまだしも、入場料だけでやっていけるものだろうか? 「我々が求めるのはお金じゃない……というのが、うちのオーナーの方針なので。好きなだけお楽しみください」 「はぁ……」 スタッフに笑顔でそう言われると、返す言葉もない。 実際、まだパークの中を見ているわけではないし、それ以外に赤字にならない工夫があるのかもしれない。 疑問は残るけれど、そういうものなのかと納得することにした。 「他に、気になることはありますか?」 「僕らの服装……なんですけど、浮いてませんか、大丈夫ですか?」 心配そうに話すカナタ。 先ほどの客はもちろんだが、スタッフまで露出がすごいのだ。 目の前にいる彼女も、水着のまま帽子や手袋を身に着けた出で立ち。他の受付さんも同じ格好なあたり、これがスタッフとしての衣装なのだろう。 美人だから違和感がないというか、むしろ様になっているけれど、改めてみると異様なくらいの露出なのは変わらない。 周りにいる客も含めて、むしろ自分たちの方が少数派なのだ。 普通の格好でいることが、逆に不安になってくる。 「大丈夫ですよ、服装は自由ですし、パーク内で他の衣装も入手できますので」 笑顔で応じつつ丁寧に説明するスタッフに、カナタの緊張も解けていく。 衣装については、売店で買ったものをそのまま着るのだろうか……かなり大胆だな、とは思うが、そのくらい熱中する人もいるのだろう。 説明を終えたスタッフの女性はスタンプを取り出して、彼の手の甲にポンと押した。 「こちらがパスポートになっているので、アトラクションや施設を利用する際にスタッフに見せてくださいね」 紫がかったピンク色で、ハートマークを基調にしつつ、オシャレに仕上げたような模様。 おそらく、1日くらい落ちないタイプなのだろう。 ポゥ… 「……?」 ふと、手の甲についたスタンプが淡いピンク色の光を放ったような気がして首をひねるカナタ。 蛍光インクにしては、やけに目に入ってきたような……。 「では、楽しんでいってくださいね~♪」 「あ、ありがとうございます……」 ただ、次の入場者が待っているのに立ち止まっているわけにもいかない。 気のせいだと思うことにして、受付のお姉さんに一礼してゲートを通り抜けた。 「うわぁ……!」 ゲートを抜けた先には、別世界が広がっていた。 入場口からは見えなかった華やかな建物が立ち並び、遠目にアトラクションも見えている。 明るい音楽も聞こえてくるし、嗅ぎ慣れない甘い匂いも感じられる。 やはり実際に目にしてみるとテンションが上がるし、期待に胸が高鳴ってくる。 「あ、先に入ってたんだね」 同じく入場してきたミカが後ろから声をかけてくる。彼女の手の甲にも同じハートマークのスタンプが押されていた。 「じゃあ行こっか」 「うん!」 先ほどまでの緊張や警戒感が嘘のように、楽しむ気満々の2人。 笑顔を交わしつつ、手を握って進んでいく。 広大な敷地ゆえに他の客はまばらになったが、普通の服装と派手な装いの半々くらいだろうか。 しかし今の彼女たちは、周りの格好など気にならなくなっていた。 『パンフレットの説明』 入場ゲート:認識改変 チケット確認したら、パークはもうすぐそこ。 スタッフさんが入場の証にスタンプを押してくれるよ! 手の甲や腕、胸とか、肌の見える場所に押してもらってね。 通行パスポートになってるから、アトラクションに乗るときはこれを見せれば遊び放題! このスタンプは魔力の込められた淫紋になっていて、自分や周りの変化をみても異常だと認識できなくなるよ。 まったく気づけないわけじゃなくて、適度に驚いたり楽しんだりはできるから安心してね。 中には特別なスタンプもあるかも……? このテーマパークを、心おきなく楽しんでね!

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