コミッションss『筋肉を纏い、少女は偶像となる』(終) (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-11-25 11:27:22
Imported:
2023-05
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翌日、冬優子は車で仕事先に移動していた。
不良たちの一件の後、自宅に帰った彼女は生活に支障が出ないよう体型を修正していた。
しかし、スポーツ番組から連続して筋肉を肥大化させる快感を覚えてしまった彼女の肉体は、より顕著な筋肥大を起こすように変質していた。
朝起きた時点で筋肉の凹凸がわかってしまうくらいには成長していて、またあの体型に戻りたいと訴えてくる。
改変の効果が強力になったためか、筋肉質な体型に合う服がいくつか用意されていたので、それらを着て仕事に向かっている。
ただ今も肥大化が続いており、サイズが合わなくなってきた布がピッチリと張り付いていて、筋肉の輪郭がじわじわと大きくなりつつあった。
ムクッ、ギチチ……
後部座席を丸々占拠するようにドカリと座っている冬優子。
これまでの彼女なら恥ずかしくてできなかった行為だろうが、もう人目を気にしなくなっていた。
改変で自分の体型にはみんな違和感を抱かないのだから、わざわざ隠す必要もない。
(あはっ……みんなふゆの筋肉を見てる……♪)
それどころか、肉体を視られることが冬優子にとっての快感になっていた。
車の窓ごしにも彼女の巨体は非常に目立つために、信号待ちなどで通行人からの視線が注がれていく。
それらを感じるたびに興奮が高まっていくのだ。
視線にお返しするようにぴくぴくと大胸筋を震わせながら、筋肉の感触を自ら愉しむ冬優子。
彼女にはもう、アプリで元の身体に戻るという選択肢は存在しない。
せっかく育った筋肉を無かったことにするなんて考えたくもなかった。
冬優子は、身体だけでなく精神も筋肉の虜となっていた。
(あ~、はやくこの身体をフルに使いたい……)
全身が武者震いのようにふるふると震え、快感を思い出してボコリと肥大する。
今すぐにでもこの疼きを解放してやりたいが、ここは移動中の車の中だ。
流石に車内で怪力を発揮すれば周囲を危険に巻き込んでしまうため、自分の肉体に言い聞かせながら衝動をこらえる。
……それに、もっといいプランが冬優子の頭の中にはあった。
今日のスケジュールは、彼女のアイドルとしての活動……それもユニット「ストレイライト」としての活動である。
つまり冬優子1人の仕事ではなく、他メンバーとは現地で合流する予定になっていた。
「あ、冬優子ちゃんっす」
「おっ、おはよ~」
控室に入ると、先に来ていたあさひと愛依が迎える。
しかし冬優子には、いつものように挨拶を返す余裕はなかった。
軽くうつむきながらドアを閉め、2人の前に立つ。
「ここまで我慢してたんだから、もういいわよね……」
自分に言い聞かせるように呟いた。
おもむろに両腕を曲げ、膝を軽く曲げつつ前傾姿勢をとる。
そしてーー
「ふんぬぅっ!」
顔を前に向け、歯を食いしばりながら全身に力を込めた。
唐突の冬優子の行動に、わずかに目を見開く愛依とあさひ。
静寂が一瞬だけ訪れ、そしてーー
ボコッ、メキッ、ボココッ!
「きたきたきたきたあぁぁあああっ!!!」
ずっと抑えてきた欲求をすべて解放するように、身体が膨張していく。
服が一気に張りつめ、内側から出口を求めるように筋肉が隆起していく。
ドクドクと心臓が脈打ち、全身をパンプアップさせていく。
待ち望んでいた感覚に、冬優子の顔は歓喜で満たされる。
バリバリイィィ!
私服はあえなく千切れ飛び、筋肉に覆われた肉体が露出する。
しかし一糸まとわぬ姿というわけではなく、胸と股間だけは隠されていた。
ボディビルダーが身に着けるようなブーメランパンツと、乳首を隠すだけのシンプルなビキニ。
私服と同じく、今朝入っていたものを下に着てきたのだ。
まるでさらなる肥大化を前提にしていたかのように、ぴったりと体に張り付きながら衣装として筋肉を際立たせる。
モココッ、ビキッ、ムキキッ!
ボコボコと筋肉一つ一つが丸く大きくせり出し、連なっていく。
番組で無双したとき、不良たちを圧倒したときの体型になってもなお、冬優子は止まらない。
「もっと……もっと筋肉の映える身体にィ!」
そして変化は、身長や筋肉量だけにとどまらなかった。
冬優子の白かった肌が、みるみるその色を濃くしていく。
まるで日焼けサロンに通う様子を早回しで見せつけられているかのように、チョコレートのように濃厚な褐色へと染まっていく。
それは、ひしめく筋肉の陰影を強調するような色だった。
「うおぉぉおおおおっ!!!」
ムグボコォッ!!!
極めつけに一回り身体が膨れ上がり、その動きが止まる。
全身から湯気を立ちのぼらせながら、冬優子の身体が「完成」した。
「うわ……」
「でっか……」
思わず愛依とあさひからも声が漏れる。
2メートルをさらに上回った身長。
背筋を伸ばしたら、天井に頭がついてしまうんじゃないかと思えてくる。
「はーっ、ふーっ、んふーっ……!」
全身を解放した高揚と興奮で呼吸が荒い。
褐色肌からは汗が滲みだし、鉛筆くらいの太さのある血管が浮き上がっている。
冬優子は以前のように身体を隠そうとすることなく、むしろ筋肉がつきすぎて乳房のように前に突き出した胸を張り、腋を開いたまま手を振りかぶる。
そして、倍ちかくの大きさになった両手を握り、自らの胸へと振り下ろした。
「うぉぉおおおおっ!!!」
ドコドコドゴドゴ!!!
ゴリラのドラミングのように、自らの大胸筋を何度も何度も打ちつけていく。
力を誇示するように、筋肉に刺激を欲するように。
鈍く、しかし力強さですべてを圧倒するような振動が愛依とあさひの全身に響いていく。
ひとしきり叩ききった冬優子は、気迫はそのままに2人を睥睨して告げた。
「どうだァ……これがふゆの筋肉よォ!」
それは、アプリで改変した際の数値をさらに上回った筋肉量と巨体。
腕や大胸筋が大きすぎて、相対的に大きさの変わっていない顔が小さくみえてくる。
目の前で起きた冬優子の変貌。しかし2人に怯えた様子はない。
元から冬優子に対して好意的であるがゆえに、筋肉への認識も即座に改変されていた。
「冬優子ちゃんめっちゃヤバ……マジで圧倒的すぎるんだけど!」
ファッションを誉めるかのように、冬優子の肉体を賞賛する愛依。
まるで非の打ちどころのないモデルを見ているかのように、心からその肉体を称えている。
「胸も腕も大きくて、まるでゴリラみたいっす!」
目をキラキラと輝かせながら冬優子を見上げているあさひ。
そのストレートな物言いも、今の冬優子にとっては誉め言葉でしかない。
普通であれば痴女のような装いだとしても、いまの彼女には筋肉という最高の鎧がある。この恰好が称賛されることはあれど、咎める者は誰もいないのだ。
冬優子は身体から湧き上がる欲求のままに行動する。
「当たり前でしょ、これがふゆの身体なんだから……もっと見なさいっ!」
称賛の言葉を受け、2人に向けてより胸を張る。
とにかく筋肉を見せつけたい。限界まで力を込め、怒張させたい。
観客2人だけ、即席のポージングショーが始まった。
「まずはぁ……ダブルバイセップス!」
筋肉を強調する姿勢の中でも一番有名だろうポーズだ。
二の腕を両肩の高さまで上げながら肘を曲げ、筋肉を収縮させる。
胸板から大きくはみ出した背中と、太腿と遜色ない太さの二の腕が、上半身をより大きくみせている。
くわえて左右に開かれた脚と、それでも隙間ができない極太の太腿によって、砂時計のようなフォルムを描いていた。
左右対称のみならず、上下半身の肉量がひしめき合った美しく圧倒的なポージング。
その肉体を目にするだけで、彼女が強者なのだと思い知らされる。
「サイドチェストォオオ!!!」
冬優子のポージングは止まらない。
両腕を胸の前で組み、半身になってから上半身をひねって正面に向ける。
ただあまりにも大胸筋がデカすぎて、両手が掴みきれていない。
腕に乗った大胸筋は乳房のように丸々としていて、かつ筋繊維による細かな陰影が見て取れる。
二の腕と胸の筋肉が4つ並んでいる上半身。
バランスがとれているというよりも、それぞれの部位がただただデカい。
視界の下側を覆いつくす褐色筋肉に、冬優子自身も興奮が止まらない。
しばらくポーズを維持したのち、クルリと反転して腰に手を当て、広背筋を最大限に広げる。
「バックラットスプレッドォ!」
正面からみてもはみ出していた背中は、直接見るとその大きさと凄まじさがより伝わってくる。
肩甲骨を包み込むようにボコボコとうねり、左右に張り出しすぎてもはや胴体の輪郭が見えない。巨大な翼が生えているようだ。
筋肉が繋がっている背骨は、分厚い脊柱起立筋がひしめくせいで縦のラインしかのこっていない。
腰まわりに向かって収束してゆき、下端の形状までくっきりと浮き上がっていた。
「ほら、ふゆの筋肉をもっと見なさいっ!!」
両手を頭の後ろにやりながら、また身体の前面を見せつける。
アブドミナルアンドサイ。
ぶっとい二の腕に挟まれて、顔が筋肉に埋もれてしまいそうだ。
分厚いレンガのような腹筋がギチギチとひしめき、肋骨をとつながるギザギザとした前鋸筋が分厚い鎧となって前面を飾る。
前後にずらされた両太腿は、大木が2本絡み合っているかのような威容だ。
片足だけでも、彼女の胴体に匹敵する太さがあるだろう。
「ふんぬぅうぅううううう!!!」
そして極めつけに、全身の筋肉を強調するモストマスキュラー。
顔の両隣にラグビーボールを埋め込んでいるかのような僧帽筋が並び、首筋から鎖骨に向かって筋が浮き上がる。
両肩がビーチボールが埋まっているようにボコリと張り出し、その下では筋肉おっぱいと二の腕の4つの筋肉の塊が横に並んでいる。
下半身にはガニ股気味の太腿がどっしりと控え、全身すべての筋肉が存在感を主張し合っていた。
「おー!」
「すっご……ムッキムキじゃん」
冬優子のポージングを食い入るように見つめ、拍手をしながら褒め称える愛依とあさひ。
圧倒的な肉体美を、称賛と敬意、そして羨望のまなざしで見つめている。
冬優子は全身の衝動が少し落ち着いたところで荒い息を吐きながら2人を見下ろし……問いかけた。
「……それでいいわけ?」
「え?」
「何がっすか?」
意図がわからないといった様子でキョトンとする愛依とあさひに対し、冬優子はじれったそうに頭をかきながら続ける。
「あんたたちは、そんな弱っちい身体で満足してんのかって聞いてんのよ!」
冬優子の気迫に圧倒される2人。
彼女たちはアイドルユニット「ストレイライト」だ。
つまり、冬優子と並んでステージに立つ必要がある。
しかし今の冬優子の圧倒的な筋肉と肉体美には、2人が並んだとしても釣り合いが取れているとは言い難い。
身長はもちろん存在感という面でも、注目が冬優子にしか行かなくなるのは明白だった。
「い、いやー、ウチらは限界があるっていうか……」
「トレーニングしても、冬優子ちゃんみたいな身体になれないっす」
改変の効果で筋肉を受け入れているとはいえ、彼女たちの体質が変わったわけではない。
どんなに鍛えたとしても、冬優子のような身体には到底なれないだろう。
バランスが取れていないのも分かってはいるのだが、彼女たちにとっては「そういうユニット」だと認識されてしまっている。
冬優子と並び立てるようになれれば嬉しいだろうが、そんな解決策を持っているはずもなかった。
「わかってるわよ、だから……」
冬優子はスマホを起動し、あのアプリを開く。
そこに記載されているステータスは、今の彼女の肉体をそのまま示していた。
よくみると増加した筋肉量は、100キロをはるかに上回っている。
冬優子自らが筋肉を受け入れ、より筋肉を臨んだ結果、最初に入力された値を上回るバルクとなっていた。
おそらく、これからも筋肉の成長は続くのだろう。それが分かっただけでも冬優子の顔に笑みが浮かぶ。
ただし今は、自分に使うわけじゃない。
ピッ
スマホを2人に向ける。
すると、これまで『黛冬優子』と表示されていた名前の欄が、『芹沢あさひ』『和泉愛依』に切り替わった。
その下にズラリと並ぶのは、彼女たちの詳細なステータスの数々。
冬優子のときと同じように、数字をタップするとカーソルが点滅する。
「ふゆに相応しい身体になりなさい」
彼女たちの「体重」の欄を、今の自分と同じ数値へと書き換えた。
連動するように、冬優子の巨体と同じような体格へと……それに見合った筋肉量へと数字が書き変わる。
そして、効果はすぐに訪れた。
ムグッ、ググッ……
「え、あれ?」
「なんか……身体が大きくなってる?」
愛依とあさひの身体が、主にその筋肉が盛り上がっていく。
冬優子のときと同様に自分の体型の変化は認識できるようで、身体を見下ろして驚きの表情を浮かべる2人。
冬優子を見上げていた視線が、どんどん同じ高さへとせり上がっていく。
「腕が勝手に広がって……」
「足もガニ股になっちゃうっすよ、これ」
身長だけではなく、発達した筋肉によって横にも成長していく。
広がり続ける背筋と太さを増していく二の腕がぶつかり合い、両脇が締まらなくなっていく。
肩も筋肉の塊が左右についた怒り肩へと変貌し、太腿は筋肉がパンパンに詰まってワイン樽のように中太りしていく。
冬優子のように、人間離れした体格。
「うっそ……」
「どうなってるんすか、これ?」
……しかし、困惑や驚きは一瞬だった。
目の前の冬優子の肉体を素晴らしいものだと改変されているためか、膨れ上がる自らの筋肉を見下ろす視線は、次第に熱を帯びていく。
「うちの身体、すっご……」
「でっかいっす……」
急激に膨れ上がっていく筋肉から疼きと快感が生じて、彼女たちの脳を満たしていく。
爆ぜるようにボコンと肥大化し、2人の変化は治まった。
「うわやばっ、足元が全然みえないんだけど」
ブルンッ!
愛依は嬉しそうに自分の胸を下から持ち上げている。
元からたわわだった胸と尻の脂肪はさらに増加し、発達した筋肉の上を覆っている。
大きく前にせり出した大胸筋とその上についた巨大な膨らみは、上乳にペットボトルを立てて置くことができそうなほどだ。
半分は大胸筋で固く、もう半分は女性的で丸みを帯びた愛依の筋肉爆乳。
胸板がデカくなった分、乳房のサイズや重さも相当なものだろう。
全体的に絞りこまれてはいないが、圧倒的なバルクによって個々の筋肉の形はしっかりと浮き上がっている。
逞しくありながらも、「女性的」と呼べるような柔らかな印象が強い。
「ちょっと動きにくいっすね」
スレンダーな体型だったあさひも、全身にこれでもかと筋肥大が起きていた。
肌の白さは変わっていない。ただ、面影があるのは顔と肌の色だけだ。
身長は2メートルには届かず、冬優子と愛依よりも頭一つ低いが、それでも十分すぎる巨体。
純粋な筋肉のサイズだけでいえば、2人よりもいくらか小さくみえる。
しかし、肌ごしにも明白なくらいに筋繊維がギチギチに詰まって、今にも飛び出してきそうだ。
その密度は冬優子のそれをも上回っており、脱力していても筋一つ一つが浮き上がっている。
愛依と冬優子にはない凄まじさがその身に詰まっていた。
「いい筋肉になったじゃない♪」
そんな彼女たちの肉体を、満足そうに見つめる冬優子。
自分と同類ができた喜びもあるが、それだけではない。
これで人間離れした筋肉を、その力を全力を受け止められる、高め合える相手ができたのだ。
全身の筋肉が歓喜に震えている。
そして変えられた2人はというと……
「すごいっすね、これ」
「やっば……❤」
別人のように変わりきった身体を見下ろし、嬉しそうに声をあげていた。
ボコボコに盛り上がった腕や脚をじっくりと見つめ、全身の筋肉から押し寄せてくる快感に自然と笑みも浮かんでくる。
「もう筋肉のことしか考えられないじゃん……❤」
愛依がポージングを繰り返しながらうっとりと呟く。
ずっしりとした重さが全身から伝わりつつも、自分の思い通りに動く筋肉ダルマなボディ。
筋肉だけでも200キロちかく増加したのだ。
肌の色は変わっていないが、元から褐色のためにその立体感がよくわかる。
全身からこみ上げてくる疼きと快感のせいで、一瞬でも脱力するのがもったいないと思えてくる。
「見たことのない筋肉がたくさん浮き上がってて……すごく気持ちいいっす!」
いつもなら色んなものに関心が散ってしまうあさひも、自分の肉体に夢中なようだ。
ペタペタと自分の身体を触りながら、個々の筋肉の動きを確かめるように力をこめ、ビクビクと震わせている。
白い肌に筋肉の影がくっきりと浮かび、身体の動きに合わせていくつもの筋肉がぐむぐむとうごめいている。血管のわずかな色の変化さえも芸術品のようだ。
そして彼女たちの中に自然と浮かんでくる欲求は、ただ一つ。
「もっと……もっとデカくなりたいっす!」
「もちろんウチも❤」
さらなる筋肉を欲して冬優子を見据える2人。
すでに認識が改変されていたせいか、彼女たちはあっという間に筋肉の虜となった。
冬優子と同じ渇望を抱き、その肉体をより肥大させようと全身を震わせる。
「もっと筋肉を高め合うわよ❤」
冬優子もまた、2人の身体をみて筋肉への欲求が膨れがあっていた。
3人でポージングしながら互いの身体を見せつけ合う。
それぞれの肉体を称賛しつつも、自らも負けないとばかりに筋肉に力を込めていく。
「愛依のバックは……尻も目立つわね。サイズだけなら私よりデカそうだし」
「背中もすごくデカいっす!」
適度に肉感と丸みのある愛依の背中は、大海のうねりのように筋肉が波打っている。
後ろからみているからこそ、巨大すぎる広背筋と二の腕がぶつかってたわむ様子がよく見える。
筋肉もありつつむっちりとした極太の太腿と巨尻は、黒ギャルとしての衣装も相当に映えるだろう。
「すっご、あさひちゃんもバッキバキじゃん」
「皮下脂肪が見えないレベル……」
筋肉を極薄の肌でコーティングしたかのような姿。
一つ一つの筋肉に筋と血管が浮き上がり、連なっている様子がよくみえる。
小ささを感じさせないインパクトがその体躯に詰まっていた。
3人は色んな角度、ポーズを取りながら、自らの身体を強調しつつ相手の肉体を堪能していく。
「負けないっすよ!」
「うちだって!」
「あんたたち、ふゆの身体に勝てると思ってんの?」
アイドルとして競争相手でもある彼女たちの関係が、そのまま筋肉にも及んでいた。
筋肉を求める同士である一方で、目の前の肉体よりデカく、より美しくなってやるという意思のこもった視線を送り合う。
3人とも、まだまだデカくなるのだろう。
「んっ!」
「はぁっ!!」
「ふんぬぅ!!!」
至近距離で見つめ合い、見せつけ合う。
全身がさらにパンプアップし、汗がヌラリとした光沢を生んで筋肉を飾る。
筋肉をみて、筋肉を感じて、筋肉を見せつける。
五感すべてが筋肉に支配されていく。
「ストレイライトのみなさん、出番でーす」
唐突にドアが開かれ、スタッフから声が掛けられる。
アイドルとしての仕事でここに来ているのだ。時間が経てば出番が来るのは自然なことだ。
我に返った冬優子たちだが、しかしすぐにニヤリと笑みを浮かべた。
この身体を披露できる。そう考えただけでもゾクゾクと興奮が高まっていく。
「行くぞぉ!」
「はいっす!」
「よっしゃー!」
身も心も筋肉の虜となった3人は、気合を入れながら控室を出ていく。
少女たちはアイドルユニット『ストレイライト』として、肥大化した筋肉を重たげに揺らしながら仕事へと向かっていった。
(了)