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 それは今まで観たどんなAVやエロ漫画よりも鮮烈な光景だった。


「んっ、んんっ、んくっ……ふぅっ、あぅっ、んあっ、あぁあっ……!」


 人気のない図書室の隅で響く、少女の必死に押し殺したか細い喘ぎ声。

 耳を澄まさねば聞こえてこない嬌声は、正に天から降り注ぐ福音だった。


「あぁっ、んぐっ、んくぅっ……ふあっ、ここっ、良いっ……!」


 彼は息を殺して盗み見る。彼女の知られざる痴態を食い入るように見つめた。

 というよりも、目が離せなかった。一瞬でも目を離せば、少女が目の前から消えてしまうような気がしたから。


「くぅっ、はうっ、んあぁっ……おまんこっ、気持ちいいっ……!」


 眼前でありえない光景が繰り広げられている。

 どうしてこうなったのか。

 それは彼がこの場に居合わせる数分前に遡る。


 ×××


 遠野涼士郎(とうのりょうしろう)、16歳。彼は地元の高校に通う何の変哲もない高校生だ。

 彼女いない歴=年齢の童貞で、結構なオタク。

 帰宅部。学校の成績は中の下。苦手科目は赤点ギリギリ。

 友人はそこそこ。容姿は平凡。運動神経は普通。

 そんなどこにでも居る普通の少年の人生に、転機が訪れた。


 高校2年の4月。高校生活も一巡し、何の新鮮さも期待もない退屈な春がやってきた。

 夢見ていた高校生も結局のところ中学の延長でしかなく、それまでモテなかった童貞男がいきなりハーレムになるような都合のいい展開は有りはしなかった。

 勉強も、部活動も、色恋沙汰にもやる気が持てず、周囲の活気に取り残される日々。

 そうやって無為に時間を浪費した結果、惰性と無気力に満ちた空虚な男が出来上がる。


 彼は多くを望まない。期待すればするだけ、外した時の失望は大きくなるからだ。

 彼は周囲に迎合しない。自分を無理に曲げて他人に合わせても絶対に失敗するからだ。

 当然の結果として、彼はクラスから取り残され孤独になっていく。

 しかし捨てる神あれば拾う神ありとでも言うように、何が起こるか分からないのが人生だ。

 これは退屈を持て余した少年の運命が変わる、4月のある日の出来事。


 ×××


「予想より遅くなったな……」


 夕暮れ迫る放課後の教室から勢いよく飛び出す少年が居た。

 涼士郎だ。彼はやり忘れた宿題を書き終え、職員室に提出した後だった。

 涼士郎は帰宅部のため後は帰るだけだ。彼は積みゲーのことを考えながら階段を降りようとして、


「あ、本返さなきゃ」


 図書室の本を借りていたことを思い出す。大した手間でもないので、彼は足早に図書室へ向かう。

 夕方の図書室は人気がなく、日中の喧騒が嘘のように静寂に包まれていた。

 涼士郎は手早く本を返却すると、そのまま踵を返して帰ろうとする。

 が、


「……んっ、んんっ……くぅっ、ぅあ……」


 普段なら気にも留めない微かな音を、涼士郎の耳は偶然キャッチした。

 窓は締め切られている。風の音ではない。自分の足元からは聞こえなかった。足音ではない。

 これは人の声だ。それも自分の耳が確かならば、女の子の声のような気がする。

 怪我か、もしくはどこか痛いのだろうか。悲鳴にも似た声音から危険を察した涼士郎は、がらんとした図書室の奥へと進んだ。


 そこは本棚の影になって入り口からは見えない、奥の机だった。

 一人の女子生徒が本を読んでいた。


(あれは……)


 少女に気付かれないように、本棚の影から視認する。

 彼女は確か涼士郎と同じクラスの丙智香(ひのえともか)だ。

 彼女が図書室で本を読んでいること自体は何も問題ではない。


 本当に、ただ本を読んでいるだけならば。


「んっ、くぅっ……ふぅっ、ぁぅ、んんっ……!」


 智香は片手で文庫を持って読んでいる。そして空いた右手は下半身に伸びていた。

 涼士郎の位置からでは彼女の身体で隠れてよく見えないが、想像通りなら彼女の右手は股間に伸びているはずだ。

 それが示す意味は、彼女の表情を見れば容易に察することができる。


「うくっ、んふぅっ……はぁ、んはぁ……!」


 少女は羞恥心で頬を赤らめながら声を潜めて喘いでいた。

 これは間違いない。図書室という公共の場で、彼女はあろうことかオナニーをしているのだ。

 なぜ彼女が学校でそのような蛮行をしているのかは分からない。

 だが事実として、涼士郎の眼前で女の子が自慰に耽っているのは確かなのだ。


「んふっ、ふぅっ……いつもより、アソコが熱い……んあっ、あふぅっ……!」


 智香はオナニーに夢中になっており、涼士郎の存在に気づいている様子はない。

 涼士郎はどうするべきだろうか。彼女を気遣ってこの場を立ち去るべきか、欲求に従ってこのまま見届けるべきか。

 紳士的な対応をするなら、彼女のためにも見て見ぬ振りをするべきだ。

 だがしかし、本当にそれで良いのだろうか?

 涼士郎の本能が訴える。女っ気が皆無だった自分に千載一遇のチャンスが訪れたのだ。それを見す見す見逃しても良いのか、と。


「うくっ、んぅっ、んあっ……ダメっ、誰かに見られるかもしれないのにい、図書室でオナニーするの気持ちいいっ……!」


 図書室でクラスメイトの女子がオナニーしているのを目撃した。

 そんな経験滅多にできるものではない。それも恋愛どころか女子とまともに会話したことすらない、寂しい人生を送っている自分が直面したのだ。

 このチャンスを活かさずに、自分の人生に転機など訪れないと確信する。


 気づくと、涼士郎の股間が硬くなっていた。

 当たり前だ。同級生の痴態を目の当たりにしたのだから。

 さりとて、ここで本能のままにこちらまでオナニーをしている余裕はない。

 女子の自慰を見ながら自慰をしているところを誰かに目撃でもされればアウトだ。

 だからここは我慢の時間だ。必死に耐えた先に幸運を掴み取るための準備の段階。


「うぐっ、んんっ、はうっ……おまんこから愛液が流れて止まらないよぅ……!」


 無我夢中になって蜜壺をイジっている少女をよそに、涼士郎はポケットからスマホを取り出した。

 そして気づかれないよう静かに彼女へ画面向けて、カメラ機能で智香の痴態を写真に収める。

 よほどオナニーに意識が集中しているのか、シャッター音で涼士郎の存在が彼女にバレることはなかった。


「んあっ、んぅっ、ふぅんっ……ダメぇ、おまんこ気持ちよすぎてイッちゃいそうっ……!」


 涼士郎が同級生を盗撮したことへの罪悪感と高揚感で揺らいでいる一方で、智香のオナニーも終盤に突入していた。

 性欲に導かれるままに性器をイジり、絶頂に向けて突き進む。甘い声音で感情を昂ぶらせ、額には汗が伝っている。

 もはや彼女の世界には自分の存在しか映っていない。最高の絶頂を迎えるために、智香は激しく指を動かし性感帯を攻め立てる。


「んんっ、んぅっ、はあぁんっ! んあっ、イクっ、おまんこイッちゃうぅっ……!!」


 他人に見つからないような最大限の叫声を張り上げ、智香は絶頂した。

 腰をビクビクと痙攣させ、机に顔を突っ伏してアクメの余波を感じている。その姿はどんなAVよりも臨場感に溢れており、思わず愚息を扱きたくなるくらいに官能的だった。


「はぁ、んあっ、んはあぁ……結局最後までヤッちゃったぁ……」


 アクメの余韻に浸りながら放心する智香を見届け、涼士郎は胸の高鳴りを抑えられなかった。

 自分も結局、最後まで彼女のオナニーを見てしまった。彼女に対して心苦しくもあったが、彼の本能は間違いではないと告げていた。


 このままこの場に居続けると余韻から復帰した智香にバレてしまうので、涼士郎は気付かれないように図書室を後にすることに。

 こうして涼士郎の数奇な体験は終わりを告げた。

 しかしこれは彼と彼女の淫猥に満ちた数々の出来事の、ほんの始まりに過ぎなかった。

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