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3重ね糸  ホムンクルスの体内に入ってからさらに30分は経過している感覚がある。 外の世界では深夜をとっくに超えて朝を迎えているのだろう。 「ところで、俺や雲居さん以外に食べられた人間っているんですか?」 「今の所は私たちだけのようです。このホムンクルス、意外と腹持ちは良いようで」 冗談とも本気ともつかない雲居さんの言葉通りだとしても腹が空けばこいつは再び人間を食うのだろう。 「腹持ちがいいと言いましても、起動したホムンクルスが本格的に食事を開始するようになれば、今とは比較にならないスピードで人間を食べ始めて行くでしょう。 効率よく食事を摂るよう学習する能力も備わっていますしね」 「そのうえ無敵で、外部からの攻撃じゃ止める手立ては無い、ですよね?」 「そうなのです」 空中に浮かぶ大きな蜘蛛の巣の上で俺は大の字になって寝転んだ。 「このまま時間切れになって俺も雲居さんもホムンクルスの中で消えて行くしかないのかよ! くそっ!」 さっき、自力で移動しようと蜘蛛の巣から一歩出て見たら闇の空間の底(天上?)に落下しそうになったのだ。 辛うじて雲居さんが糸を吐いて俺を絡め取ってくれたから助かったものの、あのまま無限に落ち続けたらどうなっていたことやら。 「本当に申し訳ありません……。遼平さんまで巻き込んでしまったのは全て私のせいです。まさか起動された状態でホムンクルス単体が来るとは思いもよらなくて……」 しょんぼりする雲居さん。 「いや、雲居さんだって予想できなかったんだし。そもそもなんでコイツは起動していたんだ?」 「……事故の可能性は、実は限りなく低いんですよね。簡単に起動しないよう二重三重のロックが掛けられていた筈なのです。 それに、起動直後からしばらくは人間と同じく赤ちゃんの姿を採るので、その間に再びロックを掛け直せば休眠させる事は可能なのです」 「俺が食われる前に目にしたコイツはすっかり大人のマッチョ野郎になっていたな」 「起動させると人間を食べなくても時間経過と共にどんどん成長するからです。ただ、顔は運び屋の方と同じでしたので私も油断してしまいました。 私のお店にやって来たのは運び屋さんの意識がホムンクルスのどこかに残っていたからかも知れませんね」 「運び屋の人ってあんな髪も髭も伸び放題の男だったのか……」 ここで不意に雲居さんと俺が乗っかっている絨毯のような蜘蛛の巣が一定の方向へグイグイ押され始めた。 「……うお!? 今度は何だ!?」 「むむ? ホムンクルスの周りで何か起きているようですね」 周囲に拡がる空間がグニュグニュ、グニャァと歪み、押され流れて行きついた先は点々と存在する光の玉の様子から見て巨大なトンネルか「管」のようなカタチの空間になっているようだ。 しかもその「管」のような空間はドクンドクンと脈動していた。 雲居さんが指先から糸を何本も放って周囲に探りを入れている。 「……なるほど、分かりました。ここはホムンクルスの性器のようです。周辺がパイプ状なのはペニスを示しているようですね」 「ホムンクルスのペニス? って、あれ? コイツに会った時股間にそんなもの見当たらなかったけどな」 「さらに成長が進んで完全なる男性体となったんでしょう。充満するエネルギーの感じから勃起していると思われます」 「俺も雲居さんもホムンクルスのチンポに居る、って事?」 「そうなりますね。今の私たちって言わゆる魂、つまり精神体みたいなものですからホムンクルスの欲望に応じて流されやすいのです」 「成長した結果、食欲に次いで性欲にも目覚めたって訳か」 「その通りです。じきに人間たちはホムンクルスの性的魅力に引き寄せられ、自ら進んで『食べられ』に来るでしょう」 「性的な意味でも食事的な意味でも、ってか。ますますヤバイな」 ヤバさが急上昇したと理解はしたが、ここから出る手段が無い。雲居さんでさえ出られる目途が立っていないのだから俺などさらに手も足も出ない。 ホムンクルスのチンポに流されたとは言え状況は何も変わっちゃいない。 ――ビュ! ビュルッ! 「ん゛ひぃ!?」 ホムンクルスのペニスにまで流されてもお先真っ暗な状況なのは変わらない。なのに俺のチンポはギュン! と勃起し「糸」がビュルル! と放たれた。 「うえぇ!? 何でだ!?」 俺と雲居さん以外ホムンクルスの体内になんて誰も居やしないのに。 白銀に光る俺の「糸」が伸びに伸びて漆黒の空間のある一点を貫いた。 そして、時を置かずドクドクと流れ込むエネルギー。俺のチンポが視界に居ない「そいつ」のチンポの形に変わり始める。 「う゛う゛っ! ぐぅ、う、キモち、イ゛イッ!」 伸びた俺の「糸」は確実に外の世界にいる誰かのチンポと繋がっている。 カタチを変えたチンポは元の俺のサイズよりかは小さくなったが一般的なサイズからは巨根と呼べる代物だ。 40cmの陰茎の根元には3重のコックリング、そして亀頭にはボコボコとシリコンボールが埋めこまれている。 ――こ、これは! このチンポの特徴は! この改造エロチンポに俺は見覚えがある。見覚えどころかセクフレの相手として何度もセックスを愉しんだ相手。 「このチンポ、まさか、内田が!?」 「遼平さんの会社の同僚の方ですね。となると、間違いなくホムンクルスの近くに来ているのでしょう」 「ダメだ! 内田までホムンクルスに食われちまうじゃないですか!」 「ええ、確実にホムンクルスの餌食になるでしょうね。最悪です。さすがに私の蜘蛛の巣もこれ以上拡げられません。 足場を失いインナースペースの底に落ちてしまわれたら引き上げる事ができなくなってしまいます。 そうやって見失ったが最後、ホムンクルスにゆっくり溶かされ消化されるのを待つばかりに……」 「ったく、なんでこのタイミングで内田が!」 「遼平さんが会社に来ないから心配して様子を見に来たんじゃないでしょうか? 外の世界はもう朝ではなく昼近いと思いますし」 このホムンクルスは今どこをウロついているんだ? もしかして俺の自宅マンションの中だとか? 雲居さんの言う通り内田が俺の様子を見に来たとしたらその可能性は高い。 「ん゛ん゛っ! っぐぉ!」 チンポとケツに快感が流れ込んだ! この感覚! 内田の奴、よりにもよってホムンクルスとセックスを始めやがった! 貫かれている内田が感じるケツの快感が「糸」を通じて俺にも伝わって来る! 「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーっ! ぐひぃぃぃぃーーーっ! け、ケツがぁ! チンポもぉぉぉおお! んぎもぢぃぃーーーーーっ!」 闇の空間を貫く「糸」が快感の強さと共に輝きを増して闇の壁面ぐいぐいとを押し拡げている。 雲居さんは「糸」と壁面をじっと睨みながらぶつぶつ呟いている。 「――つまり、遼平さんの糸によってホムンクルスのペニスと遼平さんのペニスが一体化し、さらに内田さんのペニスと繋がった事で3人の感覚までもが共有した状態になっている、と、 そのお陰で空間に生じた穴が快感に応じてエネルギーを送る糸で押し拡げられている……。 っ! こ、これなら脱出できる……? 行ける、いけます遼平さん! 脱出できますよ! さすがです遼平さん! あなたの糸のお陰で安全な脱出方法が見つかりました!」 「はひぇぇ? ほ、方法~? で、出られるのかよ、俺たちぃ、ぃぃああああ! それぇ! イイッ! キモヂィィ~!」 立っていられず四つん這いになって押し寄せる快感に耐えていると、雲居さんまで俺のケツにチンポを押し当ててくるではないか! 「んぁぁあ! く、雲居さんっ! ま、待って! 何で雲居さんまで!?」 「インナースペースの出口をもう少し拡げる為、遼平さんにはもっともっと快感を味わって乱れてもらいます。ん゛ふっ! ふぬぅぅんっ!」 「ぐひぃぃぁああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーっ! き、来たぁぁーーーっ! 雲居さんのおちんぽがぁぁぁ! 俺のケツに! お、俺の! 俺の中にぃぃぃーーーーっ!」 俺のチンポはとっくに内田と一体化していてホムンクルスのケツを掘る快感を味わっていて、その快感をホムンクルスも同時に受け止めている。 さらに、俺が味わっているケツの快感が内田やホムンクルスにもフィードバックして二人ともケツで喘いでいる。 喘ぎ悶える姿が俺にまで確実に見えている。 「糸」の力で内田の視点やホムンクルスの視点での光景が俺の頭の中にも流れ込んで来ている。  『スゲェな! コスプレ兄ちゃんのケツマン、マジ名器だぜ! 須崎とサカってる時みたく俺のケツまで掘られてるみたいな感覚がして来やがる!』  『ヌヘェェ! キモヂィィ! キモヂィィ! スゴイッ! ナニコレェッ!? コンナ快感! ボ、ボク、シラナイ! タマラナイィィィッ! スゴスギルゥゥゥーーーーッ!』 内田とホムンクルスがセックスしているのはやはり俺の部屋の中のようだ。 そうだ。思い出した。 雲居さんを心配して慌てていたからドアの鍵を掛けずに出て来ちまったんだ。 ホムンクルスを「コスプレ兄ちゃん」なんて呼んでいるのはコイツのボディペイントのせいだろう。 内田の目には漫画のやアニメに登場するマッチョキャラに見えたようだ。 「はぁ、はぁ、ん゛う゛っ! やはり、剥き出しの精神体どうして繋がっているせい、でしょうか? はぁ、はぁ、いつも以上にダイレクトに、気持ちイイ、ですね! この分だと、私の方が、もう、もうっ! 持たないっ! もう、イク! イクイク! ああああ! イグゥゥーーーーッ!」 雲居さんの激しいピストンが俺のケツマンの奥をこれでもか! と責め立てた! その快感が俺を通じて内田にもホムンクルスにも伝わっていく!  ヒギィィ! んん゛ぅぅぅ! すげぇ! 凄すぎるってぇ! あああ! 俺も! もう無理! 無理無理無理ぃぃーーーっ! 合わせて四人分の快感が俺を絶頂へと押し流す! 頭が焼き切れそうな快感に! 俺は! 俺は! 俺、はぁぁぁあーーーーーっ! 「あ゛あ゛あ゛ン゛イク! イグイグイグ! イッグゥゥゥ----------ッ!」 ドビュ! ドビュルル! ブビュゥゥーーーーーッ! ビュルル! グビュゥゥゥーーーッ! ビビュゥゥーーーッ! 「今です! 遼平さん! 絶対に『糸』を手離さないで下さい!!」 雲居さんが俺の「糸」に蜘蛛の糸を絡め、重ね撚り合わせて補強しながら伸ばしている。 そして、俺のカラダと雲居さんを別の蜘蛛の糸でぐるぐる巻きに結んで離れないようにして『その時』を待った。  『ボクモ! イグ! アアアアアアーーーーッ! イクイクイク! イグゥゥーーーーーーッ!』 ホムンクルスのインナースペースのどこかからか白い濁流が押し寄せ俺たちを押し流す! ドロドロと粘る奔流に流されながらも俺は必死に補強された「糸」を掴んでいた。 「さぁ! 遼平さん! 私たちも出ましょう!」 瞬間、「糸」の先からグイッと引き上げられる感覚がして俺の視界が真っ白になって何も見えなくなった。 ◇ 「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ!」 「はっ! はぁっ! はふ! はぁ、はぁ、ああ~、ぶ、無事に脱出、できましたね!」 肩で息をする俺に雲居さんが微笑んだ。 「出て、こられた?」 「ええ。ちゃんと。カラダも魂も一緒に!」 「ど! どどど、どうなってんの!? コスプレ兄ちゃんのチンポからなんで須崎や慰昆堂のオーナーさんが!?」 内田が驚くのも無理はない。 俺と雲居さんがホムンクルスの射精に伴ってチンポから噴き出し現われたのだから。 振り返ればホムンクルスが気を失ってのびている。あまりの快感に耐え切れなかったようだ。 「内田! お前のお陰で助かった! いや、お前のチンポのお陰で俺たちだけじゃなくて世界が救われた!」 「はぁぁ!?」 「何を言っているのか分からないですよね? でも事実なんです。感激するあまり遼平さんの頭がおかしくなった訳じゃありません」 ふふふ、と笑う雲居さんの手には紅く光る賢者の石(プログラム)が握られていた。 「ちゃんと魂と肉体がそろって出られて本当に良かった。それに、このホムンクルスはもう『人間』を捕食対象とする事は今後ありません。 一つだけとは言え重要なコアを外したのですから、ある程度の年数が過ぎれば人間のように死を迎えるでしょう。せいぜい100年が限度、でしょうか」 「は? ホムンクルス? は? 人間を捕食? は? は?」 チンポを晒したまま内田が雲居さんや横たわるホムンクルスや俺を順に見る。 「もう秘密にしているのも無理だな。雲居さん、内田には正体をバラしてもいい?」 「ええ。今回最大の功労者のお一人でいらっしゃいますからね。私たちと世界を救った内田さんなら知る権利はあるでしょう」 「うん? え? 世界を救う? 俺が?」 キョトンとする内田に俺はゆっくり話し始めた。 ただ、俺のチンポと内田のチンポは「糸」で繋がったままだ。 となると先にすべきことは決まっている。 「ねぇ雲居さん。恋人の目の前で言うのも何だけど、先に内田とセックスしていい?」 「仕方ないですね。遼平さんの性欲の大きさは私も承知していますし、快くOK、と言いたいんですが……」 「ですが?」 「ですが、私もここに居るのですから一緒に参加させて頂きます」 ここでホムンクルスがガバッと起き上がった。 「ヤル! ボクも! 僕もセックス! する! 気持ちいいコト、僕もシたい!」 俺は雲居さんを見守った。 「本当にもう大丈夫ですよ。この子はもう人間を食べません。ヒトの快楽を知った単なる卑猥なホムンクルスです」 見ると股間には立派なチンポが生えていて、ギュイン! と元気に勃起していた。

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