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人間を含むほとんどの生物は、食事などによってソウルを自ら生産し、自己供給することで生命活動を維持している。

一方で、自らソウルを生み出すことを辞めた代わりに、生産者を捕食することによってソウルを得る生命体もいる。そういったものを一般的に"魔物"と呼び、生産者である生物から敵視されている。


だが文字通り生産者を食べてしまうのではなく、一部をおすそ分けしてもらうことによって共存関係を築いた者たちもいる。そういった者たちを魔族と呼ぶことがある。

とりわけ夢魔と呼ばれる種族は、相手に快楽を与える代わりにそのソウルを喰らう。


ヴェロニカも、夢魔と呼ばれるようになって久しい。

定期的な"食事"が彼女にとっての愉しみであった。

「まだよ……もっと出せるでしょう?」


ヴェロニカは自らにひとつの制約を課していた。

それは一人の人間からは一回しかソウルを吸わないこと。

正体を隠蔽するために、捕食後は記憶消去の術をかけるのだが、これは回数を重ねるたびにどんどん効果が薄れてしまう。そのため一人に一度だけという制限をつけることで、安全に食事をすることができるようになる。


「あなたの一週間分、全て頂くわ。」


その食事を最高のものとするために、"蝶"で男たちを観察し、美味しく頂けるタイミングを常に測っていた。

自慰や性行為によって精液が無駄撃ちされてしまったばかりだと、十分な食事にあずかれない。

しばらく射精しておらず、夢精にいたる直前のギリギリのところを頂くのが最もおいしい食事になる。だがそういったケースに巡りあえるのは稀で、だいたい一週間程度のものを頂ければ良い方であった。またある程度若い相手の方がより味も美味しい。

常にアンテナを張って最高のディナーを頂くのが、ヴェロニカにとっての横喜びであった。


ひとたび食事に預かると、全てを吸い尽くすまで離さない。

ソウルがほとんど空になるまで頂いてしまう。

夢魔に捕食されるときは、夢かうつつか判断できなくなるほど意識が彷徨い。この世のものとは思えない夢を見るという。


「ごちそうさまでした。美味しかったわ。」


捕食された翌朝は、その晩の記憶が消えており、かわりにベッドから立ち上がれないほど消耗しているが、不思議と不快感はないという。

かすかに見た蝶の姿が頭をかすめるが、それもすぐに消えてしまう。再び見ることはない。



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