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ブラッド達が乗り込んだ豪華客船タラシオ・コズミーマ、海の宝石とも呼ばれるその豪華クルーズのもう一つの目玉は、特別な会員だけが参加できる闇オークションである。

そこでしか手に入らない非合法なものを求めて、世界の富豪たちが集まってくる。


これから競りにかけられる商品たち。その中には、元冒険者の姿もある。人身売買も行われるのだ。

カスミも、その"商品"の一人であった。



カスミは、囚われのフローリアを捜す旅に出ている間に、いくつかの人身売買組織をさぐることがあった。ただし当時は深入りはせず、そこにフローリアがいないことがわかると見て見ぬ振りをしたのだった。目の前で売られていく可愛そうな子供たちを何人も見過ごしてきた。


その時の罪悪感を拭うべく、現在はそういった組織の撲滅に関するクエストには積極的に参加している。

だがミイラ取りがミイラになるとはよく言ったもので、狙っていた組織の人間に極度睡眠の魔法をかけられ、逆に捕まってしまった。

そうして今は”商品”としてこの船に乗り込んでいる。

生娘のほうが価値があるからということで処女こそ奪われなかったが、その身に受けた辱めは思い出したくもない。



闇オークション会場に連れてこられると、視線が一斉にこちらに集中する。鎖に繋がれ、一糸まとわぬ全裸にされ、まるで奴隷のようだ。

だが誇りを失ったつもりはない。

(下衆な奴らね)

聞こえないような小声で呟く。だが特殊な魔法で厳重に縛られた拘束は解けそうにない。聞きたくもない司会の声が聞こえてきた。



「こちら、九条の島出身のカスミ・アサミヤ。かつては名星会に選ばれたこともあるエリート冒険者で、その能力は折り紙付き。もちろん、処女です。秘書として、メイドとして、あるいは性奴隷として、どうぞご自由にお使いください。

さあこぞって入札をお願いします。」

「300万$$$」「500万$$$」

まずは小出しに様子見の入札が始まる。


「2億$$$」

いきなり桁を飛び越えて大口の入札が入る。相場を大きく上回るその額に、会場はわっと驚きに沸いた。

入札したのは裏の道ではよく知られている売春組織の社長で、世界各地の島に本番行為を伴う非合法な売春宿を建てて運営している男だ。

2億$$$は、個人的に楽しむ用途で買うには大きすぎる額だが、社長はそれをペイできるだけの価値があるとカスミを認めたのだろう。

その男に買われるということは、娼婦として一生を過ごすことになることは間違いない。

「さあ高額の入札がありました。他にはおられませんか?」

「10億」

「じゅうおく……!?

は、はい、それではお客様お買い上げー!」

流石にそれ以上の額は出るとは思わなかったのだろう。一瞬司会者に動揺の色が見えたが、客の気が変わらないうちにその額で落札を確定した。

どよめきと共に現れたのは、みすぼらしい風貌の落札者だった。



別の子供や冒険者達も次々にオークションに掛けられていくなか、カスミは落札者の男に引き取られた。

「まったく、いけませんね。連中は君の"価値"をわかっていない」

その男がパイドパイパーと呼ばれる裏世界の組織の人間であることを、ほとんどの会場の人間も知らない。ただのみすぼらしいやつれた男に見える。

「外側などどうでもいい。君の"中"にいる存在に興味があってね。」

男から放たれたのは衝撃の言葉だった。

(まさかひめかみ様のこと……!)

カスミは氏神の声が聞こえる。だがそれは端に交信できるだけのことだと思っていた。しかしもっと深いところにこの男は気づいているとでも言うのだろうか。

「研究所に戻ったら、じっくりと"対話"させてもらいますよ」


大変な人間に買われてしまった事を直感的に感じ取っていた。

もしかすると、売春婦として売られていたほうがまだマシであったかもしれない。


(助けて……!)

これからこの身に降りかかる運命を考えると、もうその言葉しか出てこない。


だがこの状況で一体誰が助けてくれるというのだろう。

どことも知らない暗い船の底、声も届かない。そんなところに"あの人"が助けに来てくれることなどあるはずがない。

とっさに浮かんだのがその顔で、自分でも驚いてしまった。

まさか、あの人が来ることなんて……ありえるはず…




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Anonymous

許せないハンマーで殺すからな