バスツアー (Pixiv Fanbox)
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「どうしたのですか?シエラ、そんなに嬉しそうな顔をして。」
「ふふーん、聞いてよフレイヤ。温泉ツアー券当たっちゃった!」
「そうですか。良かったですね。」
言葉に反してフレイヤの声のトーンは気乗りしない雰囲気だった。
フレイヤはシエラの親友のドラゴンである。母親のような存在と言ってもいい。
「フレイヤ、温泉あんまり好きじゃないんだっけ?」
「そうですね。どうにもあの硫黄の匂いが鼻に残ります」
「まあ確かに独特な感じはあるけど……、でもそれが温泉の醍醐味だと思うんだけどなぁ。」
「一人で行ってきなさい。私は用事がありますので。」
「まあちょっと寂しいけど、たまにはフレイヤのいないところで羽根を伸ばすのもいいわね。」
「あなたに羽根はありませんよ。」
皮肉を言ったつもりが、ストレートに返されてしまった。
*
フレイヤが同行せずに旅に出るのはいつぶりだろう。
旅と言っても二泊三日の短いもので、指定された港から飛空艇に乗って行く。
"バス"と呼ばれる少人数の乗り合い飛空艇には、同じ温泉ツアーと思われる客が何人も乗っていた。
皆、男ばかりだ。
軽く挨拶を交わすだけのつもりが、やたらと積極的に話しかけてくるので、とりあえず道中退屈はしなかった。
*
「やっぱり…そういうことなのね……。」
鄙びた温泉宿には混浴の露天風呂しかなく、シエラを除けば全員が男だった。
皆一同、ギラギラとした視線をこちらに向けている。それとは別に、ルーンカメラで撮影している者もいる。
バスに乗っている時点で、既に薄々感づいてはいた。これがただのツアーではないことには。
彼らの視線は常にシエラの身体に向けられていて、それが痛いほどに刺さっていた。
温泉に来て、それが確信に変わる。
ただ不思議なことに、彼らが乱暴に襲いかかってくることはなかった。視線こそこちらに向けているものの、指一本触れようとしない。それどころか、怖気づいてシエラから一歩距離を取るようにしている感じもある。
どうやらこれは童貞の男性たちを筆おろしする撮影企画らしい。
どうりで自信なさげなわけだ。
無理矢理乱暴してくるようなら返り討ちにするつもりだった。フレイヤがいなくても、この人数ならなんとかなるかもしれない。
だが彼らのその様子を見て、少し興味がわいてきた。
皆、シエラとやりたい一心でここにいるのだ。ぎちぎちに勃てて今か今かと待っている。そんな彼らを見て、なんだか可愛いと思ってしまった。
*
「ん……そこ…そんな感じ
あっ…待って…」
結局、好奇心のほうが勝ってしまい、一人ずつレクチャーすることになった。
「は…激しくすればいいってもんじゃ……ないんだから……っ!」
巨根を持つ男は、初めての挿入に焦っているのか、力任せにガシガシとピストンしようとする。でもそんなことをされても痛いだけだ。
「焦らないで……そう。ゆっくり馴染ませるような感じで…」
女の一人旅をしていると、自然とこういうスキルは身についていく。
フレイヤはドラゴンだからか、色恋沙汰にはどうにも疎い。爬虫類と言ったら逆鱗に触れてしまうが、人間の生殖行為には何も口出ししてこない。
尤も、シエラ自身も誰かを本気で好きになったことはなく、えっちするのはもっぱら遊びか路銀稼ぎのためであったが。
そうして身についたスキルが、思わぬところで役立ってしまう。
男のピストンが再び激しくなって、最初のときよりもさらに余裕がない様子になった。
「あん……あっ……あっ…!」
しまった、避妊具をつけさせていない。
いつもはこのあたりはしっかり気をつけるのだが、すっかり忘れていた。
そのそもこの風呂場にあるのかもわからないが……
「待って、ナカは…膣内はぁ……っ!」
叫びも虚しく、男はガクガクと腰を震わせたかと思うと、熱い白濁がどくどくと流れ込んできた。その熱さに軽くイってしまう。
男の表情を見ると、ついにやり遂げた!という感じで自信と喜びの気持ちが溢れていた。技術としては及第点だったが、持っているモノは悪くないので、いずれいい男になるかもしれない。
余韻に浸るまもなく、二人目の男がいきなり挿入してこようとする。彼も焦っているのか、挙動が硬く、顔も緊張のあまり引きつっている。
その後ろにも、まだ何人も並んでいる。
これは覚悟を決めるしかないようだ。
「まずは力を抜いて、深呼吸してね。」
緊張で震える二人目の男のを握ってやると、硬くそそり立っていた。
それをシエラ自ら優しく誘導する。
「さあ、いらっしゃい……」
温泉ツアーはまだ始まったばかりだ。