Home Artists Posts Import Register

Content

前回【https://www.patreon.com/posts/art-body-odor-by-85360171

「ブヒィーッ!おはようございます!ダブーブ様!」

「……ん~、もうそんな時間であーるか?」

黒豚戦闘員のモーニングコールで豚獣人の怪人──ダブーブはのそりと身体を捩り目を覚ました。怪人ダブーブとその下僕、黒豚戦闘員達の住まう拠点で毎日行われている光景だ。

ダブーブは風呂にもろくに入らず、身の回りの世話もほとんど黒豚戦闘員に任せているずぼらで怠惰な性格をしている。しかし健康の為早寝早起きをしたいという謎の向上心から、毎朝十時に自分を起こすよう黒豚戦闘員に命令しているのだった。

ダブーブが起き上がり重い瞼を擦る。ふかふかの羽毛布団を退け、豪華な装飾のベッド──二つとも元家具職人の黒豚戦闘員に作らせた物だ──から足を下ろしその縁座り込んだ。

「ふわ~あ……であーる」

「ブヒィーッ!」

ダブーブが欠伸をしながら膝をポンポンと叩くと黒豚戦闘員が駆け寄った。

タイツ越しに筋肉が浮かび上がる、鍛えられた身体をしている黒豚戦闘員は胸に写真をぶら下げており、そこには氷を操る正義のヒーロー──ホワイトタイガーが写っていた。そう、この黒豚戦闘員は元ヒーローホワイトタイガーであり、ブラウンベアと同様判別しづらいという理由で自身の写真を身に付けさせられているのだった。

ヒーローとしての尊厳を踏みにじるような命令に、普通であるなら従う理由はないだろう。しかし、ダブーブの体臭洗脳に敗北したホワイトタイガーは既にダブーブに忠実なマゾ奴隷へと変えられ、ヒーローであった頃の己を侮辱するような命令にも嬉々として従ってしまっているのだった。

「今日も朝のアラーム代わりご苦労なんであーる」

「ブヒィーッ! ダブーブ様のアラームとして務める事ができ光栄であります!」

怪人ダブーブの労いの言葉に、元ヒーローホワイトタイガーは喜びに打ち震える。無防備なダブーブを前にして忠誠のポーズをとり続けるホワイトタイガーの姿に、敵意の眼差しでダブーブを睨め付けていた頃の面影はなかった。

「ブヒヒ♥♥ 我輩の体臭にメロメロですっかりいい子ちゃんになってしまったであーるなぁ♥♥ 褒美として我輩の起きたて朝勃ちちんぽの匂いを嗅がせてやるのであーる♥ 特別にマスクも外させてやるのであーる、感謝するであーる♥♥」

「ブヒィーッ!」

ダブーブの言葉にホワイトタイガーは何の迷いもなく忠誠のポーズをとると、そのまま膝立ちになり豚の主人の股座に顔を近づけた。マスクを外し、朝勃ちでテントを張った黄ばんだブリーフに鼻を埋めると、大きく息を吸いこんだ。

「ブ、ヒィ……♥♥」

ビクビクッ♥♥ と赤いタイツに包まれた射精管理ちんぽが揺れる。

ろくに風呂にも入らない中年豚獣人の体臭を嗅ぐなど、普通であれば拷問に等しい行為だ。しかし、ホワイトタイガーの黒豚戦闘員タイツからはみ出た尻尾はゆらゆらと左右に振れており、それはダブーブの股の臭いを嗅ぐ事を拷問ではなく褒美として認識し、心の底から喜んでいることを表していた。

「ぶひひ!やはりヒーローが我輩の体臭奴隷になってるのを見るのが気持ちが良いであーるな♥ 最初はあんなに敵意を剥き出しにしてきたというのに、今ではこの調子なんであー…るっ!」

「プギィーッ!♥」

ダブーブが足先でホワイトタイガーのちんぽを蹴りあげると、白い被毛に覆われたマズルから甘い悲鳴が上がった。悪臭を嗅がされながら雄の弱点を蹴り上げられたというのに、ホワイトタイガーの赤タイツに覆われた射精管理ちんぽは硬さを保ち続けており、鈴口のあたりに先走りの染みを作り上げていた。

突如自分を襲った痛みにホワイトタイガーは情けなく股間を抑えながら蹲っていると、ダブーブの愉快そうな声が頭上から降りかかる。

「ぶひひ! ほら、蹲ってる暇なんかないのであーる! 朝勃ちした主人のおちんぽ様にご奉仕するのであーる♥」

「ぶ、ブヒィーッ♥ 了解致しました、ダブーブ様ぁ♥」

主人の命令に痛みを我慢しながら、ホワイトタイガーは背筋を伸ばして足をぴっちりと揃え、左手を腰に付け右手を高らかに上げる黒豚戦闘員忠誠のポーズをとった。そして再び四つん這いになると、ダブーブの汚れたブリーフのテント部分にマズルを近づけキスを行う。愛おしそうに眼を細めながらブリーフを口で咥えるとゆっくりとずり下ろし、ダブーブのちんぽを顕にさせた。

ダブーブのソレは長さこそないが野太く、少し皮を被った仮性包茎であった。まともに洗われていない仮性包茎ちんぽにはうっすらとティッシュやチンカスがこびりついており、酷い悪臭を放っている。以前のヒーローの頃のホワイトタイガーならば嫌悪しか示さなかったであろう中年豚獣人の──それも敵である怪人のちんぽ。しかしダブーブのマゾ奴隷へと洗脳されてしまったホワイトタイガーは、愛おしそうにその包茎ちんぽの裏に舌を這わせ始めた。

「あ゛~♥ いいのであーる♥」

「ハッ……♥ ハッ……♥」

ベロベロと涎を垂らしながらダブーブの仮性ちんぽの味を味わう。奉仕され、更に大きく怒張したダブーブのちんぽは皮が捲れると同時に酷い悪臭を放ち、雁首にこびりついたチンカスも顕になる。

「ブヒィー…ッ♥」

ホワイトタイガーは黒豚戦闘員の鳴き声を上げると根元を舐めながら雁首に鼻を押し付け一生懸命その臭いを取り込もうとする。

己を黒豚戦闘員へと堕とした甘美の臭いを直に味わう興奮で、雄の本能を刺激されたホワイトタイガーは情けなく腰を前後にヘコヘコと振り始める。興奮で限界まで大きくなったホワイトタイガーのちんぽは金色のコックリングに締め付けられながら、今にも射精したいと大量の先走りを撒き散らしていた。

「ぶひひ! 一週間以上射精許可をやっていないであーるから、だいぶ出来上がってるようであーるな」

「ブヒィーッ♥」

自身の涎とダブーブの先走りで顔をぐしょぐしょにしながら、舌をちんぽの根元から先端へと這わせ進めていくと、とうとうチンカスまみれの雁首に到達した。ホワイトタイガーは一切戸惑うことなく雁首に舌を這わせていき、こびりついたチンカスとティッシュを舐めとり始めるのだった。

「ぶひひ♥ 我輩のチンカスは美味いであーるか?」

「ブヒィーッ♥ とても美味でございます、ダブーブ様……♥」

体臭洗脳によってすっかりダブーブの体臭の虜となったホワイトタイガーは、フガフガと鼻を鳴らしながら舐め残しのないよう丁寧に丁寧に舌を這わせていく。乾燥してしつこく竿にこびりついたティッシュも、同じ箇所を何回も何回も丁寧に舐めることでしっかりと舐めとっていった。

「お゛おう♥」

雁首周りが綺麗になれば今度は亀頭を少し咥え鈴口を舐め回す。これにはたまらずダブーブもビクッと身体を震わせ甘い声を上げた。

「あ~、いいのであーる♥ そろそろイきそうなんであーる」

ダブーブはペロリと舌舐めずりをして、厭らしく笑う。

「怪人ダブーブ様の遺伝子が入ったありがた~い精子をたっぷり出してやるのであーる♥ 黒豚戦闘員としてそれを味わえることに感謝しながら一滴残さず全部飲み込むんであーるぞ?♥」

「ふ……ッ♥ ブヒィーッ!♥」

ホワイトタイガーは黒豚戦闘員の掛け声で答えると大きく口を開けダブーブの仮性包茎ちんぽを咥えこんだ。

「おおぅっ♥」

快感に一度身体を震わせると、ホワイトタイガーの頭を両手で掴み腰を振り始めた。

「あ~出る出る、出るのであーる♥」

「ングっ!♥ ブヒッ♥ オゴッ!♥♥」

雄の本能に従うままに腰を突き出し、その仮性包茎ちんぽでホワイトタイガーの喉奥を攻めていく。

「イクイク……♥ イクであーるぞ?♥ 我輩のザーメン、全部口の中に出しちゃうであーるぞ?♥♥」

息を荒くしながら、まるで意思を持たないオナホ相手にするかのように乱暴に腰を打ち付けていく。ホワイトタイガーは嗚咽しながらも健気に四つん這い体勢のまま耐える。そして。

「あ~ッ♥♥ イクッ♥♥ イクんであーるっ♥♥ ぶっひいいいいい♥♥♥」

「ッッッ♥♥♥ ゴボッ♥ っ♥ ~~~~ッッ♥♥♥」

ダブーブが強く腰を突き出しホワイトタイガーの頭を引き寄せると、その仮性包茎ちんぽから濃厚な精液を吐き出した。ドクドクと音を出しながら吹き出る精液の量に吐き出してしまいそうになりながらも、ホワイトタイガーはゴクゴクとそれら全てを飲み込んでいく。

「ぶひぃ……ふぅ……♥ あ゛〜♥♥」

気持ちよさそうにカクカクと腰を動かすダブーブ。ダブーブの射精は中々収まらず、ホワイトタイガーの口オナホの中でビクッ♥ ビクッ♥ とちんぽを脈打たせ、その度に断続的に精液を吐き出し続けている。

「んぐッ♥ じゅるッ♥♥ ごくッ♥♥ ッ♥♥」

しばらくすると射精も徐々に収まっていった。射精が完全に収まると、ホワイトタイガーはバキュームフェラの要領で鈴口に残った精液を吸い出した。それを確認したダブーブは両手をホワイトタイガーの頭から離し、身体を支えるようにベッドの上に持っていった。

「ふう~♥ すっきりしたんであーる、うむ、一雫もこぼしてないであーるな」

「ブヒィーッ!♥」

全て飲み込んだことを示すためホワイトタイガーが口を開け舌を出す。ところどころチンカスとザーメンが残っているが、確かに飲み込んでいるのがわかる。

「ぶひひ、苦しゅうないのであーる!」

「ブヒィーッ!」

奉仕が終わり、主人に満足して貰えたのを確認したホワイトタイガーは外していたマスクを被り直した。

「……そうであーるなぁ」

その様子を見ていたダブーブは思いついたかのようにそう言うと、両足を持ち上げ足裏でホワイトタイガーのちんぽを挟んだ。その感覚にホワイトタイガーは「ブヒィンッ♥」と情けない声を出すと腰を引く。

「ぶひひ♥ しっかりと御奉仕できた褒美として我輩がその元ヒーローの射精管理ちんぽで遊んでやるのであーる♥ 光栄に思うがいいのであーる♥」

そういってスリスリと足を動かしホワイトタイガーのちんぽを刺激していく。

「そのままだと少し弄りづらいであーるから、犬のちんちんの芸と同じポーズをするのであーる♥」

「ブヒィーッ♥」

タイツと靴下越しにちんぽを弄られる快感に身体を震わせながらも、主人であるダブーブの命令は絶対厳守。ちんぽがよく見えるように蹲踞の体勢になると、手を胸の前に出し犬のちんちんと同じポーズをとる。

「ブヒッ♥ ブヒィーーッ♥♥」

無防備に腹もちんぽも曝け出しているせいで、腰を引いてダブーブの足責めから逃れる事もできない。ちんぽを踏みつけにされる──それも自分が最も崇拝する主人に踏みつけにされる快感に、ホワイトタイガーの興奮がどんどん高まっていく。

「情けないちんぽなんであーる♥ 我輩の足の裏でビクビクと震えて、射精管理をしていなかったら今にも射精しそうなんであーる♥♥」

この変態虎め。とダブーブが付け加えるとホワイトタイガーが一際大きく痙攣した。

「ぶひっ♥ 空イキしてしまったであーるな? 我輩の言った通りなんであーる♥」

「ハヒっ……ブヒィーッ♥」

「とんだマゾ奴隷なんであーる♥ ご主人様の足裏でシコシコスリスリされるのがそんなにたまらないであーるか?♥♥」

「ブヒィーッ!♥」

顔中を涎まみれにし、舌を出しながらそう叫ぶホワイトタイガーに肯定以外の意思は感じられなかった。この短時間で何も回空イキしたせいか、床とダブーブの靴下を濡らすだけではなく、タイツの腹の部分に先走りだけで大きなシミが出来上がってしまっている。

「ぶひひ♥ ホワイトタイガーよ、射精したいであーるか?」

ダブーブの願ってもない言葉。それにホワイトタイガーは辛抱たまらないと言ったようにダブーブを見上げ媚びた声を上げる。

「ブヒィーッ♥ お願い致しますぅ♥ どうか俺に射精許可をぉ…….♥」

「ぶひひ♥ どうしようかな~……であーる♥」

そう言いながらホワイトタイガーのちんぽを弄ぶダブーブ。ダブーブの両足にスリスリ弄られながら足を開き続けるのは辛いのか、ガクガクとその太股と足先を震わせている。

「はひっ♥♥ イ゛ッ♥♥ ブ、ヒイイイイッッッ♥♥」

「あらら、また空イキしてしまったであーるか♥」

ビクンビクンと白目を剥きかけながらボタボタと舌から涎を垂らすその姿にヒーローとしての威厳はない。力の差では圧倒的にホワイトタイガーが勝っているはずだ。しかし、ダブーブの体臭洗脳に敗北しマゾ奴隷の黒豚戦闘員に変えられたが最後、こうしてダブーブに辱められようと、無抵抗に無様な醜態を晒し続ける他ないのだった。

「ぶひひ♥ 可哀想なのでもっと惨めにおねだりできたら射精許可をやってもいいのであーる♥ 頑張るんであーる♥」

ダブーブの言葉にホワイトタイガーは息を荒らげながら必死に声を上げる。

「ブヒィーッ!♥ どうかお願い致しますッ♥ ダブーブ様の体臭と足コキで焦らされて、俺の元ヒーローの射精管理ちんぽが我慢の限界なんでございますッ♥♥」

最早黒豚戦闘員となったホワイトタイガーに反抗という選択肢はなかった。気まぐれな主人から慈悲を授かる為、全身全霊で媚びを売り降参のポーズを健気にとり続ける。

「ダブーブ様に一生尽くします♥ どんなご命令でも従いますっ♥ だからお願い致します♥ この哀れな黒豚戦闘員ちんぽにどうかご慈悲をぉ♥♥」

「ぶひひ♥ ヒーローも堕ちたものであーるな♥♥ ……いいのであーる♥ 射精許可をやるのであーる」

「ブヒィーッ!♥ ありがたき幸せぇ♥♥ ダブーブ様の奴隷になれて幸福でございますッ♥♥ 黒豚戦闘員になれて幸せでございますぅッ♥♥」

「ぶひひ♥ そうであろうそうであろう?」

既に射精許可を貰えるのがわかっているというのに、情けない醜態を晒しながらダブーブに気に入られようと隷属する喜びをアピールし続ける。ダブーブは満更でもなさそうに笑うと、その肉厚な右手を顔の横へと上げた。

人差し指と親指が触れ、グッ……と力が入るのがわかる。二つの指が交差して弾け、パチンッ、という音がなった。その瞬間。

「ブヒッ♥ ぶっ♥ ブヒイイイィィィィッッッ♥♥♥」

カチリ、とリングが外れる音がして、ホワイトタイガーは身体を仰け反らせその赤タイツに覆われたちんぽから大量の精液を放った。一週間かけて貯蓄された精液は赤タイツの許容量を一瞬で超え、噴水のようにビュッ♥ ビュブッ♥♥ ビュウ゛ウウ~~~ッッ♥♥ と天に向かって噴き出していく。

「ぶひひ♥ あまりの性欲で世界征服に影響を来たさないよう、我輩がたっぷり搾り取ってやるのであーる♥」

「────ッ♥ ッ♥♥ ~~~~~ッッ♥♥♥」

ホワイトタイガーが射精している間もダブーブの足責めは終わらず、スリスリとちんぽの両側、雁首、亀頭を扱きあげる。射精をしながらちんぽを弄られる快感に白目を剥きながら、ホワイトタイガーは正義のヒーロー時代から溜め込んできた精液を放出していった。大股開きになった足は情けなく跳ね、ダブーブが足の先で根元から雁首まで扱きあげる度にドクンッ♥ ドクンッ♥ と大量に貯蓄されていた精液が噴き出す。激しい快感に両足をガクガクと震わせながらも、ヒーローとして鍛えられた身体はダブーブの命令を忠実に守り犬のちんちんのポーズを間抜けに維持し続けていた。そして。

「ぶひひ♥ ようやく終わったであーるか♥」

「は、へ……」

ホワイトタイガーの長い射精が終わった。ダブーブがホワイトタイガーのちんぽから足を離して床につけると精液に濡れた靴下がぺちゃりと湿った音をたてる。ホワイトタイガーは完全に脱力しきってしまっており、息を荒らげながら虚ろな瞳で天井を見つめている。

「立て、黒豚戦闘員」

「ッ♥ ブヒィーッ!」

一週間ぶりの射精直後で疲労し脱力していようと、黒豚戦闘員にとって主人の命令は絶対だ。ホワイトタイガーはダブーブの命令に、フラフラになりながらも素早く立って忠誠のポーズをとった。

「射精して冷静になってしまったであーるから、ヒーローとしての使命を思い出すかと心配したであーるが……」

忠誠のポーズをとったまま反応を待つホワイトタイガーを見て、ダブーブはニヤリと笑う。

「洗脳はしっかりと身体に染み込んでいるようであーるな♥」

萎えていたホワイトタイガーのちんぽは既に怒張しその先端は天を向いていた。雁首のリングは再び締まり、また射精のできない黒豚戦闘員ちんぽに戻ってしまったことを表している。

「では今日も命令を下していくのであーる!他の黒豚戦闘員を呼んでくるのであーる!」

「ブヒィーッ!了解致しました、ダブーブ様!♥」

ダブーブの命令を受けたホワイトタイガーは黒豚戦闘員の掛け声を上げるとそのまま部屋を立ち去るのであった。

*****

「二百人の一般市民と一人のヒーローが行方不明……か」

街角のとある事務所の中。デスクの上に新聞を広げ、そのタイトルを読み上げるのはピンクのワイシャツに赤のネクタイを身に着けた巨漢の猪獣人だった。中指で少しずれた老眼鏡を調整し、新聞を読み進めていく。

「どうにもきな臭いな……」

原因らしい怪人の目撃情報もなく 二百人もの一般市人が行方不明になるだけでも異常な状況だというのに、ヒーローも失踪している。それも、新人ではなく経験豊富な中堅以上のヒーローだ。

「ホワイトタイガー……」

行方不明のヒーローにホワイトタイガーの名前が書かれている。猪獣人はホワイトタイガーが相当な実力者であることを知っていた。その氷を操る異能力は攻撃面でも防御面でも高いパワーを発揮し、ホワイトタイガーの頭脳が合わされば強力な異能力を持つ怪人でも制圧することが可能だ。

(何よりホワイトタイガーの戦い方は良くも悪くも派手だ。もし戦闘があったならその痕跡が残っているはず。不意を突き一撃で勝負を決められてしまえば話は別だが……そんなことができる怪人がいるのだろうか)

警戒心も強いホワイトタイガーの不意を突く──更にそれを一撃で仕留めるとなると至難の業のはずだ。

(これほどまでに静かに、これほどの被害を短期間で出しているということは、余程強力な怪人が野放しになっているか、怪人達が徒党を組んでいる可能性もある。早急に解決せねばならない事態だ)

猪獣人が左手に身に着けていた腕時計のような端末に触れようとすると、突如端末が大きな音を立てて振動し始めた。

「ぬおっ!?」

ビー! ビー! とけたたましく鳴るこの音は付近に怪人が現れたことを知らせるための物。そしてそれはこの猪獣人にとって避難を促す物ではなく、救助を求める信号だった。

「怪人か!」

老眼鏡を外し素早く立ち上がる。その中には大きめのサイズの赤と橙色をベースにしたヒーロースーツがかけられていた。ネクタイを緩め、バッとスーツを脱ぎ捨てる。そう、この猪獣人こそブラウンベアと並ぶヒーロー業界1番の古株。炎を操るヒーロー、レッドボアなのだった。

*****

悲鳴が街の中に響く。その悲鳴の中心には身長が優に五十メートルを超えるであろう巨大なサイ獣人の姿があった。

「ガアアアアアアア!!!!」

その目からは完全に知性が失われており、その大きな腕を振り回し街の建造物を破壊していく。悲鳴や静止の声が飛ぶが、破壊行動は留まる気配を見せない。

「ウガアアアアア!!!!」

「あ、ああ……」

そのサイ獣人の足元付近。建物の破片がぶつかり怪我をしてしまったのか、足を抑えながら座り込んでしまっている猫獣人の姿があった。そして無差別に建物を破壊していた巨大な拳がその猫獣人に迫る。

「ヒッ!」

地面を震わせる重い振動と共に爆音が鳴り響く。死を覚悟し目を瞑った猫獣人であったが、一つ間を置いてからまだ自分が生きているということに気が付いた。

「待たせてしまったな」

猫獣人の上から降りかかる低く落ち着きを感じさせる声。猫獣人が上を向けば、うねる炎に身を包んだ巨体が見えた。赤を基調にしたヒーロースウツに身を包んだ壮年の猪獣人。そう、ファイアヒーローレッドボアが間一髪のところで猫獣人を救い出したのだ。

「その足では動けそうにないな」

燃え盛る炎で巨大なサイ獣人との間に壁を作りながら、レッドボアは猫獣人を見やる。そして。

「ムンッ!!」

レッドボアは前に構えた左手から片手から大きな炎の渦を噴出した。その範囲と威力が凄まじく、その巨体すら覆おうとする炎にサイ獣人──怪人はたまらず尻を付き地面でのたうち回る。

「グガアアアアアアアア!!!」

「1度ここを離れよう。ワシに捕まるんだ」

身にまとった炎を消し、手を差し伸ばしたレッドボアの手をとると猫獣人の身体がグイッと持ち上げられる。

「わっ!?」

「しっかり捕まってるんだぞ」

男が男にお姫様抱っこをされることに少し赤面した猫獣人であったが、レッドボアの巨体に腕を回ししっかりと捕まる。それを見たレッドボアはよし、と足に力を込めると大きく跳躍した。

「ひいいいい!?」

その跳躍の高度とスピードは常人ではなし得ない物であった。例えるならば、力を何倍にも増幅させることができる異能力を持つ、最強に名を連ねるブラウンベアでなければできないほどの跳躍。レッドボアは両足の裏から炎を噴射しその推進力だけでそれを成し遂げたのだ。

「……ッッ!!」

着地は跳躍の逆。地面に向かって炎を噴出し、猫獣人に負担がかからないよう減速しゆっくりと着地する。

「た、助かりました……」

「うむ、ヒーローとして当然のことだ。足以外に怪我はないな」

猫獣人を降ろし、無事を確認すると百メートル以上離れたところにいる怪人に視線を移す。

「ここで待っていてくれ、直ぐに終わらせる」

数歩歩き猫獣人から距離を置く。そこから先の出来事は言葉の通り一瞬だった。ドンッ!と大きな爆音とともにレッドボアの姿が見えなくなる。猫獣人が瞬きをする間に、レッドボアは怪人の懐に潜り込んでいた。

地面には急ブレーキの痕のような焦げ跡が残っており、ワープなどの異能力を使ったのではなく、炎の推進力を使ってとてつもない速さで距離を詰めた事がわかった。

「ム゛ウン!!!!」

怪人に向かって渾身の右ストレートを放つ。後方に噴出された炎でブーストされた拳が怪人の横っ腹に炸裂した。

「アガアアアアアアアア!!!」

轟音が鳴り響く。炎が燃え盛り、猫獣人の方からは何も見えなくなる。しかしその炎も一瞬で掻き消えた。中心に立っていたのはレッドボア、そして巨大化が解除され気絶しているサイ獣人であった。

「す、凄い……」

猫獣人が感嘆の声を上げた。

レッドボアはサイ獣人を担ぎあげると被害を確認するために辺りを見回す。どうやら巨大化して短時間の出来事だったらしく、建物はいくつか破壊されてしまっているがその数は少なかった。

(あとのことは救助隊に任せこのサイ獣人を送り届けよう―——)

そこまで考えたところでレッドボアが異変に気づく。遠くではあるが見える位置にいた猫獣人の姿がいなくなっている。

(あの怪我ではこんな簡単に移動はできないはず──もしや!)

担ぎあげたサイ獣人を壁にもたれかからせると、炎によるブーストで獅子獣人がいた場所まで一瞬で跳躍した。

「むう!?」

レッドボアは視界の端に路地裏へ隠れていく黒い人影を捉えた。走ってそれを追いかけ建物の角を曲がる。すると。

「な……ッ!?」

そこには全身を黒いタイツに包み、白いグローブ、ベルト、靴下を身につけ同じく白い豚のマスクを被った者達が何人も待ち構えていた。今のレッドボアは知らないが、その場にいる全員がダブーブの忠実な下僕、黒豚戦闘員であった。

黒豚戦闘員の股間に反り勃つ赤いタイツに覆われたちんぽがビクッ♥ ビクッ♥ と脈打つ。何十年も生きてきた中で初めて見るその変態的な、気持ちの悪い姿にレッドボアは驚き一瞬だけ硬直してしまう。

「「「「「ブヒィーッ!」」」」」

隙あり、と言わんばかりに黒豚戦闘員達がレッドボアに飛びかかる。

「ムンッ!!」

しかし硬直もほんの一瞬だけ。我に返ったレッドボアが全身から炎を噴き出し、飛びかかってきた黒豚戦闘員達を簡単に跳ね除けた。

「「「「「プギィーッ!!!」」」」」

建物の壁や床に黒豚戦闘員達が叩きつけられる。レッドボアはそれらには目もくれずに正面を見据える。その視線の先には猫獣人を担ぎレッドボアとは反対方向に駆けていく黒豚戦闘員がいた。

「失踪事件の犯人はこいつらか!?」

猫獣人を助けようと駆け出そうとする──が、すぐにレッドボアは自分の足が動かないことに気付いた。見れば、レッドボアの足は地面ごと凍らされてしまっていた。

(青年に気を取られた隙に──! しかし、これは──!)

ホワイトタイガーの顔がレッドボアの脳を過ぎるがそれはすぐに振り払われた。素早く周囲を確認するが、レッドボアの知っている白虎獣人の姿はなく、いるのは黒豚戦闘員だけだった。

「ブヒィーッ!」

「!!」

動揺するレッドボアの前に殴りかかろうとまた別の黒豚戦闘員が現れる。しかし鍛えられたレッドボアの動体視力からすればその動きはスローモーションだ。レッドボアに対応できないスピードではない。

(──この際氷の異能力者は問題ない!)

レッドボアは身体を覆う炎の出力を上げた。炎はレッドボアに殴りかかる黒豚戦闘員を遮る壁となり、足を地面に繋げ拘束する氷を急速に溶かし始める。

(このまま氷を溶かし切った後、目の前の黒タイツをいなし即座に猫獣人の青年を救出する……! 他の黒タイツ共と正体不明の氷の異能力者はその後だ!)

レッドボアが黒豚戦闘員の拳と身体の間に腕を出し防御の体勢をとる。しかし。

「うぐォオッッ!?」

辺りに響いたのは歴戦の猪ヒーロー、レッドボアの呻き声だった。

「ゲホッ!! こ、のパワー、スピードは……!?」

レッドボアが確かに動きは見切っていたはずの黒豚戦闘員の拳は、力が突然何倍にも膨れ上がったかのように加速するとレッドボアの腕をすり抜けた。不意を突かれたレッドボアは、そのまま丸く肥え膨らんだ腹に初速では想像もできないような強烈な一撃を貰ってしまったのだ。

「もがっ!?」

予想外の不意打ちを喰らい、怯んだレッドボアは後ろから羽交い締めにされ、鼻に何かを押し当てられる。

「ぐおぉッ!?」

そして、鼻に押し当てられた物が放つそのあまりの悪臭に力が抜ける。少し湿り気を帯びた布のような物から逃れようと身体を動かすが、腹部に受けた痛みと駆けつけてきたほかの黒豚戦闘員達に取り押さえられ、上手く動くことが出来ない。

(し、ま……ッ.)

そしてそのまま、レッドボアは意識を失ってしまったのだった。

*****

レッドボアは夢を見ていた。それも昔の夢だ。

まだ自分が若い頃から、ヒーローを志願し共に戦った者の夢。

ヒーローを志願し共に戦った者──ブラウンベアは、ヒーローという存在が世界に認識され始めた頃からの古い友人であった。同じ正義感を持つヒーローとしても友人としても息が合い、何度も共に怪人を倒してきていた。

同期のヒーロー達は沢山いたが、それも年月の移り変わりで減っていった。怪人との戦いによる負傷でこの世を去った者、自らの命を犠牲にすることで多くの命を救い死んでいった者。心が打ちのめされ、ヒーローを辞めていった者と理由は様々であった。

いつしか同期のヒーローはレッドボアとブラウンベアだけになり、二人は最強のヒーローと呼ばれるようになった。二人が揃えば叶う相手はいないとも。互いを親友と呼べるようになり、命を落とす時までその関係は終わらないと思っていた。今までもこれからも、助け合い、補い合い、正義のヒーローとして人々を守っていくのだと……。

「はっ!?」

レッドボアの意識が覚醒し目を覚ました。何故今ブラウンベアの夢を──と思考を働かせようとしたところでレッドボアは己の身体の異常に気が付いた。

「こ、これは……」

手は後ろに回され手錠で拘束され、胡坐を掻くように座らされている。それだけではない、自身の身体を包んでいるはずの赤と橙色をベースにしたヒーロースウツ。身に着けているは見慣れたそれではなく、黒い全身タイツに白いグローブ、そして白ベルトと白靴下だった。

「目が覚めたであーるか?レッドボア」

己の状況に困惑するレッドボアの正面から低い濁声が聞こえた。前を向けば椅子に腰掛けた醜い豚獣人が厭らしい笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。

「我輩の名はダブーブであーる。以後お見知りおきを」

その左右には先程猫獣人を攫い、レッドボアを襲った黒豚戦闘員が腕を後ろに回し姿勢を正し待機している。

「……お前達が失踪事件の犯人か?」

レッドボアはダブーブと名乗る怪人を睨めつけるが意にも返していないようにワシの質問に返答する。

「ぶひひ! 察しがいいのであーるな。その通り、全部が全部、この怪人ダブーブ様とその下僕、黒豚戦闘員がやったことなんであーる!」

「その横にいる奴らがお前の手下と言うわけか……随分趣味の悪い格好だな」

「ぶひひ! 無様であろう?我輩の下僕に相応しい恰好なんであーる!」

「……貴様の目的はなんだ?」

「我輩の目的なんて決まってるのであーる! 全人類を我輩の下僕にし、世界を征服することなんであーる!」

「……」

ダブーブから放たれる声や言葉に嫌悪しか感じないが、それと同時にレッドボアは違和感を覚えていた。ダブーブの左右に待機している黒豚戦闘員の体型に見覚えがあるのだ。

そしてレッドボアの脳裏に気絶させられた直前の記憶が蘇る。正体不明の氷の異能力者。そしてあの驚異的なパワーとスピードを持った黒豚戦闘員。

「ぶひひ! 気づいたであーるか? 全人類を下僕にするんであーるから当然、攫ってきた連中共は全員我輩の下僕になってもらったのであーる! 勿論……」

バシィン!と両手で自分の左右に待機している黒豚戦闘員の尻を叩くと「ブヒィッ♥」「プギッ!?♥」と媚声が上がる。

「ホワイトタイガーも、そして最強ヒーローブラウンベアもみーんな我輩に忠誠を誓い、黒豚戦闘員として世界征服に貢献してもらってるのであーる♥」

「な……っ!」

ダブーブの左隣に立つ鍛えられた身体を持つ黒豚戦闘員の首には、ホワイトタイガーが写っている写真がかけられてた。

そしてダブーブの右隣立つ肉付いてしまっているが、鍛えられているのがわかる黒豚戦闘員。その首にはブラウンベアの写真がぶら下がっていた。

確かに体格や露出するマズルに面影はあったが、レッドボアの記憶の中の二人はこんな格好をする変態ではなかった。なにより、悪の手先になるような邪悪な心を持った者達ではなかった。

「貴様……この者達に何をした!!」

「ん? 何と聞かれても……。我輩の体臭を嗅がせていたら自らの意思で我輩の下僕になることを選択しただけのことであーる♥」

「馬鹿な……!」

レッドボアは目を見開き、信じられないという様子で二人の黒豚戦闘員を見つめる。

偽物、洗脳、裏切り。様々な憶測がレッドボアの中で飛び交うが、気絶する直前に受けた攻撃は、ブラウンベアとホワイトタイガーが行ったと言われても信じられる強力な物だった。

「さて、レッドボアよ。貴様自身の格好を見てもらえばわかると思うであーるが、ブラウンベアと肩を並べる最強ヒーローの貴様にも我輩の下僕、黒豚戦闘員になってもらうんであーる♥」

ダブーブがニヤリ、と邪悪な笑みを浮かべた。

続く

Comments

No comments found for this post.