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建物が破壊され、崩落していく。街の人々が逃げ惑い、悲鳴が響き渡る。その悲鳴の中心には50mを超える巨大なサイ獣人の姿があった。

「ガアアアアアアア!!」

感情に任せた異能力の乱用による代償か、その目からは完全に知性が失われており、その大きな腕を振り回し街の建造物を破壊していく。どれだけの悲鳴や静止の声が飛び交おうと、破壊行動は留まる気配を見せない。

「ウガアアアアア!」

その近くに、飛び散った建物の瓦礫に当たってしまったのか血だらけの足を抑えて蹲っている獅子獣人がいた。そして、無差別に建物を破壊していた拳がその獅子獣人に迫る。

「ヒッ!」

爆音が鳴り響く。死を覚悟し目を瞑った獅子獣人であったが、まだ自分が生きているということに気がつく。

「待たせてしまったな」

腹の底から響くような低い声。前を向くと、燃え盛る炎を纏った巨体が見えた。そう、フレイムヒーロー、レッドボアが間一髪のところで助けに来たのだ。

「その足では動けそうにないな」

両手でサイ獣人の巨大な拳を支えながらレッドボアは獅子獣人を見やる。そして。

「ムンッ!!」

巨大な拳を支える両手から大きな炎の渦を噴出した。拳が炎で覆われたサイ獣人ーーー怪人はたまらず拳を引っ込めのたうち回る。

「グガアアア!!」

「1度ここを離れよう。ワシに捕まるんだ」

身にまとった炎が1度消え、手を差し伸ばしたレッドボアの手をとるとグイッと持ち上げられる。

「わっ!?」

「しっかり捕まってるんだぞ」

男が男にお姫様抱っこをされることに少し赤面した獅子獣人であったが、レッドボアの巨体に腕を回ししっかりと捕まる。それを見たレッドボアはよし、と足に力を込めると大きく跳躍した。

「ひいいいい!?」

その高さとスピードは常人では成し得ない物であった。それは力を何倍にも増幅させることができる異能力を持つブラウンベアでなければできないほどの跳躍。レッドボアは筋力と炎を噴射する推進力だけでそれを成し遂げたのだ。着地はその逆。地面に向かって炎を噴出し、その力で減速しゆっくりと着地する。

「た、助かりました……」

「うむ、ヒーローとして当然のことだ。足以外に怪我はないな」

獅子獣人を降ろし、無事を確認すると100m以上離れたところにいる怪人に視線を移す。

「ここで待っていてくれ、直ぐに終わらせる」

数歩歩き獅子獣人から距離を置くと、両拳を合わせたレッドボアから炎が噴き上がった。

そこから先の出来事は言葉の通り一瞬であった。ドンッ!と大きな爆音とともにレッドボアの姿が見えなくなる。気がつけば既に怪人の懐に潜り込んでいる。決してワープなどの異能力ではなく、とてつもない速さで距離を詰めただけの話である。そして。

「ムウウン!!!!」

怪人に向かって渾身の右ストレートを放つ。後方に噴出された炎でブーストされた拳が怪人の横っ腹に炸裂する。

「アガアアアアアアアア!!!」

轟音が鳴り響く。炎が燃え盛り、獅子獣人の方からは何も見えなくなる。しかしその炎も一瞬で掻き消えた。中心に経っていたのはレッドボア、そして巨大化が解除され気絶しているサイ獣人であった。

「……凄い」

獅子獣人が呟く。

こうして今日もヒーローによって街の平和は保たのだ。

*****

市民の安全を確認し、サイ獣人の処分を担当のヒーローに任せると再びワシはパトロールへと戻った。そして、バーナードの言っていた言葉を思い出す。

『はいぐれ洗脳?』

『そうだ。近頃ハイグレ魔王を名乗るヴィランが現れたのだが、そのふざけた名前に反して所持する異能力が凶悪でな』

ヒーロー本部の司令室。同期でありこの組織のトップである元ヒーローブラックドックであるバーナード司令が溜息を吐いてそう呟いた。

『目撃情報は少ないのだが、手に持つ光線銃に撃たれるとハイレグ水着姿になり、ハイグレ魔王に忠実な下僕になってしまうという話だ。ここ最近の行方不明者もハイグレ魔王によるものだろう』

『またなんとも奇怪な……』

『ああ……。どうやらその洗脳能力で異能力持ちのヴィランも従えているらしい。本部に所属するヒーロー達が分担し負担の少ないよう全エリアを監視できるよう手配しているが……』

バーナードはそこで言葉を止め伏せた目を上げる。

『お前にはもっと広い範囲でエリアの監視をしてほしい。洗脳能力の出力がどの程度の物かわからない今、ヴィランの早期発見、拘束が重要になるからな』

『うむ、異論はない。……それではワシはどこにいけばいいのだ?』

……そうしてバーナードに指示されたエリアをパトロールしていたワシは、たまたま近くでサイ獣人の巨大化報告を受けていち早く駆け付けられたという訳だ。犠牲者がいないのは幸いだったが、未だハイグレ魔王とやらは見つかっていない。

「しかし、少しだが消耗してしまったな。なんだあの巨体は……ブラウンベア達の一撃に勝るとも劣らない力……」

そんな独り言を呟きながら通りを歩いていると、丁度路地裏から出てきた図体のでかい黒熊獣人と鉢合わせた。無精髭と左目に傷を携えており、鋭い三白眼は見るものに威圧感を与えるが……加えてこの男は、それらの特徴が霞んでしまう程に異様で変態的な身なりをしていた。

黄緑の蛍光色をしたTバック、そして黒いブーツとグローブを身に着けたのみというほぼ全裸に近い姿の変態的な格好。更にそのTバックは中身に対して明らかに小さなサイズで、男の逸物や玉袋が見苦しくはみ出てしまっている。真正の変態であった。

「あんた、ヒーローか!」

「くッ!」

突如、眼前に迫る黒熊の拳を紙一重で避ける。暴風が巻き起こり、身体が浮き上がりそうになるのを炎の逆噴射で相殺した。

「……ッ!」

塵が舞い起こり近くの木々が葉を飛ばし悲鳴を上げる。ワシすらも吹き飛ばそうとする風……異能力か!

問答無用の攻撃に黒熊をヴィランとみなし、こちらも即座に反撃に移って回し蹴りを浴びせようとするが、再び暴風が巻き起こり距離を取られてしまう。

「何者だ貴様! それにだな……その恰好は何だ!」

「俺様はTバック男爵。ハイグレ魔王様の忠実な下僕にして組織の幹部たる男よ!」

……なるほど、ハイグレ魔王の手下。

好き好んでその装いをしているのではなく、洗脳されたが故か。

それなら話は早いとすかさず端末を使い、周辺の市民への避難勧告と近くのヒーローの招集を要請する。

「丁度良い、貴様にハイグレ魔王について知っていることを全て話してもらおう。異能力、姿、今いる場所まで全てな」

「げっへっへ、誰が話すかよ! ハイグレ獣人共、整列!」

「「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」」」

Tバック男爵がそう声を上げると、路地裏から何人もの人影が現れる。

「むう……!」

出てきたのは全てTバック男爵と同じ黄緑色をした女性物のハイレグ水着を着て目元まで覆う黒いマスクを被った男達。マスクの額には白でアルファベットのTのマーク、そして目元には中心が吊り上がり両端が垂れるニヤケた目のマークが描かれていた。

彼らは皆Tバック男爵の後ろで横に整列すると、ガニ股になり腕を股のラインに添えてV字に引き上げる、所謂コマネチのようなポーズを連続で行った。

尊厳など存在しないなんともいたましい姿。洗脳させられ無理やりこのような屈辱を与えさせるなど、決して許してはならない。

「……! すぐ救い出してやるからな」

「げっへっへ! そこでハイグレしてろよお……オラッ!」

Tバック男爵が拳を突き出すと突風が巻き起こる。足元を掬うように放たれるせいで踏ん張りづらいのが厄介だ。うまく交わすか相殺するようにしなければ。

炎でブーストし、狙いを付け辛いように左右に跳びながらTバック男爵に接近する。しかし、暴風と共に空へと浮き上がり距離をとられてしまう。

「「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」」」

ハイグレ獣人と呼ばれた者たちは一生懸命ハイグレポーズとやらをとり続けている。

……彼らは攻撃に参加しないのか? 光線銃とやらで洗脳するようだが、Tバック男爵もハイグレ獣人達もそれらしきものは持っていないし、隠せるような所もない。まだ未知の部分が多すぎるな……。

「そらそら!」

空中からワシに目掛けて竜巻が起こる。洗脳された者達が巻き込まれないように避けた後、炎を飛ばして反撃するも避けられてしまう。

「うおお、危ねえ危ねえ」

「ふむ……」

1度目の攻撃を仕掛けた時から思っていたのだが、どうにもやり辛い。

サイ獣人との戦闘での消耗、そして異能力の相性の悪さもあるのだろうが、原因はそれだけではないようだ。

どうにも手応えが感じられない。相手にまともに戦おうとする意思が感じられないのだ。

まるで時間稼ぎをしているかのような……。

「おお、来たか」

「「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」」」

ハイグレの掛け声をする方を見ると、先程の者達と違い色とりどりのハイレグを着た獣人達が道を塞ぐように整列していた。額にはTではなくHと描かれているが、彼らもニヤケ顔になるようにデザインされた黒いマスクを被っていた。

「むう、囲まれたか……!」

ワシを挟んだその反対にはTバック男爵が引き連れてきた黄緑色のハイレグを着た獣人達が立ち塞がっている。

「お前ら準備はできたな? 許可をやる、盛大にぶっぱなしてやれ♡」

ハイグレ獣人達は一心不乱にハイグレポーズを取り続けている。何やら嫌な予感がする。上空に退避しようとしたその時。

「「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレ洗脳光線発射!!」」」

ハイグレ獣人達の股間がたちまち光り出し、そこから桃色の光線が発射された。

「うぐッ!?」

瞬間、暴風が上空から叩きつけられ、動きが止まってしまう。一瞬の怯みであったが、前後から迫る光線を避けなければいけないこの状況下で、その一瞬は致命的だった。

光線銃に撃たれるとハイレグ姿に変えられ洗脳されてしまう。彼らは銃を使ってはいないが、十中八九同じ効力を持つ光線だろう。避けられない、ならば……!

異能力の出力を最大にする。ワシの身体が燃え上がり、その火炎を全方位に噴出させる!

「ッ! ぐおおおおおおおおッッ!?」

光線がワシに直撃し、脳を揺さぶるような衝撃に襲われる。視界が明滅し、意識が飛びそうになる。

『ハイグレになりなさい』

謎の声がワシに向かって語り掛ける。ハイレグ水着を着て、それ以外は何も身に着けていないワシの姿が頭に浮かび上がる。そのままワシはガニ股になって股に手を添え「ハイグレ!」と高らかに掛け声を上げながらハイグレポーズをとる。

それが素晴らしいことなのだと。そうしてハイグレ魔王に忠誠を誓わねばならないのだと言葉が語り掛けてくる。

これがハイグレ洗脳、しかしワシは……!

「ぬ、うお゛おおおおッッ! 喝ッッッッ!!!」

「はあ!?」

Tバック男爵が素っ頓狂な声を上げる。炎の出力を限界まで上げると、ワシに直撃していた光線が消し飛んだ。ハイグレ獣人達からは既に光線は出ていない。ワシの姿は……ハイレグ水着など着ていない、以前と同じヒーロー姿のままだった。

「フーッ! フーッ! ヒーローを舐めるなよ、Tバック男爵……!」

「……げへへ、これほどの洗脳光線を真正面から耐えるなんて聞いてないぜ。ハイグレ魔王様に報告しなければ。おい! 一度で駄目なら二度だ! てめえら、もう一度……!」

空中で静止するTバック男爵がそこまで言って言葉を止める。その視線はワシを取り囲むハイグレ獣人達の遥か後方に向けられていたが、苦虫を潰したような表情から、何を見たのかは大方予想がついた。

招集に応えて他のヒーロー達が来てくれたか……!

「チッ、増援だ。流石にヒーロー二人相手には分が悪いからな。てめえら、撤収するぞ!」

「「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」」」

ハイグレ獣人達がハイグレポーズを取ると、背中を向けて逃げ出したTバック男爵の後ろをついて走っていく。

「待てッ! ……ぐあっ!?」

Tバック男爵達を追いかけようとするが、激しい頭痛に襲われ膝をついてしまう。

当てるだけで人を洗脳する光線。やはりノーダメージとはいかないか……!

「レッドボアさん、大丈夫ですか!?」

駆けつけたヒーローから声をかけられるが、頭痛が酷くまともに動くこともできない。結局ワシはTバック男爵を取り逃すことになってしまった。

*****

洗脳光線を浴びた影響か、その日は思考が鈍り、身体が鉛のように重かった。

パトロールを中断し、脳の検査を受けたが異常はなし。頭痛は酷かったが、ハイレグ水着を見てもハイグレ魔王に従おうとは思わず、ハイグレポーズなどという間抜けな事をしたいとも思わなかった。

バーナードにこの事を報告し、やがてパトロールを終えたワシは帰路に就いていた。

帰宅したワシは着ていた物を脱ぎ、さっとシャワーを浴びて寝室へと戻る。頭痛と倦怠感以外、特に異常はない。そう思ってそしてベッドに横になろうとした矢先、とある物が視界に入った。

「こ、これは……」

それは黄緑の蛍光色をしたハイレグだった。まるでワシの物のようにベッドの乱雑に置かれたそれは明らかにサイズが小さく、ワシが着ればこの太った身体に食いこんで情けない姿を晒すことになるだろう。

「……いや、何を考えているんだワシは」

着ればなどという想像は不毛だ。ワシは洗脳されていないし、こんな女性物の下着を履くような変態ではないのだから。

眉間を指で抑えながらテーブルの上にハイレグを置くと、そのまま身体を休めるためにベッドに横たわる。

何故こんなものが置かれているのかわからないが、秘匿されているワシの家にハイグレ洗脳に関わりのある代物が置かれているのは問題だ。無差別的に置かれているのか、それともワシを狙っての行いか。

もし後者なら、内部に裏切り者……もしくは洗脳され敵の手に堕ちた者がいるということになる。明日にでもこの事を報告しなければなるまい。

*****

「む……う」

朝起きると、寝起き特有の気だるさこそある物の、昨晩のような身体の重さや思考の鈍りはすっかり治っていた。

「ワシもまだまだ捨てたものではないな」

日々鍛錬を続けているからだろう。ヒーローたるもの、常に十全の力を扱えるように体調を管理しなければならない。

布団を退けてベッドに腰掛けると、シャツとボクサーパンツを脱いで全裸になる。そしてテーブルに置かれた黄緑色のハイレグを手に取ると、それに両足を通して引き上げる。

「ふう……」

靴下を履くと洗面所に行き顔を洗って歯を磨く。

いつも通りの朝。それが終わればワイシャツに着替えるために姿見の前に立つ。そこには黄緑の蛍光色のハイレグに身を包むワシの姿があった。

サイズのキツいハイレグは寄る年波のせいで余分な贅肉が付いてしまったワシの身体に食い込み、胸の膨らみと腹の丸みを強調している。股間には見苦しいもっこりを作ってしまい、面積が足りていないせいで陰毛まではみ出てしまっていたが、ワシは男なのだから仕方ない。

「よし、と」

ハイレグ水着の中に逸物が綺麗に収まるように直すとワイシャツに手をかける。女性用の下着と黒ビジネスソックスを履く変態猪親父になり下がったとしても、エチケットはしっかりせねばならんからな。そうしてハイレグの上からワイシャツ、スラックスを身に着けていくと、ワシはヒーロー本部へと向かうのだった。

*****

「レッドボアか、お疲れ様」

「ホワイトタイガーか。うむ、お疲れさん」

任務を終えヒーロー本部の廊下を歩いていると、ホワイトタイガーが話しかけてきた。氷を操る白虎のヒーローホワイトタイガー。ワシよりも歴は短いが、こやつもベテランのヒーローだ。

「あんた、大丈夫だったのか? 洗脳光線をまともに受けたって聞いたが」

「うむ。どうやら問題ないようだ。こうして問題なくヒーロー活動も行えているからな」

共に廊下を歩きながらそこまで話し、はて、と頭の中で首をかしげる。何か忘れているような気がするが、それが思い出せない。

「あんたの事だから心配はしていなかったが……普通の獣人が簡単に洗脳されるような代物を跳ね除けるたぁ、流石だな」

「それ程でもない。お前も異能力を盾にすれば攻撃を耐えることができるだろう。心配なのはブラウンベアやシルバーベアなど異能力での防御が行えない奴らだな」

「あの人達はあの人達で綺麗に攻撃を躱していきそうな気がするが……」

そこでホワイトタイガーが何か言いあぐねたことに気付く。

「どうかしたのか?」

「いや、なんだ。不謹慎だがあんたみたいなベテランがハイレグ水着とやらを着させられているところを見られなかったのは少しばかり残念だなと思ってな。あんまり隙がないと新人もビビっちまうだろうし、そういう人に言えない弱みみたいなところを持っても……イタッ」

「お前な……」

ごつ、とホワイトタイガーの頭を小突いてから溜息を吐く。こいつは無口で(ワシも人のことは言えんが)真面目な奴だがこういうところが玉に瑕だ。もう少し歳上を敬うことを覚えてもいいと思うんだが……。

「まあ、お互い洗脳されないよう気をつけるとしようぜ」

「うむ」

そう言ってホワイトタイガーと通路で別れ、お互い別々の帰路に就く。

……身体が熱くてたまらない。ワシはのぼせた頭で変身を解くと、ワイシャツの下でハイレグに締め付けられる腹を撫でて熱のこもった息を吐いた。

*****

家に帰るとすぐさまネクタイを解き、ワイシャツとスラックスを脱ぎ捨てた。そしてハイレグと黒靴下姿で鏡の前に仁王立ちになる。

「ふう……♡」

任務中、妙にムラついて仕方がなかった。ヒーロースーツの下にこんな変態的な恰好をしているのだから、当然ではあったが……。すっかり浮き上がってしまった乳首を指の腹で擦ると、いい歳をした親父の情けない声が口から漏れ出る。左手で乳首、右手を股間部分に持っていくとすっかり硬くなった逸物に手が触れる。

「んお゛ぉ……♡」

先走りですっかりネバついてしまった先端には、わかりやすく染みができてしまっていた。変態的な姿で竿と乳首を撫でると気持ちいい。しかし、ワシはもっと気持ちよくなる方法を知っていた。

「う、む♡ これをせねばヒーロー活動もまともに行えんからな♡」

自分に言い訳するようにそう口に出すとガニ股になる。鼠径部に両腕を添えて行うのは、ハイグレ魔王に忠誠を誓う、ハイグレポーズ。

「お゛ほっ♡」

この姿勢をとるだけで、期待で逸物が怒張しハイレグを先走りで濡らしてしまう。

さあ、あとは腕を引き上げ、ハイグレと掛け声を上げるだけで、ワシは……。

「ワシは……どう、なるんだ?」

ふと我に返って異常事態に気付く。

自分の行おうとしていたことに寒気が走る。

ヒーローとしての意地か、ワシはようやく正気を取り戻したのだ。

ハイグレポーズ? 何を、いや、そんな間抜けな真似をしないのは当然だ。何故ワシはこんな無様な姿を晒しているのだ!

「ぐ、う……!」

ズキン、と激しい頭痛に襲われる。前かがみに倒れそうになり、膝を着けて右手で身体を支える。

全て……全て思い出した。ワシは洗脳光線を受けて無事だと思い込んでいた。しかし、あの時ヒーロースウツの内側にはこのハイレグ水着が生成されていたのだ。昨晩家に着きワイシャツを脱いだ段階で、ワシはハイレグ水着を既に着込んでいた。それをまるで霧がかかったかのような鈍い思考でベッドの上へと放り投げ、そのまま忘れてしまっていたのだ。

そしてあろうことか、こんな変態ヴィランが手下に着せているようなものをヒーロースウツの下に着ながら、ワシは違和感を覚えることもなく任務を行っていたのだ……!

「フーッ! フ……ッ、な、なんたる不覚だ……ッ!」

脂汗が垂れる。自身の意思に反して勃起を続ける逸物の感触が気持ち悪い。しかし、ハイレグを着ていると、全身を淡い快感に包まれる。

「早く、早くこのことを皆に報告せねば」

荒くなった息を落ち着かせようとすると、頭痛が少しずつ治まっていく。

……そういえば、今朝もそうだった。昨日と違って頭痛のない晴れやかな朝であった。しかし、本当にそれが良い事なのだろうか? この頭痛はワシが洗脳に抵抗している証ではないのか?

頭痛が治まるにつれ、全身を包む淡い快感が強くなっていき、再び思考が鈍り始める。

「ふう……♡ う……♡」

玉袋が張り詰め抗えない射精欲に襲われる。逸物がヒクヒクと震えながらハイレグ水着を押し上げ、先走りで濡らす。

射精したい。このハイレグ水着を着たまま、無様に……♡

「い、いかん、このままでは♡」

性欲に支配され正常な思考が行えなくなる♡

また再び、洗脳されていることを忘れ元の生活に戻ってしまう♡

息が荒くなる。報告しなければいけないという焦る気持ちが情欲に掻き消されてしまう。

ハイグレ魔王が従えていたハイグレ獣人達もそうであった。皆ハイグレ水着の股間部分を膨らませ、明らかに勃起させている者達もいた。おそらく性欲を利用して洗脳させられているのだろう。

つまり、今ワシが興奮し逸物を硬くしている状況は敵の思う壺だということだ。

「……ッ♡」

性的興奮を覚えることが問題。ならば、それを解消してしまえばいい。

頭痛が治まってきた。

今が好機だとワシは立ち上がると、膨らみに太い指先で触れる。

「……フ~ッ♡」

そうだ♡ 性的興奮を覚えることが問題ならば射精してすっきりしてしまえばいいではないか♡

シコシコと両手で竿を上下になぞり、その刺激に身を悶えさせる。

すっかり頭痛の治まった頭が冴え渡る♡

一度♡ 一度すっきりしてからこのことを本部に、バーナード司令に報告すればいい♡

「ふうッ♡ フッ♡ フッ♡」

いつもはしっかりと掴んで豪快に扱いている皮被りのちんぽは、サイズのキツいハイレグ水着と丸い腹の間で張り付けにされており、上手く掴むことができない。

だからこうやって、ハイレグ水着の上からスリスリ皮を動かしカリ首や亀頭を擦ることでしか快感が得られないのだ。

「お゛ぅ……♡ ぬおっ♡ お゛……♡」

鼻息を荒くして一生懸命ちんぽに刺激を与えようと指で愛撫する。刺激が物足りず、つい腰を振ってしまう。

腰を前に動かすとハイレグに逸物が締め付けられる。オナニーするのにこのハイレグが邪魔で仕方ながなかったが、それを脱ぐなど論外だ。

しばらく腰をユサユサと振りながらちんぽに刺激を与えているが、これではどうにも。

「ヌオオ♡ これでは刺激が足りん……♡」

焦れったいこの快感ではこの射精欲を満たすことはできないだろう。

ならば、どうすればいい♡ この状況から抜け出し、正義のため気持ち良く射精するには……♡

「む゛お……♡ そうだ、名案を思い付いたぞ♡」

ビクッ♡ ビクッ♡ と震えるちんぽを見つめると、正面の姿見に視線を移す。目尻を垂らして口の端を上げた情けない壮年の猪の姿。フレイムヒーローレッドボアの名に一切そぐわない黄緑の蛍光色のハイレグと黒靴下を身に着けた姿は変態以外の何者でもない。

しかし、ハイグレ獣人たるものこうでなければいかんからな♡

足を左右に開きガニ股になると、鼠径部のV時に沿うように手を添えた。

「ハッ♡ ハッ♡」

そうだ。ハイグレポーズを行えば、きっと気持ちが良く射精できるはず♡ あれほど皆気持ちよさそうにハイグレポーズをとっているのだ。おそらくただの自慰行為では得がたい快感を得られるのだろう♡

「フーッ♡ フーッ♡」

ハイグレ獣人が、ハイグレ魔王に忠誠を捧げるポーズ。何て、何て無様な姿なのだ♡ しかしこれも正義の為。このまま両手を引きながら、掛け声を上げればそのポーズは完成する。

一度だけ。一度だけやって射精できれば、それで終わりだ♡

キリリと正面を見据える。情けない声を上げてはならないと口の端を結ぶ。両足に力を籠め、両腕を引き上げ、そして。

「ハイグレッ! オ゛────ッ!?♡♡」

ゾクゾクゾク♡ と背筋を走る快感につい海老反りになってしまう。ぶぴゅっ♡ と先走りが鈴口から噴き出し、ハイレグを貫通する。そのあまりの快感に、ワシは……♡

「ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡」

ビシ♡ ビシ♡ ビシ♡ と連続でハイグレポーズを行いおほ顔を晒してしまう。悪を逃さぬ為の両足はガニ股のままでもしっかりと自重を支えるために。悪を討つ為の両腕はV字に引き上げ戻す所作をズレなくしっかりと行うために。太ももと二の腕が膨らみ、より正しいハイグレポーズを行うためだけに鍛えられてきた筋肉が使われていく。

「お゛ほッ♡ たまらんッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡」

ビシ♡ ビシ♡ ビシ♡ とハイグレポーズをとると逸物と金玉がキュンキュンと疼く♡ さっきのハイレグ越しにスリスリする焦れったい自慰よりも。長らく義務的にしか行ってこなかった今までの自慰、その全てよりも気持ちいいっ♡ 癖になってしまう♡

「ハイグレ♡ ハイグレ♡ ハイグレ♡」

鏡を見ながら、Tバック男爵の引き連れていたハイグレ獣人達の記憶を頼りにより美しくハイグレポーズを行おうと模索する。背筋を伸ばし、綺麗にV字に腕を引き上げれば、より強い快感がワシを襲う。

「ハイグレ♡ ハイグレ♡ お゛っ♡」

腰砕けになり体勢を崩しそうになってしまうが、鍛え上げてきた足腰でなんとか踏みとどまる。美しいハイグレポーズをするほど気持ちいいのだから、一糸乱れずハイグレする事が射精への近道なのだ♡

床にぴったりと着く靴下の裏が蒸れる。ハイグレポーズの反動で汗が飛び散り床を跳ねる。

こ、こんなにも気持ちが良いものなのか♡ これなら洗脳されハイグレポーズで従うのも頷けてしまう♡

『不謹慎だがあんたみたいなベテランがハイレグ水着とやらを着させられているところを見られなかったのは少しばかり残念だなと思ってな』

昼のホワイトタイガーの言葉が脳裏を過ぎる。

す、すまない♡ すっかりハイレグ水着を着てしまっている♡ ワシはハイレグ水着でハイグレポーズをとると気持ち良くなる変態ハイグレ獣人になってしまったのだ♡

「ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡」

より美しくなるようポーズを繰り返す。もっと、もっとハイグレを♡

ワシの脳内で起こりうるはずのない妄想が掻き立てられる。ハイレグ水着を着たワシが、Tバック男爵に命令されるがままハイグレポーズをとって忠誠を誓う。そしてその姿をホワイトタイガーに見られてしまうのだ♡

「ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡」

ああ、見られてしまう♡ Tバック男爵に♡ ホワイトタイガーに♡ ハイグレ獣人となったワシの姿を♡

そして、ハイグレポーズを繰り返してそのまま……♡

「い、イグッ♡ ハイグレポーズでイってしまうッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡」

腕を引き上げ間抜けなポーズをとる度に、ハイレグ水着とちんぽが擦れ射精に近づいていく。

久しい精液がせり上がってくる感覚。待ち望んだ快感が、すぐそこに……♡

妄想の光景が今のワシと重なる。Tバック男爵に命じられ、信じられない物を見る目をしたホワイトタイガーを前にして、ワシは口を開いた。

「ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ ハイグレッ♡ フレイムヒーローレッドボア、ハイグレポーズで服従証明射精するぞッ! ハイグレッ♡ ハイグレッ♡」

頭に浮かんだ言葉を口にした事で、興奮がピークに達する。そのまま、ワシは。

「ハイグレッッ♡♡♡ ……お゛〜〜ッ!?♡ お゛っ♡」

びゅるるるる♡ びゅるっ♡

腕を引き上げ最大までガニ股になった瞬間、鈴口から大量の精液が噴き上がった。勃起し天を向くちんぽにより限界まで引き伸ばされたハイレグ水着を貫通し、弧を描いた精液が床にボタボタと落ちていく。

「お゛ほッ♡ お゛っ♡ お゛……♡」

玉袋に貯蔵した精液が全て絞り出されてしまうかのような勢いと快感に、内股になってしまいそうになるが正しいハイグレポーズを維持するためガニ股を崩すことができない。

妄想は掻き消え、この場にはTバック男爵もホワイトタイガーもいない。

鏡に映るのはピン、と両腕を引き上げたまま、股間から精液の噴水を上げる間抜けな猪獣人の姿だけ。

冷えきった廊下の温度が熱でのぼせた頭を覚まさせ、目の前の黄緑色のハイレグと黒靴下のみを着用した変態猪親父がワシなのだという現実を叩きつけてくる。しかし、この快感によってそれが素晴らしい事なのだという新たな価値観が植え付けられていく。

「は、はへ♡ へ……♡」

びゅっ♡ びゅっ♡ とちんぽが脈動し残り滓の精液を全て撃ち尽くしたところで、ワシの射精は止まった。価値観が全てひっくり返ってしまうかのような快感、そして射精。

力が抜けてガニ股のまま尻餅をついてしまう。巨体であるワシの全体重に打ち付けられた床が悲鳴を上げる。

「は、はいぐれぇ……♡」

呂律の回らない気の抜けた声が口から漏れ出る。

その言葉を口にするだけで、ちんぽが震え精液の空撃ちをした。

射精の脱力感とハイグレポーズを取り続けた疲れで意識が遠くなっていく。

そしてハイレグ水着に黒靴下姿のまま、尻餅をついても股間に両手を添えたガニ股のままでワシは気を失ってしまったのだった。

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