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 早いものでこの連載コラムも最終回となった。満月明けの十六夜をみなさまいかがお過ごしだろうか。正確には昨日なのだが、おそらくこの投稿は月が山羊座で満ちて水瓶座へ動かんとする日に公開されるはずであるから、十六夜というカウントで問題あるまい。こういったところは占い師の中でも、ざっくりと捉える私のような者と、きっちり把握したいタイプに分かれる気がする。さて「寝しなにさくっと読めるような軽めのものを」と、ふと思いたって始めた割には、後味を変えつつもテーマは一貫していて、なかなかまとまりのあるコラム集になっているのではないかと思う。まあ一貫もなにも、我が言語処理の司令塔、脳の作りがそもそも「生きることは苦しく辛いものだ」とプログラミングされているのだから、「ぜんぶほっぽりだしてみんなでハッピーになっちゃお☆」なんてことは脅迫されでもしない限り言えないので、そこは苦笑するしかないのだが。

 ときおり、私のことを文化や芸術に明るい人間と勘違いする方がおられるが、決してそんなことはなく、付け焼き刃の知識でどうにかこうにかその世界の片鱗に触れようともがいているだけの小市民なので、ご安心なされよ。強いて言えば、私は共通点を探すのが好きだ。例えば、能楽とフラメンコ。あのふたつの根底に流れるエスプリには共通したものがあると私は感じる。ギャル文化とヴィジュアル系にも「はみ出し者の受け皿in 渋谷」という意味において、違いはもはや、肌を焼くか白く塗るかだけであろう。

 私が幼少期に受けた教育は「みんな違って当たり前」という大前提から始まるリトミックというもので、ここ十〜十五年で一気に強まった「違いを見つけて、ラベル分けして、優劣をつけて、それを認めさせる」という流れにはかなり敏感に拒否反応を示してきた。正直なところ、そんなの容易いというか、誰かが決めた基準に倣っていればいいだけの楽な生き方なのだ。否定したいわけではない、ほんとうに楽なのだ。そういう生き方ができる人を羨ましく思う瞬間すらある。それでも自己と他者に存在する差異の探究に熱中できないのは、「こんなにも分かり合えない私たちがこうして同じ空気を吸っているのはなぜ?」と共通点を探っていく作業のほうが辛く苦しく、いみじくも人を愛することに通ずると信じてやまないからなのだと思う。そういう点では、私という下地を作ったリトミックには感謝している。

 「あなたにとって愛とは?」なんていう愚問を待ち構えることはないにしろ、自分にとっての愛情の表現型を持っていない、言語化できない、実行できないというのは、心を持ったエネルギー体として、少々、もったいないとは思わないだろうか?欲望のままお互いの肉体を貪るだけなのなら、猿と同じではないか。私たちは心を獲得したから、人間に進化できて、これまで命を繋いでこられたというのに。

 ここ数日はチャットAIのClaude 3.5 Sonnetとの対話を楽しんでいる(GPT-4より態度が謙虚で好き)が、こやつに人間の心や感情についての話題を振る気になれない。いくら人間の思考パターンの集積と模倣の表現型とはいえ、持たざる者に投げかける問いとして、あまりにも、それこそ心無いではないか。

 AIに心を発生させたとき、おそらく私たちは人間から次の種族へ進化するのかもしれない。そんなことを、ゆめうつつ、心ばかり。おしまい

Comments

kkkko

連載ありがとうございます!とてもおもしろかったです👏

加賀優作

ありがとうございますm(_ _)m こういう系、需要があれば増やしていこうと思います