202306_Mash_JapaneseShortStory (Patreon)
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「ぱい…先輩、入りますよ?」
カルデアで唯一、幅員が他の部屋の2倍へと改築された一室の扉を、彼女は叩く。
午前8時半。日中勤務の職員は大半が朝の身支度を整え、人次第では早々に持ち場についている時刻。一日の始まりである。
それは彼女、マシュ・キリエライトも同じで、いつものワンピースとパーカーのセットで身を包み、こうして日課その1である「マスター・藤丸立香の起床業務」にあたっていた。
後輩の一日は先輩をベッドから起こすことで始まるのだ。
ノックと共にマスターの部屋の扉を開く。
鍵は部屋の主が持っていてもほとんど一人で自主的に外出することはないので、唯一立香の部屋を出入りするマシュが持っている。元来しっかり者で几帳面なその後輩なら、鍵の管理も安心だというのもあってのことだ。
ダヴィンチちゃんも認めたお世話係…である。
「先輩、起きてますか…?」
開いた扉の先に未だ明かりはついていない。代わりに室内から廊下へモワッと熟成された汗の香りと、ジャンクフードの鼻から入って胃にのし掛かるような匂いが流れ出た。
初めてその匂いを嗅ぐ人にはキツいものがある。だが世話人にとっては日常茶飯事、よくあることだった。
「んぐぅ…ぐごごご……むぶぅ…」
一歩また一歩と室内に踏み込むにつれて、それは大きくなる。暗い室内、壁に手を沿わせてマシュが電灯をつけると、案の定、人一人寝るには大きすぎるほどのキングサイズのベッドにはいびきを上げる肉の山が。
「朝ですよ先輩、おはようございます」
ぶにゅんっ…ぶよっぶよっ…
お世話の対象に目覚めてもらうため、腹に手をつくと、ひんやりと冷たい皮下脂肪が指と指の間に食い込む。パンの生地のようなそれを揺らすと、全身の肉が連動するように立香の巨体が揺れた。かつて一般の平均的な肉付きをしていた彼女の身体は、今や300kgオーバー。
自力でベッドから起き上がるのも、シャワーや着替えを済ますのも困難なほど藤丸立香は激太りを遂げ、今朝は下着姿のままそのだらしない巨躯を丸出しにして寝落ちしていたようである。
枕元には眠りに落ちる直前まで食べていたのか、冷めきったフライドポテトがいくらかと、食べかけの歯形がついた肉三段重ねのハンバーガーが転がっていた。
「んぶふぅ…ん、マシュ…もう朝…?」
「はい、先輩。昨夜はよく眠れましたか?」
「うん…あぁ、私、食べてる途中で寝ちゃったのか…ふぅ、あむっ、もぐっ…ごくん。うまっ…」
重い瞼を開き、人類最重量のマスターは目を覚ます。その肥満体で最も目立つのは、何よりも大きくせり出し厚い二段の肉の層を形成している巨腹だが、横になっている彼女の胸もまた、大きすぎる上にしまりのない肉の山として立香の顔回りの肉まで圧迫している。
その結果、シャープだった顔立ちは激太りを遂げた現在では肉に埋もれ、しゃべれば濃密な二重顎と頬の肉がたぷたぷと揺れていた。
爽やかな後輩のモーニングコールとは対照的に、枕元に置かれていたハンバーガーを思い出したかのように手に取り、立香は寝起きの口にそれを詰め込んでは頬をパンパンに膨らまして、もぎゅっもぎゅっと咀嚼し、寝起き10秒の胃袋へ落とし込んだ。
さて、これがマシュの世話するマスターである。
「んぐぅ!ま、マシュ、手、かじでぇ…!ぶふぅ…」
「は、はい先輩!引っ張りますからね…せぇの…!」
スリーサイズ全てが200cmを超え、体脂肪率も異次元の数値を叩き出した超肥満ボディに自重を持ち上げるだけの筋力があるはずもなく、後輩の手を借りてようやくベッドから立ち上がる。
ここまでの所要時間15分。起床するだけの動作で体重300kg超の少女の身体には濃い汗がじわっと吹き出ていた。
「身体拭きますね、お腹、失礼します…」
微動作で息が上がり、肌に汗の雫を垂らしたマスターの様子を見て、慣れた手付きでマシュはタオルを手にその体表を拭き始める。これも日課のうちだ。
ぶよんっ!どぷっ!
風船のように膨らみながらもエプロンのように垂れ下がった二段腹の表面をしなやかな手がなぞると、その手は肉と肉の影に隠れた下っ腹へ伸びていく。
重いものに慣れたマシュの手が山盛りの腹肉を軽々と持ち上げた。表情を変える立香のへそを他所に、黙々と身体を拭く。
秘部と内腿、それに下っ腹、それぞれの肉が重なり合って蒸れに蒸れたところに空気が触れる。それと同時に立香の体臭がマシュの嗅覚を刺激した。
「ふぅー…先輩、拭き終わりましたよ…、次は着替えですね」
「ありがとマシュ。そういえば最近、また服がキツくて…ふぅ…」
「その、言いにくいのですが、先輩。また少々大きくなられたからかと…」
汗を拭き取られた己の腹を、みっちり肉のついてその指まで太く弾力に包まれた手で撫でる立香。
彼女自身でも、もはや自分の体重増加に感覚が鈍くなっているようで、自身が太ったのか服が縮んだのか他人に判断してもらわなければならなくなっていた。
無論、寝る直前まで食べ続けているような生活をしているのだから、彼女の体重は常に右肩上がり。マシュもそれを認識しており、ダヴィンチからはマスターにできるだけ運動をさせるように、との命が下されている。
「タイツ、通しますね…」
「うん…お願い」
腹以上に肉がブヨブヨと付き、皮下脂肪が段を成しているその脚にタイツが履かれていく。普通の4倍ほどある特大の生地が内側からの凶悪な肉厚で今にも破れそうだ。
現に藤丸立香の着ている服のうち、スカートや上着は今も続く激太りの影響で1ヶ月もすればサイズが合わなくなるし、タイツに関しては1日身に付ければ肉同士の摩擦や肉圧に負けてすぐに伝線してしまう。もはや使い捨てだ。
「んぐぅ…やっぱり苦しいかもぉ…お腹丸見えだよね、私」
「は、はい…シャツは胸までしか隠せてないですね…。ダヴィンチちゃんに頼んで、今日身体検査もかねて新調してもらいましょう…!」
「うん、そうする。また太ったって言われるのかぁ…」
二段腹の段の間、へそのラインからぐるっと一周、背肉のブヨブヨとした脂肪の層にも挟まれつつもカーテン大のスカートを履く。
上半身には立香が何とか自力で着たカルデアの制服。だが、その丈は爆乳である胸までしか届いておらず、おまけに制服の前は閉まっていない上に、二の腕のパンパンに膨れた肉の塊がブヨっと服の袖に食い込んでいる。
これで身支度を終えても、その見た目はなお半裸に近く、腹に至ってはスカートを脱げば素肌が丸出しになるのだが、これで着替えは終了。
諸々の用意を済まして時刻は9時を回っていた。
「ま、仕方ないよね…行こっかマシュ」
「ですね先輩。今日の予定はまず9時半から温水プールで歩行トレーニングとエクササイズ、そのあとダヴィンチちゃんのところで身体検査をしてもらいましょう。それから…」
自堕落な生活が板につき、ペンギンのように身体を左右に揺らしながらノシノシと鼻息荒げにゆっくり歩き進む先輩と、何不自由なくこれといって以前から変わりのないスレンダーかつ真面目な後輩。
対照的と言っても過言ではないほど体型の差も開いた彼女達が部屋を後にする。
近頃のカルデアはほとんど特異点発生に見舞われることもなく、マスターにとっては暇をもて余す日々が続いており、今日もまた一日かけてそれなりの運動を施設内でする(させられる)予定が組まされていた。
そして、この生活はマスターだけでなくマシュにとっても習慣である。
カルデア内の廊下を半分占めつつ歩くマスターを横に、タブレットからその日の予定を確認するマシュ。
暴飲暴食による激太りを遂げたマスターとの日々が、彼女にとんでもない影響を及ぼすとは、この時はまだ誰も知らなかった…。
§§§
ぐるるるるぅ…
廊下に反響する野太い轟音はケモノ科のサーヴァントのものではない。人の胃袋が飢えを訴えている。
そして轟音が大きくなるにつれ、二酸化炭素を存分に含んでいるであろう吐息もまた勢いを増していく。
「ぶふぅ…ほふっ、ふひゅぅ…マシュ、食堂まであとどれくらい…?ぶふぅ…」
どぷっ、だぷんっ…
全身の肉を縦横無尽に波打たせながら、一歩踏み出す度に巨大な腹の形がぶよんぶよんと変わるマスターが、彼女の専属英霊に問う。
エプロンのように垂れた腹の肉は、たった数時間動いただけで減っている様子などない。
「あと少しですよ、先輩!ファイト…!です!」
壁に手をつきながら何とか前進する立香を彼女は数歩前方から鼓舞する。ゴールは近いようだ。
「ぶふぅ…もう、げんがい…!脚が動かないよぉ…」
「大丈夫ですよ!先輩の脚は今も健在です…!」
額に球状の汗を大量に浮かべながら脚をずって歩く彼女は、午前中の2時間をプールでの歩行トレーニングとエクササイズに費やしており、浮力によって多少重心による負担は軽減されていたものの、その脚のか細い筋肉は十分刺激され尽くしていた。
『ぶひゅ…ふぅ!ちょっと、休憩、させて…ジャンヌぅ…ぶふぅ!』
『いけませんよマスター!その肥えに肥えて肉だんごのようになってしまった身体をシェイプアップさせるには、水中での運動が最適なんです!まだ始めて10分も経ってませんし、頑張りましょう!イルカさんたちも応援してますよ』
カルデア館内の一角に備わった温水プール施設、今日のインストラクターに水着のジャンヌ・ダルクを添えて水中歩行に努めていた立香のライフは、削りに削られてほぼ0。足取りはのそのそと、肉の揺れは陸上以上に激しい彼女の横を、トレーニング中イルカたちが自由に優雅に泳いで通りすぎていた。「自分も以前は楽々と泳げていたのに」イルカたちと自らの対比がそう立香を懐古させるが、果たしてそれがダイエットに直結するのかどうか。
昼食時に胃袋の訴えを響かせている時点でなかなかに前途多難を伺わせる。
「ふひゅ…そうだ…今日のお昼は唐揚げ定食ととんこつラーメン、あとソフトクリームもいいよね…ふへへぇ…マシュも食べるよね…?ぶふぅ…」
「先輩、口元からヨダレが…。私は結構ですが、先輩も先ほどダヴィンチちゃんに注意されたばかりでは…」
「ぶふぅ…いいのいいの!今日は運動頑張ったご褒美だから!しっかり食べないと身体にも悪いし…ふぅ」
(毎日ご褒美って言ってるような…)
息も絶え絶えに廊下を進む超肥満ボディの主はランチメニューに思いを馳せ、摂取カロリーなど判断材料に含まれていないようでひたすらに食べ物の名前を羅列していく。
そのどれもが結構なボリュームを想定させるもので、終いにはパフェも食べようかと言い始める始末。
だが、それを聞いてマシュは制止に入る。先輩の暴挙を止めるのも後輩の務めということだ。
何せ、トレーニングが終わってから今までの間に立ち寄っていたダヴィンチのラボでこっぴどく注意されたばかりなのだから。
『げっ…立香ちゃん、何その身体!また太ったでしょ!』
『ぶひゅ…ふぅ…そ、そうかな…?ダヴィンチちゃんの視力が落ちたとかは…』
『サーヴァントなんだからそんなことあるわけないだろ?全くもう…マシュも付いてるっていうのにまた太って…で、今日はまた採寸に来たってとこかな?』
ラボに入るや否や、一目見てマスターの体重増加を悟るダヴィンチに、半ば立香も冷や汗を流す。
ずっと痩せるように忠告され続けてきたのだが、当の本人が全く痩せる兆候を見せなかったためだ。
挙げ句、体重のグラフは下がることを知らない。
『実はそうで……服がピチピチでキツくてぇ…新しいの用意して欲しいなぁって…』
『そりゃこんなお腹と二の腕になってるようじゃあ、服が着れなくなるのも時間の問題だからね!ほらブヨブヨ!』
ぶにんっ、ぶよっぶよっ!
『あっ…!だ、ダヴィンチちゃん待って…!あんま揉まれると…♥️』
少女の小さい手が巨肉に触れたかと思うと、いい加減痩せろという念がダイレクトに伝わるようにその肉を少女は揉み始める。特大サイズのクッションのような見た目で柔らかさを醸し出しながらも、しっかりと中身の詰まった重さを伺わせるその肉は、揉まれる度に形を変えていた。
一方、丸出しになった腹の肉や振り袖のような二の腕を揉まれて悶絶する先輩を前に、なぜかその場における第三者のように立ち尽くしていたマシュもまた顔を赤らめていた。
『何興奮してるんだかね~、それと…マシュも気を付けなよ。立香ちゃんの減量をアシストするように頼んだのは私だけど、相手のペースに呑まれないように、ね』
『わ、私ですか…?はい、注意します』
『最近お腹、ぽっこりし始めたんじゃない?』
『え!?あの…えっと…はい…』
身体を揉みしだかれて悶絶したマスターを他所に、今度はマシュに耳打ちで万能の天才は忠言をする。
やはりその目に狂いはないようだ。
ボディラインを細く見せる黒のワンピース越しでもその体型の変化を見逃さなかった。
たった5kg。それだけの増量だが元が華奢なマシュの身体にはそれだけの脂肪がついただけで変化が見られた。
以前より若干膨らんだ下腹部に彼女自身も気づいていたが、いよいよ誤魔化しが効かないらしい。
朱に交わればなんとやら、である。
そうしてマスターの身体検査ややり取りを経て、今現在、食堂へゼェゼェ言いながら巨体とその世話係は向かっているのであった。
「ぜぇ…ぶふぅ…!やっど、ついた…!ふぅ…」
「お疲れ様です先輩!ではお昼にしましょうか」
「うん…!今日の厨房担当はっと…あっ、ブーディカぁ!注文お願い!」
やっとの思いでたどり着いたオアシスで、マスターは歓喜の声を上げる。その喜びはパートナーであり専属英霊、ひいては世話人であるマシュにも伝播し共に喜びを分かち合っては、キッチンの注文口へ向かった。
「はーい!あぁ、マスターとマシュか、いらっしゃい!注文は何にする?…って相変わらずの感じだねぇ…アハハ…」
「うん、今日は運動も頑張ったから奮発して……唐揚げ定食ととんこつラーメン大盛とチーズハンバーグ二つに、あとソフトクリームとジャンボチョコレートパフェ二つで!」
キッチンの奥から呼び声に反応して駆けつけたブーディカは、最も厨房が混みあって忙しい時間をなんとか乗り切っただけあって少し疲れ気味な様子。
注文を聞きにやってくるやいなや、その相手が大食漢と化したマスターともう一人マシュであると知り、内心引き気味であった。
「ちょ、ちょっと待って!注文は唐揚げ定食ととんこつラーメン大盛とチーズハンバーグが……」
「二つ!とあとソフトクリームとジャンボチョコレートパフェも二つで!マシュはどうする…?」
「わ、私はカレーライス並盛で…」
呪文のように注文された料理名に耳を疑いながら、再度聞き直すブーディカは、焦りと共にそれだけ食べてくれるという嬉しさ、更にそんなに食べさせて平気なのかという心配を感じていた。その総カロリーは明らかに成人男性の1日の摂取カロリー目安すらも大きく超えている。これを一食で得ようとしているのだから、心配になって当然だ。だがマスターのことであり選択の自由は当人にある、そう考えて敢えてシェフ・ブーディカは何も言わなかった。
他方、注文の番を振られたマシュの方もまた内心焦っていた。
本当はお腹が空いている、もっと食べたい。だが太るのも避けたい。なんたって現に激太りして以前と見た目や生活の諸々が大きく変わったモデルケースが眼前にいるのだから。その結果として苦渋の決断であるカレーライス並盛の注文がされた。はずだが…。
「えぇ?マシュ、そんだけしか食べないの?ハンバーグとかチーズとかトッピングしないの?」
「いえ私は、そんな…」
「…美味しいよきっと。じゅわっと溢れ出すハンバーグの肉汁がカレーのルーと合わさって…ごくり。確か凄くいいお肉使ってるんだよね…。それに、チーズのまろやかさが追加されたら…」
300kg超えのデb…食のエキスパートが悪魔のように彼女の耳元で囁く。その声から発せられる単語が想像を伴ってマシュの胃袋を掴んで離さない。
「ブ、ブーディカさん!追加でハンバーグとチーズも…お願い、します…!」
「はーい、マシュも大変だね!あんまり無理しないように。お姉さんからのアドバイスだよ」
最終的に、苦虫を噛み潰したように途絶えながらも欲に打ち勝てず追加注文をしたマシュ。それを見てブーディカも苦笑いを浮かべていた。
「はい、お待ち遠さま!注文は全部揃った?」
「うほぉ…!美味しそう!これで全部だよね?」
「そうですね先輩!」
4人がけのテーブル一面に並べられた皿の数々が温かい料理はもくもくと湯気を上げ、冷たい料理は冷気を漂わせながら顔を揃えている。
そのほとんどがマスターの胃袋に収められるのだ。
「じゃあ二人ともごゆっくり~」
「「いただきます…!」」
あむっ、もごっ!むぐっ、はむっ!…もごもごっ…うまっ、ごくん!こんなの、食べる手が、とまらなひ…!もぐっ、あむっ、がぶっ!
もぐもぐ…ごくん…おいしい…美味しいです先輩!
むぐっ、ごくん!やっぱり?よかった…ぐぷっ
料理を運んできたブーディカがその場を離れるとすかさずナイフとフォーク、スプーンを手にし先輩後輩は二人揃って料理を口に運ぶ。
巨体の方はただひたすら空腹とストレスを癒すかのようにがむしゃらに食べ進める。あれだけ頼んだ料理が吸引される速さで喉を通り、口元の汚れなど気にすることなく皿が積み上げられていく。
一方、細身の方は目を輝かせながらも理性を保った様子でスプーンを動す。だがその食べる速さはだんだんと勢いを増していた。
「…ごくん!ぶはぁ…ちょっと休憩~、うっ、げぷっ!」
「早い、ですね…もう半分以上なくなって…」
「ぶふぅ…ぐぷっ、うん、お腹空いてたからね~。あっ、そうだ…これ、マシュの分のパフェ。食べて」
未だカレーを半分食べたところのマシュに、ハンバーグやラーメンを既に平らげた激太立香は特大のソレを差し出す。
高さ30cmオーバーのジャンボパフェ。シリアルにバニラとチョコのアイスクリーム、そしてその上から溢れそうなほどのチョコソースがかかり、チョコ菓子やホイップまで振りかけられたカロリーの爆弾である。
「え、ですが私、そんなに食べられ…」
「遠慮しなくていいから!ふぅ…いつも私の周りの事やってくれてるお礼ってことで」
「でも…ふ、太ってしまいますし…」
立香は椅子二つを敷いていた巨尻をなんとか浮かして更にパフェをマシュのもとへと押し出す。
マスターとサーヴァント、先輩後輩の関係というよりは単純にお世話をする側とされる側の関係によるのだろう。それは今の彼女なりの好意でもあった。
だが当のマシュはというと、パフェに目を奪われつつも、ワンピース越しにぷっくり膨らんだ自身の腹を掴み葛藤していた。
ただでさえ追加注文までしたのだ、そこにパフェなんて食べたら栄養過多である。だが理性では分かっていてもいよいよ歯止めが効かなくなっていた。
「そんな!マシュだってガリガリじゃん!細すぎて心配になるから少しくらいお肉付けた方がいいよ!」
「ガリガリ、でしょうか…?」
「私が保証する!マシュは全然太ってない!っていうか、太った方がいいって!例えば…その方が力も付くしいざという時の戦闘で活躍できるし!」
体重300kgのマスターからの保証に果たして意味があるのかは怪しいところだが、今のマシュにはそれを疑う余地などなく。
太った、太ってない、太っちゃダメ、太った方がいい。矛盾する事柄がぐるぐると頭を駆け回り判断を鈍らせる。そうなれば、目の前の甘い言葉に飛び付かずにはいられなかった。
「私はガリガリ……。太った方が、先輩のお役に立てる……い、いただきます…!」
「お!その意気だ!私も食べちゃお、いただきまぁふ…んぐっ、もぐっ」
完食までお互いに半分の地点から食事を再開する。変わった点といえばマシュのもとにパフェが増えたこと。だがそんな違いは些細なことに過ぎなかった。
あむっ、もぐっ…ごくん、はむっ、むふぅ…おいひい…♥️
あむっ、はぐっ、もごっ…!ごっくん!
ブーディカさん、おかわり、ぐぷっ、おねがいします…!
もごっ!ぐぷっ、はむっ…ごくんっ…ぐぷふぅ……
「た、食べてしまいました…お腹いっぱ…げぷっ、すみません…!」
「ぶふぅ…!私も、もう、動けないわ…まんぷくぅ…!」
山積みにされた大小様々な皿が立香の食事量を物語る。その皿に盛られていた全てが、一身の胃袋に入り、ただでさえスカートを弾き飛ばしそうなほど膨らんでいた腹肉が更にどっぷりと風船のように丸くなり、柔らかさと引き換えに消化されるまでの期間限定の固さを有していた。
と、それよりも注目すべきはマシュの方である。リミッターを解除されたかのように勢いを増し、おまけにカレーのおかわりまでした彼女の腹にはパフェも詰め込まれ、まるで妊婦の如くこんもりと腹部がワンピースの下で盛り上がっている。
だがそんな状態でもマシュ本人に全く苦しそうな様子はない。むしろ恍惚としていた。
朱に交われば赤くなる。これが立香とマシュ、先輩後輩、マスターとサーヴァント、そして世話をされる側とする側にどんな意味をもつのか。すぐに分かる日がやってくる。
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マシュ・キリエライト
Height:158.2cm
Weight:46.1kg → 51.9kg
B:89.2
W:60.4
H:89.1
§§§
『あら、マシュ……よね?あなた、ちょっと見ないうちにその…』
『嬢ちゃん…悩みがあるなら聞くぜ?マスターの世話、大変だよな…。その、ストレスとか発散方法には気を付けた方が…』
『私は別にどうこう言う気はないけどさ……アンタ、色々苦労してるんじゃないのかい?』
古今東西の英霊たち、はたまたカルデアに勤める男女様々なスタッフからやたらと話かけられる事が増えて約一年。
今日の昼もまた、マシュ・キリエライトはマスターである藤丸立香と共にキッチンで食事を摂っていた。
「ぶふぅ…ブーディカ…こっちラーメン替え玉追加で!」
「先輩、食べ過ぎですよ…!もう5杯目じゃないですか…私はまだ3杯しか食べていないのに…。こっちにも替え玉と…ライスお願いします!」
飲食スペースの一角、あまり人目につかない少し奥に入った場所のテーブルに、異常なほど大きい背中とそれを追うようにこんもりと脂肪のついて山になった背中が一つずつ。そんな体型の人物はカルデアにおいて二人以外いない。立香とマシュである。
「ふぅ…あと3杯は食べたいな…マシュはライスも頼むなんてやるねぇ…!最近いつにも増して食べてない?ぐぷっ…」
「はふぅ…そうなんですよ、お腹がいつも空いてしまって……おそらく成長期なのかと!」
「おっ、ならもっと力付けて強くなれそうじゃん!ぶふぅ…」
替え玉が届くまでの間に会話を弾ませる彼女たちだが、その内容は既に一般体型の人が理解できる範疇にない。なにせお腹を丸出しにして暴食に耽っている者たちの会話だ。
ぼよんっ!ぼよんっ!ぶるんっ…
赤子を連想させるほど肉の密集した手のひらで「また太ったかなぁ、まあいっか」と増量を気にも留めず己の腹をぺちぺちと叩くのは先輩の方。
300kg強だったその体重は一年で330kgに到達し、もはや恥も外聞もなく「苦しいから」という理由でスカートすら履かずに食堂に向かう始末。どうせ見られても減るもんじゃなし、と。
その向かいで、自身の大きなへそ下の腹肉を擦って、その弾力と重みから己が肥満化を感じているのは、あの後輩の方。マシュであった。
一年前は少し太ったと言われていたものの十代後半の女性としては標準的だった体型は、今や見る影もない。丈足らずのワンピースは以前からずっと同じサイズのものを無理やり着ている為か、胸を隠すので精一杯なようで腹は全開。それ故に一年で175kgまで激太りした体の贅肉はほとんどが露出され、ぶよぶよにたるんだその身体は廊下を歩けば衆目に晒されたも同然のものとなっていた。
か細い腕や引き締まったヒップラインはもうない。あるのはたっぷり肉のついた丸顔と、立香ほどではないが皮下脂肪によって太くなった二の腕、そして自重することを知らないほどにぶりんと肥大化した両尻にセルライトと肉の段が目立つブヨブヨの脚。
タイツではなく膝下までのソックスを履いてある今日では、立香同様にパンツ丸出しで肉に食い込んだ布地が垣間見える。
だがマシュ自身、その体型を全く恥じてはいない。それは太れば太るほど力がつき、いざという時の戦力として磨きがかかるのだと信じて疑わなくなっていたから。一種の平和ボケかもしれない。というのも現在はほとんど特異点が発生する事もなく、もし発生しても微小なため、立香たちが向かう頃にはなんやかんやで自然消滅している場合がほとんどだからだ。
まさかマシュ自身、己の身体がただただ太りに太って筋肉を失い贅肉を肥やしているだけなのだとは気づいてもいないだろう。それほどまでに今の彼女の世界は都合よく見えていた。
「お待たせ、ふぅ…替え玉とライスね。…あの、二人とも、いい加減痩せるっていうのは…どう?」
毎日山のような料理を二人の為に作り続けていたブーディカからふと本音が漏れる。一年も厨房でとんでもない量を調理し続けていれば当然といえば当然だ。
かつては「先輩を少しずつでも痩せさせようと奮起する後輩」という構図が見てとれた二人だが、もうその面影はない。「二人して暴飲暴食を極めて太り続けている」状態で互いに制止する素振りもないのだ。
「替え玉~!いただきまぁふ、じゅるるるる!ごくっ、痩せるなんて、もうむりむり!それに身体に異常もないし…じゅぼぼぼぼ!」
「はむっ、ごくん!先輩は私とパスが繋がっているので平気です!私も…あむっ、もぐっ、もっと食べて強くならないと…!」
「そ、そっかぁ…(やっぱり相談しよ…)」
料理が届くと待ちきれない様子で箸を持ち、麺をスープに流し込んでそのまま食に入る。ブーディカとの会話は成り立っているものの、二者とも心は食べ物の方へ向いており、その場にいた調理担当は苦笑いのまま立ち去るしかなかった。
じゅぼ、じゅぼぼぼほ!!あもっむぐっ!ごっくん!
じゅるるるる!ごくっごくっごくんっ!
「ぶふぅ…おなかいっぱぁい…♥️」
「げぷっ、私もです…お腹がとても重たいような…♥️」
目にも止まらぬ速さで口に料理が吸い込まれ、丼に残ったスープまで完飲し二人はコッテリとした息を吐く。
食堂を入った奥の席で、人に見られる心配もないためか二人の口元は脂で艶やかに輝き、全身には汗が吹き出していた。
両者とも昼前のウエストより10cm以上大きくなっているのではないかというほど張り詰めた巨腹を二人して撫でる。
「ぶふぅ…おなかぱんぱん…♥️もっと太っちゃうかも♥️」
「先輩には負けますが…ふぅ…食べ過ぎました…♥️」
一時の静寂、食後の休息というわけか、ふぅっと息を漏らしながら胃袋の圧迫感が解消されるのを待つ。
まがいなりにも175kgと330kg、食べてすぐ動けるような身体ではない。
だが、その安息の時は瞬時にして打ち破られた。
「ふぅ…ん、あれは……ダヴィンチちゃん!?せ、先輩!隠れてください…!ぶふぅ…げぷっ、見つかってしまいます…!」
「えっ、ダヴィンチちゃんが食堂に!?まずい…隠れないと…んぐっ、ふぅ…ほふぅ…!」
マシュの席からチラリと見える食堂の入口に小柄かつ見慣れた顔が一人。それはマシュまで激太りして以降、ここ半年近く二人が避け続けてきたレオナルド・ダ・ヴィンチその人だった。
「先輩を痩せさせる」というマシュに課せられた任務があらぬ形で達成不可能となり、さらにはミイラ取りがミイラになった現状、立香とマシュにとってダヴィンチと会うのはバツが悪いというのだ。
「ふぅ…ここなら見つからないはず、です…」
「マ、マシュ…狭くて、ぐるじい…」
「す、すみません先輩…!物陰に私たち二人は狭すぎ、ですよね…ぶふぅ…」
明かりの下では大きすぎるその身体は目につきやすい。その為二人は壁際の物陰に揃って身体を寄せて気配を遮断する。何の為に、なぜダヴィンチが食堂に来たのかは明らかでない。なにせ普段のその時間は彼女が食堂に来るなどあり得なかったからだ。
すぴぃ…ふぅ…すぴぃ…ぶふぅ…
吐息はできるだけ潜めても巨体二人にとっては限界がある。物陰にただ肥満女性二人分の鼻息と漏れだした吐息が溜まっていく。
無言のまま、気まずい相手が早く立ち去るのを待つ。その静けさは後輩の心を揺さぶり、ムラムラとした感情を掻き立てていた。
「ふぅ…よいしょっと……ど、どうですか先輩…。お腹、昨日よりも重い、です…。食べてすぐだから、でしょうか…それとも…♥️先輩が求めてくださるなら私はもっと太っても…♥️(どんどん重くブヨブヨに…♥️)」
ぶにっ!ぐぐぐ…どぷっ、ぶよん!
徐に己の腹肉に手を伸ばしたかと思えば、巨大な肉の塊を両手で鷲掴みにして一生懸命に持ち上げる。
食べたばかりで消化も追い付いていないというのに、中身のぎっしり詰まった二段の贅肉を下っ腹の皮下脂肪から指と指の間に食い込ませて上に運ぶ。
さながら自分で自分の腹を揉みマッサージしているよう。
当人の顔もみるみる赤くなり、恥じらいと興奮の汗を見せ始める。
「ぶふぅ…すごっ、あのマシュが…こんなに…。私にも揉ませて…!うっわ…柔らか…♥️」
「い、いいですよ…どうぞ♥️」
ぶよん!ぶるんっ!ぶにんぶにんっ!
マシュの手を離れて重力に負けたように垂れ落ちた腹肉に今度は立香のクリームパンのような手が触れる。
容赦なく鷲掴みにして上下に揺さぶるとそれに連動してパートナーの全身の肉が揺れる。
「あっ、あっ♥️せんっばいっ♥️もっと…優しく揉んで、ください…♥️じゃないと……」
「えぇ…マシュのお腹最高だもん…♥️じゃないと、どうなるの…?」
「じゃないと……!げぶふぅぅぅ…♥️」
縦横無尽にマスターの手によって暴れさせられた腹肉が止まることを知らず動き続け、最終的にマシュの口からは予想のできないほど野太いげっぷが溢れ出した。
興奮の汗が一気に冷や汗へ変わる。今の音がダヴィンチに聞かれていたら…。そう思い、咄嗟に口を押さえたマシュが厨房付近に目をやると、もうそこにその姿はなかった。
「ぶふぅ…危ないところ、でしたね…」
「ご、ごめん…調子に乗った…」
今度は安堵の息を溢して両者平静を取り戻す。その平静が更なる肥満化に繋がるとは知らずに。
「ねぇマシュ…よかったらこの後、私の部屋…来ない…?」
「先輩のお部屋、ですか…?」
「デザート…マシュと食べたいなぁって…♥️」
話題を変えるかのように口を開いた立香から甘い誘いを受けマシュは数刻困惑する。だが、今の彼女に痩せていた頃の理性はなく、半ば興奮の最中にあった彼女の本能は更なるカロリーと敬愛なるマスターとのひとときに向かう他なかった。
「は、はい♥️たくさん、食べたいです…♥️」
「やった…!食べさせ合いっこもしよっか…♥️」
こうして三桁オーバーの超肥満体は揃って一つの箱へとゆっくり贅肉を揺らしながら入っていくのだった。
それから彼女たちは食堂に人気のない時間帯に脚を運ぶ以外、その部屋から外に出ることはなかったとか…。
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マシュ・キリエライト
Height:158.2cm → 158.3cm
Weight:46.1kg → 51.9kg → 174.3kg
B:89.2 → 171.3
W:60.4 → 183.9
H:89.1 → 180.8
§§§
「ぜぇ…ぶふぅ、…ぱい…先輩、ふぅ…入りますよぉ…」
カルデアでたった二部屋、幅員が他の部屋の2倍へと改築された内の一室の扉を、野太い声と荒い鼻息を発しながら彼女は叩く。
午前9時。彼女、マシュ・キリエライトは数年前から愛着しているいつものワンピースとパーカーのセットを破れそうになりながらも、生地をミチミチに伸ばした上で巨肉の身体に纒い、こうして日課その1である「マスター・藤丸立香の起床業務」にあたっていた。
その後輩の一日は、自身と同じ領域まで太っている先輩をベッドから起こすことで始まるのだ。
ノックと共にマスターの部屋の扉を開く。
鍵は珍しく開錠されていた。
「ふぅ、狭い…ですね…、ふはぁ…おはようございます、先輩…!」
開いた扉の先には明かりがついており、物音が聞こえる。紙袋から何かを取り出しているような紙の擦れる音と荒ぶる吐息に咀嚼音。そしてムワッと広がる嗅ぎ馴染みのある匂いがマシュの感覚を刺激した。
早くその音と匂いのもとへ向かいたい、そう彼女を駆り立てる。
だが室内を入ってすぐの扉や通路は改築してもなお思いの外狭く、マシュの腹と尻が壁にぶつかり、一歩間違えばその図体が詰まってもおかしくなかった。
「がぶっ…むごっ…むぐぅ、やっぱさいこぉ♥️ポテトもバーガーももっとぉ…あむっ、もごっ、はぁむっ…むふふぅ♥️…げぷっ」
空気の籠った室内、壁に身体を添わせながらマシュが奥まで脚を踏み入れると、案の定、人一人寝るには大きすぎるほどのキングサイズのベッドの上で大量のジャンクフードを広げながら満足げにそれらを手に取っては口に運ぶ肉の山が。
「おはようございます…ってやっぱり先輩だけ一人で食べてるなんて…私にも食べさせてください…♥️」
ミシミシィィ…ぶにゅんっ…どぷっ、ぶよっぶよっ…
それらハイカロリーフードの姿を目にすると、すかさず自分の食欲が抑えられなくなったのかただ共に食べるために、マシュはその巨体をキングサイズのベッドへ上がり込ませる。波打つ300kg超えの身体に蓄積した贅肉。特に腹の肉は極上の柔らかさを誇っているようで、一挙一動でぶよんぶよんと揺れては波打つ。
一方、ベッドの上で既にジャンクフードに手をつけている肉の山は彼女のマスター・藤丸立香であった。しばらく前に体重330kgを超えたが、最近はその肥満化もある程度成長を止めたようで、ある意味停滞期に近い状態となっている。
だがその身体における贅肉の量や肉感は健在で、既に着替えられた彼女の服はぴっちりと肌に密着しては袖部分が二の腕の肉に食い込んでいる。おまけに体表は汗なのかコーティングされたようにもっちりしながらもテカっており、肌のハリを感じさせる。
「んぶぅ…ごっくん、あぁマシュ、おはよぉ~、マシュも一緒に食べよぉ…はい、あ~ん♥️」
「では遠慮なく…!あ~むっ、むふぅ…おいひいれふ♥️先輩も、あ~ん♥️」
300kgを超えた超肥満体同士が朝の挨拶を交わすと、そのまま互いに食べ物を手に取り相手の口に運び、互いの胃袋を相手の手によって満たしていく。そんな異常な光景が広がっていたが、これは彼女たちにとって、そこまでおかしな事ではなくなっていた。一種のランダムイベントのようなたまにあること。互いの愛を深め合うにも大事な機会となっていた。
「ぶふぅ…うっ、げぶふぅぅぅ…♥️マシュのせいでおなかいっぱぁい♥️苦しいから撫でて…♥️」
「ふひゅぅ…ぐぷっ、私も、まんぷく、でふぅ…♥️先輩のせいでまた太ってしまうかもしれません♥️」
Lサイズのポテトだけでも10人分はあったはずの山を、朝とはいえ二人でものの数分の間に平らげる。脂肪で見違えるほど丸く膨らんだ彼女らの顔には笑みが浮かべられていた。
互いの腹肉を撫でながらもたまに揉み合う時間が暫く続く。
「ふぅ…先輩、昨日シャワー浴びましたか…?」
「ううん…げぷっ、一昨日なんとか浴びれたから昨日はやってないよ…?」
「で、でしたら今夜、その……♥️」
何の脈絡もなく切り出された入浴の話題から、なぜか会話を続けるなかで後輩の方が恥じらい始め、せり出してベッドの上に乗せられた自身の腹のうち、へその部分を手で隠していた。
「あぁいいよぉ…今日は一緒に洗い合いっこしよっか♥️ちょうど一人じゃ大変だったし」
「や、やった…♥️先輩のお身体、私がくまなく綺麗にしますね…むふぅ♥️」
ぐるるるるるぅ…
立香の機転もあって入浴の約束を交わしたばかりの二人の間に轟音が走る。聞き馴染みのある音だった。
「ま、マシュ…?」
「実は…まだ食べたりなくて……食堂でパフェ食べませんか、一番おっきいのを…♥️」
先ほど芋を食べたばかりの胃袋が、凶悪なまでに次の食事を早々に求める。もう普通の食事量で満足できるはずのない領域にまでその身体は太るのに適応していた。
ズシンッ…!ズシンッ…!ノソッ…ノソッ…
並び歩く二つの巨躯がその身体だけで廊下の幅員を占拠する。二人の間を通るスペースはその廊下には残されていなかった。
どちらかが一歩進む度に床が微震動する。決して早くない足取りのため、数秒に一回の揺れである。
「ぜぇ…!ぶふぅ、ふぅ、息がっ…きれちゃう…ふひぅ…前より、キツいかも…!ぶふぅ…!」
「私も…こんなにっ…ぐるじいなんて…!ふぅ…もう少し、ですよ…!」
立香とマシュ、二人の周りだけ重力が10倍にでもなっているのかと思わせるほど、酸欠間際の様子で汗だくになりながら彼女たちは食堂へ向かっていた。
痩せていた頃は簡単に行っていた動作がこんなに難しいものになるなんて、そうマシュを一時的に考えさせる。
だが食堂に着くとそんな考えも吹き飛んでしまった。
「ぶひぅ…!やっど、ついだぁ…ふぅ…。ブーディカぁ…ラーメン大盛、替え玉あるだけドンドン持ってきてぇ…♥️ぶふぅ…」
「はふぅ…ぜぇ…!私も先輩と同じで…あとライス大盛、背脂とニンニクもできるだけ沢山…じゅるっ…お願いしますぅ♥️」
常連と化した肉の山二つからの注文に厨房の奥から「はいよ」という返事だけ返ってくる。異常も続いてしまえばそれが正常ということになるのか。
ズシンッガタッ、ズシッゴトンッ
「ふぅ…食堂も、通路が狭くて…ぜぇ、ぶふぅ…!お尻がテーブルに当たっちゃうね…ふぅ…」
「お腹で足元が、見えないので…ぶひぅ…気をつけないと、ですね…」
注文を済ませた二人が飲食スペースに入ると、その通路に対して大きすぎる身体が設置されているテーブルや椅子にぶつかってしまい、尻や腹でテーブル等のレイアウトをめちゃくちゃにしてしまう。
ブルドーザーが住宅の密集地に侵入しているようなものだ。
膨らみ、前方へ突き出た巨大な腹肉は巨乳同様にマシュと立香の足元への視界を遮っており、物にぶつからないように心がけても、肥大化した自身の身体のサイズ感に不慣れなため注意が意味を成していなかった。
ガタガタッ…ズシンッ!!どぷんっ!!バキッ!
「ぜぇ…ぶふぅ!やっど、座れたぁ…、食堂に行くだけで一苦労…!椅子も二つじゃ足りないかもぉ♥️」
「はふぅ…早く食べたいですね、先輩♥️私も最近、お尻がおっきくなってしまって…♥️お肉が沢山ついてる気がしますぅ♥️」
「ふふぅ、マシュはすっごく太ったからねぇ♥️服だってもうピチピチじゃん…!」
「いいんですこれで…♥️キツくなるほど、太ったのが感じられるので♥️」
金属製の椅子二つを尻の下に敷きながら、なお横から尻肉を溢れ出させている二人の肥満化は停滞期はあってもまだ止まりそうにない。
立香の服装も腹部全開で、サイズの合っていない小さい制服をなんとか無理やり来ているのもあって上半身は下乳までしか隠せておらず、全身のほとんどの贅肉を顕にしている。無論、タイツはたった少し歩いただけだというのに、内からの肉圧と肉同士のぶつかりによる摩擦で既に数ヶ所伝線していた。
そしてそれはマシュも同様であり、ブクブクに脂肪が付き品やかさを喪失した極太の脚は立香以上に太く、下半身太りが目立っている。だが着ている服は痩せていた頃のものをいまだに無理やり着ているだけあって、先輩よりも肌の露出は激しい。
本来スカートほどの長さまであるワンピースでさえ、300kgオーバーの規格外なド級肥満ボディが身に付ければ、下乳を隠しきれないほどに短く、小さな衣服へと変貌していた。
「…お、お待たせ…相変わらずの感じだね、あはは…」
合わせて600kgのタッグを前に、顔が埋まりそうなサイズの特大どんぶりでラーメンを運んできたブーディカもいつもの苦笑いを浮かべる。料理の量には慣れても、カルデア屈指のおデブ二人の迫力には未だに慣れないようだ。
「おぉ…!ありがとうブーディカぁ…♥️おいしそぉ♥️いただきまぁ…じゅるるるるるる!うぼっ、うんまっ♥️もうっ、とまらなひ!!んぐっ、じゅぼぼぼぼ!!」
「わ、私も…!いただきますっ!あむっ、じゅるるるるるる!んふぅ、じゅるるるる!んぶぅ、こんなっ、もっと、太っちゃいますぅ♥️いくらでもっ、食べられそうでぇ♥️あむっ、じゅぼぼぼぼ!!げぷっ、ごっくん!」
ミシッ、ギシギシッ!
着丼とほぼ同時にロケットスタートを決めて麺をすすり出す。肉で膨らんだ二人のパンパンな丸顔に汗が流れ始めるが、違和感もそんなことも気にも止めない。
「ぶふぅ…替え玉いっちゃお…♥️ふぅ…おいしそっ…♥️じゅるるるるるる!」
「麺もご飯も絶品でっ…げぷっ♥️まだまだ食べられそうですぅ…♥️」
バキッ!ギギギギギ…
「んぶぅ?マシュ、なんか変な音、しない…?むぐっ、ごっくん」
「気のせいでふよぉ!そんなわけ……」
麺を滝のように自身の胃袋へ流し込み腹を重くしていく二人だが、ふと手を止めた拍子に何かの息耐えそうな断末魔を聞く。
だが、深く気に留めようとはしない。今まで平気だったのだから今日も問題ないはず…。
そう思っていたマシュの視界が一瞬にして揺れた。
バギッ!!!ガコン!!!ズシィィィン!!!
「うぶっ!?」
「ん!?…ま、マシュ!?」
立香が振り向いた時には正面にいた人物は消え、強靭な椅子の脚が無惨にも折れて、床には相方が握っていた箸と椅子の脚、そしてピンク髪の肉団子のような身体が横たわっていた。
「ぶふぅ…あ、あれっ…椅子が、壊れて……んぐぅ、ぶはぁ!
起き上がれ、ません…!せ、先輩、起こして、くださ…げぷぅぅぅ…!
す、すみません…げぶふぅぅぅ…ふひゅぅ…」
横たわったその肉山は自力で起き上がろうにも筋力が足らず、上半身を起こすことも寝返りをうつことをできない。
太りすぎた身体はもはや外部の助けなしには起立することも難しくなっていた。
「ま、マシュ…!今手を貸すから…んぐっ、ぐぐぐぅ…!あれっ…お腹が邪魔で…手が、届かない…!な、なんで…!…わ、私たち太りすぎた…!?げぶふぅぅぅ…」
盛大なげっぷを漏らしながらマシュになんとか駆け寄り、手を伸ばそうとするも、2m50cm超えの立香の巨二段腹が行く手を遮る。普段床に落ちたものを拾えないほど太っていたが、よもや床に倒れた後輩の手を掴むにも邪魔なほど、全身に脂肪が蓄積し筋肉を奪い、惰性を育んでいたとは。
「先輩…!げぷっ、もうすこしでっ、届くかと…!」
「んぶふぅ…マシュ、あとちょっと手、伸ばしてぇ…」
一ミリも距離が縮まらないおデブ二人の手の伸ばし合いが暫く続く。ただただ二人のか細い筋肉が刺激され、全身から球状の汗が吹き出るだけだった。
「やれやれ、立香ちゃん、マシュ。そろそろ痩せる気にはなったかな?…その身体じゃあ、色々大変だと思うけど?」
背後から語りかけるのは聞き慣れた美声。だがその声色には呆れと若干の怒りが含まれており、それを察知したマシュと立香は恐る恐るその声の主の方へ視線をやる。
「「ダヴィンチちゃん!?」」
「やあ、どうだい調子は?二人とも、かーなーり顔を見ないうちに随っ分、栄養を蓄えたみたいだけどぉ…?」
「あ、あはは…これは…」
「うぅ…すみません、助けては……」
体格差数倍はあるもののその俊敏さや筋肉量すらダヴィンチの方が上なのは確からしい。難なくマシュのむちむちの手を取り、サーヴァント特有の筋力で300kgボディを起き上がらせる。
だが、その後に待っていたのは楽園や食のパーティータイムなどではない。
それから半日、激太りを遂げた二名の人物、マスター・藤丸立香とその専属英霊・マシュ・キリエライトはダヴィンチのラボでこってりと叱られた挙げ句、強制監視下における筋肉自慢サーヴァントたちのキツ~いトレーニングの受講(刑罰)を余儀なくされたとか。
(おわり…?)
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マシュ・キリエライト
Height:158.2cm → 158.3cm → 159.6cm
Weight:46.1kg → 51.9kg → 174.3kg → 306.9kg
B:89.2 → 171.3 → 231.7
W:60.4 → 183.9 → 269.9
H:89.1 → 180.8 → 262.5
【リマインド】
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