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「じゃあ先輩、動画撮るんでお洋服脱いでください❤︎」 「っ、ぁ、ぁ……ッ」  口をもごもごと動かし、俺は身の上の惨状をなんとか咀嚼しようと試みる。それももう何度目だろう。納得したくない現実が口の中で空気と重苦しく混じり合い、やはり喉につかえて飲み下せない。理解を心が拒んでいた。  唾液がすっかり干からびているから、言葉を音にすることも困難だ。万が一、状況を打開する見事な弁明を思いついたとしても、伝えるための手段が物理的に取り上げられている。  この失恋が絶対に覆らない決定事項だと俺に知らしめるために、何か大きな力がはたらいているとしか思えなかった。 「ん〜? もう一回言ってあげないとわかんないです? 早く脱いでください、まゆの新しい恋奴隷さん❤︎」 「っ、ぁッ……」  『先輩と後輩』の関係はたった今崩れ去った。『恋奴隷とご主人様』——それが俺と彼女の新しい関係。  二個下の後輩は俺を恋人ではなく、恋奴隷にすることを選んだのだ。その事実を噛みしめると、血液がまるで氷水に差し替えられたような心地になった。手足はかじかんでいて感覚がないのに、今にもひしゃげそうな心臓だけがなぜだか熱くてたまらない。  告白を成功させれば恋人に、告白を失敗すれば恋奴隷になる。『惚れたほうが負け』を体現する、誰でも知っている恋愛の常識。恋奴隷は身の程知らずに抱いてしまった恋心の代償として、自分を惚れさせた相手にしばらくの間隷属しなければならない。一般的に恋愛のいろはを学ぶ社会勉強と見做されている慣習だが、その実態は様々らしい。  ただひとつ分かるのは、彼女の抱く俺への認識が既に先輩から奴隷へ完全に切り替わっていること。その移ろい変わりはあまりになめらかで、葛藤すら抱いていなかったように見える。最悪の可能性が頭をよぎる。  ——まゆちゃんは、俺が告白してくることが分かっていて、はじめから告白を断ることを心に決めていたのではないだろうか。  いや、いや。そんなわけない。だってあの気配り上手なまゆちゃんが、人の恋愛感情をあらかじめ踏みにじるような想定を決め込んでいるわけがない。女子校出身のまゆちゃんは異性からの突然の告白に戸惑ってしまったのだろう。それでモラルに従って契約の証を作っておくために、奴隷を想起させるような格好を……。  辻褄は合っていない。自分がこれ以上傷つかないで済む捏造を積み上げているだけだ。本当は薄々感づいているから。思いの丈を伝えた瞬間の、あの『まんまと罠にかかった❤︎』と言わんばかりの笑みに垣間見てしまった。  ミスキャンパスを二連覇する容姿を持ちながら、一向に浮いた話がないのも。恥ずかしがり屋なのに、やたらと身体のラインが浮き出る服を好んで着用していることも。男性に不慣れだと語る一方で、俺にはやたらと距離感が近くてボディタッチが多いのも。  全身を怖気で震わせた恋奴隷を前に、まゆちゃんは長い黒髪をかきあげた。形の良い耳には高級ジュエリーが瞬いている。先月俺が誕生日に贈ったイヤリングよりも、ずっとずっとまばゆいものが。人差し指の動きだけで、身の程を思い知らされたような気がした。  薄っすらと弧を描いた唇に手の甲をあてて笑う姿は、育ちの良さがありありと滲んでいる。まるで開花の時を心待ちにする春先の蕾を思わせる。だが、そんなあたたかな笑みには似つかわしくない冷ややかな言葉で、まゆちゃんは俺を射貫いた。   「……さっさと脱げ❤︎」  電気ショックに等しい衝撃だった。身体の表面をぶわっと鳥肌が覆い尽くし、心臓の鼓動がかつてないほど忙しなくなってゆく。今にも息の根が止まるかと思った。  後輩の女の子からの言葉が命令の形を取る。それだけで鈴の音を転がすような声が、まるで鉛のような重たさを伴って俺の中に染み込んだのだ。  それは出来の悪い奴隷に無理やり現実を呑み込ませる意図を持って吐きかけられた、気付けの一喝。戸惑いや躊躇いなどの不純物は一滴たりとも含まれていない。爛々と光るダイヤモンドのようにまゆちゃんが男たちからの好意を糧に磨き抜かれたご主人様であることが、この堂々たる一言の威厳に集約されていた。 「す、すみませんっ……すぐ脱ぎますっ……」  年下の恋愛強者の威容にあてられて、俺はすっかり萎縮した。口から出る言葉遣いは自然と敬語に改まり、ふるえる手で衣服に手をかける。顔面が熱くてたまらないが、羞恥心を気にしている場合ではない。    今や恋愛遍歴はその人間の社会的な価値をはかる、物差しの役割を果たしている。例えば、昨今は就職の面接で『好意を寄せる相手を見事射止めて恋人にしたエピソード』や『これまでに召し抱えた恋奴隷の人数』などが大きなアピールポイントになる。つまりこの恋奴隷契約は、目下の者が目上の者に敬意を払うのと同じように、非常に強固で揺るぎない人間関係の力場を形成するものだ。  ご主人様への反逆は、社会的な評価を著しく損なう行動にあたる。その相手がついさっきまで随分と目にかけていた年下の女の子であっても、ご主人様の言うことは絶対。風評がたてば、最悪、就職に響く可能性だって十分にありえてしまう。  『振られる』とは即ち、自らの首に繋がった人生の手綱を、一時的とはいえ他人に明け渡すことを意味する。今俺のリードを握っているのは、つい今しがたまで人間だった先輩に躊躇いなく脱衣を命令した女の子だ。もしかしたら、俺は取り返しのつかない相手にリードを渡してしまったのかもしれない。早鐘を打つ心臓がやかましくてたまらない。  いつ背後の廊下を人が通るのか気が気でないまま、衣服を脱ぎ捨ててゆく。人間のみが身につけられる文明の証、それが衣類だ。そして恋奴隷は、交際するに値しないと拒絶され、恋『人』になりそこなった存在である。  人権を一枚、また一枚と自分の手で取り外しているような錯覚を覚える。あとは下着のみを残すだけなのだが、そこで手が止まった。  自衛本能が警告を鳴らす。この布を一枚取りされば、俺のちっぽけなプライドはすり潰される羽目になる、と。オスとしての矜持を再起不可能なほどにぐちゃぐちゃに踏み躙られてしまう。そんな未来予知が頭をよぎった。 「上手に脱ぎ脱ぎできてえらいですね〜先輩❤︎ ……でもぉ、自分の立場をまだちゃんと理解できてないのかな〜?」  最後の砦を前に踏ん切りのつかない俺に、媚を孕んだ声が投げかけられる。その甘ったるい声色に、これまでいったい何度庇護欲をくすぐられたことか。だが清楚純粋な後輩の中に怜悧なご主人様としての側面を垣間見た今、恐ろしさの潜む猫なで声に背筋が凍る思いだ。年上のオスを嘲り笑う本心がありありと透けて聞こえる。  ——また、脅してあげなきゃ分からない? 全部脱げ。  彼女は間違いなく、目だけでそう言ったのだ。声帯がふるえなかったというだけで。 「あぁ、やっぱり下着は膝まででいいですよ。半脱ぎのほうが無様なので……❤︎」 「っ、はいっ」  衣服はどうしようか逡巡したが、床に置いた。部屋の真ん中に置かれたテーブルには、まゆちゃんの鞄が載っている。同じ場所に置いては不機嫌にさせてしまうかもしれない。  咄嗟にそう考えて、俺は息を呑んだ。失恋直後だというのに、俺の思考は自然と年下の女の子のご機嫌を伺う方向に走ったのである。  しかし、それも仕方がないことなのかもしれない。こちらを見つめる大きな瞳は、自分に自信のある人間特有の活き活きした輝きに満ちている。すっきりと通った鼻梁の下では、薄紅をひいたリップが控えめな半月に少女の可憐さと女の艶かしさを同時に含ませていた。  巧妙に設計された精緻な美しさを前にして、改めて思い知らされる。この美貌を前に、男性経験の乏しいオスなどまともに太刀打ちできるはずがなかったのだ。  立ったまま下着に指をかけ、体を折って膝の下まで下ろす。自然と頭まで下げるような姿勢となる。まるでお見苦しいものをお見せして申し訳ありません、とでも言わされているような気がした。 「ぷっ……ふふっ❤︎」  頭を上げていくと、まぎれもない嘲笑が聞こえた。全身が強張る。それが俺のまろび出した下半身に対する反応であることは明らかだった。  おそるおそる顔を上げてゆく。案の定、こらえきれないと言わんばかりに、まゆちゃんは肩を震わせていた。普段は口元を覆い隠しているはずの手はスマホのカメラを構えており、しきりに小気味好いシャッター音を鳴らし続けている。  ほんのり色づいた花の蕾は、わずかにせせら笑いが加わって——ぞっとするほど美しい毒花がほころんでいた。 「ちっちゃ〜い……❤︎ うわ、皮かぶってるし❤︎」 「う、ぁ、ぁッ……」  歯に絹着せぬ生々しいコメントに、頭の中が真っ白になった。最初に感じたのは身を焼くような羞恥心だ。オスの魅力の象徴ともいえるペニスに『短小包茎』の烙印を押される。それはプライドに直接、焼き鏝を押し当てられているに等しい。だが痛みは身を焦がすような感覚だけに留まらない。  もうひとつは、ズキズキした胸の痛みだ。これには馴染みがある。俺はただの一回も異性との交際を経験したことがない。もちろん、性交渉だって、女性の生の裸を見たことだってない。胸の奥に突き刺さった密かな劣等感の棘。その棘の底を金槌で思いきり殴られて、引き抜けない深さまで食い込んだのがわかった。 「こんなに短いのってあるんだ〜❤︎ 普通よりずっと小さい……幼稚園児のおちんちんじゃないですか〜❤︎ あーぁ、ほんと振ってよかった……❤︎」    少なくとも『どのくらいが普通なのか』おおよそあたりがつけられるほど、まゆちゃんはオスのペニスを知っているのだ。自分とは比較しようもない、圧倒的な経験の差が滲み出ている。今にもこの場から逃げ出したくて、たまらない。 「奴隷さん、気をつけ〜❤︎」  主人の命令に、反射的に身体が硬直する。目の前の少女が与えようと思えば、俺には社会的な死が与えられてしまう。それに怯えて従順になることしかできない自分が、殊更に情けない。 「じゃあそのびよんびよんに伸びた包皮の先っちょ、自分で摘んでてくださいね〜❤︎ はい、びよ〜ん❤︎」  おどけたような掛け声は『合図に合わせてつまんで伸ばせ❤︎』の意味だ。俺は言われるがまま包皮に覆われたペニスの皮の部分をちょこんと摘み、持ち上げるようにして引っ張る。みにょーんと包皮だけがゴムのように伸びたシルエットはひどく滑稽で、そのペニスがいかに甘えた射精癖をつけられているのかを雄弁に物語っている。  長さも太さも大したことがないというのは、なんとなく理解しているつもりだったが、それでも女性に指摘される衝撃は凄まじい。もはやそのペニスを成人男性のものだと唯一証明してくれるのは、鬱蒼とたくわえた陰毛くらいなものだ。  だから高級ブランドのポーチから、到底女性の私物とは思えないものが取り出された時には、目を疑い——辱めの本番はこれからなのだと知った。 「トリマーあてるんで動かないでくださいねー?」 ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ 「撮影再開しますよ〜❤︎」  ゆったりとソファに腰掛けながら、まゆちゃんはスマホを構える。恋奴隷契約を反故にさせないために、担保を形あるものとして残すのだ。これから一ヶ月の間、ご主人様監視のもと、奴隷の自由恋愛は禁止され、さらには性欲に関しての制限もかけられるのが原則だ。期間中はご主人様への奉仕を徹底させるために、第三者に見られては困る内容にするのが望ましいとされている。 「もー、先輩? そんなにちんちんびよびよ引っ張ったら見えなくなっちゃうじゃないですか〜❤︎」  慌てて引っ張る方向を横にずらすと、チクチクした感触がペニスをくすぐった。つい数分前まで黒々と生い茂っていた芝生は、見るも無残に刈り込まれてしまっていた。恥骨付近の陰毛はほとんどなくなってしまって、足元の床には縮毛の塊が散らばっている。剃刀に比べて剃り跡が荒いトリマーでは、十分に毛根近くから毛を断つことはできず、不細工に残った黒い点のような剃り跡がペニスに擦れて痒みを生んでいた。  さらに、痒みの原因はもうひとつ。直接刃をあてたわけではないものの、地肌すれすれをトリマーが走るのだ。多少なりとも地肌にダメージが入る。軽い炎症反応でやや赤みがかり、刺激に対して弱くなってしまうのだ。  汗などはもちろん、油分を含んだ有機溶剤など、特に。 『まゆ様の恋奴隷❤︎』 『身のほど知らずのつるつるちんぽ❤︎』 『え〜ん❤︎ 後輩に振られちゃいましたぁ〜❤︎』  下腹部と恥骨上部の間。そこは失恋とペニスとをはやしたてる落書き用のキャンパスと化していた。女の子特有の角のない丸文字は、人をおちょくった雰囲気がありありと滲んでいる。失恋したてのペニスが、みっともない自己紹介をさせられているような吹き出しだ。見るものの嘲笑を買い、施された側の尊厳を損なわせる、烙印にも等しい。  手慣れた手つきで芝生を刈り尽くしたまゆちゃんは、邪魔にならないよう俺にペニスを摘ませながら、この生き恥を文字にした装飾を施した。くすくす笑いを押し殺した後輩の手で、ペニスをどんどん無様に加工されてゆく羞恥心で、俺は頭がどうにかなりそうだった。 「自由恋愛の禁止と、射精は私が許可した時だけです。 言いつけ守らなかったら、ゼミのグループとSNSにこれ流しますけど……お利口さんな先輩はそんな真似しませんよね〜❤︎」  こんなもの人に見られたら一巻の終わりだ。周りからどんなレッテルを貼られるか、どれだけ多くの嘲笑や蔑視の目を向けられるか。考えただけで、卒倒してしまいそう。  この惨状から一刻も早く抜け出したい俺は、無条件で全てを受け入れると言わんばかりにコクコクと首肯する。こうしてことの重みを十分に理解できないまま、『射精はまゆちゃんの許可がいる』条件を、カメラの前で呑んでしまったのだ。 「ちゃーんと言うこと聞いて、いい子にしてたら消してあげますけど、まゆのご機嫌を上手に取れなかったら、あんまり相手してあげないかもです」  まゆちゃんはウエストを高く絞って、腰回りを目立たせる服装を好んでいる。幼稚園児の短い手でも背中で手を結べそうな、すっきりと細いくびれ。その引き締まった腰つきからは、対照的などっしりした大きな尻へと繋がっている。  奇跡的なコントラストが実現した女体だ。細っこい腰を両手でガッチリと掴み、思いっきりぐりぐりと腰を打ち付けたくなる尻。まさにオスの繁殖欲をかきたてる目的で拵えられたかのような、非常に扇情的なバランスを感じる。  これはあまりにも目の毒だ。今日のようなミニスカートの日なんかはただでさえ短い裾が、ハイウエストと盛り上がった尻肉に押し上げられて、太ももの際どいあたりをヒラヒラと踊っているのだから。 「おつらいんじゃないですか、先輩。お好きでしたもんね。こんなのとか……❤︎」  ニーソをまとった長い足が組み替わる。たったそれだけの動きで太もものほとんどがあらわになる。白くてむちむちした太もも同士は、やわらかそうにせめぎ合い、互いを押しつぶしあっていた。  深い谷間の一本線意識を奪われ、生唾が喉を下る。この足を好きにする妄想で、何度己を慰めたかわからない。少なくとも俺はまゆちゃんと話すようになってから、彼女以外の女の子で射精を済ませた記憶はない。  垂らした餌で弄ぶかのように、太ももに乗せた側の足がぷらぷらと揺れている。それが『足、見過ぎですよ』の合図だと気付いて、はっとした時にはもう呆れたような嘲笑の笑みがこちらを向いている。 「……下着は見えましたか、お利口さん?」  ——お前って、こんなので釣れちゃうんだ?  ——お前のこと、もう先輩だなんて思わないから。  ——ほら、ちんちん勃たせろ、恋奴隷❤︎  せせら笑いが股間に伝播し、ビキビキと血管が膨らむ。人差し指と親指で摘んだ拘束を弾くほどに勢いよく、俺のペニスは硬さを帯びた。侮蔑や嘲笑といった、倦厭されるべきもので勃起を漲らせた今、もう言い逃れはできない。 「ふぅん、先輩ってマゾだったんだ〜❤︎」  マゾ、という言葉に鳥肌が立つ。全身を覆うこのゾクゾクっとした感覚の名前は、興奮だ。俺は後輩に惨めな恋奴隷に堕とされ、苦しい気持ちを味わいながらも、愉悦を感じてしまっていた。 「勃ってもちっちゃいね。おもちゃみたい」 「う、ぁっ……」 「射精好き?」 「う、ぁ、す、好きですっ……」 「ちっちゃいくせに射精するのは好きなんだ?」 「す、みませんっ……」 「じゃあやって見せて? まゆね、先輩の惨めな失恋オナニーみたいな〜❤︎」  片想い相手の後輩から、射精のおねだり。字面にすれば生唾もののシチュエーションに聞こえる。だが、その実態は無様な射精映像を人質にするから今すぐ披露しろ、とご主人様からの仰せ。  恥を吹聴する落書きまみれにされた、剃毛済み包茎短小を、必死にゴシゴシ扱きあげろの意。オカズはもちろんたった今自分が振られたばかりの女の子。  最低の負け犬射精を強要されているというのに、心臓がばくばくと高鳴り、下半身に熱が送り込まれてゆく。まるで身の程知らずの恋心を精液とともに吐き捨てさせられることを喜んでいるかのように、ペニスは反り返る。  ビクンビクンと脈打つ男根は、子種を植え付けるより、恥をかかされることを喜びとしたのだ。手が勝手に勃起を握ると、まゆちゃんの嘲るような視線が突き刺さる。もう我慢ならないとばかりに、手が慌ただしく竿を上下に動かし始めた。 「えーと……●●年の▲月■日……新しい恋奴隷さんの契約記録です。とりあえずひん剥いてちんちんの毛全剃りしてから、オナニーさせてま〜す❤︎ 先輩ヅラしてても、こんな恥ずかしい格好させられてちんちん勃たせちゃうマゾでした〜❤︎」 「ふぅ、ふぐぅっ……」  同じような手口を何度か繰り返しているかのような口ぶりに、胸が締め付けられるようだった。思えば先ほどポーチからトリマーを取り出していたが、あんなもの普通の女学生が持ち歩くわけがないのだ。となれば、初めから俺の恋心に薄々感づいていて、その上で告白を断り、恋奴隷として剃毛させることを決めていたことになる。 「こなれてますね〜。うわぁ、普段から、まゆでオナニーしてそ〜……❤︎ したことある?」 「ぅ、ぁ、っぐ……」  保身のために返答を渋る出来の悪い奴隷に、ご主人様からの一喝がぴしゃりと鞭を打つ。 「早く答えろって❤︎ 顔写すぞ❤︎」 「ッ……! してますっ、いつもしてますっ」 「きんも❤︎ どんなこと考えてたの?」 「揺れる胸とかっ、お尻の下着のラインとか……」  今ならわかる。まゆちゃんはその優れた女体の持つメスの魅力を惜しみなく活用することがとても上手なのだ。ただでさえタイトな服を着ていることが多いのに、腕を後ろに組んで伸びをしたり、やや前屈みになって上目遣いを作ったり。あざとくて無防備な動作で、大きく前に突き出た胸をたっぷんたっぷん揺らしてみせるのだ。今も鷹揚に足を組み替えて、俺の視線を誘導しているのもそう。  そういうオスの目を惹きつける立ち居振る舞いを心がけていたのだと、今更ながらに気づかされる。俺みたいな哀れなオスをまんまと釣り上げるために。 「うわぁ、うわうわぁ……❤︎ ……ね、まゆの下着見たことあります? それでちんちんシコシコした?」  何度も頷きを返す。 「……何色でした?」 「っ、ピンクっ……」  肩の開いたゆるふわニットがほんの少しずれて、ブラのストラップが覗いていたことがある。冬場はどうしても体のシルエットが浮き上がるような服がないので、その日の夜は下着姿の全身像を妄想しつつ何度も精液を搾り出したことを覚えている。  それを語れば確実に馬鹿にされてしまうだろうから、俺は密かに胸を撫で下ろしたのだが、まゆちゃんはわざとらしくソプラノボイスをワントーン引き上げた。 「よかった〜❤︎ 童貞を釣るための見せる用のブラで〜❤︎ 本気の日のやつだったら、さすがに恥ずかしかったですよぅ❤︎」 「っ、ぁ、ぁっ……」 「そっかそっか〜❤︎ まゆのいかにもかわい〜い女の子下着覗き見ちゃったことが、そんなに嬉しかったんだ〜❤︎」  呼吸が浅く、手の動きが激しさを増す。オスを誑かすための下着を普段からつけていて、俺はまんまとそれをオカズに一人自分を慰めていたらしい。  だがよくよく思い直せば、事態はもっと屈辱的だ。まゆちゃんは『見られても良い』ではなく『見せる用の』と語った。それが示すところは——。 「まゆ、先輩にはブラチラしてあげた覚えなかったから、びっくりしちゃいましたよ〜❤︎ ごめんね、先輩がしょーもないオナニーしてたの、全然知らなかった〜❤︎ 一生懸命ちんちん扱いてたんですね〜❤︎ ぷっ、ふふっ、くくく……❤︎」  俺は偶然覗き見ただけで、まゆちゃんの意思で色仕掛けを施されたわけではない。引っ掛けるつもりもなかったのに、勝手に餌にかかって勝手に釣り上げられた間抜けなオス、それが俺。  他のオスにはたとえからかい半分でも下着のチラ見せをしてやって、勃起を弄んでいたのだろう。あるいはもっと過激に、直接そのデカ乳をオスの身体に押し当ててやったり、下着のラインがくっきり浮かんだ尻をくねくねと揺らしてみせたりしたのかもしれない。  遊び相手にすらみなされていなかった。悔しさと羨ましさが煮詰まって、金玉がぎゅちぎゅち収縮する。 「先輩って童貞ですよねぇ……❤︎」 「は、はいっ……」 「じゃ、女の子と付き合ったことは〜?」 「……な、いですっ……」 「今までに告白したことは?」 「こ、これがっ……はじめてです……っ」  言葉に詰まりながら女性遍歴を語る俺に、まゆちゃんは相槌を打たない。まるで分かりきった答えが返ってきているとでも言いたげな、淡々とした瞳をじっと向けている。俺が何も知らずにデレデレしていた愛嬌ある笑顔の下で、この怜悧な視線が俺というオスの価値を見極めていたのだろう。 「へ〜❤︎ ぜんぶまゆがはじめてなんだ〜❤︎ 勇気を振り絞って告白したのに、残念でしたね❤︎」  これっぽちも残念と思ってなさそうな、体裁上の慰め。顎をしゃくった見下しの視線は、おもちゃと揶揄されたペニスを捉えている。 「ま、先輩みたいな短小包茎のクソマゾさんでもまゆはちゃんと飼ってあげますよ〜❤︎ お情けのオカズもあげますし……ほら❤︎」  スマホを構えているのとは別の腕が、胸を下からほんの少し持ち上げてみせる。すると大きく前面に突き出した鞠型のシルエットが、左右へ広がるようにたわんだ。乳の重々しさが触らないでもわかるように、自重のみで潰れるところをやってみせたのだ。  その爆乳が片想い中の黒髪清楚な年下女の体にぶら下がっているせいで、万一バレた時のリスクを恐れて、しっかり凝視できた試しがなかった。後姿からはみ出る巨乳を指を咥えて眺めていたのは一度や二度ではない。  だが今はちがう。俺の視線を受け止めたうえで俺のオナニーを囃し立てるために、揺らされているのだ。生地の薄い春物に、女の細腕では抱えきれない爆乳が薄っすらとブラの刺繍を透かしている。 「たぷたぷたぷ〜❤︎ ふふっ。揺らしてあげると、わかりやすくシコシコ早くなりますね〜❤︎ ……で、揺らすのやめると……シコシコもゆっくりぃ❤︎ じゃ、次はあんよでも見てみよっか……❤︎」  胸を揺らさなくなったかと思えば、今度は長い脚が組み変わる。ハイソックスがぱつぱつに食い込んでいる太ももは、抵抗なく指が沈み込むにちがいない。俺の足よりも細くて長いはずなのに、なぜだか太ましさを感じてしまうのが全く腑に落ちない。 「下着見えるかな〜❤︎ 見えちゃうかな〜❤︎ いくよ〜? ……ぷ、ふふっ、くくく……❤︎ 年下のあんよ、夢中で目で追いかけちゃってさぁ、そんなにパンチラ見たいんだ……❤︎ あーぁ、なっさけな……❤︎」  内側でむちむちと太ももがせめぎ合うタイトなミニスカートは、足が組み変わるたびにその丈が上がるのに、ここからでは下着のチラ見えが全く起こらない。  触って確かめたいのに叶わない。めくりあげてほしいのにしてもらえない。足に弄ばれているようなもどかしさがチンポに募ってゆく。  正直に言って、もう限界だった。触れることのできない女体をただ目の前で見せびらかされ、小馬鹿にしきった嘲笑を浴びせられ、興奮は頂点まで高まっている。  もしあの心底見下したご主人様の声で『射精しろ』とでもどやしつけられれば、背筋がゾクゾクとふるえあがり、たちまち精液を撒き散らしてしまうと思った。 「そろそろ射精したい?」 「し、したいですっ……!」  自分の手で扱いているのだから好きにできるというのに、俺は許可をねだる。精液を無駄遣いさせられるに相応しい『射精への最後の一押しとなる屈辱』を体中が欲していた。  欲して、しまったのだ。どれほど恐ろしい性癖を与えられるかなど露ほども知らないで。 「一万円です❤︎」 「っ、は、えっ……?」 「お射精料は一万円です❤︎」  何を言われたのか理解できず、間抜けな声が出た。一拍遅れて、理解する。射精の許可が欲しければお金を払えと言われていることに、俺は混乱した。  これまでの人生で、何百回何千回とタダで済ませてきた自慰行為。それを済ませるのにお金が必要だなんて信じられないという強い気持ちが、屈辱を感じるよりも先に来てしまったのだ。  物分かりの悪い奴隷をおどけてからかうように、まゆちゃんは声を弾ませる。ただし、目の奥はこれっぽちも笑っていない。 「先輩ってお勉強はできるのに、頭足りない子ちゃんなんですね〜❤︎ ……例えばね、なんでカラオケってお金払わなくちゃいけないか知ってます?」  疑問に思ったこともない質問に頭の中が混乱する。それが商売だから、経営だからとありきたりな一般論しか浮かんでこない。だが間違いではないはずだ。  それなのに、まるで常識を知らないでいることを咎められているような罪悪感が、しきりに俺を追い立ててくる。 「歌手とか、動画投稿者とか。かたや歌ってお金を貰う人がいる一方で、歌うのにお金を払わなきゃいけない人がいるのはどうしてだと思います?」  正しいと思い込んではいけない悪辣な考えを刷り込まれようとしている。それだけは分かった。胸騒ぎのする焦りの正体はきっと、これ以上耳を傾けるなという本能からの警鐘なのだろう。  語り聞かされれば、俺はおそらくまゆちゃんに都合の良い事実を己の価値観として飲み込んでしまう。射精のためにご主人様へお金を払う正当性を感じてしまったが最後、俺はもう女の子を対等な存在だと思えなくなるのかもしれない。  おそろしさのあまり、扱く手の動きがだんだんと拙くなってきた。耳を塞ぐことはできなくても、オナニーのペースを落とすことで興奮から遠ざけようというせめてもの抵抗のつもりだった。  だがいくら手の動きを止めてみても、ペニスは正直だった。余った包皮の中から我慢汁をぽたぽたと床に垂らし、手の中でもどしそうに跳ねまわっている。  まるでご馳走を前にして涎を垂らす獣のようだ。牙という牙をご主人様に引っこ抜かれた、卑しいマゾ犬。 「ふっ……」  鼻で笑われた。いっぱしに男らしく見せるための陰毛を残らず削ぎ落とされ、取り返しのつかない性癖を刻印される間際になってのたうちまわっているチンポは、さぞかし往生際が悪く映ったに違いない。  股間をまろび出した時にすらけらけらと小馬鹿にして笑っていたというのに、今は生き汚く痙攣する死にかけの虫に向けるような瞳をしている  告白の拒絶に輪をかけて、俺は今度こそ——念入りに踏み潰されてしまうのだと理解した。 「騒音だからですよ。社会に要らないものを口から出してるんだから、迷惑料がかかるんです。目に見えないゴミで世間を汚してごめんなさ〜いってお金なんですよ、アレ」  胸が詰まる。息ができない。自分の肺が酸素を送るのをやめてしまったのだと思った。さっき命令口調を浴びせられた衝撃が電気ショックなら、これは体全体に万力をかけられるような圧殺だ。俺の根幹に横たわっている正常な人間の価値観が、まゆちゃんのローファーの底でぐりぐりと踏みつけられて軋みをあげている。 「ねぇ、マゾ。まゆの言いたいことわかるよね?」  言わんとしていることは、わかる。わかってしまっている。だからこその怖気だ。そしてそれは納得してしまったら最後、本当のおしまいを意味する。 「形のない声ですらそんな扱いなのに、ねぇ。告白の勝率が1パーセントでもあると思い上がって、暴走しちゃった短小包茎童貞マゾのねばっこ〜い精液なんか、まゆが欲しがると思います? 誰にも望まれてない射精はね、ゴミ捨てと同じなの」 「う、ぅぅぅ……っっ!」 「だから先輩は、『身の程知らずな片想いでまゆ様に不愉快な思いをさせてしまってごめんなさ〜い』『金玉の中で煮詰めたゴミを勝手に捨ててしまってごめんな〜い』って謝って、迷惑かけたお詫びにお金差し出さなきゃいけないの。……ねぇ、恋奴隷の負け犬マゾくん、わかるかな?」 「はいっ、わかっ、わかり、ますっ……」  おおよそ年下とは思えない威厳に気圧されて、俺は呆気なく首を縦に振ってしまった。まゆちゃんに言いつけられた正論が浸透するように、鳥肌が全身を覆ってゆく。  ゴシゴシゴシゴシゴシゴシッ——❤︎❤︎  ビクビクビクッ❤︎ ビクッ❤︎❤︎ ビクンッ❤︎  完膚なきまでに射精を貶められ、この上なく興奮してしまった俺は、なりふり構わずひたすらにチンポを扱きまくる。足をピンと伸ばして射精するのが癖になっているためその場で強く両足を踏ん張ると、自然と尻の穴に力がこもった。太ももの間で自分のチンポと金玉を圧迫しながらの、つま先立ちの無様な踏ん張りオナニー。  まゆちゃんは「うわ……」と声を漏らした。辱めを与えるために作ったわざとらしい媚び声ではなくて、本気で白けた表情をしていた。俺にお金を払わせることへのハードルが一気に下がったのか、オスを騙す甘い声すらもう作ってもらえない。 「で。射精料、一万円払う?」 「はらっ、はらいますっ」 「『払わせてください』でしょ? やり直し」 「おかっ、お金払わせてくださいぃっ」 「うん、いいよ。もらってあげる。……嬉しい?」 「うっ、うれしい、嬉しいですっ……」  嬉しいはずがない。それなのに、年下の女の子に都合よく搾取される惨めさが極まって、俺はただただ興奮した。まゆちゃんの言葉をおうむ返しにするたび、自分の本心が上書きされていくような感覚に犯される。 「ねぇ」  叱られると思った。歯噛みしながら見世物オナニーに励む姿を見咎められて、嬉しいならもっと嬉しそうな顔をしろ、と。カメラの画角に収まらないところで、無意味な無様を強いられるのだ、と。 「喜んで差し出してきたの、先輩ですよね?」  叱るというよりは諭すような話ぶりに、そうです、と即答できなかった。何の見返りも求めず、ただ自分の意思で何かを差し出す『貢ぎ行為』に、胸の中で強い抵抗感がくすぶっているからだ。時間と自由を犠牲に生成された、いわば生命活動の結晶とでも呼ぶべきもの、お金。それを『喜んで差し出す』など、できるはずが——。 「ちがうって❤︎」  そんな俺の考えを見透かし、思い込みをぴしゃりと正すがごとく、まゆちゃんは一喝した。蔑みの漂う雰囲気が一転、何度となく俺が見惚れた人懐っこい笑みへと変じる。  非モテの男子が好む、清楚で親しげな女の子の顔。オスをたらしこむのに長けた猫撫で声で、正論じみた辛辣が吐きつけられる。 「もう先輩ったら〜❤︎ お金より先に、私に大事な恋心を貢いじゃってるじゃないですか〜❤︎ なんで今更お金なんかでしぶってるんです〜? ほんとおバカさんでちゅね〜❤︎」 「ううぅっ……! はいっ、貢ぎましたっ、貢いでましたっ……❤︎」 「ですよね〜❤︎ まゆは全然ほしくなかったんですけど、くれるって言うから仕方なくもらってあげたんです❤︎ 恋奴隷契約なんて、振った側にもメリットなきゃやってられませんからね〜❤︎」 「うぅっ、まゆ様っ、まゆ様ぁっ……」  尊厳を辱められるのに呼応して、チンポを擦る手が一心不乱に加速してゆく。片思いをばっさりと切り捨てられる扱いすら興奮の燃料となり、鈴口の先から『びゅぷっ❤︎びゅぷっ❤︎』と発射される我慢汁。  このカウパーだって本当なら、好きな女の子に舐めとってもらったり、膣の中で漏れ出したりしたかったはずだ。せっかく勢いよく発射したのに、精子は含まれておらず、冷たい床に当たって次々と哀れに四散する。   「ね。イク瞬間に『びゅーっ……❤︎』って囁いてあげましょうか? 好きな子に『びゅーっ……❤︎』って囁いてもらえるお射精なんて、恋人だけの特権ですよ?」  そんなことを考えていたからこそ、俺は眉唾物の提案に馬鹿みたいに首を縦に振った。それがどういう意味を示すか、またしてもよく噛み砕かないまま。 「じゃ、はい。一万円。奴隷がご主人様に向かって、恋人ごっこおねだりするんだもん。当たり前でしょ? まゆにとってははした金だけど、立場をはっきりさせるためにちゃんと払わせるね?」 「うううぅぅっっ……❤︎ はいっ、ありがとうございまさっ、まゆ様っ、まゆ様ぁっ……❤︎」 「後にも先にも恋人気分を味わわせてあげるのは、これで最後です。まゆ、他の相手もしなくちゃだから忙しいんですよ〜❤︎」 「え、あ、あっ、ほかの、相手ってっ……」  予想外の角度からの衝撃に声が上ずった。手足から血の気が引き冷たくなってゆくというのに、心臓だけが熱く激しく暴れている。好きな女の子の周りに自分以外のオスの影をちらつかされただけで、俺は今すぐにでも泣き出してしまいそうだった。  そんな惨めったらしい姿を一秒でも長く映像に残そうとでもするかのように、まゆ様にはわざとらしくもったいつけて鞄の中を手探りする。やがてひとしきり笑われた後、引き抜かれた手には鍵束が握られていた。 「恋奴隷は先輩ひとりだけですけどぉ、まゆ、貢ぎマゾを多頭飼いしてるんです❤︎ ……あぁ、貢ぎマゾっていうのはね、恋奴隷期間が終わったあとも『まゆ様の苗床にしてください〜❤︎』ってちんちんの自由貢いじゃったマゾの中でも最底辺なんですよ〜❤︎」 「あ、あ、ぁ……❤︎」  ジャラジャラと揺れる鍵束には親指よりも短い鍵ばかり。その本数が何を示しているのか、それが何の鍵なのかは一目瞭然——まゆ様が苗床にしている、チンポの本数だ。 「貢ぎマゾは恋奴隷よりも下の扱いなので、先輩が今もう一万払って手に入れたまゆの囁きなんて、もう手が届かないんですよ〜❤︎ 下着だって見せてあげませんしぃ……あ、そういえば、お前にも見せてあげたことなかったね❤︎」 「ううぅぅッ……❤︎」  胸の中がわけのわからない感情のうねりに、埋め尽くされていく。  驚愕。崇拝。それから——嫉妬。  まゆ様にチンポの自由を貢いで、自分よりもなお見下されているオスがたくさんいる。その厳然たる事実にもどかしさを抱けたなら、どれだけ良かっただろう。自分以外のオスを侍らせないでほしいと独占欲が疼けば、まだ健全だったにちがいない。  しかしいちばんに去来した感情は、彼らへの羨ましさだ。俺よりも惨めな境遇に置かれ、恥辱に塗れたその身は一体どれほど背徳の汚泥を啜らせてもらっているのだろうか、と。怖いもの見たさと呼ぶには恐ろしすぎる好奇心が金玉の中で、精液とゴポゴポ交じり合う。 「お金貢いだのに貞操帯外してもらえないと、あいつら貞操帯をぴょこぴょこ〜❤︎って揺らして、『まゆ様〜❤︎ お射精させてください〜❤︎ 新しいマゾ芸覚えますから〜❤︎』って媚びてきて、もうそれがすぅっ…ごい笑えるんですよね〜❤︎」  恋奴隷に下されたオスの射精はまゆ様にとって無価値だが、オス自身にとっては何物にも代え難い価値がある。  だから自分で貢いだ射精の自由を買い戻すためにお金を払ってしまう。正真正銘、何もかもを差し出してしまう貢ぎマゾの悪癖が招いた惨状だ。 「恋奴隷くんはしないほうがいいですよ、お貢ぎなんて」  射精料で一万円。それから恋人ごっこのために今、もう一万円を支払う約束した。一人でだってできるオナニーに二万円、これだけでも俺にとっては価値観をすり潰されて得た破格の貢ぎ射精である。なのにそれをなかったことのように扱われている。馬鹿になった頭ではもう訳が分からない。  まゆ様は俺の財布を開きお札を二枚抜き取ると、指の間でひらひらさせてみせた。数多のオスを貢ぎマゾへと転落させてきた、見目麗しい勝ち組女子大生のご高説が始まる。 「射精するために一万、それから射精のための恋人ごっこにもう一万払いましたよね。払うっていうのがそもそも間違いなんです。だってこれ対価であって、貢ぎじゃないでしょ? ……でも、いいんですよ。先輩はただ恋愛に失敗しちゃっただけの恋奴隷。あの働きアリくんたちとは、まだちがうの」  一ヶ月経てばこの関係は解消される。人に戻れるのだ。しかしそれは裏を返せば、まゆ様の支配から外れてしまうことを意味する。好きな女の子に全面屈服する劣位の底を知らないで、ご主人様のもとを叩き出されるなんて—— 「ねぇ、先輩。お財布の中には、御誂え向きにもう一枚、お札入ってますよ……❤︎」  ——これより酷い仕打ちが、他にあるだろうか。 「み、貢ぎますっ、まゆ様にお貢ぎさせてくださいっ……!」  チンポの先をめちゃくちゃに擦りながら、俺は咆哮した。すぼめた指輪っかでカリ首の段差を小刻みに往復させ、硬く尖った乳首も痛いぐらいに引っ張りあげたので、廊下まで響くくらいの声量が無様に裏返った。  恥の上塗りをして恭順を示す俺に、まゆ様はスッとやわらかな垂れ目を細めると、お財布の中に残ったもう一枚の貢物を笑顔ですくい取ってくださった。 「はぁ…い。恋奴隷の貢ぎマゾ、捕獲完了〜❤︎」 「う、ぅ、ぅ、ぅぅ〜〜〜〜っっ……❤︎❤︎」 「ぷっ、ふ、くくくっ……❤︎ ……あーあ、やっぱマゾって頭おかしいんだな〜❤︎ じゃーさぁ、射精の瞬間に『びゅー……❤︎』って言ったげる約束だったけど、アレやめていい? そしたら合計二万円分、まゆにお貢ぎできることになりますよ❤︎」 「あ、あ、ぁ、ぁっ……❤︎ は、はいっ、おね、おねがいしますぅっ……!」 「うん、いいよ。今日は初めてだから、特別に射精も許してあげるね❤︎」 「ありがとうございますっ、うれしいですっ……!」  より惨めな気持ちになる答えを、俺はもう考えなしで口走るまでになっていた。射精の許可をいただいた、それだけでもう感無量だった。恋心も財布の中身も根こそぎ貢がせきった用済みの搾りカスには適当な射精を、そのぞんざいな扱いがかえって痺れるような倒錯感をもたらす。俺はもうどうしようもなく、まゆ様に都合の良い負けマゾにされてしまったのだ。  チンポの根元を締め上げている万力を緩めれば、たちまち尿道を内側から押し広げる強烈な圧迫感に襲われる。射精まできっと数秒にも満たない時間の中で俺は、まるで熟れた果実が果汁を滴らせて圧壊されるように、脳がひしゃげるイメージに苛まれて、決壊を迎えた。 「イキますぅっ、まゆ様っ、でますっ、でるでるでるっ——」 「お前みたいなマゾがまゆに片想いしてんじゃねーよ、身の程わきまえろば〜〜か……❤︎」  びゅるるるるるるっっっ❤︎❤︎  びゅるるっ❤︎ びゅぷっっ❤︎ びゅくぅッ❤︎  びゅーーーーっっ❤︎❤︎ びゅーーーーっっ❤︎❤︎  金玉の中の精液を根こそぎお目汚しに晒すために、跳ね回るチンポをゴシゴシと往復させる乱暴な射精をした。女の子様に拒絶された、迷惑な片想い精液を笑って蔑んでやってください。そんなふうに心の底からへりくだった負犬射精は、かつてまゆ様を想ってしたオナニーとは比べ物にならないくらいの気持ち良さだった。  俺はすっかりその瞬間の虜になってしまって、尿道の中の残り汁すら丹念に搾り出した。そして撮影終了を告げる軽快な電子音を合図に、膝からその場に崩れ落ちた。 「まだ終わってないですよ。床に散らばったそのきったない毛と、飛び散った精液綺麗にしてくださいね。まゆ、射精した後のオスが冷めた頭でマゾの後片付けしてる姿も惨めったらしくて、結構好きなんで。ほら、すっぽんぽんのまま、足元に這いつくばって雑用してください? そーそ、四つん這いお似合いですよ。……それから、改めて恋奴隷期間中は、自由恋愛の禁止とまゆの許可のない射精は禁止です」  四つん這いになったまま、上から降ってくる言葉に俺は逐一背中をビクビクさせた。取り返しのつかないものを植え付けられてしまったという得体の知れない恐怖が、今更になって押し寄せてきている。心が竦んでしまって、もう二度と立ち上がれる気がしなかった。 「先輩の金玉の中の臭くてきったな〜いゴミ、不法投棄しないでいる自信がないなら、優しい後輩が手伝ってあげてもいいですよ。……くすっ❤︎ もちろん、おちんちん管理代払ってくれるなら、ですけど」  しかしこの退廃的な屈辱が射精の快楽と結びついてしまった俺はもう、逃げられない。逃げるどころか、本物の奴隷畜生のように、ご主人様の足元にすり寄っていってしまうのだ。 「こう言ってあげたほうがわかるかな?」  よたよたと歩みを進め、まゆ様のおみ足の下でぺったりと上半身を床にひれ伏すと。 「貞操帯の鍵もまゆにお貢ぎしたいマゾ〜❤︎ その場でちんちん振ってごら〜ん❤︎」  高く掲げた尻を、大きく左右に振り揺らした。 《終》

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