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 VRゲームを遊ぶ夢を見た まず最初に「このゲームでは五体の感覚をほとんど用いないので手の感覚を消しますね」って言われて手が消えていく ゆるやかに手の認知があいまいになっていく

 次に舞台に放り出される 未来のディストピア社会 そこでは衣食住が完全に保証されていて,ごくわずかな労働,ごくわずかな上納金によって豊かな生活を営むことができてる

 ただし思想だけは強固に制限されてて「律せよ,服従せよ,不自由を受け入れよ」の三原則が掲げられていた ただ生活自体は豊かなので不自由って言うのは思想的な自由さと生活基盤の作られている世界からの脱却って意味だと思う


 そこでおれはわずかな上納金すらケチったのか,それともクーデターでも起こそうと思ったのか,売られたのか,思想犯罪を起こしたのか,理由はわからんけど,逮捕されて死刑になってしまうのだった。

 死刑になった人間は抵抗できないように両腕を切り落とされ,同じような罪を犯した人間と同様に何十人も何百人も並べられて,死刑台への道を歩かされる。ずーっと歩かされる。中にはまだ騒ぐ元気がある奴もいるし,それを咎める仕組みもなかったけど,歩くことだけは強制されていて,とにかくずっとまっすぐ歩かされる


 そのうちずーっと滑り台みたいな坂が並んでる開けた区画に出てきて,この坂を滑り落ちろ,それで終わりだと言われる

 反抗する精神がない奴はもうすぐにツイーッと落ちて行って終わりなんだけど,グズグズ騒ぐ奴は奥の方まで歩いて行って,最後は監査官みたいな奴に殴られて強制的に落っことされる,おれはその中間ぐらいのところで,フラッとして落ちた

 結構な距離を落ちたんだけど,最終的には人間がミチミチに詰まってる場所にポトッと落ちて,下にいる人間がグエッと声を出した,おれの上にも落ちてきたのでおれもグエッと声を出すことになった

 

 そのままずーっと放置されていた,1日か2日かわからんけど,どんどん人間は積み重ねられるので苦しいし,奥の方ではすでに死んでるんじゃないかとか思う肉体が臭くなり始めてて,こっからどうなるのか知らんけど早く楽にしてほしいと思った

 そしたら俺たちが放り捨てられている台がゆっくりとどこかに動き始めた,コンテナみたいなところに入っているようだった,俺はとにかくなんでもいいから早く楽にしてほしかった,人間がミチミチに詰まっていて何もできなくて苦しかったから


 移動中も上からはどんどんと人間が降ってきて,圧迫されていよいよ苦しくなってきた,徐々にわかってきたが俺の詰め込まれている台は檻のようだった

 檻はすごいスピードで動き始めて,開けた視界のところを通り始めた,ジェットコースターのようだった 高すぎるし逃げ道もなく,見世物のジェットコースターだった

 機械的なアナウンスが,犯罪者はこのように処分され,治安は守られることを促していた おれは圧迫されている胸のあたりが苦しくて,呼吸が楽になりたいのでベルトを外したいと思ったが,腕の感覚は最初になくなっているし,ベルトなんてつけてもいないのだった

 そのうち檻を運ぶジェットコースターは工場のような場所に移動し,わずかな隙間から見えるのは何やらガスを噴霧する機械と,できる限り人体を粉々にしようという思いで作られたであろう機械の数々だった。巨大な肉叩きハンマーとか,そういうのがあった。こうして犯罪者は豊かな生活のためにリサイクルされるのだなと思った。ソイレントグリーンだ,わかりやすい。


 圧迫された人体によって,すでにおれの体は血まみれになっていて不快だったのだが,どうせ頭を動かすくらいしかできないので,ただ事の成り行きを見守る以外のことはできないのであった,流れにそって噴き出されるガスを吸ったら痛みとかしんどみみたいなものがどうでもよくなって,一気に意識が失われ,たぶんこのまま寝ているうちに死ぬのだろうなと思った。意識を失うガスは人間の尊厳を最後まで残してくれる唯一の救いだっただろうと感じた。

 肉をたたくハンマーの音が遠くに聞こえていた。VRゲームのゴーグルは真っ暗な世界で,イヤホンは繰り返しこの世界のすばらしさ,完成されっぷりを称える声,不律,不服従,不自由の原則についてうたっていた。


 ここでおれは死を受け入れることができず,夢の中,しかもVRゲームの中であることを忘れて,パニックになった。

 そのうちスタッフだか知人だかが声をかけてくれたので,理性を取り戻し,ゴーグルを外した。腕の感覚はなくて,しばらく腕を動かそうとしても動かなかったり,腕が見えなかったりした。本当に腕がなくなってしまったのかと思って結構焦り,おれが「腕がなくなった」と大騒ぎしていると知人やらが集まってきて,ちゃんとあるぞと教えてくれた。腕は認知できた。びっくりした。隣の人も同じゲームを遊んだみたいだがびっくりしていた。


 そこで目が覚めた。両腕は普通にあったし,記憶は驚くほど鮮明だった。夢の中でVRゲームを遊ぶなんて入れ子構造,面倒くさいなと思ったけど,面白かったし,詳細に記録出来るくらいはっきりと覚えてるので書こうと思って,書いた。おわり。

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