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こんばんは、スタジオ真榊です。今日は先日投稿した「異世界転生アウラちゃん」の制作過程をできるだけ詳細に書き起こしたメイキング記事です。おかげ様で第1話は、いつか取ってみたいと思っていたPixivデイリーランキングでAI部門1位になりました。見てくださった方、いいねしてくださった方、どうもありがとうございました!


漫画テクニックについてはご存じの通り全くの素人なので、経験者の方からはお見苦しいTIPSになろうかと思いますが、素人なりになかなかレアな経験値をいろいろ詰めたと思いますので、どういう点に気を配って作ったか思い出しながら書いてみたいと思います。私と同様、AIきっかけで創作に関心を持った方には役に立つハウツーになるのではないかと思います。


この記事では基本的にCLIPSTUDIO PROを使った作り方を解説しています。クリスタ未経験者向けの基礎的な内容はこちらの全3回の記事にまとめてありますので、こちらもご参照ください。

AIイラストのためのCLIP STUDIO超入門 【第一回】プランとペンタブ選び、初期設定、おすすめ素材まで

こんにちは、スタジオ真榊です。11月最初の企画は、画像編集ソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」(以下、単にクリスタと呼びます)とペンタブを使ったAIイラストの加筆修正について、複数回にわたって特集していきたいと思います。AIイラストの目や手、衣装などの破綻部分を加筆修正したり、完成後によりリッチに見えるよう...


目次

1.着想(モチーフ決め)

2.脚本~ネーム

   ー起承転結を4コマで考える

3.作画(コマ割り編)

4.作画(生成編)

   ーどうやって剣を握らせる?

5.作画(フキダシ・せりふ編)

6.作画(擬音編)

   ー手描き擬音の基礎的ルール

7.修正

8.追加ページ

9.おわりに



1.着想(モチーフ決め)

いつもの通り、まずはモチーフ決めから始めました。普段「即堕ち2コマ」系のツイッター漫画を作るときはもっと単純な着想で良いのですが、今回はちゃんとしたストーリーのある漫画なので、それなりに「何を・どんな順で・どう描くか」きちんと考えておかないと迷子になってしまうからです。


参考図書はおなじみ「マンガのマンガ」(かとうひろし・銀杏社)と、「読者は読ムナ(笑)」(藤田 和日郎 / 飯田 一史・小学館)の2冊です。


これまでも何度か紹介してきましたが、この2冊は全くのド素人が漫画の基礎を学ぶのにこれ以上ないテキストだったと思います。


「マンガのマンガ」は漫画の基本的文法を教えてくれる作画の教科書。「読者は読ムナ(笑)」は、現代のストーリー漫画神・藤田和日郎先生がマジのガチでご自身の言葉を使って漫画を描く心構えの初歩を説いてくださる聖典です。読者は藤田先生のところに弟子入りした新人アシスタントであるという体で、藤田先生と編集・武者さんが「漫画はイラストではないよ、止まって見える絵は漫画ではないよ」「リアリズムより漫画としての面白さを優先しなよ」「5W1Hは大丈夫?」「絵としての正しさではなく漫画としての正しさを追求しろ」「絵に情念を宿そう」「好きが個性」「コマの枠線とキャラクターの距離が重要」「連続する動きのどこをトリミングするかで表現ができるよ」ーーといった、素人にも理解できる「ごく初歩的でごく重要」な情報をみっちり教えてくれます。


まず着想において役に立ったのは、藤田先生のアドバイスの一つ「描きたいコマから逆算してストーリーを作る」です。これはよく考えると、「即堕ち2コマ」でずっとやってきたことなんですよね。だってあの2コマって、単なる「重要な説明コマ」と「もっとも魅せたい決めゴマ」の組み合わせじゃないですか。

この絵で言えば、「この主婦は普段なら絶対しないことを右のコマでしてくれているんだ」というギャップを活かすために、左のコマで必要な要素を説明していたわけです。つまり右が描きたいコマで、左が「逆算してできたストーリー部分」。これを基本にして脚本を考えることにしました。


今回はこれまで散発的に1枚絵を投稿していた「異世界転生アウラちゃん」を、ひとつの漫画としてリメイクするというのが大きなテーマ。

つまり、

・アウラが服従の魔法を破られてフリーレンに負ける(原作再現)

・しかし、実はフリーレンが「自害しろ」のあとにもう一言つけ加えていたことが明らかになる(if部分)

・気づくと現代日本の繁華街で、なぜか女子高校生の制服姿で立ち尽くしている自分に気づく(決めゴマ)

という大きな流れは既に確定していたわけです。御覧のとおり既にタイトルまで作ってあったので(笑)さほど流れに迷うことはなく、上の画像にうまくたどり着けるように逆算して各コマの内容を考えていくだけでした。


2.脚本~ネーム

ネームに取り掛かる前に、まず簡単な脚本を用意しました。それぞれのコマにおさまるべきセリフを中心に、どんなコマになるかをテキストで書いていくだけです。会社帰りの電車の中でなんとなくぽちぽちとスマホで打ったので、さほどの文章量ではありませんでした。


例えば第1話の内容をそのままメモアプリからコピペしますと…


・「アウラ、自害しろ」無表情フリーレン、背後に月、杖を持っている

・(そ、そんな馬鹿な…500年生きた大魔族の私が…?)驚愕するアウラ、ギャグ調

・「ありえない…」震える手で大剣を手に取る

・「この私がっ…!」黒背景フキダシだけ

・ザシュッ!(音だけ)「あ、そうだ」向こうを向いて立ち止まるフリーレン

・「お前、■■■■■よ」大ゴマ、つまらなそうな顔でこっちを見る、アップ

・(…あのとき、あいつは何て言ったんだっけ?)前のコマと同じフリーレンの顔、ぼやける

・(あ…消える… 500年の鍛錬も…魔力も…消えていく…)白い光に包まれるアウラ。変身バンクのような感じ

・パパーッ ザワザワ… 渋谷で目覚める 「!?」タイトルコール


これだけです。ツイッター(ツイッターです)に「ネーム5分、作画6時間」と書きましたが、これを書くのに帰りの電車の30分くらい掛かったので、正確には「脚本~ネーム35分」というところでしょうか。文字で書き留めているのはどんなアイデアを思い付いたか忘れないようにするためで、この時点で頭の中でネームも想像しています。5分というのは、頭の中のイメージをこのようにごく単純に描き起こすのにかかった時間です。

ネームの描き方はよくわからなかったので、とりあえずクリスタでA4用紙を縦横に四等分して(Shiftキーを押しながらで直線が引けます)、そこにざくざく書いていきました。何がどこにおさまると自然かだけ確認する作業なので、きれいに書く必要は全くありません。


※あとでフォロワーさんに、クリスタのアセットにネーム用のテンプレートがいろいろありますよ!と教えていただきました。


デジタルとアナログ両方試してみましたが、私は外出中の空き時間にぱぱっと書けると嬉しいので、ノートにボールペンで直書きしたほうが性に合っているみたいです。スマホ上で指で書くアプリも試しましたが、いまいちでした。


・起承転結を4コマで考える

4ページにしたのはたまたまで、足りなければあとで付け足すつもりでしたが、大きな流れとして起承転結を4コマのように考えていたというのはあります。


:原作のアウラ死亡シーン。できればちょっとだけギャグ調にはしたい

:ifシーン。死に際のアウラにフリーレンが捨て台詞を言う。最終話までの作品テーマになる大き目の「引き」

:転生シーン。アウラが500年の鍛錬が無為に終わったことを悔しがる

:「!?」決めゴマ。第1話はこれが面白いだけの漫画。


これを軸にして、説明が足りないところはコマを複数にして説明していくだけです。


この時点で考えていたこととしては、次のような感じ。


・「引き」の絵と「アップ」の絵を混ぜて緩急を作る(顔アップ、顔アップ、顔アップのようにしない)

・フリーレンは感情を見せない絶対的強者(神)として描く。

・アウラは感情移入対象として描く。かわいそう感・けなげ感・小物感を大事にする

・原作シーンのシリアスさを多少絵で緩和してあげる(ちょっとだけギャグ調の絵に)

・続きが気になるような大きい「引き」を作る

・各話で描きたい小テーマ(面白ポイント)と、大テーマ(全体で伝えたい感情)を区別して決めておく

・自分を含めた読者の中にあるキャラクターのイメージと尊厳を壊さない。「言いそう」「やりそう」が一番大事


難しかったのは「緩急を作る」で、剣を拾うコマを作ったのはそのためだったのですが、結果的にはうまく作れず失敗しています。「落ちていた剣を拾い上げる手のみ」の絵、AIで作るのめちゃくちゃ難しい!

あとは、「複数コマにわたるセリフ」というものをできるだけ多用したというのもポイントかもしれません。「アウラ、/ 自害しろ」とか、「ありえない… / この私がっ…!」というふうに、1つのセリフを前後で2コマに分けるということですね。簡単にできる工夫ですが、こうすると、私のような素人にも漫画のテンポが作りやすいのです。



3.作画(コマ割り編)

ネームができたので、あとはコマ割りをして、中に入れる画像をどんどん作っていくだけです。コマ割りはもはや一つの学問であって、「こうすればよい」ということを素人の私が申し上げるようなことは全くできないのですが、恥ずかしがっていても誰の参考にもならないので、「どうすべきか」ではなく「この漫画ではどうやったか」を書いておきます。


まずはクリスタで「新規作成」してキャンバスを作る際、「テンプレート」という欄がありますので、 こちらでイメージしたネームに近いものを選びました。私は2段か3段の「等分」を選んでから、自分で分割して調整するのがやりやすかったです。


等分されたコマ割りが出てきますので、オブジェクトツールで各コマの枠線あたりをクリックすると、このように選択されたコマ枠だけが白くなって、枠線を操作できるようになります。重要なのが、画面左のツールメニューにある「別のコマ枠を連動」という欄。


ここを「連動する」にしていると、このように1コマ目を下にびろーんと広げるだけで、2コマ目がその分縮んでくれます。


黄色い三角形は、「その方向へ拡大できるところまで拡大する」ためのボタン。コマ枠をキャンバスのふちまで拡大できるので、いわゆる「断ち切り」表現(ページの端まで絵が入るコマ表現)をするときに使えます。


こちらの「コマ枠カット」ツールを使えば、一つのコマ枠を複数に分割することができます。「コマフォルダー分割」と「枠線分割」の2種類があります。


分割したいコマの上で2点を選択すると、このように別々のコマになります。斜めにカットすることも可能です。


コマ枠はこのように、それぞれ別のフォルダーになっているのですが、カットするときに「枠線分割」ツールを行うと、フォルダーはそのままで枠線だけ分割することができ、「コマフォルダー分割」ツールを使うと、フォルダーごと2つに分けられる違いがあります。

コマフォルダー内におさめられたレイヤーは別のコマには表示されない仕組みですので、「コマフォルダー分割」と「枠線分割」の2種類を用途によって使い分けるとよいでしょう。


ちょっとした後悔ですが、第1話では断ち切りコマの存在を完全に忘れていまして…下の画像のように2コマ目と4コマ目を断ち切りにすると、画面が窮屈でなくなったのになと思います。

ついでに「枠線間の距離」についてもこの画像(▲)で説明しておきます。読む順を分かりやすくするために、横方向のコマ同士の距離は近く、縦方向のコマ同士の距離は遠くしているのが上の画像から伝わるかと思います。


もしこの距離を逆にすると、下の画像のように視線誘導がうまくいかず、読む順がいきなりわかりにくくなります。人は近いものに目をやりやすいからですね。


コマ割りは本当に芸術の世界なので偉そうなことは言えませんが、単純な設定方法は以上です。初心者のうちは2段か3段を基本に、魅せゴマとそうでない説明コマを分け、同じようなコマ内容が連続しないように気を付ければよいのかな…と思って作っていました。本当は始まりの1~2コマ目に5w1h(いつどこで誰がなぜどんなことをしているか)が分かる描写を入れる必要がありますが、この作品では二次創作ですので場面説明をすべて省いています。


4.作画(生成編)

さて、コマ割りがなんとなくできたら、あとはそこにおさまる画像を入れていくだけです。気を付けるべきは、画風が大きく変化しないよう、できるだけ一つのcheckpointとクォリティタグを使うこと。あとは美麗になりすぎると加筆がしにくく、またそもそもマンガに見えないので、「イラストとは別物」と割り切って大きくタッチを雑にすることも重要かなと思っています。


月須和さんの「Flat LoRA」を使うと、誰でも漫画向きの絵が出せるはずです。または、やっぱり漫画ですから、モノクロで生成するのも手ですね。AI漫画家ヒツジ先生の「白紙i2i法」(真っ白な画像をi2iしてモノクロ画像をプロンプト指示すると綺麗な線画が得られやすいテクニック)が非常に参考になります。私もいずれモノクロ漫画を勉強したいと思っていますが、それにはトーン貼りを覚える必要があり、まだ学習が足りていません…。


話を生成に戻しますと、例えば月を背負ったフリーレンなら、

こんな感じのプロンプトで、AnimagineXL3.1で生成していきます。


PP:1girl,frieren, sousou no frieren, night,holding staff,full moon,(white aura,floating hair,strong wind:1.3),expressionless,looking at viewer,half closed eyes,standing,arms at sides, long hair, grey hair, white hair, pointy ears, long sleeves, elf, green eyes, twintails, masterpiece, best quality, very aesthetic, absurdres, sketch,unfinished,graphite \(medium\)+LoRA


アニメに似すぎてつまらないのと、あまりシリアスすぎても笑えないこと、あとコマごとに角度やアップ度合いを大きく変えないと単調になってしまうので、結局上の画像はボツ。できるだけ伝えたい情報以外が混入しないよう、いろいろ考えながらコマ画像を作っていきました。


大事なのは、月の角度。ここを間違えると、アウラとの位置関係がおかしくなってしまいます。まあ、ここは誰でも状況を知っている原作シーンなのでさほど気にしなくても良いのですが…。


さきほども書いた通り、もし読者が未見のシーンだった場合は、アウラとフリーレンがどんな場所にどんな距離で向かい合っているのか、周囲には何があるのかが分かるような俯瞰のコマから始めないと本当はダメ。なんの前フリもなくいきなり佳境から入れるのは、二次創作のズルいところですね。


こちらは追い詰められたアウラちゃん。上の段の方が新しいのですが、できるだけギャグ調になるように工夫した痕跡がありますね。

上の段は「(wide-eyed:1.4),arms at side,shaded face,painful,open mouth,surprized,expressionless」といったプロンプトを使っています。


話は少し脱線しますが、アウラのキャラデザは「催眠+ハートマーク」をモチーフに、よく考えられて作られているんですよ。よく見るとおへその下にも小さなハートマークがあるし、髪の毛もピンクのハートの輪郭、服従の天秤にもハートマークがあるし、胸のぐるぐるは催眠のぐるぐるですよね。おへそ周りのマークはスパイダーマン衣装にちょっと似ているので、蜘蛛(蜘蛛の巣)かな?ツノもハートの逆向き意識なのでは?と、いろいろ想像しながら作っていました。


・どうやって剣を握らせる?

さて、ネーム通りにAIで作っていく中で一番難しかったのは、剣を握らせるシーンです。最初は地面から剣を拾うだけにしようかとしたのですが、やってみるとこれが本当に難しく、改変を余儀なくされました。


実際には次のような工程で作っています。


①DALLE3で剣を生成

まず、こういう小物や難しい構図を生成したいときはDALLE3の出番。プロンプトの利きがとても良いので、日本語でどんどん指示をしていきます。なんとなく指示をして、違っている部分を訂正していくのですが…


頑張っても「剣を持ち上げるグローブをはめた手だけ」の絵が全然うまく出せなかったので、とりあえずシンプルな剣だけを出すことに。


メイキング記事を書くつもりで作っていなかったので、このあと細かい各素材が散逸しているのですが(生成画像をいちいちローカル保存せず、Forgeやクリスタ、NAI間をコピペで渡らせているため)、AnimagineXL3.1でimage2imageして下図のような剣にしています。あまりリアルにしたくなかったので、画風はこれまたスケッチ風にしてあります。



②キャンバス内のちょうどいい位置に角度を合わせて調整

これも散逸しているので再現画像ですが、さきほど得られた剣の画像をキャンバス上の「剣があってほしい場所」に調整して画像を作ります。できたら、「画像を統合」してキャンバス全体をコピーし、Forgeのt2i画面でCN画面を開いてペースト。プリプロセッサ「canny」で縁取りを抽出するとこんな感じになるはずです。

剣を手に持ってほしいので、「束(つか)」の周辺を黒塗りしておきます。こうしないと宙に浮いてしまうからですね。画面右側の「Edit」画面を起動し、ブラシツールで塗って、左上の「Controlnetに送る」でOK。


③縁取りをconrolnet(canny)で維持して剣を持つアウラちゃんを生成

あとはこんな感じのPPで生成するだけです。

1girl,night sky,(holding sword:1.4),sword focus,clenched teeth,from side,sword on neck,shaded face,close up,painful,open mouth,surprized,expressionless,horns, pink hair, purple hair, blue eyes, multiple braids bare shoulders, black gloves, elbow gloves, navel, navel cutout, white skirt, red cloth, cleavage, masterpiece, best quality, very aesthetic, absurdres+LoRA

剣の位置は確定された状態で、アウラ様が余白に描かれるのですが、なかなか剣をうまく握るのは難しかった。「two handed」などを使って次の画像を得ました。


④インペイント&手修正

ほぼポーズは成功しているので、これをそのままNovelAIに持っていって手元や表情をV3インペイント。


あとはこのように加筆で仕上げています。目線は剣に行かせたかったのと、口元はもう少し小さく。涙がちょっとかわいそうすぎる感じだったので、ギャグ漫画調の「ちょび涙」に変更しています。


最終的にこんな感じに。コマ枠を断ち切りにして、あごをもっと上げていればよかったですね。でもまあ、こだわりすぎても完成しないので、見切りも大事です。


5.作画(フキダシ・せりふ編)

最後に文字入れです。文字の入れ方、フキダシの作り方はいろいろ変遷してきたのですが、デフォルトのフキダシは真ん丸すぎてちょっとカッコ悪いので…



「手描きフキダシ」を素材としてペタっと貼ってしまうか、



神絵師Gペンセットに入っている「神絵師フキダシペン」で描く方法が初心者的には良いかな、と思っています。



例えば手描きフキダシはダウンロード後、このようにフォルダを「フキダシ」の中に保存しておけばOK。右側の一覧から選んで、左のテキストの上にドラッグアンドドロップするだけで…


このように「入り抜き」が自然でかっこいいフキダシが作れます。もちろん、周囲のトグルを使って縦横無尽に大きさを調整したり、枠線の色や太さも調整できるので、かなりのセリフ描写がこの素材の使いまわしで作れてしまいます。


神絵師フキダシペンは形をもう少しこだわりたいときに。こんな感じでペンタブを使って囲っていけば…


画面左の「線の色・塗りの色」で指定したとおりに一発でフキダシができちゃいます。左上でつなげたところや、下の角ばったところが少し不自然ですが、枠線と同様にオブジェクトツールでクリックするとこのようにドットが出てくるので、ドラッグしたり右クリックで削除したりすれば調整可能です。


「フキダシしっぽ」ツールも便利です。このように、誰がしゃべっているのか分かりやすくする「しっぽ」が直感的操作で簡単に作れます。しっぽの幅・長さ・位置をちょうどよく調整しましょう。



場面によっては、フキダシしっぽをうまく使ってギャグっぽくすることもできます。楽しい!

この最終ページがキメゴマなので、いろいろオチらしくなるように工夫しました。「ネイル」もそうですし、ドラクエ風のフォントも個人的に気に入ってます。


これはフォントワークスの有償フォント「ドットゴシック 12 Std M」。mojimo-mangaを契約して使わせていただいています。他にも「ラグランパンチ」などアニメや漫画で見覚えのある素晴らしいフォントがたくさんあるので、本当に契約してよかった。



フォントは普通の話し言葉でも使い分けが重要なのですが、普通の話し方なら「源暎アンチック」を使い、大声を出すときは「源暎エムゴ」を使うようにしています。いずれも無料。フォント選びも作家性が出るところだと思うので、「あくまで初心者向けにはこれがいいかもね、知らんけど」程度に受け止めてください。




6.作画(擬音編)

次に、ドドド…とかバーン!といった「擬音」の書き入れ方について。これは本当に苦手なので解説も難しいです。なんとか身に着けたいと思い、「漫画のプロが全力で教える 描き文字の基本」という本も読んだのですが、いまいち「これだ!」という書き方が身についておりません…


とりあえずいまよくやっているのは、「お気軽文字ペンで白いふちどりを付けて適当に描く」「太くしたければ二度書き、三度書きして太くする」ということです。一回で線を引くのではなく、絵を描くように肉付けして太らせていく描き方が良いようです。



硬質性に着目して、硬い音なら鋭角に、やわい音なら丸く描くのがコツなのかなとは思っているのですが、素人っぽさが全然抜けないんですよね。描き文字はさほど時間がかからないわりに、ここまでの作業で一番素人っぽさを抜くのが難しいと感じています。

ちなみに、擬音を上の画像のようにコマからはみださせると迫力が出て恰好よいです。はみ出させるには、擬音を描きたいレイヤーをコマ枠フォルダの外に作るだけ。コマ枠は飛び出せるときは全部飛び出させたほうがよいくらいの勢いで、「枠線は破るもの」という尼子騒兵衛先生の教えを胸に、大胆にはみださせてます。


私の読んだ本には、いくつか手描き文字の手法が紹介されていまして、例えば「ミリペン」を使ってこのように枠線を書いてですね、


バケツで塗りつぶせ…というのがあったのですが、あんまりかっこよくならない…


枠線を付けて影をつけて…とかやってみましたが、「ヒロアカかこれは!?」というアメコミ感あふれる感じに。ビジョンなく適当にやるとこうなってしまうので、本当に擬音は難しいです。奥深い。


素人が感覚でやっても手間だけ掛かって失敗するので、さまざまな漫画をぱらぱらめくって、お手本のとおりにやって覚えていくくらいしか道はなさそうです。


・手描き擬音の基礎的ルール

とはいえ、いろいろ試しているうちになんとなく分かってきたのは、「漫画擬音はルール分析とペン選び」が重要ということ。つまり、「音の近さデカさ硬質感/震えと潤いの有無」でペンと描き方をいくつかのパターンから選んで、「音の動静/移動で描く場所が決まる」ということみたいです。この対応表から外れたり、字体がフォント風になりすぎたりすると変に見えるということのようです。(余談ですが、最近『ハンチョウ』の手描き文字がすごく達筆でフォント風になりつつあって、見慣れるまで不自然に見えていたんですよね)


既知の基本ルールとしては、以下のようなものがあるようです。


・「でかい音/近い音」はでかく、「小さい音/遠い音」は小さく描く

・フォントのように均等に描かず、位置も大きさもできるだけ崩したほうがそれらしい。

・「文字はまっすぐに書くもの」という観念をまず忘れる。大きな音なら、画面全体に散らすのもよい。(ex:ジョジョのゴゴゴゴゴゴゴ…は一直線ではない)

・背景に溶け込まないよう、フチ取りが重要。特にカラーの場合、白フチをまず入れてみる。

・硬質感に着目。硬い音は鋭角に、やわい音は丸く描く。つまり、鋭い音は線が細くなり、野太い音は線が太くなる。

・エロい擬音や水音には、ぷるぷるした「テカリ」を加えるのもよい。

・振動音や駆動音などには、文字自体に「震え」を加えてもよい。

・文字の一部がキャラの後ろに回り込んでも可。(ex:ワンピースのどどん!など)

・透明感のある音やかすかな音は文字を透かしたり、袋文字にしたりしてもよい。


こちらが、各ルールを踏まえて私が描いてみた擬音です。頑張ったつもりなのですが、素人くささがなんとも言えませんね。


こちらは「ドドドド」。角ペンで直線感を出した買ったのですが、やはり恰好悪い…。やればやるほど馬脚が露わになってしまいますね。


いろいろ工夫した中で、一番自然に見えた描き方はこちら。左の「ゴゴゴ」3文字を手で描いて、右はそれを複製・拡縮して馴染ませたものです。

入り抜きのあるペンでちょっと不均一に縁取りを囲んで、バケツツールで領域拡縮「+3」にして中を塗りつぶして、さらに縁取りをちょっと書き加えました。上の「ドドドド」は直線が機械くさいのがよくなかったようで、手書き文字の難しさは「アナログ感」をどう出すかが難しいみたいですね。


7.修正

とりあえず全部のコマができたら、手で修正をかけていきます。例えば、手の指とか目の溶けを修正するところから始まり、衣装のおかしなところを直したり、目線を思った通りにずらしたり、といった感じ。目をピンクに光らせたり、汗を書き加えたり、いろいろあるので全部紹介しきれないのですが、やはりタッチをスケッチレベルに落としておくと、多少おかしなところも「味」になるのでありがたいです。

これなんか、アウラの首飾りはかなりテキトーに描かれているんですが気になりません。むしろ、美麗に描かれていると矛盾点がどんどん気になってきて、流し読みできなくなってしまうんですよね。


偉そうなことを言って、一コマ目から胸のマークのミスを思いっきり見逃しているので本当に情けない限りです。へそ下のハートマークも消えてるし…

こういうときのためにクリスタには「サブビュー」機能があり、お手本を見ながら修正できるはずなので、読者の皆様は他山の石としてください。


こういう間違えに気づきやすいのは、最後にXの投稿画面に画像を貼ったときです。メールを送った瞬間に誤字に気づくように、なぜかそのときだけ読者の目で見ることができるので、舐めるように見て間違いを直すと良いと思います笑 怒られるかもしれませんが、Blueskyにまず投げてみて、不自然な部分がないか確認したのちXに貼る…というのをやっている人もいるそうです。


ちなみにこの漫画では「アウラが現代で持っているバッグが最初は左肩にかけているのに途中で右肩になる」「フリーレンのイヤリングがないコマがある」「文字が小さすぎるフキダシがある」などのミスに気づいて、土壇場で修正しています。


8.追加ページ

ネーム通りに作業を進めて、最初にできたのがこちらの4ページです。




4ページ目は過去の一枚絵です。ネーム通りなら本当は4ページ目がこんな感じのコンセプトになるはずだったんですが、オチとしてちょっと弱いな、と感じました。


やっぱりアウラちゃんが自分を見て、周りを見て、「は!?」となる反応がみたい。というわけで、「見下ろすアウラ」「見上げるアウラ」「見下ろし構図」「煽り構図」をwildcardでランダムに組み合わせて、次のような画像を大量生成しました。


また、やはり現代の渋谷にアウラちゃんが降り立つ面白さをしっかり強調したいのと、「見開き」を経験しておきたいということで、渋谷の眺望見開きも追加することにしました。プロンプトは以下の通り。


PP:6+boys, 6+girls, architecture, blue sky, building, city, cityscape, crosswalk, anime colored,crowd, day, multiple boys, outdoors, people, road, car, sky, skyline, skyscraper, street, tokyo \(city\), tower, shibuya \(tokyo\),city,masterpiece, best quality,claw pose, very aesthetic, absurdres, sketch,unfinished,graphite \(medium\),


フリー素材の渋谷の写真を用意し、Controlnet「Canny」で読み込ませて、強度は0.6、Control Modeを「My prompt is more important」にして写真に寄りすぎないように調整します。

でてきたのがこれ。i2iでもう少し細部をなじませたら、アウラちゃんの後ろからの画像を適当に生成して合成し、「AI文字」になってしまっているところを手描きします。


せっかく見開きなので、細かく見てくれた人向けに「早々にムリーレン」といった小ネタも入れつつ、このように仕上げました。これは1年前の設定なので、一ドルが140円台突入したころの夏です。あとはこまごま、修正修正ですね。


結果的に6ページになってよかったのですが、本当はやりたかったタイトルコールができず、心残りです。渋谷の見開きに入れるのも、最終ページに入れるのも不自然だったのですよね。まだまだ勉強が足りないということかと思います。


9.終わりに

そんなわけで、はなはだ駆け足でしたがAI漫画メイキングでした。


複数ページの漫画を描く機会があまりなかったので、これまでクリップスタジオPAINTのグレードはPROで何ら問題なかったのですが、複数キャンバスの管理がいよいよ面倒になってきたので、先日「EX」にアップグレードしました。現在さっそく2話目を書いているところで、ネームをノートに書いてちょこちょこ調整しています。


1話は昔から考えていた流れなので全く苦労しなかったのですが、続きとなると結構難しい…とりあえず8p分のネームが完成したので、土日の間に作業が進められたらなと思ってます。



前回お約束した「NovelAIで一貫性を持ったオリジナルキャラを生成する方法 NSFW編」も途中まで書けているので、できるだけ早く更新できれば。フリーレンのセリフの黒塗りで「引き」を作ってしまったので、どんなに尻切れトンボでも生まれて初めての伏線回収をするまではやめてはだめだと誓って、最終話ができるまでは続けたいと思います。


とりあえず3話が最終話にならないよう、頑張ります(笑) スタジオ真榊でした。




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Comments

ユン

自分もAI漫画を描いているので とても参考になりました! AI絵だと引きのアングルを作るのが難しいので 背景の作り方が特にめっちゃありがたかったです 描き文字が素人っぽくなるのわかるー どうしても絵から浮いてる感じがしちゃうんですよね… 今後の記事も楽しみにしてますー