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こんばんは、スタジオ真榊です。今回は「ハンドビューワー」を使った手の修正方法の記事で少し触れた、手や顔といった細部を自動修正してくれる拡張機能「ADetailer」の解説と研究をやっていきたいと思います。


ADetailer(After Detailer)は、通常の画像生成に引き続いてキャンバス内の顔や手といった部位を自動検出し、局所的インペイント(描き直し)で詳細化して周囲になじませてくれるもの。描画時間は増えてしまいますが、画像生成AIの弱点である「描画範囲が小さいものは低劣化してしまう」という弱点を補い、一回の生成で顔や手の潰れを直してくれる大変画期的な機能です。



仕組み上、「高解像度補助」のように顔立ちの大きな変化が起こりづらいことや、「追加プロンプト」を設定して描き直す機能が備わっているため、表情などを描き変えることもできるのがADetailerの特徴。一見設定は複雑に見えますが、ほぼデフォルトのままでも簡単に活用できます。「入れておいて損はない」を超えて「ぜひ入れておくべき」神エキスパンションですので、さっそく導入方法から見ていきましょう!


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目次

1.ADetailerの導入方法

2.設定画面の見方

3.ADetailer modelの違い

4.「設定」タブでできること

5.実際にやってみよう

6.表情を変えてみよう

7.「Person」を使ってみよう

【応用編1】Mask Preprocessingでできること

【応用編2】Wildcardとの併用がスゴイ!

【応用編3】「顔だけLoRA」

【応用編4】「背景だけLoRA」

【応用編5】前景/背景のスケール使い分け

【おまけ】「手だけLoRA」はできるか?

終わりに

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1.ADetailerの導入方法


ADetailerの配布Githubはこちら。インストールは下記手順でOKです。


「拡張機能」>「URLからインストール」>「拡張機能のリポジトリのURL」欄に「https://github.com/Bing-su/adetailer」と入力>「インストール」をクリック>インストール済タブから「適用してUIを再起動」


text2text、image2imageのタブ内に「ADetailer」の項目が追加されていればインストール完了です。Controlnetなどと同じ位置ですね。


2.設定画面の見方

メインの設定画面はこのような感じ。「Detection」「MaskPreprocessing」「Inpainting」の三つのプルダウンメニューがあります。


・Enable Adetailer:ここにチェックを入れることで、画像生成時にADetailerの効果が現れます。具体的には、画像生成に引き続いて手や顔が自動検出され、その部分がアップになってもう一度丁寧に画像生成が行われるイメージです。


・ADetailer model:ここから使用するモデルを選びます。記事執筆時点では下記のような種類があり、基本的に「face」が顔、「hand」が手、personが「人物」、mediapipeモデルは顔面のそれぞれの部位ごとについて、検出と描き直しを行ってくれます。(細かい違いは後述します)

・「1st」「2nd」タブ:「2nd」以降にADetailer modelを設定することで、ADetailerを順番に複数掛けることができます。2nd以降が「none」になっていれば1つ分しか作動しません。デフォルトでは2ndまでしかありませんが、設定画面から3つ以上に増やすこともできます。当然、増やすほど生成時間は伸びていきます。


・ADetailer prompt:修正生成の際、上書きしたいプロンプトを記入する欄。例えば「smile」と入れれば笑顔に描き変わる。仕組みはi2iのinpaintと同じなので、描かれていないものの混入や極端な絵柄変更には向かない(強めに掛ける必要があるが、強すぎると破綻する)。何も書かなければデフォルト状態(メインプロンプトと同じ)で詳細化される。


・ADetailer negative prompt:修正生成の際、追加したいネガティブプロンプトを記入する欄。こちらも空欄なら、メインのネガティブプロンプトの入力が反映される。


▼Detection(検出)欄

モデルに応じた検出がどのように行われるかを設定する項目。


①「Detection model confidence threshold(モデルの信頼度しきい値)」をいじると、どこまで細かく顔や手を検出するかを設定することができます。強めすぎると、手や顔でないものを誤検出してしまうことが増えます。デフォルトは0.3。


②「Mask max(min) area ratio」は、検出された部位の取捨選択ができる機能。デフォルトはmix0(=0%)、max1(=100%)で、検出されたすべての部位を修正する設定になっています。これを例えば「min0、max0.3」にすると、抽出されたマスク範囲のうち、しきい値が0.3以下の部分だけに修正効果が発動します。大きく描かれたキャラクターは描き直さず、遠くに小さく映り込んだキャラクターのみを修正したいとき(またはその逆)などに使用します。


▼Mask Preprocessing欄

ADetailer modelが検出したマスク範囲を、広げたり、少しずらしたり、反転させたりできる設定欄。上級者向けなので、記事後段の「応用編・Mask Preprocessingでできること」以降で詳しく解説します。


▼Inpainting(修正)欄

こちらは検出された部位をどうインペイント(修正描き直し)するかの設定項目。img2imgの「インペイント」欄とよく似ています。


①「Inpaint mask blur」(マスクのぼかし)

マスク部分の境界線をどれくらいぼかすか。0だとマスク部分の境目が目立って、レタッチ部分が周囲から浮いてしまいますが、逆に大きすぎると、意図した範囲外までi2i効果が及んでしまったり、マスクしたと思ったところがしっかり覆えてなかったりするのはi2iのインペイントと同じ。デフォルトは4pix。


②「Inpaint Only masked」(抽出範囲のみ修正)

オンにすると、マスク範囲のみが集中して描き直されます。オフにするとキャンバス全体がその都度描き直され、マスク範囲の修正度も弱まるので、ADetailerの趣旨からしてオンにしておくのが基本でしょう。その下の「Inpaint Only masked padding,pixels」を増減させると、このマスク範囲が横縦に増減されます。


③「Inpaint denoising strength」★

i2i強度。Inpaintで描き直す度合いを操作する★最重要パラメータです。デフォルトは0.4。元の画像にないものを描き込む場合は相当強める必要がありますが、0.5を超えると、もとの構図から離れて周囲と整合性が取れなくなっていくので注意。表情を変える程度なら0.4~0.5くらいでOKです。


④Use separate ~

Use separate stepsやUse separate CFG scaleなどの項目をオンにして数値を設定することで、ステップやスケール、サンプラーやCLIP SLIPを変えて描き直すこともできます。Use separate width/heightをデフォルトの512x512から1024x1024のように大きくすると、マスク範囲を大きな画像として描きなおします。描き込みは当然増えますが、その分破綻や謎の物体の描画率も上がります。「応用編」で解説します。


【Controlnet欄】※

検出された部分にControlnetを個別に適用させつつ、修正を行うことができます。デフォルトはOFFになっていますが、「Tile」や「Lineart」、「InpaintOnly」といったおなじみの機能をADetailer段階でも適用させつつ詳細化したい場合はこちらを使います。

※が、私の環境では正常に動作させることができませんでした。それぞれ何らかの効果は生じているようなのですが、適用部位が大きく破綻してしまいます。手などの抽出範囲にInpaintOnlyを掛けて別プロンプトを適用できるなら最強なはずなのですが、設定値に問題があるのか、よく調べてみます。


3.ADetailer modelの違い

ADetailer modelは「face」と書いてあれば顔を、「hand」と書いてあれば手を、「person」は全身を検出して修正してくれるものですが、それぞれどう違うのでしょうか。

まず、「yolov8」とあるのはオブジェクト検出モデル「YOLO(YouOnlyLookOnce)」のバージョン8のことで、アニメ調にもリアル調にも強いモデルです。横顔や、背景に小さく映り込んだ顔面も上手に検出することができます。「mediapipe」はControlnetでも登場しましたが、比較的リアル調モデルに強いモデル。ただ、アニメ調イラストだと部位を検出しきれないこともあるようです。


各モデルで「キャンバス上のどんなものをどのレベルまで検出できるか」の能力が異なり、生成結果も微妙に変化するのですが、特に事情がなければ検出力の高い「yolov8」シリーズを使うことをおすすめします。nとs(新バージョン、L/M/Sとあるバージョンのうちの『small』らしい)がありますが、体感的にあまり差はありません。


4.「設定」タブでできること

画面右上の「設定」タブの中に「ADetailer」の項目が追加されており、こちらからその他の設定を操作することもできます。(下図がデフォルト値)

・Max models:デフォルトでは「1st」「2nd」までしかない項目を増減できる

・Save mask previews:チェックを入れると、手や顔が検出された部分を生成後に画像で確認できる

・Save images before ADetailer:ADetailerをONにしなかった場合の生成結果も保存される。ADetailerの効果がはっきりわかる

・Apply only selected scripts to ADetailer:wildcardやdynamic promptなど、ここで選択したスクリプトのみがADetailer に適用される。

・Sort bounding boxes by...:検出範囲の処理順を設定できる。複数の顔や手が検出された際に、どの順でインペイント処理するかがこれで決まる。「左から右へ」「中央から外へ」「大きい範囲から小さい範囲へ」を選ぶことができ、デフォルトは「なし」。「部位の検出→描き直し→周囲とのなじませ」が1セットで行われることからすると、大きい部分を先に、小さい部分を後にすると良いのかなと思っています。



5.実際にやってみよう

まず、遠景で顔や手がおかしくなっている画像を用意します。こちらは「too many girls」のみで768x512ピクセルで生成した低劣な画像。これを設定そのままに、ADetailerをONにします。


設定項目はこのような感じ。「1st」タブで「face_yolov8s.pt」を選び、「2nd」タブで「hand_yolov8n.pt」を選んだほかは、全てデフォルト値のままです。

「Enable Adetailer」がONになっているのを確認し、この状態で画像生成を開始すると、通常の生成に引き続いて下図のようなプロセスが追加発生します。


・背景の女の子が検出


・背景の男も検出


・黒髪の子の手が検出

・金髪の子の手が検出

こうした検出&修復が終わると、最終的な画像が生成されます。検出された部位の多さにもよりますが、体感的には1.5倍から2倍の生成時間でしょうか。


生成結果がこちら。



わかりやすいよう、生成前後の2枚をGIFにしてみました。


いずれも低画質ですが、特に描画範囲が狭い、細かな部分の低劣化がしっかり修正されているのがわかると思います。


6.表情を変えてみよう

今度は、ADetailer promptを使って表情を変えつつ、高解像度補助も掛けてみましょう。ついでに、設定画面から「Save mask previews」「Save images before ADetailer」をONにしてみます。(適用されない場合はWebUIを再起動しましょう)


メインの設定はこのような感じ。


ADetailer側はこうです。「1st」タブに(smile:1.2)を書き加えただけですね。変化を感じたいので、1.2に強めています。



まずはテスト。ADetailerはオフのまま、高解像度補助だけを掛けるとこのような画像になります。解像度が2倍なので、この時点でもだいぶましですが、背景のモブは微妙な感じです。


さっそくADetailerをオンにしてみましょう。通常の生成+高解像度補助の過程に引き続いて、検出と修正が行われます。


このように、それぞれの表情が笑顔として再描画されます。




こちらが最終結果。見事に全員高画質化と笑顔化、手の修正ができました。


一番最初の低画質画像と比較GIF化するとこんな感じ。

効果は歴然ですね。特に、ほぼつぶれていた背後の小さなモブたちの顔面が人間らしく再描画されています。


さらに、「Save mask previews」「Save images before ADetailer」をONにしたので、上記の画像のほかに複数の参考画像が保存されます。


こちらはADetailerが作動する前の画像。「Save images before ADetailer」をONにしておけば、このような画像が手に入るので、修正前後をじっくり実感することができます。例えば笑顔の子と無表情の子を混ぜて描きたいときは、これらを画像編集ソフトで合体させることもできますね。


こちらは顔面の検出度合い。数字は検出しきい値のスコアです。1に近いほど「これはまず間違いなく顔ですね」という物差しだと思えばOK。「Detection model confidence threshold(モデルの信頼度しきい値)」がデフォルトの0.3なので、0.3以上の顔に見えるものがすべて検出されています。


こちらは手の検出部位。背後の男性の背中がたまたま肌色らしく染まっていたため、誤検出されていることが見て取れます。

設定画面から、これらの検出範囲を左から右にインペイント処理していくのか、大きい順に処理していくのかなどを決められるわけです。検出範囲が重なっていた場合、修正順が重要になることが想像できると思います。


7.「Person」を使ってみよう

さて、さきほどはある程度1人1人の大きさがあったので「face」と「hand」を使いましたが、こちらの画像はどうでしょうか。

これは「crowd of girls,station」で作ったイジワル画像ですが、これを今度は「person_yolov8s-seg.pt」で検出・修正してみましょう。さきほどと同様、高解像度補助で768x512から2倍サイズにアップスケールする設定です。

設定タブから「Sort bounding boxes by...」を「large to small」に設定しているので、キャンバス上に大きく写っている人物から順番に検出・修正されていきます。


これは、中央の金髪の人物が検出、修正されているところ。


検出結果は、当然このようにせせこましい感じに…


ADetailer作動前の高解像度補助のみの段階がこちらで、


完成品がこちら(▼)です。「人物(person)」として検出された人たちはきれいに描写されていますが、特に左上の細かなモブの顔面は検出してもらえなかったようですね。ただ、一番左の緑のマフラーを巻いた人物は修正されていることがわかります。どこまで細かい顔を検出するかは、しきい値をいじることで操作することができます。


ちなみに、こちらは「face_yolov8s.pt」で同じことをやった結果。



検出枠を見てみると、しっかり左奥の人々も顔面が検知されていることがわかります。イラストの構図によって、どこを検出してどのように直してほしいかを考えてモデルを選ぶことが重要ですね。ただ、あくまで「顔修正」ですので、よく見てみるとさきほどの左の男性の緑のマフラー部分は修正がされていません。


これを解決するためには「person_yolov8s-seg.pt」を1st、「face_yolov8s.pt」を2ndにして生成すればOK。下の画像のように、「人物の全身を修正→それをもとにさらに顔を修正」という2段階で描き直しが行われるので、直したい対象をあまさず捉えることができます。

ただ、描画時間はかなり多く掛かりますし、左下の男性のあごのラインのように不自然になってしまうこともあるようです。多数の人物に複数段階のADetailerを掛けるときは、多少慎重になったほうがよいかもしれません。



おおむね基本的な使い方はここまでの解説で誰でもできるようになると思います。次に、ADetailerの各種設定を使いこなすことでどんな応用ができるかをいろいろと検証してみました。


【応用編1】Mask Preprocessingでできること

さきほど説明を後回しにした「Mask Preprocessing」欄について解説しておきます。これは、マスク範囲をずらしたり、拡大したりできる設定画面です。


「Mask x offset」は左右方向に、「Mask y offset」は上下方向に、検出された枠をずらす機能。例えば、デフォルトではどちらも0ですが、xを「30」yを「-50」にすると、検出範囲=修正される範囲が右に30ピクセル、下に50ピクセル分ずれることになります。ちなみに、キャンバス外に突き抜けてしまった部分は反対側に回り込んでしまうので注意しましょう。


「Mask erosion (-) / dilation (+)」は、検出された範囲を拡縮する機能。デフォルトは4となっていますが、最大「-128~+128」の範囲で調整できるようになります。ただ、ADetailerは「小さい部分を拡大することでしっかり描き直す」機能ですから、あまり抽出範囲を広げると本末転倒になってしまいます。ご注意ください。


さて、これら2つを組み合わせると、例えば検出された顔面の位置を基準にして、例えば髪の毛のディティールまで修正対象に含めることができるわけです。


こちらはマイナス適用すると書き込みを増やせる神LoRA「Flat2」を頭部全体を狙って掛けたものです。


本来なら顔だけ(せいぜい前髪まで)が修正されるところを、このようにMask dilationでマスク範囲を最大限に広くし、Mask y offsetで上に30ピクセルずらしたことで、頭部全体(+背景)を覆う形で描き込みを増やしつつ詳細化しています。


「部分LoRA」の可能性

このように、ADetailerの追加プロンプトにLoRAを指定することで、顔や手の周辺、または人物部分にだけLoRAを適用することができます。キャラLoRAやクォリティ関連のLoRAを使ったり、服装LoRAを狙った部分に掛けて変化させるような応用方法が考えられますね。


こちらの画像は、4girlsでポン出しした画像からperson抽出し、「souryuu asuka langley, red plugsuit,brown hair, red bodysuit,standing,masterpiece,extremely detailed CG,official art,high resolusion (+LoRA)」をInpaint denoising strength「0.66」で掛けたものです。(※GIF)

このように、なんとなーく各キャラが「66%くらいアスカ」になりました。試みとしては面白いのですが、あくまで仕組みはi2iなので、元のキャラの髪や服の色合い、マスク範囲の大きさに引っ張られてしまうことがわかります。


ノイズ除去強度「0.66」がギリギリ大破綻しない程度の数値で、これ以上強めると崩壊しますし、弱めるとアスカらしくはなりません。キャラクターの抜本的な差し替えをやりたい場合は、やはりControlnetを素直に使うのがよいのかなと思います。


こちらはキャラ範囲がもう少し小さいことと、色合いがさほどビビッドでなかったため、うまく「アスカ化」できたケース。ただ、マスク範囲の指定が正確な分、中央の子のポニーテールの形状に引きずられてしまっていますし、かばん部分はキャラ範囲から除外されてしまっています。


キャラ全体の差し替えはやや向かないとはいえ、ADetailerは「キャラ・顔・手を指定して部分i2iを掛ける機能+α」という本質がよくわかる例です。他にも応用法がいろいろと考えられますね。


【ちょっと宣伝】月須和 那々 (2vXpSwA7)様のFLAT2 LoRAのマイナス適用は大変便利なので、まだ試したことがない方はぜひ。ツイッターのプロフ欄から飛べる保管庫には、他にはない傑作LoRAが大量に配布されています。Githubの「test」フォルダにも画期的なLoRAがたくさんあるので要チェックです。




【応用編2】Wildcardとの併用がスゴイ!

あまり知られていないかもしれませんが、ADetailerはWildcardとも併用することができます。Wildcard機能をまだ使いこなしていない方は過去記事を参照のこと。

「Wild card」でもっとForever生成を楽しもう!

こんばんは、スタジオ真榊です。このところControlnetの研究報告が続いたので、今夜はとっても便利なのに取り上げる機会がなかった拡張機能、「Wild card」についての記事を書こうと思います。「固定シチュエーションを色んなキャラで描いてもらおう!」で紹介したDynamicPromptに似た機能で、何にでもなれる「ワイルド...


こちらのイラストに、Wildcard「_Expressions_」を適用してみます。


このWildcardはその名の通り、あらゆる表情がランダム封入されたパックです。プロンプトに__expressions__の呼び出し語を記入することによって、そこにどれか一つがランダムに選ばれる仕組みです。



face_yolov8sの追加プロンプトとしてこのWildcardを適用すれば…

修正が行われるたびに表情のランダムピックアップが行われ、女の子たちの表情だけをランダム変化させることが可能です。色やポーズを大きく変更することは難しいのですが、たとえば描き込みをアップさせるLoRAを適用するなど、いろいろと応用が利きそうですね。


【応用編3】「顔だけLoRA」

「LoRAの範囲掛け」ができるわけですから、こういったこともお手軽にできます。


「face」検出した部分の追加プロンプトに、「 smile」と入力して生成した例。このLoRAはさきほどご紹介した月須和那々様がGithubのtestフォルダで配布されている、目の光を消せるLoRAです。


こうすることで、他の部分の絵柄への影響を完全に排除しつつ、狙った部分だけにLoRAを適用させることができます。ちなみに、上の画像では目の光が完全には消えていませんが、「2nd」にも全く同じ入力をすることで、「LoRAの2度掛け」ができます。


「2度掛け」によって、残っていた目の光も消すことができました。プロンプトの強度を強めたり、inptain denoising strengthを高めることでも強度が強められますが、こうした方法ができるのはADetailerだけの特別な使い方ですね。


【応用編4】「背景だけLoRA」

Mask x offsetの下に、「マスクマージモード」という項目があります。こちらは検出された枠をどのように扱うかを決めるもので、通常はソートされた順(例えば大きい順)に一つずつ修正が重ねられるのですが、ここを「マージ」にすると、検出されたすべてのマスク部分を融合し、いっぺんに修正することができます。時間が短縮できるものの、ADetailerのウリである「局所的に丁寧に描く」の趣旨からは外れるので、ちょっと使い道が思いつきませんね。


一方、「Merge and Invert」(マージと反転)の方はかなり面白い機能です。これは、抽出された範囲をすべて融合したあと、反転させるもの。つまり、personが3つ検出されたら、その3つの人物の範囲以外全部を指定して変化させることができます。


実際にやってみましょう。題材はこちらの教室のイラスト。このように「person_yolov8s-seg.pt」で検出されたキャラクター部分だけが正確に赤く塗られています。ここで、これ「以外」の部分をFLAT2 LoRAで描き込みを増やしてみます。さらに「2nd」でface検出を掛け、顔部分だけを詳細化してみます。うまくいけば、「背景は描き込み増」「顔は詳細化」「女の子たちの首から下だけは加工前のまま」になるはずですね。


こちらが生成結果です。


GIFで比較してみると、背景の教室部分、特に木目がリアルになり、描き込みが増えている一方、顔周辺はアニメ調を維持したまま詳細化。女の子たちの首から下はちゃんとそのままになっていることが確認できます。


【応用編5】前景/背景のスケール使い分け

さらにマニアックというか、アーティスティックな使い方です。こちらはCFG Scaleをあえて低めの2.5にし、水彩画風LoRAを適用した画像です。


低スケールのためAIイラストらしくないふわっとした表現になっていますが、こちらに「person」検出を掛けた上で、「Use separate CFG scale」をオンにして「scale7」に変更してみます。さらに、追加プロンプトにはメインプロンプトから水彩画LoRAを抜いたものを入力します。


メインのプロンプト:「3girls,outdoor,sky,smile,masterpiece,extremely detailed CG,official art,high resolusion

ADetailer追加プロンプト:「3girls,outdoor,sky,smile,masterpiece,extremely detailed CG,official art,high resolusion」


生成結果がこちら(GIF)

背景のふわっとした雰囲気はそのままに、キャラクターだけをはっきりさせることができました。さらにアップスケールを掛けることで、「背景は淡くキャラをはっきり」といった絵作りに使えそうですね。


設定はこんな感じで、Use separate width/heightもONにしてマスク部分を詳細化(1024x1024pixelで描画したあと、縮小貼り付け)しています。


【おまけ】「手だけLoRA」

以前研究した「手修正LoCon」を使った応用技術も研究しました。今度は手だけにLoRA(正確にはLoCon)を掛けて、崩壊した手を修正することができるか?という試みです。


結論から言うと、どうやら「クオリティアップはできても、破綻の修正までは無理」という感触でした。

手修正の最適解は?破綻を直す7つの方法「+1」

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こちらの記事では手修正LoCON「EnvyBetterHands」などの効果を検証しているのですが、今回はこれをADetailerのhand抽出と組み合わせてみました。普通に考えれば、「手の部分だけを拡大してi2iするため、より正確に直してもらえる」「LoConの効果を手だけに集中して掛けられる」といった効果が期待できるところです。


追加プロンプト:「nice hands,perfect hand,,masterpiece,extremely detailed CG,official art,high resolusion」

Inpaint denoising strength:0.66(破綻した指に引っ張られないよう強めに掛けています)


こちらが生成結果。右手が微妙に変化しているだけなのでわかりにくいですが、GIF動画です。

残念ながらimage2imageの仕組みでこれを掛けても、元画像の構造に引っ張られてしまい、自然な手の形に描き直すことはできませんでした。もっとぐちゃぐちゃになった手についても試してみましたが(気持ち悪いので画像は割愛)、形がぐちゃぐちゃのまま美麗になる程度の変化でした。手の形が変化するほどの強さでinpaintを試みたため、上の画像でも髪の毛が三つ編みに変化するなど、予想外の悪影響が生じてしまっています。


「Use separate noise multiplier」を使ってノイズを加算しても良い結果にはならず、手間から考えると素直にInpaintOnlyしたほうが良いように思われます。ただ、Controlnetとの併用機能がきちんと機能できるようであれば、手のマスク部分にInpaintOnlyの効果を掛けてdenoising strength:1(最強)でADetailerすればよいわけですから、ADetailerとControlnetの兼ね合いが今後どうなるか注目しています。



終わりに

ながなが見てきましたが、ADetailerは単に「ちっちゃいモブの顔や手をまともにする機能」にとどまらず、LoRAやwildcardなどと組み合わせると大いに活用法の広がる、素晴らしい拡張機能と言えます。特に、複数キャラの登場するイラストでは必需品と言えるレベルですし、キャラ単独であっても特に気を配りたい「顔と手」をクオリティアップできるわけですから、生成時間が増えることを除けば使わない理由がありません。(ただ、高解像度のイラストで既に限界近くまで高精細化している場合はあまり意味がありません)


いろいろ細かい設定もできますが、構図が決まったら、とりあえず顔面と手のADetailerと高解像度補助をオンにして適当に生成するだけで、けっこうなんとかなってしまうのがこの拡張機能の魅力。「応用編」では主にLoRAの自動部分掛けの可能性を追ってみましたが、アイデア次第で他にもいろいろな使い方ができると思います。


さて、今回も12000文字を超える長編になりましたが、よかったらこちらのアンケートにご協力いただけると嬉しいです。


過去記事もかなり増えてきて、最近支援を初めて頂いた方には、FANBOXの全体像が分かりにくいかもしれません。記事タイトルだけがタイプ別にばーっとならんだだけの索引(?)ページを作るなど、知りたい情報にすぐリーチできるように可読性を上げたいと思っていますので、何かご要望等ございましたらツイッターでもコメントでも構いませんので教えてくださいね。


記事執筆終了、午前3時17分!さすがに力尽きましたので、今夜はこのへんで。


スタジオ真榊でした。



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Comments

z-kumagon

何時も情報助かります。

Akihiro

お久しぶりです。 いつも記事ありがとうございます。 と、夜遅くまでお疲れ様です 一つ質問しもいいですか? まさに 「大きく描かれたキャラクターは描き直さず、遠くに小さく映り込んだキャラクターのみを修正した」かったので 「Mask max(min) area ratio」をmin0/max0.8でやってるのですが、「Mask max(min) area ratio」でうまく指定できましたか? 0.5やら0.6やらのモブだけを書き直したいのに 0.89で検出した主体も書き直してしまったり。。。 いろいろ試してみたんですが、法則性がつかめず。。。 なかなかに癖のありそうな機能ですね

スタジオ真榊

公式の説明をもとに「Mask max(min) area ratio」は検出された確度の数値を参照していると記述したのですが、もしかすると文字通りマスク範囲の広さを検出しているのかもしれません。ご指摘大変ありがたいです、自分でも少し調べてみたいと思います。