炎天、轟々 (Pixiv Fanbox)
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日記です、特に何か大きい出来事はありません、いい大人が目的もなく散歩した時の記録です。
8月2日の日曜は酷く暑く、そのせいで寝ていても涙を流したみたいに顔に汗がどろりと張り付いて、蝉がけたたましく笑っているようでした。
遮光カーテンのせいで部屋は変に薄暗く、薄暗いせいで暑さが湿ったような、押しつぶしてくるような、そんな嫌な感じ、15時。
だから起きて近所の水路を散策する事にしました。
私の家の近所、裏手の近い場所に水路があります。
比較的大きくずっと流れている水路で、水は淀まず、それは水底が見えるくらい、水深30センチくらいか、もしかしたら屈折して見えていてもっと深いか、金魚鉢に入っているような水草がずっと斜めに傾き泳いでいる、おっとりした気持ちになります。
水路の周りには新旧交々な家屋が並び水面に影を落としている、高かったり低かったり斜めだったり尖っていたり、歪で歯抜けた間抜けな影です。
かと思えば急に開けてみたりして、水面が陽光でキラキラ光って笑って、鴨がその陽光を裁断する裁ちバサミみたいにすいと流れていきます。
裁ちバサミ(もしかしたら鴨かもしれない)はのんびりと泳いで日向ぼっこして、大した生き方をしていないように思わせますが、時折、鋭い流鏑馬のように水中に潜り、敵対国の領海を侵攻する魚雷のように進み、呆気に取られていると水面に出てまた何も考えていない、大した生き方をしていないようにのんびりと水面を進み始めます。
それが見たいなぁと思ってマスクをして外に出ました。
セブンイレブンで饅頭くらいの大きさのチーズスフレを買って、袋はいらないと伝え、包装の端を摘んで水路沿いをトボトボ歩きます。
水路なぁ、水路もいいんだけど俺は水路沿いの『道』が好きなんだよなぁ
独りごちて道、通ぶると気持ちが良いのでそういう事を口にしたりします。
皮膚に熱が張り付く、払い落としてマスクの中で呼気が籠ってマスクの端を引っ張って呼気を逃してうんざりして。
やがて道が低くなり、大雨が降ると沈む道と、少し高い、大雨が降っても沈まない道に分かれます。
低い道を行く、低い道は草いきれ、緑多く虫多くして水の音が濃い。
じょろじょろじょろ。
つづく