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#7 電車の車内にて ――ガタン……ゴトン……  走る電車の中、流れゆく景色をぼんやり眺めながらあなたは隣に七穂が座っている事を意識すまいと頭の中を空っぽにする。  その間にも、七穂は大学であった何気ない事を会話に織り交ぜつつ普段通りの会話をあなたに投げかけてくれているのだが、あなたはその会話に返事こそ返しはするがその返事は脳を介さない上の空な返事となって彼女に返されていた。  電車が揺れる度に僅かに触れる七穂の柔らかな肩の感触……  そんな些細な刺激だけであなたは、彼女による先程の軽い腋見せが頭に過ってしまい、油断するとすぐに興奮が蘇りそうになってしまう。だから、彼女に返事は返すものの会話の内容は頭に入っては来ず……ぼんやりとした相槌しか返せない。  それを繰り返すうちに七穂はやがてあなたの態度を不真面目だと思い始めたのか少しずつ頬を膨らませ不満そうな表情を浮かべ始めてしまう。 「せ~ん~ぱ~い? 話聞いてくれてますぅ? どうもさっきから……私の話そっちのけで上の空になってるように見えるんですけどぉ?」  七穂のその言葉にも、あなたは意識すまいと気の抜けた返事を返してしまう。その態度を見た七穂は、ついに怒りを爆発させるかのように座席から立ち上がり…… 「もう怒った! せっかくデート場所までは優しめの誘惑で勘弁してあげようと思ってたのに! 先輩がそういう態度取るんでしたらこっちにも考えが有るんですからねっ!」  そのように怒り顔を作ってあなたの正面に仁王立ちした七穂は、睨む様な顔をあなたに見せるとおもむろに頭上にある吊り革に視線を移してニヤリと笑みを浮かべなおす。  七穂と共に乗っている電車は横長の座席だけではなく、混雑時には立って乗る事も出来るよう天井から吊り革が椅子の目の前に備え付けられている。  椅子に座れるなら座った方が楽であるのは当然の事である為、人があまり乗っていないこの電車内でわざわざ立って過ごすような疲れる事をしようとは思わない。  しかし、七穂はそんな“無条件で座れる権利”を放棄してまでも立ち上がり、なんとその吊り革に向かって背伸びをしながら手を伸ばし始めたのだ。あなたが見ている目の前で。 「よいしょっと♪ ふぅ……。ムフフ、これで無視できなくなったでしょ? 私に目の前でこんな格好されたら、嫌でも視界に映りますもんね? 先輩が好きな……ココが♥」  七穂の身長では届くか届かないか絶妙に高い位置にある吊り革……  そこに背伸びをして爪先立ちになってようやく両手で掴むことが出来た彼女は、得意げな表情を見せながらあなたをそのように挑発する。  あなたはその姿を見て……驚くと同時に折角我慢していた“あの欲”が再び湧き上がってきてしまうのを自覚してしまう。 「どうです? 良い眺めでしょ?」  良い眺めも何も……絶景である。  なにせ、あなたの目の前数センチの距離で七穂が吊り革を掴んで万歳して腋を見せてくれているのだ!   これが絶景と言わず何と表現したらいいのか……あなたには言葉が浮かんでこない。  先程チラ見えしたあの腋とは違い、今度は堂々と無防備をアピールするかのような完全な万歳の格好……。  毛穴すらも見当たらない程綺麗に処理された美しいワキのラインが、その柔らかな身体のラインを表わすかのように緩い凹凸を作り出して緊張するように伸ばされている。  その腋を一目視界に入れてしまったあなたは……もうその腋から目を離さずにはいられなくなる。  エッチな悪魔に誘惑されてしまったかのように頭の中はピンクな妄想が一斉に駆け巡り、あなたの興奮を青天井で高めていってしまう。 「……うぅ。なんか、そんなにジッと見られると……ちょっと、恥ずい……かも……」  食い入るように見続けるあなたの視線があまりにその美腋に集中してしまったせいか、七穂は両手を挙げつつも見られるのが恥ずかしくなったのか頬を赤く染めながらも身体を左右にくねらせ始める。  気恥ずかしさに思わず視線を横に逃がす七穂……。そんな仕草もあなたの興奮に拍車をかける。   「だ、ダメ……ですからね? 触ったら……絶対許さないんですから……」  思わず手を伸ばそうとしてしまうあなたに、七穂が恥ずかしがりながらもあなたの欲に楔を打ち付けて来る。  手を伸ばせば簡単に触れてしまえる距離に晒されている七穂の美しい腋を目の前にして……あなたは手を出す事が出来ない。手を出せば……デートが始まる前にして敗北が決定してしまう。  そんな情けない結果に終わってしまうのは……流石に節操が無いとみられ嫌われる可能性すらある。だから……我慢しなくてはならない。  あと二駅くらいの距離まで来ているのだ……  これくらいの誘惑など……我慢できなくてどうする! 「あぁ……。なんか……先輩がワキ見てるって意識すると……余計に……恥ずかしさが……増してく……うぅぅ……」  七穂は吊り革を握りながらも、あなたの視線に悶える様に身体をクネクネと捻って恥ずかしがっている。  身体が動けば動くほど腋の凹凸の加減や皺の入り具合が変わっていき、まるで生きているかのように形状を妖しく変化させてしまう。その動きを見ているだけでも七穂の腋肌の柔らかさを知る事となり、余計にその肌に触れたいと思う欲を掻き立てて来る。  もはや我慢など出来ない! 今すぐに……この目の前にある彼女のワキを鷲掴みにして揉みあげてしまいたい! 伸びきったワキの筋を爪先で引っ掻いて七穂の事を笑わせてしまいたい!  その様に昂ってしまったあなたの欲はもはや制御など利かず我慢していた手を前に掲げさせてしまう。  もうルールなんて知らない! 負けてもいいから今触りたい!   あなたはそのような衝動に取りつかれ手を伸ばしたのだが…… ――キキキーーッ!!  あなたの手が触れる直前に電車が急なカーブに差し掛かってしまい、車内がそれにつられて大きく横にうねってしまう。 「キャッ!?」  そのうねりの勢いが想定以上に揺れを及ぼしてしまい、七穂は小さな悲鳴を上げて思わず吊り革から手を放してしまう。  前に倒れかかってくる七穂。このままではバランスを崩して窓やあなたの頭に顔をぶつけてしまう、と危ぶまれたが……   ――ガシッ!  身体を前に突き出した七穂の身体は幸か不幸か欲に負けて身体を触ろうとしてしまっていたあなたの両手に支えられる事となる。  丁度、触ろうとしていた腋……その少し下の部位である胸の横にあなたの手が滑り込み、彼女の華奢な身体を楽々と支え込むことが出来た。  腋……でなはいものの、七穂の胸横の肌はマシュマロの様に柔らかく……服越しでも温かさを感じた。  このまま指を動かせば“脇の下”をくすぐる事が出来るのだが……と、一瞬過ったあなただったが…… 「支えてくれて……ありがとうございます。でも……指……動かしたらビンタしますからね? 胸も触ったら噛みつきますから! 分かってますよね?」  七穂がその様に心を見透かすように低い声で脅すものだから、あなたはドキリと心臓を高鳴らせて思わず七穂の身体を解放してしまう。  無事に床へと着地した七穂は……流石にこれ以上の誘惑をしようとは思わなかったらしく、元座っていたあなたの隣の座席へと無言で着席する。  一連の出来事にあなたは心臓の高鳴りが止まらない。  ワキをしっかり見れただけでなく……あの柔らかい七穂の身体に触れる事も出来たのだ!  これ程興奮させられる事象は今までなかった。今もその興奮のせいで心臓がバクバクと昂ってしまっている。  しばしその鼓動を鎮めようとあなたは深呼吸を何度も繰り返すが……  彼女の身体の感触が手に強烈に残ってしまっている為、意識したくなくても脳が勝手に意識にのぼらせてしまう。  その感触を思い起こせば起こすほどに、欲は高まり続けてしまう。  あなたは何度も深呼吸をした。目的の駅に着くまで……何度も何度も……  そんなあなたの姿を見て七穂は少し気恥ずかしそうに言葉を零す。 「今のは……私の事助けようとしたという事で……身体に触ったことに関しては不問にしてあげます」  その言葉を聞き深呼吸のついでに安堵の息も零すあなた……  しかしその態度を見た七穂は、ムッとした表情を見せてあなたに警告を放つ。 「でも! 先輩が私の身体を触ろうと手を伸ばしていた事は見逃してませんからね! あのまま触っていたら先輩とはしばらく口をきいてあげない所でした! もっとちゃんと我慢してください? でないと……軽蔑しちゃうかもしれませんよ? ワタシ……」  そのように言われギクリと顔を強張らせるあなた。  あまりにも節操なく我慢できなかったら……軽蔑される……。それは当然の事だろう。七穂からすればこのデートはあなたに対する罰でもあるのだから……。  駄目だと言われているのに、それを我慢しようともせず手を出すなど……どれだけ欲が強いんだと思われて仕方がない。  流石にそれで嫌われるのは本望ではない。折角自分のフェチを知っても貰えたばかりだというのに……その欲があまりに強すぎて制御し切れていないのでは? と思わるのは嫌だ。  今一度気を引き締め直さなくてはならない。  今度は不用意に手を出そうとしないようにしなくては……  そんなあなたの決意する顔を見た七穂は、小さく溜息を吐き、少し申し訳なさそうに眉を潜ると、あなたの脇腹を肘でツンツンと小突きながら…… 「もう……冗談に決まってるじゃないですか、軽蔑なんてする訳ないでしょ? 私が……。本気にしないで下さいよぉ……全く……」  と呆れた口調で零してくれた。  あなたはそれを聞き再び安堵の表情を浮かべ、深い息を吐く……  すると七穂は少しはにかむ様な照れ顔をしながら、 「私としては……ハプニングとはいえ、先輩に(ゴニョゴニョ)を触られた事……実は少し(ゴニョゴニョ)って思ったり……したんですから……」  と、あなたに聞こえないよう呟いた。  あなたは、彼女が口ごもって何を言ったのかはっきり聞き取れなかった部分を聞き返そうとするが、結局何を言ったかは彼女の口からは語られず仕舞いで目的の駅へと着く事となった。  電車から駅のホームへと降り立ったあなたと七穂は改札を出た後、手を繋いで目の前に広がる巨大ショッピングモールへと歩き出していく。  見上げる程に大きく、一見では端が見えないほどに横幅の広いその巨大な建物を見て、七穂はさっきの出来事など忘れるかのように子供のような笑顔を取り戻してあなたの腕に自分の腕を絡ませ「早く行きましょう」とせがんだ。  あなたは七穂に引っ張られるように足早にそのショッピングモールの入り口へと歩を進めていく。  いよいよ決戦の地へと辿り着いてしまったのだ。  ここから先は……どのような誘惑があなたを襲うか想像もつかない。  何をされても出来るだけ我慢しようと思ってはいるが……  腕を組んでいる事によりあなたの肘は七穂の胸横に当たってしまっており、先程の出来事を勝手にフラッシュバックさせて来る。  肘に感じる感触があまりに幸せ過ぎて……あなたの理性は入り口に足を踏み見込んでもいないのに既に七穂に対する劣情で頭はいっぱいになってしまっていた。  果たして……この様な心持ちで本当に我慢など出来るのだろうか?  そのように自分に疑問を抱くあなただが、七穂はそんなあなたの劣情を知る由もなくマイペースに店内地図を見ながらあなたにこのように催促をし始めた。 「先輩! まずはこの靴屋に行きましょう♪ 私……狙ってた靴があるので♥」  無邪気にその様に催促をする七穂……あなたはその催促に頭を縦に振って了承の意を示すが……  靴屋に行くと聞いて……あなたの視線は無意識に彼女の足に向く事となってしまった。  ボーンサンダルを履いている彼女の……美しい素足……  見ているだけで触りたくなってくる……この小さくて可愛らしい……七穂の素足を……

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