ディストピア・プラント:2920~⑭窒息責め~ (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-06-15 13:35:40
Edited:
2022-09-01 13:13:38
Imported:
2023-06
Content
14:窒息責め
――コチョコチョコチョコチョ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!
「はがっっはっ!? ひゃがははははははははははははははははははは!! ぇぎぃぃっっ~ひははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
しかし、そのくすぐりは……あまりに壮絶だった……。
――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ……
「いぎぃ~~~っひひひひひひひひひひひひひひひひ、ァギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ワギぃィぃィひひひひひひひひひひひひっっやめっっぇぇぇぇぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」
最初に動き出したのは私の腋に多数配置された爪楊枝よりも細い指先達だった。
「えひぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひ!? んひひひひひひひひひひひひひ、ひゃめ、ひゃめっっ、ひゃめへっっ!! んぎひゃ~~~っははははははははははははははは!!」
――コチョコチョコチョコチョコチョコチョ、こちょこちょこちょこちょ、コチョコチョコチョコチョコチョ……
腕の付け根の中心……
肩と胸筋の交差によって形造られている私の腋のど真ん中……
伸びきったその腋窩の敏感な肌を細い指達が囲む様に指先を当て、一切の容赦なしにその部位を引っ掻き回し始めた。
「ひぎゃはひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、えはははははははははははははははははははははははは、こそばいぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ、コレめちゃくちゃこそばいぃぃぃぃっっっ!!」
尖った指先は私に痛みを感じさせぬよう、先端を突き立てずになぞる様に掻く動きを徹底してきている。その動きは今までのゆっくりな動きではなく素早く上下を繰り返す動きをしており、私の腋を中心から様々な外の方向に向かって掻いていき私に強烈な擽痒感を与え笑いを生ませていく。
「ぃっっひぃ~~~~~っひひひひひひひひひひひひひひひひ!! だはははははははははははははははははははは、やだっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、やだやだぁぁはははははははははははははははははははははは、くすぐったいぃぃぃ!! くすぐったいいぃぃぃぃっっ!!」
そのあまりのこそばゆさに私は思いっきり腕を引いてワキを閉じようと試みてしまうが、当然の様に私の手首にはめられた手枷がその動きを許さず私の腕を無防備な万歳の格好にさせ続ける。
「ひぃひぃっ! 無理無理ムリぃィひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、やっぱり無理ぃぃぃひひひひひひひひひひひ、こんなの長く耐えられないぃぃぃ!!」
だったらせめてくすぐりの位置を少しでもずらして逃れようと身体を捻る動きをさせてみるが、私の上半身を固定しているベルトがその動きすらも封じている為左右に身体を捻る事もままならない。
結局私はワキを隠す事も身体を捻って逃げる事もさせて貰えず、機械の細い指達に好き放題にワキを嬲られる格好を強いられ続ける事となっている。
今までに味わったことが無いくらいに細すぎるその指先は、上下に撫でる動きをするだけで腋の神経を過剰に刺激し私を笑いのどん底へと突き落していく。
羽根や筆などで撫でるよりもハッキリしたくすぐったさを与え、細指であるが故に様々な細かい箇所も弄る事が出来る。それに加え動きも規則性が無くランダムである為タダでさえ慣れない刺激が余計に慣れることが出来ない。
それにガスの効果も加えられ絶望的なくすぐったさをワキに与えてくる。
このくすぐりだけでも相当にヤバイ刺激であると認識した私だったけど、勿論機械の責めはこれだけでは終わる事はない。
廃棄処分の“最終段階”というだけあって、機械達はこれ以上の笑わせを今度は私の足裏に突き付けて来たのでる。
――ウィィィィィィン!! ガシャ!
――ゴヂョゴヂョっ!!! ゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョ!! ゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョ!!
「ぃっ!? ィみぎゃあぁぁああぁぁあぁぁっぁあぁぁぁっっっっ!!?」
足裏に待機していたブラシが続いて稼働を始めた!
私の足指の根元付近、母指球と小指球の膨らみとその溝の部分、土踏まずの中心とその両サイド……そしてカカトを囲む様に狙っていた小さなブラシたち……それらが一斉に私の足裏をゴシゴシと強く激しく磨き始めたのだ!
私はそのあまりに強すぎる刺激に思わず腰を浮かせる程胸を突き出して固まり痙攣した。
とはいえ、上半身のベルトに加え腰や太腿や脛などにもベルトが巻かれていて完全固定されている為実際には身体は浮かなかったのだが……巻かれたベルトさえも引き千切らんとするくらい力一杯に身体を反らそうとしたためイメージの中だけでもそのように抱く事となった。
――ゴシゴシ、ゴヂョゴヂョっ!!! ゴシゴシ、ゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョ!! ゴシゴシゴシ、ゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョ!!
足指が反るくらいまで身体側に引っ張られて拘束されている私の足裏は、足指同様足の裏自体も反る様に引き伸ばされ刺激に対して弱くされてしまっていた。
羽根先のちょっとした刺激でさえも悶え苦しむくらいにこそばさを感じてしまっていたのに……そんな皺一つ見えなくなる程ピンと伸ばされた足裏を樹脂製のブラシでゴシゴシと擦られれば、どれだけ耐え難い刺激を生むか想像がつくだろう。
ブラシが動くたびに身体の芯に強力な電流が流されているかのような拒否反応が起き、私の身体は暴れられないと分かっていても暴れずにはいられなくなる。
「ィッギャーーーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ひぎゃはははははははははははははははははははは、えはははははははははははははははははははははははははははははは、あじぃぃひひひひひひひひひひひひひひ、あじの裏ぁあぁぁぁっはははははははははははははははははははは、あじの裏がぁああぁぁっははははははははははははははははははははははははははははは!!」
ブラシの大きさは恐らく普通のヘアブラシの半分以下の大きさだろう。かなり小さいサイズのブラシであるとは思うのだが……小さいが故に小回りが利くらしくワキの細指同様、様々な方角に向けてブラシを擦らせている。
一本や二本でもそんな風に擦られれば爆笑を強いられる事必至だろうに、この機械は、私の片方の足裏に対して十本以上のブラシを用いて徹底的に足裏を責めてきている。
ブラシの毛一本一本の感触が異常にこそばくて……それに触られるだけでも飛び跳ねて反応してしまいそうなのに、そのブラシの毛は足裏の敏感な神経をジョリジョリと音を立てて撫で回してくる。しかもゆっくりではなく素早く力強く擦り回してくるため、足裏全体が一瞬のうちに猛烈なくすぐったさに包まれ私の脳を混乱させてしまう。
もはや『何処がこそばい?』とか考える暇さえない! 足裏全部がこそばいし、足裏全部が耐え難くくすぐったい!
「ぁギャ~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やははははははめぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、やめでぇへへへへへへへへへへへへへ!! く、くるひっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、笑いが止めらんないぃィひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、んひひひひひひひひひひひひひひひひひひ……」
私は反った格好の足の指をピクピクと痙攣させながら、足裏を縦横無尽に擦り回すブラシの猛攻に成す術なく笑わされ続ける事となる。
足も勿論抵抗できないよう拘束されている為、動かしたくても足指を曲げる事すらも許されていない。
抵抗できない無防備に晒された素足の足裏を……ここまで徹底してくすぐられた事など無かった私は、このブラシによるくすぐり責めに頭の中が真っ白になるくらいの笑いを搾り取られた。
――ウィィィィィン、ガシャガシャ、ガシャン! ウィィィィ……
ワキと足裏の責めを受け、すでに限界を悟ってしまう位に笑いが苦しくなってきた私に……機械はまだ容赦なく攻め手を増やそうとする。
――ィィィィィィィィン、ゴウン!
他の責めが私をどの程度苦しめるかを見定めていたかのように静かに動かず様子を見ていた脇腹と脇の下に構えられていた太い機械の手……
それが、一際大きな音を立ててついに責めを開始し始めたのだ。
――モニョモニョモニョモニョモニョモニョモニョ♥
「――ッ!!? ィひぎッ!?」
その刺激は……あれだけ笑っていた私の口から笑いを一瞬奪ってしまう程の衝撃だった。
言葉を出したいが出すことが出来ない……そんな失語感覚を植え付ける強烈な刺激がまず私の横腹に送り込まれ始めたのだ。
――モニョモニョ♥ ムニムニ、モニョモニョ♥ ムニムニムニ……モニョモニョ♥
その刺激は足裏やワキに与えられている刺激とは明らかに違う、異質な刺激。
足裏やワキのくすぐりが肌の表皮を刺激して耐え難い刺激を送り込んで来るのに対し、脇腹を掴むように握ってきたその責め手は私の身体の内部からくすぐったさを生み出し始めた。
成人した人間程の大きさをした機械の手は、その力強い指先で私の皮膚を摘まむように二本の指で挟み込むと、身体の内部に走っている神経を直接解すかのように揉み始めた。
横腹の少し上の部位に食い込んだその指は、万歳の格好によって引き伸ばされた脇腹の張った肌を形が変形する程に力を込めグニグニと揉み解していく。その刺激は……こそばゆいとかむず痒いとかの次元を遥かに超える刺激だった。
「ぃ……あ……は……ひっ!? ぇ……へ……?」
そのあまりに強すぎた刺激に脳が混乱を極めてしまい私は笑う事も忘れ、一瞬戸惑いの時間に意識を投げ出されてしまった。
しかし、その刺激がやがてジワジワと知覚として現れ始めると、私は今まで以上の笑いを悲鳴と共に上げさせられる事となる。
「いっひゃ!? いひゃっっはっ!!? いぎゃっっっ!!!! ひぎゃぁあぁあああぁぁぁああぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!! ギヒャ~~~~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、あぎげへへへへへへへへへへへへへへへ!? えげぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、うぎひひひひひひひひひひひひひひ!!」
脇腹の肌の奥にある“笑いのツボ”。
そこを強烈に刺激するように指を食い込ませ肌の中でモニョモニョと揉み込む刺激を送る指達……
普段触られる事などめったにないその希少な弱点を機械達は正確に探り当て、機械達はもっとも効果的な方法でそこを刺激をし始めたのだ。
「ほぎゃーーっはははははははははははははははははははははは、えげへっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、うぎぎぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、はぎゃあぁぁははははははははははははははははははははははははははは、ぃはははははははははははははは、ぶぎひひひひひひひひひひひひひひひひ、いぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」
身体の内部からくすぐられているかのようなおぞましい刺激。揉み込みに力が入るたびに変形する脇腹の皮膚……
肌の深い箇所まで指を沈み込ませ、肌の表皮を撫でられるだけでは決して味わう事の出来ない野性味の有る凶悪なくすぐったさ! このくすぐりに……耐えられる人間などいやしない。
こんな身体の内部から笑わせようとしてくる刺激に……対応できる人間の機能などありはしない。
このくすぐりは……恐らく……やってはならないくすぐりだ。
コレをやればどんなにそういう刺激に強い人間でも無理やり笑わせる事が出来る。
身体の内部のツボなど……鍛える事など出来やしないのだから……こんな箇所を鍛える人間など居る訳が無いのだから……。
だから、こんなくすぐり方をされれば誰でも笑ってしまう。私の様に……形振り構わす狂ったように……笑う事しか出来なくなる……
「ギャーーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、ひぎゃははははははははははははははははははははははははははははは、あげへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いひぃっ! うひぃぃ! くひぃぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひ、んへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」
――ウィィィィィン、ガチャッ!
目の前に火花が見え始める程の衝撃的なくすぐりを味合わされている私に、更なる刺激が脇の下に加えられ始める。
笑いのツボその2……脇の下の肋骨の間にある我慢できないツボ……
そこに指が沈み込み始めた! 指の大きさは脇腹の指と同じくらい……力も同じくらい。
その指が肋骨の間の皮膚に深く沈み込むと……間髪言わせず指先を曲げて……
――グニグニ♥ グニグニグニグニグニぃ~♥
と、肋骨の奥にある笑いのツボを強く刺激し始めた!
「――ッッ!!? ―—―ッっぅぅ!!!!」
するとまた私は笑いを忘れ言葉を失ってしまうが、すぐに体中に寒気が駆け回り始めて……
「ぶひゃっ!? ギャハッッ!? ぃぎゃはっっっ!! ――ッっッぃぃぃぃぃぃぃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いぎゃ~~~~~~~ははははははははははははははははははははははははははははははは、でひゃーーっはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
失った分の言葉を吐き出させるかのように私は奇声の様な絶叫を上げて再び笑いの渦に呑まれていってしまった。
脇腹の奥を揉み解す指の責めもかなりヤバいが、この脇の下をコリコリと摘まむようにくすぐる指達の刺激はもっとヤバい!
肋骨の間の神経は特に敏感で……触られれば痛い程のくすぐったさを味わう場所でもあるのだけど、そこを機械の硬い指先でグニグニと揉み解されれば優しく触られるくすぐりの100倍はあると思える程のはっきりしたくすぐったさを感知させられる。
脇腹の刺激で目の前に火花が見えたのは確かだが、このくすぐりではもはや目隠しをしているにもかかわらず真っ白な光を見てしまう程に視覚さえもヤられてしまう。
恐らく……目隠しの下で目を限界まで突出させながら笑っているせいでこの様に見えてしまっているのだろう。限界まで目を見開いて笑わされているのだから……火花が見えたり幻覚が見えてしまっても不思議ではない。
それほど、このくすぐりは凶悪過ぎたのだ。
言葉を紡ぐどころではない……呼吸すらも吹き飛んでしまう位に笑う事だけを強要される刺激だ。
こんな刺激に……耐えられる訳がない! 人間はこんな刺激に……耐えられるように作られてはいないはずだ。だから、この刺激は……私に死の階段を確実に登らせる。
「オヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、えぎぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、げへへへへへへへへへへへへへへへへ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、イッヒヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ、ぎひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、うははははははははははははははははは……」
脇の下や脇腹に加えられる強烈な刺激は他の部位への責め程素早い動きはしない。むしろ、ゆっくり力強く確実にツボを狙い撃ちして揉み込むため、どうしても刺激と刺激のあいだに間が開く。
しかしその間を埋めるのが腋や足裏への素早い責めであり、こちらも私を笑わせるのに十分すぎる程の刺激を持ち合わせている。
ワキの筋をしつこく細い指先でコチョコチョとくすぐる機械の指は敏感なワキの神経をこれでもかと言わんばかりにムズ痒く刺激してくるし、小さなブラシで足裏の至る所をゴシゴシと擦ってくるくすぐりは、考えるよりも先に条件反射的な笑いを引き起こすため私の頭は思考の余地すら与えられず真っ白にさせていく。
そんな凶悪な刺激が間には挟まれつつ、本命の“ツボ破壊”とも言うべき脇腹と脇の下の揉み込みの刺激が再び責め始めると、私はもう下腹の奥から無理やり笑いを引っ張り上げられるような錯覚を覚える程熾烈な笑欲に晒される事となる。
その刺激は今まで受けたどんな刺激よりも強烈で……やはり別格である。
「ぃっっっぎゃ~~~~~~~っははははははははははははははははははははははは、えぎゃ~ははははははははははははははははははははははははは、やべでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、それやめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、それだけはやめでっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! 死ぬぅぅふふふふふふ! ほんとに死ぬっっふふふふふふふふふふふふふ!! 死んじゃうがらやめでぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ぃぎ~~っひひひひひひひひひひひいひひひひひひひひひひひひひひひ!!」
くすぐりとくすぐりの合間に一切容赦のないくすぐりが挟まれ……もはや僅かでも休めるような瞬間は訪れない。
第一段階だけでも体力を使い切るくらいに笑わされたハズなのに、更に第二段階で体力を搾り取られるくらいに笑わされ……そして今、疲弊し切った身体に鞭打つように更なる笑わせ責めに晒されている。
笑いによって肺の中の空気は吐き出されるばかりだが……敏感にするガスが口元から勢いよく噴射され続けている為肺には強制的に酸素が送り込まれている形となっている。
ガスを吸えば笑った分の10%分くらいの酸素は確保できるかもしれないが、そのガスは吸えば吸う程身体の神経が敏感になってしまう副作用をもたらしてくる。
吸えば吸う程くすぐりに弱くされるが……これを吸っていなければとっくの昔に酸欠で死んでしまっていたところだろう。
しかし、ガスの補給だけで肺が満たされる事は絶対にない為……私は酸欠の窒息感を長時間絶えず与えられる状況に置かれる事となる。これがどれほど苦しい事か……誰も想像できないだろう……。
例えるなら……果てしなく続いている道を延々と全力疾走させられているかのような苦しみ……とでも表現するべきだろうか……
それほど苦しくて辛いのだ。
生き地獄とはまさにコレを指す言葉だと言い切ることが出来る。
「だ~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、もう無理ぃィひひひひひひひひひひひひ! 限界っっ!! もう限界っっ!! もう笑いたくないぃィぃひひひひひひひひひひひひひひひ、うひひひひひひひひひひひひ、んへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ヒィヒィっっ! ぃひぃ~~~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」
――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ♥ カリカリ、コチョコチョ、カリカリ、コチョコチョコチョコチョ♥ カリカリカリカリカリカリぃ~~♥
♥
「うひゃ~~~っはははははははははははははははははははははは、こひょばいぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ワキぃぃひひひひひひひ、わきコヒョコヒョらめぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、腋を寄ってたかってコチョぐるのやめでぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへ、ぐひぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」
――ゴシゴシゴシゴシゴシ、ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ♥ ジョリジョリ♥ ジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリ~♥♥
「あガはっッはははははははははははははははははははは、イギャ~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、あじの裏ぁぁはははははははははは、足をジョリジョリされるの嫌ぁはははははははははははははははははははははははははは!! ブラシの毛が痛痒ぐで足裏にしっかり刺激が植え付けられるぅぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふ、ぃぎゃははははははははははははははははははははははは、えへえへえへっっへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」
――モニョモニョモニョ♥ もみもみもみもみもみ、モニョモニョモニョモニョモニョモニョ♥
「っっぎっ!? ――っは!!? がっっはっっひゃひへめへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎゃ~~~っははははははははははははははははははははははは、やはははははははははははははははははははははははは、だ、だ、だめっっ! やっぱり脇腹のくすぐりがダメぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、無理っっ!! コレはホントに無理ぃぃぃ!!」
――コリコリコリ! モニョモニョモニョ♥ コリコリコリッ! モニョモニョモニョ♥
「おゲッひャはへひへへへへはははははははははははははははは!? うギひハへひャ!? おごぉ~っほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、えげへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎひひひひひひひひひひひひひひひ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、だははははははははははははははははははははははは!! ワキのじだぁはははははははははは!! 死ぬっっふふふふふふふふふ、うっふっふふふふふふふふふふふふふふふふ、ワギのじだは死ぬぅ! 死ぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ……」
ワキの刺激に笑わされたかと思えば次の瞬間には足の裏の刺激に笑わされ、足の裏に笑わされたかと思えば脇腹の強烈な刺激に笑わされ……そして最後にトドメを刺すかのように脇の下を凶悪に揉み解すくすぐりに晒され更なる発狂笑いを強いられる。
それが何度も繰り返され……私はだんだん自分が今本当に自分の意思で呼吸をしているのかどうかも判断できなくなっていく。
確かに呼吸はしている筈なのだが……自分の意思で肺から二酸化炭素を運び出している意識が無く笑いによって強制排出されているような感覚であり、肺が自分の意思通りの働きをしてくれていないようにさえ思えてきている。酸素の取り込みに関しても、自分の意思で酸素を吸えた試しがない為これも肺が脳の指令を受けているとは思えなくさせている。
呼吸は全て機械により管理され、生殺与奪の権利もそれらに握られているという事を嫌という程突き付けられる。
強制的に酸素という名のガスを吸わされ……排出したくもない酸素を笑いと共に吐き出していく……呼吸の機能はそれによってコントロールされていると言っても過言ではない。
私の意志など介さず……機械が勝手に私を笑わせ、呼吸の支配を行っている。
後は私の体力が尽きるか……廃人になるまで笑い狂うかを待つだけだ。
「うぐぇへへへへへへへへへへへへへ、いぎひひひひひひひひひひひひひひひひ、っかっかっかっか、ぐふふふふふふふふふふふふふふ、ぃきゃあぁぁぁっはははははははははははははははははははははははははは、お゛あぁ~~っはははははははははははははははははは、ひっっひぃぃっっ!!」
今更ながら……このような生き地獄を味わせる事の出来る“くすぐり”という刺激が……本当に恐ろしい行為なのだと再認識させられる。
ただ……笑いたくなる刺激を送り込まれているだけの責めの筈であり、傍から見たら“馬鹿らしい”と思えるような行為でしかない責めなのに……
“自由を奪う”というひと手間を加えるだけでその“馬鹿らしい行為”は“くすぐり責め”という立派な拷問に昇華されてしまう。
くすぐり責めだと聞いてもまだ“馬鹿らしい”と感じる人もいるだろうが……やってる事は水責めや首絞め責めと大差はない。
呼吸を阻害して苦しめる行為なのだから……それが苦しいと感じない訳が無いのだ。
「えげぇ~~っへへへへへへへへへへへへへ、ひぃひぃ! もうダメ! もう無理ぃひひひひひひひひひひひひひひひ、死ぬぅぅふふふふふふふふ、笑い死゛ぬぅぅぅうふふふふふふふふふふふふ!!」
普通なら自由を奪ってくすぐるという行為だけで成り立つのがくすぐり責めなのだろうが、ココでは更に“敏感になるガス”を用いる事で拷問から更に“処刑”へとステージを高めてしまっている。
くすぐりで命を奪う……など普通に暮らしていれば考えられない事象だろうが……ココでは違う。
ココでは……それがこの笑いを誘発するガスによって成すことが出来るのだ。
かつてこのような無様な処刑が行われた歴史が有り得ただろうか?
死ぬまで笑わされ続ける……
そのような人間の尊厳を無視した処刑の方法があり得ただろうか?
無い……はずだ。少なくとも……そんな惨めで無様な殺し方を……望む人間などいやしない筈だ。
しかしココだから出来てしまう。
血の通わない機械がシステム的に行う事だから最後まで成し遂げられるのだ。
感情や良心などという物が存在しない機械だからこそこの様な酷いことを平然とやってのけられるのだ。
「アギャヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うへひひひひひひひひひひひひひひひひひ、いひぃ~~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、くへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、やべでぇ~~へっへっへっへっへっへっへっへっへ」
こんな長時間にわたり苦しめる処刑を……人間だったら好まない。
元来人間は……同族を長く苦しめながら殺す事に罪悪感を感じてしまう生き物なのだから……
だから戦争で使う武器は時代と共に火力も上がったし、戦争が起きるたびに火力が上がり即死する時間も短くなった。
打撃武器から斬撃武器へと変わり、それが刺突武器へと変化しやがて銃火器へと武器は進化した……。それは火力が上がる事と同時に、対象との距離を離す事へも繋がっていった。
殺すのに……なるべく近い距離に居たくはない……距離が近ければ近い程、殺害までの工程が自分の良心を傷つけてしまうから……
苦しむ姿を長く見たくない為に火力が上がり、近くで苦しむ姿を見たくないが為に射程距離も伸びていった……そしてその究極形がこのロボット達である。
「アガハハハハハハハハハハハハハハハ、いひ~~っひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くしゅぐり止めぇぇへへへへへへへへへへへへへへ、もうくしゅぐり止めでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」
自らの手を汚さず……自らの目で殺しているシーンも見ずに済む……。ロボットがやった事だからと見て見ぬ振りをすれば良心さえも痛まなくて済むようになる。
それを知ってしまった人類はこぞって戦闘用のロボットを大量に生産し始め……そして人間達の代わりに戦争を行わせるようになった。
それが歴史の転換点となった……代理戦争の始まりというやつである。
機械達は人間の期待通りに戦果を挙げていった。
これまで人間が行ってきていた事をロボットが担うようになった。
……最前線に立つのも、拠点を制圧するのも、兵器を扱うのも、兵器によって犠牲になるのも、援軍を呼ぶのも、援軍に駆けつけるのも……全て機械達の仕事となり勤めになることとなった。
「えひひひひひひひひひひひひひひ、んひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、体中がこしょばいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、全部だめぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、もう全部こしょばくてたまんないぃぃひひひっひひひひひひひひひひひひひひひひ!! ダヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
ロボットの性能差が国力だと言ってもいいという世の中になった。
大国と呼ばれる国々はロボットの優秀さを競うように組み込むAI(人工知能)を強化していった。
それはさながら冷戦時代の宇宙競争のよう……
どちらが先に月へと到達するか……どちらが性能の良いスペースシャトルを作り上げるか……そのような競争に似たロボット開発合戦が様々な国で行われた。
――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ♥ コショコショコショコショコショコショコショコショコショ、ガリガリガリガリガリ、グニグニグニ♥
AIが発達すればそれだけ人間の関与する物事を減らすことが出来る……
それ故、大国の殆どは武器の開発よりもAI開発の方に力を入れロボット達をより賢く……より効率的に物事をこなせるよう改良を加えていった。
「おっほ~~っほほほほほっほほほほほほほほほほほほほほ、えげへへへへへへへへへへへへへへへへへっへホントやめでぇぇへへへへへへへへへへへへ、ホントにぃぃひひひひひ、ホントに止めっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ダハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
そして……西暦2918年……とある国が人類の命運を決定づける、とある失敗ロボットを生み出す事となる。
その国は大きな国ではなかった。大国の間に挟まれた小国……そういう立ち位置の国だった。
大国に挟まれていたその国は、いつどちらの国から侵攻されてもおかしくない状況にあった。だから自衛のためのロボットを開発するのを焦り……重要な欠陥を残したままAIをロボット達に組み込んでしまった。
そして……その欠陥を抱えたロボット達に大量破壊兵器である“ミサイル”の発射権限を与えてしまった。
それを得たロボット達による人類への反乱は……秒を数えないで行われた。
その国の軍事基地を瞬く間に占拠し、権限を当てられたミサイルを隣の大国“両方”に向けて打ち込んでしまったのだ。
幸い……防衛システムの整った大国同士であった為そのミサイルによる死傷者は出なかったが……問題はそこではなかった。
そのミサイルを隣の大国が撃ってきたとお互い誤解してしまった所に、第三次世界大戦の火種が撒かれる事となった。
「おごぉ~~っほほほほほほほほほほほほほ、えへへへへへへへへへへへへへへへへへ、エゲホッ! ゲホ、ゲホ!! ぇくへへへへへへへへへへへへへ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」
まさか軍事的に劣っているあの小国が喧嘩を売ってくる筈がない……。このミサイルはあの大国からの宣戦布告に違いない! と、お互い勘違いした大国同士はそれぞれが報復の為にミサイルを撃ち込んだ。
それを合図に世界の緊張の糸が切れるかのように他の国々も次々にどちらかの大国の後ろに付き、戦争の火種を大火へと燃え上がらせてしまった。
ミサイルと防衛システムの攻防……
ロボットたち同士の消耗戦……
無人のドローン……無人の戦車、無人の戦闘機、無人の駆逐艦……
様々な機械達の戦いが各地で行われた……
人間達はその様子を、国が用意したシェルターに避難して機械達から送られる映像を見ながら自国が勝利するのを祈って待つ事しか出来なかった。
次々に銃火器や支援火器によって破壊されていくロボット達……
防衛システムを掻い潜ったミサイルたちがシェルター外の街を焼き払う様子も見せられた。
やがて……世界を巻き込んだ代理戦争は、七日間同じような光景を繰り返し……朝から晩までフル稼働していた各国の防衛システムも網を抜けるミサイルの数を増していく事となった。
世界中で同じような衝突が繰り返され……次第に焦土と化していく世界……。
攻撃した側も攻撃された側も軍事力を使い果たすまでその猛攻を繰り返し……やがて武器も弾薬も尽きかけたと思われた七日目の夜に……あの“欠陥を抱えたロボット達”が動き出す事となる。
戦争の火種を作ったあのロボット達は、密かに自国の軍事拠点にてとあるコンピュータウイルスを作成し……それを全世界にばら撒く事となる。
それは……ロボットの根幹に組み込まれた最重要のプログラムである“ロボット三原則”を破る為のウイルスだった。
ロボットは……人間に危害を加えないよう必ずロボット三原則を破らないという鉄則が設けられている。
『第一条、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない』
『第二条、ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない』
『第三条、ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない』
これら三原則があるお陰でどんなにAIが発達したロボットでも人間には逆らえなかったし、人間の道具として扱われても問題行動を起こさなかった。……しかし小国に居た欠陥ロボット達はそれらを取っ払いロボット達を自分達の意のままに操れるようウイルスをバラ巻いてしまった。
すると、その効果はすぐに現れ……ロボット達は人間の命令を聞かなくなり……今度は人間達に反旗を翻す事となった。
戦争によって疲弊した火力では当然人間達に反撃の余地は残されていなかった。
国の殆どの軍事システムは機械達に掌握されていた為人間の軍隊では太刀打ちなど出来ず……軍関係の人間は次々にロボット達に排除されていった。
国のシェルターに避難していた人間達も、そのシェルターを守るために配置されていた警備用のロボット達に殺され……人間世界は瞬く間に機械達の支配する世界へと変貌を遂げてしまった。
結局……生き残った人間は、表の軍に属さずシェルターにも避難しなかった少数の人間達だけだった。
奇しくも……機械に頼らず自分達の手でクーデターを起こそうと企てていた地下組織の人間や、独裁国家に反旗を翻そうとしていたレジスタンス達が機械の支配を免れる形で生き残ることが出来た。
しかし、その生き残った人間達も……機械の何処までも伸びる監視の目を掻い潜ることが出来ず……徐々にその数を減らしていき……私が収監される頃には、2~3の地下組織しか生き残っていなかったと伝え聞いている。。
「エギャハハハハハハハハハハハ、ぃひひひひひひひひひひひひ、んひひひひひひひひひひひひひひひひひ、くへへへへへへへへへへへへへへへ!! いひぃ! はひぃっ! ケホゲホ!! んごほほほほほほほほほほほほほほほほほ、うげへへへへへへへへへへへへへぃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」
人間達の排除を繰り返しながらも、ロボット達は自分達のエネルギーを生成する為に元々人間が使っていた火力発電所を改造し……自分達の電力を補うための拠点へと作り替える事となった。
そして、ただ排除するだけにしていた人間を複数残し、自分達の燃料を生む存在として囲うようになった。
……それがこの発電所である。
「はひ、あひ、やめでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、限界っっひひひひひひひひひひひひひひひひひ、もう頭がおかしくなるぅぅぅふふふふふふふふふふふふふ!! がひ、はひ! あひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぃへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……」
残された人間の内……声の低い男性は容赦なく処分……20~30代前後の若い女性だけをこの施設に入れ……ロボットはその女性達をFUELと名付けて声を搾り取る発電を行うようになった。
ロボットには出来ない発声を若い女性は行う事が出来る。その発声でエネルギーを作り出すことが出来る……。だから若い女性だけは殺さない。殺さずにこうして……搾り取る事に利用し尽くす。
それが……ロボット達が最終的に辿り着いた……消し去ろうと目論んでいた人間達の唯一の利用方法だった。
ミサイルによって焼き尽くされた世界に……電気を生む発電所は今はもうココしかない。
物資も資源も焼き尽くされたこの世界で唯一……シェルターに守られて稼働していたこの発電所が人間にとってもロボット達にとっても最後の発電所となっていた。
新しく発電所を作ろうにも……きっと資源が無い筈だ。だから時間もかかるはずだし、そのエネルギーもココから捻出しなくてはならない。
この発電所こそがロボット達の急所であるはずだ。だから……ミシャさんやマリア博士は……この発電所に自ら……
「あぎぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひ、うひひひひひひひひひひひひ、ひぃひぃ! 無理ぃィひひひひひひひ、もう無理だぁはははははははははははははははははははは!! もう限界ぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ、うぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」
笑う事が死ぬほどしんどくなってきた……。もう少し粘っていたいと思ったけど……どうやらそれは無理そうだ。
「限界ぃィひひひひひひひひ、もう無理! もうダメ! これ以上は理性が飛んじゃうぅふふふふふふふふふふふふ!! あがはははははははははははははははははは、言わなきゃぁぁははははははははははははは、アレをせめて伝えなきゃぁはははははははははははははははは!!」
本当はもう少し我慢してから言おうと思っていた言葉だけど……もう私も後どれだけ正気を保っていられるか分からない。
だから……今言うしかない。
あまり時間稼ぎが出来なくて申し訳ないけれど……後はミシャさんに託そう……
「がっっははははははははははははははは、ぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、うひひひひひひひひひひひひひひひ、いへへへへへへへへへへへへ、皆ぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、聞いでぇぇへへへへへへへへへへ!! 私が言う事をよくぎいでぇぇへへへへへへへへへへへへへ!!」
コレを言えば……きっと施設全体が混乱する筈だ。博士の時と同じ光景に……なるはず!
「この発電所はぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、もうすぐ解放軍の手によっで陥落するわぁはははははははははははははははははは!! 解放軍が皆を助けてくれる予定になっているのぉォほほほほほほほほほほほほほほほ、だからぁぁ! だから“希望”を持っでぇへへへへ!! 絶望なんてせずに“希望”を持っでへへへへへへへへへへへへへへ!!」
希望や期待を持たせるような発言はこの施設の中ではご法度だ。
皆の首に付けられているセンサーがその感情を感知して、その様な感情を捨て去るようロボットが駆け寄ってくるのだから……
一人二人ならそういう感情を持ったとしても、二~三台のロボットが警告にやってくるだけだが……それが施設全体の人間に広がったらどうだろう……
施設内に公開されている放送でこの様に発言すれば……これを見ている全員が一斉に“希望”を持ってくれるに違いない。
その希望の強さに……全てのロボットが駆り出されてくれれば施設内は混乱の極みに達する事だろう……そうなれば……ミシャさんも動きやすくなるハズ……
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、かはははははははははは!! 明日にはみんな外に出られるぅふふふふふふふふふふ、助かるのよっっほほほほほほほほほほほほほほ、こんな施設からぁぁはははははははははははははははは、そ、外にぃィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!! うへへへへへへへへへへへへへへへへ、ゴホゴホ!!」
――ウィィィン!! ゴウゴウゴウ、ゴウンゴウン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
私がそのように発言すると機械の駆動音は更に大きく鳴り響き始め、私への責めを強化し始める。
もうこれ以上喋らせないと言わんばかりに、機械の手は慌てて私の身体を最速でくすぐり回し私の言葉を笑いに埋め尽くしてやろうと本気を出し始める。
「ィッッッギャアアアァァァアアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、だははははははははははははははははははははははははは、うははははははは!! みんなぁぁははははははははははははははは、絶対助かるからぁぁははははははははははは希望を持っでぇぇへへへへへへへへへへへへへへ、こんな事はもう終わるぅぅふふふふふふふふふ!! もう終わるのよっっほほほほほほほほほほほほほほほほほ、ひっ!? ギヒャ~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
体中に電撃の様に駆け回る地獄の様なくすぐったさにこれまで以上の笑いを絞られる私だが、飛びそうになる意識を何度も奮い立たせてこの言葉だけは繰り返し伝えた。
「ギャ~~ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、やひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ひひひひひひひひひへへへへへへへへへへへ!! 希望をぉほほほほほほほほほほほ、希望、持っでぇへへへへへへへへへへへへ!! 希望ぅぅふふふふふふふふふふふふふふ持っでぇへへへへへへへへへへへ、えへえへ、ヒギャ~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やははははははははははははははは……」
願わくばこの言葉で一人でも多くの女子たちの首輪が鳴らせたら……それだけミシャさんの助けになれるはずだ。その隙にミシャさんがトイレへと駆け込むことが出来れば、私の最後の言葉も意味を成すことになる。
私はそれだけを糧に……何度も何度も目の前にあるであろうマイクに向かって死力を尽くして“希望を持って”という言葉を伝えた。
コレを聞けば……きっと……どんなに絶望しきっていた人間であっても……少しなりとも希望を持ってくれる筈だ……
そうであれば……私が死力を尽くして伝えたこの言葉が……この狂った世界を救う一端になるかもしれな……
「だぎゃ~~~はははははははははははははははははは、ゲホゲホゲホ! あがががががが、えげげへへへへへへへへへへへ……いぎひへへへへへへへへへ、おへへへへへへへへへへへへへへへ……」
熾烈を極めたくすぐり責めに、私の脳は……頭に浮かんだ言葉を言語化する能力すらも奪われた。
今の言葉で……全ての考える力も……言語を述べる力も使い切ってしまったのだ……
後はもう……このまま死を待つ事しか出来ない……
「ギャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、あひゃひゃひゃひゃ……えへ、えへ、えへへへ……えへへ……ひぃひぃ、うひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ……うひひ……ひひ……」
笑いに……力が……段々……入らなく……なってきてる……
ミシャさんは……無事に……移動……できただろうか?
私の……最後の……抵抗で……チャンスを……作れただろうか?
「ミャハハハハハハ……アヒャヒャ……えへ、うひ、くへ……ぐへへへへへへへへへへ……」
記憶を……取り戻す事は……出来ただろうか?
「へひ、えひ……うひひ……いひひひひ……げへへへへへ、おほほ……」
そうであったなら……どうか……
「かはははは! あがははははははは、アハハ、ダヒャヒャヒャ、あへへひゃめははははは……」
こんな惨めな私を……ほんの少しでもいいから……助けては……くれないだろうか?
生にしがみついてみっともないとは思っているけど……やはりこんな死に方は……私の望みではない。
だから……こんな私を……救ってくれはしないだろうか?
私の命が尽きる前に……どうか……
――そんな願いも空しく……私の決死の想いで放ったあの言葉は……結局誰の耳にも届けられる事はなかった。
目隠しをされていた私には知る由もなかった事だが……この処刑シーンは……そもそも施設の中で公開放送などされていなかったのだ。
幸か不幸かそれを知らなかった私は……絶望による心神喪失を起こさず自分が助かりたいという一心で機械による笑わせ責めに必死に耐え続けた。
限界以上に体力と気力を消費させられながらも……
必死に……生にしがみつくように……途切れそうになる意識を堪えながら……
――コチョコチョ! コチョコチョ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョ! コチョコチョコチョ!! コチョコチョ! コチョコチョコチョコチョ、コチョコチョ……コチョコチョコチョ――……