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1:古峯井明日香は地雷を踏みがち  私の通うこの女子高には学生達の代表として学校運営を助ける組織……すなわち生徒会という組織が存在する。  細かく説明しなくてもどの学校でも似たり寄ったりな組織を構成しているだろうから省略するけれど、うちの学校にも学生の立場で学校に貢献する組織である生徒会は健在だ。  私の所属するPT(痛みの無い拷問)研究クラブは先日、その学生組織のトップである生徒会長……新崎詩織さんに直接交渉を行った(もちろん強引にあの拷問にかけて無理やり認めさせた)おかげで、同好会レベルの“クラブ”という名称から晴れて“部”へと昇格する事が出来た。私としては別に嬉しくも何ともないし、逆に悪目立ちして生徒会……果ては学校組織全てに私が目を付けられてしまったのではないかという不安の方が大きい。  およそ女子高生が研究するには相応しくないであろう“拷問”という怪しいワードだけれど……私はそれを研究しなくてはならない。  だって……所属してしまっているのだから……。  この怪しいクラブ……いや、怪しい“部”活動に!  そして今日も部室の分厚い扉を開けば聞こえてくる……    活動の怪しさを象徴する、か弱い乙女の悲痛な叫び声が……。 「えびゃああぁぁぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! だめぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、しぇんぱいっっひひひひひひひひひひ、綾はぞご弱いでずぅぅぅぅぅふふふふふふふふふふ!! ひぎゃあぁぁはははははははははははははははははははははは!!」    うちの部室から聞こえる叫び声が“悲鳴”でなく“爆笑”だったことに驚く人もいるかもしれない。だってこの部活は“拷問”を研究している部活だと説明したのだから……。  だったら、何故彼女はこの防音壁すらも貫通しそうな程甲高い笑い声を上げているのか? 普通は痛々しい程の悲鳴を上げて然るべきとだとは思うのだけれど、ここの部ではこれが通常運転なのだ。  そう……被験者が笑う事こそ、我が部が研究している“拷問”にとって大事な事なのだ。 「いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! くるひぃっっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!! 息が出来ましぇんんっっっふふふふふふふふふふふふふふ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」  そしてこの拷問の肝となるのは、彼女が“笑っている”という解釈ではなく“笑わされている”という解釈で見なくてはならないと言う点だ。  同じじゃないか? 笑ってる事には変わりないじゃないか? と思われた方は前回までの私の活躍(?)を見ていない方なのだろう。だからそれらが全く違う意味になるという事をこれから説明したい。 「あひぃぃぃひひひひひひひひ!! あじの裏はらめぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへ!! らめですっでばぁぁぁははははははははははははははははははははは!! いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」    彼女……新崎綾ちゃんは、生徒会長である詩織さんの実の妹さんである。  強気で自信家で物事をハキハキと話す会長とは逆でいつもオドオドしていそうな大人し目な性格。髪もお姉さんほど長くなく前髪を切り揃えているパッツンなボブという容姿。  美人の生徒会長がお姉様という立ち位置だとするなら、この綾さんは間違いなく妹系だ。守ってあげたくなってしまう可憐さと可愛さを持った妹系女子なのだ。(羨ましい……) 「うえぇぇ~~っっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! いひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、んひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ぎひゃぁぁぁぁははははははははははははははははははははははははははははははははははは!! じんじゃうぅぅう、じんじゃいまずよぉぉぉほほほほほほほほほほほほほほほほほ!! いへひゃははははははははははははははははははははははははははは!!」  そんな秋風と読書が似合いそうな大人しい彼女が……笑うと言っても微笑みを零すくらいが丁度いいくらいの可憐な彼女が……  なぜこんなにも乱れた大笑いを繰り返しているかと言うと。  それは『彼女の意思で笑っている訳ではない』という回答を用意しなくてはならない。  こんな下品な笑い方を彼女がする印象なんて最初は持てなかった。  奥ゆかしくて清楚可憐な立ち振る舞いしか似合わない……と勝手に思っていたほどだ。  そんな彼女が、このような馬鹿笑いを自発的に上げる程私は面白い顔をしている訳ではない。  勿論、部室に居る先輩方が即興でコントをして見せたり変顔をして見せている訳でもない。  でも彼女は笑っている。  いや、笑わされているのだ……無理やりに。 「あはぁぁぁははははははははははははははははははは、いひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ、はひぃはひぃはひぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!! くるひぃ! くるひぃぃよぉぉぉぉ!! んはあぁぁぁぁああぁあはははははははははははははははははははははははははははは!!」  私が入学初日にココへ訪れた時に座らされた拷問用の椅子……今はそれに綾ちゃんが座らされている。  この椅子は肘置きに手を拘束する為の枷が付いており、椅子の脚にも同じような枷が付いている。  普通の椅子より脚が高いこの椅子は座らされれば足が地面から少し浮く様な体勢になってしまい、先輩方の行う“拷問”がやり易くなるよう設計されている。  綾ちゃんはそれに座らされ身動きが取れなくなる様にと手足を拘束されていて、衣服は制服にしわが寄るのを避ける為(いや、もしかしたら小夜子先輩の趣味なのかもしれないけど)、上下ともに体操着に着替えさせられ上履きと靴下だけを脱がされた格好で座らされている。  地面に足が付かない程の高さがある椅子だから、足首部分を枷に拘束された彼女は足で床を踏みしめる事は出来ない。中途半端な高さで素足が宙に浮いてしまっているという状態になっている。  この“足を宙に浮かせて拘束する”というのが実はとっても大事な事なのだ。  だって、この拘束方法こそが彼女を笑わせる重要な要素になっているのだから……。 「だ、だ、だめぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! モジョモジョするのやめでぇぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへ!! 綾、それ苦手ぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」  意地悪な笑みを零してその拘束された綾さんの足元にあぐらをかいて座っている小柄な先輩。  青みがかった髪を細いツインテールにした『二坂 理子』先輩が彼女を笑わせている。  足が敏感で刺激されるのに弱いと語っていた綾ちゃん……。  その情報をもとに“こういう拷問”を行うのが得意な理子先輩が彼女を責め立てて笑わさているのだ。 「びひゃあああぁあぁぁ~~~ははははははははははははははははははは!! ちょ、せんばいぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 土踏まじゅは無しって言ったじゃないれすかぁぁぁ!! はひぃぃぃ!!? あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ゲホゲホ!! っぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! きつひぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!! やめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  足が敏感な彼女……いや正確には“足の裏”が敏感で弱いと語った綾さんの事を、容赦なく……慈悲など一切かけずにこの拷問にかける理子先輩。彼女の地の性格を表すかのようないやらしい笑みを見ているだけで私の背筋は勝手に震えてしまう。  綾ちゃんが咳き込んでいても……笑いが止まらなくて苦しそうにしていても、理子先輩は動けない彼女を責め立て続ける。とても楽しそうに……。 「あひゃあぁぁぁぁははははははははははははははははははははは、くしゅぐったいぃぃぃいぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!! くしゅぐったいですぅぅぅぅぅ!! んはぁぁははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、ゴホ、ゲホッ!!」  床を踏みしめていない宙に浮いた足の裏。その無防備に晒されている足裏に理子先輩の小さくて可愛い指達が這い回っている。  細い指先を足裏の皮膚に立て、小さく引っ掻く様な動きで素早く優しく刺激して回り綾ちゃんにとある触感を与え続けている。  その触感こそがこの拷問の全てであり、この拷問になくてはならない刺激だ。  大体の人は経験したことが有るのではないだろうか? 幼い頃にじゃれ合った際に行ったこの行為を……。  ワキとか……足の裏とか……首筋とかを……コチョコチョっと触って相手に悪戯した事くらい有るのではないだろうか?  それを今理子先輩は行っているのだ。  拘束されて抵抗できなくされた綾ちゃんに……。 「ぶひゃ~~~っひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! リゴしぇんぱいのくしゅぐりやばいぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!! そんにゃに激しくされたら綾は死んじゃいますぅぅふふふふふふふふふふふ、はぎゃあぁぁぁははははははははははははははははははははははははははははは!!」  そう、うちの部は“くすぐり”で被者を笑わせ続ける拷問を行って先輩方が楽しむ……いや、研究して勉強する部活動なのだ。  “くすぐり”が“拷問”になるってどういう事なのか? そもそもそんな子供染みた遊びで拷問は成り立つのか? 最初は私もそういう疑問を持っていた。実際にヤられるまでは……。  入学当日の部活見学の折に私はクラブの部長である彼女……榊 和音先輩に生徒会のスパイだと疑われこの拷問に掛けられてしまう。  今の綾ちゃんと同じように素足にさせられ……動けないように拘束され……理子先輩にくすぐられたのだ……容赦なく。  この子供のように背が低い癖に底意地の悪い性格をしたロリッ娘(理子)先輩のくすぐりは本当に容赦がない。私が思わず笑ってしまう箇所を的確に探り当て、そこを休みなく責め立ててくる。  くすぐりなんかに屈服するわけがない……何て最初の私は馬鹿にしていたのだけど、笑いたくもないのに無理やり笑わされ続けるというこの拷問は徐々に私のそんな馬鹿にした態度を改めさせる事となる。  とにかく苦しいのだ! 笑いと笑いの間に休みなど入れてはくれないのだからまともに呼吸が出来なくて常に酸欠状態が続いてしまう。息が普通に吸えない状態なのに、くすぐったくて笑ってしまうと息を吐き出してしまう為尚更酸素を吸う事なんて出来やしない。  まるで洗面器一杯の水に顔を付けさせられているかのような苦しさ……。酸欠に次ぐ酸欠でこのまま窒息死してしまうんじゃないかと思ってしまう恐怖感……。そして、笑う時に力んでしまうお腹や肋骨、声を出す喉……それらが笑い続ける事で痛みを発してくる。無理な運動を強いられる事で内臓すらも悲鳴を上げ始めてしまう。  そんな状態になっていても先輩のくすぐりは止まってはくれない。どんなに笑う事が苦痛になっていても、どんなに苦しくて辛くなってきていても、先輩の手は止まらないのだ。  くすぐったいから体が悲鳴を上げていても笑ってしまう……。苦しいから逃げ出そうと考えるけど、足枷や手枷に拘束された手足は逃がす事は出来ない。その逃げられない身体を……足の裏を、腋を! 先輩方は無慈悲にくすぐって私を笑わせたのだ。  私が泣こうが喚こうが……延々と……。  このいつまでも終わらない笑わせ責めの連続こそがくすぐり拷問の神髄であり、クラブで研究している“痛みの無い拷問”の核となっているのだ。 「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ぐるじいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひ、せんぴゃいぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 一旦ズドッブぅぅふふふふふふふふふ、んはぁぁははははははははははははははははははははははははは!! ずどっぶじでぐだざいぃぃぃぃぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、ハギャアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「なによ、だらしないわねぇ~。あんたってばドMなんでしょ? マゾはもっと苦しんだ方が楽しめるんでしょ? だったらもっと笑わせてあげるから遠慮なく苦しみなさい! あんたの汚い足裏を綺麗なこの私の指でくすぐってあげてんだから……遠慮せずに笑い狂いなさい!! ほれほれほれぇ♥」  「だひゃあぁぁぁぁぁっっっはははははははははははははははははははははははははははは!! 汚くないですぅぅぅふふふふふふふふふふ!! 綾の足は汚くないぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「何? あんた自分で気づいてない訳? 汚いわよ? 足の付け根とか真っ黒だし……それに臭いわ! 何日お風呂に入ってないのよ?」  「あひゃあぁぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! お風呂入ってまずぅぅぅぅぅふふふふふふふふ!! 毎日欠かさず入ってまずよぉぉぉぉぉぉほほほほほほほほほほほほほ!! そんな嘘酷いぃぃひひひひひひひひひひひ!! 酷いですうぅぅぅふふふふふふふふふふふ!! ひぎゃあぁぁ~~っははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 「あら? そんな事言って良いわけぇ? 先輩を嘘つき呼ばわりして良いと思っているわけぇ? うん?」 「いぎゃぁぁはははははははははははははははは、だっでヒドイですもんんんっふふふふふふふふふふふふふ!! そんにゃ言い方されたら恥ずかしくて死んじゃいますぅぅ!!」 「先輩に向かって暴言を吐いた罪は重いわよぉ~♥ 覚悟は出来ているんでしょうね?」 「あびゃあぁぁぁぁぁぁはははははははははははははははははははははははは、やめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! これ以上やられたらお腹が捩れちゃいまずぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふ!!」 「それは良いわね♥ お腹が捩れて背中とくっつく姿を見てみたくなったわ♥ ほら! もっと笑い狂ってお腹を捩らせなさい! 腰が立たなくなるまで笑わせ責めにしてやるんだからッ!! ほれほれぇ!!」   今日の理子先輩は一切容赦がない。被者が綾ちゃんだから……と言う事なのだろうけど、もう延々1時間以上もくすぐりを止めていない。  先輩が言っていた様に綾ちゃんは責められるのが好きなドMさんなのだけど……こんな風に長時間休みなく苦しめられる拷問には流石の彼女でも耐えられないらしく、先程から本気の“やめて!”を連呼していた。でも先輩はそれを意地悪な言葉責めを混ぜて反故にし、彼女の懇願を無視し続けている。そこに理子先輩の“嫉妬深さ”が見え隠れしていて……私も軽はずみな言動や行動は慎んでおこうと改めて心に留めた。 「理~子ちゃん? もうすぐ完全下校時刻になっちゃうけど……まだお楽しみを続けるのぉ?」  理子先輩の嫉妬心を燃え上がらせた元凶……とでも言うべきか、PT研究部の中で唯一のおっとりお姉さんキャラである京堂小夜子先輩。彼女は綾ちゃんが現われるまでは理子先輩にべったりとくっついてお人形のように可愛がっていたのだけど、綾ちゃんが入部すると同時に彼女の興味は綾ちゃんに移り過剰なスキンシップで可愛がるようになった。  自分よりも可愛がられている後輩の姿を見せつけられた理子先輩はこのように嫉妬に狂って“入部テスト”と称してくすぐり制裁を延々と繰り広げている。  全く……。構ってほしいが為に他人をイジメて気を引こうとするのが見え見えで……その容姿と相まってやっぱり理子先輩は誰よりもお子様に見えてしまう。すぐ感情的になる単純な性格であるが故一度駄々をこね始めたら手が付けられない……。お子様の容姿でありお子様の思考の持ち主なのだ。 「あっ、そうそう。綾ちゃんの弱点は土踏まずのもう少し横側だよ♥ そこを引っ掻く様に爪先でカシャカシャしてあげるととっても効いちゃうみたいなの♥」  そしてこの長い前髪で片目を覆っている緩い口調のお姉さんである小夜子先輩……彼女がこの部では最も恐ろしい。  嫉妬に暴走する理子先輩を止めようとしたかと思えば、今のように被者の弱点を教えて先輩にそこを責めさせて反応を伺う……そしてその反応を手に持ったバインダーに挟んであるルーズリーフに何かを記録している……。何を記録しているかは分からないけれど、どうせロクでもないデータを取っているに違いない。そういう実験的なデータを取るのが彼女は好きなのだ。集めたデータを何に使うつもりなのか怖くて聞けないけれど……きっと本当にロクでもない使われ方をするんだろうなという想像は容易についてしまう……だって彼女は策士なのだから……。 「ついでにカカトの端の方も触ってもらっても良い? 私……そこ触ってないんだよねぇ~~♥」  小夜子先輩はこの部の“頭脳”とでも言うべきポジションに属している。  拷問の流れや、そこへ持っていく為の道程……果ては拷問の雰囲気から部員たち一人一人の動きに至るまで、細かい“シナリオ”を立案してそれを基に導入から本番まで拷問全体を形作る。  そういう事が出来る先輩なのだ。  だから一番怖い! おっとりした笑顔の奥で何を企んでいるか分からない不気味さを孕んでいるという点で理子先輩とは真逆の性格だと窺い知れる。  多分……この理子先輩の拷問劇も彼女の策略である事は間違いない。  あえてお子様で単純な性格の先輩を嫉妬させるように焚きつけて……本気の拷問を綾ちゃんに仕掛けるよう仕向けたに違いない。  だって……この拷問が始まってからずっと理子先輩に指示を与えて記録を取っているのだから……。  たまに「許してあげなよ~」とか「可愛そうだよぉ~」とか言葉を挟んではいるが、気が付けば攻め手に指示を出して自分の思い通りに拷問データを取ろうとする姿勢がちらほらと見受けられる。  きっとこの入部テストという名の拷問劇も、周到に準備された小夜子先輩のシナリオの一部なのだろうと疑ってしまう事を禁じ得ない。  それだけ不気味で恐ろしい先輩なのだ……この小夜子先輩は……。 「えぇ~~っ! “不気味”だなんて酷いよ~~明日香ちゃぁ~~ん!」  ほら……気味の悪い先輩らしく、こんな風に私の心の声さえも読み取ってしまって…………。  ……しまって? 読み取って…………って……あれ??  ……あれれ?? 「それにぃ~~! 私ってばそんなに腹黒くはないよぉ? 理子ちゃんみたいに純粋な心の持ち主なんだよぉ~? ウフフ♥」  あれ?? 私ってば……心の中で解説していたつもりだったけど……もしかして、声に……出してた?? 「いやぁ~~明日香が我が部員の事をそんな風に見ていたとは……それは是非私の評価も聞いてみたいものだな」  部長が横からヒョコっと顔を出し耳元で私に囁きを入れる。私はそれによって自分のモノローグが声に出ていたと言う事を確信し顔を青ざめさせる。 「あの……えと……一体どの辺から……私……声に出てました?」  恐る恐る部長の和音先輩に顔をギギギと傾け、ロボットのように固まった顔で私は問いかける。  視界の隅に入っている無言の理子先輩の背中が怖い……。 「“私の通うこの女子高では”から……だが?」 「さ、さ、さ、最初からデスカ!? モシカシテ……ずっと……??」 「あぁ、なんかボソボソ独り言を喋り始めたなぁ~って思ったが……段々その声が大きくなっていって最後には普通に喋っているような感じになっていたぞ?」 「んえっっっ!!? な、な、な、なんで止めてくれなかったんですかぁ!!」 「え? ワザと言ってたんじゃないのか? 理子に聞こえるように……」 「ち、ち、ち、違いますよぉぉぉぉ!! そんな訳ないじゃないですかぁ!!」 「あぁ……そうだったんだ? てっきり焚きつけているのかと思ってたんだ……」 「そんな自分の首を絞めるような事をしませんよぉぉ!!」 「だったら……お前結構ヤバイかもな……ハハハ……」 「ハハハ……じゃありませんよぉぉぉ!! だって私……結構素直に思ってた事を――」  そこまで言いかけると、あぐらをかいてくすぐりに執着していた理子先輩の手が不意に止まる。  私はギクリと身体をビクつかせ部長の顔からゆっくりと理子先輩の小さな背中に視点を移し、冷や汗を額横に一筋垂れさせた。  すると、理子先輩が威圧する様な低い声でソッと私に向けた言葉を零し始める。 「成程ねぇ~~確かに私は小さいし……発育も悪いから“お子様”に見えるわよ……ね? うんうん……」 「せ、先輩? ち、ち、違っっ……違いますよ? 違っ……」 「思考が素直だって事は認めるわ……だって今……素直に殺意を抱いているんだものね……あんたに!」 「ひっっ!! ち、違います! 違いますぅ!! こ、こ、これは……そ、そう! 小夜子先輩のシナリオで! その……ワザとそう言わされたというか……その……」 「あ~す~か~ちゃん♥ 嘘はいけないよっ♥ そんな指示……出してなかったでしょ? わ・た・し♥」 「あひぃ!? ちょっっ、小夜子先輩っっ!! 話しを合わせて下さいよぉぉ!!」 「えぇ~? だって……『嘘つきは拷問の始まり』って言うじゃない? 嘘はついちゃダぁ~メ♥」 「ど、泥棒でしょっっ!! 泥棒の始まりでしょ!! 怖い事言わないでくださいぃぃ!!」 「……いいえ、小夜子先輩の言葉で間違いはないわ……」 「……はへ?」 「あんたは素っ裸にひん剥いて……全身こそぐり責めの刑に……処して……あ・げ・る♥」 「ひぃぃぃぃ!! ま、待ってくださいぃぃぃぃ!! じょ、冗談ですぅぅぅ!! 冗談で場を和ませようとしただけですぅぅぅ!!」 「あんた……素直に言っちゃったって言ってたじゃない? つい今しがた……」 「ち、ち、違っっっ――」 「っと言う事は、あんたの中で私は……単純で……馬鹿で……見た目も中身もお子様で……短絡的で間抜けな先輩って思っていたと言う事よね?」 「い、いや~~理子先輩って素晴らしいですよね? 可愛くて……カッコ良くて……大人っぽくて……えっと……えっと……」 「あんたのそういう自分から地雷を踏んでいくスタイルの子……嫌いじゃないわ♥」 「えっ? えへへ……そ、そう……デスカ?」 「えぇ……嫌いじゃないけど……」 「……ないけど?」 「嫌いというわけじゃないんだけれど……」 「ない……けれど……?」 「……あんたは“死刑”ね♥」 「うひぃぃぃぃぃっっっ!!?」

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