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3部構成なのにタイトルなっっが。


・パート1はフェラオンリー ←今回

・パート2はパイズリオンリー ←次回

・パート3は4P ←次々回

の予定です。


~以下本編~



 魔術王――。もとい、魔神王ゲーティアによる人理焼却及び、時間神殿での彼との決戦。その後に発生した空想樹を基盤とした異聞帯等を筆頭に、大小関わらず数多の特異点……。

それらの事態を、コツコツと信頼を積み重ねてきた契約サーヴァントや、現地で新たに得た仲間たちと共に一つずつ解決してきたその青年。



 人類という種族が今日まで築き上げてきた2000年にも及ぶ膨大な歴史と、これから先――永久に続く遙かなる未来。それらを一身に背負い続けている人類最後の希望であるカルデアのマスター。

藤丸立香は今……。



「なんで、こんな事に……」



 唯一、彼と正式な契約を結んでいるサーヴァントであるマシュ・キリエライトの付き添いもなく一人――。単身、見覚えのある白い扉の前で立ち尽くし、項垂れていた。



 今彼がいる場所は、コヤンスカヤたちによる襲撃が起こる以前のカルデア内廊下。――ある種、懐かしいとも……皮肉めいているとも言えるそんな光景が広がっていた。



 そこは――月の聖杯戦争を管理していたムーンセル。それを乗っ取ったどこぞのラスボス系後輩によって作られた特異点だった。



 彼女だけが原因ではないにせよ――最終的にゲーティアと同じ、人類悪が顕現したセラフ然り……。外宇宙に住まう名状しがたいトリックスターと融合し、“文字通り”森羅万象を支配したサバフェス然り……。



 あの「月の女神」を自称する後輩が関与した特異点は、普通のソレではないことは、彼も重々承知している。加えて言うのなら、彼はそんな何が起こるかもわからない――地雷原の如きデンジャラスすぎる特異点に一人なのだ。



 つまり、今の彼は――プロの殺し屋に命を狙われるのと同等に、危機的状況にある。



 ……だが、当の彼は少しも慌てふためく様子がない。



 というのも、あの腹黒ラスボス後輩が――性懲りもなくまた新しい特異点を作った原因は……彼。藤丸立香本人にあるのだ。

そして彼はこの特異点の存在を、他のサーヴァントはもちろん……マシュにすら知られたくないため、こうして一人でやってきたのだ。



~ ~ ~ ~



 事の発端は数時間前に遡る。



 その時彼は、自分の部屋で一台のパソコンと向き合っていた。



 繰り返しになるが、人類史が消滅の危機を迎え、唯一残った希望が彼である以上――その両肩には計り知れないほどの重圧と責務がのしかかる。

となれば当然、彼には山のような報告書の作成と処理……といった仕事がある……のだが――その時彼がパソコンを起動していた理由は全く違う理由からだった。



 彼が誰もいない部屋で一人、パソコンに釘付けになっていた理由。それは……溜まった性欲を発散させるためだ。



 彼は確かに人類最後の希望ではあるが、それと同時に健全な青少年でもある。

となれば畢竟、普遍的な健康男児と同様に性的欲求がある。

しかも彼の場合、幾度となく命の危機に瀕してきたためか、その溜まり具合は他のそれを易々と凌駕していた。



 ――だが、人類史が焼却された今。彼の周りにはそれを解消するためのコンテンツがない。



 マシュを筆頭に彼を慕う女性サーヴァントも数多くカルデアに在籍しているが、共に生死の狭間をくぐり抜けてきた彼女たちとそういう関係になることだけは、“絶対に超えてはいけない一線”として彼は避けてきた。



 日に日に溜まり、増幅していく性欲――。問題を解決すればするほど増えていくカルデアのマスターとしての責務。この二律背反に苦しんだ彼が導き出した答えは……音声だった。



 これまでの報告書作成等により、彼のパソコン操作スキルは卓越したものになっていた。そのため彼は、秘密裏に録音した女性サーヴァントたちの音声を編集し、自分専用の性的な音声データを作りはじめたのだ。



 とはいえ多少――自ら課した“超えてはいけない一線”に抵触していると感じることもあり、後ろめたい気持ちがない訳でもなかった。

だが、DNAに刻まれた本能的欲求は抑えきれず、そしてその罪悪感が一種のスパイス的効果をもたらしたこともあり、彼の秘蔵のデータはまるで植物のようにパソコン容量をジワジワと占領していった。



 無論、彼はその秘蔵の音声ファイルの存在をひた隠しにした。その隠匿ぶりは凄まじく、彼と最も長い付き合いがあるマシュ・キリエライトですら知らないほどだった。



 だが……。



「へぇ……♥ センパイってぇ、こ~いうシュミしてたんですねぇ~……♥」



 人類最後のマスターが特異点解決と同程度に心血を注いでひた隠しにしてきた秘蔵のコレクションは、なんともあっけなく彼以外の人物の目に触れた。



 人理を滅亡に陥れる全ての諸問題が解決したとしても、決して外部に公開されることはなかったであろう――最重要にして、極秘中の極秘であるお宝音声データ。



それも、よりにもよって――数いるサーヴァントの中で、最も厄介なことになるであろう存在に……。



 混乱・驚愕・絶望・恐怖……。その他、ありとあらゆる感情が彼の――藤丸立香の脳内と心。そして、全身を支配した。

サーヴァントが使用する華々しく、派手で豪快な宝具――。それら全てが子供の玩具に思えてしまうほどの衝撃が、彼を襲った。



 男の目はただじっと目の前の光景――。如何にも、悪だくみをしているであろう歪な笑顔でこちらを見つめるBBを映していた。しかし、彼が見ていた光景は、かの魔神王が人理焼却に用いた宝具――。天使の輪のような滅却の輪が浮かんでいた。



 瞼の裏と脳内に浮かぶ、あの絶望的に美しく凄惨な輪を一望しながら、彼は言葉にはしないものの、こう思うのだった――――。



(貯蔵してある聖杯全部捧げたら、あれ……再現できるかな)



~ ~ ~



『あー。あー、あー……。テステス……マイクテスト、マイクテスト――。センパイさん、センパイさん。――――勝手に録音したサーヴァントさんたちの声を編集してぇ、オナネタに使ってた甲斐性ゼロのムッツリド変態マスターさん。聞こえてたら返事してくださ~い。――センパイ側からの音声はBBちゃんには聞こえませんけど、子豚のようにブヒブヒと泣き叫んじゃってくださ~い』



 藤丸立香が眼の前の扉の中へと入った直後、彼の視界は一時的にブラックアウトした。その直後、脳内にはあの小悪魔系ラスボス後輩の声――。

砂糖水のように甘ったるく、それでいてこちらに対する嘲意が隠れきれていない声が、まるで問題発生を告げるアラームのように鳴り響いた。



『なぁ~んて☆ 毎度毎度、センパイの脳や視神経、その他諸々を直接ジャックしてるので、こんな事する必要はないんですけど。――コホン。それじゃあマスターさん、一緒に叫んでくださいね~? せーのっ、BBチャンネル~~☆』



 いつもの決まり文句の直後、黒一色だった彼の視界はブラウン管テレビで目にする砂嵐が発生した。そして数秒後――。毳々しい程の桃色を基調とした、なんとも安っぽい簡易スタジオを背景に、長い紫髪の女性サーヴァントが現れた。



『んも~っ! センパイってば、ノリ悪すぎませんか? せっかく、センパイの意図を汲んでこうしてわざわざ特異点まで作って、センパイ“だけ”を拉……コホン。しょうたいしてあげたんですよ~? それなのに、まるでスタン状態にでもなったみたいにボケーっとするなんて……。ナマイキにもちょっとした仕返しのつもりですかぁ?』


 いくつか詳しく問いただしたい衝撃的事実と共に、脳内を文字通り侵略した女性サーヴァント――。BBはまくしたてるように、こちらをバカにしてくる。

セリフの内容だけでなく、その口調の上がり方。表情。目つき。歪み上がった口角。――そのどれもが、こちらを嘲っている。



『――それに、センパイがこれまで何回、あの自作スケベ音声でみっともなくビュルビュルしてきたのか知りませんけどぉ……。流石に受け身すぎません? そんなんで本当に人理救ったんですかぁ……??』



 彼女から放たれる言葉の調子には、所謂ツンデレに代表されるような冗談気味なものはほとんどなく、ほぼ100%の嘲りがそのまま込められているのがわかる。



 しかしその口調とは裏腹に、彼女の身体は憎たらしいほどに魅力的で誘惑的に肉付いていて、まるでこちらに対し許しを請うように媚びている。

特に、その大きく膨れ上がった双丘は――羽織っている黒いコートがこれみよがしに開けられているのもあり――どうしようもなく目を引いてしまう。



 これが、伊吹童子やキングプロテアといった超弩級レベルの高身長。もしくはブーティカやゼノビアといった成熟した大人の女性サーヴァントならばそこまでだったかもしれない。

……が、彼女の背丈は160センチにも満たない程に低身長なため、その圧倒的すぎる存在感はそのまま強烈な違和感となり、余計に視線を集めてしまうのだ。



「って、うわぁ~……。センパイってば、この期に及んでまだBBちゃんのスペース級おっぱいをネットリ視姦するとか、ドコまでお猿さんなんですかぁ~?」



 当然、彼が向けていたその視線はBBにバレる。彼を物理的に特異点に拉致したうえ、体器官の支配権すらも勝手に奪っておきながら、彼女はまるで被害者のように声を荒立てる。



「まぁ、センパイがすぅ~~っごく惨めでぇ、無様でぇ……笑っちゃうくらい奥手なムッツリさんなのはともかくとしてもぉ~~♥ 今センパイが抱えてるであろうもどかしい気持ち……♥♥ BBちゃんも分かりますよぉ~。――米粒よりも小さいくらいですけどぉw♥ いやぁ~ん、BBちゃんやっさしぃ~~っっ!」



 彼女のセリフの後、どこからともなく万雷の拍手や指笛が鳴り響いた。



 普段は滅多に怒らない流石の彼も、こうも好き勝手に言われっぱなしでいるわけにもいかず多少言葉を返そうとした……。

しかし、どういう訳か――。口や喉が本来の職務を放棄したように、ピクリとも動かない。



「しょうがないですもんねぇ~~♥ センパイ……明らかにオナニーする気満々でしたもんねぇ♥ マシュさんだけじゃなくぅ……♥ これまでの人理救済の中召喚したぁ、たぁ~~っくさんの女性サーヴァントさんたち……っ♥ 種火集めから素材周回、魔神柱やその親玉との決戦にその他色々……。センパイと共に苦楽をともにしてぇ、コツコツ信頼関係や絆を培ってきた、BBちゃんに負けないくらいのスタイルと声をした女の子たち……♥♥ そんなと~~っても可愛らしくてぇ、純粋な彼女たちの信頼を……センパイはあろうことかオナネタに利用してたんですもんねぇ~~っっ♥♥」



「その中にはコルデーさんみたいに、誰がどう見たってセンパイに“特別な感情”を抱いている人だっているのにぃ……♥ センパイはそんないたいけな村娘(おとめ)の純情を弄んでぇ、一人勝手におチンポシコシコして、気持ちよくなってきたんですよね~~っ♥♥ キャー、キャー!! センパイってば、サイテーー! 鬼! 悪魔!! 女の敵~~!!」



 反論一つできないまま、まるでひとつの映像を見ているかのように――BBが目の前でコロコロとその表情を変えながらこちらを謗る。

再び、エキストラのブーイング音が取ってつけたように鳴り、鼓膜に届く。



その後BBは、猿芝居以上に猿芝居だった泣き真似をやめ、チラリとこちらを見透かすように一瞥してきた。



「ですが、そんな独善的でサイテーなセンパイの治療も、BBちゃんにお任せですっ!☆」



 BBがその場で高速回転をした。すると彼女の格好が、制服&黒のロングコートという普段着から、宝具時に着用しているナース服のコスプレに変わっていた。



「センパイも知っての通り、BBちゃんはどこぞの聖人様もドン引きするくらいには慈愛心に満ち満ちています。なので、今回のセンパイの冷酷非道すぎる行いにも情状酌量というなのお情けをかけてあげるのです! ハイセンパイ、拍手~~!! ――って、今のセンパイは拍手どころかぁ、瞬きすらできないんでしたっ♥ BBちゃん、うっかり~~」



「――さて。ここまでBBちゃんが必死に盛り上げているのに少しも同調しようとしない、人類史上最強にノリの悪いセンパイは放っておいて……。さっさとセンパイへの治療……始めちゃいますね」



 どこまでも癪に障る猫なで声と、未成熟児の演技よりもわざとらしい芝居が続く中――。いつの間にか必要以上の責任も転嫁され、彼は巨悪に仕立て上げられていた。

だがしかし、体の支配権は未だに返還されていないため、彼はただ待ちぼうけることしかできない。



「さっきも言いましたけど、この特異点にいるのはセンパイだけです。――つまり、それ以外はBBちゃんによって作られた偽物。センパイが時たま戦うシャドウサーヴァントとは違うんですけどぉ……。まぁ、性欲一辺倒なセンパイの頭じゃあ何世紀かかっても理解できませんから、それに近しいものだと考えてください。で、この特異点から抜け出す方法はと~~っても簡単です☆ 今さっき、センパイが無用心にも入った扉――。アレがあと2回出てくるので、また同じように通り抜けてください。大丈夫ですっ! これでもBBちゃん――特異点の構築には精通していますから、センパイに危害を加えるような敵性エネミーなんて出てきませんよ♥ なので、センパイは安心して前に進んでくださいね」



「それじゃあ……。BBちゃんお手製の、秘密裏オナニー大好きなシコ猿センパイ専用特異点……っ。たぁ~~っぷり、堪能してくださいねっ☆」



 ――――こうして、彼。藤丸立香の視界は再び一切の光がない暗闇に逆戻りしたのである。



◆ ◆ ◆ ◆



 支配権を取り戻した藤丸立香の視界に映り込んできたのは、森の中にひっそりと佇む教会だった。



 その教会を建てる為に手が加えられたのだろう。

周囲は少し開けていて、教会の他に小さな広場と木製のベンチが備えつけられ、ちょっとした公園のようだった。



 天気は快晴という言葉がぴったりなほどに晴れているが、日光は木々に遮られさほど強くない。

それらの光は教会全体に降り注ぎ、格子代わりに刻まれたステンドガラスや教会の象徴である天上の白い十字架を明るく照らしている。



「――――ようこそいらっしゃいました。今、シスターを呼んでまいりますね」



 中に入ると修道服を着た少し幼い女性が声をかけてきた。言葉からして、まだ見習いなのだろう彼女は恭しく一礼したあと、教会の奥へと消えていった。



 教会の中心にある信徒や来客者用の長椅子には、森の中という人里離れた立地に反して十数人が腰を下ろしていた。

彼らは顔の前で指を織り合わせ熱心に祈る者や、心地よい音量で流れる賛美歌に耳を傾ける者など……思い思いに過ごしている。



 そんな彼らを、未だ不安が残っている心境で見つめていると、見習いの彼女がシスターを連れてきたのか、声をかけてきた。



「――お待たせいたしました。ようこそ、私の教会へ」



 教会内における他のシスターたちとの立場の違いを表しているのか、彼女が身にまとっている修道服は黒ではなくミクロの汚れもない純白だった。

頭に被っているベールの中には、まるで純金のように眩しい輝きを放っている金髪の髪が収められており、そのまま腰の方まで続いている。



 そんな二つの帽子をつけている顔もまた、神話に登場する女神のように美しい。



 その信心深さがそのまま美貌に反映されたのか、シミもほくろも一切存在しない純白の素肌。色鉛筆で描いたような長く繊細な薄眉に、澄み切った青空のように輝く大きな青色の瞳。

当たり前のように鼻筋は整っていて、その鼻は世界的名峰のように高いくせに、大きさは思春期の少女のように小さい。



「申し遅れました。私、この教会でシスターのまとめ役をしています。名を――――」



「あ、ジャンヌ!!」



 その白い修道女を見た瞬間、彼の中に救っていた不安は綺麗サッパリ消え失せた。なぜなら、彼はその女性を知っていたからである。



 ジャンヌ・ダルク。人理救済の長旅における最初の特異点――。オルレアンでは共に戦い、魔神王ゲーティアとの決戦では、死の淵に立たされていた彼を史実同様に救い、逆転へと導いた心強き存在だ。

そして、マシュ・キリエライトを除き――彼が一番最初に召喚したエクストラクラスのサーヴァントでもある。



「良かった! とりあえず安心したよ……。ねぇ、ジャンヌ。早速で悪いんだけど、この特異点について何か知らない?」



 最古参のサーヴァントに出会えた事は彼に多大な安心感をもたらしたらしい。

その証拠に、ジャンヌをここに連れてきた見習いシスターの表情がどんどん険悪なものになってきているのも気づかず、彼はBBが最後に残した言葉も忘れて、次々と言葉をまくしたてた。



「すみませんが、シスター長に対して少し失礼じゃないですか!? そちらはシスター長をご存知のようですけど……生憎こちらは――」



「――いえ、いいんです。彼は……その、私の知り合いですので」



 突如現れ、初対面のくせに自分が尊敬してやまないシスター長になれなれしく接する彼に対し、見習いシスターは語気を強めて戒めようとした。



 だがしかし、それは他の誰でもないシスター長――。ジャンヌ本人によって止められてしまった。



「あ、ごめん! その、ちょっと不安だったから、ジャンヌに……。知っている顔に出会えたのがすごく嬉しくて、つい一方的に喋っちゃった。うん、本当にゴメン!」



「――いえ、いいんですよ。私も、この時のための“覚悟”はしてきましたから……」



「覚悟?? それって、どういう意味?」



「すぐに分かります……。――それより、せっかくいらしたのにこのまま立ち話を強いていてはこちらが失礼にあたります。さぁ、どうぞ中へお入りください」



「えっ、あ……うん」



 彼はこのときになってようやく、BBが最後に言い残した言葉――。『この特異点では自分以外は全て偽物』という忠告を思い出した。

だが、それを踏まえたとしても目の前のジャンヌにはどこか拭いきれない違和感を覚えずにはいられなかった。



「ですが、シスター!」



「私のことを思ってくれたこと、とても感謝しています。ですが、なにも心配いりません。――それより、貴女に一つお願いがあります」



 敬愛するジャンヌ本人によって止められた手前、先程よりは弱くなったがそれでも見習いの彼女は、突如やって来た無礼な来客に対し不満をつのらせていた。



 ジャンヌはそんな彼女に対し礼を述べたあと、まるで子供に話しかけるように目線を合わせ、彼女の頭を撫でながら一つの頼み事をした。



「彼女を――。副シスター長を連れてきてくれますか。そうですね……。“神の遣いがお越しになられた”といえば、伝わるはずです」



「……はい。わかり、ました」



「ふふっ、ありがとうございます。それとこれから暫くの間、私と彼女は信者さんたちの対応ができません。それまで後のことは任せましたよ。立派なシスターになるための、私からの最終試験です♪」



 見習いの彼女が渋々ではあるものの、コクリと頷いたのを確認したジャンヌは、また最後にニッコリと笑った。

そして彼女に背を向け、やってきた藤丸立を引き連れ、教会の一番奥にある懺悔室へと消えていった。



~ ~ ~



 懺悔室。基本的にオープンフリーな教会の中で唯一、プライバシーが守られている空間。何かしら罪の意識を持った信徒が、神父やその他教会関係者を相手にその罪を告解する場。



 そこで藤丸立香は今――――。



にちゅにちゅ♡ ねるりゅぅ……ちゅっ、……っぷあはぁ♡ ねちょ、ぬちゅ……♡♡ とろぉ……ぬるっ♡♡



「ジャ、ジャンッ……!! やめっ、止まって……っっ!! あぅ、くぅぅぅ……」



 壁に空いていた謎の穴に自分の陰茎を突っ込み、反対側の部屋にいるシスター。ジャンヌ・ダルクに舐めしゃぶられていた。

 


 こうなったのはほんの数十秒前に遡る――。



 懺悔室に入ったその瞬間、彼はまるで魔法にかかったかのように意識が遠のいた。

そして気づけば、ズボンのファスナーからチンポを取り出し、それを壁の穴へと……。ジャンヌのいる対面側の懺悔室に“自ら”挿入してしまっていたのである。



 ――当然、正気を取り戻した彼はすぐさまソレを引っこ抜こうとしたが、全身が縛られたかのように身動きを取ることができず、ジャンヌの口による可愛がりを受け続けていた。



んっ、はぁ……♡ ねちょっ。ぬっ、ちょぉ……れぇろぉぅ……にゅるっ、っぷくふぅ♡♡ にぃゅるっ……んべへぇ……♡



「ちょ、ちょっと! なんで……っっ! きゅっ、うぅぅにぃぃ、こぉんん゛――なっ、ことっ!!? ジャンヌ、ねぇってば!!」



 懺悔室に入ってから数分。彼がどれだけ泣きわめき、やめるように懇願しても、壁を隔てた先にいる聖女による口淫未満の愛撫は止まらない。

むしろ、彼が快楽に悶えれば悶えるほどに、その勢いはより強まり、さらにねちっこくなる一方だった。



ちゅぱっ♡ ぢゅるっ……べちゃぁ……ぬりゅふぅぅ♡ ねっ、ちゅるうぅぅ。にゅぅぅぅ……♡♡



 10センチにも満たない真円に近い小穴からは、とても教会のトップに君臨する聖女がしているとは思えない甘く淫気に満ちたメス声の囁きが聞こえる。そして、加湿器の何倍も湿気を帯びたぬるめかしい吐息が漏れ出している。



 穴に入れた当初はまだ半勃起もしていなかった彼のチンポも、今やガチガチに屹立している。

それでもまだ、彼のイチモツは聖女の口内に収められてはおらず、穴の隙間から、ヌラついた舌が何度も抽送を繰り返し、竿や亀頭の先端を舐めほそぼっている。



にゅちゅ、にちょ……。ぴちょっ、くりゅぅ……ぬるっ♡ へにゃぁぁ……れりゅぅぅぅ♡♡



 ただでさえ薄暗い懺悔室。ジャンヌがいる方のスペースは更に狭く、光もほとんど入らない。さらには壁に阻まれ、相手に触れることすらできない。

だのに、自分の舌奉仕に悶える彼の姿が見えているかのように焦らし続ける聖女ジャンヌ。



 根本から先端はもちろん、ふちや裏筋、包皮の切れ目に至るまで――。まるで金太郎飴を舐め削るかのように、トロットロの涎を塗りつけていく。



 当然、興奮しているのは奉仕を受けている側だけではない。



 彼女もまた、ねっとりとした吐息に混じり熱を帯びた声を漏らし、舐めれば舐めるほどに固く……熱くなっていくペニスに、情欲を掻き立てられている。



 信仰する神はもちろんのこと、他のシスターや親にだって見せられない淫売婦同然の肉欲に溺れた姿。



 自ら腰を限界までおろし、普段は修道服に隠れている聖女にあるまじきデカケツをこれでもかと突き出し、見せびらかすように大股を開き、縋るように壁に体を寄せ、舌を波のように動かす。

空いている手は、ほぼ180度開かれた股座の内側――。これまで何人の侵入も赦したことのない秘裂に押し入り、指をまるで鉤爪のように膣壁に爪立てる。



 んじゅるぅ♡ ねとぉ……ぬりゅっ。ぴちゃぁ♡ じゅぷっ、ぬぢゅぷぅぅ……♡♡♡



 聖女ジャンヌは、その右手が生み出す刺激に――口や鼻から体内に侵入する吸気に含まれたゼロ距離イカクサ勃起チンポ臭に……。それらが強くなればなるほど、それに比例して腰を淫らしくくねらせ、舌と指の動きをより一層激しくさせる。



 その度、股座から湧き出す愛液は粘り気を増し、彼女の指をくわえ込む秘裂の隙間から卑猥な音を立てて漏れていく。そして、体の内側で高まる性欲を表すかのように、脳が……本能が、『このチンポを咥えろ!!』と警報音のようにけたたましく訴える。



ぶじゅるっ♡ ねちょ……れりゅぅぅ♡ ぬちいいぃ……♡ きゅぅっ、にちゅうぅ……♡♡ ぐちゃぁぁっ、ぢゅぅぅ♡ ちゅく、べちゃぁぁっ♡



 しかし、彼女はまだ咥えようとしない。



 癇癪を起こしているかのようにビクつき、発酵したチンカスと抜け落ちた陰毛――それに、精液が量産されている証であるあの独特の臭いを放つ透明なカウパー腺液。

それらにまみれた若いオスチンポが、神のみが創造できる至高の美貌に毛虫のように吸い付き、力のまま……本能のままに鼻を押し上げ、それはそれは無様な顔へと変形させている。



 それでも尚、彼女は今行っている行為をやめようとはしない。



 気高くも凛々しい――まさに“聖女”という存在そのものを体現したかのような出で立ちの金髪碧眼の欧州美女は、自身の顔面上を汚物が滑るのを恍惚とした表情で見つめていた。



 その様子はもはや、何かに取り憑かれているかのようでもあった。



ぴちゃっ♡ れぇぇ……ぬりゅぅ♡♡ ねちょっ、ぢゅぱぁぁっ……♡♡ じゅぼおぉ♡にちゅちゅっ♡ぴちょっ、ぬちょぉぉぉ♡♡ ずぢゃぁぁ……っっっ♡♡



 咥えられない腹いせなのか、彼女の口内に貯まる唾液はますます熱く、粘りを増していく。そんなものを塗りたくっていれば当然、薄い木製の壁程度ならば簡単に貫通するほどの淫靡な水音が立つ。



 拍手が段々と大きくなるように、その音もまた徐々に音量をあげ、ついには木の壁が揺れる音と同程度の大きさにまで育ってしまった。

もし、賛美歌が今も流れていなければ、彼女たちがいる懺悔室は淫行の瞬間を目撃しようとする野次馬たちでごった返していただろう。



 しかし、今この瞬間――二人がいる懺悔室の前にはたった一人しかいなかった。



「――ったく、あのバカ聖女様……。少しは加減しなさいっての」



 彼女はジャンヌと同じ修道服に身を包んではいるものの、その髪は白くショートヘアだった。肌はジャンヌよりもさらに白く、瞳は黒猫のように妖艶に黄色く輝き、見たものに少しばかりの恐怖を抱かせた。



 また、唇や目元には微かに化粧が施されている他、着ている修道服も胸元は大きくスリットが入っているため、その豊満な果実とその間に刻まれた谷間が一部とはいえ大胆にも露出していた。



 そんな、一見不良シスターにも思える彼女は懺悔室の入り口に立ち止まり、苛つきが混じったため息を吐く。そして、そのままびぢゅあ♡ ぐちゅるっ……♡♡ といった淫らな水音がやまない淫行専用小屋に足を踏み入れた。



「ちょっとアンタ! いつまでもしゃぶってないで、さっさと咥えなさい!! 外に丸聞こえなのよ! この淫乱聖女!」



 彼女は室内に入るや否や、そう声高に叫び眼の前に立っていた藤丸立香の背中をそのまま壁に向けて押し込んだ。



にゅぼっ!!?♡ にゅぐゅるるるうぅぅ~~……ぼぼっ♡♡ ――ずぬゅっっぅぅううぅぅ~~~……♡♡



 突然の乱入者により、強制的に前に押し出された藤丸立香。となれば必然、唯一穴の向こうに続いていたチンポも前に推し進み、聖女ジャンヌの口腔内へとズカズカ入り込んでいった。



ぐぷっ♡ ぬりゅぅぅ~~……ぐちゃっ♡♡ どぽっ♡じゅぽっっ♡♡ぶちゅるぅっぅ♡ ――ううぅぅ~~~♡♡♡



「え? なに、誰!? ――っていうか、ちょ、やめっ……んぎゅぅぅ!?!? ――ぁぁぉっ。……あっ、……っくぁ~~」



 突然の侵入者に驚く暇もなく、長時間の愛撫で鋭敏になっていた勃起チンポはジャンヌの喉奥へと吸い込まれていった。

それまで舌の上で何重にも層になっていたどろっどろの唾液が、唐突に侵入してきたチンポをあっという間に取り囲み、覆った。



 口内に残っていた僅かな空気が、じゅぽぉぉっっ……♡♡ と粘性の高い水音を残しながら、チンポと入れ替わるように抜けていったのが聞こえた。

その刹那、亀頭が喉奥をコツンと突いたことで、ジャンヌの体がビグンと跳ね、大きく痙攣したのだが……彼はそれに気づけなかった。



 ――なぜなら、全身の振動を殺すほどに頬肉や舌肉などの口内器官がチンポを取り囲んでいたからだ。



「そうそう。そうやって、空気の入る隙間もなく咥えてりゃいいのよ。コッチは私に任せて、アンタは思う存分“使命”を果たしなさい」



 侵入者はそれだけ吐き捨てると、穴の空いた壁に腹を寄せた藤丸立香を挟んだ。彼の背中には彼女の豊満な胸部が押し当てられ、彼の首裏には彼女の顔が定位置のように置かれた。



 性器を執拗に舐めしゃぶられ、結果的に口内に挿入してしまい本格的なフェラチオを始めてしまった藤丸立香。



 しかし、そこ以外の全身で感じる女体特有の柔らかい感触と匂い。

そしてなにより――チンポに纏わりついているのとはまた違った、発情した妙齢の女が放つ、明らかに熱の籠もった艶めかしい吐息が、耳たぶ裏からもみあげの髪を逆捲っている。



 それらは壁の向こうにいる金髪聖女のド下品フェラチオの背を押す形で、彼の理性や“一刻も早くここから出よう”という気概をガリガリと削っていく。



「そ、その……声。ま……っっ、さか、オル――――!?」



ちゅるっ……ぬりゅぅぅ♡♡ 



 ドリルで掘削されるかのように理性が現象していく中、彼はなんとか顔を動かし背後に立つ侵入者の姿を視界に収めることができた。

だが、彼女はまるでそれを待っていたかのように、まだ言葉の途中だった彼の口を、自らの唇で遮った。



んっ……ふぅぅ♡ あ~むっっ♡ じゅぅぅぅぅ~~♡♡ ちゅぷぁぁっ♡ んぷっ、べろっ……れろぉぉっっ♡♡♡



 直後、そうすることが礼儀であるかのように、自分の舌を彼の歯や舌……喉奥にまで捻り込んだ。

壁の向こうにいるもう一人の自分がたてているフェラ音に真っ向から対立するかの如く、嫐りはじめた。



 シスターにあるまじき巨乳は、飛び跳ねるボールのように何度も押し付けられている。

毎日神に祈る為に組まれ、十字架と聖書しかろくに持ったことがないであろう繊細で非力な手指は、片方は男の胸――ちょうど乳首のある辺り。そしてもう一方は男の後頭部に回され、強力な磁石のように自分の方へとその頭を引き寄せている。



 目を開いてまず最初に教会が映り込んできたこと。そして、修道服を着たジャンヌ・ダルクを目にした瞬間――彼女もいるであろうことはある程度予測できた。

だが、それでも藤丸立香は今のこの事態に驚きを隠せなかった。



 だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりに彼女――ジャンヌ・ダルク・オルタは、壁を越えた先にいる聖女と全く同じ膨体を……。

修道服という清装を纏っていてなお、男を誘惑してしまってやまない――神が選び、そして神が与えたドスケベボディ。

さらに、普段は賛美歌と祝詞しか紡いだことのない肉厚な口を動かし続ける。



ねろぉぉ……ぴちゃっ♡♡れろっ、ぢゅうぅっっ……んちゅっ♡♡ あむぅぅ……ちゅるるぅぅぅぅ~~♡♡♡ れぇろっ♡ぬちゅぅうぅぅ……りゅぷぅっっ♡



 舌の裏側をれろぉぉ……♡ と舐めあげ、それから喉奥の歯茎まで舌先を伸ばしていく。そして、歯の裏側や口蓋垂などを舌で弄びながら、一筆書きの要領で舐め上げていく。



「んにゅっ、ちゅ……♥ にゃあに、んっ……ふぇへんりょ……ひてんのよ、っひぃまふぁら……♥♥ アンら、っが……ほうひぃう、こ……っろっっ♥ ひゃれふぁいの、ろっくに……ぶぁれてんのよっっ♥♥」



 かつては藤丸立香と敵対した存在でありながら、終局特異点や新宿などでは大いに助けになってくれたジャンヌ・ダルク・オルタ。

普段は黒薔薇のように刺々しくも、どこか優しく美しい彼女だが、今――男の目の前にいる彼女には、そんな面影などかけらも見受けられない。

 


 夜空に浮かぶ満月のように美しく輝く黄色い瞳は、まるで獲物を定めた肉食獣のそれのように細まっている。蟻の巣穴ほどに小さな鼻孔は、小指の先が易々と入りそうなほどに肥大化し、蒸気機関のように生ぬるい息吹が噴出している。



 顔には濃厚なメスフェロモンがたんまり詰まった汗が、雨のように流れ落ち、それらは右肩上がりで上昇し続ける体温と室温によって蒸発する。――結果、狭い懺悔室の片室内は、彼女が分泌した淫臭で満たされてしまった。



 藤丸立香の身体だけではなく、彼がいる場所さえも支配してしまったジャンヌ・オルタ。その彼女は、彼のよく知るジャンヌ・ダルク・オルタとは全くの別物――影法師ですらない存在だ。

だが、あまりにも瓜二つな外見と言動……。そして、この豪勢すぎる色仕掛けに、彼は興奮を抑えきれなかった。



 だが、当の本人はそんな事を気にもとめず、舌で嫐り続けたままこちらに話しかける。



「ふぉら、……んぬぅゆちゅるるるっ……♥♥ んちゅっ、ちゅ……♥ あんらのもっへは、むぅ……んっ、ぢゅずずる゛ぅ゛ぅ。おんへぇ……んっ、にゅ……っ♥♥ ほういうの、あったひゃないっ♥」



んぷっ……ちゅぽぉっっ♥ れろれろっ……ちゅぱぁっ♥♥ くちゅぅ♥ ぐちゅっ、ねるぅっ♥♥ ぬぢゅぅうっ~~♥♥ ――――っぱぁ、おっ……はぁ♥



 今度は先程よりも長くなにかを話したオルタだったが、いまいち彼に伝わってないと思ったのだろう――――。

世話を焼かした彼への罰とでも言いたげに、口内を一通り味わい尽くした後、名残惜しそうに口を離し、してやったような笑みを浮かべた。



「はぁ……っ♥ まったく……♥♥ ここまで言われてもまだ分かってないみたいねぇ、私たちの“神の使い”さんはっっ♥ ホラ、良く思い出してみなさい♥♥ アンタの秘密ファイルのな・か・み♥♥」



 それだけを告げたオルタはまるで彼の記憶を掘り起こすように、鎖骨のあたりから頸動脈に沿ってゆっくりと舐めあげた。そしてそのまま、依然として高温多湿な口内に彼の片耳を頬張り、耳垢を掃除するように耳の段差に舌を添わせた。



「ファイルって……。なんで、オルタがそのこ……ひゃうぅぅ!! うぁっ、ひ、ゃ……っ!」



 藤丸立香の頭に生じた疑問は、耳の内側をゾワワッ!! とはしる、すっかり癖づいていた快感と、脳の近辺を弄られたことによる本能的不快……。その両方を持った独特の感覚によってかき消えた。



 それは、彼がカルデア内で性欲を処理するために自作音声を使用した際――幾度となく感じてきた耳を舐められた音を聞いている時に感じていたものだった。



 それらの感覚が体内と記憶で繋がったことにより、彼は今ようやく、“二人のジャンヌが何故このような行為を自分にしているのか”の理由を知ることができた。



んぢゅるるぅぅっ~~♥♥ あむぅぅ……♥ むもわぁむっ♥ ――んん~~、もむもむもむ……♥♥



 耳たぶの少し内側。軟骨のある部分に舌を立たせ、唾液を生成する音を骨伝導で彼に伝えるジャンヌ・オルタ。さらに耳全体を覆う唇を、軟体生物を思わせるようなしなやかな動きでくねらせる。

そのまま舌に力が込められ、トロトロの肉厚舌はそのまま耳の上で、ぐにゃり♥ と音もなく折れる。



「ぐにゅりぃぃ……♥ ぬろぉぉっ……♥♥ もわぁむ。もわっ、もわもわ……もみゅ~~っっ♥♥ ――ップふはぁ♥ ホント、弱いってレベルじゃないわね……耳♥ でも、ダメよ。せっかくチンポ……咥えてもらったんだから、イクならそっちでイキなさい♥ ホラ、気をしっかり持ちなさい! そんで、あの穴の先に意識と感覚を集中させるのよ……っっ♥」



「……っ!?  穴のさ、きっっ――」



 子が親に従うように――。背後にへばりつているオルタの言葉通りに彼の意識と感覚……そして視線はたった一ヶ所。穴の空いた壁の向こうに突き出されている自分のチンポに集まった。



ちゅるんむっ……♡♡ ねろぉ……んん~~、ちゅぽぉっっ♡ んぢゅうぅぅ~~……♡ ――れろれろれろ♡♡ ろぼれぼりろりぼるぶぉ……♡♡



 姿は見えずとも、こちらの会話は聞こえていたのだろう。

壁の向こうにいるジャンヌは、まるで挨拶をするかのように、唇が穴の隙間を通過するほどに口周りを伸ばした。そして、すっかり真っ赤になった舌を蛇のように伸ばし、剥けて寄り偏っている包皮を掃除しはじめた。



 オルタのようにはっきりと分かるほど濃くはなく、アクセント的要素のために施された薄化粧――。生まれ持った顔面の良さをふんだんに活かしたナチュラルメイク。

満開の桜のように美しかった薄桃色の唇は、舌の充血具合が伝染したかのように紅蓮色に染め上がり、そこから伸びる舌はローションとは比べ物にならないほどヌルツキ、そしてテラついている。



「ホラ、目玉かっ開いてよく見なさい……♥ この教会の中で一番偉いシスター長様がっ♥ 産まれてから今日までずっと――聖書を読み、賛美歌を歌い……信者の連中に祝福を授ける言葉を吐いてきた清廉で神聖な口が……今、アンタのチンポを舐めしゃぶってんのよ♥♥」



 快楽によってうまく脳が機能していない藤丸立香に代わり、今のこの状況がいかに特異なものであるかを解説するジャンヌ・オルタ。



 今度は一度集中させた意識を妨げるつもりはないのか、彼女は口元の直ぐ側にある耳を舐めたり、咥えたりはしなかった。

しかし、自分がしなだれかかっている男が抱いている劣情の炎をさらに炎上させるため――意図的に湿った吐息を多分に含ませつつ囁く。



「まったく……♥ 仮にも私の上司なのに、あんな技巧……どこで覚えたのかしら♥♥ 自分の口が剥いたくせにぃ、亀頭の下に寄せられたチン皮のシワ一つ一つに舌を這わせて……チンカスの掃き残し♥♥ ――いえ、この場合は“舐め残し”のほうが正しいわねっ♥ ……ともかく、それを全部舐め取って食べようとするなんて……♥♥ とんだビッチ聖女様ね♥」



「っ、ぅ……。やめて、くれ――オルタ。そんな……ことっ、言うの……」



 ジャンヌ・オルタの淫猥な吐息を耳元で浴びながら、彼女の言った言葉に反論しようとする藤丸立香。しかし、背後から脳を揺らす甘い言葉は、今まさに目の前で繰り広げられている淫行を正確に言い表したものであり、どれだけ彼が否定しても目の前の現実は変わらない。



「あら……イヤなの? でも、ざぁ~んねん♥ 私もシスター長も……アンタのサーヴァントじゃないし、そもそも今言ってる事は全部事実なのよ♥♥ その証拠に――」



ぬろぉぉぉ~~……っ♡ んべぇぇぇ~……♡♡ んぅ……もぁぷ……ねぷっ……ん♡ ずずっっ、ずっぅぅ~♡♡



「私の上司様ってば、アンタのチンポを聖杯レベルに考えているのかしらねっ♥ 伸ばした舌でチン皮そのものだけじゃなく、その裏側とかカリ首の隙間まで、丹念にねじ込んで舐め回してるわよっ♥♥ ――――うっわ、ついには舌だけじゃ飽き足らず、伸ばした唇も使って挟み込んでほじってるし……♥ はあぁ~~♥ あれが本当に、これまでずっと神に仕えてきた聖女のフェラテクなのかしら……♥♥ 今からでも娼婦に転職した方がいいんじゃないかしらっ♥♥」



「っっ……! ぐぅぅっ!!」



 ジャンヌの言動に対しオルタが皮肉るように小言や嫌味を漏らす。――そんなカルデアで散々見て……聞いてきた日常がここでも繰り広げられている。

しかし、構図は同じでも今この瞬間。一人分のスペースしかない狭い懺悔室の片室で行われているのは、まるで中身が違った。



ねちゃぁぁ……ぐちゃっ! ぐちぐちゅ♡ ぬるろぉぅるぶぅ……ぅをぼぶぶっっ……♡ べろろべろぉぉ~~♡♡



「とか言ってるそばから……見なさい♥ アンタのチン先にぃ、山みたいに溜まったガマン汁……っっ♥♥ 根こそぎ奪い取ってってるわ……♥ もうどこからどうみても――トップのシスター面影すらないわね♥」



 オルタの煽りに反論するかのように、ジャンヌの口淫がより一層強く、激しくなる。

口とその周辺以外、一切こちらに干渉できないはずなのに、まるで複数人による責めが行われているかのように激烈な快楽刺激を送り込んでくる。



「っぐぅぅ、はっっ……!! ぅ゛……あ゙ぁっ!」



 あまりの強さに、藤丸立香はもはやろくに言葉を話すこともできず、ただただうめき声をあげて、天上を仰ぐことしかできない。

だが、そんな彼でも彼女が――壁の向こうにいるジャンヌが、どのようにしてこちらを責め立てているかは理解できてしまう。



 その理由はもちろん、彼の背後にいるジャンヌ・オルタだ。ジャンヌの口や舌の動きが変わったその瞬間――彼女が彼の欲情をさらに燃え上がらせるような淫語を大量に使って実況するからだ。



 触覚と聴覚――。二つの感覚に狙いを絞って行われる発狂してしまいそうなほどの快楽サンドイッチ。

それは普段、音声を聞きながら想像を膨らませ、己のチンポをしごいてきた彼にとっては、もはや“特攻”を超え“即死級”クラスの快楽攻撃だった。



「ぷっ……。――くっ、アッハハハ!! アンタ、今……ものすごく情けない顔してるわよ? 聖女様の口マンコで全方位からガン勃ちチンポ責められて、このままイキたくてイキたくて仕方がないって顔……♥ 腹を空かせた子犬のほうがまだマシな顔よ?♥」



「ぅ……ぁ、あ……」



「――あ、言っておくけど『やめて』とか『助けて』なんてセリフは吐くだけ無駄よ。さっき言った通り、アタシ達とアンタは初対面なの。それにこれは、アンタがこの特異点から出るために必要なことなの」



 ジャンヌ・オルタは藤丸立香の顔から、彼がとっくに限界を超えている事を知り、そのうえで嘲笑する。言い返す余裕など残っているはずもない彼は、何か縋るような面持ちで彼女を見やるが、その願いはここがBB特製の特異点であるという現実の前にあっけなく敗れ去る。



「だから諦めて、穴の向こうにいる欧州育ちの美聖女に……♥ アンタの知り合いと何もかもがソックリな、初対面ド下品シスターの口内に♥♥ 不意とはいえオナニーを中断されたせいで、煮こごりみたいに凝り固まったイカくっさい精子……射精しなさい♥」



んむっぅぅ~♡♡ んじゅりゅぶぶぶっっ♡♡♡ ぎゅぼっ!♡ ぐぼっ!!♡♡ ぢゅる♡ ぢゅ♡ぢゅ~~っっ♡ ぢぢゅっ!♡ ぢゅぶっ♡ ぢっ、ぶゅぶびびぶぶっ……っっ!!♡♡



 ジャンヌ・オルタが『射精』という言葉を口にしたその瞬間――。ジャンヌの口淫も120%以上の激しさと強さを以て、フィニッシュへと移行した。



 今にも二人の間を隔てている木壁を突き破りそうなほどに、大きく頭を前後に動かして精液を搾り取ろうとしているジャンヌ。あまりの激しさに、その隔たりは遮音という仕事を放棄してしまっている。



 だが、それでもなお……ジャンヌはフェラチオをやめない。まるで闘牛の牛のように……柵を破壊する獰猛な猪のように……。彼女はただ、『藤丸立香のチンポから精液を一滴残らず搾り取る』という目的に向かって猪突猛進する。



どびゅ……っ!!♡♡ ビュググゥッ♡♡♡!! ぶびびビチビチッ……!♡♡!!



「ぅあ、あぁぁっ! ぐっ……あっ、あ゙ぁぁっっ!」



 焦らしに焦らされた末の、殺されそうなほど強烈な搾精に、藤丸立香は予告どころか、射精の“し”の字も口にすることはできないまま絶頂を迎えた。



 弓のように上半身がしなり、念力か何かで頭上から引っ張り上げられているような感覚が彼の全身を襲う。



 懺悔室にポッカリ空いた穴に通されているチンポはその狭い輪の中――まるでゴムのようにビクビクと跳ね動いている。その痙攣は太腿だけでなく踝にまで伝わっていて、彼の身に降り掛かっている快感が如何に強烈なものなのかを物語っている。



「ん゛んぐう゛ううぅ!!♡ ――――ん、っ……っぐぅ♡ んぐぅをごぐゅっ……♡♡ んごぉうぶっ♡♡ ふぅ~~っ♡ ……ふぅ~……んふぅ~~♡♡ んっ、……っぐふうぅぅ~~♡♡」



「うっわぁ……出た射精た♥ チンポだけじゃなく、体全身震わせて、欲望の赴くまま――知り合いソックリな初対面シスター長の喉マンコに大量射精♥♥ 出す前の予告もなく、かといって腰を引くこうともしないで……♥ あっちが元々咥え込んでるのに、更に喉奥へと食い込ませての一方的な射精……♥♥ さいっ……ってぇ♥♥♥」



 射精の快感で脳細胞が次々と死滅していく中、空っぽになった脳みそにジャンヌ・オルタ似のシスターが耳元で吹き込む台詞が刻まれていく。



 もし今の彼に、露ほどでも正気が残っていたのならば、すぐさま腰を引き、逃げるようにこの懺悔室を――――。いや、この教会を後にしようとしただろう。



 だが、そうはならない。耳元で囁かれ、脳内の全神経を駆け巡る彼女の言葉は、今の彼にとって――興奮を煽るための燃料にしかならないのだから。



――どくぐっ……!♡ どぼびゅぶぶびゅっっ!!♡ どぶっちゅ!♡ びゅぢゅっ……びゅっぐぢぢぃ……♡♡ 



「どうかしら? 普段のオナニーより、何百倍も気持ちいいでしょう?♥ ――生身の女。それも、とびっきりキレイで、清楚で、犯し難い存在に、こうもドスケベに精子ぶっこ抜いてもらうのは……っ♥♥」



 射精の勢い収まらぬ中、背後に立つジャンヌ・オルタ似のシスターが、また次なる暗示を脳に刻み込んできた。



「今のアンタは、そこらのガキ以下に知能が落ちてるんでしょうけど……それでも、今してる射精が、“これまでしてきたやつとは明らかに違う”ってことくらいはわかるわよね? チンポの脈動だけじゃない……♥ 体に迸る快感も、背が伸びそうなくらいに背中を引っ張り上げられる感覚も……♥♥ そしてなにより、キンタマの奥からチンポを伝って壁の向こうに噴射されてく精子の量と勢い……♥♥♥」



「――――ねぇ、想像できるかしら?♥ 今、このうっとおしい壁の向こうで何が起こってるのか……っ♥」



「今、アッチ側ではねぇ♥♥ グッツグツでぇ、ギットギトのアンタのチンポミルク……♥ これまでは、隠れて一人寂しく空気の振動と妄想相手にコキ捨てることしかできなかった、人類を滅亡から救った救世主様の超貴重子種汁♥♥ それを、今日あったばかりの清廉で高潔な聖女長様がぁ……じ・か・の・み♥♥ してんのよっっ♥」



「アタシもアンタの精液をまるごとぶっこ抜いた変態淫乱聖女長様も……♥ ――というか、この世界自体が全部ニセモノだけど、今……アンタが感じてる感覚だけは本物よ♥♥ だから、ほら……♥ アンタはそのまま、笑い死にしそうなくらいなっっ……さけない涙目トロアへ顔晒しながら、アタシ達に射精してイキなさいっっ♥」



「分かったら、さっさとイケっ♥ イケっ♥♥ もっと精子吐き出せっっ♥♥ 人類史救ったのに変に紳士ぶったせいで、盗撮した声をオカズに引きこもりオナニーしかできなかった宝の持ち腐れザーメン全部コキ捨てろっ♥♥ 特異点の性質を逆手に取った最低最悪で……だけど、最高に気持ちいい妄想オナニー堪能しろっっ♥」



 ジャンヌ・オルタ似の聖女は、そう矢継ぎ早に言葉を捲し立てる。それらの言葉は一言一句――全てにおいて彼の……。藤丸立香の培われてきた性癖にマッチしていた。



 ――――結果、彼はここが特異点だということも、自分がなぜこの場所にやってきたのかも忘れ、人類史上最も有名な聖女二人と世界を使った他に類を見ないほどに贅沢な自家発電を堪能し、金的を蹴られた時ほどに痛みを感じるまで射精し続けたのだった。



次回へ続く




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