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ほの暗い陰りの中、力なくも時折跳ねるそれは折れた人だった。

意思が、身体が、何度目かの破断を物語るようにか細く息と声を漏らす。

声にならない、ただまだ息とほんのわずかな反抗の意思があるのだと、確認に点るシグナルのように。

「ねぇ、センパイ?」

囁き。

折れ曲がったソレが漏らすノイズより、幾何が大きいだけの、か細く、そして場に似つかわしくない小さな澄んだ風鈴のような声音。

暗がりにのぞく褐色の柔らかな磁器肌には無数の”すり傷”こそあれ波穏やかに続く音が、そんなものは、なんのことはないのだと告げている。

「色々仰ってましたよね?ワタシ日本語はまだ不慣れなので、もう一度お願いできますか?」

のうのうと宣う。もっとも大きなキズであろう鼻孔からの血をうけた口が朗らかに柔和に笑みの形を描く。

「そうですね。あと”10”数えたらワタシの番はお終いにしますので。あっでもワタシ10までちゃんと数えられるかな?」

コロコロと鈴が鳴る。

「上手くできたら褒めてくださいね。ほら色々と”叱って”くれていたでしょう?とても悲しかったけど、また頑張りますから、最初から。ね?」

「…ッ!!  …チガッ!!! ゲホッ……れハ……コレはっ……__がッ」

軋み。

折り曲げ鋏が口を閉じて軋ませる。

「あ、いいんです。”そっち”は明日からのお楽しみにしますから。ほら『頭を使って考えろ』?でしたっけ?言ってましたよね?ちゃんとみんなの顔を見て考えてみます。ふふっ、ご指導の賜物ですね」

「____ッッッ」

幾度目かの破断。

「もう、おしゃべりするから遅くなっちゃったじゃないですか『ノロマ』はダメって言ったじゃないですか」


逃げられない。


「じゃぁ『カウント』しますね? いぃ~~~ち……」


許されない。


「にぃ~~~い……」


繰り返される。


「さぁ~~~ん……」


やわらかな数え歌に微かな水音だけが唱和した。




この投稿は、小話(SS)付き挿絵のテストです。

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