ヒーローは堕ちていく -レッド- (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-10-02 02:31:54
Edited:
2024-01-18 12:03:49
Imported:
2024-06
Content
任務の時間が終わり、またひとりトレーニング後、シャワー室から出てきたレッドに話しかけた。
「レッドさん、ちょっとお話あるんですけど」
「なんだ?」
「今後の任務のことでなんですけど…」
僕は、あのあと命令を与えられた。
この部隊のリーダーである、レッドから堕とすようにと。
あの人曰く、こういう単純な男が一番簡単なんだそうだ。
「で、なんだ?任務の話って」
「すぐ終わるんで」
「ん?話が?」
噛み合わない話にレッドは首を傾げた。僕は左の手を広げ、レッドの顔の前に出した。
「なんだよ、手相でも見ろって?」
僕の手が紫色に光る。この光によって、即効性のある催眠がかかる。
「なんなんだぁ…ぁ…よ……」
喋りがスローモーションのようになる。
「…」
少し顔をずらしてレッドの顔を覗き込む。表情筋の制御がなくなった顔は、だらしない面になっていた。
数分の後、その光はゆっくりと消える。
「レッド」
「…なんだ」
「僕の声に素直に従え」
「…わかった」
レッドは礼儀に厳しい。ただ今は、僕がタメ口で話そうが命令しようが、レッドは何も言わない。
手を下げて、レッドの表情を見る。虚ろだった。話している相手の僕を見ているわけではないが、かと言ってどこを見ているのかわからない。
「今どんな気持ちだ?」
「なんか…ふわふわとしている…パープル…が…話してるのか?」
きちんと催眠状態に入っているようだ。それにしても効きすぎたか。思考すら定まっていないようだ。
「まあ、いいか。…そうだよ。僕が話してる。早めに施しをしてしまうから、そのままでいろよ」
席を立ちレッドの横に立つ。右手で目を覆い、左手は後頭部を支える。一周ぐるっと僕の手が目を隠すバンドのような形になる。
「…なにして…る」
「おまえも…あの人の物になるんだ。僕と同じく…一緒にあの人のために…」
「…あの…ひと?」
正義を与えれば全て正義に、悪を与えれば全て悪に。あの人が言っていたとおりだ。
本当にこういう単純な奴の扱いは簡単なんだな。だからレッドから堕とせって言ったのか。
もうすでに、こいつの持っていた、正義という成分は全て抜き取った。
そして、なにもないカラカラのスポンジに、僕が悪を染み込ませてやるだけ。
ゆっくりと頭を回す。
「…お……あ」
自分の中にある、授かった力を注ぎ込む。
目に当てた右手がぼんやりと紫色に光る。
「…ん…ぉ…あ…あ…」
だらしなく開いた口からはよだれが垂れている。
「…気持ちいいか?」
「…きも…きもひわうい…」
「はは、今までとは違う感情だからなあ。でもすぐに慣れるさ。楽しくなるよ」
レッドの体が小刻みに震え始める。頭から、体、手、つま先と、水分や血液のように、その成分が染み渡っていっている。
「…あ…ぐぅ…ぅ…おあ…」
「最後一気に行くぞ」
一気に力を込める。ショートしたように手の中の光がビカッと光る。
「うぐぅっあ!!ああ!!あああああああああ!!!!!!!!!」
レッドの悲痛な叫びから数分後。僕はゆっくりと手を離した。
レッドの目は白く剥き、涙やら、鼻水やら、涎やらで顔はぐじゃぐじゃになっている。
なんとか椅子の肘掛けに引っかかっている手で体を支えてはいるが、全体的に力感なくだらりとしている。
しかし、ここまで力を使う必要があるとは思わなかった。
手を当てなくても、体を伝わってくる音で胸がバクバク言っているがわかる。
少し立っているのがキツくなったので、元いた席に座った。
レッドはまだぴくぴくとしている。定着までは時間がかかるか。
「ん…う…ぅ」
僕の鼓動も収まってきたころ、レッドが小さく声を出す。
上を向き間抜けに開いていた口が閉じ、顔が俺の方を向く。
「終わったか?」
「…ん?…なに…が…」
レッドの視線が定まっていない。目玉がぎょろぎょろと動いている。
「慌てるな、ゆっくりでいい」
「…おう…」
それから目玉がぴたりととまり、僕と目が合う。
すべて事情を把握しているのだろう。仲間と認識したのか、僕を見てにやりとした。
「顔拭けよ、汚いぞ」とティッシュを渡す。
「…サンキューな」
「わかるだろ?」
「ああ、全部入れてくれたみたいだな。すぐにわかったよ」
「じゃあきちんと挨拶に行こうか」
「わかった」
堕とし終えたレッドをモニターの前に立たせる。
これからその報告が出来ることがこんなにも嬉しいことだとは。僕は、それを考えただけで勃起してしまった。
モニターの前に立ち数秒。ちかちかと光る。僕もレッドも目を逸さずにその点滅を見つめる。
『堕とせたか』と声が響く。
「は!戦闘員001、パープル。部隊長レッドへの施しの完了を、ここに報告いたします」
『よろしい。さすがは私が見込んだ男だ』
「ありがたきお言葉」
この興奮に勝るものはない。
『レッド』
「は!」
『やるべきことはわかっているな?』
「は!私、戦闘員002、レッドは、自ら率いるこの部隊を「(,::)¥&@(:/」様のものにするべく、施しに専念いたします!」
『よろしい。おまえも立派な戦闘員だ。働きぶりに期待しているぞ』
「ありがたきお言葉」
片膝をついて忠誠のポーズを取る僕の横で、レッドも同じく忠誠のポーズを取る。
『次の報告、楽しみにしている』
そう言ったあと、モニターは消えた。
「まさかおまえがもう堕ちていたとはな」
「はは、気づかなかったろ」
「わかんなかったよ。というか気づかれてたら俺が倒してたかもな」
「悪い冗談はやめろよな」
「で、どうする。さっさとやっちまうか?」
「焦るなって、お前の悪い癖だ。時間はまだある。それまでに力を貯めておけ」
「わかったよ」