MOTD 3話 (Pixiv Fanbox)
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「ん、メールか。誰からだろう」
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件名:
RE:脱走したエディの処分について
インフラン社
ミカ 様へ
いつも大変お世話になっております。
先日頂いておりました件についてですが、指定されていた四名の内、
二名の捕縛に成功。尋問を繰り返しましたが、残りの二名については
消息不明という形になりました。
シェルター外への脱走ということで、これ以上の捜索は困難となります。
ご容赦ください。
尚、捕縛した二名につきましてはご要望の通り殺処分、若しくは指定区域
への輸送、餌としての処分になりますがいかがでしょうか。
メールにて恐縮ですが、とり急ぎご返信頂けると幸いです。
よろしくお願いします
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「か、なるほど。にしてもシェルター外への脱走なんてよくやるものね。エディの中には知能の高い個体もいると聞いたけどここまでとは」
はぁ、また社長にどやされる。
食用女「エディ」の定期的な輸出はシェルターや人類にとっても必須なことは分かるし、私も危機感を持って望んでいるけど、1から100まで穴の無いシステムを構築しろというのは無理があるのよ。
それに餌と言っても人間よ? 私達と同じ言葉を喋って同じものを食べて、お乳が出るようになったら早々に出荷して死んだら回収する。
「情も湧くし辛いし面倒だし、労力を考えて欲しいよね」
一番嫌いな業務は「蘇生」だ。
一般的に私達人間は寿命が来たら脳を取り出し、それを元にクローンで生み出している空っぽの体に移植。しばらく培養液の中で過ごすと脳と体がシンクロし、私達が生まれるのだ。
所謂、人工的な人間製造。
基本的に私達人間はこのようにして寿命が来たら生まれ変わっている。普通ならそれだけで済むのだが、エディはそうではない。
エディはそのまま細胞の修復を行い蘇らせる。だから一般的な生まれに比べ短命。短い者は5年ほどしか生きられない。
それだけではない、彼女達の最後はどこに行っても同じ、ゾンビの餌場なのだ。
たまに体の裂傷が激しい者や、脳に損傷を負う者もいる。さっさと入れ替えればいいと思うが、完全な新しいクローンを生み出すのはかなりの時間を要する。
資源は無限じゃ無いのだ。
「と言っても、仕事だからね。さてさて」
来たメールに返信文を描き始める。
流石に脱走したエディは生かして置けないので、処分することになる。
「うーん……まぁ餌として真っ当にしてもらうしかないわね。殺したって意味はないし」
びっくりした。
これは非常用電源が作動している状態だ。地震でもあったのだろうか? いや、無かった。
ここはインフラン社の地下施設。緊急対策もバッチリ組まれているはずなのに、どうしてかサイレンの音が鳴らない。最初の異音で止まってしまった。
「うーわなに? 避難訓練かな?」
そういえば、新春一発目に防災訓練をするとかなんとか社長が言っていたっけ。前も何も無い日にいきなり全社でサイレン音が鳴ってパニック状態になったことがあった。今回もきっとそれの延長線上なのだろうと予測する。
「んもー、こっちは忙しいのだぞっと」
第3シェルターが出来て100年は超えているが、未だ危機に扮せず平和な日々を送っている。
平和ボケと言われれば否定は出来ないが、仕方の無いことなのである。
「じっくり気がすむまでやってくれー。私は業務に戻るぞー」
「だ、だれ?」
激しい殴打音が倉庫から聞こえ出したと思ったら、静と静まり返った。そっちの部屋には何も無い錆びれた床だけが広がっているはずだ。けど、確実に誰かいる。
「あれ、おかしいな。倉庫の出入り口は一つだけなのに。壁に穴が空いて空気が入ったとか? 怖いけど……確認しよう」
どうせここの責任者は自分しかいない。
さっさと確認して、さっさとメール返して、さっさと帰ろう。