閉鎖病棟体験その10 (Pixiv Fanbox)
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「それでは、肌に馴染ませていきますね」
背面のジッパーが閉じられ、うつ伏せになっていた麻乃の身体がストレッチャーの上で仰向けに正される。
それで終わりかと思えば、看護師さんたちはどこからかローションのような液体が入ったボトルを取り出し、お互いの両手に適量を取り出していくと麻乃に纏わせた飴色のラバースーツの上を撫でつけるように三人がかりでそれ塗りつけてきた。
「すぐに馴染んでいきますからね」
ぬちゃぬちゃ、すりすり、とローションのような透明な液体と一緒にラバーの膜が擦られていくうちに、ぴっちりとしたラバーの感触が首から下の全ての柔肌を侵食してくる。
「ン……ッ、んんッ……!?」
顔以外のすべてが真空パックされていくような感覚に、麻乃は思わず指先を握り締めてしまう。
その指先は、カッパの水かきみたいに間隔の狭いラバーの膜で直列に揃うように繋げられていて、指の一本一本までラバーの繊維に包まれてしまってる。
「ン……っ、んぁッ」
おかげで、指を握り込むたびに指先から腕にかけた肌がゴムの膜にギュチギュチと締めつけられてしまい。その程よい刺激に麻乃は身を縮めながら、苦しさと甘さを含んだ声を涎と一緒に漏らしてしまう。
「どうやらサイズは問題なさそうですね。指先もしっかり包まれてますし、この様子だと変にシワができたり、破ける心配もなさそうです。では、このままラバーミトンも嵌めてしまいましょう。はい、川嶋さん。そのまま手をぎゅっと握ってくださいね」
「あ、あぅ……っ!?」
看護師さんはそこへさらなる拘束を追加するべく、飴色のラバーに包まれている麻乃の両手の上にまん丸い袋状のグローブを被せてくる。
それは、少し前に被せられていた革製のものとは違い、手の甲を硬く抑えつける分厚いラバーで作り上げられた白い光沢を放つ奇妙なグローブだった。
「あ、えぁ……ッ!? あぁ、あううッ!」
その異様な見た目に喉の奥から悲鳴じみた声が咄嗟に湧き上がり、麻乃は看護師さんに掴まれている両手を振り払おうとする。
「あ、こら! 暴れたらダメですよ! 全部着付け終わるまでおとなしくしててください!」
「——っ、あ、えやぁあ……ッ」
耳元に聞かされる叱責に、肩をビクッと震わせて、麻乃は反射的に動きを止めてしまう。
その間にもグローブは麻乃の両手にピッタリとフィットしてきて——ギュチッ、ギュチチチチッ。と握りしめた手が圧迫されてしまうくらいの抱擁感を与えてくる。
「あ、ぅあぁ……っ」
それは、包まれた麻乃の拳の輪郭が表面に浮き出てしまうくらい窮屈で、このまま被せておくだけでも自力でグローブを脱ぐことが不可能なほどの拘束力を担っていた。
「脱げないように固定しますね」
にもかかわらず、看護師さんは手首に備えつけられたラバーのベルトをしっかりと引き絞り、ラバーグローブが脱げないように、完全に固定してくる。
「これでグローブは脱げなくなりましたよ」
「〜〜〜〜〜〜ッ」
ゴムの塊に成り果ててしまった自分の両手を前に、胸の奥からじくじくとした熱が溢れ出してくる。
一体どうして、こんなにも厳重に指先を拘束する必要があるのか、未だに麻乃は理解ができない。
この期に及んで、麻乃に抵抗する意思はないのに。
もう、何もかも全部、受け入れるつもりでいるのに。
なのに、次から次へと拘束が施されて、僅かに残された自由の一つ一つを奪われていく。
「っ……」
それが嫌で。怖くて。耐え難くて。麻乃はラバーミトンに拘束された手のひらを開こうと指先に力を込めて、足掻いてみる。
ギュチ、ギュチ、ギュチチチチッ。
しかし、どれだけ指先に力を込めてもゴムの膜による圧迫感に両手が抑えつけられて「お前の指先に自由はない」と絶望的な拘束の味を覚え込ませられるだけで——麻乃の両手は、ただの白い塊に成り果ててしまっていた。
「さぁ、次は川嶋さん専用に誂えた”新しい拘束衣“を着用しますよ。袖から通していくので、両手を前に伸ばしてください」
そんなどうしようもない現実を受け入れようとしているところに“新しい”という言葉を筒井さんに聞かされて、麻乃は落としていた視線をあげる。
「……あ、あぅぁ……ッ」
「川嶋さんの身体に合わせて作られたオーダーメイドの拘束衣ですから、サイズはぴったりのはずですよ」
視線の先には、純粋無垢を思わせるような真っ白い光沢を放つ繊維に「No.99」という数字が刻まれた拘束衣が掲げられていた。
胸元に刻まれている数字もそうだが、その拘束衣は、今まで麻乃が着用していたキャンバス生地のものとは明らかに違う見た目をしている。
なにが、というと――まず、この拘束衣の胴体部はレオタード調の形状をしていて、保護衣と同じように股間の部分には開閉用のジッパーが備えつけられていた。
そして、繊維はキャンバス生地ではなく、天井の照明をガラスのように反射するラバーの質感を醸し出している。
さらには、脆い箇所を補強するためなのだろうか。
タートルネックのような襟元には、大きな首輪を想像させるような重厚なベルトが充てられており、胸の中心部から腹部のコルセットのような見た目の部位に向かって縦に真っ直ぐ降りるベルトや、左右の肩部から背面の裾に向かって真っ直ぐ伸びるベルトなど。
拘束衣の各所には、ボンデージ調の重厚なラバーベルトが、幾つも縫いつけられていた。
しかも、それらの重厚なラバーベルトは、胴体部だけでなく、閉じた袖の先や前腕部、二の腕辺りにも金具と一緒に縫いつけられており、腹部のあたりから股下の部分にあるコルセットのような見た目を醸し出す白いラバーベルトと連結できるような仕組みにも見える。
おまけにそれらとは別に、ぱっくりと口を開いたジッパーの背面部の外側には、麻乃が拘束衣を自力で脱げなくするための着脱管理用のラバーベルトと金具がカラカラと嫌な音を鳴らしながら、垂れ下がっていた。
「はい、両手は前ですよ〜」
「すぐに終わりますからね~」
どう考えたって、この拘束衣は看護学生の麻乃が身に着けるにはおかしな代物だ。
いや、そもそもこんな拘束衣を着せられる精神病患者がいることさえおかしい。
この拘束衣は麻乃が身につけていいものじゃなかった。
それなのに、筒井さんを含めた三人の看護師さんたちはニコりと微笑みながら、等身大のお人形におめかしをするように゛新しい拘束衣゛を麻乃に無理やり着せつけてくる。
「あ、あぅあ……ぁ、ぁ、ああぁ……っ!」
「暴れたら危ないので、じっとしててくださいね」
この拘束衣を着せられてしまったら最後。——麻乃はまた、あの病室へと戻されて、毎日のようにおまんこを看護師さんにマッサージされてしまう日々に戻されてしまうだろう。
気持ちいい。気持ちいい。と耳元で何度もささやかれて、クリトリスを何度も何度も擦られ、撫でられ……。
なにも考えられなくなるほどの快楽で頭の中を真っ白に埋め尽くされて、すべてどうでも良くなっていく日々に——戻されてしまう。
「————ッ」
それを想像しただけで、息が詰まる。
今すぐにでも逃げ出して、家に帰りたくなる。
もう、あんな惨めな気持ちよさを麻乃は味わいたくなんかなかった。
そう、思っているはずなのに――
早く、逃げなくちゃいけないって、わかっているのに。
「ッ、ンん、あぁ……ッ、あうッ……ッ」
あのとき、あの瞬間。心の底から逃げ出したいと願った絶望的な状況を思い返せば返すほど、麻乃の胸の動悸は激しく高鳴るばかりで、身体の正面から覆い被さってくる拘束衣の重厚感に途方もない好奇心のようなものを感じてしまう。
これを着たら逃げられなくなる。
全部のベルトが締められたら、二度と自分では脱ぐことができなくなる。
この拘束衣に包まれたまま、麻乃は一生この病棟に閉じ込められて、看護師さんたちの好き勝手に弄ばれてしまう。
一度経験してきた現実が走馬灯のように脳裏に何度もフラッシュバックしてきて、それが胸の奥を邪な期待で埋め尽くしてくる。
どうしてか麻乃は、あの病室で抑制帯につながれたまま、何もできずにただ毎日ベッドの上に囚われ続けているだけの日々を不思議と愛しく感じてしまってる。
「…………ッ」
それがなんでなのか、麻乃にはわからない。
——わからないから麻乃は、看護師さんの腕を振り解くこともなく、拘束衣の袖の中へ両腕を通すことを受け入れてしまっていた。
「ふふ、ちゃんと言うこと聞けて、川嶋さんは偉いですね」
「~~~~ッ」
貶されているのか。それとも本当に褒められているのか。
ニコニコ微笑んでいる看護師さんたちの様子からは、どちらなのかわからない。
わかるのは、麻乃の華奢な上半身が飴色から、白一色へと染まっていく。ということだけ。
それが明らかにおかしな状況だということも、絶対に受け入れてはいけないことだということも、麻乃はわかっている。だというのに、麻乃は両手の先の閉じた袖口から垂れ下がるベルトをただ呆然と見つめながら、荒くなった吐息を溢すように開口器に歪ませられている口角を綻ばせてしまってる。
「背中のジッパー閉じますね」
「ンァ……ッ、あ、あぁあ……ッ!」
ギュチギュチチッ。
「ベルトも締めていきますよ」
「ン……ッ、あ、あぅ、うううう〜〜〜ッ!」
その間に、拘束衣の背面にあるジッパーが閉めあげられ、タートルネックのように麻乃の細首を覆う分厚い帯状のラバーベルトもギッチリと締め上げられる。
さらにはコルセットのように腹部を覆っているベルトも一つずつ、順番に、丁寧に、背中に圧力をとどめるように締め上げられていく。
ギチッ、ギチチッ。
「ン、んん~~ッ」
ギ、ギギッ。
「ん、あぁ……ンッ」
ギギギッギチッ。
「ンァ……ッ、ぁん……ッ」
分厚いラバーのベルトが、拘束衣の頑丈な繊維が次々と麻乃の小さな身体を締めつけて、柔肌のみならず、骨の髄まで圧迫してくる。
おまけにこのラバーの拘束衣は、キャンバス生地の拘束衣とは違って、全身を誰かに羽交締めにされてるようなずっしりとした重量感があって、まるでおもりを身体に巻きつけられているみたいに息をするのも苦しくてたまらない。
できることなら、今すぐにでも暴れだして、この拘束衣の忌々しさから逃げ出してしまいたい。
「次は両腕を拘束するので、胸の下で組んでくださいね」
「あう、うぅ……ッ」
でも、拘束衣の装着は止まらない。
看護師さんは、麻乃の両腕を完全に拘束するために、純白の拘束衣に包まれた麻乃の両腕を胸の下へと強制的に移動させて、左右の腕を交差させる。
そして、袖の先から伸びているベルトを背面のほうへと強引に引っ張りあげ、麻乃の両腕が胸の下から動かないように背中のほうで袖先の金具とベルトをぎっちりと締め合わせてしまった。
「前腕部のベルトも締めていきますよ」
そこからさらに拘束衣の前腕部に縫いつけられていた幅広なベルトを、交差している両腕にくるりと一周絡ませて、タートルネックのように細首を覆っている幅広のベルトから胸の中心部へと縫いつけられている補強部のベルトに連結してしまう。
「次は二の腕のベルトも固定しますね」
腕の拘束はそれだけにとどまらず、二の腕に縫いつけられているベルトにも手が加えられ、前腕部同様に二の腕にくるりと一巻きしたあと、脇の下から背中側に引っ張るような形でベルトが背面に固定されてしまう。
「あとは股間のベルトを鼠蹊部に通しますね」
そして、腹部のコルセットのようになっているベルトの下部から垂れ下がる二本のベルトが鼠蹊部に食い込むように股下に通されて、左右の肩部から裾にまで降りてきているベルトのバックルと繋ぎ合わされた。
「あとは、カテーテルをここに通してから、ベルトの締まり具合を確認して……っと」
——ギギ、ギッ、ギギッ。
最後に、開放された股間のジッパー部から、カテーテルのチューブを探り出され、各所のベルトの締め具合を調整されていき、そしてーー
「ふふふ、新しい拘束衣――とってもお似合いですよ。川嶋さん」
「————ッ!?」
耳元でそう囁かれた瞬間に、ニップルピアスを穿たれてる乳首やクリリングを嵌められたクリトリスが途端にジュクジュクと疼いてきて、自分の手で触りたい衝動に駆られる。
——ギギッ、ギチチチチッ。
けれども、すでに麻乃の両手は拘束衣によって胸の下に束縛され、幾つものベルトが胴体に巻きつけられているせいで、何一つ自由は効かない。
ただ、ずっしりとした拘束衣の重みと一緒にラバーの繊維がギシギシと軋む音が全身から鳴り響くだけだった。
「~~~~~~ッ」
なのに、今すぐに触りたい。
アソコを触りたくて、触りたくて、疼いてしょうがない。
おまんこと乳首を触って、弄って、めちゃくちゃにして、今よりもっと気持ち良くなりたい。
でも、拘束衣を着せられてるから、麻乃は自分でそんなことはできない。
けれど、気持ちよくなりたかった。
拘束衣を着せられたまま、何もできない状態で抵抗することも許されずに、めちゃくちゃにされたい。
この拘束衣だって、あとで麻乃を無理やり気持ち良くするために着せつけてきたに違いないはずなのだ。
だから早く、早く拘束を終わらせて、もっといっぱい気持ち良くしてくれたら、それで……それだけで麻乃は――。
「あらあら。ものすごく期待しているところ申し訳ないけれど……次は気道を保護するための全頭マスクを被せますよ? 名称はアナトミカルマスクと言って、鼻腔にチューブを通す代物になっているので、少し苦しい思いをするかもしれませんが……川嶋さんなら、我慢できますよね?」
「……んぇ?」
そう麻乃に告げる筒井さんは、棚のほうへと移動するとそこに設置されているマネキンの頭部のような置物に装着されている人の頭を模した白いラバーの全頭マスクのジッパーを開き、それをぐにゃりと裏返すようにマネキンの頭部から引き剥がし、麻乃の目の前へと運んでくる。
そのマスクの内側の鼻に当たる部分から数センチほど垂れ下がる二本のゴムチューブをチラッと垣間見た瞬間――これから何を頭に被せられるのか、麻乃は理解できなかった。
「こちらの全頭マスクは、川嶋さんのお顔に合わせて作られてますから、拘束衣や保護衣同様に、川嶋さんのお顔にぴったりフィットしてくれるはずです」
されど筒井さんは、流れ作業のように白色の全頭マスクを遠慮なく麻乃の目の前に広げる。
「————ッ!?」
内側を裏返すように広げられたマスクには、人の顔を粘土に押しつけたような型が浮かび上がっていて、そこに出来上がった鼻の形にくり抜かれた窪みに二本の細長いチューブが生えていた。
さらに口にあたる部分にはシュノーケルに付属しているマウスピースのようなものが内蔵されている。
「これを被れば、嫌なことはぜ~んぶ、見なくて済みますからね」
「あ、ぁぁ……」
その異様な存在感に、背筋からとてつもない寒気が込み上げてきたかと思えば、全身から途端に力が抜けていく。
理由は簡単。麻乃は今、拘束衣を着せられたばかりなのだ。
両腕は胸の下で完全に固定されていて、どれだけ力を込めてもそこからビクともしない。
だからといって逃げ出そうにも周囲は看護師さんに取り囲まれているから、逃げることなんて不可能だ。
なのに、これからアナトミカルマスクという異常この上ないマスクを麻乃の顔面に被せるというのだ。
「さあ、開口器外しますよ〜」
「んあ……ッ!? ンァッ、あぁッ……あ、かはッ」
麻乃の頬の横にあるクラッチを緩めて、看護師さんが開口器を外してくる。
けれど、今までずっと無理やりこじ開けられていたせいなのか、顎に変な痛みが残っており、喋ろうにも思ったように口が動かない。
せめて、心の準備だけでも済ましたくて麻乃は看護師さんに待ったをかけようとするけれど――
「はい、そのままマスク被せるのでお口開けていてくださいね」
「え——まっ、あ、ンァッ!? んンぐッ!? あうッ!?」
筒井さんは、そんなことなどお構いなしに、異様なマウスピースとチューブを生やした全頭マスクを麻乃の顔へ被せてきた。
ラバーの匂いがブワッと顔中に広がって、口の中にマウスピースのような形状をしたゴムの塊が入り込んでくる。
吐き出そうにも吐き出せなくて、どうしようもなくなったから、口を大きく開いたまま、歯を剥き出すようにマウスピースを噛み締めてしまうとカコっ、と奥歯から歯茎のところまでしっかりと溝に嵌まり込んでしまった。
「あう、あうぅうッ、うぅうう〜〜〜〜〜ッッ!?」
「いいですね。そのまましっかりお口の位置を合わせていてください。次はお鼻にチューブを入れるのでちょっと苦しくなりますけど、すぐに終わるので暴れずに我慢してくださいね」
筒井さんは、二本の細長いチューブに潤滑剤のようなものを塗りたくるとそれぞれのチューブの先端を麻乃の鼻の中へと差し込んでくる。
——プツっ、と異様な痛みが鼻腔の奥を刺激しながら、細長い異物が入り込んでくる。
「~~~~~ッ!?」
一体、これは何なのか。
鼻の奥に入り込んでくる異物のせいで何をされているのかわからなくなる。
だって、差し込まれているのだ——鼻の中に、2本のゴムチューブを無理やり挿入されている。
こんな状況に混乱しないほうがおかしな話だった。
「もう少し我慢ですよ〜」
「〜〜〜〜〜〜ッッ」
筒井さんにそう言われても、鼻の奥を貫く刺激があまりに異質すぎて両腕や両足が動き出してしまう。
だが、そうしたところで無意味な抵抗でしかない。
麻乃が変に暴れたりしないように、左右の看護師さんが拘束衣に束縛されている麻乃の両肩から腰を抑え込むようにしっかりと胴体をホールドしている。
麻乃が息苦しさに肩を震わせて、足をばたつかせながら、声にならない声を上げようとそれは変わらない。
ストレッチャーがガチャガチャと揺れようと全頭マスクの装着が終わるまで麻乃をこのまま抑え込んでいるつもりだろう。
「はい、奥まで入りました。このまま全頭マスク被せちゃいますね〜」
「——————ッ!?」
ツーンとした痛みが鼻の奥に残っているのに、筒井さんは麻乃の前髪を掻き上げると顔にべっとりと張りつけるように白一色のラバーマスクを麻乃の顔に覆い被せてくる。
「んぉ、おぉおお~~~~~~ッ!」
視界が真っ黒に染まり、ラバーマスクが顔に張りついてくる。
その感覚は、少し前に革製の全頭マスクに覆われていたときと同じように、麻乃から川嶋麻乃という人としての尊厳を奪い去る恐ろしい感触でしかなかった。
いや、あの時の圧迫感よりも、何かが違っている。
そうだ。この全頭マスクは革の全頭マスクと違って、顔の形ぴったりにフィットしてくる。
麻乃の輪郭にまとわりつくように、顔そのものがゴムによってパッキングされしまうような、そんな感触。
「ンァ……ッ、あぁ……ッ、う、ぅぅ……ッ!」
拘束衣に縛められた腹の底から、どうしようもない感情が溢れ出してくる。
なのに麻乃は、喉を震わせながら、ただ声を押し殺し、マスクの装着が終わるのを必死に我慢する。
だって、今更麻乃が声を上げて叫んだり、必死に何かを訴えても、何も変わらないのだ。
どれだけこの瞬間が怖くて、この現実から逃げ出したくても、この閉鎖病棟にいる限り、麻乃は看護師さんから行われる医療行為を何もかも受け入れるしかない。
たとえそれが、麻乃の知る医療行為とかけ離れている代物であっても、麻乃が望まぬ快楽であったとしても、全部受けれ入れることしかできないのだ。
なぜなら今の麻乃は、おしっこを漏らすからと尿道にカテーテルを差し込まれ。
さらにはうんこも漏らしてしまうから、とお尻の穴をもアナルプラグで塞がれてしまっている。
そのときにお腹がパンパンに膨れ上がるほど、大量にお湯が浣腸されてしまっていて、ずっとお腹が苦しくて堪らないのに……。
麻乃の乳首は訳もわからずニップルピアスに勃ちっぱなしにされ、さらにクリトリスは気持ち良くなれるように、とクリリングなるもので剥き出しにされている。
それに加えて、身体は保護衣というわけのわからないラバースーツに覆われて。
手首から先はまん丸いラバーグローブに自由を奪われ。
上半身にはずっしりとした重量感のあるラバーの拘束衣に両腕の尊厳を封印されてしまってるのだから――もう麻乃になす術などなかった。
「はい、ジッパー閉じますよ」
「うぅ……っ、あぅぅ……っ」
「全頭マスク馴染ませていきますね〜」
「〜〜〜〜ッ」
頭の後ろで全頭マスクのジッパーが閉められ、保護衣と同様に今度は顔の周りを看護師さんたちにベタベタと撫で回される。
あんなゴムチューブを鼻に挿入されてしまったというのに、次第に鼻の奥にあった違和感も消え去ってきて、マスクが顔になじんでしまったのか。息が詰まることもなく、普通に呼吸もできるようになってきた。
「ちゃんと呼吸はできてるみたいですね。それでは、給餌用の口枷も装着しますよ」
「あ、あうッ、ううッ——んぉ、お、おおぉッ!? んごッ、おぉっ!?」
それを見越したように、無防備に口腔内を露出している部分へ、筒井さんが黒くて歪な突起物を内蔵した茶色い革マスクを強引に嵌め込んでくる。
喉の奥を埋め尽くす身に覚えのある強烈な吐き気に、麻乃は頭をブンブン振り回して抵抗するが、筒井さんはそれが口元から外れないように、全頭を締めつける茶革のベルトを一つずつ丁寧に、丹精込めて、引き絞って、固定していく。
「んお、おぉおおッ、おぉ~~ッ!」
「怪我しないようにネックコルセットで首も固定するので、安心してくださいね」
「ぉおおッ!? お、んぉお〜〜〜ッ!」
喉の奥まで埋め尽くしてくる息苦しさに悶えているところに、首の上から強制ギプスのようなネックコルセットも被せられる。
それは、麻乃の首の可動域を確実に制限してしまう代物で、一度ベルトがきつく締められたが最後。麻乃は正面を向いたまま、顎を固定され、何一つ首を動かすことができなくなってしまう。
「これで、ここにある川嶋さんの装具はすべて装着完了ですね」
「~~~~っ」
そうして出来上がったのは、幾重もの厳重なベルトに包まれた胸元に「No.99」という番号を刻まれた真っ白いラバー人形のような何かだった。
「さあ、病室へ移動するために車イスに乗りますよ。ちゃんと立ってくださいね」
「お、おぉお……」
何も見えない視界の中。ストレッチャーから強引に立たされ、数歩歩いたところで麻乃は車イスに深く座らされる。
そして、これまでと同様に、肩や腹部、両足首など。チャイルドシートのような分厚い茶革の抑制帯を次々と各所へ侍らされ、股間から伸びているカテーテルのチューブも車イスの尿パックへ連結されてしまう。
これで麻乃は、誰かの手を借りない限り、車イスから立つことができなくなった。
「では、99番さんを病室へ戻します」
「よろしくお願いします」
麻乃の返事などお構いなしに、看護師さんたちの事務的な会話が行われたあと、麻乃を乗せた車イスが動き出す。
「んぉ、おおぉ……っ」
真っ暗な視界のまま、身体がどこかへと運ばれていく。
前に動いたり、後ろに下がったり、止まったあとに浮遊感に襲われて、そしてまた動き出し、自分と同じように拘束された患者とすれ違ったことさえわからないまま、数分かけてどこかに到着する。
「抑制帯外していきますね」
そこは今までも、これからも、99番という患者番号を割り当てられた川嶋麻乃を入院させておくための独居房のような病室。
四方八方を四角いクッションによって囲われ、特殊な防音加工も施されたありとあらゆる安心と安全を工面された特別な部屋。
ただ一つ。これまでと違っているところをあげるとするならば、麻乃がこれから身を預けるであろうベッドの上には、白い棺を思わせるような寝袋状のラバーの塊が口を広げて待っている。ということくらいだろうか。
「さぁ、川嶋さん。ベッドの上に移動しますよ」
「お、おぉお……ッ」
全頭マスクに覆われている麻乃の視界にその様子が見えているはずもなく、身体を固定していた車イスの抑制帯が外されると麻乃は看護師さんの指示通りに足を動かして、ベッドへと向かう。
「はい、ゆっくり身体を倒してくださいね」
麻乃がベッドに腰かけると同時に、身体がゆっくりと倒され、よくわからない感触のものの中に全身を無理やり押し込められていく。
それは、看護師さんが麻乃の首から下の全身を白いラバーの寝袋の中へ納まるように仰向けに寝かしつけているせいだということを麻乃は知らない。
「スリープサック着せていきますよ。足は真っ直ぐ揃えてくださいね」
「んぉ、おぉ?」
麻乃は訳もわからず言われるがまま、下腿の間に納まる柔らかい何かを両足で挟み込むように両足を真っ直ぐそろえる。
看護師さんは、そんな麻乃の両足が一番深いところまで届くように、麻乃の足先を白いラバーの寝袋の先端部にグイグイと忍び込ませていく。
とはいえ、白いラバーの寝袋は麻乃の体格に合わせてあつらえられているものなのか。
外側の頑強な見た目に相反するように内側はとても窮屈な大きさをしており、拘束衣に縛められている首から下の胴体を袋の外へ飛び出さないようにするためには、観音開きに開かれているジッパーを強引に閉じていくしかないほど狭く、麻乃の身体を納めるにも最小限のスペースしか用意されていなかった。
「ちょっと失礼します。すぐに終わらせますからね」
「んぉ……? おぉお……? んぉお!?」
その異常な窮屈さに麻乃が気付いたのも束の間。看護師さんは麻乃の身体に馬乗りになりながらスリープサックの中に納まるように強引に抑え込んで、開いた蛹の殻を閉じるようにジッパーをグイグイと締め上げては、麻乃の首から下すべてを白いラバーの寝袋の中にきっちりと収めてしまう。
「おぉおお~~~~ッ!」
ネックコルセットに固定された白い頭部以外の全てが、ミチミチとスリープサックに締めつけられ、全身が一つに固められてしまったみたいに動けなくなってしまったことに、麻乃は声をあげる。
しかしながら、このスリープサックと呼ばれる拘束具には、胴体から下肢にかけて全身の動きを阻害するための補強用のベルトが各所に宛がわれており、まだ装着が終わったわけじゃない。
だから看護師さんは、それらのベルトを一つずつ、着々、と締め上げていき、クネクネと芋虫のように動くしかない麻乃の自由を極限にまで奪い去っていく。
——ギギ、ギッギッ。
——ギュチ、ギチチチッ。
「んぉ、ぉおお~~~ッ!」
胸上、胸下、腹部、太もも、膝上、膝下、足首、と一つずつ順番にすべてのベルトを閉じ合わせたのち。
「排泄管理用のチューブも繋げますね」
どこかの墓場に祀られているミイラのような姿になった麻乃をうつ伏せに転がして、看護師さんは臀部のところにあるジッパーを広げる。
「ンーーッ! ンんーーーッ!」
「すぐに終わりますからね〜」
「ンんぉおおお~~~ッ!?」
苦しそうな声を漏らす麻乃を宥めながら、看護師さんはその部位から陰部へと手を伸ばし、尿道に挿入されているカテーテルのチューブを取り出すと、延長用のチューブとつなげ、ベッドわきにぶら下げてある尿パックに連結させた。
そして、アナルプラグのほうにも、専用のホースを取り付けて、尿パックと同様にベッド下に配置されている排便管理用の機械とつなぎ合わせると最後に臀部のジッパーをチューブの排出部のぎりぎりのところまで締め合わせてからロックを施し、白いラバーの蛹になっている麻乃を仰向けの姿勢へと直してしまう。
「はい、次はお身体をベッドへ固定していきますよ」
「ンぉ、おぉお~~~~~ッ、ッ!」
されども看護師さんからの施しは未だ終わらず、今度はベッドに散りばめられている抑制帯とスリープサックの各所の金具が次々と連結されていく。
それは、以前麻乃が拘束衣の姿でベッドに磔にされていたときと同様に、両肩や、首元、胸の上下や、腹部、さらには太ももから足首など……至る所が対象になっており、全身が四方八方から引き延ばされてしまうような拷問のような拘束を施されてしまっていた。
「はい、ベッドへの固定も終わりました。あとはご飯の時間まで自由に過ごしてくださいね」
なのに、看護師さんは麻乃をベッドに磔にしたことを確認すると「それでは、失礼します」と言い残して、病室から出て行ってしまう。
「…………ッ!?」
警報音が鳴り響いてすぐに、何も見えない視界に訪れる静寂が、看護師さんに置き去りにされた現実を突きつけてきて、こんな状態で放置されてしまった現状を理解した途端に背筋からゾッとしたものが込み上がってくる。
「ンん~~~~ッ! んぉおおおお、ぉおお〜〜〜〜〜〜ッ!?」
だから、麻乃は拘束された身体に力を込めて、全身を暴れさせる。
全身のありとあらゆるところに力を入れて、全力で拘束に抗う。
「ンォ、お、おごぉおおおおお〜〜〜!」
しかし、それがこれまで以上に無意味な行為であることを一瞬で理解してしまう。
どこも――動かないのだ。
手も、足も、首も、腰さえも。
全身の何もかもが縦に真っすぐ固められたみたいに、外から覆いかぶさる絶対的な圧迫感によって、完全に拘束されてしまってる。
身体を起こすことも、身を翻すことも、何もできない。
「んぉ、ぉおお、おぉお~~~ッ!」
それなのに、乳首は疼いて、おまんこがさみしくて、すごく切ない。
麻乃は、病室に戻されたあと看護師さんに変な玩具を着けられたり、おまんこを愛撫されたりして、気持ちよくしてもらえるのだと思っていた。
でも、知らない拘束具に身体をベッドに拘束され、ただ置き去りにされてしまった。
しかも、今までの抑制帯と違って、一か所ずつの締め付けというよりも、全身をラバーで包み込みながら、ベッドに磔にするという完全拘束だ。
これだと今まで以上に身体を動かす余裕がなくて、決まった姿勢を維持するしかない。
前は股間のベルトをかろうじてアソコに擦りつけることができたけれど、この拘束は自分で自分の身体を気持ちよくすることなんて、絶対に不可能だ。
まるで、今までの看護師さんたちが行なってきた快楽責めが嘘だったかのように、これらの拘束は麻乃が性的に気持ちよくなるための手段をすべて剥奪してきてるみたいだった。
「~~~~~ッ」
それが信じられなくて、ありえなくて、麻乃は言葉を失いながら、拘束に抗い始めた。
拘束から抜け出したい。とか、こんなのが嫌だ。とか、そういう理由で抗い始めたのではない。
お尻に残り続ける不快感から逃れたくて、乳首やおまんこの疼きを治めたい一心で――
ただただ気持ちよくなりたくて——麻乃は拘束に抵抗した。
「〜〜〜〜っ、お、んぉおおッ、おぉお〜〜〜ッ!」
もう、無理なのだ。
全部、どうでもいい。
もう、我慢なんてできない。
とにかく今は、ただ気持ちよくないたい。という欲望をどうにかできればそれでいい。
「ンんッ、んぉ、おぉおおッ!」
胸の下に組み合わさる両腕を前に後ろに動かして、一本に閉じた両足をグネグネと左右に振り回して、パンパンに膨れて苦しいお腹を引っ込めては、お尻に目いっぱい力を込めてお尻を塞いでる異物を外に追いやろうと頑張ってみる。
「ン、ん~~~~ッ!」
でも、なにも変わらない。
麻乃の両腕はピクリとも動いていないし、両足も全然左右に振れてない。
おなかはただただ苦しくて、変に力を入れたからか、腹筋がツーンと痛んで、不快感がさらに増してくるだけだった。
なのに、乳首も、クリトリスも、おまんこも、ジンジンと疼いてしまって「今すぐ触ってほしい」って刺激をずっと欲しがってる。
「ん、ンぉ、おぉおおっ、おぅ、ん、んむぅ~~~ッ!」
だから、口の中を埋め尽くしてる異物を必死に喉の中で転がして、しゃぶりついて、少しでも気持ちよくなれないかと貪りつく。
そうやって、何度も、何度も、気持ちいい刺激を求めているうちに意識があいまいになってきて、目を覚ますと――
「はい、川嶋さん。起きてください。ごはんの時間ですよ」
口元のマスクにチューブが繋げられ、何かが喉の奥に注がれてくる。
「んお、お、ぉぉ、オ~~~~ッ! ンゴ、ぉ~~~~~ッ!」
それが流動食なのだと知ったところで、喉に加わる不快感は今までに経験してきたものと何も変わらなくて、ただ無慈悲な時間が流れていく。
おなかが苦しくてたまらない。
もうこれ以上、入らない。
何もいらないのに。
「ンゴッ!? ぉ、おぉ〜〜〜!」
流動食は、延々と飲まされ、麻乃のおなかをさらにパンパンに膨らませてくる。
でも、これが終われば、看護師さんは麻乃を気持ちよくするためにマッサージをしてくれる。
食事のあとは決まってそうだった。
だから、これを我慢して乗り越えれば、麻乃はきっと気持ちよくなれる。
——そう思っていたのに。
「はい、お食事終わりました。では、失礼しますね」
看護師さんはそれだけ告げて、いなくなってしまう。
病室には、ベッドに拘束されている白い塊になった麻乃がただ残っているだけ。
「んぅうッ、お、んぉおお~~~~~ッ!」
おなかの奥がジュクジュクと疼いて、おまんこが気持ちよくなりたいって、熱を発してるのに、何も刺激がない。
乳首もクリトリスもただ、ジクジクと疼いてるだけで、一番最初に取りつけられたクリキャップみたいにリングが勝手に動いてくれることもない。
ほんの少し、ちょっとだけでもいい――
おまんこに——刺激が欲しい。
「お、おぉおお、んぉおおお~~~~ッ!」
それだけの理由で、麻乃はまたも拘束に抗い始める。
でも、何も変わらない。
変わることはない。
麻乃は何もできないまま、完全に拘束されているだけ。
そして、気がつくと眠気に襲われて、目が覚めると流動食が流し込まれてくる。
それが何度か繰り返されたころ。
「ン、ンんッ!? んお、おぉ….ッ!?」
お尻のほうで強烈な違和感を感じた。
何かが無理やり、お腹の中に注がれてるのだ。
「〜〜〜〜ッ!?」
それが浣腸されているのだと気づいたときには、お腹の中にものすごい不快感が募ってきて、今すぐに排泄したい欲求に駆られる。
けれど、お尻はアナルプラグで栓をされているせいで出したくても出すことができない。
痛い。
苦しい。
お腹が痛くて、苦しくて、たまらない。
なのに、何も出せない。
踏ん張っても何も出ない。
もしかしたら、麻乃はこのままずっとお腹の不快感に耐え続けなくちゃいけないのかもしれない。
「お、んぉ〜〜〜ッ!」
そう思って涙が溢れ出してきたころだった。
「————ッ!」
何かの駆動音がベッドの下から聞こえてくると溜まっていたお腹の苦しさが瞬く間に消え去っていく。
でも、何も感じない。
うんちをしたときに感じる排泄時の解放感とか、そういったものは何もなくて、ただ、お腹の中に溜まっていた苦しさだけが消えていった。
ただ、お尻には今もなおアナルプラグの忌々しい感触がずっと残っている。
うんちしたいのに、うんちができない感覚がず〜っと残ってる。
それが嫌で嫌でたまらなくて、麻乃はまたも拘束に抗って、全身の至る所を暴れさせる。
ギチギチッ。
ミチミチッ。
と、身体中を包み込む繊維から、音だけが聞こえてきて、そして、何も起きない静寂だけが続いていく。
「ン、んぅ……ッ、ングッ、ぅ、おぉ……ッ」
動けない。
動けない。
動けない。
ギチギチに拘束されたまま、ただ時間だけが過ぎていく。
「はい、ご飯の時間ですよ」
「ンん〜〜〜ッ!?」
そして、意識が揺らいできて、気がつくと流動食が流し込まれてくる。
それが何度も、何度も、繰り返されて、時間の感覚もわからなくなる。
ただ、ずっと乳首とおまんこが疼いたまま、何もできずに時間だけが過ぎて、目が覚めるたびに流動食を注がれて、意識が曖昧になってはお腹に何かが注がれる。
そして、お腹の不快感に襲われて、不快感が消えたあともお尻の違和感は消えないまま、麻乃はただずっと拘束されたまま何もできなくて……。
「お、ぉ……ッ、ぉ、ぉ……っ」
これが現実なのか、夢なのか。
そもそも麻乃は、生きているのか、生きていないのか。
それさえもわからなくなりながら、白いクッションに包まれた六畳一間の病室の中で、ふすぅーふすぅー、と麻乃はただひたすらに呼吸を繰り返す。
排泄の自由を管理され、身体の自由の全てを剥奪された麻乃には、もう、それしか許されていなかった。
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