閉鎖病棟体験その6 (Pixiv Fanbox)
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2023-01-30 18:47:41
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2023-05-27 09:33:03
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「お疲れさまでした。入浴終わりましたよ」
「ふぁ……?」
ぐったりした手足の感覚に戸惑いながら麻乃は重たい瞼を開いた。
周囲の景色は、いつの間にか浴場内から更衣室へと変貌しており、ベッドのような長方形の診察台の上に麻乃は仰向けで寝かせられていた。
脱力しきった身体とぼーっとした意識。
身体はシリコンベルトの縛めから解放されているが、つるつるに火照った柔肌を外気に晒しながら、口には相変わらず開口器であるアングルワイダーが奥歯をこじ開けるように嵌められている。
あれから麻乃はどうなったのだろう。
身体のあちこちを刺激されて、頭の中がふわふわの真っ白になってから記憶が曖昧だ。
「……っ」
たしか、幾度かの絶頂を味わったあと麻乃を拘束しているストレッチャーごと湯船の中へと入れられて、数分ほど湯船に浸かっていたような覚えがある。
だが、それからいつ頃上がったのかまではわからない。
気がついたら更衣室にいるなんて、もしかすると数分ほど意識を失っていたのかもしれない。
瞼は重いし、手足にも力がうまく入らない。
「髪の毛乾かしますね」
麻乃が自分の状況を少しずつ整理していると、ドライヤーを手にした筒井さんが濡れそぼった麻乃の黒髪を温風と一緒にパサパサと掻き揚げてくる。
「あ、あぁ……はぁ……っ」
温風と一緒に頭皮が撫でられると、美容室で掛けられるドライヤーのような心地良さが伝わってくるが、だらしなく開いた口から唾液と一緒に吐息が溢れてしまう。
手足の拘束を解いたのなら、口に嵌めている開口器も外してくれたら良かったのに。
「身体も拭きますよ」
「――ッ、んぁ……ッ、はぁ……ぁ、ぁあ……ッ」
開口器の存在を疎ましく思っていると、他の二人の看護師さんが麻乃にバスタオルを近づけてきて、肌のあちこちをパタパタと叩くように拭いてくる。
こんなにも身体のあちこちを刺激されたらアソコが疼いてしまうと思ったが、不思議とエッチな気分にはならなかった。
全身の至るところを弄られたおかげで性欲を十分発散できたらしい。
入浴するまで下腹部の奥が疼いて疼いて仕方がなかったけれど、これなら変に股間を突き上げておねだりする必要もなさそうだ。
この調子で看護師さんに身を任せておけば、麻乃は晴れて自由の身になれる。
そう思うと張り詰めていた胸の内が穏やかになっていくような気がした。
「髪の毛終わりです」
「身体も拭き終わりました」
「爪切りしますね」
「保湿クリーム塗っていきますね」
ドライヤーの温風が止まると、今度はさらさらになった髪の毛を筒井さんがブラシで綺麗に梳いてくる。
脱力しきった細い指先ではカチッ、カチッ、と音が響き渡り、伸びかけの爪が短く整えられ始め、無防備にさらされた白い柔肌には、三人目の看護師さんが、保湿クリームを馴染ませてくる。
その動作は入浴後の身体ケアに他ならず、末端部分の手足から、身体の中心部へと優しく引き伸ばすように肌の上をさわさわと撫で回していた。
「……ンッ、っ……ん、ぁ……っ」
肌の上を這いまわるゴム手袋のくすぐったさに、つい甘い声を漏らしてしまうが、ここまでの行為に性的な意図は一切感じられない。
身体をひっくり返されたりして、足の付け根や背中。さらにはお尻のほうなどにも保湿クリームが塗布されていくけれども、執拗に敏感なところを刺激してくるようなことはなく、股下のところもあっさりと保湿クリームが塗りつけられる。
「おっぱいにも塗り込みますよ」
「……ッ、んっ……! んあっ……ッ、あ……ッ!?」
けれども、たわわに実った両方のおっぱいだけ触り方に変化があった。
丸みを帯びたおっぱいの形を整えるようにアンダーバストからトップにかけてぐにぐにと根本を掬いあげながら、看護師さんは保湿クリームを馴染ませてくる。
「あ、ん……ッ、ンん……ッ!」
おっぱいが揉みくちゃにされる触り方に、入浴中に行われた愛撫が脳裏によみがえってきて、麻乃は思わず下腹部の奥をきゅんきゅんと縮めてしまう。
あれほどの快楽を味わって、麻乃はもう疲れ切っているというのに、身体は未だに性欲を持て余しているらしい。
「はい、次は乳首に塗り込みますよー」
くりくり、くりくり。
「んぁ、ぁあっ……っ」
ぷるぷると揺れ動くおっぱいへ保湿クリームの塗布が行き渡ると、今度は右側のおっぱいの先端部にある乳輪をなぞるように乳首が擦り上げられる。
それも、あえておっぱいを搾りだすように先端部へおっぱいを寄せ上げて、くりくり、くりくり。と何度も。何度も。
「あぁあッ……ッ、ンぁ……ッ!?」
どう考えても看護師さんが麻乃の身体を弄んでいるということはわかりきっているのだが、それでも麻乃は、息を押し殺すように瞼を閉じて、看護師さんからの責めが終わるのを待ち続けた。
乳首が刺激されるたびにヒリヒリとした快楽がおっぱいから下腹部のほうへと流れ込んで来るが、ここで麻乃が声を上げて反応してしまったら、入浴のときの二の舞になって、まためちゃくちゃにされてしまうかもしれない。
だから、我慢する。
大丈夫。アソコはまだ疼いてない。
「はぁ……ッ、あぁ……ッ、あ、あぁ……ッ」
なのに、乳首に与えられるむず痒い刺激を堪えれば堪えるほど、麻乃の桜色の乳首は未成熟な果実が大きく実っていくように紅く熟れてコリコリに硬くなってしまう。
「ニップルピアス装着しますね」
そんな麻乃の乳首へ看護師さんが宛がってきたのは、銀色に輝く円形のリング。
リングには十字の方向から乳首を圧し潰すための杭が差し込まれており、ひとたび乳輪の中心部にある乳首にそれを宛がうと、十字の杭に捕らえた桜色の乳首を狙いすますように挟み込んでしまう。
しかし、現在の杭の位置では乳首に軽く触れているだけのため、その狂暴性は身をひそめたままだった。
だから、看護師さんは十字の杭を一つずつネジのように回して、リングの中心部にある熟れた乳首を抓り上げるようにゴリゴリと肉芽に食い込ませていく。
――ギュ、ギュギュッ、ギュッ。
「――っあ、あぁッ……!?」
麻乃は看護師さんにそのようなことをしているとは知らず、少し前に感じていたくすぐったい刺激と入れ替わるように、乳首を根元からもぎ取ろうとする締めつけに思わず瞼を開く。
「ふぇ……?」
右のおっぱいに視線を向けると自分のものとは思えないほど大きく熟れた乳首に銀色のリングのようなものが装着されていた。
一体これはなんなのか。
状況を理解しようとしているうちに、看護師さんは麻乃の左側のおっぱいを両手で搾りだすように抑えて、その先端にある桜色の乳首を裏筋から頂点にかけて、くりくり、くりくり、と撫で回してくる。
「……ッ、あ、んぁ……あッ」
右側の乳首に行われていたように、何度も何度も執拗にその愛撫が繰り返されて、麻乃の目の前で乳首がぷっくらと膨らんでコリコリに硬くなっていく。
くりくり、くりくり。
「……ぅあ、あ……ッ」
看護師さんの指が触れれば触れるほど自分の乳首が大きく膨れ上がっていく現実に麻乃は何を訴えようとしていたのかも忘れて魅入ってしまってた。
自分の乳首が刺激を受けるだけで、こんなにも大きくなるなど知らなかったのだ。
「はい、もう一つ装着しますね」
看護師さんはそう言いながら、左側の乳首へどこからか取り出した銀色のリングを当て嵌める。
そして、リングの十字方向から乳首に向かって突き刺さるネジのような杭をくるくると回していった。
――ギュギュッ、ギュッ。
「あ、あぁ……ッ、あ!?」
リングの中心にあるコリコリに尖った乳首の根本がぐりぐりと杭に圧し潰されて、右側だけじゃなく、左側の乳首にも、痛々しい締め付けが襲い掛かってきて。
「はい、できましたよ」
「……っ、あ、んぁっ、あぅ……っ、うぅ……ッ」
看護師さんの両手がおっぱいから離れても、ジンジンとしたむず痒さがおっぱいの先端で淡々と継続し、ツーンとした重量感が乳首を引っ張って離してくれない。
その感覚は今もずっと看護師さんから乳首のところを愛撫されているようないじらしさが延々とそこに残り続けているみたいで、麻乃の脳裏に入浴中の出来事を何度も想起させてくる。
ニップルピアスと看護師さんは言っていたけれど、どうして、麻乃の乳首にそのような器具を装着したのだろう。
麻乃の入浴はもう終わったし、あとは研修を終えるだけのはずなのに。
「次は、グローブ着けますよ」
「ふぁ……? あ、あぁ……ッ?」
いまいち状況が理解できなくて、ぼーっとしていると爪切りを終えた看護師さんに右手を掴まれ、ゴワっとした硬いものを被せられてしまう。
それは、ぱっと見た感じアトピー患者などに使われる介護用具に似ていたのだが、麻乃の手に被せられたそのグローブは布ではなく、馬の蹄を模したようなミトン状で、材質は本革で作られていた。
「手はグーに握っててくださいね」
「あ、ぅあ……ッ?」
看護師さんは麻乃の小さな右手がグーになるようにその手袋を奥深くまで強引に嵌め込んでくる。
無理やり被せられるせいで、袋の中で麻乃の小さな手が握りこぶしを作った状態で固定され、その間にグローブの入り口である手首のバックルがキッチリと留められてしまう。
「反対の手にも着けるので、暴れないでくださいね」
「あ、ぇあ……ッ、あぁッ!?」
右手に気を取られている間に、もう一人の看護師さんから、左手にも同じ物を被せられ、強引に手を握り込まされる。
自由だった麻乃の両手には、瞬く間に馬の蹄を模したような革製の茶色いミトングローブが嵌り込み、どこからどう見ても自力でその手袋を脱ぐことはできなくなっていた。
なのに、看護師さんは左手のグローブにある手首のバックルを当たり前のように固定してしまう。
「ふぇ……っ?」
ただの流れ作業のように、いともたやすく行われる行為に麻乃の頭の中が真っ白になっていく。
「はい、次は拘束衣です」
混乱した麻乃の目の前で、次に大きく広げられたのは、ベージュ色をしたキャンバス生地の衣。
「まずは両手から袖に通しますよ」
筒井さんの手によって、目の前に広げられるベージュ色の生地の至るところには、いくつものベルトが這いまわっていて、袖口が閉じられた先端部にもベルトが垂れ下がっている。
二泊三日の研修中ずっとその拘束衣を身につけながら生活していた麻乃は知っている。
目の前に広げられたその衣を一度でも身につけてしまえば、他人の手を借りない限り、絶対に脱ぐことはできないということを。
「あ、あぁ……ッ!? ぇあ、えあぁッ!」
だから麻乃は、ミトンのグローブを嵌められた右手を駄々をこねる子どものように振り回していた。
気が動転したというよりも、身体が勝手にそのように動いてしまってた。
「だめですよ。ちゃんと服を着ないと風邪ひいちゃいますよ」
「――あ、あぁあッ!?」
しかし、左右にいる二人の看護師さんがぐったりとした麻乃の身体を抑え込み、肩から腕にかけて手首をガッチリとホールドして、前ならえになるように上体を起こし上げる。
「はい、おとなしくしててくださいね」
「えあぁッ……! あぁ、えぁあえうぅッ!」
口から唾液を零しながら、激しく首を横に振って拘束衣の着用を必死に拒む麻乃だったが、筒井さんは問答無用でミトンのグローブに包まれた麻乃の両手に拘束衣の袖を通してくる。
「あ、あぁあッ!?」
「暴れたらダメですよ」
「あぇッ!? あ、ぁあああッ!? ぇあぁああッ!」
耳元で優しく諭されるがそんなの関係なかった。
麻乃は出うる限りに手足に力を込めて、拘束衣から身を放そうとする。
「ほら、諦めてください」
しかし、どう抵抗しても、三人がかりの力には敵うはずないわけで。
三人の看護師さんの手によって強制的に拘束衣の内側へ上半身が押しこまれていく。
「あぅッ、うぅううッ!」
シュルシュルとキャンバス生地が肌に擦れながら、ニップルピアスを嵌められた乳首に重なったかと思えば、ミトンのグローブに包まれた両手も閉じた袖先まで挿入されてしまう。
「背中のベルト閉じていきますね」
そのことを確認して背中のほうに回ってきた筒井さんがギッ、ギッ、と乱れたキャンバスの生地を整えるながら、背面にある五つのベルトを次々と締め上げていく。
首元でカラカラと金具の擦れる音が響き渡り、タートルネックのような襟元から肩甲骨のほうに向かってキャンバス生地が肌に密着してくる。
「あ、あえッ! あええう! えあぁああッ!」
もう、この段階まで着用が進むと麻乃にできることは、アングルワイダーにこじ開けられた口で唾液を周囲にまき散らしながら、「いや、いやあ!」と不快感をあらわにすることしかできなかった。
「すぐに終わりますから、大丈夫ですよ」
なのに、看護師さんたちは暴れ続ける麻乃に優しく声掛けしながら、両腕を無理やりみぞおちあたりにある環になったベルトへ交差するように押しこみ、袖先にあるベルトを背中で一纏めに固定していく。
――ギッ、ギギッ、ギチチッ。
「あ、あぁあッ! ああああッ!」
――コワい。恐い。怖い。
自由になっていたはずの身体が、またも拘束されていく現状に、麻乃の胸の奥底からぞわぞわとした恐怖が混みあがってくる。
たしかに麻乃は、研修が始まった最初のころは拘束されるという境遇にちょっとした好奇心を芽生えさせていた。
拘束衣を着せられて、ベッドに磔られるように放置されて、その環境から抜け出せないという現実に自分が囚われの身であるお姫様になった気分で興奮もした。
毎日同じルーティンで食事と排泄を繰り返されて、あそこに刺激を送られるたびに、正直気持ちいいとも思った。
ましてや少し前には性的な刺激が欲しくてほしくてたまらなくて、自分からおねだりもするほど麻乃はこの環境に酔っていたかもしれない。
けれども、何も説明されず、ただ一方的に自由を奪われていくのは、やっぱり怖い。
こんなのいくらなんでもやり過ぎだ。
いい加減に自由になりたい。
この研修から解放されたい。
早く家に帰りたい。
なのに――
「はい、パンツも穿きますよ」
「あ、あ、あぁあッ! うぁあッ、ぇあぁああッ!」
麻乃が本気で暴れて抵抗しても、三人の看護師さんには及ばず、身体はあっさりと診察台に抑えつけられてしまう。
その間にも次から次へと麻乃の自由を抑えつける拘束衣のベルトがキツく締められ、挙句には見覚えのある黒いラバーのパンツを強制的に股下へと通されてしまった。
すると今度は拘束衣の裾から伸びる二本のベルトが正面から鼠蹊部へ食い込むように股間のほうへと通される。
そのままお尻の上にあるバックルへベルトを通したあと、鼠頸部にさらに深く食い込むように、ギシギシとベルトが強く引っ張られていく。
そうして拘束衣による全身の締め付けを均一に調整するようにベルトが完全に固定されたころには、研修初日のときに新井さんから拘束衣を着せてもらったときと同じ状態にされていた。
「あ、ぁあっ、あうううっ!」
「はーい、おとなしくしてくださいね。車イスに移動しますよ」
「あ、あえぇ……ッ、あぇえッ!」
筒井さんがどこからか例の車イスを運んでくると、診察台の上にいる麻乃を二人の看護師さんが無理やり立たせて、ふらふらの足取りの麻乃を両脇で抱えて車イスへと深く座らせる。
「転倒防止のために身体固定していきますね」
「うぅうううッ!」
「おとなしく座っててください」
抑制帯に縛りつけられるのが嫌で、麻乃は立ち上がって逃げ出そうとするが、一人の看護師さんに肩を抑えつけられるだけで車イスから立ち上がることもできなかった。
当たり前のように車イスに付属された抑制帯で胸と肩。股と腰。足首のそれぞれ一つずつがしっかりと拘束されていく。
「はい、身体の固定終わりましたよ」
「あ、あぁあッ!」
こうなってしまえば、麻乃がどれだけ身体を暴れさせようと、僅かに身じろぎする程度にしか身体は動かない。
「――ンッ、ぁあ……ッ!?」
それでも、身体をバタバタさせていると、拘束衣のキャンバス生地に擦れた乳首にツーンとした電撃が流れ込んできた。
どうやら、変に動いたせいでニップルピアスが乳首にさらに深く食い込んでしまったらしい。
刺激がおさまったあともジンジンと乳首を疼かせて自分のいやらしい存在感を主張してくる。
まさか、この為だけに麻乃の乳首へニップルピアスを装着したとでもいうのだろうか。
「あ、んぁ……ッ、あッ……!?」
繰り返し摘まれ続ける乳首の刺激と抑制帯の締めつけが煩わしくてたまらなくなる。
もう、何もいらない。
何もして欲しくない。
早く、早く終わってほしい。
「あとはこれを被るだけですからね」
「――ッ!?」
車イスに磔にされながら、そう願う麻乃の前に筒井さんが掲げてきたものは、目を疑うものだった。
どこぞのボクサーが手に嵌めるような分厚い白い革で作られたそれは、麻乃が研修初日に閉鎖病棟の廊下ですれ違った患者さんが頭に被っていたものと似ていた。
いや、違う。
どこからどう見てもあの患者さんが頭に被せられていた全頭マスクと何一つ変わらない見た目をしていた。
口の部分は排水溝のような鉄の環が設けられ、鼻の部分も小さな呼吸口がある。
けれども、目元には外から見てもわかるほど分厚い生地が宛てがわれていて完全に塞がれてしまってる。
耳の部分も同じように分厚い加工が施されていて、被った人の視覚や聴覚、さらには言葉の自由さえも封じてしまうのは外観を見るだけでわかってしまった。
人の尊厳を根こそぎ奪うようなこんな恐ろしい全頭マスクを本当に被せられてしまったら、麻乃はどうなってしまうだろう。
そんなの、どうにかなってしまうに決まってる。
「まずは開口器外しますよ」
「あ、あぁ……!? かはっ、あ……ッ!? ――んぁッ、あ……ッ! ぃ、あッ、やだ、やだああああ!」
何としてでもその全頭マスクから逃げ出したくて、唯一自由な頭をブンブン振り回し、本気で悲鳴を上げてそれを拒絶する。
これが研修かどうかなど、麻乃には関係なかった。
このマスクだけは絶対に被りたくない。
あの患者さんと同じ姿には、絶対になりたくない。
ただそれだけの理由で声を荒げる。
なのに――
「大丈夫ですよ。これを被れば何も見なくて済みますから、怖いことも嫌なことも全部忘れて気持ちいいことだけ考えましょうね」
「いやッ、やめ――」
筒井さんは涙目に訴える麻乃の意志を無視して、全頭マスクを強引に被せてくる。
眼前に迫る全頭マスクの裏生地に全力で顔を振って抵抗しても、その行為にほとんど意味はなく、ぽっかりと開いた全頭マスクの口に頭が呑みこまれていく。
「いやあああッ! やだあああ! やだっ、いやああああ――あ、かはッ、あ、んぁああああ、あぁああッ!?」
視界は真っ暗に染まり、ずりずり、と鼓膜を震わせながら、顔面に密着してくるのは、マスクの内側に張り巡らされた柔らかくて冷たい生地。
「あ、おぁあッ、あ、あぁああッ!」
それと同時に口の中へと割り込んでくる排水口のように広がるステンレスの環が麻乃の言葉を完全に奪い去る。
——なにこれ、なにこれ、なにこれっ!?
「あ、あがッ、あぁあ、えあッ! あぅあ、あういえッ! あうひえええッ!」
自分の身に何が起きているのか一瞬わからなくなって、それでも白革の全頭マスクから飛び出した紅い舌を恥ずかしげもなく必死に動かして、はずして。と麻乃は全力で懇願する。
——ジジ、ジジジジッ。
しかし、後頭部では、頭頂部からうなじのほうへファスナーが締められていき、さらには首元にある首輪のようなベルトがしっかりとバックルに留められてしまう。
「あ、ぁああぁああぁああああッ!?」
その頃には全頭マスクの内側にあった余白が消え去り、内側に張り巡らされた柔らかいクッションが麻乃の顔を圧迫するように密着していた。
「編み上げ紐も締めていきますよ」
だが、全頭マスクの着用過程はそれだけにとどまらず、筒井さんは全頭マスクの後頭部に用意された編み上げ紐も一段ずつ、容赦なく、締め上げていく。
——ギチッ、ギチチッ。
頭が後ろに引っ張られるたびに、顔面を包み込む全頭マスクが身体の一部になっていくように麻乃の頭をさらに押し潰すように圧迫してくる。
「あ、あぁああ、あぁぁああぁあああッ!」
その締めつけに、麻乃は排水溝のように開かれた口からただただ声をあげた。
両腕を拘束衣に封印されながら、車イスの抑制帯に磔にされている状態では、そうすることしかできなかったのだ。
だというのに――
「革マスクも着けますね」
筒井さんの手には、研修初日に麻乃が咥えさせられた革マスクと同じフェイスクラッチ型の革マスクが用意されていた。
しかし、こちらの革マスクの内側から飛び出している黒いシリコンの突起は、以前麻乃が咥えていたものよりも太くて長い形状をしており、喉の奥にある気道さえも塞いでしまいそうなほど狂暴な見た目をしている。
それはとても18才の少女の口に差し込んでいいものとは思えない。
「喉の奥を開くようにして受け入れてくださいね」
なのに筒井さんはそれを排水溝のように開かれた麻乃の口もとへと宛がい、そして――
「あ、あがぁ……ッ!? ――おぁ、おぉおッ、おッ!? ンゴッ……、おごッ!?」
異物を押し返そうとする麻乃の紅い舌を突起物で無理やり圧し潰しながら喉の奥深くへと挿入してしまう。
「ン~~~~ッ!?」
声にならない声を漏らしながら、拘束衣に包まれた手足が千切れるほどに力を込めて暴れる麻乃だったが、その抵抗は車イスが僅かに揺れるだけ。
18才の無力な少女に人間を拘束するためだけに作られた拘束具から逃れる術はない。
それを理解しているからこそ、筒井さんは革マスクが全頭マスクに密着するように、一つ一つ丁寧に各所のハーネスベルトを留めていく。
うなじや顎の下。鼻の上から頭頂部。さらには額から後頭部にかけてベルトが這いまわり、少女の輪郭を際立たせるように白い全頭マスクの表面上に茶色い色彩が刻み込まれる。
「お、おぉお……ッ!? ンぉ、ぉおおッ……ッ!」
自分の頭がそのようにベルトで拘束されていることもわからず、麻乃は喉の奥を突きさしてくる異物感に悲鳴をあげながら、拘束衣に包まれた身体をがむしゃらに暴れさせた。
口の中を埋め尽くす異物感のせいで、強烈な吐き気がこみ上げてきては、喉の奥でチリチリとした痛みが延々と繰り返され、そのたびに気道が塞がれて苦しいのだ。
「んぉおおッ!? お、おごぉおッ、ンぉ、おぉおッ……!?」
しかし、麻乃がどれだけ声を上げようと、どれだけ手足に力を込めようとも、何も見えない暗闇に覆われたままで、何も変えられない。
だから、死に物狂いで全頭マスクに覆われた口から悲鳴をあげながら、首を上下左右に振り回して麻乃は看護師さんに助けを求め続けた。
――外して。
――外して……ッ。と
「99番さん迎えに着ました……って、すごい暴れてますね……?」
「これは、怪我しそうで危ないですね」
「そうね。このままだと首を痛めてしまいそうだし、ネックコルセットも着けてあげましょう」
だが、筒井さんは棚から新たな革の装具を取り出し、さらに麻乃の首へ宛がう。
「ンッ、ンーーーッ!?」
真っ暗な視界に突如として首元を覆ってくる異物感が怖くて、麻乃はさらに大きく悲鳴をあげる。
筒井さんは、そんな麻乃に動じることなく、全頭マスクに覆われた麻乃の顎下へネックコルセットの上部をしっかりと合わせつつ、拘束衣に包まれた鎖骨を覆うように下部も合わせた。
そして、首の後ろにある3つのベルトを一つずつ締め上げて、麻乃の首が上下左右に揺れないように固定してしまう。
そうして出来上がったのは、川嶋麻乃という個が剥奪された精神病患者の99番さんだった。
「ンぉ……ッ、おぉおッ……!?」
自分の首が正面を向いたまま固定されてしまったことで、麻乃は自分の首にネックコルセットが嵌められてしまったのだと気づく。
しかし、それに気づいたところで麻乃にできることは何もない。
ただ一生懸命に真っすぐ正面を見据えながら、車イスに腰かけて、ニップルピアスを嵌められた自分の胸を抱いていることしかできない。
「では、99番さんを病室へ戻しますね」
「はい、お願いします」
「ンッ、ンーーッ! ンゥーーッ!?」
「大丈夫ですよ。何も怖くないですからね〜」
看護師さん同士のやり取りが終わると未だに訴えを続ける麻乃の意志とは関係なく、車イスが動き出す。
「ンぅッ、ン、んーーー!」
更衣室の重たい扉を抜けて長い廊下をゆっくりと進みながら向かうのは、階層を移動するためのエレベーター。
車イスを押している看護師さんと付き添いの看護師さんが警備員と無言のやり取りをし、扉が開かれたエレベーターに乗る。
そして、幾ばくかの浮遊感が訪れたのち、エレベーターの扉が開き、再び長い廊下を奥へ奥へと突き進んでいく。
だが、全頭マスクを被りながら、車イスに拘束されている麻乃には、自分がどこを移動しているのかわからなかった。
素足に感じる外気の感触を、じっと暗闇の中で模索し続けながら、喉の奥を貫く異物を必死に咥え続けるだけ。
それでもかろうじて麻乃は研修がまだ続いていることを理解した。
だから、どうにかして残り少ない研修を耐えなくちゃと頭で考える。
考えるのだが――
「んぉッ……、お、ぉおッ……っ!」
麻乃に許されているのは、車イスに両腕を抱えるように座り込み、ネックコルセットで固定された首でただただ正面を見据えながら、研修が終わるのを待つことのみ。
人権を完全に剥奪された精神病患者の99番さんとして、拘束の息苦しさに声を漏らしながら、全頭マスクの中で涙を流すことしかできない。
「はい、到着しましたよ」
長い廊下を数分掛けて進み、たどり着いたのは、麻乃が研修中に使用していた病室。
病室のプレートには「00099」と番号が記入されており、名前などのプレートは一切なく、赤いランプだけ点灯していた。
――ピッ。
付き添いの看護師さんがプレートの横にある電子キーを操作して重たい扉を開くと赤いランプが緑に変更される。
「中に入りますね」
車イスを押す看護師さんがそう言いながら麻乃を病室の中へと移動させていく。
病室内部は一面が四角いクッションに覆われており、少し進んだところには、抑制帯付きのベッドが綺麗に整えられた状態で用意されていた。
「ベッドに移るので、抑制帯外しますよ」
「ンぉ……ッ、ぉぉ……ッ」
車イスが止まると麻乃の身体を拘束している抑制帯の縛めが解かれていく。
「ンッ……! ンッ、ンーーッ!」
全頭マスクの内側で反響する自分の声のせいで、看護師さんの言葉を聞いていなかった麻乃は拘束衣に包まれた上半身を揺すりながら喉を鳴らすように訴える。
助けて。
もう、やめて。
はやく、終わらせて。と。
「はい、こっちで横になりますよ」
なのに、二人の看護師さんはそんな麻乃を無理やり車イスから立たせるとベッドに深く座らせ、身体が横になるように押し倒してきた。
「ンッ!? ン、ンーーッ!?」
全身を包み込む雲の上のようにふかふかな感触は、研修初日に経験したものと同じものだった。
それが意味することは——
「ンぉッ、オ、んぉおおッ!」
「大丈夫ですよ。すぐに終わりますからね」
麻乃は胸の下で交差した両腕ごと肩を左右に振り回すようにして、ベッドから身体を起こそうとする。
だが、二人の看護師さんは仰向けになった麻乃のウエスト部分から抑制帯を巻きつけ始め、手際よく麻乃の身体をベッドに縛めてくる。
「ンんッ!? ンッ! ンんーーッ!?」
足をバタバタと跳ねさせて、麻乃はどうにか抜け出そうと抵抗を繰り返すが、上半身の拘束を進めていく二人の看護師さんに対してはなんの効力もなく、ただ無意味に身体を揺らしているだけに過ぎなかった。
その間にも二人の看護師さんは次々と麻乃の上半身にある拘束衣に備え付けられた金具と抑制帯を繋ぎ合わせていった。
まず一つ目はウエストの抑制帯。
次に、二の腕部の抑制帯。
そして、三つ目は肩の抑制帯。
そこから、ネックコルセットや全頭マスクにも抑制帯は繋ぎ止められ、拘束衣に包まれた身体が仰向けのままベッドに深く沈みこみ、そこから微動だにしなくなっていく。
「んぉ、おごッ……!? お、おぉおッ……ッ!? ――ッ、んごぉ……ッ!?」
絶望的な拘束を前に、なおも抵抗を続けようとする麻乃だったが、喉の奥に入り込む異物のせいで唾液が絡まり大きく喉を詰まらせてしまう。
「~~~~ッ!?」
そこから強い嗚咽感に襲われて、気道が塞がり、息ができなって胃液が逆流しそうになり、あまりの苦しさに全身の筋肉が硬直して動きが止まる。
「そのまま動かないでくださいね」
看護師さんはその隙を逃さず麻乃の両足へ手を掛け、抑制帯を的確に留めていく。
「ンッーーーー!?」
足首をガッチリと掴み続ける革枷の存在に、麻乃はすぐさま足をバタつかせようとするが、時すでに遅し。
足首の革枷が嵌められてしまうと、大きな動きを失った両足は瞬く間に自由を奪われていく。
膝下も、膝上も、太ももさえも、幅広な革帯が巻きついてしまえば、肩幅に開いた両足はただの棒切れになるしかない。
「はい、身体の固定終わりましたよ。あとは好きなだけ自由にしてていいですからね」
「ンッ!? ンんッ!? ンーーーーッ!?」
「私たちはこれで失礼します」
拘束衣に包まれた両腕をギシギシと縦に揺らして、今すぐにこの拘束から解放してほしいことを必死に伝え続ける麻乃だったが、四方八方をクッションに包まれた病室の扉は虚しくも閉じられてしまう。
麻乃をベッドに深々と沈み込むように拘束し終えた二人の看護師さんが病室を出て行ってしまったらしい。
「――――ッ、~~~~っ!」
突如訪れる無音の世界に、麻乃は言葉を失くす。
顔は全頭マスクによって密封され、拘束衣に包まれた上半身はただの肉塊と化して、肩幅に開いた両足はベッドに付属された革枷によって抑制帯に繋ぎ留められてしまってる。
だというのに、喉の奥に入り込む異物は以前のものよりも脅威を増していて、常に喉の奥に意識を向けていないとたやすく気道を塞いでくる。
それもそのはず、苦しさに首の向きを変えようにもネックコルセットで固定された首は真上を向いたまま、動かすことができず、排水溝のようなリングによって口が開かれているため、異物を噛み締めて位置を固定することもできない。
僅かな嚥下の動作に加え、少しでも舌を動かしてしまうと口の中で突起が変に動いて、喉の苦しいところを刺激してくるのだ。
だから、なんとしてでもこの異物だけでも吐き出してしまいたいのだけれど、仰向けのままベッドに磔にされた麻乃にはどうすることもできない。
いや、それ以前に拘束衣の内側で両手に嵌められているミトンのグローブを脱げない時点で麻乃がこの拘束から抜け出す手段はなにも残っていなかった。
「ンぅーーーーーッ! ンッ、んっ! ンゥーーーーーッ! ンーーーーーーッ!」
自分の身に起きている現実が信じられなくて、麻乃は喉を大きく鳴らしながら、手足に力を込めて拘束に抗う。
ギシッ、ギチチッ。と身体を縛めているベルトが肌に深々と食い込んできて、麻乃の身体を当たり前のように抑え込んでくるけど、関係ない。
「ンぉッ、おぉおッ! ン、んーーーーーーッ!」
それでも麻乃は拘束に抗って、息切れを起こすたびにふすぅー、ふすぅー、と全頭マスクに開けられた唯一の鼻孔から呼吸をひたすらに繰り返す。
「お、おぉお……ッ、んぉお……っ、ぉ……」
そして、幾ばくかの時間が経過したころ。
この縛めから抜け出そうとする無意味さを麻乃は思い出した。
――無理なのだ。
どれだけ足掻いたところで、この完全な拘束から抜け出す術は麻乃にはない。
それは、これまでの研修で嫌な程味わい続けてきた。
だから……。
――早く……。
――早く終わってよぉ……っ。
麻乃が拘束への抵抗をやめた途端に訪れたのは静寂。
しかしそれは、あくまでも麻乃を取り巻く環境のみであって、麻乃の身体には静寂と呼べる静けさは訪れてこない。
「ンッ……ッ!? ん、んぉ……お、おぉおッ……!」
ただただ無力でしかない暗闇の世界で、麻乃の身体に訪れたのは、胸の先端部の熱い疼き。
そこは、看護師さんから銀色のリングを装着された場所だった。
「ん、ン……ッ、んぉっ……ッ」
何もしてないのに、ずっと誰かに優しく抓られているような残り香が淡々とそこに点在している感覚は、今の麻乃にとって邪魔なものでしかない。
けれども、その刺激を意識すればするほど下腹部の奥がきゅんきゅんとしていくような気がした。
何もできないほど無力なまでに身体を拘束されて、どうしようもないほど呼吸をするのも苦しいのに。
熱くなった乳首が身をよじるたびにキャンバス生地に擦れては、甘い刺激を身体の芯へわずかに伝染させてきてしまう。
「ン……ッ、ンん……ッ」
触りたい……っ。
今すぐ乳首を触ってしまいたいっ。
「ンぉ……ッ、お、おぉお……ッ!」
でも、触れない。
麻乃の両手は胸の下で組んだまま動かせず、両手はグーを握ったままグローブを嵌められてしまっている。
だから、麻乃は喉を奥を異物に侵されながら、乳首に迸る疼きを頼りに身体を抑制帯に擦り付けて、そして——
「~~~~ッ」
違う。
そんなことをしてる場合じゃない。
麻乃はこんなことを常日頃から考えるような変態じゃなかった。
麻乃は看護師を目指してる看護学生だ。
今はその卒業資格を得るために研修に来てるだけ。
なのに、どうして麻乃は、こんな訳の分からない研修をさせられているのだろう。
拘束衣を着せられて、精神病患者と同じ扱いをされるなんてどうかしてる。
こんな研修は絶対におかしい……ッ。
いい加減に自由になりたい。
もう、麻乃は十分に頑張った。
頑張ったんだから——
「ンんッ、んぉ……ッ!? お、ぉおッ……お、ンゴッ!? おごぉおッ!?」
全頭マスクに覆われた暗闇の中で思考を巡らしているだけでも喉の奥を突き刺してくる異物は麻乃から呼吸という概念を奪い取ろうとしてくる。
両手が自由なら、今すぐにでもそれらのマスクを剥ぎ取りたいのに、両腕は胸の下に拘束されたまま動かない。
「ンッ、ンんッ! ングぅーーーー! ンッーーーーッ!」
だから、麻乃は腕を動かして、拘束に抗う。
動けないとわかってる。
意味はないってわかってる。
でも、何もしないまま、ただ喉の奥を塞がれるのは嫌だった。
だから、僅かでもいい。
ほんの少しでいいから、解けてほしい。
片手だけでもいいから自由に動かしたい。
「んぉ、お、おごッ……ッ!?」
そう、願っても拘束衣のベルトは何一つ緩む気配なく、ただ時間だけが無意味に経過していく。
研修の終わりへと近づいているはずのなのに、なぜだかその時間の経過は麻乃に焦りを与えてくる。
もしも、本当にこのまま研修が終わらなかったら……。
この先もずっとこのままここに閉じ込められて生きていくことになったら……。
家族にも友だちにも会えないまま、毎日ずっと看護師さんにお世話だけされて、ずっと、ずっと、この場所に一人で囚われ続けて、最後はどうなるの……?
「ンッ……、ンんッ……ッ!」
何もできずにただ、そこに在り続けることしかできない麻乃の思考はひたすらに悪いことばかりを考えてしまう。
「………ッ、お、んぉ……ぉぉ……ッ」
それがいつまでもいつまでも続いていくような気がして、次第に現実が受け入れられなくなってくる。
「ンぅ、ん……ッ、ん……ぅぅ……っ」
完全拘束の暗闇の中で、ただただ涙だけが溢れ出し、一体自分が何のためにここに居るのかも、全部わからなくて、麻乃はひたすらに泣き続けた。
泣いて、泣いて、泣き続けて。
雁字搦めに磔にされた手足から力が抜け落ちて。
いつになっても訪れない終わりを待ち侘びながら、麻乃の意識は深い闇の底へ沈んでいった。
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