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2016年のハロウィン絵につけたお話をTiranMasterさんに編集してもらったのを再度日本語化して編集したものです(ふくざつだ)

English ver: https://www.furaffinity.net/view/21593171/


ある年のハロウィーンの夜、一人の男がお菓子工場で残業をしていた。

本来なら今頃は友人の開くハロウィンパーティーに向かっているはずだったが、

昼間に機械が壊れてしまったことと、今日中に機械を修理せよというお達しの元、

彼は作業着を油で汚しながら夜まで居残っていたのである。


実のところ彼はお菓子があまり好きではなかったのだが、ハロウィンパーティーには期待していた。

甘いものも沢山出るだろうが、コスチュームに身を包んで友人と奇妙な色のカクテルを飲んでばか騒ぎするのは大好きだ。


修理を終えた彼は時計を確認する。 今から家に戻ってシャワーを浴び、

友人宅に向かってもパーティーには途中から参加できるだろう。

ところが。 ロッカールームで汚れた作業着からシャツに着替えた時、

誰もいないはずの工場に場違いな子供の声が響いた。


「Trick or Treat!」


突然の声に驚いて振り向くと、そこには足元まで隠すような長いローブをまとった

小さな悪魔がカゴを抱えていた。

つるりとした髪のない頭は赤く、両側面からはツノが生えている。 


だがいくらハロウィンだからといって、そんな突拍子もなく

本物の悪魔なんてものが現れるわけもない。

かぶりものか何かなのだろうが、随分気合の入った仮装だ。

男はそう思ったし疲れてもいたので、あまり深く考えずに子供をあしらおうとした。

「ぼうや、こんな所に一人で来たら危ないよ。

 それに今お菓子は持っていないんだ」


むうっと小さな悪魔が頬をふくらませた。 

被り物の頭部ではあり得ない表情の変化だが、男はそれに気付かない。

「嘘をつくなよ! ここはお菓子の工場だ! 

 人間の街のことはきちんと勉強してきたんだぞ!

 ここにはお菓子がたくさんあるはずだ!」


『人間の街』だって? なかなか役になりきってるな。

男はくすりと笑い、小さな悪魔に手をひらひらと振った。

「ほらほら坊や、お兄さんと一緒にここから出よう。 

 ここはいろんな機械があって危ないんだ」

だが、それを聞いて既に赤い顔をした小悪魔はより一層顔を赤くして叫んだ。

「お菓子をくれないなら…… お菓子にしてやる!」


小さな悪魔はローブの懐に手を突っ込むと何か小さなステッキのようなものを

取り出し、うにゃうにゃとよく聞き取れない、何か曖昧な言葉を叫ぶ。 

すると少し遅れて、男の全身にびりっと痺れが走り、

突然冷たいプールに落とされたような悪寒が全身を包む。

一体なんだ?と思う間に、口の中に妙にねばっこい唾液が溢れ、

砂糖を煮詰めたシロップのように甘い味が口中にあふれてくる。


体が冷えていくような悪寒は続き、髪の毛が湿り、

肌が濡れるほどに全身から冷や汗が噴き出る。 

どこからか甘い匂いが漂ってくるが、

男はそれが自分の身体から発せられていることに気付いていない。

髪を伝って垂れてきた冷や汗をはらおうと、男は髪に手を伸ばし…… 

そして髪の房がずるりと抜け落ちたことに小さく悲鳴を上げた。


手の平に落ちた髪の房はぶよぶよの青いゼリーのように溶けていて、

そのままとろりと指の隙間から床に零れ落ちた。

それは何かお菓子のような匂いがした。


「一体… なんだこれは!?」

男が恐怖に目を見開いて小さな悪魔を見下ろす。

悪魔は意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「ぼくが何をするかはもう言ったぞ、人間! 知りたかったら鏡を見てみるんだな」

男はロッカールームに備え付けられた鏡に近寄り…… 

そして、自身の顔の色が本当に文字通り、

塗られたように真っ青になっているのを見て男は愕然とする。

小悪魔はそのざまを見てあはは! と高笑いを上げた。


男は慌てて自分の顔や頭をぺたぺたと触る。

髪の毛は全て青い粘液となって指の間をすべり落ちていき、

その下の皮膚もまた青くなっている。

手触りもまた異様で、皮膚が持つ柔らかさや体温は失われ、

冷たくなめらかに変質している。

鏡の向こうから見返してくる顔色はさらに変化し、

デザインされたような水色のストライプパターンが入り始めた。

それはもう、自然の生き物が持つような色や質感ではなく、

人工的に着色された鮮やかなつくりものに見える。


「うお、あ……」

呆然としたまま口をあんぐりと開けると、その変化は咥内にまで及んでいるようで、舌はつるつるとしたライムグリーンになっていた。

「俺の、頭が…… あっ!?」

突然、目に見えない力に頭がおさえつけられ、あらん方向から力が込められる。

鏡に映る自分の頭が、柔らかい飴細工のように変形していく。 

耳がぐいっと頭頂部に向けて引っ張られながら、頭全体が丸っこく変形する。

歯は動物の牙のようにとがり始め、顎全体が前ににゅうっと伸びて膨らんでいく。

続いて眼球が変化するとともに、ぐにゃりと視界が歪んで世界が真っ暗になる。


「見エな、うア、アフッ」

声色が変だ。 喉に何かが詰まったような感じがして上手くしゃべれない。

目は見えないが、冷たい変化が首から下、服の下の上半身まで

進んでいくのがはっきりと感覚できた。

肩か胸、そして両腕と手の先まで、冷たい痺れが浸潤して、

肉が別の何かに変わっていく。 

そしてそれら全てが脈動するように、ずくずくとうずき始めていた。


実際に、彼の上半身は脈打ちながら大きくなり始めていた。

力強いエネルギーが内側からあふれ出し、

体内を巡っていくうちに表面をぼこぼこと乱暴に押し上げている。

暗闇の中でも肉体が膨張し、シャツに内側からぴったりと張り付いていき、

きつくなっていのが分かる。

男は呻いていた。 苦しみや痛みではなく、快感によってだ。

力が溢れてくる実感は奇妙な安心感と心地良さを彼に与えていた。


だが、次の瞬間、それを吹き飛ばすような一際強い爆発が内側から起こった。

「グォアアッ!!」

爆発するように膨らんだ筋肉によって、

シャツは内圧で一瞬で吹き飛びぼろ布へと化した。 

強烈な快感が男を襲い、自分の口から出た声が獣の咆哮に近いものだったことにも

気付かない。


小悪魔は膝から床に崩れ落ちた男をじろじろと観察する。

小山のように盛り上がった胸筋と硬そうな腹筋は顔と同じく青系のストライプだ。

だが、左腕は緑のストライプで、右腕に至っては赤と黄色の派手な縞になっている。

部位ごとにてんでばらばらな、一見奇妙な色に変化した筋肉の塊に、

しかし子悪魔は満足そうに頷く。

「うん、いい感じに進んでる。 ぼくの魔法もたいしたもんだよ! 

 ……でもなんか思ったよりごっつくなっちゃってるなぁ」


呟くような小悪魔の声は男の変化した耳にはっきりと届いていたが、

そのことばは頭の中で意味を為さずに流されていく。

快感の余韻と、そして下半身にも変化が進んでいくのも感じていて

それどころではない。


下半身の肉が内側から揺さぶられ、尻が膨張していく。

既にぴっちりと張り付いていたズボンと下着の縫い目が

びっ、びっと裂けていくのが、何故か楽しくすら思える。

「オッ、オアァ……」

背筋に何か違和感がある。 真ん中…… 脊髄を

何か気持ちのよいものがが突き抜けていくような。

それが尾てい骨の先から噴き出した時、二度目の爆発が起きた。


男は吠えた。 

自分が何をしているのかよくわからなかった。

近くにあったロッカーにぶつかり、扉の角にわけもなくかじりついてしまった。 

苦すぎる鉄の味に苛立ち、扉を引っぺがすとまるで紙のように

それをぐしゃぐしゃと丸めてしまった。

尻から生えた新しい何かが空気の中を揺れ動いているのがわかる。 

何だ? と思い振り返ると、驚いてひっくり返っている小悪魔がいる。


それを見て、ようやく男は自分の目がいつのまにか開いていたことに気付いた。

内側から昂るエネルギーと快感の余韻で頭がぼやけている。

やはり背後で自分の一部が揺れている。 気になる。 一体なんなんだ?

乱暴に周囲を見渡し…… 視界に映ったそれにぎょっとして、

頭が少しだけ冷静さを取り戻す。


「なんだ、これは……」

鏡の向こうに映ったそれも同じように口を動かす。 

その声は深く響く獣のようでもあり、作り物めいた硬質さを感じるものでもあった。


男を見返す瞳はくすんだ茶色から明るい金色へと変わり、縦に瞳孔が走っていた。

自分の頬に、獣と人を混ぜ込んだような形状の手をあててさする。

生き物らしい皺も毛穴もなにもない、冷たく滑らかで硬質なそれは、

皮膚といっていいのかも分からなかった。

硬くて、へこみも弾力も何もない。 全身の肉がそうなっていて、

てかてかと電灯の光を反射していた。


デフォルメされた猫科のような頭に、獣と人を混ぜたような形状の手足、

そこから盛り上がる肉球。

2メートル以上にまで成長した体格は全身が筋肉で盛り上がり、光沢のある体表がそのシルエットをさらに目立たせている。


その巨体…… 猫科の獣人はどこか呆けたように鏡の前に立ち、

あちこちの筋肉を曲げ、身体の向きを変え、お尻の根本から生える尻尾を

自分の意思で動かし、異質となった自分の肉体を確認していく。


その体の色はなんともおかしなもので、頭と上半身の前面は青く、右腕は赤と黄色のストライプ、左腕は緑色。

左脚は赤と緑で、右脚は黄色と青。

全身に縞模様が入り、だれかに雑に虹をぶちまけられたようになっていた。


自分で曲げる時は柔軟に動くくせに、触ったり叩いたりしても全くへこみもせず、

石のように硬い。 心臓も呼吸も止まっているが、何故か生きている。


全身何もかも、あまりにも異常だった。

恐怖と困惑も確かにあった。


だが… これは… すごい…


否定できるならしてみろ、とでも言わんばかりの圧倒的な肉体の力強さは

彼を魅了し、内側から溢れてくるエネルギーは彼に充実感を与えている。

さらには彼の肉体から発せられる甘い香りがそれほど広くもないロッカールームに充満し、彼に妙な安心感を与えていた。


お菓子や甘いものは苦手なはずだったが、その香りは何故だかとても魅力的で……

男は誘われるように、自分の緑色の手の甲を近付け舌を伸ばし……


突然、何かに右のお尻をべろりと舐められ、男は飛び上がった。

「ウォアッ!?」

その感覚はあまりにも強烈で、とろけるような快感を伴っていた。 

振り向くと、小悪魔が笑顔で口元を舐めていた。

「おいしいー! 右のお尻はレモン味!  

定命の者をお菓子にすると美味しくなるって本当だったんだなぁ」


小悪魔はそのまま男に抱き着くようにして、身体のあちこちを舐め始めた。 

ゆっくりと味わうように舌を這わせるたび、強烈な快感がはじけ、

脚がふらつき立っていられなくなる。

ほとんど四つん這いになった巨大な甘い塊に、悪魔は丁度いい位置に来たぞとばかりに胸も、背中も、腕も舐め上げていく。

「やめ、やめぇ、うる、グルルルル… おい!」

舐められる度に気持ち良さに身体が震える。 

どうやって音を出しているのか分からないまま喉がごろごろと鳴ってしまう。

恥ずかしくてたまらなくなり、何度も静止の声をかけたところで

小悪魔はようやく口を離してくれた。


「なんだよトリート?」

男? 猫? なんだかよくわからない甘いもの? は後ずさりして座り直したが、

全身にはまだ舐められた感触が残っていて顔が緩みそうになる。


「一体何をしたんだ!?」

男の質問に、小悪魔はもうその質問には飽きたよ、とでも言いたげな視線を返した。

「何度も言ったでしょ、ぼくはおまえに魔法をかけて、

 トリート(ごちそう)にしてやったんだ。

 全身味が違って何度でも楽しめるスペシャル・レインボー・キャンディさ!

 信じられないなら自分で味わってみれば?」


キャンディ!?

男は困惑したが、とにかく恐る恐る緑色の左手を舐めてみた。 それは確かにメロン味のキャンディだ。 それも極上の。

だが小悪魔に舐められた時にあった強烈な快感は無く、彼は少しだけがっかりし…… しかしそれでも舐める舌は止まらない。

おいしい。 一舐めごとに、同じ緑色の部分でも微妙に味が変わる。 

赤い右手はリンゴだ。黄色いストライプは蜜のようで、同時に舐めるとまた

一層美味しい。

ぺろぺろ。 こんな美味しいキャンディがあったなんて!!

今まで甘いものを避けてきた過去の自分を叱りたくなる。


「今日からお前は生きて動く飴、リビング・キャンディのトリートだ! 

 キャンディは舐められるのが役目だからね、誰かに舐められると

 とっても嬉しい気分になるはずだ。 そうなってるよね?」

小悪魔は自分の魔法で生まれた奇妙なクリーチャーの出来に満足したようで

したり顔でひとり頷きつつ、巨体のリビング・キャンディの周りを

とことこと歩きまわった。

「うん、まぁ……」

とっても嬉しい、という表現は随分過少じゃないか? 

男…… キャンディの獣…… トリートは首をかしげて曖昧に答え…… 

びくんと全身を震わせた。 

「左のお尻はイチゴ味だね」

小悪魔は音をたてて赤いお尻を舐めていた。


そこから小悪魔は手加減することなく、悪魔らしい長い舌でトリートの体の

あらゆる部分を味わい始めた。

彼も最初こそは人間らしい羞恥心とプライドで抵抗しようともしたが、

あまりの快感にその意思も溶かされていってしまう。

小悪魔によってキャンディの肉体の味を楽しまれながら、

一方で彼自身も自分の身体を舐め始めていた。

柔軟な猫のような肉体はあらゆる姿勢を可能にし、

彼は自分の変化した肉体を隅々まで舐めて、

誰もが夢中になるようなその味に没頭していった。


あらん恰好で身体を曲げ自分の肉体の味に没頭し、時に悪魔の舌に与えられる快感と自らで感じる味を重ね合わせ、

喉を鳴らすその様に人間だった時の尊厳や気恥ずかしさはなく、

むしろ小悪魔が自分の身体を舐めていない

瞬間に物足りなさすら感じるようになっていった。


キャンディである肉体が舐め溶かされ、少しづつ体積が減っていっているよう

だったが、それも気にならない。

人間らしい恐怖や困惑が、リビング・キャンディとしての

欲求に塗りつぶされていく。

このまま小悪魔に自分の身体が無くなるぐらい舐めて欲しい。 

いつまでも味わっていたいし、自分の身体を味わってほしい。

そうしてしばらくロッカールームの中は飴を舐める水音と、その味を讃嘆する声、

そして獣の快楽の喘ぎと喉を鳴らす音で満たされていった。


ようやく1時間程すると、小悪魔はリビング・キャンディから身体を離し、

「ふぅ、満足したぁー」

と口のまわりを舐めながら座り込んだ。

それにトリートの獣面はショックでしかめられた。

「もういらないのか?」

つやつやしたキャンディの両目には、もっと舐めてほしいという心の底からの

懇願の意思が浮かんで見えた。


小悪魔は極上のキャンディだとしても味の好き嫌いがあったのか、

トリートのキャンディの身体はところどころいびつにえぐれていたりして、

元の立派だった体格は全体的に2/3ほどに量が減少していた。

もう自慢にすら思えていた肉体だっだが、全て食べてもらえるなら

それも惜しくない、とトリートは心の底から思っていた。


「うん、もうキャンディは十分! 次はチョコレートが食べたいな」 

だが悪魔はトリートの表情に気付かずにっこり笑って立ち上がると、

何事もなかった風にとことこと部屋を出ていった。

キャンディの猫獣人は呆然と部屋に取り残された。 もう舐めてもらえないのか? これで終わりなのか?

しゅんとして床に寝たまま慰めるように自分の手を軽く舐める。

……が、すぐに小悪魔は部屋に戻ってきて軽く睨んで言った。

「ちょっとトリート、ついて来てよ。 今夜おまえは僕のしもべになるんだ。 他の人間の居場所を教えてよ!」


トリートは人間だった自分の尊厳のことも忘れ、

新しい主人に付き添えることに心から喜んでいた。

小悪魔に砂糖を補充するように言われると、

工場にあった材料から2ガロンほどの砂糖水を作りそれをごくごく一気に

飲みほしていった。 ひたすら甘いだけの液体だったが、リビング・キャンディの

トリートにとっては特に苦でもなく、みるみるうちに元の体格に修復されていき、

その体の味も落ちていないようだった。 


トリートは両腕に力こぶをつくり

「元通り!」

と笑うと、小悪魔をひょいとつまみ上げて自分の背中に乗せ、

猛烈な勢いで工場の正面玄関を飛び出した。


大きな体躯を感じさせない軽い跳躍で飛び上がり、風のように速く、

建物の屋根から屋根へと駆け抜けていく。

「わお! はやーい!」

背中の小悪魔ははしゃいでいた。

小悪魔は新しいしもべの出来に喜んでいたし、

トリートももう人間だった頃への未練はすっかり無くなっていた。


「でも、魔法を使えばどこにでも行けるんじゃないのか?」

トリートが何の気もなく聞くと、小悪魔は杖をいじりながら恥ずかしそうに

顔を赤らめた。

「……ぼくはね、変身魔法は得意だけど、移動系の魔法はちょっと苦手なんだよ。

 最初は住宅街に行くつもりだったんだけど、なぜか工場の前に出ちゃって…… 

 こら、笑うなトリート!」


やがて、大きなリビング・キャンディは友人宅の前に到着した。

外からでもハロウィンパーティーが盛り上がっているのがよくわかる。


大勢の人たちに自分の身体を舐めてもらえるのはきっと最高に幸せだろう。

それに、小悪魔がこれから作るだろう『チョコレート』も気になる。

生きたキャンディは猫面ににんまりと笑顔を浮かべながら、

呼び鈴を鳴らした。

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