書きかけ小説、完成したらpixivでアップします (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-12-23 14:34:57
Edited:
2021-12-23 14:54:48
Imported:
2022-12
Content
「先生、今日も寒いね」
「あぁ、そうだね」
コーヒーを1杯口に含んだ先生はふっと息を吐き、再び机に向かってパソコンのタイプをする。
「……マッディも何か飲むかい?」
「うん」
コーヒーだったら嫌だなと思いつつ返事をすると、席を立ち先生が持ってきてくれたのはココアの袋だった。
「ココアでいいかな?」
「うん!ミルクたっぷりね」
「…そいつは大変だ」
先生はそう言いながらもポットのお湯ココアにポーションミルクを2つ入れてくれた。
「わーい!ありがと先生」
「家に帰れば、もう少しちゃんとした物があるんだけどね」
そう言って笑いながら先生はパソコンのタイプを再開する。
上からちらっと覗いて見ると…英語?でも無いみたい。
僕には文字と数字の羅列にしか見えなかった。
興味無さそうに目を逸らした僕は何時もの定位置であるベッドの上まで移動し、ココアを啜る。
…うまい!!
「最近よく遊びに来るね、マッディ…家出かい?」
「えへへ、ううん違うよ、確かに色んなところを転々とはしてるけど最近は先生と遊びたい気分なんだ〜」
「フフフッそれを家出と言うんじゃ無いのかな?お前を飼っている人達はきっと今頃心配しているよ」
「えへへ、かもね」
ピョイッとベッドから降りた僕は先生の背中に抱き着いて先生の邪魔をする。
「肩でも揉んであげようか?先生」
「…しゃあお願いしようかな、マッディ」
「わかったー」
先生の肩を適当にもみもみしながら眠たい頭を先生の背中に預ける。
「それで、どれぐらいの間私と遊んでくれるんだい?マッディ」
先生が肩に乗っかった僕の頭を撫でながら聞いてくる。
「ん〜1週間ぐらい?」
「それは先生もいつまで紳士で居られるか心配な数字だ」
「えへへ、別にケモノになっちゃってもいいんだよ?先生〜がおがおー」
「フフッあまり大人を揶揄うものじゃないよマッディ」
「はあい」
生返事をしつつも先生のほっぺをツンツンしてる僕はきっと悪い子だ。
「そうやって1つの場所に留まらないのは何か理由があるんじゃないのかい?」
「ないことも無いよ、先生♪」
「私の個人的好奇心を満たすために一つ教えてくれないかな?マッディ」
「ん〜後で僕と遊んでくれる?」
先生の唇を指でそっとなぞる。
「あぁ、もちろん…私で良ければね」
流石にイタズラが過ぎたのか、その手はピョイッと先生に掴まれて退けられてしまった。
「……僕ね、あんまり好きな人達を傷付けたく無いんだ」
「と言うと?」
「んーなんて言うか、あんまり一つの場所に留まり過ぎるとその人を好きって気持ちと同じがそれ以上の破壊衝動…って言うのかな?そういったものが自分の中で抑えられなくなってきちゃって…」
「その人に愛されて束縛されればされる程、何もかも壊してしまいたくなるんだ」
「…だからこうして僕が定期的にこうして距離を置くのはその人の為でもあるって言うかさ…」
「折角僕を好きだって言ってくれた人達を自分の手でグチャグチャにしたくないと言うか、まぁ別にそういうのも嫌いでは無いんだけど」
「だから別にみんなのこと嫌いだから離れるって訳じゃないんだよ」
……黙ったまま僕の話を聞いてくれている様子の先生に自分の悩みを打ち明けるように僕は続ける。
「ただ…時々本当にめちゃくちゃに壊してしまいたいって言う膨れ上がった欲望が抑えきれなくなるんだ」
「フフッ私はその破壊衝動の捌け口として利用される訳だ」
「そうじゃないけど…そうかも、少しでも抑える為に自分を傷付けたりもしてみるんだけど、それだけじゃ抑えきれなくなってきたらその家を少し離れるみたいな感じなんだ。こう見えて努力はしてるんだよ?」
「…離れるのは1週間でいいのかい?」
「うん、それ以上はご主人様が心配しちゃうし先生にも迷惑かかると思うから」
「先生を壊したくないしね」
「あはは、そうだね」
「先生は僕ともっと一緒にいたい?」
「そんな事言ったらそれこそご主人様にお仕置されちゃうよ?マッディ」
「えへへ、どうせお仕置きされちゃうなら別にいいよ」
「それに痛いの嫌だけどご主人様の事好きだから大丈夫だと思う」
「そうか。話してくれてありがとう…マッディ」
「ううん、先生こそ聞いてくれてありがとう」
……………………………
暫しの沈黙
先生は僕の言った言葉の一つ一つを丁寧にカルテのような物にまとめているようだった。
「ふぅ、お陰で少し謎が解けたよマッディ…ありがとう」
「それは良かった」
「じゃあ今、お前は落ち着いているように見えるけど本当は殺したくて殺したくて堪らないような状態なんだね?」
「うん…でも今は落ち着いてるよ先生、逆に痛いのが欲しいかな」
そう言ってから誘うように先生に絡みつくと先生は
「お前と遊ぶと約束してしまったしね」
と言ってくれた。
「改ページ」
「さて…」
先程までまとめていた書類が出来上がったらしい。
先生は何百枚はあろうかと言う書類の束をトントンと纏め、鞄にしまう。
「…折角パソコンが目の前にあるんだからそれもデータにしちゃえばいいのに」
僕がボソッと呟くと
「私にはコチラの方が何かと使い勝手が良くてね」
と笑って見せた。
「そろそろ行こうか、マッディ」
「え?」
「一週間もこの狭い診療所に居るつもりはお前だって無いだろう?」
「…うん、そうだね」
診療所と言っても、診療室はこの一部屋だけだ。
そう考えると先生を独り占めしている様で気分がいい。
「ほら、着替えて?」
「うん」
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あの狭い診療室を後にした僕らは外階段を手摺りを伝いながらゆっくりと降りていた。
「滑るから気をつけてね?」
季節はもう冬だ。
鉄製の階段は所々凍り付いている。
怖い…!
僕がゆっくりゆっくり伝い降りている間に先生は慣れ親しんだかのようにスルスルと階段を降り、1階の駐車場に停めてある車にエンジンをかける。
「せんせぇー早いよー」
「はは、来る時は1人で来れたじゃないか」
「昇るのと降るのは違うの〜」
そんなやり取りを先生としながらも、何とか無事に階段から降りられた僕は早足で先生の車まで辿り着く。
「はい、どうぞお姫様」
先生が助手席のドアを丁寧に開けてくれた。
「男に言うセリフじゃないよーそれ〜」
「ははは」
僕の言葉を笑って受け流した先生は僕が乗り込んだのを確認してから、隣の運転席に乗り込む。
「先生いつものするのー?」
「ん?」
「ゆうかいごっこ」
「ははは、そうだね。でも、もう少しドライブを楽しんだ後でいいよ」
「そっかぁー」
先生のお家には何回かお邪魔したことがあるものの、そこへ辿り着く前までに必ず1回は目隠しをされる。
目隠しをされている間は何が起きてるのか良く分からないのだけど、道順を知られたくないとかそんな理由…でもないような気がした。
先生に聞くと僕を驚かせない為の最低限の配慮…という事らしい。
良く分からないけど人には誰でも秘密があるもんねって事にしておいている。
雪がチラつく街の中を車でゆっくりと走りながらキラキラと輝く街頭を見つめた。
診療所まではいつも自分の足で歩いてきているはずなのに見慣れないような景色ばかりだ。
いつも僕はどうやって辿り着いて居るのだろう?
でも先生に会いたいなーって思いながら歩いてると気付いたら診療所の前に来てるんだよな。
「へんなのー」
「どうかしたかい?」
「ううん、なんでもないよ」