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 ──アイナ・サハリンは当然ながら、ジオンの名門であるサハリン家を再興するという強い意志があり、それは要するに一代でそれが完遂するかと考えれば疑問である為、いずれは然るべき相手の子供を産むべきであるということを意味している。

 そのことはずっと頭の片隅で意識しており、要するにアイナは異性愛嗜好を自然なものとして受け入れているはずだった。

 ……そのはず、だったのに。

 目の前の赤毛の乙女の裸体を見つめただけで、アイナの頭の後ろの方が痺れたような感覚になる。

 身内であるギニアスにも、従者であるノリスにも、親しい誰にも抱いたことのない、鮮烈な好意。

 それを抱く相手が同性の少女だったことは……アイナの中では決して小さくない葛藤を生み出しており、それは結果的に──互いが所属している組織が敵対し合っていることを、少しだけ見えにくくしてくれていた。


「どうしたの? 早くつからないと、風邪を引いてしまうわ……それどころじゃ、なくなるかも知れないけど」

「つ、つかるわ、すぐに」


 出力を限界まで弱めた陸戦型ガンダムのビームサーベルで沸かした、雪を溶かした即席の温泉。

 薬効も何もあったものではないのだが、それでも雪山で遭難していたアイナと同行者にとって、それは恵みの湯そのものであった。

 体の芯まで熱に身を預け、改めて湯煙の中でも見失うことのない……愛しさをもうごまかしきれない相手の顔を見つめる。

 赤毛の美女である同行者──クリスチーナ・マッケンジーは、少し照れたようにその体を抱いて見せ、「あまり、じろじろ見ないでほしいかな……」と小さく呟いた。


「あっ、その、ごめんなさい。礼を失する行いで……」

「ああ、そういう大げさなことじゃなくて。あなたの方が、綺麗でスタイルもいいから……ちょっと、コンプレックス感じちゃうかなって」

「はぁ?」


 思いっきり理解不能を訴える声が漏れて、自分でも戸惑ってしまうアイナ。自分を卑下する気は毛頭ないが、まるで古の戦女神のような美貌の持ち主だと信じるクリスの言葉は、謙遜を通り越して嫌味にすら聞こえてしまう。これまでの付き合いで、そんな性格ではないと重々理解はしているのだが。


「マッケンジー中尉……」

「クリスでいい。権威って、服の上から纏うものでしょ?」

「……クリス、あなたは少し、自嘲の気が強すぎると思うわ」

「そう、かな。自分にできる事をするしかないと、そう思っているだけなんだけど」


 とぼけた返答から、アイナの言葉が直前の容姿に関する謙遜にかかっていることを、クリスは理解していないらしい。

 アイナは思わず天を仰ぐが、そこは少しは収まってきたものの、激しく吹雪くばかりで何も見えない。少なくとも、夜になっても星の光は見えそうになかった。



 ……そもそもクリスは、アイナが初めて出会った時から、それまで彼女の知っている“連邦軍人”と大きくかけ離れていた。

 正規の軍人ではないが、テストパイロットをメインとして兄・ギニアスに協力しているアイナはその日、高機動試験型ザクの試験中に連邦の哨戒部隊と遭遇。

 これを軽々と蹴散らしてみせたまでは良かったが……ここで遭遇したのが、先行量産にかかっていたボールに登場したクリスだった。

 本来ならば別の少尉が搭乗する予定だったその機体に、推進系などの問題が見つかったとかで、試験部隊でシューフィッター……靴職人を語源とする機体調整人として搭乗していたのだという。

 アイナがどれだけパイロットとしての腕が悪くないと言っても、そして圧倒的な機体の性能差があるとしても、連邦宇宙軍士官学校の首席卒業者である。

 アイナのザクは大破させられ、クリスによって保護されたのだが、こちらの機体もマシントラブルから停止。二人はしばらくの間、宇宙を漂流する羽目になった。

 これが例えば、マゼラン艦の残骸内での邂逅でもあれば、銃を撃ち合うようなファーストインプレッションもあり得たのだろうが、狭いコクピット内……それも結果は遭難とはいえ、自らを保護してくれた相手に不義理は働けないということで、アイナはクリスに後ろから抱かれるような姿勢で、時間を過ごすことになった。


「こ、この姿勢は何なの? 子供じゃないんだから、もっと別の……」

「うーん、アルは小さい頃、こうしたら喜んでくれたんだけど。でも、落ち着いてこない? こうやって、人の鼓動が聞こえると」

「敵兵の鼓動が聞こえて安心するなんて、考えられないわ……」

「それじゃあ、この機体のホストが喜ぶから、場所の提供の代金を払っていると思ってくれたらいいわ。それがどんな立場の人でも、一人よりも二人がいい……この宇宙の真空の中ならね」


 クリスはテストパイロットという立場からなのか、それとも戦技研究団を希望した矢先に一年戦争が起きたという特殊な背景からか、なんだか妙に落ち着いているというか、悟ったような物言いをするところがあった。

 連邦の人間はジオンを、それこそ映画に出てくる悪い宇宙人のように嫌っていることも珍しくないし、貴族であるからこそアイナはそういった声をぶつけられた経験もあった。そして、ジオンの理想自体は信じているが、決して踏み込むべきでなかった領域へジオンが進んだことも……虐殺によって理解していた。

 クリスは連邦の軍人で、アイナはジオンの軍人(正確には違う)と分かっている様子なのに、クリスは時おり本当にあやすように体を揺らしつつ、なんてことのない会話を幾つも振ってくる。

 若い女性が喜びそうな話題が多くて、アイナもついつい乗せられてしまった。


「……こんなに楽しい雑談を交わしたのは、久しぶりだわ。いいえ、もしかしたら初めてかも」

「戦争が始まってからは、余計な時に笑ったり楽しんだりすることに、変な罪悪感みたいなものがあるのよね。私もそう……サイド6、リボーコロニーが私の故郷。そこに住んでる人たちは、戦争で何を感じてるのかなって思うと……出かけた微笑みが、止まることがある」

「……」

「戦争って、女の顔をしてないのよね。これは、有史以来ずっと、一度の例外もなくそう。戦争が起きれば、私たちは女じゃなくなる。どこかで必ず“女の子”を奪われる──それを奪ってるのって、誰なのかな? 連邦? ジオン? それとも……」


 何か、その問いかけがアイナにとってひどく怖い答にたどり着きそうで、慌てて別の話題を振った。

 アイナの方から話しかけてくれたということで、クリスは喜んで返答に付き合ってくれた。

 その後、アイナを探しに来たジオンの部隊と遭遇して、二人は別れた。連邦のボールの中で避難していたという言い訳は受け止められて、クリスの存在は知られることが無かった。

 それからずっと、クリスと話していたことが頭の中を巡っていた。

 ギニアスを支えるために地球へと投下した後も、クリスの「戦争は女の顔をしてない」という言葉が、頭の中をぐるぐると回転していた。


「(私は……ギニアス兄さんに従って、アプサラス計画がジオンの未来と、当家の栄光につながると信じてきた。けれど、クリスの言葉がどうしても気になって……従順な兵の一人でいられない。好奇心と猜疑に満ちた女の顔が、胸の内から這い出てくる……)」


 その結果、恐らくは相当の時間が経過してからでないと気付けなかったであろう、基地内で投薬治療の問題や、アプサラス開発スタッフの進退などについてアイナは早々に知ってしまい、もはや兄のことも彼が執着するジオンにも、信をおけなくなってしまった。

 そうして迷いを抱えたまま、しかし自分以外が使って殺戮を生むよりはマシだろうとアプサラスの試験飛行を続け……そこで極東方面軍所属機械化混成大隊、コジマ大隊所属の第08MS小隊のテストパイロット兼隊長として陸戦型ガンダムを駈り、アプサラスの捕獲に挑んできたクリスと再会することになったのだ──。



「──アイナが気にすることではないんだけどね、あなたを助けたことがどうやら、上に知られちゃったみたいなの」

「……それで、こんな前線の小隊に送られていたのね。信じられないわ、新型機のシューフィッターを務めるほどの実力を持つパイロットを……!」

「これでも、処刑されてないだけマシかも知れない。アイナのザクがもうちょっと頑張って、双方大破ってなってれば分からなかったことかも知れないけど」

「……ごめんなさい」

「攻めてないって。冗談みたいなもの。でも、私も……カレンみたいに個人レベルでは気を使ってくれる人もいるし、キキみたいに世話を焼きたくなる子が現地協力者になったりもするんだけど……もう、連邦の理想みたいなものは、信じられなくなっちゃった」


 クリスはあの日、ヘルメット越しに見たものよりも、少しだけ陰った笑みを浮かべながら、あの日のようにアイナを自分の膝の間に座らせ、その緑の髪に鼻先を埋めて見せていた。

 あの時よりもずっと恥ずかしく、胸が高鳴り、赤面しているのに……アイナは、それを拒否しない。

 今ならわかる。連邦もジオンも関係なく……胸の高鳴りが、心を癒してくれる相手がいるということが。


「誰も見ていなかったのだから、こちらの部隊をせん滅した憎きパイロットを、どうして始末しなかった……だって。捕虜の扱いって、いつの間にこんな現場主義に変わったのかな」

「クリス……もういい。私も……ジオンもよ。戦争は人の心を狂わせるって知っていた、でも、その狂気を図り切れてなかった。私は兄さんをもう、信じられない」

「連邦からもジオンからも離れて、裸でこうやって抱き合っている私たちって、何なのかな」

「……人間よ。権威や衣を脱いだら、最後に残るのは人間。戦争が女の顔をしていないなら、ここにいるのはただの女と女だわ」


 アイナの言葉と共に、クリスの唇が寄せられた。

 最初はついばむように。次に舌を挿入して。最後に互いの唾液を交換し合いながら。

 三度キスをし、息があがるほどに湯船の中で抱きしめ合ってから、クリスが聞いてくる。


「キス、してもいい?」

「してしまってから聞かないで……」

「なら、もっと先をしてもいい?」

「……それは、終えてしまってから言ってちょうだい」


 のぼせてしまうかもという不安は、不思議と無かった。若い乙女の体が抱きしめ合い、互いの温もりが温泉以上に染み入ってくる。こんなにも、同性とは柔らかかったのか……出会った時もあんなに近くいたのに、それを今知ったようで面白かった。


「アイナ、そこに手をついて……そう、そこなら雪は解けてるから、手が凍傷になったりしないわ♥」

「あっ、あっ……く、クリス……これ、恥ずかしい……♥ あなたに、恥ずかしいところを見せつけるみたいで……んんっ♥」

「……下の毛も、髪と同じで綺麗なのね♥」


 デリカシーの無い言葉に怒ろうかと思ったのだが、くちっ……と舌が膣内に入り込んできて、中断されてしまう。

 自分の中に、他人が入ってくる感覚……愛しい相手が対象ならば、それは決して不快では無いのだと、アイナは学習した。

 気付かない内にジオンの怨念の集積体にされてしまっていたアプサラス、その異様さが今ならわかる……それを捨てて、一人の人間に還ることの大切さも。


「んっ、ちゅるっ……じゅるっ……♥ アイナのここ、濡れやすいのかしら……♥ それとも、私にキスされてるから……?」

「わ、私は……淫蕩じゃ、ないわ……♥ 感じる相手は、きまってる……♥」

「それじゃあ、ここは……私のね♥」


 舌がつん……と陰核の後ろの辺りを押した。

 びりっと背中に電気が走り、尿意にも似た感覚が下腹から湧き上がってくる。

 ぷしゅっ……♥ と噴きだした潮がクリスの顔にかかって、彼女の熱っぽい声で「もっと、ちょうだい……♥」と囁かれるのが、ひどく胸を騒がせた。


「わ、私ばかりされて、ズルいわ……♥ クリスもそこに、腰かけなさい♥」

「えー、ちょっと寒いな……♥ んっ……ど、どう……♥ アイナのに比べて、変じゃない……?」

「……変だったらいいのに。私だけで、ずっと独占できるから……はぷっ♥」

「んんっ♥ ん、あっ……あぁっ……♥ そんなこと、しなくても、アイナのモノだよ、私は……♥」


 生臭かったり、すっぱかったりするのかと思っていたそこは、なんだかとても甘く感じて、アイナは夢中になってクリスのそこを舐め上げる。後から後から、蜂蜜のようにとろみのある液体がしみ出してきて、アイナはごくごくとひたすら喉を鳴らす。


「私のこと、濡れやすいとか言ったのに♥ クリスの方が淫らだわ……ほら、この量を見て♥ 指がどろどろになってしまう……♥ どれだけ感じやすいの、クリスったら♥」

「あ、アイナだから、よ……♥ んんっ、あぁぁっ♥ そ、そこっ……気持ち、いい……イッ、くぅ……♥」


 クリスが体を震わせるが、アイナはそれ途中で遮った。

 発散されない熱に浮かされるまま、もの欲しそうな視線をアイナに向けるクリス。

 そんなクリスの眼前で、アイナがくぱぁっ……と自分の膣を開いて見せ、クリスを誘う。


「ここで、キスしたい……♥ クリスと、求め合いたいの……♥」

「アイナ……アイナぁ♥」


 二人の腰が重なり合い、くちゅっ……と秘所同士が口づけ合う。

 本来の使用方法と違うはずなのに、ビリビリと体中に電気が走り、快楽の波が後から後から湧き上がってくる。こんな経験は初めてで、クリスの方は自慰の経験くらいはあったが、アイナに関しては性的な刺激はこれが初めてなのも手伝って、脳が焼かれそうなほどの強烈な快楽が荒れ狂っていた。


「あぁぁぁっ♥ クリスっ♥ クリスぅぅっ♥ あなたと過ごしていると、私は……んんっ♥ 私は、やっと私になれるの♥ これが私♥ クリスを好きな、私ぃ……んあぁっ♥ 愛してるっ♥ 愛してるの、クリス♥ あ、遊びでもいいから♥ 捕虜でもいいからぁ♥ あなたの傍に、私を置いてぇぇっ♥」

「アイナっ♥ この、アイナぁっ♥ 私だって、あいしてる♥ 初めてあった時から、惹かれてた♥ あんな濃密な時間を過ごしたら、もうアイナを手放せないっ……♥ んんっ♥ 遊びなんて、とんでもないっ♥ アイナを連れて、どこまで行きたい♥ 二人で生きたいのぉっ♥ あ……イクぅっ……♥」


 互いの体に勢いよく潮をかけあいながらの、同時に向かえる絶頂。

 いくらかは互いの膣の中へとトクトクと流し込まれ、まるで子種を互いに仕込み合っているかのようだ。

 温泉の中に、汗を流すために再び揃って漬かりながら、どちらともなく「逃げようか」という言葉が漏れた。

 やがて吹雪がひと際強く吹き荒れた後……そこにはもう、熱を失って凍り付いてしまった温泉もどきの跡しかなく、乙女たちの痕跡は綺麗に消えていた。



 ──戦争は、クリスチーナ・マッケンジーとアイナ・サハリンのどちらを欠いても止まることはなく、そしてその終結にも大きな影響は与えられなかった。

 せいぜいギニアスがアプサラスのフィードバックで早くに限界を迎えたことで、ノリス・パッカードの指揮の元で一時休戦が提案され、傷病兵の乗った病院船ケルゲレンが宇宙へと無事脱出したというのが、私たちの知る“史実”との小さな差異であろうか。

 ガンダムNT-1の試運転はリボーコロニーで行われることは無く、アルフレッド・イズルハを初めとした多くの人々にとっては、終戦までは大きな動きもないままに日々は過ぎて行った。

 ……争いから外れた、小さな町。

 そこで靴職人をしている女同士の番のことは、どちらも上玉であることから、そこその噂となっていた。

 しかし、戦いの余波のない町では、懸想するという発想自体がなく、二人は平穏に日々を過ごしているらしい。

 靴とは足に履くものだが、その実は未来に飛躍する為の、翼のようなものだ。

 傷ついた天使の羽を抱きしめるように、乙女たちの一日は始まり、また過ぎていく……。


「──クリス、愛してるわ……ずっと、あなたと一緒にいる」

「分かってるわ、アイナ……あなたを、ずっと離さない──」

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Comments

まりね

戦時下と言えど恵体の美女2人が出会ったらやる事はレズセしかないんですよね。この世界線ならシローとバーニィも5体満足だしレズセは正義

屋根が高い

乙女が二人出会ったならば、この宇宙ですることは1つ…レズセでしょ! やはりレズセ、レズセは世を救うワイルドカード…