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 ──同性愛が国際的に規定された“精神疾患”から外されたのは、2000年代に入ってからのことであり、想像以上に人間と言う生き物は、長きに渡り偏見に支配されてきたことが分かる。

 人間も社会生物の1つであるから、当然ながら生殖行為を“自然に”望むものであり、そこから外れることは異常であるという風潮……その中で同性愛は、ある種の自己同一化であるとか、憧憬が歪んだものであるだとか、とかく恋愛感情から切り離して考えられてきた。

 猿のように異性へとサカることだけが肯定される、今なお続く異常な環境については、この場で語るのは避けておくとしよう。

 問題は……この手の偏見や妄想には、ある種の形を持った“力”が備わってしまうことがあるということだ。

 “病魔”という、恐ろしい形を以て……。



「あ、鏑木さん……」

「花巻さん、今日は1人なのね」


 鏑木真哉は電車の中で花巻美玖の姿を見つけ、話しかける。

 黒髪ロングのスタイル抜群美少女である真哉と、桃色の髪の女の子らしい美玖が揃うと、なんとも場が華やいだ空気になるのだが、二人は女同士で近いグループに属しているにも関わらず、友達の友達くらいの関係性である為、引っ込み思案の美玖は赤面して俯いてしまっている。


「(それにしても、花巻さんってかわいいわね……)」


 自分も美少女でありながら、真哉はそんなことを想う。

 真哉は女の子らしくなろうと意識しすぎて、却って男子に攻撃的になってしまっていた時期があり……これは病魔“挑発”のせいもあるのだが……、立ち振る舞いが実に自然に女の子している美玖には、うっすらと憧れめいたものを抱いていた。

 これに対して美玖の方も、返し刃などというあだ名を持つほど積極性の塊……これは喧嘩を売られて返り討ちにするという意味なので、積極性とはまた違う気もするが……である真哉にぼんやりと憧れを抱いているが、あがり症なせいでその気持ちを伝えられないでいる。

 2人きりになると会話は弾まないが、しかし互いの抱えるコンプレックスを刺激し合う中ではある……そんな不思議な関係の少女たちの元に、ひっそりと病魔の影が迫っていた。


「(どうしよう、隣に座ってもいいのかな。立ったままでいるのも、なんだか威圧的で気が引けるし……)」

「あ、あの……鏑木、さん……と、隣……座りませんか……」

「え? あ、ありがとう……」


 あがり症で引っ込み思案だと思っていた美玖に先に提案され、真哉は驚きながらも隣の席に腰かける。

 一方、美玖の方もどうして自分がそんな積極的な態度を取ったかが分からず、ますます恥ずかしくなって身を縮こまらせていた。


「(鏑木さん、こうやって隣で見ると……すごく、綺麗でかっこいい。この人くらいの容姿と勇気があったら、私も堂々とできるんだろうなぁ……)」


 お互い様と言おうか、自分も大概美少女なのに、真哉の容姿に胸をときめかせ、彼女のようになりたいと願う美玖……確かに憧れは抱いているが、真哉に向ける感情として少しズレ始めていることに、美玖は当然気付かない。

 一方、真哉の方も美玖の隣に座った瞬間、その体からほんのりとお花に似た体臭がすることに驚愕していた。


「(か、空手の鍛錬で汗臭い私と、女子力が違い過ぎる……花巻さんみたいに生まれていたら、私もきっと何も悩まず女の子らしくなれただろうなぁ……)」


 互いの胸に高まっていく、なりたい自己を相手に重ねる気持ち。

 かつて、同性愛の根源だと言われていたその感情を高め、暴走させる病魔が2人の頭上でくるくると回転しているのだが、そのことに気付く者はこの場には居ない。

 2人組の天使の姿で現れるこの病魔の名は“同一視”……前書きでも触れたが、永らく同性愛嗜好を“精神疾患”に貶めていた、その一端を担う恐ろしい病魔である。

 同性愛者に憑りついて、純粋な恋心をこじれた憧れに変えることで世界を歪めてきた“同一視”であるが、長い間の活動遍歴によって、通常の嗜好の持ち主であろうとも同性愛嗜好へと誘導していく形に、その生態は変改していた。

 特に同性愛が大々的に“病気ではない”とされてからは、むしろノンケ女子に憑りついてやりやすいように性格を偏重させてしまうことが多くなっている。

 気づけば真哉は美玖の膝に手を置いて、すんすんとその髪に鼻を埋めて匂いを嗅いでしまっており、美玖の方もそんな真哉の行為を拒否できずに「あっ……♥」と顔を赤らめ、置かれた真哉の手にそっと手を重ねてしまっている。


「(こ、こんなことされても、嫌がらないの……? もしかして、花巻さんって私のこと、す、好きでいてくれたり……♥)」

「(すごく、匂い嗅がれてる……恥ずかしいよぉ……♥ こ、こんなこと鏑木さんにされちゃったら……お嫁さんになるしかない、かも……♥)」


 2人とも病魔によって思考が歪んでいるのだが、元々互いへの憧れがあることから変な方向にそれが歪み、互いへの執着を生み出していく。

 やがて2人は手を取り合うと、目的地ではない駅に降りて女子トイレへと連れ立っていく。

 頭の上では、まるで祝福するキューピッドのように、2体の天使が躍っている。



「あっ♥ あんっ、あぁっ……♥ か、鏑木さん……そんなところ……汚い、です……♥ あ、うぅっ♥」

「ぴちゃっ……ぴちゅっ……♥ れるっ、れぇ……♥ 汚いなんて、そんなことないわ……♥ 酸っぱくて、甘くて……いい匂いがするもの……♥」

「あぁぁっ♥ か、噛んじゃダメですぅぅっ……♥」


 多目的トイレに2人して籠り、美玖を壁に押し付けて真哉はその秘所に舌を這わせる。

 クンニなどこれまでしたことはないのだが、“同一視”の影響によって「美玖の出すものを取り込みたい」という欲求が増しているので、今の真哉にとっては溢れてくる愛液も、ぷしっ♥ と吹き出す潮も、たまらなく愛しいものになっていた。


「ほら……花巻さんも、私のこと、触って……♥ スパッツの色が濃くなっちゃうくらい、濡れてるの……♥」

「こ、これが鏑木さんの、大切なところ……あっ……♥ ゆ、指が、するって入ってぇ……♥ 熱くて、蕩けて……か、可愛いです……♥」

「可愛い……♥ ほ、本当に、そう思ってくれる……? わ、私も、花巻さんのこと……美玖のこと、可愛いと思うわ……♥」

「鏑木さ……真哉さん……可愛いです……♥ とっても、素敵です、真哉さん……♥」


 “同一視”も想定外のことだったが、彼女たちはこれまで病魔を巡る事件に既に遭遇しており、その中で“素直に他人を尊敬すること”を覚えている。

 これによって、本来ならば10代特有の巨大感情から歪んでしまうはずの憧憬が、まっすぐな好意に変換されてしまい、ただ「相手になりたい」と願うだけの“同一視”の影響を超えて、互いのことを本気で愛し始めていた。元より真哉と美玖の相性が、非常によかったというのもあるだろう。


「あっ♥ あぁぁっ♥ 美玖のと、擦れてぇ……♥ こ、これってぇ♥ レズセックス、ってぇ♥ 女の子しかできない、行為よね……♥ 今、私たち……すごく女の子らしいわぁ♥」

「こ、こんな恥ずかしいこと、真哉さんとなら……あっ♥ 出来ちゃうんですっ♥ あぁぁっ♥ 好きっ♥ 好きぃぃっ♥ 真哉さん、好きですぅぅぅっ♥」


 2人はくちゅっ、ぐちゅっ……と秘所を貝合わせでこすり合わせ、互いを絶頂に導いていく。

 “同一視”は意外な展開に少しだけ混乱しているようだが……それはそれとして、2人の顛末について邪悪な企みを抱き始めていた……。



 ──才崎美徳は公平かつ厳粛な教師であるが、自分のそういった行いや態度が周囲にどう思われるか、常に気にしている女性である。

 そんな彼女にとって、夜の街で教え子たちがいかがわしいことをしているという状況は、自身の責任ではないかと焦燥を抱かせるものであり、いてもたってもいられず指導の為に繰り出した……のだが。


「ふふっ……♥ 先生が来てくれるなんて、嬉しい♥ 才崎先生は学校でも人気者だから、エッチすればもっともっと私たちは女の子らしくなれるわね……♥」

「あ、あぁっ……2人とも、やめさっ……あぁっ♥」

「大丈夫ですよ、美徳先生……♥ 私たち、先生のこと大好きです♥ 先生のこと、すごく認めてるんです……だから、ね♥ 3人で、しましょうねぇ……♥」


 病魔にかかった者の末路か、女同士で体を重ねる快楽にハマり、更にそれによって各々の理想へ近づけると思い込んだ真哉と美玖は、夜の街で女性を相手にナンパを繰り返し、美徳に今しているようにスカートを捲りあげて下着を見せ、3Pレズプレイへと甘く誘う。

 自分が生徒に好かれている、求められていると囁かれた美徳に抵抗できるはずもなく、真哉と美玖は爆乳の女教師を路地裏に引きずり込み、互いの糧として快楽に沈めるのであった……。

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