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「なんで2人は仲が悪いの?」 如月あかねは、友人(親友)の早乙女綾乃に尋ねた。数十分前、行きつけのケーキ店で綾乃の天敵の柏木彩華と出会い、綾乃は珍しくやり込められた。ちなみに、あのケーキ店は、綾乃も彩華も行きつけだ。お互いに嫌いなのだから、どちらかが行くのを止めれば良い。でも、2人は頑固に行き続けていた。 「なんで?」 と問う友人たちに2人は同じ答えをした。 「行くのを止めるのはあいつのほうよ。なんで私が行くのを止めなくちゃいけないのよ」 お互いに負けず嫌いなのだろう。ケーキ店でやり込められた後、綾乃は彩華の悪口を言い続けていた。センスがない。頭が悪い、etc、良く次から次へと悪口が尽きないものだと感心していたが、ふと疑問に思い、聞いてみたのだ。 「なんでって・・・・・・。」 「彩華さんのこと、嫌いなんでしょ?」 そういうと、綾乃はきょとんとしている。あれ?何か変なこと言ったかな? 「別に私は嫌いじゃないけど。あっちが絡んでくるから・・・・」 そう言って口を尖らせている。 「最初に会った時から、あいつ感じ悪かったのよ。私がトレーニングスペースに行ったときにあいつも居て、なんかいちいち余計なことを言ってきたからこっちも腹が立ってきたの。でも、私は大人だから別に怒ったりしなかったわよ。それに親切にアドバイスしてあげたら怒り出したのよ。だんだん腹立ってきた!!あかね、スパーリングしよ!!」 私に八つ当たりをするつもりだろうか。私はサンドバックじゃないんだけど。でも、こういう時の綾乃に逆らうと後が怖い。落ち着くまで待って、うまく逃げよう。 「あ~~、あかね。元気?」 ある日、駅に向かって歩いていると後ろから声をかけられた。彩華だ。 「こんにちは」 ぺこりと頭を下げる。彩華はにこにこしている。綾乃に対しては別だが、普段の彩華は気の良いお姉さんという感じだ。あかねも可愛がってもらっている。でも、彩華と話すようになったのも綾乃がきっかけなような気がする。そんなことを考えていたら、誘われたので、「はい」と言って、カフェに一緒に行く。 「え?仲が悪い理由?」 聞かれた彩華がきょとんとしている。彩華とは何気ないことを話していた。試合のこと、この前食べたケーキのこと、テレビのこと、ふと思いついて、綾乃に聞いたのと同じことを聞いてみた。 「綾乃のこと、嫌いなんですよね?」 「うん?別に~~」 口を尖らせているが、嘘を言っているようには見えない。 「でも、いつも仲悪そうにしてるし‥‥」 「あのねえ。私は別に綾乃のことを嫌いじゃないの。あいつが絡んでくるから仕方ないの」 「大体さあ、最初に会った時から感じ悪かったのよ。あいつさ、私と話してる時から、だんだん不機嫌になってきて、でも私のほうが先輩だし、気を使ってあげなくちゃって思ったら、あいつ色々とちくちく余計なことを言い始めたのよ。もう、本当に最悪。」 思い出したのか、不機嫌になる彩華。 「すいません、このビックチョコレートパフェってのを2つ下さい。」 おもむろに店員を呼び止め、注文をしだすあかね。 「え?これ、大きすぎますよ、私食べれないです。」 あかねの注文を見て、バタバタと手を振る。このパフェは普通のパフェの3倍はあるかという大物だ。太りすぎと財布の中身を気にする私にはきつい。 「私が2個食べるの!!」 何を言ってるんだという表情で答えるあかね。 「あ、そうですか・・・・・」 気が抜けたように答える。パフェが来たらものすごい勢いで食べ始めた。見ていると胸がむかむかしてきた。 後日、トレーニングスペースで片桐亜理紗に出会った。彼女はあかねの親友だ。眼鏡をかけた知的な女性だ。綾乃と同じ眼鏡をかけた女性だが、性格は柔らかく、後輩たちからも慕われている。雑談をしていて、ふと思い出し、あかねと綾乃の仲が悪い理由を聞いてみた。すると、思い出すかのように語りだした。 トレーニングスペースで柔軟体操をしていた綾乃。一方の彩華はシャドーボクシングをしていた。2人は、同じタイミングでベンチに座る。休憩するつもりなようだ。 「綾乃ちゃんよね。私、彩華」 「あ、よろしくお願いします。」 にこやかに話しかける彩華に、綾乃もぎこちなく挨拶をする。彩華は、じっと綾乃の胸と自分の胸と見比べる・・・・・。 「あの、なにか?」 「いや、羨ましいなと思って」 「はい?」 綾乃の胸は彩華よりも小さい。普通は綾乃が羨ましいと思うものだろう。 「あんまり大きいのも考えものよね。もう、蹴りの時とか横に流れるし・・・・」 ぷるんぷるんと胸を揺らしている。ぴきぴきと綾乃のこめかみに青筋が立っていく。こいつ、バカにしてるのか? 「それにお尻も小さいし、あ~~、私もそうなりたい」 「はあ・・・・・」 こめかみに青筋が立っているが、相手は先輩。しかも初対面だ。ここで怒っても仕方ない。 「あ、彩華先輩って、蹴りが綺麗ですよね。でも、軌道がいつも直線ですよね。亜由美さんみたいに曲がる軌道って難しいんですね」 「そ、そうね・・・・・・」 今度は彩華のこめかみに青筋が立つ。蹴りの軌道が直線的なのは、あかねも気にしていたところだ。しかも亜由美と比べるとは・・・・。でも、綾乃に悪気があったようには思えない。彼女は良かれと思って言っているのだ。 「あ、そ、そうだ。早乙女さんのスパーリング見たけど、組技が得意なんだね。ああいう地味なのをこつこつ出来るのって、すごいよね」 「じ・・・・み?」 またもぴきっと青筋が立つ。地味なのは綾乃も気にしているところだ。 「ま、まあ地味は地味ですね。彩華さんみたいに、打撃を綺麗には出来ないですね。その分、外すことも多いみたいですけど。」 「う・・・・・そ、そうね・・・・・」 彩華の表情がぴきっとひきつる。 「そうやって、お互いに欠点を言い合ったのよ。でも、お互いに悪気がある感じじゃなかったのよね。そんなこんなで話しているうちに興奮してきて、最後に爆発しちゃって…‥」 苦笑いをする亜理紗。結局、彩華と綾乃の仲が悪い原因はこういうことだったらしい。 「あ~~、そうなんですね。・・・・・・あの2人、一言多いですもんね」 呆れてものも言えないという表情のあかね。お互い喧嘩友達とでも言ったら良いだろうか。本人達に言ったら、即座に否定するだろうが。

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