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淫獣捜査 隷辱の魔罠 第90話『変わりゆくもの』  襲撃の混乱が収まらぬうちに、俺と玲央奈は基地をでる準備を進めた。  だが、基地を去る前にするべきことが俺にはあった。  俺たちと同じく、重傷をおってヘリで搬入されていたシオこと冬月 蛍さんの現状を確認することだ。  俺と同じく一時は危篤状態だった彼女であったが、一命を取り留めていた。  だが、意識はいまだに回復しておらず、今も武装した兵士が監視する病室で眠りについたままだった。  彼女のいるのは俺がいるのとは別の棟だ。そこは諜報部によって完全に封鎖されていて、俺も入ることができない。しかし、そこは権力の力を借りることで解決した。  玲央奈の父親であるロイ=スペンサー中佐を通して基地司令からの許可を得ると、正面から隔離病棟へと入ることができた。 「許可できるのは、ここまでです」  案内役の諜報局員によって通されたのは、病室とは強化ガラスで隔てられた隣部屋だ。ガラス越しに、多くの医療機器に囲まれてベッドに横たわる蛍さんの姿を確認できた。  長かった前髪は上げられて、穏やかな表情で眠りにつく素顔を改めて凝視する。 (こうして改めてみれば、確かに蛍さんだ)  潜入前に目を通していた彼女に関する資料。添付されていた写真では、大人しそうな顔立ちに、癖のない艶やかな黒髪、そして華奢でスレンダーな体格だった。それが白髪と化して、身体つきもグラマラスと化していたのだ。  長い前髪とガスマスクで顔を隠されていなくても、直接の面識がない俺ではシオさんが蛍さんだとは気づけなかっただろう。  今は穏やかな寝顔だが、涼子さんと対面して素顔をさらしたときは、目尻を吊り上げて鬼気迫る迫力があった。  だが、改めて寝顔を確認すれば本来の面影を感じとることができた。写真のひとつで、涼子さんと肩を並べあって笑顔を浮かべている姿が印象的だった。 (そんな親友を助けようと、涼子さんは何年も探し続けていたというのに……)  紫堂と支配人によって調教され、人体実験として肉体改造をされただけでなく、その心まで大きく変えられてしまっていた。  慎ましげなお淑やかな彼女笑顔は消え去り、感情の起伏が消えて能面のような顔をしていた。その表情の裏では、植えつけられた涼子さんへの恨みが昏い炎となって燃え盛っていた。  素顔を隠していたガスマスクを外し、能面のような顔が般若のような恐ろしい形相へと変わる様は、今思い出しても寒気がするほどだ。 (あれほどまでに人とは、変ってしまうものなのだな……)    復讐の鬼と化した蛍さんは涼子さんに自分と同じ目に合わせようとチャンスを狙っていた。  ナナさんの機転がなければ、涼子さんは助けようとしていた親友によって壊されていたことだろう。 (それにしても、あの時の彼女の言葉は本当なのだろうか……)  変わり果てた親友の姿にショックを受けつつも、涼子は必死に説得を試みた。その際に、蛍さんの口から、自らの手で兄貴を殺したと告白されたのだ。  水死体で発見された兄貴は、妻である涼子さんでさえも身元の確認が困難なほど変わり果てていたという。警察の検査でようやく兄貴だと判定され、泥酔して溺れたと判断された。ならば、刺し傷などの他殺が疑われるような損傷はなかったことになる。 (あの兄貴だぞ……そんな簡単に殺されるなんて、信じられない……)  涼子さんよりも強かった兄貴が、そう易々と殺されたりするだろうか。同じ疑問を涼子さんも抱いたからこそ、蛍さんの言葉で大きなショックを受けることはなかった。  それもこれも、俺と涼子さんが兄貴の死を未だに受け入れられていないからだ。  真実を問い質そうにも、蛍さんは目覚める気配はない。 (紫堂を相手では、蛍さんの身柄を使って交渉も無駄だろうな……それに、涼子さんにも怒られてしまうしな)  それでも、せめて意識が回復してくれれば、なにか情報を得られるかもと淡い期待を抱いてしまっていた。だが、それも叶いそうにない。  ならば当初の予定通りに、基地をでて八祥さんに接触することを決める。 ――濡羽 八祥……  諜報部から得られた情報では、裏の世界で情報屋としてそれなりに名の売れた人物らしい。  組織には属さず、組織の狭間でうまく立ち回っていた彼が、なぜ紫堂の配下として地下倶楽部にいたのかはわからない。  周囲の反応から、組織内でもそれなりの立場にいるようだが、同じ配下であった支配人やシオさんとは少し毛色が違ったように感じられた。 (どちらかというと、ナナさんに近い雰囲気だったな……)  紫堂は諜報員として組織に潜り込んでいたナナさんを、その素性を知りつつも能力をかって側においていたような男だ。八祥さんに対しても同じように、腹に抱えるものがあるのを知りつつ組織に引き入れたように感じる。  ならば、彼から紫堂の居場所を知る手がかりを得れる可能性は高そうだ。 (どのみち、今は他に打てる手段もないしな……)  迷ってる暇はない。杏子さんとの接触が叶わぬ今は、これが最善の手だと思うことにする。  逸る気持ちを抑えつつ、最速で出発の準備を進めるのだった。  基地からの脱出は、玲央奈による事前の準備と協力してくれた海兵隊員の軍曹たちのお陰でスムーズにことは進んだ。  外部からの侵入に対しての警戒が強められたお陰で、逆に内部から基地外に出ようとする者に対するチェックは疎かになっていた。  仕入れ業者の運送トラックに紛れこむと、あとは拍子抜けするほど簡単にゲートを抜けて脱出することができた。  基地の敷地から出たところで、肌に浴びる空気が変わったことを実感させられる。 (あー、無性に漬物とお茶漬けが食べたくなるやつだ……)  まるで海外出張から帰ってきたような呑気な気分にさせられる。だが、すぐに気を引き締める。今の俺はゴルフ場の炎上事件に関する重要参考人になっているからだ。  警察を含めて、周囲からの目には十分に気をつける必要があった。 (俺がしっかりしなければ……)  玲央奈が同行してくれて心強かったが、年上の男としての矜持があった。  隠れ乗っていたトラックが積み下ろしで止まった隙に、俺と玲央奈は荷台から飛び降りると、すぐさま人混みへ紛れ込む。  着ている服はジーンズにパーカーと随分とカジュアルで若づくりな服装だ。玲央奈が用意してくれたからか彼女の趣味が強くでているように感じられる。  シンプルな服装だが最新モデルのスニーカーや高級ブランドのダイバーウォッチなど、随所にこだわりが見えるのが面白い。  いずれも派手さはないが、身に付ける感触からして違う。地下倶楽部への潜入捜査で高級品に触れたお陰で、そうした品の良さが分かるようになっていた。 (ちょっと前なら、バカ高いだけと馬鹿にしてたんだけどな……)  気分の問題なのだろうが、やはり高級品を身につけていると心に余裕が持てるような気がする。そして、それらの品に相応しいように振る舞おうという気持ちになってくる。  妙に高揚する気分を心地よく感じながらも、一点だけ困惑していることがあった。着ている品々がすべて玲央奈とお揃いなことだ。  正直、歳の差も気になる上に不意打ちのペアルックときて、恋愛経験値の低い俺にはなかなかハードな行為だ。 「よく似合ってますよ、マスター」  頭を抱えたくなる俺だが、ファンだったアイドルに眩いばかりの笑顔でそう告げられれば、諦めて受け入れるしかないだろう。  手間暇かけて用意してくれた彼女を想像して、「こんな俺なんかが……」と喉まで出かけていた言葉をグッと呑み込む。玲央奈の期待を裏切るぐらいなら、俺が変にみられることなど些細なことだろう。 (それよりも問題なのは、こっちだろうな)  一応は人目を避けるための対策として、お互いに帽子と眼鏡やサングラスで変装をしている。だが、玲央奈のグラマラスなボディは、どうしても周囲の男の目をひいてしまうようだ。特にたわわな胸元へと下種な視線を向けてくる男どもには、ついイラっとさせられる。  俺が威嚇すると慌てて目を反らすものの、その視線は増える一方だ。 (冷静に考えると、この状況は不味いかもしれないな……)  苛立つ心を脇に置いて、現状を俯瞰して状況を確認する。  玲央奈は仮にも国民的アイドルと呼ばれている有名な芸能人だ。その彼女の横にペアルック姿のオッサンがいれば、それだけでも十分すぎるほどのスキャンダルのネタになるだろう。今後の彼女の芸能活動を考えればマイナスでしかない。 (それなのになぁ……)  そんな困った状況にあるというのに、玲央奈の方はまったく気にした様子がない。  ひと目を避けるように忍ぶどころか、嬉しそうに俺の腕に抱きつき、絡めてくる。  そうして、一緒に歩きながら呑気にアイスクリームまで舐めてみせているのだ。  その堂々とした態度には驚かされる。さらに身をピッタリと寄せて、嬉しそうに見上げてくる彼女の笑顔に思わずドキッとさせられてしまう。  密着されて照れくさそうにしている俺の反応が、玲央奈には面白いのだろう。クスクスと笑っていた彼女は、俺に屈むように合図を送ってくる。  脚をかがめて、小柄な彼女に向けて耳を傾ける。すると、背伸びをして耳元へと口を近づけてきた。 「大丈夫、意外に気づかれないから……それに、実はマスターのことを自慢したい気分なんだけどね……ウフッ、昨夜も素敵でしたよ、マスター」  熱い吐息とともに耳元でそう囁かれて、その美声にゾクゾクとさせられる。それと共に、昨夜のベッドで激しく乱れた彼女の姿が脳裏に鮮明に浮かび上がる。 (ま、不味い……これこそ不味いだろう)  おもわず反応しそうになる下半身に慌てながら、気持ちを落ち着かせようと奮闘する。  周囲をそれとなく見渡せば、どうやら玲央奈だと気づきはじめている者がいるようだ。彼女を凝視しては、一緒にいる恋人や仲間に慌てて話している姿が視界に入ってくる。  今の玲央奈は体調不良によって長期療養中と事務所から声明がだされている。そんな彼女が男を連れて出歩いているとなれば、悪い印象を与えてしまうだろう。 「しょうがない……ちょっと走るぞッ」  玲央奈の腕を掴み、目についたビルの隙間へと駆け込む。幸いなことに追いかけてくる酔狂な者はいないようだが、念のために不規則に何度も角を曲がって追跡を警戒する。  厳しいトレーニングの成果がでているようで、全力で走り回っても息が切れない。以前なら、汗塗れになって、すぐに動けなくなっていたから大きな進歩だろう。ちょっとだけ自信が湧いてくる。 (いかん、いかんッ、軍曹にも慢心するなと釘を刺されていたな)  海兵隊員の古参兵でもある軍曹によって、鍛えられた俺だが、所詮は付け焼き刃だ。元々、鍛えていた本職には敵わないのが現状だ。 『だから、ここぞという時まで隠して不意打ちに使え』  軍曹からのアドバイスを思い出して、改めて心に刻んでおく。  そうして二区画ほど移動したところで、目についた喫茶店と入ることにする。  遅い朝食を摂りながら、ほとぼりが冷めるまで身を隠そうという考えからだ。  まだ早い時間だからか、店内にいるのはサラリーマンらしき中年の男がひとり。スマホを片手にしてモーニングを食べてる。  俺たちは人目を引かない奥のテーブルを選び、裏口などのルートを確認すると、ようやく一息をつく。  入口を視界に入るようにして座ると、モーニングの注文を入れた。 「あーッ、面白かった。まるで撮影のときみたい」  先行して出された冷たいアイスコーヒーを美味しそうに口にしながら、玲央奈の愉快そうに笑う。心底、愉しんだらしい彼女につられて、俺の口元も綻んでいた。  囚われの身である涼子さんのことを案じれば不謹慎なことなのかもしれない。  それでも、この笑顔が俺の心が重責で潰れるのを防いでくれているのも事実だ。 (感謝するべきだな)  衝動的に助けたものの、結果として玲央奈との出会いは有益だった。  共闘者となってくれ、心身ともに随分と助けられている。  こうして、今も涼子さんを取り戻そうと再び活動できているのも彼女のお陰といえるだろう。 「……ありがとうな」 「ウフッ、もっと感謝してくれても大丈夫ですよ」  耳の良い玲央奈は、俺の呟きをしっかり聴き取っていた。  反応を期待していなかった俺は、急に恥ずかしくなって帽子のつばを下ろす。 (実際、必要以上な焦りは状況を見誤るからな……休むべきときは休むとしよう……)  仕事でもそうだが、張りつめていては途中で潰れてしまう。小休憩がてら入った喫茶店だったが、時間調整にもう少し滞在することにする。  さきほどの彼女のいう撮影には心当たりがあった。有名な年配俳優が主演の刑事ドラマで何シーズン続いている。それにストーカーに迫られる歌手役で、玲央名がゲスト出演したことがあったのだ。  それを話を見たことを告げると嬉しそうに笑い、彼女は撮影の裏話をいろいろと語ってくれた。それが純粋に面白く、俺はリラックスして有意義に時間を過ごすことができた。 「さて、そろそろ移動するか」  予定していた時間となり店を出る。気持ちを切り替えて最寄り駅に向かうと、そこから電車で都心へと移動を開始した。  目的地は、この国最大の歓楽街だ。そこに濡羽 八祥さんから貰った名刺の店があるはずだ。  その隣接する区画には鷹匠 杏子さんの探偵事務所もあるらしく。流石に警察が張り込んでいる可能性が高く近づくのは賢明ではないが、その店でなにか情報を得られれば次の行動を計画しやすい。  俺と玲央奈は都心に到着すると、夕暮れを待って仕事帰りのサラリーマンに交じって繁華街へと向かうことにした。 「相変わらずの賑わいだな」  人の流れに乗って、輝くネオン看板が並ぶ建物の隙間を進んでいく。  社会人生活を続けていた俺には見慣れた景色で、ブラックな職場環境で苦楽をともにしてきた同期たちと朝まで飲みあかした想い出深い場所だ。  泥酔して見上げた街は俺には煌びやかなものに見えていたはずだった。 (なんだろうなぁ……この感覚は……)  その景色が、今は随分と色褪せて見えていた。豪勢な地下倶楽部での強烈な体験が、俺に味気なく感じさせているようだ。 「はぁ……」  無意識のうちに溜息までついてしまい、湧き上がる感情に俺自身が驚いてしまう。  例えるなら、それまで一番だと信じていた外国産のステーキを、最高級のA5ランクの和牛肉を味わった後に出されたら、こんな感じだろうか。  こんなものに今まで満足させられていたのかと落胆した気分になっていたのだから恐ろしい。 (いやいや、それはちょっと傲慢すぎるだろッ)  あの夜の体験は偽りの身分によって得られたものだ。他人の力で勝ち取ったモノで、それで自分が偉くなったと勘違いするとは、なんて俺は傲慢だろうか。  理性で、そう嗜めるものの、一度落胆した気持ちは変わらない。人間は贅沢に慣れるものだとは聞いていたが、一夜でこうも価値観を変えられるとは思いもしなかった。 (チョロ過ぎるだろう……シオさんに変えられた蛍さんを不思議がってるどころじゃないぞ)  無自覚だった自分の変化に愕然とする。同時に、基地にいる間に感じていた違和感の正体を理解する。軍から支給された衣服や家具に居心地の悪さを感じていたのだ。  軍用品でアメリカンスタイルな物だからと自分を納得させていたのだ、どうやら色気もない機能一点張りの量産品に辟易していたようだ。  食事に関しても昏睡状態から目覚めたあと、妙に味気なく感じていた。  後遺症かと思い、回復のために無理して食べていた。だが、玲央奈が差し入れてくれた食事は美味しく感じることができた。それは、本当に美味しいものを知る玲央奈によるレセクトが効いていたのだろう。 (道理で、この玲央奈が用意してくれた衣服も、着たら妙に気持ちが高揚していたわけだな)  下着なども地味だが、しっかりとした良い素材が使われて肌触りも実に心地よい。贅沢を知ってしまった心と身体が反応していたのだ。 (これは、まいったな……)  安くても美味しい料理はある。別に急に牛丼とかが食べれなくなるわけではないだろう。  だが、同じ料理となれば食材の質や料理人の力量が影響するのは道理で、そこに対する期待度が変わってくるという話だ。  この心情の変化が、今後どんな影響を与えてくるか正直わからない。  ポジティブに考えてば、良いものが欲しいという欲望が、勤労意欲を増す働きをするケースもあるだろう。どちらにしろ、当分はこの変化に戸惑うことが続きそうだ。 「兄貴は、どう対応したんだろうな……」  亡くなる前の兄貴は駿河さんとともに長期に渡って紫堂のことを調査していた。例のメモリーに残された映像を入手したりしていたのだから、あの倶楽部のような施設や関係者と接触もしていただろう。  身分の偽って俺のように接触をはかっていたのかもしれない。それなら同じような経験もしているはずだ。だが、涼子さんからは、そういった変化を聞かされたことはなかった。 (俺よりも優秀だったからなぁ……駿河さんに会ったら、ちょっと聞いてみるか)  そう考えていると、なにか言いたそうに横を歩く玲央奈が見つめていた。どうやら、兄貴のことを呟いていたのが聴こえてしまったようだ。  考えてみれば、玲央奈には俺の家族のことをあまり話していないことに気づく。涼子さんの夫であり刑事だった兄貴が、不審死したことぐらいだろう。  対して俺の方は記事やニュースで彼女の両親のことまで知っているのだから、これでは少々不公平だろう。 「すまない、ちょっと亡くなった兄貴のことを思い出してた」 「お兄様のことですか?」  名刺を片手に目的地である店を探しながら、彼女に軽く兄貴のことを話すことにする。  その中で、幼い頃の俺と涼子さんのこと詳しく聴きたがるのだったが、隠す理由もなかった。可能な限り、答えてあげた。  そうして、過去話をしながら探索を続ける。入り組んだ狭い通路に個人経営のバーが並ぶ区画に入ってきた。  すでに酔いのまわった客がカウンター越しにマスターと楽しそうに話している光景があちらこちらで目についた。  そんな店のひとつで俺たちの脚は止まった。 「……Die……Räuber?」  吊り下げられた黒のプレートに、金文字が書かれている店名を苦労しながら読んでみる。  すると、すかさず多言語を把握している玲央奈がフォローしてくれた。 「ドイツ語ですね、日本語では群盗……フリードリヒ・フォン・シラーの戯曲とかご存知ありませんか?」 「いや、残念ながら連想するのは映画だな」 「そちらは韓国の時代映画ですねッ」  共通の話題をみつけて目をキラキラさせる玲央奈に苦笑いを浮かべ、映画の話は改めてする約束をする。  そうして、周囲を警戒した俺たちは怪しい人物がいないのを確認すると、店の中へと入っていくのだった。

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