淫獄包囲網 Ver.B(未完成品)テキスト (Pixiv Fanbox)
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淫獄包囲網 ―調教闇サイトに狙われた女子大生― Ver.B
【1】悪夢のはじまり
初夏の気配のある涼やかな朝の空気の中、鳴り響くアラ―ムの音でボクは目覚めた。
重い瞼を擦りながら自室のベッドから這い出てくると、誰もいないリビングを抜けて台所の冷蔵庫から買いだめしてある飲むゼリ―を取り出す。
最近の朝食は、もっぱらこれで済ませていた。簡単だし、味の種類も豊富にある。新製品の南国フルーツミックスが今のお気に入りで、新製品は欠かさずチェックしているぐらいだ。
パックを口に咥えて中身を吸い出しながら、寝ぐせを直していく。こうして、手速い朝食と並行作業のお陰でギリギリまで寝ていられるわけだけど、だからといって時間に余裕があるわけではない。
空となったパックをゴミ箱に放り投げると、時計の針を確認しながら通学の準備を急いだ。
歯を磨いて、制服に着替えるというルーチンワークをこなしているうちに、ようやくボクの頭もまわるようになってくる。
「ふぁ―ぁッ、眠いよぉ……やっぱり早く寝とけば良かったなぁ……」
毎日のように繰り返されるセリフだけど、これが改善した試しがない。
昨夜もお気に入りのネットワークゲ―ムで新規イベントがはじまったため、つい夜更しをしてしまっていた。フレンドと組むチーム戦のゲームは止め時が難しいから困ってしまう。こう見えても、上位ランカーでフレンドたちにも頼りにされているから、しょうがないだろうと言い訳する。
もちろん、お父さんが長期出張で家にいないのもあって、生活のル―ズさに悪化しているのは自覚しているから、そのうち対策はしようとは思っている。
「あッ、やっばッ、もぅ、こんな時間だ」
リビングの壁掛け時計を見て、慌てて仏壇に手を合わせる。
写真の中で微笑むお母さんは、幼い頃に交通事故で亡くなっている。以来、お父さんが男手ひとつでボクを育ててくれていて、今は手掛けていた大掛かりなプロジェクトが大詰めで、工場のある地方に単身赴任中だった。
「それじゃ、行ってくるね」
玄関へと向かい、壁にはめ込まれた大鏡で全身の身だしなみを整える。
そうして深呼吸をすると、扉をゆっくりと開けて外に出た。
「おはよう、いつも通り時間に正確ね」
そこには眩しいばかりの笑顔でたたずむ綾乃(あやの)さんの姿があった。
隣に住む広瀬(ひろせ)さんの一人娘で、二つ違いの幼馴染み、国立大学に通う十九歳の女子大生だ。
お隣とは幼少の頃から家族ぐるみでの付き合いで、彼女の家もお父さんを病気で亡くしてからは、お互い片親でひとりっ子というのもあって、本当の家族のような親密な関係をきずいていた。
こうして、いつもの時間に当たり前のように彼女の方から朝の挨拶をかけてくれる。幼い頃から繰り返してきた当たり前の光景だった。
「お、おはよう」
「あれ、寝癖ついてるよ、ほら、直してあげるからジッとしてて」
「あ、ありがとう……」
彼女が近づくと、シャンプーのいい香りが鼻孔をくすぐった。体温を感じらるほどの距離にボクの鼓動は自然と速くなってしまう。
いつからか、幼馴染のお姉ちゃんから一人の女性として彼女を見るようになっていて、こうして間近で接するだけでも胸がドキドキしてしまう。
特に高校を卒業して、都心の大学に通うようになってからの彼女は、急に大人ぽくなった気がする。
恋人でもできたのかと焦ったけど、彼女の話を聞いている分には、その心配は当分は大丈夫だった。
前以上に胸の高鳴りを隠すのに苦労させられながら、早く僕も卒業して大学生になりたいと強く思っていた。
(……それにしても、やっぱり綺麗だよね)
水色のスカ―トに白いノースリーブのブラウス、それに麻のジャケットを合わせて朝日を浴びる綾乃さんの姿は、読者モデルのように絵になる光景だった。
卒業後に伸ばしはじめた少しクセのある黒髪は背中まで伸びていた。
それをバレッタでまとめた彼女は、キリリとした少し太めの眉、気の強そうな切れ長の目とよく整った顔立ちで、いつも見惚れそうになるボクだった。
女性にしては長身で、一見ほっそりと華奢な感じに見えるけど、それは女性として必要な部分以外は無駄な脂肪がほとんどついていないからだ。
よく引き締められた肢体は、服の上からでも女性らしい見事な曲線が浮き出ている。
背筋をピンと伸ばして、横で颯爽と歩いてくれる姿に、ボクは自然と鼻高々になってしまうのだった。
高台にあるボクらの住むマンションを出ると、目の前には木々が生い茂る大きな公園が広がる。
それを抜ければ最寄の私鉄駅に到着するわけだけど、公園の中を歩いている間は、ここが建物が密集する都心と同じ東京だと忘れそうになるほど緑が多い。
元々は人気のない街だったらしいけど、緑多いベットタウンとして大々的に開発して販売する計画が立てられて、こうして山を切り崩して公園ができてボクらが住むマンションも建てられた。
本当なら他にもマンションが建てられる予定だったらしいけど、資金不足で他の建設が大幅に遅れて、今は気合を入れて作られた大きな緑道公園の中にぽつん背の高いマンションが一棟だけ建つ無惨な結果となっていた。
その結果、朝の通勤、通学の時間だというのに周囲には人の気配がない。静かすぎる公園で聴こえるのは鳥のさえずりとボクらの靴音。それをBGMにして当り障りのない会話を彼女と交わしながら歩く十分間は、ボクの幸せな日常だった。
(ただ、それが終わると通勤ラッシュという地獄が待っているんだけどねぇ……)
駅の反対側は昔ながらの住宅地で、自宅のあるマンション方面とは違って多くの個人店舗が並ぶ商店街に加えて、最近できた大型のショッピングセンターのお陰で充実した買い物ができるようになってきた。
ただ、都心に向かうには電車を使う必要があって、通勤通学の時間帯の利用率が非常に高くなってしまうのがマイナス点だ。
高架式のホ―ムへと向かえば、それまでの静寂が嘘のように住宅地の人たちが都心方向へと通勤しようと列をなして待っている。
学生やサラリ―マンでごった返している光景には、いつもながら目眩を覚えてしまう。
しかも、新たにホ―ムに入ってくる電車はすでに満員状態で、視界いっぱいに車両にギッチリと人が詰め込まれている光景には、ボクと綾乃さんは揃って嘆息してしまうのだった。
これさえなければ、実に住みやすい良い街だと自慢できるのだけどね。
「もう少し、電車の本数を増やせば、この通勤ラッシュも少しはマシにならないかなぁ」
「でも、今でも朝は結構な密度だからね。正直、これ以上は本数を増やさせないと思うけどね」
電車の扉が開かれるとわずかな人が降り、その数よりもあきらかに多い人々が乗り込もうと殺到する。
乗車客は必死の形相を浮かべて、人をかき分けながら車両の奥へと向かう。その流れに巻き込まれるようにして、ボクと綾乃さんは車内へと飲み込まれていた。
「くうっぅ……」
無理矢理に乗り込もうとする通勤客。その流れに巻き込まれて、ボクと綾乃さんは離れ離れになってしまった。
なんとか手放さずにすんだバッグを繰り寄せて、周囲から嫌な顔をされながらも彼女を探す。
すると、どうにか人垣の隙間から綾乃さんの姿を発見することができた。
少し離れた所に立っていた彼女だけど、その表情に違和感を感じた。
(どうしたのだろう?)
キリリとした眉をしかめて、頬はほのかに赤く染まっている。
最初は、すし詰め状態で圧迫されて苦しいのかと心配した。だけど、しきりに身体の位置をずらしたり、鞄を抱え直したりして背後を気にしているようだった。
その視線の先を追ってみると、背後に立つふたりの男たちが目に入ってくる。
ひとりは金髪をロン毛にした細身の男で、日焼けした肌といい全身からチャラそうな雰囲気を醸し出していた。
その隣にいるのは百八十センチは越える巨漢だ 。スキンヘッドに眉もなく、その強面の顔は一度見たら忘れられない相手だろう。
周囲のサラリ―マンや学生から浮いた異質な雰囲気の二人組。そんな彼らが綾乃さんの背後から密着して、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべているのだから嫌な予感しかしない。
(もしかして綾乃さん……痴漢にあっているの!?)
立ち並ぶ通勤客のわずかな隙間から、綾乃さんの下半身を這う彼らの手が見えた。
(た、たすけなきゃ!!)
乗客たちを掻き分けて近づこうと試みるけど、元々空間の余裕のない満員電車では、なかなか前には進めない。
迷惑そうにするサラリ―マンや学生に謝りながら、それでも彼女に近づこうとボクは奮闘した。
そんなボクの存在に気付いたのだろう、ロン毛の男がボクを睨みつけてきたのだ。
「――うッ」
鋭い眼光に射抜かれて、威圧されたボクの脚は竦んでしまっていた。
相手は相当な暴力事をこなしてきたのだろう。その迫力に気圧されてしまったボクの脚は震えて止まらない。
(あぁ、マズい……相手にしては、マズい相手だよ)
ガタガタと脚は震え、冷や汗が吹き出てくる。
睨まれただけで、こんな有り様で自分が情けなくてしょうがない。
(それでも、綾乃さんを助けないと……)
心ではそう思っていても、身体は言う事をきかない。勇気をふり絞って自分を鼓舞しても、身体は正直だ。床に貼りついたように足がピクリとも動いてはくれない。
その時だった。静かだった車内に綾乃さんの怒った声が響き渡り、それにスキンヘッドの大男の野太い悲鳴が続いた。
「いい加減にしてくださいッ」
「あ、いでででてぇ!!」
ロン毛の男がボクに意識が向いているうちに、綾乃さんが動いていた。大男の手首を掴むと得意の合気道で捻りあげていたのだ。
「いてぇなぁ、この阿女ぁ、なにしやがるッ!!」
「とぼけないで、この手で痴漢しておいて何を言っているのよ」
怒声をあげる大男にも動じず、綾乃さんは険しい表情でピシャリと言い放つ。
その頬が心なしか紅潮しているように見えたけど、それは怒りのためだと思うことにした。
「言いがかりをつけやがってぇ、こら離しやがれッ!!」
怒気を強めて大男は彼女の手を振り払おうと試みる。
だけど、一見して華奢にみえる綾乃さんから逃れることは出来ない。それどころか、彼女にいいようにあしらわれてしまっていた。
綾乃さんは、大学に入るまではボクと一緒に知り合いの武道家の道場に通っていた。
かなり実践的な武術を教える場所で、合気道だけでなく空手や古武術などの技も幅広く教えてくれる。
どうやら、師範がその筋では有名な方らしく、門下生には警察や軍の関係者が多くいた。
そんな屈強な大人たちが並ぶ場所に、袴姿の凛々しい綾乃さんの姿を見たいがために通っていたボクだ。実力も推して知るべしだろう。
でも、真面目に鍛錬してきた綾乃さんの方は、道場でも上位の腕前を持っていた。
門下生である大人の男たちを相手に、流れるような動作で次々と投げ飛ばすほどの強さをみせた。ただ、大学では学びたい事があるらしく、最近は学業優先で道場に行く時間が減ってしまっていた。
当然、彼女が目当てだったボクも、すっかりサボり癖がついてしまっている。
(あの様子だと日々の鍛錬を欠かしてはいなかったみたいだね……やっぱり、綾乃さんは強くてカッコいいなぁ)
見るからにガラの悪いスキンヘッドの大男が、ふたまわりも小さい美女に取り押さえられている。
その光景に圧倒されて、周囲の乗客たちは驚いた様子で、場所を開けてくれていた。
(……あれ? ロン毛の男がいない!?)
気がつけば大男と一緒にいたはずのロン毛の男が見えない。他の乗客にまぎれこんでしまったのか、その姿を探しても見当たらなかった。
そうしているうちに、電車は次の停車駅へと到着していた。
扉が開くと乗り込もうと構えていた通勤客を押し退けて、綾乃さんに手を背後に捻りあげれた大男が追い立てられるようにして降りていく。
それに置いていかれないように、ボクもホームへと降りると、慌てて後を追った。
「てめぇ、覚えてやがれよぉ!!」
騒ぎを聞きつけて集まってきた駅員たちに囲まれて、連行される大男。去り際に凄い目で彼女を睨みつけて吼えてきた。
(凄い迫力だ……でも、声が大きいだけで、さっきみたいに動けなくはならないな……)
それは綾乃さんも同じらしく、大男を鼻であしらってみせていた。その姿を、追いついたボクが見ているのに気付いて、彼女は急に照れたように顔を赤らめ、両手で顔を隠してしまう。
「……えへへッ……また、やっちゃった」
ボクに向かってバツが悪そうに、綾乃さんはぺロッ舌をだしてみせる。その姿に子供の頃の思い出が蘇る。
道場に通う前はボクの方が強くって、なにかと後を付いてくるのは彼女の方だった。
それが彼女が合気道を習いはじめたことで自信を持つと、立場が今みたいに逆転してしまっていた。
「ふぅ、綾乃さんが強いのは知ってるけど……それでも心配はするんだから、気を付けて下さいね」
「だってぇ……女は弱いものだと思い込んで悪さをする奴らが、我慢できないんだもの」
ボクの言葉が不満だったらしく、頬を膨らませてプイッと横を向く彼女。その姿に苦笑いを浮かべてあやしてみせる。
そうして、新たにホ―ムに滑り込んできた次の電車に二人して乗り込んでいく。
そんなボクらを物陰からジッと見つめる視線があった。途中で姿を消していたロン毛の男が物陰から見ていた。
ボクらが車中へと姿を消すと、乾いた笑みを浮かべた男は、そっと人混みの中へと姿を消していった。
【2】悪意が巣食う闇サイト
その日から、ボクはなかなか寝つけない日々が続いていた。あのロン毛の男が睨みつける鋭い眼光を忘れられずにいたからだ。
瞼を閉じるたびにあの眼光が脳裏に浮かび、胸が締めつけられて嫌な汗まで吹き出してくる。
それが夢の中にまで出てきてしまうから最悪だった。慌てて飛び起きて、寝た気がまったくしない。
これまでに、こんな経験をしたこともなく、あの男がただの痴漢とも思えない。そう思うと不安は募るばかりで、暇さえあればネットで男たちの情報を漁っていた。
すると、その成果はあって、それらしい情報が徐々に集まってきた。
「結構、有名な奴らみたいだね……」
痴漢にまつわるサイトから仕入れた情報では、都内沿線を中心に出没しては痴漢行為を撮影している人物らしく、何度もトラブルを起しているようだった。
さらに情報を集めていくと、痴漢行為だけでなく、レイプやSM調教ものの映像を闇サイトで公開しているらしい。
その映像を見たことがあるという人物のコメントでは、出演する女優は美女ばかりで、特に調教されるM女のランクは高く、本当に拐われて調教されているかのような迫真の演技で必ず抜けると太鼓判を押していた。
その内容の過激さもあってコアなファンも多いようで、闇サイトの有料会員になるのも大変らしい。
「もぅ、それで、その闇サイトやらにどうやってアクセスできるんだよぉ」
情報が厳重にガ―ドされているのか、それ以上のことがわからない。
そこで、悩んだ挙げ句、闇サイトに関してのコメントを残していた人物にダメ元で接触を試みることにした。
「え―と、SMに興味があるように装ってみるか……でも、スル―されても困るし、先日の痴漢騒動を見たと匂わせてみるかな」
偶然、大男の逮捕劇を見たといえば相手してくれるかもしれない。そんな淡い期待での仕掛けだったけど功を奏したようだ。
「えッ、もぅ返信が来たッ!?」
予想以上の喰い付きに驚いてしまう。個人情報を漏らさないように気を付けながらメッセ―ジのやり取りを繰り返していく。
相手は自尊心が高い人物らしく、こちらが闇サイトに興味があると知っているので、やたらと有料会員であることを自慢してくる。
その自慢話に付き合い続けて、ようやくアクセス方法を教えてもらえた時には、早朝と呼ぶ方が正しい時刻になっていた。
(もぅ、長すぎだしぃ、徹夜確定だよ……はぁ、ここまで来たら、少しぐらいは見てみないとね)
そのサイトは、会員からの紹介がないとアクセスもできない仕掛けになっているらしく、教えてもらった複雑な手順と発行してもらえたアクセスキ―を使って、ようやくサイトの入り口に到着する。
――Heaven's Door
天国への扉という名には相応しくない、禍々しい扉を模したグラフィックとともにメッセ―ジが表示される。
――全ての女は牝である……
――どんなに清楚な女だろうが……
――どんなに高貴な女だろうが……
――裸にされ、雄に犯されれば、ただの牝であるとわかる……
――この扉をくぐりし者は、それが真実であると知るだろう……
仰々しい文面とともに扉がひらき、画面が切り替わる。
この闇サイトでは、事前の情報通りに様々な卑猥なム―ビ―が有料で公開されているようだった。
「痴漢」「露出」「輪姦」「監禁」「調教」と、並ぶ単語にあのふたりが関わっているのなら犯罪の気配しか感じない。
――鉄格子の向こうで、全裸に剥かれて鎖が繋がる首輪をはめられた清楚な女性
――天井から吊るされた裸体を鞭で打たれて泣き叫ぶ気の強そうな女性
――妊婦のように腹が膨れるほど浣腸をされて、泣きながら排泄する知的そうな女性
――身体に鍼を通されて乳首へとピアスをはめられる号泣する気高そうな女性
目を覆いたくなる刺激の強い映像がズラリと並び、そこに記載されている卑猥な内容に眩暈を覚えてしまう。
だけど、徐々に読み進めていくうちに自分の身体に戸惑いを覚えはじめていた。
(……緊張……いや、まさか……ボクは興奮してるの?)
嫌悪感とは違う感情がまじり始めていて、ハァハァと激しく息が乱れてしまう。嫌だと思っても画面を進める動きを止められず、そんな行動をしてしまう自分の状態が正確に判断できなくなっていた。
(ダメだ……もぅ、止めておこう……)
切り上げようとした矢先に、新作予告と銘打たれたサンプル画面に目が止まる。
いくつものシ―ンを切り抜いた画像が並び、最後には動画まで用意されている。そのサムネイル画像に映る女性の姿が目に付いたのだった。
(まさか……)
震える手で「痴漢」「女子大生」「奴隷候補」のタグが付けられた映像を選択する。
すると解像度が低く抑えられた動画が再生されはじめる。
目の部分にモザイクが入ってはいたけど、その女性は確かに綾乃さんだった。ボクも居合わせた、あの痴漢の現場を映したものだとすぐにわかる。
通勤ラッシュで乗客がスシ詰め状態の中、カメラがロ―アングルで彼女を捉えている。
バッグを抱える綾乃さんの背後に、スキンヘッドの大男と金髪ロン毛の男が密着しているのが見えていた。
スカ―トの上からもわかる肉付きのよいお尻へとスキンヘッドの大男の太い指が伸びていった。
最初は、遠慮がちに触れていた芋虫のような指が徐々に遠慮が無くなっていく。大胆に両手でヒップを撫で回して、布地の上から尻肉をわし掴んでみせる。
『うんッ……』
綾乃さんがビクリッと肩を震わせた。カバンを握る指がギュッと握られるのを肩越しに眺め、大男がニタリと不気味に笑う。
荒々しくヒップを揉み始める一方で、ロン毛の男が伸ばした手が彼女の背筋に這いずり回り、首筋や耳元に熱い息を吹きかけていった。
(綾乃さん……そんな事をされていたのか……)
いつもは凛々しい彼女の眉が困惑と嫌悪でハの字にキュッと歪められて、羞恥で耳元まで真っ赤に染まっている。
乗客が密集する空間では身動するのも一苦労で、逃げることも叶わない。
必死に耐えながら身体を揺すり、痴漢の手から逃れようと足掻いてみせる。
だが、それがかえって彼らの嗜虐心を刺激していた。乾いた笑みを浮かべ合うと、より苛烈に肉体を弄ってくるのだった。
(……あれ……なんだろう、これ……)
羞恥に耳まで赤く染めて、必死に抗う彼女の姿を見ているうちに、心の奥から湧き上がる得体のしれない感覚に戸惑いを感じていた。
激しさを増す男たちの行為に、顔をうつむかせた彼女の朱唇が、薄く開き切なそうに白い歯が覗いているのが見えた。
(もしかして……綾乃さん、触られて感じていた?)
そんな不埒な考えが脳裏を掠めた途端、ドロリとした感情が心の奥底から這い出てくる。
それは不快で吐き気がするものだった、なのに、ジ―ンと脳が痺れるような感覚に包まれていた。
(あぁ、これはダメだ……これ以上はダメな気がする……)
理性が警告するのに身体は言うことを聞かない。動画を止めることもできず、目も逸らすことができずにいる。
激しい動悸に襲われて胸がギュッと痛いのに、画面に映る彼女の姿に目が離せないでいた。
「あぁ、綾乃さん……どうして……」
ハァハァと荒い息を吐きながら見つめる画面では、男たち手がピタリと止まっていた。
這いずりまわる二十本の指から開放されて、俯いて耐えていた彼女もホッと安堵の表情が浮かぶ。だけど、それで終わりではなかった。
大男の指が再び蠢きだして、スカ―トの端を掴むと、ゆっくりと巻き上げようとしてくる。
流石に、それには耐えきれずに顔を赤面させた彼女は、バッと背後に振り向いた。
『いい加減にしてくださいッ』
『あ、いでででてぇ!!』
真っ赤な顔をした彼女が、大男の手を掴み捻り上げる光景は、ボクも見たものだった。
いつも通りの猛々しい武道家としての綾乃さんの姿を目にしてホッとしていた。金縛りにあっていたボクの身体も、いつのまにか開放されていた。
(それにしても、綾乃さん……痴漢をされて、あんな表情を浮かべていたなんて……)
普段の凛々しい彼女からは想像もしていなかった姿を見てしまい、自分でも驚くほど興奮してしまっていた。
(あぁ、なにを考えてるんだ、落ち着かないと……)
気を紛らすために動画に対するコメント欄に画面を移すのだけど、そこに並ぶコメントの数々に目を通して表情を強張らせてしまう。
「牝の癖に歯向かってるんじゃねぇよ、この女、絶対に感じてただろう」
「股を濡らしてたぜ、牝の本性を暴こうぜ」
「続編を熱く希望、ぜひ調教編を!!」
「強い女をマゾ奴隷化するのは最高だな」
「穴という穴を開発して肉便器として飼おうぜ」
「マゾ地獄に堕としてやるの、今から愉しみだな」
「まずは、いつも通りに情報収集だ、女に関する情報を求む!!」
画面を埋め尽くすほどのコメントには、綾乃への悪意のある書き込みで溢れかえっていた。
(続編……調教……マゾ奴隷化……肉便器……いったい、なにを言っているんだ……)
画面をスクロ―ルさせてみると情報収集の呼び掛けに応えて、すぐさま彼女の個人情報が書き込まれてあった。
そこには、名前、身長、スリ―サイズ、通っている大学名、自宅の住所、電話番号までさらされていた。
その情報を元にさらに書き込みは増えて、時間の経過とともに情報の密度が増していた。
彼女の学生証や大学で学ぶ普段の姿、自宅マンションなどの写真がズラリと並び、彼女が片親で母親が海外赴任中でひとり暮らしであること、交友関係は多いが現在は彼氏がいない事まで事細かに調べ尽くしてある。
まるで私立探偵でも雇ったかのような膨大な情報には、ボクだけが知っていそうな細やかなものや、逆に知らなかったものまで多岐にわたる。
それを読んでいくうちに、神聖な領域を侵されたようで苛立ちを感じてきた。
その一方で、姿が見えぬ連中による悪意が滲み出ている書き込みの数々に、寒気を覚えずにはいられなかった。
背筋をゾクゾクとさせる悪寒の中には、密かに黒い悦楽が潜んでいたのだけど、そのボクは気がつけなかった。
徹夜までして調べた闇サイト、そこでの強烈な悪意にさらされて、そのまま学校に行こうという気分にはなれなかった。
綾乃さんに休むことを伝えると、ひどく心配されてしまった。ただの寝不足だと伝えたけど、大学の講義を終えたらお見舞いに来てくると言われては、素直に喜んでしまっていた。
(いやいや、そうじゃないよ……あの闇サイトのことを伝えなきゃ……)
あの悪意に満ちたコメントの言葉を思い出して、胃がムカムカしてくる。それを心優しい彼女に見せるのは躊躇させられた。
(やっぱり、警察に相談した方がいいよね……)
一日中悩んだ結果、それが最善の手だと思えて彼女に話す決心もついた。
気がつけば日は傾いていて、ホッと気が抜けた途端に腹の虫がグ―グ―っと空腹を主張する。
現金な身体に苦笑いを浮かべたボクは、ちょうど綾乃さんから講義を終えたとのメッセ―ジを受けて、駅まで彼女を迎えにいくことにした。
「えへへッ」
駅前で合流して夕食をともにする約束を交わして上機嫌になっていた。
鼻歌交じりに歩いて公園を抜けていこうとする。中途半端な時間だからか、周囲には人の姿はなく静かだった。
木々の生い茂る遊歩道をひとり歩いていると、目の前を遮るように突然、黒い影が立ちはだかった。
「よぅ、上機嫌だなぁ、俺の事を覚えてるか?」
深々と被ったフ―ドを取り除き、顔を露わにしたのは金髪をロン毛にした男だった。
あの鋭い眼光で再び射竦められて、おもわず身体が萎縮してしまう。逃げるチャンスの出鼻を挫かれたボクの背後には、いつの間にか大男も立っていた。
振り向いた先には、バチバチッと閃光を放つスタンガンが握られていた。それを避ける間もなく身体に押し付けられてしまう。
「――があぁぁぁッ」
違法改造して出力を上げているのか、想像以上の衝撃をうけた。そのまま膝から崩れ落ちようとするのを背後から抱きしめられる。
「悪いなぁ、あの女を誘き寄せるのに、ちょっと協力してもらうぜ」
ロン毛の男に煙草臭い息を吹きかけられて、おもわず顔を歪めてしまう。だけど電撃を受けた身体は痺れきって、まともに動けない。
「くぅ、離してよ……」
男の手を振り払おうとするけど、追撃ちとばかりに再びスタンガンが押し付けられて、ボクは完全に動けなくされてしまった。
(あぁ、綾乃さん、ゴメンなさい……)
グッタリと身を預けるボクを見下ろして男たちが残忍な笑みを浮かべる。
(誰か……助けて……)
必死に助けを求めようとしたけど、周囲には人影もなく、絶望的な状況だった。
無抵抗になった身体を抱えあげた男たちは、遊歩道を外れて茂みの中へとボクを運び込んでいった。
【3―B】
綾乃さんが撃退した痴漢行為をした二人組。日焼けしたロン毛の男とスキンヘッドの大男の二人は、怪しげな闇サイトを運営している悪名高い連中だった。
そんな彼らに帰宅途中で襲われたボクは、公園の奥に隠されたワゴン車に閉じ込められていた。
手足を粘着テープでぐるぐる巻きにされ、口にはボロ布を押し込まれて吐き出せないよう粘着テープで塞がれている。その状態で後部座席の上に横たえさせられていた。
外はすっかり暗くなっていて、見上げた車窓からは木々の隙間に夜空で煌々と光る月が見えている。
父親は出張中だから、帰宅していないことで心配してくれる人はいない。その事を連中も把握しているようだった。
(なら、目的は綾乃さんを呼び出すことしかないじゃないか……)
幸いなことに彼女きていない。拘束された身体を起こして周囲を確認すれば、男たちはせわしなく木々の間を移動しているのが見えた。どうやら誰かの指示でカメラを設置しているようだった。
周囲を観察すれば、鬱蒼と茂る草木の間にポッカリと開けた空間にワゴン車は停まっているのがわかった。
山を切り崩して造成されたベッドタウンの目玉として造られた広大な敷地を誇る公園は、ボクたち住人の憩いの場となるはずだった。
本来なら周囲には何棟もマンションが建てられる予定だったのだけど、開発は頓挫し、建てられたマンションはボクらが住む一棟だけになってしまった。
無駄に広い公園は整備もままならず植えられた木々が生い茂り、まるで自然の森のように木々が鬱蒼としげっている状態になっていた。
そんな木々の間にポッカリとできた直径十メートルばかりの空間に、ワゴン車は停められているのだけど、人の気配どころか街灯の光も届かない場所だ。
ここなら多少騒いでも、誰かに気づかれることもなさそうで、目の前で暮らしていたというのに、こんな場所があるのをボクらは知らなかった。
(は、早く、逃げ出さないと)
二人組が離れている今が逃げ出すチャンスだった。
拘束を緩めようと手足を動かすものの、グルグル巻きにされた粘着テープは意外に強力で緩む気配はなかった。
なにか切れるものはと漁ってみたものの、残念ながら持ち物は全て取り上げられていた。
それなら、這ってでもこの場から逃げ出そうとするのだけど、ドアノブからレバーが外されていて、内部からサイドドアを開けられなくされていた。
妙に手慣れた手腕からも、連中が人を攫うのに慣れているのがわかる。
(こんな連中に綾乃さんが捕まったら……)
脳裏には闇サイトでみた女性たちの悲惨な姿が浮かんでいた。そんな目に綾乃さんがあうのだけは阻止したかった。
手に巻きつく粘着テープをドアに擦りすける。摩擦で皮膚が痛みが走るけど、かまわずに続ける。
「その辺でやめておきなよ、無駄な荒事はしたくないんでね」
背後から不意に声を掛けられて、ボクはビクッと肩を震わせる。二人組の姿が外にあるので、誰もいないと思い込んでいたが、薄暗い車内に他にも人が乗っていた。
恐る恐る振り向けば、後列のシートにはひとりの男が座っていた。まだ若い青年のように見えるけど無精ひげを生やして、目の下には濃い隈を刻んでいるので酷く心を病んでいるように見える。
(まだ、仲間がいたのか……)
予想もしていなかった第三の男は、ヤクザ者のようなロン毛の男たちと比べれば、まだまともそうに見えた。
だけど、そのひどく昏い目にジッみつめていると、背中に氷塊を押し付けられたような寒気を感じさせられる。
その原因は、瞳の奥に宿る光に危険な気配を感じさせられるからだった。
(この人の闇サイトの関係者? まともそうに見えて、この人の方が外の二人よりも危険な気がする……)
説明できない不気味さには、ボクは動きどころか息をするのも忘れていた。
酸欠になって慌てて息を吸っては、激しく咳込む。そんな無様な姿に青年は口端を吊り上げた。
どうやら笑みを浮かべたらしいけど、ひどく寂しい笑みに見えた。
「必要以上に怯える必要はないさ、大人しくしていれば、すぐに開放してあげれるよ」
そうは言うものの、闇サイトの関係者ならうかつに信用などできない。
警戒するボクに、青年は見覚えのあるスマートフォンが差し出してきた。
「これは、ボクの……」
「少し借りていたよ。指紋認証は、持ち主が寝ていても使えるから便利だよね」
相手の言葉と画面に表示されていた通話記録にボクの顔が強張っていた。そこには綾乃さんの名前が表示されていたからだ。
(ボクが気を失っている間に!?)
すでに連中は綾乃さんを呼び出していた。
通話相手がボクだと思って明るい声で応対にでてきた彼女が、聴こえてきた大男のダミ声に激しく動揺していたと青年は語ってみせた。
淡々と語る相手の様子からは罪悪感はまったく感じられない。やはり、外にいる二人と同じく女を嬲ることに躊躇しない人物のようだった。
目の前の青年も、綾乃さんに害を与える存在だと認識したボクは、ギッと相手を睨みつける。
だけど、相手は気にする様子もなく、腕時計に目をやっていた。
「そろそろ指定した時間だね……この場所を見つけられると良いのだけどね」
その言葉の意味を、改めて聞く必要はなかった。
無駄に広い公園の奥まった場所にある秘密の場所。そこを見つけることは容易ではないだろう。
それをどうやって知ったのか疑問ではあったけど、闇サイトで綾乃さんに関する様々な情報を調べ上げていた連中だ。
ここも会員たちによってもたらされたと考えると、その力にはゾッとさせられる。
(もしかしたら、いままでもボクらは監視されてたのかも……)
不特定多数に探られ、監視されているのなら、もしかしたら、その中には近所の住人がいるかも知れない。そう考えだすとキリがなく、疑心暗鬼になってしまいそうだ。
痴漢騒動で綾乃さんに合気道の実力も知られてしまっている。その強さを体験した連中が、対策を考えていないわけがない。そのひとつがボクという人質なのだろう。
用意周到に悪事を働こうという連中が、綾乃さんに何をしようとしているのか、想像するだけでも恐ろしかった。
(あぁ、やっぱり来ちゃダメだッ)
その願いは残念ながら綾乃さんには届かなかったようだ。車の窓越しに、木々の間から姿を現した彼女をみつけてしまった。
自宅から慌てて飛び出してきたのか、彼女はTシャツにホットパンツというラフは服装だった。
首の後ろでまとめた黒髪をなびかせて駆けてくるところだ。
「言いつけを守って、誰にも告げずに来たみたいだね」
「んん――ッ」
近寄ってくる彼女に、ボクは存在を知らせようと大声をあげる。
だけど、口に詰め物をされて粘着テープを貼られているために、小さな呻き声にしかならない。
そのままボクには気づかずにワゴン車の脇を抜けて、待ち構えていたロン毛の男を対峙することになってしまった。
(あれ、もうひとりの大男は?)
いつの間にか大男の姿が視界から消えていた。
寸前まで木の陰でなにやら作業をしていたように見えたけど、そのまま木陰に隠れているようだった。
背後から襲われでもしたらとハラハラするのだけど、今のボクには注意を促すこともできなかった。
もちろん綾乃さんも気を緩めずに、周囲へと気を配っていた。その上でニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるロン毛の男をキッと睨みつけていた。
「ちゃんと、ひとりで来たわよッ、約束通りにあの子を解放しなさいッ」
公園中を全力で探し回ってきたらしく、ワゴン車のそばまで来た綾乃さんは綺麗な白い肌に大粒の汗を浮かばせていた。
普段は着痩せして見せるように、ゆったりとした服装を好む彼女だけど、今は汗で服が貼りついてしまい、薄い布越しに水色の下着が見えてしまい、その魅力的なボディラインも浮き上がっていた。
だすぐ手の届きそうな距離にいながらも、彼女は車内にいるボクに気づいた様子はない。どうやら窓がマジックミラーに変えられているようで、外からは車内を見えなくされているようだった。
そして、すぐに背後の茂みに気配を感じて、彼女は背を向けてしまう。
彼女の鋭い眼光に射竦められて、苦々しい顔で大男が茂みをかき分けて出てくる。背後からの奇襲を目論んでいたようだけど、早々に失敗して不機嫌そうだ。
見上げるような巨体の男を前にしても、綾乃さんには怯んだ様子はない。道場では同門の男たちを前にしている彼女からすれば、必要以上に恐れる相手ではないのだろう。
男たちも彼女の合気道を警戒してか、それ以上は距離を詰めようとはしない。前後から挟み込んでプレッシャーを掛けて距離をはかっている。
(流石に彼らも、綾乃さんの強さには警戒しているみたいだ……)
特に大男の方は腕を固められて文字通りに痛い目に合わされているだけに、やや腰が引けた状態でやたらと怒声は張り上げていた。
どうしても注意を向けざるおえないけど、ロン毛の男の方も油断はできない相手だ。隠し持っていたスタンガンを取り出してバチバチと派手に火花を散らしてみせる。
恐らく違法に強化されているスタンガンを一撃でも喰らえば、綾乃さんでもタダでは済まないだろう。彼女が纏っていた空気が変っていくのがわかる。
「二人がかりで、武器持ちなら、手加減は不要ね」
ボクからみれば、まさに絶対絶命なピンチな状況なのに、綾乃さんは臆した様子をみせず、強気な態度を崩さない。
慎重に男たちとの距離を測りながら移動して、それとなく間合いを詰めていた。
「本気でいくから、どうなっても知らないわよ」
後ろ姿でも綾乃さんが本気で怒っているのがわかる。幼い頃から見てきたボクは、普段は温厚な彼女が滅多に見せない本気の姿を知っている。そして、そのときの強さも誰よりも理解しているつもりだった。
彼女が放つ気迫に大男が怯んだ様子をみせた。だけど、すぐに思い出したようにボクがとじ込められているワゴン車の方へと視線を向けて、余裕の態度を取り戻していく。
「おぉ、怖い怖い、ヘヘヘッ……」
「あの子は、どこにいるのよ」
「あぁ、それなら後ろのワゴン車の中にいるぜ、だが、会わせてやるのは、こちらの用が済んでからだけどなぁ」
彼女の意識をワゴン車へと向けさせた瞬間、ロン毛の男が目配せをして大男に行動をうながす。
人質がいるのを意識させたから彼女の抵抗も弱まると思い込んでいたのだろう。キャッチャーグローブのような肉厚の手で彼女に掴みかかていった。
――次の瞬間には、その巨体がフワリと宙を舞っていた……
流れるような動作で、突き出された手首を掴んだ綾乃さんが、重心を崩したところを軽く脚を払ってみせだ。
相手の力を利用して投げてみせているとは理屈では理解していても、ふた回りも大きい巨漢を軽々と投げ飛ばしてみせる姿は圧巻だった。
空中で半回転した大男は、そのまま雑草が生い茂る地面へと背中から叩きつけられていた。
「――ぐへぇッ」
大男に格闘技の経験がないのは、ろくな受け身も取れないことからも判断できた。
恵まれた肉体頼りの喧嘩術では、何年かかろうが綾乃さんに触れることも難しいだろう。
そして、道場では多対一の戦闘も習っていた彼女の動くは早い。
投げ飛ばされて宙を舞う大男の身体を陰にして、ロン毛の男との距離をいっきに詰めていた。
相手がそれに気がついた時には綾乃さんは目の前まできていた。
慌ててスタンガンを突き出す男だけど、危なげもなくスルリとかい潜ってみせる。
バリバリと電撃を放ち、一撃で相手を昏倒させるであろう高威力の違法改造スタンガンだけど、当たらなければ意味がない。
空を切って突き出されてた腕を掴んだ彼女は、すぐに捻り上げてスタンガンを無力化していた。
「いでででぇ、クソぉ、離せよぉ」
ロン毛の男はグイっと手首を捻られて、あまりの痛みに手にしていたスタンガンを地面へと落としていた。
(さ、さすが綾乃さんだ……)
瞬く間に二人の男を無力化してみせた綾乃さん。その流れるような動作は舞を踊るかのようで、一挙手一投足がなんとも美しい。彼女の雄姿に、囚われの身であるのも忘れておもわず見惚れてしまうボクだった。
そんな彼女に誤算があったとすれば、ボクと同じく相手が二人組だと思い込んでしまっていたことだろう。
「そこまでにしてもらおうかな」
ワゴン車のスライドドアがガラリッと開け放たれて、青年が羽交い絞めにしたボクの姿を綾乃さんに見せつけた。
彼の手にはいつの間にか用意されていたナイフが握られていた。
その冷たい刃の腹でボクの頬を叩きながら、凶器の存在をアピールする。
予想外な第三の男の出現によって、二人組を圧倒してみせた彼女の顔から余裕の笑みが消えていた。
「月並みで悪いけど、傷を付けたくなければ大人しくしてもらうよ」
背後から聴こえる青年の声は、実に淡々としたものだった。
「まだ仲間がいたなんて……人質なんて卑怯よ……」
「今さらなセリフだね。こちらも、表舞台に立つのは主義じゃないんだけどね。まぁ、よい画が撮れたからよいとするかな」
受け身も取れずに地面に叩きつけられて呻いている大男に、綾乃さんに腕を固められて動けずにいるロン毛の男。青年は二人の姿に、笑っているようだった。
「さて、まずはその掴んでいる腕を離してもらっても良いかな? 一応、忠告しておくけど怪しい動きはしない方が良いよ。荒事には慣れてないから、手元が狂ってしまいそうだからね」
淡々と話す青年の顔とキラリと光る刃を見比べて、言葉とは裏腹に相手には隙がなく、刃を振ることにも躊躇しないのを見抜いたようだ。
怒りで肩を震わせた彼女は悔しげに唇を噛んでいた。再び、腕をはなすように催促されて、彼女は渋々と掴んでいたロン毛の男の腕を手放した。
「いてて……この阿女ぁ、イイ気になりやがってぇ」
肩を押さえて顔をしかめるロン毛の男。それを押しのけるようにして起き上がってきた大男が彼女に腕を振り上げる。
怒りのままに放たれた平手打ちが頬に直撃して、細身の綾乃さんは軽々と吹き飛ばされてしまう。
「生意気に合気道なんかしやがってッ、牝なら大人しく腰でも振って男に媚びを売ってやがれ」
雑草の上に倒れ込んだ彼女の長髪を掴みあげて侮蔑の言葉を投げつける大男だが、顔をあげた綾乃さんがキッと睨み返される。
彼女の発する気迫にたじろいでしまい、それが怒りに油を注いでしまう。
今度は反対の頬に平手打ちを喰らわされて、その衝撃で口の中を切ってしまった綾乃さんは、口端から血が垂れてしまう。
それでも、暴力に臆することもなく睨みつける綾乃さんに、再び大男は腕を振り上げていった。
それを止めたのは、ボクにナイフを押しつけている青年の言葉だった。
「ちょっと、顔はダメだと言いましたよね? 美貌を台無しにされたら、、被写体としての価値が下がっちゃいますよ?」
淡々とした口調なのは変わらずだけど、その言葉はひどく苛立ちを感じさせられた。
不機嫌そうに振り向いた大男だけど、青年の顔をみたらしくビクッと肩を震わせて、すぐに言葉を止めていた。
ギスギスとした空気を放つ二人の間に入ったロン毛の男は、腕をさすりながら仲裁にはいる。
「今のはお前が悪いぞ。悪かったな、約束を破っちまって、次からは注意するよ」
「で、でもよぉ……」
「なんか異論があるのか?」
窘められて渋る大男だけど、ロン毛の男にも睨まれては従うしかないようだ。
三人の間には微妙な力関係があるようだけど、ロン毛の男がリーダー格なのは確実なようだった。
「だいたい、これからがメインだろうが」
「へへへッ、そうだったなぁ。悪かったよ、今日はこの女にたっぷり詫びをいれさせるために来たんだったなぁ」
ロン毛の男の言葉で、ようやく頭に昇っていた血も冷めたようで大男も冷静さを取り戻していった。
掴んでいた綾乃さんの黒髪を手放すと、下卑た笑いを浮かべる。
見下ろしてくる相手に、今度は綾乃さんの方が切れた唇の血を拭いながら激昂してくる。
「詫びですって!? なぜ、被害を受けた私が謝罪しなければならないのよッ、普通に考えても逆でしょうッ」
綾乃さんの言い分はもっともだとボクも思う。だけど、こんな暴挙にでるような男たちだ、正論など意味はなさないだろう。
「ヒヒヒッ、お前の意見なんか聞いちゃいねぇのよぉ、詫びを入れるか、可愛いアイツの顔がナイフで切り刻まれるかの二択だ。選ばせてやるから、早く決めろッ」
「そ、そんな馬鹿な選択なんて……」
反抗の意思をまだ捨てきれていない綾乃さんに不条理な選択が突きつけられたけど、そんなものは選択肢なんて言えない。
断固拒絶するべきだとボクは目で訴えるけど、ボクを見つめる彼女は激しく動揺してしまっていた。
(ボクのことはいいから、こんな奴ら倒しちゃってよ)
口さえ塞がれていなければ、そう訴えたかった。彼女の実力なら、三人を相手にしても勝つことも可能なはずだった。
(ボクが人質になってさえいなければ……)
そのことが悔やしくてたまらず、溢れ出す涙で視界が歪んでしまう。
そのボクの視界にキラリと光るものがあった。
(なら、いっそのこと……)
突きつけられた鋭い刃を前にして、ボクは密かに覚悟を決めた。
歯を喰いしばり、ナイフに向かって顔を傾ける。
だけど、覚悟していた痛みは訪れず、視界からナイフは消えていた。
「危ない、危ない。なんて事をしようとするかな。でも、決断するには一歩遅かったね」
青年に促されて視線を正面に向ければ、ガックリとうなだれて抵抗の意思をなくした綾乃さんの姿があった。
「わかったわ……詫びるわ」
悔しさに震える唇から、どうにか言葉を絞り出した綾乃さんだけど、その言葉に男たちは顔を見合わせて乾いた笑みを浮かべるだけだ。
「あぁん? なんだってぇ? 聞こえねぇなぁ……おい、なんか聞こえたか?」
「いや、全然聞こえねぇ、おぃ、もっとシッカリ聞こえるように言えや!!」
彼女の抵抗の意志をはかるように、男たちはさかんに煽ってきた。
浴びせられる暴言への悔しさに美しい瞳を潤ませた綾乃さんは、キッと男たちを睨みつける。
「詫びるって言ってるのよッ、だからその子を放してなさいよッ」
必死に訴えるものの、優位に立っているのは男たちだ。それをを自覚している連中が、素直にそれに納得するはずもない。
「なんだぁ? これから詫びるにしゃちゃ、なんだか偉そうだよなぁ」
「まったくだ、まったく誠意ってやつを感じないぜぇ」
「そうだな、言葉使いもそうだけど、まず態度が気にいらねぇなぁ、誠意を示すんなら、土下座だよな」
「どうせなら、全裸で土下座だろ」
「――なッ、なにを馬鹿なことを……」
「ヒヒヒッ、頭のよろしい国立大学に通っているインテリ女子大生さんならわかっていると思うが……」
男たちの視線が、車の中に捕らわれているボクの方へと向けられる。
それを受けて羽交い締めにしている青年が溜息をついた。
再びナイフを取り出して、月の光を浴びた鋭利な切っ先がキラリと冷たく反射するのを見せると、それをゆっくりとボクの頬へと押し付けた。
わずかに熱を感じて、ドロリとしたものが頬を伝う。
切れたのは薄皮だけど、流れる血が綾乃さんに与える動揺は十分なものだった。
「あんまり手間をかけさせると、もっと深い傷になっちゃいますよ」
変わらず淡々とした口調だけど、その言葉には妙に重みがある。いざとなったら躊躇はしない、そんな危うさを感じさせる相手だからだろうか。
仮に綾乃さんが強硬手段にでるとして、ボクらの距離は十メートルほどしかないけど、それでも立ち塞がる悪漢ふたりを退けて、ナイフを取り上げるのは流石に難しいだろう。
それをお互いに理解した上で、青年は言葉を重ねてくる。
「アナタさえ素直に言うこと聞いてくれるのなら、この子はすぐに解放しますよ。アナタに関しても、別に命まで欲しいというわけではないですし、彼らが満足すれば終わりの話ですよ」
緊迫した空気の中で、落ち着いた雰囲気のある青年の言葉は、妙に響いて聴こえた。
だけど、その内容は綾乃さんに自己犠牲を強いていると変わらない。
それでも、今の彼女には選択の余地がないのも事実だった。ボクの頬を流れる血が、顔の顔を蒼白にさせて、さらには彼女が決意を固めさせるのだった。
「謝罪したら……本当に解放してくれるのね」
彼女の口からでた言葉に、二人組が顔を見合わせて乾いた笑みを浮かべあう。
だけど、青年の方は変わらずの様子で、
「約束しますよ。ただし、そこの二人が満足するように誠意を込めてお願いしますね。まずは、全裸で土下座という要望らしいですけど、アナタにできますか?」
青年からは交渉の余地は感じられなかった。
悪漢二人を相手にして圧倒してみせた綾乃さんが、青年の言葉に追い詰められていくのが、ひしひしと感じられる。
それをロン毛の男とスキンヘッドの大男が愉しそうに成り行きを見守っている。
そして、ついに綾乃さんが要求を飲まされてしまった。
「わ、わかった……いえ、わかりました……」
血が滲むほど唇を噛んでいた綾乃さんが、恥辱に声を震わせて承諾の言葉を絞り出していた。
それによって彼女が自らの敗北を認めて、淫獣たちの罠へと足を踏み入れることになるのだった。
【4-B】強要される屈辱な謝罪
木々の生い茂る雑木林の中にポッカリとできた十数メートルの空間。その中央に綾乃さんは立たされていた。
公園内に造られた遊歩道に設置された街灯の光もからも、生い茂った草木によって届かない。
綾乃さんを照らすのは頭上で輝く月のみで、月光を浴びて輝く彼女の、なんとも神秘的に見えることか。
その頬が赤く染められているのは、これから衣服を脱がされるからだ。
男たちが求めたのは、全裸による土下座だ。羞恥で肩を震わせるのも当然だろう。
「おい、いつまで待たせるきだ?」
「なんなら、俺たちが脱ぐのを手伝ってやるぜ?」
「け、結構よ」
「なら、早くしろッ」
男たちに急かされて、ようやく綾乃さんは、細くしなやかな指先をホットパンツへとかける。
だけど、そこから先へは、なかなか踏み出せずにいた。
それはそうだろう。二十歳前の女性が男たちに囲まれて、野外で全裸になろうというのだ。抵抗があるのは当然なことだろう。
それを強要することで、綾乃さんが美貌を歪ませているのを愉しんでいるのだが、同時に彼らは気長に待つ気などもないようだ。
「どれ、俺さまが手伝ってやるよ」
「さ、触らないでよッ」
大男の伸ばした手が、綾乃さんの首元へと伸びるとビリビリと布が裂ける嫌な男が響いた。
彼女の着ていたTシャツが無惨に裂けて、水色のブラジャーが露出する。
すぐさま大男の手を振りほどいた綾乃さんは、腕で胸元を隠してキッと相手を睨みつける。
「これで脱ぎやすくなっただろう?」
「焦らされるのは、俺たちは性に合わないからな、これ以上時間がかかるなら、一分ごとに傷が増えていくことになるぜぇ?」
いまだに気丈さを失わない綾乃さんに見据えながら、ロン毛の男は指先で頬を横に撫でる仕草をしてみせる。
怒りに拳を震わせながらも、必死に自制していた彼女は、ハッとしてワンボックス車の中に囚われているボクへと視線を向けてくる。
ナイフの刃がキラリと光って、存在感をアピールしてくる。
「待ってッ、す、すぐに脱ぐ……脱ぎます」
ボロ布と化したTシャツを上半身から引き剥がした綾乃さんは、両指をホットパンツにかけると、ボクの方へと再び視線を向けた。
――大丈夫だからね
優しい表情を浮かべた綾乃さんの瞳が、そう訴えてくれていた。
そして、覚悟を決めた彼女はホットパンツを下ろしていく。
緩やかなカーブを描く腰を抜けたホットパンツは、長い美脚を滑り落ちて地面で輪になった。
その下から現れたのは、ブラジャーとお揃いの水色のショーツだ。綺麗な刺繍が施されたハイレグカットのデザインで、大人びた雰囲気を感じさせる。
露出した下着を恥ずかしそうに身を捩って隠そうとする。それが、キュッと絞り込まれたウェストを強調して見せていた。
日々の絶やさない鍛錬によって絞り込まれた細腰は、コルセットでも装着しているのかと疑うほど深く絞り込まれている。お陰で、その下の桃尻との緩急がより強く感じられた。
ツンと小気味良くつりあがった白い肉丘。そこには染みひとつなく、その谷間を隠すように張り付いた水色の薄布が喰いこんで見える。
大胆にカットされた腰布には、おもわずボクも目のやり場に困ってしまう。
「へへへッ、いいねぇ。そんじゃぁ、次は下着といこうか。なぁ、折角なんだ、あっちからもよく見えるように向いてやれよ」
ロン毛の男はボクの方へと顎をしゃくり、その提案に大男も名案だと大いに喜んだ。
男たちに促されて振り向かされた綾乃さんは、耳まで真っ赤に染めるほど赤面していた。
彼女の下着姿は刺激が強すぎて、こちらも顔が火照ってしまうのがわかる。お互いに気恥ずかしさに視線をそらそうとするのだけど、それは連中は許さなかった。
「そら、早くしろ。あんまり遅いと俺が下着も破いてやるぜ」
「わ、わかってるわよッ」
せっつく大男に怒鳴り返した綾乃さんだけど、やはり下着となると躊躇してしまう。
それでも、どうに背中のフックを外してブラジャーを外してみせると、窮屈そう収められていた双乳が弾けるように露出する。
それを慌てて腕で隠そうとするのだけど、たわわな乳房は細腕では隠しきれず、かえって卑猥に見えてしまう。
着痩せして見える彼女だけど、バストは想像以上の盛り上がりをみせており、はちきれんばかりの迫力だ。細身でありながら全身に適度に脂がのっているのが今ならよくわかる。
きめ細かな素肌は月の光を反射して眩しいばかりで、下着姿になった綾乃さんを神々しく見せていた。おもわず息をするのも忘れるほどのセクシ―なプロポ―ションを前にして、男たちは見惚れて頬が緩ませていった。
腕に圧迫されて、さらに深さを増した胸の谷間へと男たちの視線が集中する。
それから逃れようとする身を捩るのだけど、そんなことを男たちは許さない。激しい責めの言葉が降り注ぎ、すぐに下も脱げと催促されるのだった。
道場での凛々しい袴姿での彼女のイメージが強いボクにとって、恥かしそうに乳房を両手で隠して、頬を染めている今の彼女は、頭をハンマーで殴られたたかのような強い衝撃を与えていた。
「うへッ、こりゃ予想以上の身体だな、最高の被写体になるぜぇ」
「へへッ、想像よりも大きいなぁ」
「あぁ、それでいてツンとつり上がって、形も悪くないな」
「その調子で、下も頼むぜ。あんまり焦らされるのにも飽きたぜた」
口元をだらしなく緩めた大男が、今にも飛び掛かりそうな気配だ。
これ以上は無理だと彼女も悟ったようだ。片手で胸元を隠しながら、残った手でショーツのサイドへと指をかける。
「あぁ……」
男たちが向ける熱い視線を感じながら、ショーツをゆっくりと下ろしていく綾乃さん。
剥きでたヒップに、まるで魅惑の果実のように男たちのテンションを上げさせた。
スルリっと脚をくぐり抜けて、聖域を守っていた最後の布地が、彼女の身から離れていった。
男たちに促されて、今度は白いブラウスへと指が伸びる。わずかに震える指によってフロントのボタンがひとつ、またひとつと外されていく。
すると、布地の隙間から水色のブラジャーが垣間見えてくる。その奥には胸の谷間が深々とある。
そこへ集中する熱い視線を受けて、綾乃さんは手を止めて視線から逃れようとする。
だけど、そんなことは男たちは許さない。激しい責めの言葉が降り注ぎ、早ぐ脱げと催促されるのだった。
諦めとともに白いブラウスが肩から抜かれて、ショーツとお揃いの刺繍入りの水色のブラジャ―が露わになる。
着痩せして見える彼女だけど、バストは想像以上の盛り上がりをみせており、はちきれんばかりの迫力だ。細身でありながら全身に適度に脂がのっているのが今ならよくわかる。
きめ細かな素肌は月の光を反射して眩しいばかりで、下着姿になった綾乃さんを神々しく見せていた。おもわず息をするのも忘れるほどのセクシ―なプロポ―ションを前にして、男たちは見惚れて頬が緩ませていった。
道場での凛々しい袴姿である彼女のイメージが強いボクにとって、白い下着を恥かしそうに両手で隠して、美脚をくの字に曲げながら頬を染めていく彼女は、頭をハンマーで殴られたたかのような衝撃を与えていた。
「うへッ、こりゃ予想以上の身体だな、最高の被写体になるぜぇ」
「まったくだ、しっかり撮影してくれよぉ」
いつの間にか用意されていたカメラをロン毛の男が手にしていた。冷たく光るレンズが密かに向けられて、下着姿となった綾乃さんをずっと記録していたらしい。
「いやぁぁ、と、撮らないでッ」
これまで気丈に振舞っていた綾乃さんが、美しい美貌を羞恥で真っ赤に染めていた。
少しでもカメラから逃れようと背を向けると、その場でうずくまって身体を縮こませてしまう。
その姿が男たちの獣欲を駆り立てていく。
「てめぇの詫びる姿を撮影しようっていうんだよ、あとで知りませんでしたって言えねぇようになぁ」
「さぁ、それじゃぁ、続いて残りの下着も脱いでもらおうか」
カメラで撮影される中で、さらに下着を脱ぐことを強要されてしまう。
いくら覚悟を決めたからと言って、若い娘がおいそれと出来ることではなかった。
彼女が躊躇している間に大男によって、足元に落ちていた衣服は全て回収されてしまう。
「あぁ、返してッ」
「全てが終わったらな。ほれ、時間も勿体ないからな、さっさと脱ぎやがれ」
「やはり、俺たちに脱がされるのがお好みか? それなら喜んで手伝ってやるぜ」
肌を晒されたことで、彼女の強さに陰りがみえていた。
物怖じせずに大男にも立ち向かっていた彼女が、今ではにじり寄ってくる男たちに後ずさりしている。
その羞恥と困惑に苛まれた表情には、常に落ち着いた様子をみせていたオールバックの男も高ぶりを感じているようだ。
舌なめずりして、口端がつり上がっている。
「おいおい、お前たち、そう急かしたら可哀そうだろう?」
綾乃さんに迫る二人組を止めた男だが、それは善意によるものではなかった。
手にしたナイフの向きを変えると、切っ先をボクの衣服に当てがる。
(――え?)
首元に差し込まれた刃が下ろされると、さしたる抵抗をみせずに布地が縦に切り裂かれてしまう。
「――なッ!? なにをしているのよッ」
「安心しろ、肌には傷つけちゃいねぇよ」
驚きの声をあげた綾乃さんに応えながらも、男は刃をさらに下げていく。
恐ろしい切れ味を見せるナイフによって両断された衣服だけど、その隙間から見える素肌には確かに傷はついてはいなかった。
それでも綾乃さんの顔色を変えさせるには十分すぎる効果があった。
「あぁ、気にするな。ただの時間つぶしだよ。あまり待つのが好きじゃないんでなぁ」
更に衣服に刃を当てボロ布へと変えていく。
恐怖で震えながらも、それでも綾乃さんに心配かけまいとボクは必死に声を上げまいと我慢する。
その様子にオールバックの男は、残忍な笑みを浮かべている。
「おー、おーッ、健気だねぇ。だが、そう震えていると間違って身体も斬ってしまうぞ」
男は根っからのサディストなんだろう。怯えるボクの様子に笑みを深めて、次々と衣服を切り刻んでみせた。
その意図を理解した二人組も、綾乃さんに手を出すのを止めると距離を取っていた。
(くそッ、卑怯だぞ)
衣服を切り刻まれていく光景に綾乃さんの顔はみるみる蒼白になっていくのがわかる。
直接、手を出さずとも彼女を追い詰めていく男の狡猾さに、怒りが沸々と込み上げてくる。
そして、それに何もできずにいる自分がさらに腹立たしい。今度ばかりは堪えることもできずに、悔しさに涙がこぼれてしまった。
「や、やめてぇッ」
綾乃さんの悲痛な叫び声によって、衣服を切り刻む刃はようやく止まった。
「お願いだから、止めて下さい……」
涙をポロポロとこぼしながら、彼女は必死に訴えてきた。
「なら、素直に下着も脱ぐんだな?」
「……はい」
男の問いかけに、そう応えるしか綾乃さんには選択肢は残ってはいなかった。
三脚にセットされたカメラの前で、彼女が下着に手をかける。
背中に手をまわしてブラジャーのホックをゆっくりと外す。圧迫から解放された途端、カップを弾き飛ばすようにして乳房がこぼれ落ちてくる。
それを左腕で抱えるようにして隠すものの、その量感ゆえに隠しきれない肉丘の盛り上がりがかえって卑猥に見えてしまう。
カメラがズームされて、その胸の谷間を克明に記録していく。恨みがましく見上げる綾乃さんだけど、それ以上はされるがままだった。
「いいぜぇ、なかなかのエロさだ。さぁ、次はショーツにいってみようか」
「……はい」
左腕で乳房を隠しながら、右指がショーツのサイドへとかけられる。
しかし、少し下げられたところで動きは止まり、瞼を閉じた彼女のきつく結ばれた唇が震えている。
「どうした、早くしろッ」
大男に急き立てられて、綾乃さんが悔しそうに唇が噛んでいた。
羞恥で顔だけでなく耳までも真っ赤に染め、
眉根をよせるーている。そんな弱々しい姿の彼女が、チラリとボクへと視線を向けると、さらに赤面を濃くしていった。
「おい、焦らすのはいいが、俺は気が短いぞ」
オールバックの男がナイフを片手に語尾を強めると、ついに観念する。瞼を閉じたまま指を再び下げ、聖域を隠していた最後の布地を自ら下ろしていった。
水色の薄い布の下から、綺麗にカットされた光沢ある黒い茂みが顔をのぞかせると大男たちは興奮で顔を上気させて、目を輝かせていた。
そうして、羞恥にあえぐ綾乃さんの姿を大男が囃し立て、ロン毛の男がカメラで記録していく。
「へへへッ、焦らしやがって、本当はお前も見られて興奮してるんじゃねぇのか?」
「ば、馬鹿なことをいわないでよッ」
瞼をあけて陰湿な大男を睨みつける綾乃さん、その顔は恥ずかしさに今まで以上に赤くなり、耳まで染まっている。
そうして水色のショーツが太ももを滑りおりていき、足元から抜かれると、奪うようにして大男がショーツを手にしていた。
「へへへッ、こいつも預かっておくぜ」
大事そうにショーツを透明な袋に入れると、足元に置いてあるバッグへとしまう。奇妙なことに大男は回収した彼女の衣服もすべてを細かく分類して、同じように袋詰めにしてしまっていた。
大柄な肉体に似合わず、細かな作業も得意なようで、意外な一面を見たきがした。
「あぁ、恥ずかしい……」
身を覆うものがなくなり、恥ずかしげにする綾乃さん。その裸体を月明りが照らし、白い柔肌を幻想的に輝いて見せている。
無駄なく絞り込まれた肢体はほっそりとして見せる。それでいて丸みも維持して女性らしい魅力も損なっていない。
官能美を体現したかのような彼女の裸体に、その場にいた誰もがしばし感嘆して、小さく唸っていた。
「いやはや、これは想像以上に嬉しい誤算だな、これはタップリと稼がせてもらえそうだな」
背後にいるオールバックの男の呟きが聴こえてきた。
欲情した目をする二人とは異なり、その男の目はひどく冷たい光を宿して、目の前の綾乃さんを品定めをするように見つめていた。
男たちの無遠慮な視線を注がれて、腕で乳房を隠し、スラリと長い美脚をくの字に曲げる。
だが、彼女の豊かな乳房はこぼれ落ちんばかりで、かえってエロティックに見えてしまうのは皮肉なことだった。
「み、見ないで……」
その言葉はボクに向けられた言葉に感じた。
恥ずかしげにする綾乃さんの裸体にゴクリと生唾を飲み込むと、釘付けになっていた視線をどうにか引き剥がす。
だが、目ざとくボクと綾乃さんを見ていたオールバックの男は、彼女を嬲るのに有効と判断したのだろう。
ボクに彼女を見るように強要してきたのだった。
「……うぅ、ごめん」
「うぅ、恥ずかしいわ……」
お互いに赤面して俯いてしまう。だが、視線を外すことは許されていなかった。
いまや全身を紅潮させ、ピンク色に染めてしまった綾乃をボクは美しいと感じてしまっていた。
(ここにいるのがボクだけなら……)
視界にはいる男たちの姿に苛立ちを覚えてしまう。
男たちだけでなく、カメラの映像を闇サイトの会員らも見ることになるだろう。
ボクの中で、驚くほど独占欲が湧き上がってくるのだった。
「さぁ、それじゃぁ、さっそく土下座して謝ってもらおうか……そうだなぁ、謝罪の言葉はこんな感じに言ってもらおうか」
ロン毛の男に耳打ちしてくるセリフに、顔を伏せていた彼女の顔に跳ね上げると、驚きの表情を浮かべ、さらに顔を赤らめるとギッと男を睨みつける。
そこへ更になにかを耳打ちされると、ガックリと首をうな垂れて力なく頷いていた。
「さぁ、カメラに顔を向けて教えた言葉を言うんだよ」
「わ、わたし、広瀬 綾乃は……お、女の身でありながら……格闘技をつかい……おふたりに歯向かい……ました、誠にも、申し訳……ありません」
屈辱に唇を震わせて、それでも必死に言葉を絞り出していく。だけど、男たちは、なかなか満足しようとはしなかった。
繰り返させ、何度もやり直しを強要されて、彼女も泣く泣くそれに従った。
「おらぁ、もっと声を大きく出だせよ、じゃねぇと、何度でも頭からやり直させるぞぉ」
「うぅッ……はい、私、広瀬 綾乃は、女の身でありながら格闘技を使い……お二人に歯向かいました、誠に……申し訳ありません」
「よ―し、そのまま躊躇せずに、どんどん続けろやぁ」
「その謝罪に……今夜は、おふたりに……お詫びを……させて……ください」
「ほぅ、どんなお詫びだぁ?」
「綾乃は……電車で、お二人に触られて……実は……感じていたんです。綾乃は、男性に無理やり……さ、されたい願望がある……い、淫乱な……マゾです……ど、どうか……お好きなように……お嬲り、調教して下さい……おねがいします」
次々と追加されていく屈辱的の言葉。覚え込まされたセリフを綾乃さんはカメラに向かって何度も言わされ続けた。
少しでも言いよどんだり、つまずくと最初からの繰り返しだ。口惜しさに唇を震わせて、切れ長の目から溢れ出した涙が頬を伝ってしたたり落ちている。
それでも、少しでも早く終わらせようと健気に彼女は耐えてみせた。
そうして、ようやく最後に赦しをえられると、深々と頭をさげた土下座のまま、彼女は耐えきれずに肩を震わせて嗚咽していた。
「へッ、ざまぁみろ」
対する男たちは、生意気な女にようやく苦汁をなめさせたと嬉しそうだ。それでもこれは彼らが求めていることの序の口でしかないことだった。
顔を見合わせると男たち邪悪な笑みを浮かばせる。
「ヘヘヘッ、そんなにお願いされちゃぁ、しょうがねぇなぁ、詫びを受け取ってやるよ」
「合気道で男を軽々と投げ飛ばしていたインテリ女子大生が、実は無理やりされるのが好きなマゾとはねぇ……人は見かけによらないものだよなぁ」
「まったくだ、その言葉に偽りがないか、じっくり検分してやろうぜ」
そう言うと、大男はワゴン車の後部荷台から大きなバッグを運び出すと、その中身を土下座したまま肩を震わせている彼女の前へと並べていく。
地面に置かれていったのは黒革製のゴツゴツとした道具の数々だ。そのひとつを手に取り、彼女の背後にまわって両腕を捻りあげる。
大男が手にしていたのは拘束具だった。背後で組まされた両手首に素早く革製の手枷が巻きつけられていった。
「――な、なにをするのッ、ちゃんと謝罪したでしょッ」
不意をつかれてハッと顔を上げた時には、手枷が連結されて両腕の自由が奪われていた。
必死に拘束から逃れようにも、カチャカチャッと金具が音を立てるだけで、素肌にはりつくように拘束具が喰いこんでくる。
怒りを露わにする彼女を前にして男たちはせせら笑う。
「約束が違うわッ」
「謝罪として調教して欲しいといったのは、お前さんだろう? カメラにもバッチリ記録してあるぜ?」
「騙したわねぇ」
「人聞きが悪いなぁ。なぁに、俺たちを満足してくれさえすれば解放するのは本当だぜ」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた男たちは、後ろ手に拘束した綾乃さんを押さえつけると、さらにり拘束をほどこしていくのだった。
【5】奴隷装束
いくら綾乃さんが強いといっても両腕を背後で拘束された状態では、男ふたりに勝てる訳もない。
かんたんに組み伏せられてしまうと、細首に深紅の首輪が巻かれる。鋲が並ぶ肉厚の首輪で、四方に連結用のリングが備え付けられている。
「――ぐぅぅ」
「へへッ、なかなか首輪も似合ってるじゃねぇかよ」
「もっと奴隷らしくし飾り付けてやるからな」
「ふ、ふざけないでッ。誰が奴隷なんかになるもんですかッ」
「いいねぇ、そういう強気な女を躾ける方がサイトではウケがいいんだよ」
背後で繋ぎ合わされていた手枷が一度外されると、今度は頭の後ろで組まされるように連結される。
さらに、それを首輪の後ろにあるリングにも繋ぎ留められて、腕を動かせなくされてしまうのだった。
「は、外しなさいよ。卑怯者ッ、女ひとりに自由を奪わないと立ち向かえないの?」
「あぁ、お前さんの強さは把握しているからなぁ。常に拘束はさせてもらうぜ」
「それに奴隷調教といったら、拘束もつきものだからな。すぐに拘束されただけで股間を濡らす身体にしてやるよ」
仰向けにされた彼女の上にドカリと大男が座る。でかい尻で彼女の双乳を押しつぶして、その感触を楽しんでいる。
体格差もあり、今の彼女では振り払うこともできない。大男の下でジタバタする彼女をロン毛の男が悠々とさらなる拘束をしていった。
男が手にしたのはサイハイブーツだ。光沢のある黒いエナメル生地の太まで覆うブーツを、器用に彼女にはかせていく。
爪先立ちするような高いピンヒールで、正面に編み上げの紐が並んでいる。それを丁寧に締め上げていくと、脚へと密着を強めていき、太ももの肉を盛り上げてみせる。
さらに、足首と、太ももに枷も装着して、ガニ股になるように開脚棒まで装着してしまう。
「よーし、これで脚はいいぜ」
「なら起こすぞ」
大男が軽々と横になっていた綾乃さんを抱き起してみせる。
手足の自由を大幅に制限された彼女は、慣れないピンヒールにバランスを崩しそうになるのを必死に堪えた。
今の彼女は両腕を頭の後ろで組まされ脇の下をさらし、膝の開脚棒でガニ股姿で股間の秘部を隠すこともできない。
「こ、こんな……」
男たちの視線から逃れることもできず、恥ずかしい部位をさらし続けさせられる。
ボクもそんな彼女の姿を見るのは忍びなかったけど、羽交い絞めにしているオールバックの男に見るように強要されていた。
そんなボクの視線に彼女は恥ずかしそうに視線を外す。
「なに言ってやがる。まだまだ、終わってないぜ」
さらなる拘束具を手にして迫る男たちに、綾乃さんは眉根を寄せる。
「あぁ、これ以上、なにを……」
今の状態では歯向かうことも逃げることもできない綾乃さんに、男たちが次に用意したのは、エナメル製のボンデージベルトだった。
複数の金具とベルトによって六角形に組み合わされたもので、彼女の身体に巻きつけると亀甲状に締め上げていった。
「へへへ、変態女子大生らしい姿をバッチリとカメラに記録してやるよ」
「あぁ、こんな姿は嫌ぁぁッ、撮らないでぇぇぇッ」
テラ光る黒いボンデージベルトが綾乃さんの裸体に喰いこみ、乳房を根元から絞り出し、細腰をさらに締め上げる。そうして肉体を卑猥に変形させていた。
さらに股間を縦にまたがるベルトにいたっては、備えられたリングが薄溝に喰い込んで膣奥まで露わにして、染みひとつない尻肉を押し広げて肛門まで無防備に晒してしまっている。
イヤイヤと首を振る奴隷姿の綾乃さんの黒髪を大男がわし掴みにして、正面のカメラへと強引にけさせる。
そうして、涙を頬を濡らす彼女の悲しき姿を、冷たく光るレンズに映り込ませるのだった。
「なんだ? 念願が叶って、うれし涙かよ」
「だがなぁ、まだ悦ぶには早いぜ」
「あぁぁ、は、離れてッ、くぅぅ、触らないでよ」
背後から大男が抱き着いて、綾乃さんの双乳に指を埋めてきた。芋虫のような太い指が、ロケット状に突き出された乳房を握りつぶし、先端の乳首を摘みあげる。
正面からはロン毛の男がキスをせまり、慌てて顔を反らす彼女の横顔や首筋に舌を這わせていった。
ふたりの男にまとわりつかれ、好き勝手に身体を嬲られる。電車での痴漢行為のように今回は振り払うこともできず、それに耐えるしかないのだった。
「あぁぁ、や、やめ……あぁ、そんなところ、触らないでぇぇ」
「なんだよ、もう濡れてきてやがる」
「じゃじゃ馬の癖に、やっぱりマゾの素質がありやがるんだなぁ」
「ち、違うッ、私はマゾなんかじゃ……」
「なら、これはどういうことだ?」
ロン毛の男が秘部をまさぐっていた指先を、綾乃さんに突き付ける。
たしかに、その指先は濡れ光っていた。
「うあぁ、止めなさい……」
「ほれ、ほれ、電車の中でも俺らに触られて実は気持ちよかったんだろう?」
「ふ、ふざけないでッ、そんな訳、ないでしょうッ」
憤辱で顔を染め上げながら、綾乃さんが唇の隙間から白い歯を覗かせて悲痛に叫んでいた。
「いまさら、ジタバタするな。あきらめて快楽に身を任せたらどうだ?」
「あぁ、こんな騙しうちなんて卑怯よ」
相手を睨みつけるものの、秘部をまさぐられる感触にグッと耐える姿は凌辱者の興奮を煽るばかりだ。
男たちに全身のまさぐられて、甲高い悲鳴を上げさせられてしまう。
その様子に男たちは顔を見合わせてほくそ笑んでいた。
ロン毛の男は手には密かに忍ばせた小さなプラスチック容器が握られていた。
綾乃さんの秘部をまさぐる前に、その中身の軟膏を指先ですくい彼女の粘膜へと塗りつけていたのだ。
それは彼らが愛用する催淫クリームであった。闇サイトの会員である医療関係者から提供されたもので、粘膜に塗りつけると感度をましていく効果があるらしい。
他に使用しているクスリに比べると効果は強くはないが、持続時間が長いのが特徴だった。
相手に気づかれずに興奮状態へと導くのには効果的で、何人もの女で効果も確認済みだとオールバックの男が語って聞かせてみせる。
「あぁ、なんで、あぁン、こんな奴らに……」
「嫌がってみせているくせに、まんざらでもなさそうだなぁ」
「ち、違うッ……あぁぁ、離れてぇ」
徐々に蕩けさせられていく肉体に戸惑っているようだ。粗暴そうにみえる外見ながらも男たちの愛撫は優しく丁寧に感じられる。
そして、女体に実に理解しており、ツボを把握した的確な責めを仕掛けてくるのだった。
闇サイトでみた会員たちの調査では、綾乃さんが異性との交際経験はあるものの性交にいたった形跡はなかったと報告されていた。
それを確かめるように、彼女の肉体反応を探っているのだろう。初々しい反応の数々に、処女である確信を得ているようだった。
「イイ感じに蕩けてきたなぁ」
掌まで濡らす愛液の量にニヤリと不気味な笑みを浮かべると、スキンヘッドの大男に彼女を羽交い絞めにさせて固定すると、新たな道具へと手を伸ばす。
一つはピンク色をしたタマゴ型のピンクローターだった。電源ボックスをブーツの口に差し込むと、コードで繋がるローターを股間へと持っていく。
股間をまたがるエナメル製のボンデージベルトの隙間にローターを差し込むと、陰核へと刺激を与えられるように位置調整していった。
続いて取り出したのはカップ状のふたつの器具はニップルドームと呼ばれるものだ。内側には回転式のブラシが備えられていて、それを両乳房にセットすると、ブラシが乳首を刺激する仕組みだ。
それもボンデージベルトで固定すれば容易には外れなくなる。
「こういうオモチャも初めて経験するんだろう?」
「――ヒッ」
スイッチを入れられると大男に羽交い絞めにされていた綾乃が顎を跳ね上げる。
三つの淫具がモーター音を響かせて、敏感な部位を刺激しはじめたのだった。
「や、やめ――あぁぁぁぁぁン」
彼女が本当に処女であるのなら、そうした道具を使っての刺激もはじめてだろう。
大男の腕の中で激しく暴れ、拘束された身体を身悶えさせられる。
そうして、淫具で責められながら男たちも愛撫を再開する。
「そらどうだ、気持ちイイだろう?」
「あぁぁン、気持ちよく……ないわよ」
恥辱の最中、男たちの言葉を否定するものの、その愛撫を受けて綾乃さんは切なげに身をうねらせる。
そのたびにニップルカップを装着された双乳が派手にはずんで、男たちの目を愉しませていた。
そうして、三十分以上も続けられただろう。淫具が止められた時には彼女は荒く息をつき、大男に抱えられるままにグッタリとしていた。
リングを咥えこまされた股間から、止めどもなく愛液が流れ出し、太ももを派手に濡らしている。
そんな彼女にロン毛の男は口枷を噛ませた。ボールギャクと呼ばれる赤い樹脂製のボールを咥えさせるもので、備えつけのベルトが後頭部で結わえられる。
「さて、下準備もすんだし、そろそろ場所を移動しようか」
男の言葉に放心していた綾乃さんが顔をあげる。
「ひゃ、ひゃんへ……」
「ん? あぁ、なんでって顔だな。そりゃ、まだ俺たちが謝罪に満足してないからに決まっているだろう? だから、もうしばらく付き合ってもらうぜ」
約束とは異なる男の言葉に、綾乃さんは目を見開き抗議する。だけど、その言葉は口枷によって意味のない呻きにしかならなかった。
そんな彼女の首輪にリードを結びつけると、まるで犬の散歩のように手綱を引いて歩くように強要する。
当然のように抗おうとする彼女だけど、手足は拘束されてガニ股姿だった。踏ん張ることもできずに歩かされる。
それに、少し手も抵抗の気配をみせると、背後から大男がスパンキングしてきたのだった。バラ鞭と呼ばれる複数の房をそなえてた鞭を、容赦なく綾乃さんのお尻へと振り下ろした。
――パシッ……ピシッ……
肉を叩く乾いた音が響き、それに綾乃さんの苦痛の呻きが続く。みるみる白い尻肉に朱い鞭痕がいくつも刻まれていった。
その上、男たちは装着していた淫具を再び稼働させもするのだった。
「ん、うあぁぁぁ……」
甘い刺激と苦痛を交互に受けて、奴隷姿の彼女は首輪のリードを引かれて歩かされる。
その非現実的な光景をボクは唖然としてただ見つめることしかできなかった。
そうして、まるで馬の調教のように広間をグルグルと練り歩かされた彼女は、最後にはボクの乗せられているワゴン車の方へと連れて来られた。
後部ハッチが開かれて、彼女がその中へと誘導される。
「さぁ、乗るんだよ。愉しい場所に案内してやるぜ」
「ひ、ひやぁぁぁ」
最後の力を振りしぼり、乗車を拒もうとする綾乃さん。
そんな彼女の背後に立っていたスキンヘッドの大男が不気味に笑うと、軽々と彼女を抱え上げて荷台へと放り込んでしまう。
即座にロン毛の男が用意されていた鎖で、彼女を車内に設置された止め金具を利用して繋ぎ留めていった。
次々と拘束具に繋げられる鎖が車内に張り巡らされていく。その光景はさながら蜘蛛の巣に絡め取られた獲物のようであった。
完全に身動きをとれなくされた彼女の顔を覗き込むと、ロン毛の男は不気味に笑う。
「さぁ、アジトについたら奴隷として本格的に調教してやるからなぁ、楽しみにしてろよ」
「んん――ッ」
そう告げられて激しく呻く彼女だったけど、その頭部に黒い布袋をかぶせて視界すら奪ってしまうのだった。
その光景はシート越しに見させられて、ボクは顔面を蒼白にしていた。
謝罪という言葉を使って綾乃さんを騙していた彼らは、やはり彼女をサイトでみた女性たちのように奴隷調教する気のようだ。
「約束だからな、お前さんは開放してやる」
その予測どおりにボクの頭にも黒い布袋がかぶせると、手足に巻かれた粘着テープにナイフで切れ込みをいれた。
そうして、車外へと突き飛ばされたボクは、受け身も取れずに地面へと叩きつけられる。
「――うぐぅ」
「いいか? 今夜のことは誰にも言うなよ。常にお前さんの行動は俺らに監視されてるからな」
その言葉を裏付けるようにボクと綾乃さんの親が不在なことや、ボクが頼りそうな人物の名前をひとり、ひとりを上げて釘を刺してくる。
「もし、警察や誰かに話したら、大好きな綾乃とは二度と会えないと思っておけ」
頭上から降り注ぐ男の言葉に、ボクはただ頷くことしかできない。
「よーし、いい子だ。素直にこちらに従うなら、美味い想いもさせてやる。家に帰ったら大人しく待ってろ」
その言葉を最後にはスライドドアが閉じられる音が聴こえ、綾乃さんを乗せたワゴン車はゆっくりと走り去ってしまう。
どうにか粘着テープを解いたボクは、静まり返った周辺の様子に呆然としていた。
その後は、どうやって家に戻ったのかも記憶が定かではなかった。
連れ去られた綾乃さんが心配で、何度も警察に連絡しようとして、寸前でコールボタンを押せずにいた。
ーー常にお前さんの行動は俺らに監視されてるからな……
その言葉がハッタリとは思えなかった。そのために綾乃さんと二度と会えないかしれないと思うと、言いようのない恐怖に襲われてしまうのだった。
「あぁ、ごめんなさい……ごめんなさい……」
勇気を振り絞れず、ガタガタと震えだしたボクは現実から逃れるように鍵をかけた自室へと引きこもると、布団を被りながら、ひたすら謝罪の言葉を唱えているのだった。
【6】淫極へと囚われる彼女
綾乃さんを連れ拐われて、ボクはどうしようもないほど無力感に苛まれていた。
どうするべきかわからず、相談できるお父さんも、綾乃さんのお母さんも出張で不在だ。
仮に他の人に助けを求めるにしても、主だった人物は男たちに把握されてしまっていた。
(おいそれと連絡を取ろうものなら、どうなるこか……)
動けずにいる自分の無力さに、悔し涙があふれてしまう。歪む視界では、痛いほど握られていた拳から血が滲み出てしまっていた。
(綾乃さん……今、どこにいるの……)
先ほどまでの光景の数々がフラッシュバックとして脳裏に浮かび上がって消えていく。
彼女の柔らかな白い肌に次々と黒革の拘束具が纏わりつき身体を縛めていく。
それによって理知的で凛々しかった彼女が、哀れで弱々しい奴隷へと変えられていった。
男たちの欲望を吐き出す対象として、このままではマゾ奴隷に変えられてしまうに違いない。
(ボクさえ捕まっていなければ……普段の綾乃さんなら、あんな男どもになんか負けなかったはずなのに……)
悔しそうに彼らに従う彼女の表情が脳裏に浮かぶ。
ボクにとっては綾乃さんは、ずっと憧れの存在だった。勉強は常に学校ではトップだったし、その美しさはも際立っていた。
そんな彼女が、品もなくその気になれば地べたに這わす事ができたであろう男どもの言いなりにならなければならず、キリリとした顔立ちを悔しそうに歪め、羞恥で涙を流す姿を見て、激しいショックを受けていた。
――それなのに……
彼女の窮地を目にして、心臓の鼓動はどんどん激しく鐘打ち、息をするのも苦しくなっていた。
それと同時に、脊髄を突き抜けて脳を震わせるようなドス黒い悦楽を確かに感じてしまっていた。
背筋をゾクゾクと震わせて、頭が霞がかかったようにボ―っとしてくる。断続的に繰り返されるフラッシュバックによって理性が麻痺してくるようだった。
ーーどれくらい、そうしていたのだろう……
気がついた時には、深夜の三時をまわっていた。
一瞬、全ては夢だった――そう思いたかった。
だけど、床に転がっている粘着テープの残骸と頭に被せられていた黒い袋が、あれが現実だったのだと訴えている。
(あぁ、じゃぁ……やっぱり綾乃さんは……)
理性では、やはり警察を頼るべきだと訴えていた。
それなのに、臆病者のボクには、行動に移すだけの勇気を出せずにいるのだった。
姿の見えない闇サイトの会員たちが、どこで目を光らせているかわからない。オ―ルバックの男の警告を無視した場合、本当に綾乃さんと二度と会えなくなるかもしれないと思うと、不安と恐怖で身体が震えてしまう。
(だけど、ボクは期待しているのかも知れない……)
自分の知る強くて凛々しい綾乃さんなら、決して男たちに屈したりはしない。そう思いたいのだった。
そうでもしないと、心の奥底で堰き止めている、何かが溢れ出そうで怖かった。
「……あれ? メッセージの着信がある」
端末の表示に気がついて確認すると、綾乃さんからのメッセ―ジを届いていた。
(……ライブ配信のお知らせ?)
慌てて確認した内容を、はじめは理解できなかった。だけど、一緒に記載されているアドレスが、あの闇サイトのものであると気がつくと血の気が引いていく。
脳裏には闇サイトに並んでいた調教動画を浮かんでいた。
「うぅ……まさか……」
心臓が再び早鐘のように激しく鼓動を繰り返し始め、ダラダラと汗が吹き出てくる。
(あぁ、パニックになったらダメだッ)
ボクが綾乃さんと道場に通いながらも、上達を諦めた理由がこれだった。
心が激しく動揺するとパニック状態になってしまい、物事が正しく考えられなくなってしまう。
軽い練習などでは問題ないのだけど、極度のストレスがかかると発症しやすいらしい。
(慌てるな……まずは、呼吸を落ち着かせよう)
目を瞑り深呼吸をすることで、少しづつ動揺する心を落ち着かせようとする。それでも、今回はなかなか成功せずに、時間だけが過ぎていく。
(落ち着け……落ち着け……)
不安でいっぱいな気持ちを脇に置いて、少しづつ心を軽くするイメージを描く。
そうして、徐々に早鐘のように脈打っていた鼓動も落ち着きを取り戻していった。
「ふぅ……大丈夫だよ……綾乃さんなら大丈夫だ……」
祈る気持ちで闇サイトにアクセスすると、震える指でカ―ドに記載されていた特別会員用パスワ―ドを入力してみる。
(あッ、入れた……凄い、全ての有料コンテンツが見れるようになっている……)
切り替わった画面で真っ先に目に入ったのが綾乃さんの顔写真だ。
『今回のタ―ゲット:広瀬 綾乃』
大きく書かれた文字の下にあるのは、彼女を隠し撮りした写真だろう。
抜群のスタイルで街中を歩く颯爽とした姿、誰かに向けて少し照れた表情を浮かべる可愛い姿、袴姿で男を投げ飛ばしている凛々しい姿と、日常の彼女を撮った画像が何枚も貼り付けられていた。
そして、その後には『捕獲完了』の文字と共に、昨夜の連れ去られた下着姿で拘束された彼女の姿があった。
まるで釣り上げた大魚で記念撮影をするかのように、スキンヘッドの大男が満面の笑みで鎖を高々と持ちあげている。
それによって首輪を吊られた綾乃さんは、ロン毛の男に艶のある綺麗な長髪をわし掴みされ、顎をガッシリと掴まれて、カメラへと顔を向けさせられていた。
アイマスクと口枷で表情は隠されているけど、歪められた凛々しい眉毛が彼女の心情を全てを表していた。
(あぁ、綾乃さん……)
狩猟した獲物のように詳細な測定値まで記載して彼女を晒してあって、サイトの人間が彼女を人として扱ってないのが嫌でも伝わってくる。
タ―ゲットNo.069
広瀬 綾乃、19歳
国立大学法学部1年
身長 168センチ
体重 46キログラム
バスト 90センチ
ウエスト 52センチ
ヒップ 85センチ
ルックス、ボディ共に特Aの大物
(くそッ……)
女を牝として扱い、狩猟のタ―ゲットとして愉しんでいる。
そんな男たちに対し、やり場の無い激しい怒りが身体の奥より燃え上がる。握りしめられた端末がミシミシと悲鳴をあげていた。
(くぅ、少し落ち着け……)
目を瞑り、何度も深呼吸を繰り返して荒れくるう心を落ち着かせようと努力する。
そうして、どうにか焦る気持ち押し止めながら、画面をスクロ―ルさせると点滅する『獲物お披露目』の文字が目の入る。
震える指で、なんとか画面を先へと進めていくのだった。
再生された映像に映ったのは、窓もない四方をコンクリ―トで囲まれた薄暗い部屋だった。
高い天井からは何本もの鎖が垂れ下がり、床や壁には所々に拘束用の金具が埋め込まれていて、照明を浴びて鈍い光を放っていた。
壁際には拘束用の器具や棚に並べられた用途不明な道具が並び、西洋の拷問部屋を彷彿させる異様な雰囲気を醸し出している。
「おらッ、こっちに来いッ」
ライトで照らされる部屋の中央に、黒のビキニパンツ姿になったスキンヘッドの大男が登場する。
その手に握られた鎖が引かれると、ヨロヨロとふらつく足取りで拘束された綾乃さんが姿を現した。
拐われた時と同様に、黒のニ―ハイソックスと白の下着姿で拘束された姿だった。
足元が覚束ないのは、アイマスクで視界が塞がれているからだけど、そうでなくても両腕はアームバインダーという拘束具で自由を奪われて、履かされたブーツは高いピンヒ―ルなので転ばない方が難しいくらいだった。
「へへへッ、移動中も逝きまくったから、じゃじゃ馬も少しは大人しくなったよなぁ」
鎖を手繰り寄せられて、足枷を繋ぐ鎖が床に擦れてジャラリと大きな金属音を響かせる。
背後からまとわりついた大男によって、ブラジャ―の上から荒々しく乳房を揉まれてしまう。
「うぅぅ……」
口枷を噛まされた口元から嫌悪の呻きを漏らしながら、男の手から逃れようと身体を揺する。
でも、その抵抗は心なしか弱々しく感じられた。
本当に大男が言った通りに、移動中の車でも玩ばれたのだろうか。言われてみればショ―ツの白い生地は全体が激しく濡れていて、黒い茂みが透けて見えてしまっていた。
それでもまだ、彼女からは反抗の意思が潰えていないことが救いだった。
(やっぱり、綾乃さんはこんな卑怯な連中なんかに負けないんだよ)
自分に言い聞かせるように、何度も心の中で繰り返す。
そうしている間にも、大男によって綾乃さんは拘束を変えられていた。
足枷同士を繋げる鎖が外されて、大股になるよう脚を開かされる。それぞれの足枷が床の金具に繋げられていく。
そうして両脚が固定されると、両腕を背後で包んでいたアームバインダーから解放されて、代わりに天井から鎖で垂れ下がる枷に、両手首がはめられてしまう。
――ジャラジャラジャラ……
ゆっくりと鎖が巻き上げられて、両腕が引き上げられていく。そのまま、どうにか爪先立ちできる高さまで吊り上げられてしまった。
ちょうど人の字になるよう拘束された彼女は、身動きのとれない状態にされて、カメラの前にさらされた。
「さぁて、電車での続きといこうじゃねぇかよ」
舌舐めずりしたスキンヘッドの大男が背後から密着してきた。そのグロ―ブのような厚くて大きな手が彼女のヒップを撫ではじめる。
電車の時はスカートの布越しだったけど、今度は直接の地肌だ。秘部を守るのは下着の薄い布地しかない。
光沢あるレース生地の表面を男の指がなぞり、その肉の弾力を指先で確かめていく。
「うッ、うぐぅぅぅ」
「へへへッ、今度は電車の時みたいに手首を捻り上げれねぇだろう? 好き勝手に身体をいじられて悔しいよなぁ、それともマゾ女なら実はこうやって触られるのを期待してたのかよ」
「んん――ッ」
拘束された彼女が反抗できないことを良いことに、電車での痴漢行為の再現とばかりに身体を弄っていく。
両手でのガシリと尻肉をわし掴みにして、荒々しく揉む一方で、その無防備な耳元に舌を這わせてみる。
パレッタを外された艷やかで長い黒髪が、嫌がる身体の動きに合わせて緩やかに舞う。そのたびに漂う香りに大男が頬を緩めていた。
ボクも嗅いだシャンプーの香りを、大男も堪能している。その事実がボクの心を不愉快にさせていた。
電車のように周囲を気にする必要もないから、大男の動きも大胆だ。
彼女の細い身体を背後から抱きしめて、パンツの膨らみをお尻の谷間に擦りつけながら、唾液を塗りつけるようにして白い柔肌を濡れ汚していった。
「むぐぅッ、うッ、うぅ……」
「へへへッ、耳が弱いみてぇだなぁ、ほれ、舌を挿れたらどうよ」
熱い吐息を耳元に吹きかけながら、嫌がる彼女の耳へと長い舌先を挿れていく。
意外に繊細な舌さばきで刺激を与えていくのだけど、美女に抱きついた強面の大男が美味そうに耳をすする姿は嫌悪の対象でしかない。
(でも、実際に耳が弱いのは本当みたいだ)
執拗な耳責めを受けてプルプルと脚が震えだした。次第に踏ん張りが効かなくなって、そのたびに身体が沈んでは、両腕を吊るす鎖がキシキシと軋んむ音を立てていた。
「へへへッ、尻も絶品だったが、次はお胸を確かめさせてもらうぜぇ、電車では触る前に邪魔されたからなぁ」
普段から肌を露出させる服を好まない彼女は、着痩せして見えるように意識してたのだと思う。
ブラジャーにおさめられた胸の膨らみは、深い胸の谷間をつくるほどで、そのボリュームには驚かされる。
それを背後からまわされた大男の両手が厶ンズと掴む。
「へへへッ、想像以上に大きいぜぇ、それに弾力も申し分ねぇなぁ」
掴まれた乳房はグローブのように大きな掌にも納まりきらない。指を埋めてユサユサと量感たっぷりに揺らせて大男を喜ばせた。
「よぉし、そろそろオッパイの方も披露させてもらうぜ」
「ん――――ッ!!」
逃げることもできずに、ブラジャ―のカップが強引にずり下げられる。窮屈に押し込まれていた乳房が開放されて、ピンクの乳輪が露わになってしまった。
吊鐘型の綺麗な曲線を描いた双乳は、重力に負けること無く見事なラインを維持して、乳首をツンと上向かせていた。
その乳首を指で摘まれると鼻先から甘い響きを漏らしてしまう。徐々に硬さをもって、硬く尖りだす乳首が彼女の感度の良さを物語っていた。
切なそうに腰が揺れだして、それが押し付けられた男の股間を刺激して相手をますます悦ばせてしまっていた。
「おうおう、やっぱり内心では男に触られたかったんだろう、どうやらマゾで変態女っていうのは本当らしいなぁ」
高々と両腕を吊られた綾乃さんに、スキンヘッドの大男が貼りついて、魅惑のボディを貪っていた。
白い柔肌を堪能するように、再び舌が這わされると、二の腕から脇の下へと舐めると、そのまま脇腹を通って太ももへと抜けていく。そうやってナメクジが這いまわったように全身に唾液の痕を残していった。
アイマスクを装着されて見えないから、普段よりも感覚が研ぎ澄まされているようだ。だから余計に舌の動きに意識が向いてしまっていた。
相手は嫌悪するべき悪漢なのに、その舌にゾクゾクと背筋が震えさせられる。それは嫌悪のためだけでなかった。
「うぅッ……うふぅぅ」
噛まされた口枷の下で呻きをあげながら、人の字に拘束された裸体が揺すられる。
だけど、激しく動きが制限されていては相手を振りほどくのは叶わない。
それでも諦めない彼女だったけど、どうしても体力にも限りはある。徐々に動きが緩慢になってきて、それがまるで腰を振って愛撫を催促しているように見えてきてしまう。
先ほどの大男による嘲りが事実でないと知っている。それでも、今の姿を見ていると疑念が湧きそうになる。
(いやいや、綾乃さんが、そんなわけないよ)
邪な気持ちで綾乃さんを見てしまいそうで、慌てて気持ちを引き締める。
だけど、スキンヘッドの大男による嬲りまだまだ続いていた。
「いい牝声を響かせてきたなぁ、すぐに調教してやるからなぁ、だが、その前に少し愉しませてもらうぜ」
ふいに大男が離れて、執拗な愛撫からも解放された。ガックリと脱力した彼女はフー、フーッと荒い息をついていた。
だけど、アイマスクで視界を奪われている彼女は、大男が前に回り込んでいるのに気づけていない。
足元にしゃがみこんだ大男が、画面外から差し出された電動マッサ―ジ機を受け取るとニヤリと笑う。
――ブブブブッ
低い振動音を響かせた電動マッサージ機の先端が、濡れたショ―ツに押し付けられた。
「――ふごぅぅ!?」
不意打ちの一撃だ。薄い布地越しに破れ目へと振動が送られて、先程よりも激しく身悶えさせられる。
すでに大量の愛液を吸い込んでいたショーツが、激しい振動をうけて水分を周囲に撒き散らす。
そこへ新たに溢れ出た愛液が、次々と補充されて水分が尽きる気配はなかった。
「んぐぐぅぅ――ッ」
股間の割れ目をなぞるように移動していた電マが、その矛先がクリ×リスへと向けた。
すると、強すぎる刺激を受けて、彼女の呻き声が険しくなる。綾乃さんが出しているとは思えない、激しい呻き声に圧倒されてしまう。
その間にも、ビチャビチャと飛び散る愛液の量がみるみると増えていて、周囲を濡らしていた。
「澄ました顔して好き者みたいだなぁ、ホレホレ、痴漢として駅員に突き出した男に無様に逝かせられちまいなッ」
「んんッ、んぐぅ――ッ」
耐えきれずにガクガクと腰が震えはじめる。それは激しい波と化して全身に伝播していった。
そうして、ひときわ激しい呻き声をあげて、人の字に吊られた裸体が激しく海老反りになってしまった。
(……綾乃さん)
あの凛々しかった綾乃さんが、公園でのロン毛の男に続いて、今度はスキンヘッドの大男にも絶頂させられてしまった。
前以上に激しく絶頂する姿が、事実だと素直に受け入れられなくて、ただ呆然と画面を見てしまう。
(……あの綾乃さんでも……あぁやってイカせられちゃうんだ……)
感情が追いつかないボクの前では、絶頂による硬直が切れた彼女が、ガックリと膝が崩れ落ちたところで映像は途切れてしまうのだった。
【7】醒めぬ悪夢
ノイズだらけの画面を呆然と見つめていたボクだけど、次の映像へと自動で切り替わった。
「そ、そんなところ、触らないでよッ」
綾乃さんの悲痛な叫びがスピーカーから聴こえてきた。意識を取り戻した彼女は涙目になりながらも、前以上に男たちに食って掛かっていた。
拘束はそのままで口枷を外された彼女は、キッと男たちを睨んでいた。
処女を奪われたばかりだというのに、涙を流しながらも強気の姿勢を崩さない。そんな彼女の気丈さにボクはホッとさせられていた。
だが、ギシギシと拘束具を軋ませて猛る綾乃さんの反抗的な態度に、男たちを怯むどころか喜ぶばかりだ。
「いいぜぇ、簡単に折れてもらっちゃぁ、つまらねぇからな」
「なら、次はアレいくぞ」
ロン毛の男がなにやら道具を用意している間、大男は彼女の前へと立つ。
開脚椅子へと拘束されていた綾乃さんの愛液も滴る股間へと大男が太い指がまさぐらせていく。
その矛先はプックリと充血して口開く蜜壺ではなく、その下の肛門へと向けられているのだった。
排泄器官を他人に見られるだけでなく触られることに、彼女は激しく狼狽して、嫌悪の声をあげている。
その表情をカメラでアップで取りながら、男たちはニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
こうして女を嬲るのが根から好きなのだろう。それが画面を埋め尽くすほどのコメントを書き込む会員らも同じだった。
『ついにアレの時間か?』
『ジャジャ馬を躾けるにはこれだよなぁ』
『綾乃ちゃんは、どれだけ入るかなぁ?』
会員らは次におこなわれる行為を把握しているのか、妙な盛り上がりをみせていた。
そして、大男に手渡されたものは黒いゴムの塊だった。形状は矢じりのような部位にゴムホースが何本も繋がっているものだった。
ゴムホースの先にはポンプがついているのもあり、その一つを握りつぶすrと、矢じりが膨張してみせた。
「なんなんだ、これは……」
潤滑用のローションを塗りたくられた矢じりは、その切っ先を綾乃さんの股間、まだギュッと皺寄せている肛門へと向かう。
「え、なに……あぁぁ、なにするのよ、やめてえぇぇ」
肛門へとゴム塊をグリグリと押し付けられて、嫌悪の悲鳴をあげる。
ゴムからローションが付着して滑りがよくなるとともに、肛門を解すようにゴム塊が押しつけられる。
「う、うぅぅ、や、やめ――ひぃぃぃッ」
徐々に口が開いてきた肛門に、ついに切っ先が埋没する。排泄器官へと入り込んでくる異物に、椅子に拘束された綾乃さんが大きく背を仰け反らせる。
だが、一度侵入を開始したゴム塊は抜けはせず、徐々に肛門を押し広げながら埋没する量を増やしていくのだった。
「ん、んうう……だ、だめ……ぐむむむ……」
少しでも侵入を阻もうと下半身へと力を籠める彼女だったが、それが出来たのは一時的だ。
抵抗する間にすっかり解されてしまったのか、彼女が気を抜いた途端、ズルリと矢じりの残りも入り込んでしまう
「――あぅッ」
「なんだよ、ケツ穴をいじられて気持ち良かったのかよ。色っぽい声を出していると思ったら、前の穴がヌルヌルだぜ」
「ち、ちがう……あぁ、グリグリしないでぇッ」
「なに言ってやがる、ほれ、ピチャピチャと淫らな音が聴こえるだろう?」
男たちの指摘は正しく、まるで失禁したかのように秘裂からは大量の愛液が溢れ出して、大男の指がそれをかき回していくのだっった。