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元はfumi11さんに描いていただいたイラストにつけたショートストーリーがはじまりですが、随分と間が空いてしまいましたね(汗)。 前作までは下記となります。 https://www.pixiv.net/novel/series/187022 http://www.hevensdoor.com/MAIN/BOOK_ROOM/STORY_08/deep00.html ................................................................................................. 「本当に、ご自身も潜られるのですか?」  双子のメイドたちに着替えを手伝ってもらっている私にメイド長が問い掛けてきた。  長い銀髪と褐色肌の彼女は、英国ヴィクトリア朝風のメイド服姿で立つ姿も完璧で非の打ち所もない。  キリリとしたクールビューティな顔立ちは整いすぎてやや冷たさを感じさせる。その切れ長な目から向けられる視線は、常に私の器量をはかるように見つめてくる。  かつては裏世界でも名の売れた殺し屋だった彼女との出会いは、暗闇の中で幼い私の枕元に立って見下ろしている姿だった。  射抜くような冷たい視線を静かに受け止める。  父親が凶弾にた倒れて私のところにも毎夜のように暗殺者が訪れていた頃だった。  すっかり事態に慣れてしまっていたのもあったが、窓から射し込む月明かりに照らされる彼女の姿に見惚れていたのもあった。 「綺麗だな……」  だから、その時に思わず漏れ出た言葉は本心だった。  そんな私の態度に大いに興味を引かれたらしい。彼女が手にした白銀の刃が私に振るわれる事はなかった。 「……お前、変わったヤツだな」  容姿から想像した通りの凛とした声に笑みを浮かべる。  その後、私と契約を結んだ彼女はメイド長として仕えてくれながら外敵から守ってくれているのだった。 「流石に誘った手前、彼女だけ行かせるのも主義に反するしね。ちょっとエスコートしてくるよ」  私の視線を追うようにメイド長も壁に設置されたモニターへと目を向ける。  そこには一人の少女が拘束された姿で映し出されていた。  全方位の壁を衝撃吸収材で覆われた特別隔離室にいる彼女は壁に背を預けるように座っている。  その首から爪先までは漆黒の袋に覆われており、素材が収縮して張りつき幾重ものベルトが巻きついてボディラインが浮き出るほどの厳しい拘束を施されているのだった。  残念ながらその姿からはレディとしての成熟さが漂ってはこない。  それもそのはず、相手はまだ十代の少女なのだ。  サラサラとした栗色の髪の下に見える幼さの残る顔立ちは年相応だろう。  そこにフェイスクラッチマスクと呼ばれる開口具を装着されているのだった。  あちらからは私の姿は見えないのだが、勝気そうなアーモンドの目を釣り上げて睨みつけてきているのだった。 ――蒼月 夏海(そうげつ なつみ)  彼女は政府に所属するエージェントだった。それも首相直轄の特殊部門で、政府内でも彼女らの存在を知るものはわずかしかいない。  先に私の屋敷に忍び込んだまま消息を断った姉の春楓(はるか)を助けようと単身で乗り込んできたのだ。  何人もいるメイドに化けて入り込んではみたものの、バックアップもなしではすぐに足はつく。  メイド長によって取り押さえられて姉妹ともども囚われの身になっているのだった。 (本当はもう少ししてから招待したかったけど、しょうがないか……)  有能な彼女ら姉妹には前々から目をつけていて、ぜひ配下に欲しいと思っていたところだった。  その予定がやや早まったとポジティブに考えることにする。 「待たせ過ぎてご機嫌ななめのようだ。こちらの準備もそろそろ終わるし、行くとしようか」 「あの子が機嫌が悪いのは違うと思いますけどね」  拘束しているボディサックの隙間から伸びる派手なピンクのコードのことを指摘しているようだが、それは無視することにした。  したら面白いというだけで、深い意味はないからだ。メイド長もそれがわかっているから、それ以上は口を挟まない。ことの成り行きをただ特等席で見守っているのだった。  どうも彼女は私のすることを愉しんでいるようで、立場上口を挟むが止める気は毛頭ない。 「はい、準備が終わりましたーッ」 「あとはユリちゃん待ちでーすッ」  私の着替えを手伝っていた双子のメイド――エマとレアは元気いっぱいに報告してくる。  頭を撫でて欲しそうに期待の眼差しを向けてくるので、タップリと褒めてやる。仔猫のように目を細めて実に気持ち良さそうにしてくれると、こちらも褒めがいがあった。  そんな甘えん坊なロリっ子のふたりだが、クラッキングのスキルだけでなく、メイド長直伝の戦闘術も身に着けている。双子ならではの息のあった波状攻撃には並みの相手では歯が立たないだろう。  そんな二人に手伝ってもらって身につけていたのは漆黒のボディスーツだ。  手首のスイッチを押すとプシュッと空気の排出される音とともに素材が収縮して、細かい身体の起伏まで浮き立たせるほど身体に密着する。  その内側には特殊なデバイスが埋め込まれていて様々な情報をフィードバックしてくれる。これにモニターゴーグルを装着すれば、擬似空間に実際にいるかのような臨場感を体験できる代物だった。  夏美が身に着けているのも形状は異なるが同じ機能を有しているものだった。 「まったく、主様も物好きだよなぁ」  呆れ顔で見上げてくるのは協力者のユリだ。ポニーテールにメイド服と可愛らしい服装なのに床で胡座をかいてキーボードを叩いている。その上から白衣を羽織るのは研究者としての拘りらしい。  有名な科学者一族の少女で、彼女の家が保持している特許の使用料だけで、ちょっとした国の国家予算を稼ぎ出せるという。  このスーツも彼女が開発したもので、元はバーチャルセックスを実現するために作ったと冗談交じりに話していた。  それを軍が秘密裏に開発中のロボット兵の操縦に転用できると目をつけて強引に接収しようとしたのだ。 (強権を握ろうと画策する軍と対立する穏健派の首相が就任したと民衆が安堵している。その裏では、軍が着々と軍備の増強を企てているか……)  彼女の一族には国家反逆罪の汚名が着せられて、私設研究所のある島には武装した兵士たちが投入された。  情報封鎖され、銃弾が飛び交う中を単身で逃げ出してきたユリは、親同士が交流していた縁もあって私に保護を求めてきたのだった。 「念のために言っておくけなぁ……試せるのは三十分まで、それ以上は流れ込む情報に脳が焼き切れるからな」  棒付きの飴を咥えながら凄いスピードでキーボードを叩いて準備を進めるユリ。赤縁メガネのレンズ越しに向けられる眼差しは真剣そのものだった。  普段は気怠そうにしている彼女がしつこいほど念を押してくる。それだけこれからやろうとしていることが危険であるということだ。 「あぁ、わかってる、わかってる」 「本当にわかってるのかよ、前回も僕が強制停止させなかったらどうなってたことやら……おいッ、アンタは良いのかよ」  聞き耳を持たない私を説得するのを諦め、作業を監督していたメイド長へと言葉を向ける。 「えぇ、ユリ様が発明した品ですから大丈夫ですわ」 「そうそう、信頼してるよ」  私らの返答に今度こそ諦めたらしい。咥えていた飴をガリガリと苛立ったように噛み砕いて作業に集中する。  それでもキーボードを叩く手が止まらないところは、根が真面目ないいヤツなのだ。 「さーて、はじめますか……」  用意されたシートに身を埋めて、手渡されたモニター付きのヘルメットを頭部に被る。  夏美にも同様のヘルメットが装着されているはずだ。  これから彼女を味方に引き入れるために、ある映像を見せることになっている。このスーツを装着したのは、映像主の体験をよりリアルに感じさせるためだった。  準備を終えた私の身体を、双子が手分けしてベルトでシートに括り付けていく。これは安全のために必要な配慮なのだ。 「さぁ、やってくれるかなッ」 「まったく、知らねぇからなッ」  悪態をつくユリが最後にキーボードを叩いた途端、プツリと視界が暗闇に包まれた。  視界だけではない、皮膚や聴覚、嗅覚までもが何も感じなくなる。はじめて体験すると、これだけでもパニックになってしまう。 (あッ、あの子に説明しておくの忘れてた……)  まるで宇宙空間に放り出されたような上下の感覚を失い、激しい目眩と吐き気に襲われる。  同時に言いようのない不安に心が押し潰されそうになりながら、必死に心を落ち着かせる。  身体を拘束していた理由のひとつがこれだった。 ――空間識失調  軍のベテラン戦闘機パイロットですらも激しい操縦をすると平衡感覚を喪失した状態になるらしい。つくづく人間は陸の生き物だと実感させられる。 「試作段階では、随分と被験者を精神病棟に送り込んだけどなぁ」  そうユリは笑っていたことがあるが、冗談ではなく事実だと実感させられる。  それらは何時間にも感じられたが実際には数秒の出来事らしい。身体の感覚をサーバーに保存されているデジタル情報に切り替える際に時間の感覚も狂うらしいのだ。  それらに耐えきった私の身体は、しばらくすると徐々に身体の感覚を取り戻していった。  最初にヒンヤリとした空気が肌を撫でてくくる。次に思わす眉をひそめたくなる異臭が感じる。それで嗅覚が回復したのを理解させられる。  だけど、視界は黒い闇に包まれたままで、身体の方もピクリとも動けない。  さらに感覚が回復するにしたがい、それが座った状態で椅子に拘束されて、冷たい感触のアイマスクを被せられているせいだと理解する。 「うッ、うぅぅ……」  声を出そうにも口腔には無機質な異物が押し込まれており、やはり冷たい感触の素材で口を覆い、頬を締め上げられているから声を出すこともできない。  顔を上下に覆うマスクを振り解こうと、唯一自由に動かせる首が振るわれる。だが、頭全体に巻き付くハーネスによって簡単には外せるものではなかった。 「や〜ぁ、ようやく〜、お目覚めのようだねぇ〜」  突然、視界が開けて闇が消え去った。代わりに視界を埋めるのは、不細工な中年の男の顔だった。  斜視なのか、飛び出し気味の眼球は左右に別方向を向けられており、どうにもカメレオンのような爬虫類じみた印象を与えられる。  さらに不快感を煽るのが、ニッと不気味に笑うと現れるズラリと並ぶ金歯だろう。  その上、顎には無精髭が生えて、白衣の肩まである長髪には白いフケまで積もっている。実に不快感を感じさせる人物だった。  ただ、目が見えるようになって、ようやく自分の状況を理解することはできる。  どうやら研究室のような場所らしく、周囲には用途の不明な機器がならび、同じく白衣を来た男たちが忙しそうに働いている。  そんな中で、目の前の中年男はニタニタと嫌な笑みを浮かべながら好色な目でこちらを見てくる。  そこで自分が衣類をなにひとつ身に着けていない全裸であるのを自覚させられるだった。 「んん――ッ!!」  嫌悪と抗議の声をあげたのだろうが、箝口具を装着されている身では呻き声にしかならない。  それを受けて目の前の男は、圧倒的な自分の優位さを感じて満悦の笑みを浮かべてみせるのだった。 (あぁ、実に不快な男だな……)  相手は首相が密かに作り上げた特務機関の技術開発主任だった。  芹沢(せりざわ)博士という人物で、ユリによると違法な実験を繰り返して学会を追放されたような人物らしい。  いわゆるマッドサイエンティストという点ではユリも負けてはいない気もしたが、それは言わずにいた。目的のために手段を選ばないからこそ、到達できる頂きがあるのを知っているからだった。 「気分はどうだ〜い、春楓ちゃん。どこか気持ち悪かったりしないかなぁ?」  大の大人があげる猫なで声は実に気持ち悪い。特に悪意を隠して心配している風を装う場合は、特に気分が悪い。  すぐに口を縫い付けて、ゴミと一緒に焼却炉に送らせたい気分だが、これは記録されたデータなので私の意志は反映できないのだった。  そう、今見ているのは密かに双子が入手した夏海の姉である蒼月 春楓が経験した記録データなのだ。  約六年前、彼女がまだ十八歳の時のものだ。  親族たちが集まるパーティの最中をテロリストに襲撃されて、議員だった父親をはじめとした参加者が皆殺しにされていた。  妹をかばって瀕死の重傷をおいながらも姉妹は駆け付けた救援部隊によって保護されていた。  テロリストに再び狙われる危険を避けるために、彼女らの生存は伏せられて隔離施設に身を隠すことになる。  そこは秘密裏に設立される特殊機関のエージェントを育成するための施設でもあった。日々、激しい訓練を受けている候補生らの姿を見続けて、春楓はある決心をすることになる。  自らエージェント候補に志願する代わりに、妹には人並みの生活を送れるように配慮して欲しいと嘆願したのだった。  それには父親の親友であり姉妹の身元引受人にもなった萱草 周蔵(かぞう しゅうぞう)議員の後押しもあったらしい。  その後、激しい選抜試験にも勝ち抜き、ついに彼女がエージェントとなる日が来た。  事前に、エージェントになるにはある手術が行われると説明を受けていた。それは芹沢博士が密かに開発したマイクロコンピューターを体内に埋め込み身体の強化を図るというものであった。  その為に右目は義眼に入れ替えられて、脳の一部をバイオチップとして活用するよう改造されるのだ。 「成功率は〜ぁ、うーんっと随分と改善して……三十パーセントといったところかなぁ。被験者が若いほど拒絶反応も抑えられて、成功確率はググ〜ンと上がるのだけどね」  そのせいもあって候補は十代の少年少女ばかりだった。来月のは誕生日を迎えて十九歳になる春楓で最年長だった。  一応、手術の前に行われた芹沢博士による説明を聞いて辞退することもできた。  だが、妹に日常生活を取り戻してやりたい彼女は、自らの手で両親の仇も討ちたいと思っていたのだった。その両方を叶えられるチャンスが目の前にあった。脳裏に映る幸せそうな家族での光景を引き裂いたテロリストへの憎しみを胸に手術を受けたのだった。 ――そうして目覚めたのが、今の状態だった……  目の前では手術をした芹沢博士がニタニタと嫌な笑みを浮かべている。 「あぁ、安心した〜手術は大成功だよ。これからそのテストをするので〜、念のために拘束させてもらっているからね〜ぇ」  そう告げると周囲で計器を監視している助手らにテストの開始を指示する。すると、急に周囲が慌しくなってくる。 「どうだ〜い。今ねぇ、キミの右目から見える映像をこちらでも受信しているところだよ〜ぉ、異変とかはないかな〜ぁ?」  右目が少し熱を持ってきたように感じられるが微かな違和感というレベルで収まっている。それ以外は特に異常を感じない。前よりもよく見えるぐらいで、視点を動かしていろいろと試してみる。  意識をすればズームもできるようで、まるで望遠レンズのように遠くまで見渡すこともできる。  次は、その映像に様々な情報が付加されるようになる。風向きや気温などの環境情報から、対峙した人物の個人情報まで衛星を使った回線を通して様々な情報を取得できるようになっていた。 (ここまでは、密かに潜入するエージェント向きな機能だよね……)  求められる演算能力を発揮するには義眼内に収められたチップだけでは足らず、脳の一部までバイオチップのように使われている。その使用頻度が上がるたびに頭痛に襲われるようになる。  だが、いくら春楓が苦しそうにしても芹沢博士は意に介さない。それどころが助手が報告してくる計測結果に興奮気味になってこちらを見てもいない。 「処理されるための〜情報が濁流となって流れ込んでくるからね、頑張って耐えてね〜ぇ」 「ぐぅぅ……」  私が体験しているのは記録データとはいえ肉体の状態もユリのスーツのお陰で忠実に再現されてしまう。  頭がカチ割れてしまいそうな激しい頭痛と吐け気に私も襲われていた。  様々な情報が濁流となって頭の中に流れ込んできている。それを捌くのは常人の脳では不可能なことなのだろう。気が付けば春楓と同様に鼻血まで流れ出しているのだった。 「もぅ、しょうがないわね〜ぇ、データに影響がでるけど、次のテストが終わったら抑制剤を打ってあげるわねぇ」  前はこの時点で耐え切れずに吐き出してしまっていたが、少しは耐性ができたようでまだまだ行けそうだった。  だが、それが甘い認識であったとすぐに思いしらされる事になる。  戦闘用のモードに切り替わった途端、頭に流れ込んでくる情報の量が一気に跳ね上がったからだ。  向けられる銃口から発射される弾丸の軌道から殴りかかってくる相手の動きなどを事前に察知した情報でコンピューターが先読みして教えてくれる。  それは人間の脳で処理するには無理のあるものだった。受け止められない情報はノイズとなり脳へのダメージとして蓄積されていく。  まるで耳から焼けた鉄棒を差し込まれて、脳が煮え立てられるような苦しみを味合わされるのだった。 「まだまだ脳が最適化されてないみたいね〜ぇ、何度も試していくうちに慣れてくるから頑張ってね〜ぇ。そうすれば脳を刺激して肉体の反応を向上させたり、どんな時も冷徹な心のままでいるよう感情をコントロールしてあげる〜ぅ」 「おやおや、上機嫌ですね。どうやら上手く行っているようですね」  ようやく自分の発明品を実用化できる喜びで芹沢博士は興奮気味だった。  そんな彼に労いの言葉をかけながら一人の男が現れた。  上等なスーツの胸には議員バッチが光る。風格すら感じさせる佇まいの主は姉妹が幼い頃から親交のある萱草大臣であった。  次期首相と噂されていた蒼月大臣が凶弾に倒れた後、その意識を受け継いで党首になった彼は度重なるスキャンダルで失脚した大臣に代わりにそのポストにも就いたところだ。  穏健派の筆頭として常に厳格な態度をしめしている男だが、その時ばかりは雰囲気が違った。  娘のように可愛がっていた春楓の裸体を前に、露骨に好色な目を向けてくるのだった。 「そろそろ十九歳だったな。身体も成熟してきて、顔も母親の若い頃にそっくりだ……実に私好みに育ってくれたな」  もうひとりの父親のように慕ってきた人物が見せる好色そうな表情に、春楓が戸惑いを隠せていないのがヒシヒシと伝わってくる。  上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながら近寄ってくる萱草は、今にも舌なめずりをしそうなほど獣欲が溢れ出している。  その大きな右手が無造作に伸ばされる。拘束ベルトの隙間から突き出た乳房をムンズと鷲づかみにしてきた。 「んん――ッ!!」 「うんうん、実によい揉みごたえだ。この初々しい反応も心地よい」 「やはり、予想通〜りに処女で間違いありませんでしたわ」  春楓のバストを満足そうに揉み立てる萱草に、芹沢博士が嬉しそうに報告をする。 「タップリと愉しんだのだろう?」 「えぇ、それは存分に味合わせてもらいましたよ〜」  意味深に笑みを浮かべる男たち。その四本の手は春楓の裸体をまさぐってくる。 「んッ、うぐぅぅッ」  キチギチと拘束ベルトをしならせて嫌悪の呻きをあげる春楓。その反応を愉しんでいるのだ。  だが、不思議なことにどんなに心で嫌がっても身体の芯の方から熱い疼きが溢れ出してきて、春楓を戸惑わせるのだった。 「ですが、ホント〜に先に頂いておいて良かったのですか?」 「あぁ、大臣就任でこちらも手が離せなかったからな……それに妹の方がより母親似だ、そちらには手を付けるなよ」 「えぇ、わかってますとも」  マスコミをひと睨みでだまらせる鋭い眼光に、芹沢博士もおもわず身をすくませる。  気を取り直した萱草、再び春楓の方へと向き合うと、顎を掴んでその顔をまじまじと覗き込んでくるのだった。 「お前の母親まで殺すつもりはなかったのだが、実に惜しい事をしたな。お前の父親とは親友だったが、好きな女を奪われては我慢できるはずもないよなぁ」  共に政治家の家系に生まれて自らも政治家を目指す二人の青年がいた。情熱的な萱草と物静かな蒼月、実に対照的な二人であったが妙に馬が合った。  幼い頃から親交を重ねて親友であり、ライバルでもあったのだ。   そんな二人がひとりの女性を同時に好きになっていた。政界の重鎮の愛娘である彼女を射止めることは、政治家としての成功を約束する。  萱草は果敢に彼女へのアプローチをかけて、周囲への手回しも怠らない周到さを見せた。  だが、彼女は最終的にはなぜか蒼月を選んでいた。その理由は当人らにしかわからないが、少なくとも二人は仲むつましく、ふたりの娘とともに幸せな家庭を築いたのだった。  恋に破れた萱草は女性を娶ることもなく、政治家として慢心する。  軍事強国を再び目指そうとする派閥と対応するべく蒼月とともに仲間を集め、新たな政党を作りあげていくと党首となった蒼月を支えてきたのだった。  まるで自分の娘のように春楓と夏海を可愛がっていた彼の告白は、さぞ信じられなかったことだろう。  春楓が受けた激しい動揺がまるで自分のもののように伝わってくる。 「あぁ、この話は実は二回目なんだよ。一度目はモニター越しで語らせてもらったが、やはり覚えていないようだな」  春楓に施した手術によって脳に手を加えられたことで、能力の向上だけでなく記憶の消去や改ざんも可能になっているというのだった。  首からネクタイを抜き取りながら、芹沢博士から聞いていた話を揚々と語ってみせる。  その間に芹沢博士の指示によって、春楓を拘束していた椅子がゆっくりと動き始めていた。  リクライニングチェアのように背もたれが倒れ、フットレストが起き上がる。  そうして、肘掛けが左右に伸びると、フラットになった形状で春楓を大の字で寝かした姿へと変えるのだった。  秘部を隠すこともできずに晒される裸体に、萱草も鼻息荒くして衣服を脱ぎ捨てる。  四十代という肉体はよく鍛えられており引き締まっている。その股間では臍までそり返る肉茎が激しくいきり勃っているのだった。 「お前には俺の優秀な手駒になってもらう。芹沢の話ではその為には一度、お前の心を壊す必要があるという話だ」 「う、うぅぅ……」 「だが、簡単には壊れてくれるなよ。もし俺を満足させられなかったら、すぐに妹をここに連れてくるからなぁ……大事な妹に真実は知られたくはないだろう? なぁに、その後は奇麗に記憶を消してやるさ」  春楓の上に覆いかぶさりながら、その若い柔肌へと舌を這わせて味わうと萱草は残忍な笑みを浮かべながらそう語るのだった。 「さぁ、春楓お嬢ちゃんをいただくとするか」 「んんッ、んん――ッ!!」  挿入の気配に気付いて春楓は逃れようと必死に身体を揺する。だが、幾重にも巻き付いたベルトは、彼女を逃そうとはしない。ギチギチと革をしならせながらも緩む加配はない。  その間にも怒張の切っ先が、まだ使い込まれていない秘裂へと推し当てられる。 「んーッ、んぐ――ッ」 「はははッ、そうだ、もっと嫌がって俺を愉しませろ」  悲痛な涙で濡れる頬を舐めあげながら、萱草は腰を押し出すのだった。  いくら無駄だとわかっていても足掻こうとする春楓。それが相手の嗜虐欲を掻き立ててしまうことに悔しい涙をこぼすのだった。  何度か軽い突きを繰り返された後、肉塊が一気に押し込まれてきた。 「うぐぅぅッ」 「おぉ、キツキツだな。男の喜ばせる方法もすぐに仕込んでやろうな、普段は忘れて初々しい女が、いざエージェントで任務となると冷徹で淫らな女に変身するわけだよ」  使い込まれていない粘膜を根こそぎ捲り返されて、苦痛と恥辱に春楓は顎を反らせて呻いた。  剛直が膣道を押し広げられる圧迫感に身も心も砕け散りそうだった。  だが、愛しい妹のためにもそれは避けなければならなかった。   春楓が感じた激しい怒りと哀しみ、そして悔しさと絶望感がスーツを通して全身へと流れ込んでくる。  その激しい感情の流入についに私もついに限界を迎えたらしい。映像がプツリと途切れ、意識は暗闇へと落ちていくのだった。 「うッ……ぎもぢわるい……」  激しい吐き気とともに目覚めると、そこは屋敷内に設えた医療室のベッドの上だった。  込み上げる胃液に耐えていると目の前にはバケツが差し出される。それをすぐに掴み取ってゲェゲェと吐き出すはめになるのだった。 「ホント、アナタは付き合いが良いというか、物好きですよね」  一通り吐き出してバケツから顔を上げた私にタオルを差し出しながらメイド長が呆れ顔を浮かべていた。  みれば隣のベッドには夏海も横たわり、どうやらまとめて介抱をしていてくれたらしい。  ほのかにタバコの匂いがするのに気付いて、自然と心が引き締まる。規律に厳しい彼女が人前でタバコを吸う時はトラブルがあった時だからだ。 「なにがあった?」 「忍び込んでいた他のネズミが蠢きはじめました。それから、軍に不穏な動きがあるようです」  そう告げた彼女は、トラブルを歓迎するかのようにタバコを新たに咥えて不敵に笑うのだった。

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