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「任務完了。惑星ブリンフィアに巣食うスペースパイレーツの残党を殲滅しました」 銀河連邦本部。 暗いホールに凛とした女性の声が響き、僅かな沈黙の後で拍手が鳴り響いた。 喝采を浴びるのは、長い髪を束ねた金髪碧眼の美女。 名をサムス・アラン。 『銀河連邦の最終兵器(リーサルウェポン)』『伝説の賞金稼ぎ(バウンティハンター)』『平和の守護者』 数々の異名を持つ凄腕の賞金稼ぎだ。 その細身からは想像もつかない超人的な身体能力を有し、鳥人族の技術の結晶であるパワードスーツを駆使して幾人もの悪を屠ってきた。 彼女以上の賞金稼ぎはいない、そう断言される程の実力者である。 サムスは任務の報告を終えてホールを出ると、本部から旅立つ為に通路を歩いていた。 すると、連邦のスタッフに声を掛けられる。 「よう、サムス。もう次の仕事か?伝説の賞金稼ぎ様は多忙だね」 「…いや、暫くは羽を休めようと思う」 「へぇ、宛てはあるのか?」 「あぁ。惑星ファットムという星へ行く」 「……聞いた事ないな。銀河中を駆け回る内に見つけた穴場か?精々楽しんできな」 「そのつもりだ」 サムスは笑みを浮かべ、コツコツとヒールを鳴らし、軽やかに歩いて行った。 *** どすっ どすんっ 重い足音が響く。 ーー惑星ファットム。 自然豊かなこの地は、豊富な食料が採れる星として知られていた。 銀河中を回っても、これ程緑豊かな星は多くない。 美しい自然は人の目を集め、その中には悪人の影も…。 この惑星をサムスが見つけたのは任務中。 偶々近くを船で飛んでいたサムスが緊急信号〈ベイビー・クライ〉をキャッチし、ファットムで略奪をしていた武装犯罪集団を殲滅した。 別の任務があるからとその場を離れようとするサムスに、現地人はお礼がしたいから必ずまた来て欲しいと一言。 サムスは暇が出来たら寄ると約束をした。 そして、それから数ヶ月。 再びサムスが集落へ訪れると、現地人は大いに歓迎した。 サムスをもてなすのは、緑豊かな地から作られた色取り取りの料理。 ファットムの文明水準は決して高くはない。 建造物を見るに、百年は技術が遅れているだろう。 精巧な作りとは言えない歪な建物が幾つも並んでおり、そこに高度なテクノロジーを感じる事は出来なかった。 一部機械化も進んでいるようだが、銀河の平均水準に遠く達していない。 …だが、その食の水準はかなりのもの。 見た事がない豪勢な料理の前に、サムスのポーカーフェイスも僅かばかり崩れる。 戦う為のエネルギーを補給出来れば良い。 サムスが食事をそんな風に思っている節があったのは、粗末な携帯食料ばかり口にしていたからだ。 銀河中を飛び回る彼女が、ゆっくり腰を据えて食事をする事は珍しかった。 そんなサムスだが、食事の楽しさを思い出し始めた。 ゆっくりではあるが、徐々に食べ物を口に運ぶペースが上がる。 豪勢な料理が次々と運ばれてきた。 現地人の長は、「遠慮はいらない。貴方の為なら何でもしよう」と口にする。 …もしあの日、サムスが緊急信号をキャッチしなければ、抵抗も出来ず滅ぼされていたかもしれない。 彼らは温厚な者が多く、戦い慣れしていない。 しかも、食が豊かな星を象徴するように、皆一様に肥えている。年寄りから顔立ちの整った娘に至るまで、だ。 平均体重は100kgを超えるとか。 温和で、しかも肥え太った身体、加えて武器の水準が低いのでは満足に戦える筈もない。 サムスは大恩人。 お礼をしても、し足りない。 過酷な戦いの日々から一転。 美食が彩る日々を送る事となったサムス。 そんな日々を綴るサムスの日記は、下記の通りだ。 --------------- ■滞在4日目 3日程の休暇のつもりが、気が付けば4日目。 彼らは私に寛げる場と、豪勢な料理を用意してくれた。 食に余り関心がなかった私も、ここの食事に心動かされる。 手取り足取り私の世話を焼いてくれ、何だか申し訳ないくらいだ。 豊かな自然に、彼らのもてなしに、戦いの中で傷付いた私の心が癒えていくのを感じた。 ■6日目 もう6日だ。 残念だが、この星を離れなければならない。 そう告げる私を、彼らは引き止めた。 その優しい言葉に…甘い誘惑に、私の意思が揺らぐ。 粗末な携帯食料で空腹を満たす日々へ戻る事への躊躇いが、私の胸中にあったのかもしれない。 何より、もう少し…この安らかな時間を…。 彼らの好意に、甘える事にする。 ■9日目 私の緩んだ気持ちと比例するように、輪郭がなだらかになってきたのは気の所為ではないだろう…。 頭の片隅に追いやっていた現実を、直視しなければならない日がきたようだ…と考えた。 今度こそ旅立とうとしたが、彼らは私を再び引き止めた。 これ以上は流石に…と伝える私に、ならばこの星の用心棒として雇うと提案してきた。 彼らの為にという大義名分を"得てしまった"私は、ここへ残る事を決めた。 ■16日目 私は過食を繰り返し、明らかに太った。 ふくよかな彼らと一緒にいて感覚が麻痺してしまっているが、ふと自分が太った事を自覚する。 鏡に映るその顔は、見慣れぬ丸顔…。うっすらと二重の顎を形成している。 ゼロスーツに身を包んでいると、身体のラインが崩れていくのがよく分かった。 食事量を減らして欲しいと彼らに話すと、理解してくれた。 雑念を振り払い、明日から体を絞るとしよう。 ■18日目 痩せようとする意思は、一気に色褪せていった。 何をしていても、酷く空腹感を覚える。 履いた唾は飲めないと頑なに耐えるが、彼らの「我慢すると身体に悪い」「好きな物を我慢する必要はない」という甘い言葉に揺さぶられる…。 私はこれ程意志の弱い人間だっただろうか…? 今日も、次々運ばれて来る食事を一人で完食した。 完食すると、膨れた腹を撫で回しながら横になる。 私は、食の余韻に浸りながら横になる事の気持ち良さを知ってしまった。 アダムが今の私を見たら、何と思うだろうか…。 ■27日目 今の私を見て、サムス・アランだと分かる者が果たしているだろうか? そう思える程に、太ってしまった。 輪郭はぼやけ、腹は突き出た、締りのない肥満体。 ふくよかな現地人に、私も違和感なく馴染める体型に…。 身体をスキャンしようと一度船へ戻る…そんな事で僅かばかり息が切れた。 体重は■■■kg(黒塗りされている)。 彼らの好意に甘え切った代償は、余りにも大きい。 甘えた考えはもう捨てなければ…。 …食料が豊富にあるとはいえ…私が恩人とはいえ、こうも居座られて彼らも思うところがある筈だ。 明日から減量を始めよう。 ■33日目 こうして日誌を描くのも久しぶりになってしまった。 最近、何かと面倒に感じる事が増えた。 減量については…触れないでおこう。 それより、今日私が味わった… (以下、食べ物への感想が長文で綴られている) ■45日 何をするにも面倒だ。 こうして日誌をつける事すらも。 食べて眠り、また食べる。 これが今の私の日常となっている。 危機感を持つべきなのだろうが、この星の のどかな空気にその気持ちも霧散する。 幸い、彼らに武器を提供した事で、私が何をするでもなく彼らは自衛が出来るようになっていた。 だから私は、もう少しだけ……… ---------- ーーそして、今日。 滞在70日目。 ファットムの集落。 石造の建造物が30、40程並び、周りには豊かな自然が広がっている。 そんなのどかな村を、重い足音を奏でて身体を左右に振り歩く肥満体が1人。 全身の贅肉を波打たせ、時折止まって息を整えながら、のっしのっしと進んでいる。 「ふぅ…はぁ…」 このファットムにおいても目立ってしまう肥満体。 軽やかに歩くなんて事は叶わず、息も絶え絶えに鈍重に歩く。 耐久性・伸縮性に優れた水色のスーツが限界近く引き延ばされていた。 それが今の、サムス・アランだ。 銀河連邦の最終兵器?銀河最強の賞金稼ぎ? 今のサムスを見て、そう思う者が果たしているだろうか。 身体のラインが一目で分かるスーツが…官能的にすら見えるスーツが、酷くだらしないラインを描いている。 体重は200kgの大台を超え、まだまだ増加している。 これ以上太っては賞金稼ぎとしての活動も危うくなる。 …いや、手遅れかもしれない。 何にせよ、早急にこの星を離れて食事を控えるべきだ。 しかし、サムスは… 「あむっ、んぐっ…んふぅ…」 1つの建物へと入ると、サムスはどっしりと腰を下ろし、提供される料理を豚のようにがっつく。 僅か70日の間に、すっかり堕落し切ってしまった。 自分を無条件に肯定してくれる現地人、蕩けそうな程美味しい食事、1日寝て過ごしても誰も咎めない…。 死が隣り合わせ過酷な日々の反動か、サムスは堕落の極みとも取れる生活を送り、抜けられなくなっていた。 料理を提供してくれる者に「ふふ、サムスさん、そんなにがっつかなくても料理は逃げないよ」と笑われる始末。 小馬鹿にされているようだが、サムスは大切に扱われている。 現地人は、恩人をここまでもてなす事が出来たと、サムスの太った姿を見て喜ぶ。 凛々しくも暗い表情だった彼女が、明るくも惚けた顔になった事も喜んでいた。 ファットム独特の価値観なのだろうか。 サムスの蓄積された脂肪を、堕落ではなくのどかに幸せに生活している証と思っているようだ。 太っていくサムスは、それすらも肯定され、感覚が麻痺していく。 サムスを最強の賞金稼ぎたらしめた危機察知能力は失われつつあった。 いいじゃないか。明日…明日から控えれば。 そう考えて、堕落の日々を積み重ねていく。 「ぶふぅ…すまない。とても美味しかった」 5人分はあったであろう料理を軽く平らげるサムス。 そんなサムスに現地人は「折角いらっしゃったのにもういいの?」と一言。 「そ、そうだな…実はもう少しだけ…」と答えると、更に料理が出てくる。 「もう少しだけ」が積み重なる。 「あ」 食事中のサムスの手が止まる。 急に顔が赤くなった。 食事をしながら座っている体制を整えようとした際に、尻が裂けたようだ。 ずっしりと椅子に乗っかる尻肉…その水色の塊から、肌色の割れ目が…。 更には… ビビッ 食べ過ぎた余り、ゼロスーツの腹部が大きく裂けた。 サムスのポーカーフェイスが、大きく崩れる。 流石にその場を離れようとしたが、周りはそんなサムスを優しくフォローする。 結局、現地人が甘やかすまま、更に腹がはち切れんばかりに食べたサムス。 破れた箇所も広がり、何と間抜けな姿か。 そんなサムスは、身を布で隠して貰い、荷車で運ばれて行った。 荷車で運ばれるサムスを可愛いと笑っても、馬鹿にする者はいない。 それすらも、肯定された。 …全てを肯定され、こうも甘やかされては、感覚が麻痺するのも仕方がないのではないか…? あの伝説の賞金稼ぎであるサムス・アランですら、甘やかされた肉の塊に成り果てている。 そして…そんな生活を送り、更に2ヶ月後。 ファットムへ着て100日以上が経過する。 銀河連邦がサムスの行方を気にする中、当の本人は呑気に、そして着実に太っていった。 サムスがここへ訪れた際に与えられた貸家。 そこでサムスは、堕落の極みとも言える生活を過ごしている。 バシュッ ベッドに巨体を預ける肉塊が、太過ぎる指で短銃のトリガーを弾き、ビームウィップを放った。 天井に、ビーム状の紐が繋がる。 それを肉塊が… 「んぎいいぃ…ふぐっ…‼︎」 と太い声を上げて引っ張る。 ミシミシと音が鳴り、肉塊は全身を激しく ぼよん、ぶよんと揺らしながら、徐々に起き上がる。 が… バチンッ 頑強なビームウィップが千切れてしまった。 出力を上げ、再び放つ。 そうして立ち上がる為に格闘する事5分以上。 ようやく立ち上がった肉塊は、人間と言い表して良いものか…全身余す事なく贅肉塗れ。 金髪碧眼という特徴で何とか分かるが、余りにも肥え太ったサムス・アランの姿だ。 体重は687kg。 異常な肥満体。 ゼロスーツはとうに弾け飛び、今は最低限の部分を隠すのみの殆ど全裸の様な格好をしている。 全身をブルブル揺らして起床一番に行った事が、ガブガブとシロップの様な甘い液体で喉を潤す事だった。 このファットムで育つ果実の蜜をブレンドしたものであり、サムスは知る由もないが、コップ一杯で約2000kcalにもなる代物。 甘ったるいそれを、顎肉をたぷんたぷんと揺らしながら飲み干していく。 飲み物を飲むという行為だけで、大きく食生活が乱れている事が伺えた。 食事となると尚の事。 先程の飲み物の様な高カロリーの食事が山の様に運び込まれ、それをがっつくサムス。 暴飲暴食の限りを尽くす。 これらの食事も、現地人の身体には慣れたもの。 だが、サムスの身体にはそうではない。 結果、僅かな期間で現地人を超え、余りにも太った肉の塊となってしまった。 現地人はそんなサムスをこの星の豊かさの象徴と称するようになり、サムスを荷台に乗せて村を周り、その太りっぷりを披露した。 ただ太るだけで、有り難がられ、褒めて貰える。 外部の者からしたらおかしな価値観に、サムスは疑問を抱かなくなっていた。 食べて、眠り、また食べる。 そして、食事以外にもマッサージなど、サムスには最上級のもてなしがされる。 「もう…このままで……いい…」 無力な贅肉の塊となろうが、このまま……。 そんな彼女を銀河連邦が発見したのは、更に2か月が経ったある日だ。 荷車に乗せられ、村を回っている最中だった。 体重は、1000kgを超えており、サムスの超人的な身体能力を以ってしても殆ど自力で動けない状態。 余りに太ったサムスを目の前にしながらも、現地人にサムス・アランが来ている筈だと問う連邦スタッフ。 目の前の肉の塊とサムスが結び付かず、現地人にこれがサムスだと聞いても信じる事が出来なかった。 余りにも別人。 スタッフはサムスを銀河連邦本部へと6人がかりで何とか連れ出し、ホールでその姿が晒された。 銀河連邦の重役達は、サムスに深く失望する事になる。 …しかし、サムス程の実力者がいないのも事実。 銀河連邦は、試験という形で最後のチャンスを与える事にした。 どんな姿になろうと、どれ程弱体化しようと、ある程度の働きは見込める筈だ。 見込めれば、スターシップ(宇宙船)等の支給、支援を継続して行うつもりでいた。 …が、結果は酷いものだった。 ビームウィップを用いて高所へ登る…なんて事が出来る筈もなく… 余りにも太い指の所為で短銃の連射も出来ず、射撃精度も悪い… 新たに仕立てたゼロスーツは贅肉に耐え切れずに裂け… 5mも歩けば滝の様に汗を流す… 軽重力下ならどうかと試せば、それですら鈍重にしか動けない… おまけに、酷く勘が鈍っている事に加え、知力も下がっている事が伺えた…。 伝説と謳われた賞金稼ぎが、全く使い物にならない状態。 結局、サムスはファットムへと送り返され、そこで暮らす事となった。 サムスも、復帰を考えていない訳ではなかったが、試験により自分が如何に無力になったかを思い知った。 ならば、この星で、このまま暮らそうと吹っ切れてしまった。 それについて悲観する思考力さえも、今のサムスには残っていないのかもしれない。 或いは、悲観するような事はなく、楽に暮らせる事に喜びを感じているのかもしれない…。 ーーそして、1年後。 ファットムは、サムスによる武器を初めとした技術提供のお陰で急速に発展していた。 加えて、ふくよかな現地人が少しスリムになったようにも感じる。 のんびりとしていた彼らだったが、サムスが持ち込んだ技術に刺激を受けて、引き締まったようだった。 サムスはというと… 「んぶふううぅぅ…かひゅううぅぅ…」 形容し難い肉の塊となっていた。 体重を知る術もない。 巨大な肉の塊に。 サムスはファットムの富の象徴として、際限なく太り続ける。 伝説の賞金稼ぎ サムス・アランは、言葉通り伝説となり、その姿を見た者は…もう…。 (了)

Comments

フセン

書いていただきありがとうございます。 堕落して今まで出来ていたことが出来なくなり、ほぼ食欲しかない存在になってしまうのに興奮しました。

肉月

こちらこそありがとうございます! 喜んでいただけてとても嬉しいです😆