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超能力を扱う女性ヒーロー、名をフブキ。 黒髪を切り揃えたグラマラスな美女であり、身体のラインが一目で分かる黒いドレスに身を包む姿は一流モデルの様。 容姿端麗、頭脳明晰、加えて超能力者である彼女は、自分は特別な存在だという自負に満ちる。 自分はヒーロー業界でトップに立てる器であり、その気になれば上位に躍り出る事は容易い。自分こそが選ばれた存在だと…そう信じていた。 そんな彼女だが、実際の地位はそれ程大層なものではない。 B級1位。 十分超人の域ではあるが、今ひとつな印象を受けるランク。 実際、彼女を一目置いている者もいれば、中には"B級止まり"と揶揄する者もいる。 自己評価と現実に大きくギャップがある。 彼女がそんなポジションを強いられるのは、彼女以上に強力な超能力者が上にいる事が何よりの理由だろう。 その超能力者の名は、タツマキ。 超人…どころか人外と評されるS級で事実上のトップヒーローであり、彼女の実姉だ。 フブキもS級下位のヒーローに並ぶ強さを誇るが、S級トップのタツマキと並べばどうしても霞んでしまう。 単独では勝ち目はない。 …ならば、数。 フブキは純粋な力比べの土俵で戦う事を避けた。 優秀な部下を集め、組織力で上へいこうと考えたのだ。 よく組織された集団は、強力な"個"に並ぶ事が出来ると知らしめる為に。 そうして結成されたフブキ組は、勢力を増し、上位陣も無視出来ない組織へと成長していった。 今日もフブキ組は組織の拡大の為、そして、力を誇示すべく怪人達と戦う。 *** ビルが並ぶ某所。 けたたましい緊急事態サイレンが鳴り響く。 繰り返される『災害レベル 鬼』という言葉は、多くの人命を脅かす強力な怪人の出現を意味していた。 …だというのに、そんな怪人を囲む多くの野次馬。 距離を取ってはいるが、呑気に怪人とヒーローの戦いを観戦していた。 何かあればすぐ逃げられる。そんな風に考えていたからだ。 大衆の視線の先。 災害レベル鬼と判断された怪人は、何をもって鬼なのかイマイチ危険度が伝わり辛い容貌。 「俺はデブと馬鹿にされ続け、コンプレックスと憎悪から怪人化した〜…」と何やら口上を垂れていたが、見た目は普通の肥満男性にしか見えない。 災害レベル鬼の出現と聞いて慌てて駆けつけたB、C級ヒーロー達も、肩透かしを食らったような顔をしていた。 …確かに、B級ヒーローの攻撃に耐えるタフネスは厄介かもしれないが、攻撃力は皆無。 攻撃する素振りも見せず、ただ殴られる。 これが災害レベル鬼? 放っておいても日差しの暑さに倒れそうな巨デブを前に、人々は逃げずに怪人討伐の瞬間を見ようと眺めていた。 暫く泥仕合が続き、ヒーロー達も肩で息をしだした。 そんな中へ… 「…これで災害レベル鬼なら優良物件じゃない。それにしても、この程度の相手を倒し切れないなんて情け無いわね」 野次馬を割り、黒スーツの集団が輪の中へ入ってきた。 セレブの様な雰囲気を醸し出す美女が先頭に立ち、肩で風を切る。 「!フブキ組」 ヒーロー協会最大の組織力を誇るフブキ組と、そのトップが悠然と姿を現した。 「貴方達は下がっていなさい。私がやるわ」 フブキの言葉に部下が「この程度の怪人なら我々で…」と口にするが、フブキは構わないと一言。 フブキはヒールの音を優雅に奏で、怪人に歩み寄る。 「手柄も立てられて、他のヒーローに恩も売れるし、物理攻撃に強い怪人に超能力が如何に有効か知らしめるには良い実験台(サンプル)になるわ。一石三鳥ね」 余裕の笑みを浮かべるフブキ。 人を嘗めた様なその笑みを見て、怪人の様子が変わった。 「お、俺を笑ってるのか?」 「…?」 怪人はおどおどした様子。 だが、その目に宿る敵意は先程の比ではない。 「お、お前…如何にも自分のスタイルに自信ありって感じだな…俺が一番嫌いなタイプだ…!」 怪人の形相が、怪人らしいそれに歪んでいく。 「お、お、俺を馬鹿にしやがって…!み、見下してるんだろ?気に入らない…‼︎」 「(…何?急に雰囲気が変わった…)」 警戒したフブキがさっさと片付けようと手をかざした瞬間… 「お前も俺と同じ気持ちを味わえ‼︎」 "同じ気持ち" その意味はすぐ分かった。 怪人がフブキと同じように手をかざすと、フブキにエネルギーの波が襲い掛かる。 息苦しく、暑苦しい、醜悪なエネルギーが。 「⁉︎」 攻撃から防御へ切り替えようとするが、油断がフブキの行動を遅らせた。 怪人のエネルギーをその身に浴びる。 「!な…⁉︎」 フブキの目が自分の変化を捉える。 怪人に向けてかざした手が酷く浮腫み、すらりとした腕も丸く膨らみ、肩にこんもりと肉が付く。 服から嫌な音が聞こえだし、息苦しさに眉根を寄せる。 重い荷物を背負い込んだ様に、身体が重くなっていく…。 熱い、苦しい、キツい。 身体が沸騰するかのように湧き上がるエネルギーは、フブキを急激に膨張させていった。 冷徹とまで思えたクールな顔が、困惑に歪む。 自分の身に何が起きたのかを完全に把握したのは、身体の変化が止まった頃だ。 「…な…何よ……これ…⁉︎」 先程のフブキの印象は、グラマラスなクールビューティ。 今のフブキの印象は、デブ…という言葉も控えめに聞こえる肥満体。 ものの1分足らずで、フブキの身体が酷く膨れた。 膨らんだ脂肪が黒衣を裂き、肉が顔を覗かせる。 超能力で、ビリビリに裂けた服を何とか身に纏うが、その様は非常にみっともない。 先程の余裕が、美しさが、嘘のような姿。 フブキに今体重を測る術はないが、その体重は200kgをゆうに超える。 そんなブヨブヨの身体に、野次馬の視線が突き刺さる。 特に、でっぷりと突き出た腹に…。 「〜〜…‼︎ちょ、ちょっと…じろじろ見るんじゃないわよ!」 フブキはデブが嫌いだ。 浅ましく、暑苦しく、醜い。 自分が太るなど有り得ない。 故にカロリー計算も徹底しており、抜群のプロポーションの維持に余念がなかった。 そんな自分が、怪人の手によりこんな姿に…。 「まさか」と身を捩れば… ぶるんっ、たぷんっ 「…ッ///」 僅かな動きにも肉が揺れる。 何て忌々しい。 急激に変化し、動揺する長にフブキ組は狼狽えるが、フブキは「貴方達は下がってなさい…!」と一人で戦う姿勢を崩さない。 身体を変えられたショックは大きいが、超能力さえあれば後からどうとでも出来る……筈。 まずはこいつを仕留める。 フブキはプライドが高く、短気で頑固だ。 他のヒーローの恩を売る為と余裕綽々で現れ、油断してミスをし、部下に助けて貰いました……なんて無様を晒す訳にはいかないと、単独で怪人に向かう。 「(あの姉なら…この程度の怪人に苦戦するなど有り得ない。私だって…!)」 何の為の部下か。頭数か。 今のフブキの頭にはない。 「(もう油断はしない…さっさとくたばりなさい…!)」 こんなみっともない姿を1秒でも長く衆目に晒したくない。 パンパンに膨らんだ手を振り、怪人を吹き飛ばそうとする。 が、怪人の巨体を吹き飛ばすには至らない。 「…!(重過ぎる…)この…デブ…!」 お前もデブだろという心ないツッコミが聞こえてきそうな絵面。 恥ずかしさに焦るフブキは、大技に移行する。 身体を反って反動をつけ、強力な超能力を放った。 その際にも震える肉が何と忌々しいか。 「地獄嵐…‼︎‼︎」と技名を叫ぶ際にも顎肉がたぷんっぶるぶるっと揺れる。 石等を含む竜巻を怪人に浴びせるが、効果は薄かった。 思った程のダメージはない。 その様子を見て怒りと焦りが増長する。 そして、姉への劣等感も大きくなる。 姉なら、こんな程度の怪人に。 それらの複雑な感情がフブキの胸の内で渦巻き、結果 万全なら何とか倒せるであろう敵に遅れを取る。 攻撃に意識を向け過ぎれば、身体を覆う破れた生地が落ちて丸裸になってしまう。 贅肉を露出したくないが為に、攻撃が疎かになっていた。 ーーそうして2度、3度、先程と同じ様に身体を膨らませられたフブキは…… 「くふぅ…はぁ…ぶっふぅー…ふぅー」 形容し難い肉の塊となってしまった。 肉がだらしなく垂れるというより、エネルギーを流し込まれた事により膨張し、内側からパンパンに膨らんでいる。 膨らんだ身体に手足が埋もれかけ、その姿はまるで巨大な肉団子。 何とか超能力で身体を支えられているが、自分の脚で移動する事は最早叶わない。 「み、認めない…わ…ごんな怪人に……‼︎」 膨らむ身体に気道が圧迫される中、悔しさから声を絞り出す。 美しい顔が歪む程の形相で怪人を睨む。 今のフブキに出来るのは、睨む事くらいのものだ。 災害レベル鬼。 納得の強さだ。 フブキを囲う野次馬も、その脅威に気付き始める。 B級トップのフブキが、ものの数分で巨大な肉団子に変えられた。 怪人が口を開く。 「ふひ、良いエネルギーだ。俺は"肥満体への羞恥心"を糧に強くなる」 怪人が言うには、先程暫く反撃せずに野次馬が集まるのを待っていたのは、フブキの様な良い素材を誘き寄せる為。 フブキは怪人を超能力の実験台に選んだ筈が、自分が素材に選ばれてしまった…という訳だ。 今のフブキは、ゆっくりと手を伸ばす怪人の手も払えない。 ぶにゅんっ 「…!触るんじゃないわよ…!」 肉を揉まれ、羞恥心を煽られる。 それは怪人の力となり、怪人が明らかに力強く変異していく。 怪人は、馬鹿にされる側から馬鹿にする側へ。 フブキは、見下ろす側から見下ろされる側へ。 逞しい見た目に変異した怪人は、フブキの肉を揉み、叩き、揺する。 たぷん、ぶるんっとフブキが揺れ、その顔は怒りと恥ずかしさで真っ赤に揺れる。 「ぁ、ん…く…触るなって言ってるでしょ…‼︎‼︎」 肥大化した胸を揉まれ、意図せず甘い声が漏れる。 怪人に身体を弄ばれる。 これ以上ない恥辱を覚えた。 フブキの羞恥心を糧に力を増した怪人は、超能力まで使い始める。 超能力で、フブキの巨体を宙に浮かせた。 晒し者という訳か。 止まらぬ羞恥は、怪人の力となる。 フブキはじたばたと僅かに手を動かす事しか出来ず、ただ宙で肉を震わせる。 まるで巨大なアドバルーン。 溜め込んだのは空気ではなく肉。 このままではまずい。 怪人の話が本当なら、このまま強くなれば災害レベル竜にも届き得る。 それ以上に、自分はこのまま怪人のエネルギー源として利用され、晒され続けるのだ。 こんな姿で…。 絶望に顔が青くなる。 風船の様に膨らんで2、3m程浮き、視線が空を向いていたフブキ。 不意に… ドゴオォォンッ‼︎‼︎‼︎‼︎ 「きゃ、な、何…⁉︎」 突然下から鳴り響いた轟音に驚く。 「‼︎ちょ…!」 急に身体の自由が効き、そのまま下に落下する。 この巨体で3mから落下すればただでは…。 そう思ったが、何かがフブキを受け止めた。 とてつもない重量だろうに、軽々と… 「怪人にやられたのか?災難だったな」 気の抜けた聞き覚えのある声。 フブキを受け止めたのは、サイタマだった。 「サイ…」 「ほら、これ使えよ」 ビリビリに服が破れたフブキにマントを被せ、そのまま去って行く。 余りの変貌振りに、フブキと気付いていない様子。 野次馬の「ワンパンで仕留めやがった」「怪人の背後から一発で」「他のヒーローが攻撃してもビクともしなかったのに」「背中が弱点だったのか?」という声に、フブキが状況を理解する。 自分はこれ程醜態を晒したというのに、たった一撃…時間にして2秒あるかないかの時間で怪人を倒した。 姉と同じ強力な"個"。 激しい劣等感… …より、今はこの身体。 すぐに自分の状況を思い出して顔を赤らめる。 駆け寄る部下達。 部下達はフブキの身を案じる言葉をかけてきたが、ただ虚しいだけだった。 いつかサイタマに言われた言葉を思い出す。 自分より弱い手駒を集めようが、自分より強い怪人に襲われたらひとたまりもない。 今回は1人で戦った訳だが、部下が加勢したら状況が変わっただろうか…? 自問自答に意味はない。 どうあれ現実は、超能力無しでは1人で動けない身体になってしまった。 フブキは深い絶望に落ちる。 自分はもう駄目かもしれない。 そう思った。 …だが、あれから数日。 満足に動けなくなった自分を支えてくれる部下。 こんな姿になっても離れない部下。 何でこんな自分から離れず尽くしてくれる? メリットは? 「こんなみっともない姿になった私について来ても仕方ないでしょう?」と息も絶え絶えに太い声で言えば、「何を馬鹿な」と言われた。 損得ではなく、彼等は文句を言わずに自分の世話をしてくれる。 そんな彼らを見てフブキの考えが変わる。 サイタマの考えも間違っていない。 姉の様な強力な"個"ならこんな事にはならないのだろう。 だが、こうして弱った時に支えてくれる部下が、何と有難い事か。 フブキは再び意思を固くする。 私はやはり、組織力で上にいく。 私の考えは間違っていない…と。 一皮向けたフブキは、フブキ組の勢力拡大に以前よりも力を入れ始めた。 そうして更に勢力を増したフブキを率いて先頭を歩くのは、精神的にも物理的にも大きく成長したフブキ。 良くも悪くも貫禄を増したフブキは、今日も勢力拡大の為に怪人を討伐する。 姉に、サイタマに、並ぶ力を手に入れる為に。 (了)

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リクエストほんとうに有難うございます フブキの実力を紹介されてからの怪人に追いつめられる、敵の策にはまっていく流れがとてもよかったです。 弄ばれてる中での肉の描写もよいですし、その結果で怪人が強くなりあられもない姿でエネルギータンク肉風船、肉団子として扱われるのはたまらないですね。 この後はヒーラーネームは肉団子のフブキ、黒玉のフブキなどになりそうですね。 バッドエンドルートとして、エネルギータンクとして、もてあそばれつづけ、怪人をさらに強くしてしまい、その結果他のヒーローや怪人もやられてなかよく肉団子になり、しばらけ晒されててしまう…というのも想像されましたし、色々とシチュを広げられるほどたまらないssでした。