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④ 「はぁ……はぁ……♥」  カーテンを締めきった部屋の中で、衣擦れと甘ったるい吐息だけが響いていた。  厚手のカーテンの隙間から差し込んだわずかな光が、部屋の中を薄暗くも照らしている。  寝台の上に横たわっているのは、あかねだ。  頬はすっかり紅潮し、瞳はうっすらと涙の膜に濡れて揺れる。  まるで高熱にかかっているかのような、火照りと虚ろさを示しつつも、なにより、異性(オス)を誘引し獣へと変える、女(メス)の色香を強烈に振りまいていた。  何かに耐えようとするように、あかねは身を捩る。そのたびに、甘い吐息が押し出されて喉を抜けていく。 「だ、め……」  強い意志力を持って決意したはずなのに、胎の底から湧き出す熱はあかねの決意をいともたやすく融かし尽くしていた。  あかねの手指が、部屋着を捲り、露わにした自分自身の胸に触れる。  おそるおそるといった様子の、ぎこちない手つき。  しかし―― 「んっ……♥」  硬く、痛いほどにピンと張った乳頭に爪が触れた途端に、あかねの喉から嬌声が漏れた。絶頂ではない。静電気のような、バチリと弾ける快楽刺激はしかし、あかねを果てにまでは辿りつかせてはくれない。むしろもどかしさばかりが膨らんでいって、歯止めが利かなくなる。  溺れゆく人間が空気を求めるのにも似た、縋るような手つきで、あかねの手が、枕元に置いたスマートフォンに伸びる。  焦った手つきと震える指先は、顔認証も、パスコードの入力も一度ずつ失敗してから、ようやくロックの解除に成功した。 《今ガチ》の共演者たちから送られてきていた心配のメッセージなど意識にも止まらない。  フォトアプリを指先がタッチすると、その中のフォルダをほとんど無意識のうちに開いていた。  最新スマホの高解像度ディスプレイに表示されているのは――男性器(ペニス)だった。  あの日――彼に慰められて、お酒に酔って、彼に抱かれた。  酔いが覚めて、冷静になってみれば、彼が最初からそういうつもりだったことにはすぐに気付いた。そう考えなければ不自然なくらいに、状況(シチュエーション)ができすぎていた。  だけど、気付いたからといって、どうすることもできない。  そうなるように誘導されていたとしても、最終的に抱かれることを求めたのはあかね自身だったし、たとえ身体が目的だったのだとわかっても、彼の言葉は今のあかねにとってあまりにも甘美なものだった。そしてそれら以上に、なによりも――  ぐにゅり、と。  ほどよく実った形の良い乳房が、華奢な指先によって歪められる。  痺れるような甘い官能が、あかねの胸から、全身へと広がる。  以前は、これほどまでに欲を持て余すことはなかった。もちろん、ある程度の頻度で発散程度はしていたものの、その程度だ。  たったひと晩で、あかねの身体には、性の快感が消すことのできない烙印として完全に刻み込まれていた。  あれから毎日――のように、とすらつかず、文字どおり一日も欠かすことなく、あかねは自分自身を慰めるようになっていた。  彼は、自分の身体が目的だった。善意などではなかった。そんな風に自分に言い聞かせ、あの晩のことを思い出さないように誓っても、覚えてしまった快楽の味を、あかねの身体は忘れられない。  結果として毎日、それも数回ずつ――絶頂の回数にすれば軽く二桁に及ぶほど、あかねは自慰を繰り返していた。  最初は、記憶の中の行為を思い出していただけだった。  しかし次第にそれだけでは足りなくなってきて、インターネットを使って男性器の画像を集めるようになっていった。長いモノ、太いモノ、カリが大きく膨らんだモノ。それらが自分の膣内(ナカ)を擦り上げて――射精する。そんな光景を脳内で再生しながら、あかねは何度も、何度も果てた。  今日もまた、堅いはずの禁欲の決意は、あまりにもあっさりと融け落ちていた。  ――あかねちゃんのおっぱい、柔らかいね。  彼の言葉が、頭の中に響く。何度も、何度も、思い返して妄想(シミュレーション)した彼の言葉は、本当に耳元で囁かれているかのように頭の中で反響を繰り返す。  蕩ける。彼の声だけで、身体の火照りがさらに増す。  ――こうすると、あかねちゃんは気持ちいいんだよね?  見透かすような口調で、彼の声が響く。  あかねの手を動かしているのは、もはやあかね自身ではなかった。あの晩、あかねに刻み込まれた快楽の記憶が、その中の彼が、あかねを操り、動かしていた。  ぐにゅうっ、と。  あかねの指が胸に食い込み、官能があかねを支配していく。  ――ほら、イくときはなんて言うんだっけ? 「イ、くっ……イキ、ますっ……♥」  あの晩彼に仕込まれたとおりに、しっかりとその瞬間を予告して、果てる。  目の前が白く染まって、下着の中でぷちゅっ、と蜜が弾けるのがわかった。  ――次はこっちも可愛がってあげるよ。  あかねの中に巣くった彼は、イッたばかりで余韻の残るあかねを無視して左手を股間に向かわせる。  ――ほら、もうパンツなんて脱いじゃいなよ。こんなにいやらしい染みまで作っちゃって。  逆らえない。  頭の中に響く、彼の言葉に抗えない。  クロッチ部分を中心に、粘る蜜で濡れた下着を脱ぎ捨てて、彼の操る手が、蜜の源泉をなぞる。  ぐちゅうっ。  さらりとした液質ではなく、明らかに重みを感じる粘液の感触。 「ひゃ、あっ、んっ……♥」  イッたばかりの敏感な割れ目は、軽く撫でてやっただけで浅い絶頂感をあかねに与えた。  ――まだ触ってもいないのにこんなに濡らしちゃうなんて、あかねちゃんはホントにえっちな子だね。  ふる、ふるとあかねは首を横に振る。しかし、  ――そんなえっちなあかねちゃんは大好きだよ。  そんな声が頭に響いて、あかねはそれだけで、また果てる。  騙されたとか、身体が目的だったとか、そんなことはどうでもよくなって、彼が欲しくなる。スマホの画面をスライドし、インターネットで集めた男性器の中で、一番彼のモノに似た動画を表示させる。  スマホの画面に表示された写真に過ぎないはずなのに、匂いや硬さ、熱感までもが伝わってくる。  ――挿入(い)れるよ? 良いかな? 「は、い……くだ、さい……♥ 挿入(い)れて、ください……♥」  あかねがそう、おねだりの言葉を口にした瞬間、束ねた指が、あかねの中に潜り込んだ。  ぐちゅうっ、と。  蜜を押しのける音が響く。  あかね自身の華奢な指先は、あかねの中では彼の巨根へと置き換えられていた。スマホの画面の中でも、巨根が誰とも知らない女性を貫いていた。 「あ、んぅっ♥ イク、またっ、私っ――♥」  彼のモノと比べれば細くて短い指先が、しかし挿入と同時に、彼によって暴かれた弱点を押し込んであかねを絶頂へと押し上げる。  ――動くよ。  ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅっ、と。  彼がピストンを開始する。画面の中でも、力強いピストンが行われており、腰を打ちつける打擲音と女性の嬌声が最新スマホのスピーカーから響く。 「あっ♥ んっ♥ はぁ、あぁっ……♥」  最初ばかりは噛み殺そうとしていた嬌声も、動画の中の女性に引きずられるように抑えられなくなっていく。  ――ほら、もっと声を出して。あかねちゃんのエッチな声、聞かせて。  彼にそう囁かれては、もうダメだった。 「あんっ♥ はっ♥ あっ♥ ふぁっ、あっ――♥」  ――気持ちいい? 「は、いっ♥ んぁっ♥ 気持ち、あんっ♥ いい、れしゅっ♥」  画面の中の女性は、同性であるあかねからさえ性的な魅力を感じさせる表情を浮かべていた。  いや、違う。  画面に映り込んでいるのは、あかね自身の顔だった。蕩けきった――いやらしい女(メス)。  ――そろそろ射精(だ)すよ。  ぞくりっ、と背筋を期待感が駆けていく。  何度も、  何度も、  何度も何度も何度も何度も妄想(さいげん)を繰り返してきた瞬間が、クる。 「はいっ♥ キて、キてくださいっ♥」  彼のピストンが加速する。浅い絶頂を何度も繰り返しながら、あかねの指は止まらない。  届くはずのない膣奥に、彼のモノが確かに届いた――気がした。 「ぁっ♥ イクっ♥ ま、またっ♥ イキ、ますぅっ――――――♥」  熱いものが吐き出されて、膣内に広がっていく、ありえるはずのない仮想の感覚で、あかねは絶頂を迎えた。  ぷしゃあっ、と。  潮が噴き出し、ベッドシーツを飛沫が濡らす。  今日一番の絶頂感に、膨らんでいた欲求が解消されていくのを感じる。その一方で、自分の中で、本物を求める気持ちがさらに増していくのを、あかねは確かに感じていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「哈……哈……♥」 在拉緊窗簾的房間裡,只有衣服摩擦的聲音和甜膩的呼吸回響。 從厚重窗簾的縫隙透進的微弱光線,將房間照得昏暗卻明亮。 躺在床上的是小茜。 她的臉頰已經完全紅潤,眼睛也微微泛著淚水閃爍。 她顯示出高熱般的潮熱和空洞,更重要的是,她散發出極強的女性(雌性)魅力,將異性(雄性)引誘成獸。 小茜似乎在忍耐著什麼,每次扭動身體,甜美的呼吸就從喉嚨中逸出。 「不、不行……」 儘管決心懷有堅強的意志,從身體深處湧出的熱情卻輕易地將小茜的決心溶化。 小茜的手指揭開了她的居家服,觸碰到了自己露出的胸部。 她的動作顯得小心翼翼、笨拙。 但是—— 「嗯……♥」 當指甲觸碰到硬邦邦且疼痛的乳頭時,小茜的喉嚨不由自主地發出了嬌喘。這不是高潮。這是類似靜電的、爆裂的快感刺激,卻沒有讓小茜達到終極快感。相反,只是增加了她的挫折感,讓她無法自拔。 就像溺水的人掙扎尋找空氣一樣,小茜的手不安地伸向了床頭的智能手機。 她焦急的手法和顫抖的指尖,連續失敗了一次面部識別和密碼輸入,終於成功解鎖了手機。 從《今日真實》的共演者那裡來的關心消息她根本沒有意識到。 當她的指尖觸碰到相片應用程序,幾乎是無意識地打開了其中的文件夾。 顯示在最新智能手機高解析度顯示屏上的是——一個男性器官(陰莖)。 那一天——在他的安慰下,喝醉了酒,被他擁抱。 酒醒後,冷靜下來一看,她很快就意識到他從一開始就是這個意圖。如果不這麼想,情況(狀態)就顯得太過做作了。 但是,即使意識到了,也無法做什麼。 即使是被引導到那種情況,最終渴望被擁抱的還是小茜自己,即使明白對方的目的只是身體,他的話語對現在的小茜來說依然過於甜蜜。而且最重要的是—— 咕嚕一聲。 形狀良好、恰到好處成熟的乳房被纖細的手指扭曲。 從小茜的胸部開始,一種麻木的甜美感官快感蔓延至全身。 以前,她從未有過這麼強烈的慾望。當然,她曾經有過一定頻率的發散,但只是那樣而已。 就在那一夜之內,小茜的身體被性愉悅的烙印完全刻印,無法抹消。 從那之後,每天——不僅僅像是這樣形容,而是字面意義上一天也不漏,小茜開始像是在安慰自己一樣。 他只是對她的身體感興趣。並非出於善意。即便她這樣告訴自己,並誓言不再回想那晚的事情,她的身體已經記住了那種愉悅的滋味,無法忘卻。 結果是她每天都在自慰,而且是數次——至於高潮的次數,輕易就達到兩位數。 起初,她只是回憶那些記憶中的行為。 然而漸漸地,僅憑這些已經不夠了,她開始使用互聯網收集男性器官的圖片。長的、粗的、龜頭大大的那些。想像這些東西在她體內摩擦——射精的畫面,小茜一次又一次達到高潮。 今天,她堅定的禁慾決心也輕而易舉地瓦解了。 ——小茜的乳房真軟啊。 他的話在她腦海中回響。一次又一次,她反覆回想、幻想那些話,就像真的在她耳邊低語一般。 溶解。僅是他的聲音,她的身體潮熱更甚。 ——這樣做,小茜會覺得很舒服對吧? 他那透視般的語氣中的聲音在回響。 控制著小茜手的,已不再是小茜自己。那一夜刻入她的快樂記憶,記憶中的他,正在操控著小茜。 咕嚕一聲。 小茜的手指挖進自己的胸部,官能主宰著小茜。 ——你在高潮時要怎麼說來著? 「要、來了……要、高潮了……♥」 按照那晚他教的,她確實預告那一刻,然後達到高潮。 她的眼前變得一片白茫,感覺到內褲中的蜜液噗嚕一聲爆開。 ——下次我也會好好疼愛這裡。 他寄宿在小茜體內的他,無視剛剛高潮過後還殘留著餘韻的小茜,讓左手移向她的下體。 ——看,就把內褲脫掉吧。弄得這麼淫蕩的濕痕。 她無法反抗。 無法抗拒在頭腦中迴響的他的話語。 她脫掉黏著濃密蜜液的濕潤內褲,專注於襠部。在他的操控下,他的手追蹤著蜜的源頭。 咕嘟一聲。 這不是單薄的液體,而是明顯感覺到重量的黏液。 「咿呀、啊、嗯……♥」 剛剛高潮過的敏感裂縫,僅僅被輕輕撫摸就讓小茜感受到淺層的絕頂。 ——還沒觸碰就這麼濕透,小茜真是個很色的孩子呢。 小茜搖搖頭,但是, ——我真的很喜歡這麼色的小茜。 這樣的聲音在她腦海中響起,小茜僅憑這聲音又一次達到高潮。 被欺騙了或者是身體是目的之類的事情已經變得無所謂,她開始渴望他。她滑動手機屏幕,從網路上收集的男性器官影片中,選出最像他的那一個。 雖然只是手機屏幕上的一幅圖片,她卻似乎能感受到其氣味、堅硬和溫度。 ——要插進去了,可以嗎? 「好、好的……請、請插進去……♥ 請插進來……♥」 當小茜這樣乞求的話語一出口,捆綁在一起的手指便滑入了她的體內。 咕嚕一聲。 擠壓蜜汁的聲音響起。 小茜自己纖細的手指在她體內被替換成了他的巨根。在手機屏幕上,巨根正穿透一名陌生女性。 「啊,嗯♥ 我要來了,又來了,我——♥」 儘管比起他的巨大,她的手指細而短,但插入的瞬間,卻觸碰到了他暴露的弱點,將小茜推向了高潮。 ——我要動了。 咕嚕咕嚕咕嚕。 他開始了抽插動作。在屏幕上,強烈的抽插也在進行,撞擊的聲音和女性的嬌喘從最新手機的揚聲器中傳出。 「啊♥ 嗯♥ 哈,啊——♥」 最初還試圖壓抑的嬌喘,被視頻中的女性所牽引,變得無法抑制。 ——來,再大聲點。讓我聽聽小茜的淫聲。 被他這樣耳語,她已經無法自拔。 「啊♥ 哈♥ 啊♥ 呼,啊——♥」 ——感覺如何? 「好、好的♥ 嗯♥ 感覺、啊♥ 好、美味♥」 屏幕中的女性,甚至讓同為女性的小茜也感受到了性的魅力。 不,不對。 反映在屏幕上的是小茜自己的臉。完全融化了——淫蕩的女性(雌性)。 ——我快要射了。 一陣顫抖沿脊椎上升,帶著期待。 一次又一次, 一次又一次, 一次又一次一次又一次一次又一次的幻想正在發生。 「好的♥ 來吧,請射吧♥」 他的抽插動作加快。在重複淺層高潮的同時,小茜的手指沒有停止。 在她感覺無法觸及的深處,他的巨根確實到達了——至少她是這麼感覺的。 「啊♥ 來了♥ 又、又來了♥ 我、要來了——♥」 一股熱流噴射出來,擴散到膣內,一個不可能存在的虛擬感覺讓小茜達到了高潮。 噗嗤啪,潮水噴出,床單被飛沫濕透。 在今天最強烈的高潮中,她感覺到膨脹的慾望得到了釋放。同時,她內心對真實的渴望更加強烈了。

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