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小説は視点によって印象や書き方が変わったりする……ということで前回までの巨人視点、小人(人間)視点に続き第三者視点(巨人寄り)版です。

流石にこれの後編で終わりです。前半喋らないのでひたすら情景描写に文字数をつぎ込みました……


以前のお話(タイトル微妙に変えました)

巨人視点

俺が人間の兄弟をもてあそぶ話

「お、どうしたそんなところで」  暇潰しに遊びに来た人間の街。筋肉を見せつける競パンだけのスタイルで一時間ほど暴れまわって、次はどうすっかなあ、と片道二車線の狭い道路を乗り捨てられた車を踏みつぶしながら歩いていた。ふと足元を見たときにちょうどあったのが人間用の歩道橋だ。その真ん中辺りに人間が二人ほ...

人間視点

俺達が巨人にもてあそばれる話(前編)

 巨人がやってきた。 「にいちゃん……!」 「トウタ、急いで……!!」  弟の手を引いて、街の外へと向かって走る。郊外へ続く大通りは道路を埋め尽くすように車が乗り捨てられ、ところどころ炎が上がっている。周囲に人はいない。最初のパニックではぐれた弟を探していたら、逃げ遅れてしまった。でもそれも仕方ないと思...

俺達が巨人にもてあそばれる話(後編)

前編はこちら!  周りを見ると、このビルより高い建物はない。だからこのビルはこの辺で一番高いビルのはずだ。なのに、今目の前に見えるのは巨人の黄色い水着……つまり、股間部分だ。10階以上のビルだろうに、それは巨人の股間にも届かないのだ。どんなデカいチンコが入っているのか、水着はもっこりと前に大きく膨らん...




 人間の街に現われた巨人は、たった一時間で、その街の半分を壊滅させた。


 決して小さな街というわけではなかった。人口は三十万を超え、街の中心部には大きなビルが立ち並ぶ円形の都市。だが現われた巨人はそのビルの高さをはるかに超える、とんでもない大きさだったのだ。眩しいイエローの競パンのみを身にまとったその筋骨隆々な肉体は、街のどこからでも視認できた。それほどの大きさだった。そして現われた巨人は、何の遠慮も躊躇もなく街を破壊し始めた。逃げ惑う人間たちを踏み潰し、小さな建物を蹴り崩し、大きなビルを折って持ち上げ投げつける。響く人間たちの悲鳴と車のクラクション、それをかき消すような巨人の足音と破壊の音。人間たちは何の抵抗もできずに逃げ惑い、破壊に巻き込まれて死んでいき、あっという間に街の半分は復旧不可能なほどに破壊しつくされた。たった一時間の出来事だった。


 そして街の半分を壊滅させた巨人は、残り半分に目を向ける。といっても、随分暴れたからか、巨人は残り半分の街を積極的に破壊することなく、何か面白いものでもないかと探すように道路に沿って歩き始めた。


 もちろん、周りの建物は巨人の膝にも届かない小さなものばかりだから、草むらを薙ぐようにビルを蹴り倒しながら進むことも簡単にできる。ただ草むらとけものみちならけもの道の方が歩きやすい。巨人が道路を歩くのはその程度の理由だった。

 ただ、普通に道路を歩いていても、人間の街を歩くには巨人は大きすぎた。巨人が歩くために足を浮かせるだけで暴風が吹き荒れビル横の看板が吹き飛んでいく。つま先から踵まで30m近くあり、幅は12mにもなる巨大な足。片側三車線の広い幹線道路すら、巨人にとっては平均台より少し広いほどの幅しかない。ちょっとした船ほどもある足が、その道路に大きな影を作る。三車線すらはみ出る影の中には、乗り捨てられた車が何十台と飲み込まれている。足が空気を押しつぶしながらゆっくりと下ろされる。舞い下ろす風が電柱や電線を揺らし開けっ放しの車のドアがバタバタと音を立てる。最初に足裏に触れた電柱があっけなく折れ電線が引きちぎられ、車高の高いトラックが紙屑のように潰れていく。そのまま足の下の何十台もの車をいともたやすく押し潰しながら足裏が道路に触れて街そのものが大きく揺れる。

 そこで終わりではない。船ほどもある足。それだけでとんでもない重量があるのに、その上には高層ビルを凌駕する巨人の身体があるのだ。その数万トンにもなる体重が、一気に道路に押し付けられる。せいぜい10トン20トンのトラックが通ることしか想定されていないアスファルトが耐えられるわけがない。アスファルトは一瞬で砕けまるで爆発したかのように盛り上がり周囲に飛び散っていく。そしてその下の地面も巨人のとんでもない体重に耐えられない。アスファルトを踏み抜いて水道管やガス管を押しつぶしながら足がずぶずぶと地面にめり込み、奇跡的に無事だった足の周りの車たちが引きずられ足の側面にぶつかり、地面と挟まれ潰れていく。地面が沈んだことで周囲のビルもグラグラと揺れて傾きだす始末だ。ミサイルが落ちてきてもここまで酷いことにはならないだろう。だが、これは巨人がたった一歩、足を踏み出しただけなのだ。身長180mを超える巨人の一歩はミサイルをも超える兵器なのだ。そして当然のことながら、巨人は歩いている。一歩ではすまない。二歩、三歩と巨人の足が動き踏み下ろされまた浮くたびに、同等の惨事がいともたやすく起きて、被害は二倍、三倍と増えていく。それは巨人にとってはただの歩行。


 だから、巨人がその歩道橋の前で足を止めたのは、本当に奇跡と言ってもいいぐらいの出来事だった。

 大通りをまたぐ歩道橋と言えど、巨人からすれば菓子の空き箱と大差ない構造物だ。また巨人の下向きの視野はその張り出した大胸筋にさえぎられてかなり狭く、特に真下はほとんど見えない。だからその歩道橋も、今までゴミのように踏み潰されたり蹴り飛ばされたりしてきた何千何百の車と同じように、一瞬にしてその巨大な足で鉄くずとなってもおかしくなかった。事実、この一時間の間に巨人はいくつもの歩道橋をほとんど無意識のうちに蹴り砕いている。歩いている最中たまたま前かがみの体制になり、その視線の先に歩道橋があって、その上に小指の爪のようなサイズの人間がいることに気付いた。その上それをそのまま蹴り飛ばさず興味を持って立ち止まったのだから、これが奇跡と言わず何なのだろう。


「お、どうしたそんなところで」


 巨人が足を止めたところは、歩道橋の手前と言っても30メートル程離れたところだ。人間にはそこそこの距離だが、巨人にとっては一歩にすら満たない距離。その証拠だと言わんばかりに巨人の足元では車が吹っ飛んでぶつかり合い、ところどころで炎上している。歩道橋がまだ倒れていない方がおかしいぐらいだ。巨人はすこしだけ背中をかがめて歩道橋を見下ろしている。歩道橋はすっぽりと巨人の影に覆われていた。その影の中に、巨人からすれば豆粒のように小さな人間が二人震えながら座り込んでいる。少し屈んでいるとはいえ、巨人の180m近い高さからでは人間の細かい様子まではわからない。


「っと……」


 巨人が左足を軽く浮かせる。体重のかかった右足が地面を揺らし沈ませる。左足はほんの少しだけ右に移動した後、大きく左へと動いていく。道路上のまだかろうじて無事だった乗用車やトラックが、巨人の足にぶち当たってぐちゃりと、車によっては半分以上潰れる。地面すら簡単にえぐる足の勢いに任せて横に吹っ飛んだ車たちはそのまま真横のビルに原形を保たない状態で突っ込んだ。それが少なくとも十台以上。そうして更地になった、もう道路とは呼べない地面に巨人が左足を下ろす。また強大な地響き。つまるところ巨人は少し脚を開いただけなのだが、歩道橋の上の人間たちにとっては災害に他ならなかった。そしてその災害はまだ続く。足幅を広げた巨人はそのままゆっくり膝を曲げていく。足裏の体重の移動だけで地鳴りが起き、巨人の身体の動きで風が起きる。巨人の上半身に押しつぶされた空気は、巨人の体臭をまといながら歩道橋上の人間たちに降り注いだ。砂埃が浮き上がっては吹き飛ばされていく。


「逃げ遅れか?」


 しゃがみ込んだ状態でも、巨人の目線はまだその辺のビルよりもはるかに高い。それでも地面との距離が縮まったことで、巨人はようやく歩道橋の人間を判別できるようになった。両方ともまだ子供で、一人は制服を着た高校生、もう一人はそれよりさらに幼い小学生だった。二人とも巨人を見上げながら抱き合い、ガタガタと震えている。二人の見上げた先は巨人に覆いつくされていた。左右には旅客機の胴体のような大きさの太ももが歩道橋を越えて二人の遥か後ろにまで突き出ている。太ももの根元には影になって薄暗い中でも鮮やかな蛍光イエローの競泳パンツが、バスほどもありそうなチンコをギチギチと悲鳴を上げながら覆い隠している。その上にはこぶの一つ一つが大型車ほども大きく盛り上がり、巨人の呼吸と共にゆっくりとうごめいている腹筋、その腹筋に大きな影を作るほどせり出す大胸筋はその上にいくつも住宅が建てられそうなほどに広い。両側の腕は電車をはるかに凌駕するほど太く、筋肉がみっしりとついて重機の鉄球より何倍もでかい肩へとつながっており、太い首の上にある20mサイズの巨人の顔が、股の間の人間たちをじろりと真下を見下ろしている。人間からすれば、蛇に睨まれた蛙よりも絶望的な状況。巨人がこのまま膝をつけば、人間たちは巨人の脛に押し潰される歩道橋に巻き込まれて死ぬ。それでなくとも歩道橋を手で払ったり、はたまた指で人間だけ押し潰したり、それどころか息を吹きかけただけでも人間は宙高く舞い上がり、その後地面に落ちて死ぬだろう。この状況で人間が何をしようが、巨人から逃れるすべはないのだ。

 だがそれでも、この巨人そのものに押し潰されそうな重圧に耐えられず、人間の兄の方は弟を引っ張って歩道橋を降りようと、よろよろした足取りで階段へと向かう。巨人は最初その行動を、逃亡だとは理解できなかった。巨人の気分次第で軽く歩道橋ごと潰してしまえる状況で、巨人からすればあまりにもとろいその動きでまさか逃げているとは思わなかったのだ。巨人はにんまりと口角をあげる。巨人が軽い動作で左腕を上げると周囲に風が巻き起こる。そうして人差し指を突き出して、人間たちの逃げる先にゆっくりと指を立てた。巨人からすれば歩道橋をふさぐように指を置いただけだが、その指は歩道橋の床を容易く突き破っており、爪の先が下へと貫通していた。その破壊がもたらした振動で人間たちは尻もちをついていた。


「どこ行くんだよ?」


 巨人の声がビリビリと空気を震わせる。人間たちはよろよろと立ち上がると、今度は反対側へと歩いていく。それを楽しそうに目で追った巨人は今度は右腕を上げて、人間の少し先の通路を親指と人差し指で摘まみ、軽く力を込めた。それだけで金属やコンクリでできている歩道橋がいともたやすく砕かれひしゃげ、巨人の指が離れると通路と壁が凄まじい圧力で押し潰され、かろうじて橋の形を保っているだけのものになっていた。もちろん、人が通れるわけがない。それを見て人間たちは流石に打ちのめされ、その場に座り込んだ。高校生の方が小学生の子供を抱きしめ、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら巨人を見上げている。

 巨人はその自分を見上げる顔を見て、二人が兄弟だと気付いた。そのまましばらく見下ろすと、ぬっとその二人のもとへ腕を動かす。潰されると思った二人はぎゅうっと身体をこわばらせるが、巨人の手は人間の兄弟たちではなく、彼らがいる歩道橋の下に差し入れられる。まるで箸を一本手に乗せているかのような光景。流石に道路を横断する歩道橋全ては手に乗らないが、兄弟がいる部分だけであれば十分すぎるぐらいだ。そのまま巨人が手のひらを持ち上げると、手のひらの上にある歩道橋が引っ張られ、先ほど巨人が摘まんだ箇所が千切れる。巨人の手から離れた通路は支えを失い甲高い悲鳴のような音を上げながら地面に落ちていった。反対側は指が貫通したにしては耐えていたが、巨人が邪魔な部分としてあっさり引きちぎる。そうして手の上に残った通路、つまりその上にいる人間の兄弟を巨人は手のひらごとぐいっと顔に近づける。人間にとってはいきなり足場が引きちぎられ、不安定なまま100m近い高さまで高速で持ち上げられるという恐ろしい行為。その上ようやく止まったかと思えば一軒家よりもでかい巨人の顔が目の前にあるという心臓が止まる程の恐怖を味わっている。巨人は人間がすっぽり入ってしまうようなでかい眼で手のひらの兄弟を見つめる。手の上の歩道橋の手すりを必死に掴みながらぼろぼろと涙を流す兄と弟の姿を見ながら、巨人はほんの少し口角を上げた。


「……そうだ」


 巨人は二人から目を離すと、ぐっと膝に力を入れて立ち上がる。その動作だけで上昇気流が起き、破壊された看板や瓦礫が一緒に舞い上がる。手の上にいる人間たちは上昇による急激なGに必死に耐えていた。巨人が立ち上がれば、また目の前には遮るものが何もない光景が広がっている。人間の兄弟のいる手のひらは腰ほどの位置だが、それでも周辺のどのビルよりも高い位置にある。巨人は足元にある、既に分断され泣き別れとなった歩道橋の残骸を見下ろす。そして軽く右足を上げるとその歩道橋の残骸の上に踏み下ろした。鉄とコンクリでできた橋が何の抵抗もなく巨人の足の下に消え、凄まじい音を立てながら真下のアスファルトと共に地面深くへと踏み潰された。それも巨人からすれば煙草を踏み消すのと大して変わらない動作だ。事実、巨人はもう歩道橋への興味は一切なく、周りを見渡しながら移動を始めた。

 何かを探すように歩き回る巨人は、今まで以上に足元への配慮が全くない。車もバスも道路と一緒に水道管やガス管ごと踏み抜かれ、大きなクレーターがいくつもできていった。「おっ」というつぶやきと共にぐるりと方向を変えた巨人の進む先にはビルが立ち並んでいたが、そのほとんどが巨人の膝にも届かない。巨人はそんなもの気にすることなく歩みを進める。巨人の、それだけでビルよりもでかい足が外壁や鉄骨をやすやすと貫き、中で隠れ脅威が去るのを震えながら祈っていた人間たちを、オフィス家具や複合機と共に無慈悲に挽き潰す。まるで草を薙ぐかのように、いくつものビルと隠れていた人間が吹き飛び挟み潰され、瓦礫と共に巨人の足の下へと消えていく。そうやってとんでもない、巨人にとってはなんでもない被害を出しながら巨人はあるところで足を止めた。それは比較的新しいオフィスビルだった。その分周りのビルよりも少しばかり高さがあるが、それでも何とか巨人の太ももに届くかというサイズ。既に巨人の歩く振動でいたるところがひび割れガラスが砕けており、もし巨人が戯れに脚を出そうものなら、容易く瓦解してしまうのは明白だった。

 巨人はそのビルの屋上に手を伸ばすと、転落防止用の鉄のフェンスを、弁当のバランのように親指と人差し指で摘まんだ。すさまじい力で摘ままれたフェンスはその部分がくちゅりと潰れ平らになり、そのまま上へと持ち上げられる。ズゴゴゴゴ、とフェンスが屋上のコンクリから連なるように引き抜かれ、ぷらぷらと情けなく揺れている。ぽいと放り捨てられたフェンスは数十メートル落下し、盛大な音を立てて下にあったワゴン車を押し潰した。巨人はもう片方の手に乗せていた、人間の兄弟がいる歩道橋の通路を摘まみ上げる。先ほどのフェンスより随分優しい手つきだが、それでも既にボロボロな歩道橋がバキバキと崩れるような音をたて、何もできない人間はただただその通路の手すりにしがみつく。巨人が屋上にその通路を置く。通路だけとは言えども鉄とコンクリの塊。屋上をえぐりながら、人間からすればかなり乱暴に落下した歩道橋の通路は勢いあまって横倒しになり、そこにいた人間たちも転がるように放り出された。土煙が上がる中、何とか起き上がった人間たちは互いの無事を確認しながら抱き合っている。

 屋上に影を作りながらそれを見下ろしていた巨人は軽く脚を肩幅に広げる。乗り捨てられた車が何十台も吹っ飛び、道路に足跡が穿たれる。人間たちにかかる影がいっそう濃くなり、地鳴りのような振動が屋上を揺らした。巨人の重機を束ねたような膝が仰々しく曲がり、鮮やかな蛍光イエローの生地に包まれた何よりもでかい尻がゆっくりと地面へと降りていく。筋肉がみっしりと詰まった、片方で港湾のガスタンクよりも巨大なケツが、車どころか道路一帯を影で覆っていく。歩道橋の時にしゃがみ込んだのと違い、膝が曲がり切ったところで尻は止まらず、そのまま重力に任せて10万トンに届かんばかりの質量が一息に道路へと落ちた。

 その瞬間、ビルすらも浮き上がりかねない振動が街全体を襲った。道路は落ちてきた尻を受け止めることなどできるわけがなく、アスファルトが粉々に砕かれながら地面へとうずめられていく。尻はそのまま柔らかい地面を強烈な圧力で圧迫し、水道管やガス管は潰れ、地下街は崩壊しそこに避難していた人間たちは地下街ごと巨人のケツに圧縮され形すら残さず消えていく。巨人が座り込んだだけで10m近く地面が沈み込んだが、巨人にすればせいぜい拳一個分程度で気付いてすらいない。振動の余波で周囲の古いビルがひとりでに崩れ倒壊していったが、巨人は気にもしなかった。座り込んだ状態でも、人間たちが転がされたビルが巨人の胸にようやく届くという高さ。横幅も巨人の身幅にすっぽりと収まっており、巨人の真後ろからはその背中にビルが完全に隠れてしまっている。そして巨人は座り込んだ際曲げたままだった脚をゆっくりと伸ばしていく。道路に30mのクレーターを打ち込んでいた足は、立てれば雑居ビルの数倍の高さになる。一車線ほどの幅がありそうな踵が地面をえぐりながら、凄まじい速度で動いていく。巨人が脚を伸ばす先にあった、巨人の足の半分もないようなビルは、足裏に当たった瞬間鉄筋もコンクリも関係なく爆散し、崩れながら足に押されて別のビルにぶつかり瓦礫になる。巨人の長い脚が完全に伸ばされる頃には、30以上のビルが原形をとどめないほどの瓦礫となりその肉体の下敷きになっていた。だが巨人はそれを見もせずに、さらに足を回して胡坐をかく。それで奇跡的に無事だったビルが崩れ落ちていく。そうして、自らの脚の中にビルを囲った。囲われたビルは巨人が座り込んだ状態でもようやく胸に届くかといった高さ。巨人はその屋上に転がっている人間二人を見下ろして口を開いた。


「こっちの方が話しやすいだろ?」


 ビリビリと空気を震わせる振動が、人間の兄弟に降り注いだ。




続く

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