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コミッションイラストです!劇的ビフォーアフター。うん、素晴らしいご依頼でした・・・やはり幸せそうな姿があるとその後がより輝きますね。

おなじみあむあむ先生によるショートストーリーと合わせてお楽しみください。

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「指令官、これを私に……?」


 指輪を渡した時、早霜は困惑した表情を見せた。

 けれど、僕が「本気だ」と伝えると目を見開き、そして僅かに微笑む。

 桜の木の下に立つ彼女の姿は、ピンク色の花弁よりも美しく、視線を逸らすことができない。


「ありがとう、でも、私……変われるかしら?」


 その質問にも、頷き答えた。

 すると、早霜は胸に手を当て僕の顔をジッと覗き込む。


「ふふ、指令官らしいわね。返事を聞かせて欲しいって? ……勿論、ありがたくお受けしたいと思います。これからよろしくお願いします、指令官」


 いつまでもこの時間が続けばいいな、と。

 彼女の笑顔を見続ける為に、僕は指令官としての使命を全うしなければならないと。

 腕に引っ付き笑顔を見せる早霜に、笑顔を返しながら心の中で決意した。


 ──だが、決意だけでは守れる者に限りがあることを、僕はまだ知らなかった。


「司令官、限界ですッ! 速やかに撤退を──」


 最終防衛戦からの通信が途絶え、戦火は司令室の目の前まで迫っていた。

 窓の外を見ると、慌ただしく出撃する艦娘達の姿がある。

 突然発生した深海棲艦による強襲。

 我が艦隊は成すすべもなく、一方的に制圧され、優勢な状況は壊されてしまった。

 今、出撃した艦娘達は二度と帰ってくることはないだろう。


「皆が目の前で……司令官、私も行きます。待っててね、今──ッ、司令官?」


 僕は司令室から飛び出そうとする彼女の腕を掴んでいた。

 振りほどこうと力がこもる腕を、必死に押さえつけていた。


「今、行かなければ、まともに戦えるのは私しかいないのよ! 司令官は逃げて!」

「わかってる、わかってるんだ。でも、僕は君の手を離せない」

「……心配性は変わってないのね、大丈夫よ、私は必ず帰ってくるわ」

「もう、無理だ。この状況を見て、勝敗を判断できない程愚かな男ではない」

「だからと言って、戦わずにはいられない。だって、私は夕雲型駆逐艦なんだもの」

「嫌だ」

「司令か──えっ?」


 抱きしめて来る早霜の腹部に、帯刀していた軍刀を突き刺した。

 指輪を渡した時以上に、困惑した表情を見せる。

 その顔のまま、あの日のまま、彼女を、彼女と言う存在を残して置きたくて、軍刀を引き抜き、首を落とした。


 ダメだ、これじゃあ奴らに見つかってしまう。

 服は邪魔だから取ってしまおう。

 くそ、軍刀じゃ身体を切るには不向きだ。

 急いで整備室に向かい、挽き割り鋸を持ってくる。

 もっとだ、バラバラにして奴らに見つからないようにしないと。


 小さくしようとすればするほど、醜く汚れていく身体。

 わかった。迫る戦火、時間は残されてはいない。

 あぁ、早霜。愛している。

 君の美しさは、桜の花弁よりも、戦いの炎よりも美しい。

 だから、思い出だけ綺麗に残して置こう。


 散乱した肉体を放置し、テーブルの上に血をふき取った頭部と指輪を付けた左腕を飾り付ける。

 綺麗だ。これで、終わりにしよう。アイツらなどに、彼女を穢させはしない。


 僕は、戦火をバックに映し出される生首と腕を前に、涙を流した。




サイン入り版



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カラリ

最初のイラストとSSの冒頭を読んで、「敵に惨殺されるんかな?」と思ってたらまさかの歪んだ愛END!