Home Artists Posts Import Register
Patreon importer is back online! Tell your friends ✅

Content

巷ではすこぶる評判が悪い読書感想文。毎年あんなものはなくしてしまえ、苦行だったとTwitterで盛り上がるのも恒例行事。夏休みを前にして今年も反読書感想文派が活気づいておるわけですが、皆さんは読書感想文って好きでした?


私は原稿用紙1枚が埋められず放課後の教室に残されてました。そんなやつが今は毎月15万~20万文字くらい何らかの文章を書いて生活してるんだから人生ってよく分からないですね。


今回の読書感想文はジョーダン・ハーパー『拳銃使いの娘』です。アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞、日本では年末のミステリランキングで2位ですか。


とはいえミステリと聞いて想像されるような本格ものだったり、謎を追いかけるサスペンス要素だったりは薄いというか皆無です。


あらすじ


刑期を終えて出所間近だったネイトはギャングから娑婆に出たら運び屋を手伝えと言われるが断る。スカウトマンと揉めて彼が持っていた刃物で逆に殺してしまうのだが、そのスカウトマン氏がボスの弟だったものだから組織を挙げた抹殺指令が下される。


抹殺指令はネイトだけでなく彼の別れた元妻や娘にも下される。出所したネイトは元妻の家に行くが彼女は再婚相手の男と一緒に56されている。


次にネイトは存在自体ほとんど忘れていたという娘を学校で待ち伏せ、彼女を半ば誘拐するように車に乗せて組織から逃れる。


LAを中心に西海岸に根を張る組織から逃げおおせるものでないと覚悟を決めたネイトは、逆に組織を叩いて自分たちを追いかけるのは割に合わないぞと諦めさせる作戦に出る。


気弱で内気な娘ポリーに人間の絞め落とし方、殴られる恐怖を克服する心構えを教育しながら親子は強盗を繰り返す。


感想(ネタバレあり)


娘ポリーの成長を軸にしたバイオレンス・ロード・ノヴェルですね。


薬中や殺人犯が出てくるし、親子の強盗描写は暴力場面ばっちりだしで、これを「12歳から18歳のヤングアダルトに特に薦めたい大人向けの本10冊」に選出するアメリカよ。ポリコレで海外のエンタメは骨抜きにされたとは何なのか。


抑えた筆致で視点をポンポン変えながらスピーディーに物語が展開します。大人しくて学校では虐められてた少女が父親の薫陶を受け暴力に目覚めていく様子が描かれる。


これが小説家デビュー作ながら、テレビドラマの世界では『メンタリスト』や『ゴッサム』の脚本を担当していただけあり、物語の繰り形は達者。リアルな血生臭さとキャラクターの行動理念にファンタジックな思考を残してるバランスも良。


リアル寄りにし過ぎると人を選ぶ度が上がってしまうからね。下ネタでもそうでしょ。生々しさと面白さを混同して履き違えるとマニアしか喜ばない物になっていく。ちなみに官能小説の世界では、女に女を陵辱する話書かせると男読者が引くくらい痛めつけてしまうと囁かれてます。


気になったのは最後の終わり方。犯罪を繰り返してきた人間が幸せになってはならない、最後はケジメをつけることという教条主義じゃないか? 物語の筋としても確かにネイトは殺してしまったほうが綺麗に閉じるのだけど……。ジャンルのお約束に従った結果と言えばそう。


原題の『RIDES SHOTGUN』は「助手席に乗る」という意味のアメリカスラング。これは馬車が移動手段の王様だった時代に、助手席にショットガン持った助手を乗せてたことに由来する。転じて「助手席に乗る」はドライバーの右腕になること、パートナーとして信頼されること、子供なら一人前の仕事を任される大人の入り口に立ったことの表現


アメリカの映画やドラマ見ていると、たまに子供たちが「誰がパパの運転する車の助手席に乗るか」揉めてるシーン出てくる。助手席は信頼されてるナビゲーターしか乗れない場所っていう意識があるからですね。



Files

Comments

No comments found for this post.