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「紳士淑女の皆様!今宵もやってまいりました!」


「人格破綻!将来性皆無!劣悪債務者のゴミ共が!」


「借金帳消しを賭けカラダを張り心魂を削る!」


「一発逆転!阿鼻叫喚!」


「悶絶必至のスペクタクル拷問ショー!開幕です!」


「さあ!本日1人目のチャレンジャーは…!」



……脳天気で品性に欠ける口上が

スピーカーから鳴り響く。


四方の壁が鏡張りになった部屋の中央に、

若い女が1人立たされた。

マジックミラーになっているのだろう。

その向こうからは冷ややかな視線が感じられた。


場当たり的な反撃を受けることが無ければ、

顔を覚えられて要らぬ怨恨を買うこともない安全な檻の外から、

債務者が責め苦に喘ぐ様子を見下し、嗤い、悦に入らんとする…

成金共の下卑た視線が。


ここは借金で首が回らなくなった者を集め、

チャレンジャーと称して、

借金からの救済を餌に危険なギャンブルをさせたり

悪質な拷問に掛けたりし、

刺激を求める成金共を観客に、

それをショーとして提供する違法なクラブだ。

集められたチャレンジャーは時に、血で血を洗う殺し合いをさせられることさえあるという。

チャレンジャー同士貶め合う様が、頭の螺子が外れ飛んだ成金共には極上のエンターテイメントなのだ。


そんなクラブに彼女は、

切羽詰まったチャレンジャーとして連れ込まれた。

鏡張りの部屋は正に、

夜毎ギャンブルや拷問や殺し合いが行われる血塗られた一室だった。


彼女はスピーカーからの声に嫌悪感を募らせた。

こんな悪趣味極まりない悪趣味クラブに好き好んで足を運ぶ者の心根を、紳士淑女とは笑止千万だ。


「…人格破綻はどっちだよ…クソッ…」


だが彼女の悪態は、口に差し込まれた黒く太いホースと

それをガッチリ固定する頑丈な拘束具に捩じ伏せられた。


特殊な強化ゴムで出来たホースは、

噛み切るのは勿論のこと

押し潰して変形させるのも顎の力では不可能な程硬く分厚かった。


さらに顔の下半分を覆う拘束具も、ホースと同じ強靭な素材で作られた特注品で、

専用の工具を用いねば外すのは勿論の事、

腕力で引きちぎるのも到底叶わなかった。


口周りは仰々しく固定されているのに、

敢えて両腕は拘束されず自由に使えるの様にしてあるのは、

「ホースも拘束具も自力ではどうにもならない」という無言の圧か。


ホースは喉の奥の奥まで捩じ込まれており、

胃の中に直接ホースの先が繋がれた状態にされてしまった。

足元には何故か、フォークリフトで荷物などを持ち上げるのに用いられる巨大なパレットが敷かれている。

パレットに乗せられ、天井と口を真っ黒なホースで連結された、傍目には物々しく奇妙な光景だ。


どうやらこのホースで何かされるのが、

悶絶必至のスペクタクル拷問というやつらしい。


残忍で悪辣な好奇の眼が、文字通り抜き差しならない自分に無遠慮に向けられている。

鬼畜共に自尊心を酷く踏み躙られ、追い詰められた己の人生を彼女は悔やんだ。


(…どうしてこんな事になっちゃったんだろう…)


原因はよくある話…借金の連帯保証人だ。

趣味に使い込み過ぎ生活費が足りなくなったと、

仕事先の後輩から頭を下げられ、

人の良い彼女は断り切れずに承諾してしまった。


せめてなぜ、

ほんの少しでも想像できなかったのだろう。

金を借りるのは一回きりと言っておきながら、

結局彼女に無断で何度も借金を重ねるとは…

後から作った借金まで保証しなければならないとは…

利子にまで利子が付き雪ダルマ式に

借金が膨れ上がるとは…

さらには世話を焼いたその後輩が、

自分に借金を押し付けた挙句蒸発するとは…


さして時間を置かず現れた取り立てのヤクザは、幾つか返済方法を提案してきた。

水商売に身体を捧げるか、

親に泣き付くか、

多くの時間を費やす事になろうと地道に働いて少しずつでも返すか、

そして

違法なギャンブルに挑んで一夜で借金をチャラにするか…。


水商売は論外。

また、すぐ親を頼るのを恥とする分別は最低限あった。

だが一方で、潔く労働での返済を選べる程、

彼女は精神的に自立できてはいなかった。

他人の借金のために青春の大半を棒に振ろうなど、

考えたくも無かった。


結局彼女は、

早急に苦境から解放される道に望みを賭けた。


そして今に至る。


(なんなのよ…これは…)

彼女は憮然として自らの口から伸びるホースに目をやる。

ヤクザからもクラブの人間からも、

どんなギャンブルなのか詳しい内容も知らされないままこの場に放り込まれた。

そして何も知らされないまま、逃走も抗議もできない有様に拘束されてしまった。

気付けば既に自分の身は悪党共の掌の上、

俎板の上の鯉だ。


(何か…とんでもないことをさせられるんじゃ…)


得体の知れない器具で身動きを封じられた彼女1人が取り残された部屋に、嘲笑を含んだ乾いた声のアナウンスが流れる。


そこで初めて彼女は、

自らが身を投じる事となったギャンブルの正体を聞かされた。


「本日のメニューは!

次世代の水責めとして当クラブですっかりお馴染み!

その名も…」


「”ジェル・ボーディング”‼︎」


「ルールは至ってシンプル!」


「これからチャレンジャーの口に繋がれたホースから、

独自の技術で調合された我がクラブ特製の濃厚ジェルが、その胃袋へと直接流し込まれます!」


「その苦痛と重みに耐え抜き、3分間立ち続けていることができたらチャレンジャーの勝利!

目出たく借金帳消しと相成ります!」


「ただし途中で座り込んだり手や膝を付いたりと、

靴底以外が足元のパレットと接触した時点でチャレンジャーの敗北!ゲームオーバーとなります!」


「果たしてチャレンジャーは途轍も無い苦悶のを耐え抜き、自由の身を勝ち取る事ができるのかぁ〜⁉︎」


…その余りの内容に彼女は耳を疑い戦慄する。


(う…嘘でしょ…?)


(なんなのよ…それ…⁉︎)


「それでは参りましょう!チャレェンジ…

スタートォ!」


声にならない拒絶の意思を示す間も無く、

彼女の胃の中へとホース内の空気が押し込まれ、

それに続き生温い喉の感触と共に、

大量のジェルが流れ込んできた。


「…ッ‼︎〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ…‼︎」


凄まじい勢いで押し寄せるジェルに、

瞬く間に彼女の胃の中は満杯になった。

そして容赦なくその胃壁を筋肉、脂肪、皮膚ごと内側から押し広げ、

それと同時に胃袋に収まりきらなくなったジェルが、

濁流の様に小腸へと雪崩れ込んで行った。


「ン゛ン゛ッ…‼︎

ン゛ン゛ン゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ…‼︎」


ジェルが小腸を隅々まで埋め尽くし、

ペンシルバルーンの様に太く張り詰めさせながら

大腸へと押し込まれて行くまでの数十秒間、

今まで経験したことも無い様な膨満感が彼女を襲い続けた。


流し込まれたジェルで彼女の胸は持ち上げられ、

鳩尾から下腹部までの軟肌は前へ前へと迫り出した。


苦悶の声を上げての抵抗も虚しく、

物の1分で彼女の腹部は妊婦の様に丸くなった。

重さも30kgを裕に超えていた。


「残り2分!さぁまだまだ入ってくるぞぉ!

大丈夫かぁ⁉︎」


他人事の様なアナウンスが喧しく捲し立てる。


(苦しい…!おなかが…やぶけるっ…!)


余りの苦悶に彼女の目からは涙が溢れた。

だが、それも意に介さぬと言わんばかりに

ジェルの勢いは衰えなかった。


ジェルによって大腸の奥へと追いやられた身体の中の空気が、後ろから大きな音を立てて漏れ出るのを堪える余裕さえも彼女には無かった。


マジックミラーの向こうから、

下品な哄笑が聞こえてくる。

自身の尻から発せられる屈辱的な暴音と

成金共の薄汚い嘲りに、

彼女は脳細胞が煮え立つ様な羞恥心を禁じ得なかった。

腹の痛みとは別の、

弱々しい嗚咽が口から漏れそうになる。


だが何とか彼女は圧し折れそうになった心を持ち直し、

その羞恥を憤怒と闘志へと変えた。


(クソッ…クソがぁぁぁっ…!負けるかぁぁぁぁっ…!)


(こんな所で…死ぬもんかぁぁぁぁっ…!)


(絶対…絶対勝ってやるんだぁぁぁぁぁぁっ…‼︎)


だがそんな彼女の奮起さえも嘲笑うかの様に、

ゴムのホースは彼女の腹の中を目掛け、

夥しいジェルを吐き出し続けた。


臍も内圧で窪みから”ポンッ”と音を立てて押し出され、

その瞬間の痛みと不快感に彼女はさらに身悶えた。

そして突き出た臍をも引き裂かんばかりに、

彼女の胴体は前へ横へと膨張した。

膨張させられた。


2分が経過する頃には、彼女の腹は威嚇する河豚の様に

肥大化し、体全体がアドバルーンの様相に迫っていた。

60kgを超えて尚詰め込まれる内容物に、両足が悲鳴を上げ始めた。


「残り1分!かなりキツそうだぞ!耐えられるかぁ⁉︎」


無遠慮なアナウンスがけたたましく煽り立てる。


(くそぉぉ…!

ゼッタイ…負けるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁ…!)


独自の製法で生み出されたこの特殊なジェルは、

飲み下せば間を置かずに内臓から吸収され、

皮膚や筋繊維、内臓に極端な伸縮性を与えた。

だが一方で痛覚神経には何の効能も無いため、

肉体が引き伸ばされる激痛が猛獣の様に彼女を蝕んだ。


無理矢理に伸縮させられた彼女の身体は、

前面と側面に加えて、遂に背面にも押し広げられた。

皮膚が、肉が、内臓が、

内側から全方位に向けて暴力的に圧迫されて行く。

膨大なジェルが、無慈悲に彼女を膨らませていく。


両足に伸し掛かる重量に、堪らず膝が沈み込む。

彼女はそれを、在らん限りの力で持ち上げようとする。

あまりの重さに、その場にしゃがみ込む体勢まで追い詰められながらも、前に突き出た腹を抱え上げ、

顔を真っ赤にして持ち堪える。


身体の何処であろうと決して地面に触れさせるものか…と、汗も涙もそのままに食い縛る。

腹の重さは既に80kgを超えていた。

下手をすれば腹だけが身体から引き千切れて落ちそうだ。


「残り10秒!」


「9!」


「8!」


「7!」…


気が遠のく程に間延びして感じるカウントダウンの中、

最後の力を振り絞り、

死物狂いで彼女は両足を踏ん張った。


(もう…少し…)


(私の…勝ちだ……)


(自由に……なるんだ………)


(も…う……す………こ……………し………………)


…「4!」


「3!」


「2…おぉっとぉ⁉︎」


突如カウントダウンが止まる。

同時に、固く扁平な何かが尻に接触する感覚が走る。


思考が一瞬の内に麻痺して行く。


(…え…)


「付いた!付いた!

尻がパレットに付いてしまいました!」


「チャレンジ失敗!ゲームオーバーです!」


(……うそ……なんで………⁉︎)


彼女はしゃがみ込みながらも、

全身全霊で耐えていた事に違いは無かった。

本来なら座り込んでなどいない筈だった。


しかし、肉体の膨張は腹部を、背面を超えて、

臀部にまで達していた。

尻がパレットに接触する程に膨れ上がってしまったのだ。

常軌を逸した己が身の変貌を、彼女は辛うじて理解した。


「んぅ…んうぅぅ………」


自身の敗北を悟り、彼女は力無くその場に座り込んだ。

そして成す術なく、温もりのない嘲笑が裏側から漏れる眼前の鏡に目を遣った。


そこに映っていたのは、

重度の肥満体と見紛う程に膨れ上がった自分の姿だった。


腹も尻も前へ横へとはち切れんばかりに肥大したその身体は、冬眠前の熊か破裂寸前の水風船を思わせた。


エアドームめいて丸くなった肉の風船が、

そこに鎮座していた。


爆発しそうな迄にジェルを詰め込まれ、

無様で滑稽に膨張した己の姿に、

そして尊厳も何もかも失った己が人生に

彼女はただ憂い、絶望し、慟哭することしか出来なかった。


「うぅ…うぅぅ…」


連帯保証人など引き受けなければ…。

せめて働いて返済する道を選んでいれば…。

抱え切れない悔悟の念が、腑一杯に詰め込まれた様な苦しみに、心も身体も破裂しそうだった。


自分の人生を守り抜くには、知識も想像力も責任感も欠如していた。今は唯、それを悔いるしか無かった。


(どうして…どうしてこんな事に…なっちゃったの…?)


終焉を告げる様にアナウンスが垂れ流される部屋の真ん中で、彼女は泣いた。

涙を止める気力も術も、有りはしなかった。


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