第十一章:教皇暗殺編「150.不倫(事故)」 (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-03-15 10:00:01
Imported:
2022-04
Content
※The English version is also below.
※한국어판도 밑에 있어요.
※クレア=フランソワ視点のお話です。
教皇様とレイが入れ替わって、数日が過ぎました。
レイの方はなんとか正体を隠して上手くやっているようですが、こちらはかなり苦戦しています。
時刻は夕方。
そろそろ警備の交替の時間です。
「レイセンセ、なんかここ数日妙に静かじゃなーい?」
警護の仕事を手伝ってくれているラナが、訝しむように言いました。
すぐ隣にいるイヴも同じように猜疑的な視線を向けてきます。
「そんなことないよ。いつも通り」
「そ、そうですわ。あれですわよ。きっと警護の仕事で少し疲れているせいですわ」
口調こそレイに似ているものの、教皇様の声には表情がありません。
わたくしは慌ててフォローをしました。
「そうですかぁー? なーんか変ですよぉー? っていうか、レイセンセってこんな風に表情筋死んでる人でしたっけー?」
わたくしが一番頭を抱えているのがそこです。
表情豊かなレイに比べて、教皇様は無表情が基本……というか、喜怒哀楽を表に出していることがほぼないのです。
これでは不審に思われるのも無理からぬことでしょう。
「じ、実はレイとわたくしは少し前からケンカをしていますの。それでレイは少し表情が堅いのですわ」
「あ、そうだったんですかー。レイセンセ、クレアセンセに飽きたら、アタシとイケナイ関係になりましょー?」
ラナがいつもの調子でレイ――教皇様ですが――をいじりだしました。
ひとまず窮地を脱した、と安堵したわたくしだったのですが、
「いけない関係、とはどのようなものですか?」
感情のない顔に純粋な疑問を浮かべた教皇様のその一言に、わたくしはまた頭を抱えたくなりました。
「えー!? なになに、レイセンセ? ひょっとして脈アリ? やっばーい、アタシチャンスじゃーん!」
「不潔……」
はしゃぎ出すラナと、吐き捨てるイヴ。
またややこしいことになりそうですわ。
「何を言っていますの。レイがわたくし以外の方とそんな関係になるわけありませんでしょ」
「えー、でもぉー、クレアセンセとレイセンセって今ケンカ中なんでしょぉー? だったらぁー、アタシ的にはこの機会を逃す手はないっていうかぁー?」
「……」
慌てるわたくしと調子に乗るラナに、温度ゼロの視線を向ける教皇様。
教皇様に事態解決を求めるのは酷ですわよね。
わたくしがなんとかしませんと。
「ケンカをしていたって、わたくしたちの深い愛情はなんら変わりませんわ。今は少しだけすれ違っているだけですわ」
「でもぉー、恋愛関係ってそういうちょっとした行き違いから破局しません? むしろ、恋人と上手く行っていない時こそ、つけこみ時っていうかぁー?」
「ラナ……。あなたこれまでどんな恋愛をしてきたんですのよ……」
別にラナの過去の恋愛遍歴を聞きたいわけではありません。
これは呆れているのです。
「そもそもあなた、どうしてレイに言い寄っていますの? レイに聞きましたけれど、あなた講義初日からそんな感じだったそうじゃありませんの」
一方でレイはラナとは面識がないとも言っていました。
どうして懐かれているのか分からない、とも。
「えー? だってぇー、レイセンセって可愛いしぃー、頭もいいしぃー、それに愛が重そうな所がサイコー!」
「まあ、それは認めますけれども」
レイは可愛い――ええ、その通りですわ。
頭もいい――異論の余地はありません。
愛が重い――全く以てその通りですわ。
「あと、レイセンセって心理的な不倫はゼッタイしなさそうだけど、肉体的な不倫は意外とコロッとしそうな気がするんですよねぇー」
「ば、バカを仰い!」
教皇様の耳に入れていい話題ではありません。
私は慌てて、ラナを咎めました。
「不倫には心理的なものと肉体的なものの二つがあるのですか?」
またも素朴な疑問に首を傾げている教皇様。
お願いですから、食いつかないで下さいな。
「そぉーですよぉー? 肉体関係を持っても心が裏切ってなければ、それは不倫じゃないんです!」
「そんなわけないでしょう! あんまりバカなこと言ってると燃やしますわよ!?」
「やーん、怖ぁーい!」
わざとらしい声を上げると、ラナは教皇様の背中に隠れました。
「レイセンセ、助けてぇー」
「クレア様、いくら相手がふざけていても、燃やすのはいけません。それは人道に反します」
「……冗談ですわよ。というか、そういうところはきっちりしていますのね」
なんだかわたくし一人が孤軍奮闘しているような気がしますわ。
レイ、あなたの存在の大きさを、わたくしは今ひしひしと感じています。
早く帰ってきて。
「アハ、やっぱりレイセンセ、アタシにも脈あるんじゃなーい? どう、センセ? 今夜一緒に食事しません?」
「いえ、家でメイとアレアが待っていますので」
「あーん、つれなーい。やっぱり子持ちってお堅ーい。そこが好きー!」
「もう、バカなことばかり言って……。ほら、交替ですわよ、レイ。ラナとイヴもごきげんよう」
「じゃまた、ラナ、イヴ」
「じゃあねー!」
「……さようなら」
二人を残して、私たちは帰路を急ぎました。
「クレアおかあさま、きょーこーさま、おかえりなさーい」
「おかえりなさいませー」
寮の自室へ戻ると、メイとアレアが出迎えてくれました。
ああ、この笑顔のために毎日頑張っているようなものですわ。
わたくしは二人をハグして頬に口づけを落としました。
メイとアレアには、レイが教皇様と入れ替わったことを話してあります。
元々隠すつもりもなかったのですが、会った初日にバレてしまったからです。
教皇様が何を話すでもなく、
「このひとだあれー?」
「レイおかあさまはー?」
と言われたのは、少しびっくりしましたわ。
レイのことになると割とぞんざいな扱いをしがちな娘二人ですが、ちゃんとレイのことを見て分かっているのですわね。
レイに教えたらきっと喜ぶことでしょう。
「おしょくじのよういはできてますわー」
「アレアすごいんだよ。レイおかあさまみたい」
「ありがとう、アレア」
「ありがとうございます」
教皇様と揃ってアレアにお礼を言いました。
情けないことなのですが、教皇様もわたくしも料理が出来ないのです。
教会から費用は貰っているので、使用人を雇うことも考えたのですが、アレアがそれなら自分が作る、と申し出てくれたのでした。
始めこそ任せて大丈夫かと不安だったわたくしですが、そんな心配は初日に出された食事で吹き飛びました。
食卓に並んだのは、わたくしでは到底無理な完璧な食事でした。
レイが料理を教え始めてからまだひと月足らず。
それでこの出来なのですから、アレアは本当に飲み込みの早い子です。
もちろん、メイも手伝ってくれているようです。
それから着替えと食事、それから入浴を済ませて、子どもたちの相手をしていると、すぐにいい時間になりました。
「メイ、アレア、そろそろおやすみなさいの時間ですわ」
「はーい!」
「はいですわ」
二人はおやすみなさいと言って子ども部屋に戻っていきました。
「いい子たちですね」
教皇様が言いました。
その顔はやはり表情を浮かべてはいませんでしたが、どこか柔らかい印象な気がします。
「自慢の娘たちですわ」
本当に、心の底からそう思います。
最初はわたくしなどが子どもを育てられるのかと不安もたくさんありましたが、今はもうそんなことは思いません。
わたくしは思い違いをしていたのです。
親が子どもを育てるのではありません、子どもが勝手に育っていくのを親が見守るのですわ。
親がこういう子どもに育てたい、と理想像を描いて子どもを育てるのではなく、子どもたち自身がどうなりたいかに寄り添ってその手助けをする。
子育てとはそういうものだとわたくしは思うようになりました。
もちろん、生命の危険から守るために最低限の躾は必要ですが。
「では、わたくしたちも休みましょうか」
「はい」
二人で寝室に向かい、ベッドに入ります。
レイと二人で使う予定の部屋だったので、ベッドは一つしかなく、やむを得ず教皇様と同じベッドで寝ています。
レイと同じ顔をした女性と同衾することには、最初僅かな戸惑いがありましたが、教皇様はすぐにおいたをするレイとは違ってあっという間に寝てしまうので、すぐに慣れることが出来ました。
「おやすみなさいませ、教皇様」
「おやすみなさい、クレア」
普段と違ったのは、その時。
唇に柔らかい感触。
わたくしはばっと飛び起きました。
「きょ、きょきょきょ教皇様!?」
「肉体的なものは……不倫にならない……のでしょう?」
眠たそうにそう言って、すうすうと寝息を立て始めました。
わたくし、大混乱。
ああ、レイ。
どうか許して頂戴。
思わぬ隠し事を抱える羽目になったわたくしは、今夜こそレイの夢が見られますようにと思いながら目をつぶるのでした。
*Translation below was made possible with the help of Angela. Thanks, Angela.
Ch 150 - Infidelity (Accidental)
※ This is seen from Claire François’ point of view.
Several days have passed since Rei and the Pope switched places.
Although it seemed that Rei has managed to keep her cover-up so far, we were struggling quite a bit on our end.
It was evening.
It was almost time for us to switch shifts for our security work.
“Rei-sensei, haven’t you been a little too quiet these last couple days?”
Lana, who was helping me out with some security work, expressed her suspicions.
Eve, who was beside her, immediately shot a skeptical look over at us.
“That’s not true. I’m the same as always.”
“T-That’s right. It’s as she says, and I’m sure she’s a bit tired out from working as a bodyguard.”
Although her speaking habits were similar to Rei’s, there was no expression in the Pope’s voice.
I had to rush in and back her up.
“Are you sure? Something feels weird though? And besides, was Rei-sensei always the kind of person with this sort of deadpan face?”
That was the one problem that pushed me to my wits’ end.
Compared to Rei, who was always so expressive, the Pope was basically expressionless…… or more accurately, she had never let her emotions show before.
It was reasonable for them to be suspicious.
“T-The truth is, Rei and I have been fighting for a while now. That’s why her expressions have been stiff lately.”
“Ah, is that so~? Rei-sensei, if you’re getting tired of Claire-sensei, do you wanna enter an adulterous relationship with me~?”
Lana was messing around with Rei―― or rather, the Pope―― like she usually did.
I was just starting to feel relieved that we had managed to dodge that dilemma when,
“What does it mean to be in an adulterous relationship?”
With that one innocent question from the Pope, whose face was still devoid of expression, I found myself at my wits’ end once again.
“Ehー!? What’s this, Rei-sensei? Are you finally showing interest in me? No waaay, doesn’t this mean I’ve got a chance?”
“Disgusting……”
Lana was starting to get hyped up, while Eve spat out an insult.
Things looked like they were about to get complicated again.
“What are you saying? There’s no way Rei would engage in that type of relationship with anybody but me.”
“Ehー, I mean, Claire-sensei, aren’t you and Rei-sensei in the middle of a fight right now? If that’s the case, there’s no way I’m just gonna let this opportunity escape, you know?”
“......”
While I was panicking and Lana was getting carried away, the Pope looked over at us with a gaze that was devoid of any warmth.
It would be cruel of me to ask the Pope for a solution here.
I had to do something about this.
“Just because we are in the middle of a fight, that doesn’t mean anything about our deep love for each other has changed. We’re in the middle of a little disagreement right now, that’s all.”
“But you knowー, don’t most romantic relationships break down because of these kinds of disagreements? If anything, when things aren’t going well with your lover, isn’t that the best time to take advantage of the situation?”
“Lana…… Just what kind of relationships have you been in up until now……?”
Not that I actually wanted to hear about Lana’s relationship history, though.
I was getting fed up with the situation.
“Besides, why are you chasing after Rei in the first place? I heard this from Rei, but it seems that you’ve been pursuing her ever since the first day of school.”
Rei mentioned that although she and Lana were not acquainted, Lana knew about her.
That’s why we were confused as to why Lana was so smitten with her.
“Ehー? I mean, Rei-sensei is cute, and she’s smart, and the part that I like most about her is that she seems like she’s overly passionate with her love!”
“Well, I can agree with that.”
Rei is cute―― Yes, that was correct.
She’s smart―― There was no room for debate there.
She’s overly passionate with her love―― There was no better way to put it.
“Also, although it seems like Rei-sensei would never have an emotional affair with anybody else, I get the feeling she’d be up for sexual infidelity, don’t you think?”
“D-Don’t say such silly things!”
That wasn’t the sort of topic the Pope should be listening to.
I quickly rebuked Lana.
“So are emotional infidelity and sexual infidelity two different things?”
The Pope asked yet another innocent question while tilting her head.
I’m begging you, please don’t get baited into this.
“Of courseー? Even if you engage in a physical affair, as long as you’re not cheating emotionally, it’s not considered infidelity!”
“That is not true! If you keep saying idiotic things, I’ll burn you!?”
“Nooo, I’m scaredー!”
As Lana deliberately raised the pitch of her voice, she went to go hide behind the Pope.
“Rei-sensei, save me~”
“Claire-sama, even if you’re joking around with other people, you can’t just burn them. That would be inhumane.”
“...... It was a joke. You seem very strict about these sorts of things, don’t you.”
Somehow, it felt like I was fighting by myself.
Rei, I am starting to realize just how big of a role you play in my life.
Hurry up and come back already.
“Aha, so Rei-sensei really is starting to take an interest in me, huh? What do you think, sensei? Shall we dine together tonight?”
“No, Mei and Alea are waiting for us at home.”
“Ahh, that’s so boring. In the end, people with kids are hard to win over. But I like thatー!”
“Geez, please stop saying silly things…… Look, it’s time for us to change shifts, Rei. Have a nice day, Lana, Eve.”
“See you later, Lana, Eve.”
“See ya!”
“....... Goodbye.”
After parting with them, we rushed home.
“Claire-okaasama, Miss Pope, welcome home~”
“Welcome back~”
When we returned to the dormitory, Mei and Alea greeted us.
Ahh, those were the smiles I’ve been working so hard for every day.
I gave both of them a hug and kissed them on their cheeks.
Mei and Alea were told that the Pope and Rei had switched places.
It wasn’t like we were planning to keep it a secret or anything, but they found out the moment they saw her on the first day.
Before the Pope had even said anything,
“Who is this person?”
“Where’s Rei-okaasama?”
I was a little surprised when they said that.
Those two were the type of daughters that would give Rei such half-hearted treatment, and yet, they could recognize her immediately just by looking at her.
If Rei ever heard that, she would surely be overjoyed.
“I have prepared dinner already~”
“You’re amazing, Alea. You’re just like Rei-okaasama.”
“Thank you, Alea.”
“Thank you very much.”
The Pope thanked Alea as well.
Unfortunately, neither the Pope nor I were able to cook.
We received some funds from the Church, so the idea of hiring somebody to do it for us came to mind; however, Alea insisted that she wanted to do it herself.
At first, I was worried about leaving the job to her, but those worries were blown away by the meal she made on the first day.
The meal that was laid out on the dining table was perfect, and they were things I couldn’t possibly make myself.
Less than a month had passed since Rei started teaching Alea how to cook.
If she was able to come this far in such a short amount of time, then Alea really was a fast-learner.
Of course, Mei seemed like she was helping out as well.
After we got changed, ate dinner, took a bath and finished playing with the kids, it was a good time to go to bed.
“Mei, Alea, it’s time to say good night.”
“Okaaay!”
“Okay.”
After saying “good night” to the kids, I sent them back to their room.
“Those two are really good kids.”
The Pope spoke.
As usual, there was no expression on her face, but she still gave off a rather soft aura.
“They’re the daughters I’m so proud of, after all.”
That was something I truly believed from the bottom of my heart.
At first, I didn’t think somebody like me was suited to raise children, so there were a lot of things I was worried about, but I have different thoughts about that now.
I think I was wrong.
Parents aren’t the ones that raise their children, the children are the ones who do the growing up by themselves, while the parents watch over them.
This way, the kids don’t grow up just to fit the mold of their parents’ expectations. Instead, they can decide to be whatever they want to be, with their parents by their side, guiding them.
That was something I came to believe about raising children.
Of course, there was still a minimum level of discipline they needed to learn in order to protect them from some of life’s dangers.
“Well then, shall we get some rest as well?”
“Yes.”
We went to our room and got into bed.
Since the bedroom was supposed to be for me and Rei, we only had one bed, which meant that the Pope and I had to share the bed.
At first, I felt a little bit confused since I was sharing the bed with a woman who had the same face as Rei, but unlike Rei, who would start getting playful, the Pope would fall asleep immediately, so I quickly got used to it.
“Good night, Your Holiness.”
“Good night, Claire.”
The only thing that was different from usual was this.
A soft sensation pressed against my lips.
I jumped out of bed immediately.
“Y-Y-Y-Your Holiness!?”
“Physical contact…… doesn’t count as infidelity…… right?”
She said as she was falling asleep, and soon, she was breathing peacefully as she slept.
Meanwhile, I was in a state of confusion.
Ahh, Rei.
Please forgive me.
As I held onto this unexpected secret, I closed my eyes, hoping that I would be able to see Rei in my dreams tonight.
*아래의 번역은 "와타오시 번역"의 협력으로 실현되었습니다.고마워요, "와타오시 번역"
150. 불륜 (사고)
※클레어 프랑소와 시점의 이야기입니다.
교황 성하와 레이가 서로 뒤바뀌고서 며칠이 지났습니다.
레이는 어떻게든 정체를 숨기고서 잘 해내고 있는 모양이지만, 이쪽은 상당히 고전하고 있습니다.
현재 시각은 저녁.
슬슬 경비 교대 시간입니다.
“레이 선생님, 어쩐지 요새 들어서 묘하게 조용하지 않아~?”
경호 일을 도와주고 있는 라나가 수상쩍다는 듯이 물었습니다.
바로 옆에 서 있던 이브도 의심 가득한 시선을 보내고 있었습니다.
“그렇지 않다고. 평소대로야.”
“마, 맞아요. 이건 그거예요. 분명 경비 일 때문에 조금 피곤한 탓이에요.”
말투만 보면 레이랑 비슷하지만 교황 성하의 목소리에는 감정이 결여되어 있습니다.
저는 황급히 옆에서 거들었습니다.
“그런 거예요~? 어쩐지 이상한데요~? 아니 그보다 레이 선생님이 이렇게 표정 변화가 적은 분이셨던가~?”
제가 제일 골치가 아픈 부분이 이 점입니다.
언제나 표정이 풍부한 레이에 비해서 교황 성하는 기본적으로 무표정…… 아니, 정확히는 희노애락을 겉으로 드러내는 일이 거의 없습니다.
이래서야 의심스럽게 여기는 것도 무리는 아니겠죠.
“사, 사실 저랑 레이가 좀 전부터 싸운 상태거든요. 그래서 레이는 지금 표정이 조금 딱딱한 거예요.”
“아, 그랬던 건가요~ 레이 선생님, 클레어 선생님한테 질린다면 저와 이렇고 저런 관계가 되어 볼래요~?”
라나가 평소처럼 레이한테——사실 교황 성하지만——집적대기 시작했습니다.
저는 일단 어떻게든 궁지에서 벗어났다고 안심하고 있었습니다만,
“이렇고 저런 관계라는 건, 어떠한 관계인가요?”
감정이 드러나지 않는 표정에 순수한 의문을 띄운 채로 말하는 교황 성하의 그 한마디에 저는 다시 머리를 싸매고 싶어졌습니다.
“에~?! 뭐야뭐야 레이 선생님? 설마하니 이거 가능성 있는거? 우와 쩔어~ 나, 이거 완전 찬스잖아~!”
“불결해…….”
신이 난 라나와, 내뱉듯이 말하는 이브.
또다시 일이 복잡하게 꼬일 거 같아요.
“무슨 소릴 하는 건가요. 레이가 저 말고 다른 사람과 그런 관계가 될 리가 없잖아요.”
“에이~ 그치만요~ 클레어 선생님과 레이 선생님은 지금 부부싸움 중이잖아요~? 그러면~ 저로서는 이 기회를 놓칠 수는 없다고 해야 할까~”
“…….”
당황하는 나와 한층 더 신이 난 라나를 향해, 차가운 시선을 보내는 교황 성하.
교황 성하한테 이 사태를 해결해 달라고 하는 건 무리겠죠.
제가 어떻게든 하지 않으면.
“설사 부부싸움을 하고 있다고 해도 저희들의 깊고 깊은 애정은 조금도 흔들리지 않아요. 지금은 아주 조금 엇갈렸을 뿐이에요.”
“그치만~ 연애 관계라는 건 원래 그런 약간의 엇갈림에서부터 파국이 시작되지 않나요? 오히려 연인과 삐꺽대고 있을 때야말로 끼어들 찬스라고 해야 할까~”
“라나……. 당신은 대체 지금까지 어떤 연애를 해온 건가요…….”
딱히 라나의 연애편력을 듣고 싶은 건 아닙니다.
이건 기가막혀서 그런 거예요.
“애초에 당신은 어째서 레이한테 구애하는 건가요? 레이한테 듣기로는 당신은 강의 첫날부터 그런 느낌이었다는 모양인데요.”
또한 레이는 라나와 면식이 없었다고 말했습니다.
어째서 레이를 그렇게나 따르는 건지 잘 모르겠는걸요.
“에~? 그치만~ 레이 선생님은 엄청 귀여운데다~ 머리도 좋고~ 거기다 사랑이 무거워보이는 점이 최고야~!”
“뭐어, 그건 인정하겠지만요.”
레이는 귀엽다——네에, 그 말대로예요.
머리도 좋다——이론의 여지가 없어요.
사랑이 무겁다——정말로 두말할거 없이 그 말 그대로예요.
“그리고 레이 선생님은 어쩐지 심리적 불륜은 절대로 하지 않을 거 같지만, 육체적인 불륜은 의외로 간단히 저지를 거 같은 느낌이 든단 말이죠~”
“바, 바보같은 소리하지 마세요!”
교황 성하한테 들려드릴 만한 이야기가 아닙니다.
저는 황급히 라나를 질책했습니다.
“불륜에는 심리적인 것과 육체적인 것, 두 가지가 있는 건가요?”
또다시 소박한 의문을 입에 올리며 고개를 갸웃거리는 교황 성하.
제발 부탁이니까 그냥 넘어가 주세요.
“그야~ 그렇죠~? 육체관계를 가져도 마음은 배신하지 않는다면 그건 불륜이 아니에요!”
“그럴 리가 없잖아요! 더 이상 바보 같은 소리를 계속한다면 불태워 버릴 거예요!”
“꺄앙~ 무서워~!”
라나는 일부러 호들갑스럽게 외치면서 교황 성하의 등 뒤로 숨었습니다.
“레이 선생님 도와줘요~”
“클레어 님, 아무리 상대가 까불어도 태워버리는 건 안 됩니다. 그건 사람의 도리가 아닙니다.”
“……농담이라고요. 아니 그보다 이런 부분에선 똑 부러지네요.”
어쩐지 저 혼자서 고군분투하고 있다는 생각이 들어요.
레이, 당신의 존재가 얼마나 큰 것이었는지 저는 지금 절실하게 느끼고 있어요.
부디 빨리 돌아와줘요.
“아핫, 역시 레이 선생님, 나한테도 은근히 마음이 있는 거 아니야~? 어때, 선생님? 오늘밤 우리 같이 식사라도 하지 않을래요?”
“아뇨, 집에서 메이랑 알레어가 기다리고 있기 때문에.”
“으앙~ 넘어오지 않네~ 역시 아이가 딸려있으면 완고하네~ 그런 점이 좋아~!”
“정말이지, 계속해서 바보 같은 소리만하고…… 자, 이제 교대예요, 레이. 그럼 이만 라나랑 이브도 안녕히.”
“그럼 이만, 라나, 이브.”
“또 봐요~!”
“……안녕히 가세요.”
우리는 두 사람을 뒤로하고, 서둘러 귀갓길에 올랐습니다.
“레이 엄마, 교황 님, 잘 다녀오셨어요~”
“잘 다녀오셨어요~”
기숙사 방으로 돌아오자, 메이와 알레어가 맞이해주었습니다.
아아, 저는 아이들의 이 미소를 위해서 매일같이 노력하고 있는 거나 마찬가지예요.
아이들을 꼭 안아 주면서 뺨에 입을 맞췄습니다.
메이와 알레어에게는 레이가 교황 성하와 서로 바뀌었다는 사실을 이야기해뒀습니다.
원래부터 숨기려는 생각은 없었지만, 첫날부터 만나자마자 들켰기 때문입니다.
교황 성하가 무슨 말을 꺼내기도 전에,
“이 사람은 누구~?”
“레이 엄마는요~?”
하고 말해서 조금 깜짝 놀랐어요.
레이를 비교적 소홀히 대하기 일쑤인 우리 딸들인데, 보기만 해도 레이인지 알 수 있는 거네요.
레이한테 알려주면 분명 기뻐하겠죠.
“식사 준비는 다 해놨어요~”
“알레어 대단해. 레이 엄마같아.”
“고마워, 알레어.”
“고마워요.”
교황 성하와 함께 알레어에게 감사의 말을 건넸습니다.
한심하기 그지없지만, 교황 성하도 저도 요리를 못하기 때문입니다.
교회가 비용을 제공해주기 때문에 사용인을 고용할까도 생각해봤지만, 알레어가 그렇다면 자기가 만들겠다고 나섰습니다.
처음에는 맡겨도 괜찮은 걸까, 하고 불안했습니다만 그런 걱정은 첫날 식탁에 차려진 요리를 보자 단숨에 날아갔습니다.
식탁에 차려진 요리들은 저로서는 도저히 무리인 완벽한 식사였습니다.
레이가 요리를 가르치기 시작한 지 아직 한 달도 안됐습니다.
그런데도 이정도의 완성도라니 알레어는 정말로 배우는 속도가 빠른 아이입니다.
물론 메이도 옆에서 돕고 있는 모양입니다.
우리는 옷을 갈아입고 식사를 한 뒤, 목욕까지 마치고서 아이들과 놀아주고 나자 금방 잘 시간이 되었습니다.
“메이, 알레어, 슬슬 자야할 시간이에요.”
“네에~!”
“네예요.”
아이들은 안녕히 주무세요, 하고 인사하고서 자기 방으로 들어갔습니다.
“착한 아이들이네요.”
교황 성하가 말했습니다.
그 얼굴에는 역시나 아무런 표정도 떠올라있지 않았지만, 어쩐지 부드러운 인상을 느꼈습니다.
“자랑스러운 딸들이에요.”
정말로 마음 깊이 그렇게 생각합니다.
처음에는 제가 아이들을 잘 키울 수 있을까, 하고 한가득 불안을 품기도 했지만 이제는 그렇게 생각하지 않습니다.
제가 잘못 생각하고 있었던 겁니다.
부모가 아이들을 키우는 게 아닙니다, 아이들이 알아서 커가는 걸 부모가 지켜보는 거예요.
이러한 아이로 키우고 싶다고, 부모가 이상으로 생각하는 아이들을 키우는 게 아니라 아이들 스스로가 어떻게 되고 싶어 하는지에 따라서 그걸 돕는 거예요.
육아라는 건 그런 거라고 생각하게 됐습니다.
물론, 위험에서 지켜주기 위해 최소한의 교육은 필요하지만요.
“그럼 저희들도 쉬도록 할까요.”
“네.”
함께 침실로 향한 다음 침대로 들어갔습니다.
레이와 둘이서 쓸 예정이었던 방이었기 때문에 침대는 한 개 밖에 없어서, 어쩔 수 없이 교황 성하와 같은 침대에서 자고 있습니다.
레이와 똑같은 얼굴을 가진 여성과 동침하는 데에 처음에는 약간 망설임이 있었지만, 금세 장난을 걸어오는 레이와는 다르게 교황 성하는 침대에 눕자마자 잠들어 버리기 때문에 쉽게 익숙해질 수 있었습니다.
“안녕히 주무세요, 교황 성하.”
“잘 자요, 클레어.”
평소와 달랐던 건, 바로 이때.
입술에 부드러운 감촉.
저는 놀라서 확 뛰어 올랐습니다.
“교, 교교교교황 성하?!”
“육체적인 건…… 불륜에 들어가지 않는 거…… 잖아요?”
졸린 듯이 그렇게 말하고서, 금방 새근새근 잠에 든 숨소리를 내기 시작했습니다.
저는 대혼란.
아아, 레이.
부디 용서해주세요.
생각지도 못한 비밀을 끌어안게 될 처지에 놓은 저는, 오늘 밤에는 꼭 레이의 꿈을 꿨으면 좋겠다고 생각하면서 눈을 감았습니다.